説明

アルミニウム処理組成物

【課題】アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、及び鋼などの金属基材を処理して、該金属基材上に化成皮膜を提供するための水性化成皮膜処理組成物。
【解決手段】化成皮膜処理組成物は、a)アルミニウムイオン源と、b)フルオロ化合物と、c)少なくとも1つのpH調整剤と、d)タングステン酸イオン及び三価クロムイオンからなる群から選択されるVIB族金属イオン源と、e)任意的に保存剤と、を含む。化成皮膜処理組成物は、金属表面上に耐食性皮膜を提供し、後に塗布される層の接着を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、金属又は金属でコーティングされている他の物質上に保護、腐食阻害皮膜を形成するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、チタン、カドミウム、銀、銅、スズ、鉛、コバルト、ジルコニウム、ベリリウム、又はインジウムなどの金属、これらの合金、及びこれら金属でコーティングされている物品は、酸化−還元(レドックス)電位が低いため、又は酸化物の形成が容易であるため、水の存在下で急速に腐食する傾向がある。典型的にこれら金属の非合金材料は、該非合金材料を若干保護し全体的な腐食速度を低下させる天然酸化物膜を形成する。しかしこれら金属の合金は、特に腐食作用を受けやすい。更にこれら金属合金はまた、塗料の接着性に関して重大な問題を有している場合がある。その理由は、上記のように酸化物膜が形成された(as−formed)金属表面は、典型的には非常に平滑であり表面酸化物との結合が弱い傾向にあるので、通常該表面酸化物は、後に基部上に塗布される塗料が塗料自体を固定し得る頑強な基部を提供しないためである。
【0003】
金属合金の耐食性を強化する方法の1つは、化成皮膜を使用する方法であり、該化成皮膜は、金属又は金属合金を化学反応溶液に意図的に曝露している間に形成される自己修復性腐食阻害層である。化成皮膜は、鋼、亜鉛、アルミニウム、及びマグネシウムなどの金属の表面処理において特に有用である。化成皮膜処理プロセスでは、皮膜の破損箇所を保護することができる全体(integral)腐食阻害剤を含有している接着性表面が形成される。金属は、表面を化学的に改質する化合物に曝露され、高い耐食性を付与する皮膜を形成する。従ってそれ程貴でない合金の表面に塗布された化成皮膜は、水による腐食の範囲及び程度を低減し、性質の長期に亘る安定性を付与し、製造物の耐用期間を延長することができる。
【0004】
有効な化成皮膜の重要な特徴は、皮膜に破損箇所が存在する場合も卑金属を腐食から保護する能力である。化成皮膜は、外部から電位を印加することなしに金属上に酸化物皮膜を生じさせる。保護膜は、金属表面と化成皮膜処理溶液との間の化学的レドックス反応により生成される。該膜は、酸化物と、化成皮膜処理溶液に曝露されている間に形成される全体腐食阻害種とから構成されている。
【0005】
六価クロム含有溶液を用いるこれら化成皮膜又は前処理皮膜の塗布は既に一般的である。これら皮膜は優れた耐食性を付与するが、毒性が高く発癌物質であることが知られている六価クロムは、業務、安全、健康、及び環境への影響に関して問題があるため、より許容可能な非クロム由来皮膜、又は三価クロム由来皮膜を提供する試みがなされている。かかる皮膜を開発するために種々の努力が重ねられており、これら皮膜の例は、特許文献1〜5中に見出すことができ、これらの主題を参照することにより全体を本願に援用する。
【0006】
化成皮膜処理を施された表面は、露出した状態のままであってもよく、更なる膜又は皮膜を塗布することにより更に保護してもよい。化成皮膜は基材に接着する必要があり、また後に塗布される皮膜との強い付着の形成を促進する表面が得られなくてはならない。後に塗布される皮膜との付着は、化成皮膜の形態及び化学組成に依存する。接着促進表面処理は、腐食阻害性を示す場合がある。意図する用途に応じて、本明細書に記載されるような化成皮膜は「接着促進剤」であると見なされる場合もあり、逆も同様である。
【0007】
通常化成皮膜は、金属表面に化成皮膜処理溶液を塗布することにより形成される。該溶液は、処理される基材の表面の複雑さ(complexity)に応じて浸漬、噴霧、噴射、拭き取り、又は他の類似手段により塗布することができる。
【0008】
各種化成皮膜処理用化学物質が提案されているが、本発明者らは、六価クロム化成皮膜の保護レベルに近づけるために更なる改良が望まれていると考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,294,362号明細書(Tanaka等)
【特許文献2】米国特許第6,375,726号明細書(Matzdorf等)
【特許文献3】米国特許第6,521,029号明細書(Matzdorf等)
【特許文献4】米国特許第6,669,764号明細書(Matzdorf等)
【特許文献5】米国特許第7,294,211号明細書(Sturgill等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、毒性六価クロムを含有しないが金属表面に改善された腐食防止性を付与する、改善された化成皮膜処理組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、及び鋼に改善された腐食防止性を付与する、改善された化成皮膜処理組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の更に別の目的は、金属基材を処理するための安定な溶液を含有している化成皮膜処理組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、一般に本発明は、水性化成皮膜処理組成物であって、
a)アルミニウムイオン源と、
b)フルオロ化合物と、
c)少なくとも1つのpH調整剤と、
d)タングステン酸イオン及び三価クロムイオンからなる群から選択されるVIB族金属イオン源と、
e)任意的に保存剤と、
を含む水性化成皮膜処理組成物に関する。
【0014】
また本発明は、本発明の水性化成皮膜処理組成物を用いてアルミニウム基材及びアルミニウム合金基材などの金属基材を処理し、該基材上に改善された化成皮膜を提供する方法に関する。1つの実施形態では、本発明の水性化成皮膜処理組成物は、リン及び/又はクロムを実質的に含有しない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1つの実施形態では、一般に本発明は、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、及び鋼などの金属を前処理するための酸性水性化成皮膜処理と、かかる金属基材の耐食性を改善するためのプロセスとに関する。
【0016】
1つの実施形態では、一般に本発明は、アルミニウム基材、及びアルミニウム合金基材を前処理するための組成物と、周囲温度から最高約200F°の温度にてアルミニウム基材及びアルミニウム合金基材を前処理するプロセスに関する。典型的にはこれら前処理組成物は、約0.5〜約6、好ましくは約3〜5のpHを有する酸性水溶液を含む。
【0017】
本発明の前処理組成物は、典型的には、
a)アルミニウムイオン源と、
b)フルオロ化合物と、
c)少なくとも1つのpH調整剤と、
d)タングステン酸イオン及び三価クロムイオンからなる群から選択される少なくとも1つのVIB族金属イオン源と、
e)任意的に保存剤と、
を含む水溶液である。
【0018】
1つの好ましい実施形態では、アルミニウムイオン源は、ヘキサフルオロアルミン酸アンモニウムである。典型的にはヘキサフルオロアルミン酸アンモニウムが好ましいが、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムなどのヘキサフルオロアルミン酸アルカリを本発明の実施において用いてもよい。別の好ましい実施形態では、アルミニウムイオン源は、ヘキサフルオロチタン酸と併用される純アルミニウム粉末であり、併用することでヘキサフルオロチタン酸の酸性度によりアルミニウム粉末が溶液に溶解する。
【0019】
本発明の実施において有用なフルオロ化合物としては、例えばヘキサフルオロアルミン酸アンモニウム及びヘキサフルオロチタン酸が挙げられる。他の類似のフルオロ化合物を用いてもよい。ヘキサフルオロチタン酸のカリウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩がこの用途で特に有効に機能し、アンモニウム塩の性能が最良である。他のフルオロ錯体としては、限定されないが、フルオロアルミン酸(例えばAlF−3又はAlF−1)、フルオロホウ酸(例えばBF−1)、フルオロ没食子酸(例えばGaF−1)、フルオロインジウム酸(例えばInF−1)、フルオロゲルマニウム酸(例えばGeF−2)、フルオロスズ酸(例えばSnF−2)、フルオロリン酸(例えばPF−1)、フルオロヒ酸(例えばAsF−1)、フルオロアンチモン酸(例えばSbF−1)、フルオロビスマス酸(例えばBiF−1)、フルオロ硫黄酸(例えばSF−2)、フルオロセレン酸(例えばSeF−2)、フルオロタウリン酸(例えばTeF−2又はTeOF−1)、フルオロ銅酸(例えばCuF−1又はCuF−2)、フルオロ銀酸(例えばAgF−1又はAgF−2)、フルオロ亜鉛酸(例えばZnF−2)、フルオロハフニウム酸(例えばHfF−2)、フルオロバナジン酸(例えばVF−2)、フルオロニオブ酸(例えばNbF−2)、フルオロタンタル酸(例えばTaF−2)、フルオロモリブデン酸(例えばMoF−3)、フルオロタングステン酸(例えばWF−1)、フルオロイットリウム酸(例えばYF−3)、フルオロランタン酸(例えばLaF−3)、フルオロセリウム酸(例えばCeF−3又はCeF−2)、フルオロマンガン酸(例えばMnF−2)、フルオロ鉄酸(例えばFeF−3)、フルオロニッケル酸(例えばNiF−2)が挙げられ、フルオロコバルト酸(例えばCoF−2)も好適なフッ化物源であり、フルオロアルミン酸が好ましい。これらアニオンの水溶性カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、又はアンモニウム塩が典型的であり、これらアニオンのアンモニウム塩が好ましい。本発明の組成物で使用するための特に好ましい化合物の1つは、ヘキサフルオロアルミン酸アンモニウムである。
【0020】
1以上の有機酸、無機酸、フルオロ錯体、アルカリ金属塩、アンモニア、又はこれらの塩を挙げることができるpH調整剤を添加して、pHを調整してもよい。これらの添加剤の例としては、限定されないが、酢酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、プロピオン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、フルオホウ酸、硫酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、メタンジスルホン酸、硝酸、ケイ酸、ヒドロシリコフルオロ酸、フッ化水素酸、リン酸、フルオロジルコン酸、フルオロチタン酸、水酸化ナトリウム、アンモニア、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及びこれらの1以上の組み合わせが挙げられる。他の化合物も当業者に知られている。本発明の1つの好ましい実施形態ではpH調整剤としては、有機酸、重炭酸アンモニウム、及び/又は炭酸アンモニウムが挙げられる。好ましい実施形態では有機酸は、安息香酸である。
【0021】
また本発明の組成物としては、タングステン酸化合物及び三価クロム化合物からなる群から選択される少なくとも1つのVIB族金属化合物が挙げられる。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、VIB族金属化合物は、クロム、特に三価クロムであり、これは任意の水溶性三価クロム化合物として、好ましくは三価クロム塩として溶液に添加してもよい。本発明の組成物で有用な好ましい三価クロム化合物は、塩基性硫酸クロム(III)(クロメタン)を含み、これは式CrOHSO・NaSOxHOを有し、約17.2%のクロムを含有している。本発明の実施において有用であり得る他の三価クロム化合物としては、例えば米国特許第4,062,737号明細書(Barclay等)に記載されているチオシアン酸クロム(III)錯体;米国特許第4,612,091号明細書(Tardy等)に記載されている低pH溶液中の三価クロムイオン;米国特許第4,804,446号明細書(Lashmore等)に記載されている三価クロム塩化塩;及び米国特許第4,460,438号明細書(Benaben等)に記載されているクロム錯体が挙げられ、これらの主題を参照することにより全体を本願に援用する。本発明の実施において有用である他の特定の三価クロム塩としては、ギ酸クロム(III)、酢酸クロム(III)、臭化クロム(III)六水和物、塩化クロム(III)六水和物、ヨウ化クロム(III)水和物、硝酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、オルトリン酸クロム(III)、硫酸クロム(III)、塩化ヘキサミンクロム(III)、フルオロケイ酸ヘキサウレアクロム(III)、フッ化クロム(III)四水和物、ヨウ化クロム(III)九水素化物、硝酸クロム(III)六アンモニア化物、シュウ酸カリウムクロム(III)、これらの各種当該技術分野において既知である均等物、及びこれらの1以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
別の実施形態ではVIB族金属は、タングステンである。典型的にはタングステンは、タングステン酸イオン源として組成物に添加される。タングステン酸イオン源は、全てのタングステン酸塩を含むが、最も具体的には全てのオルトタングステン酸塩、メタタングステン酸塩、パラタングステン酸塩、ポリタングステン酸塩、ヘテロポリタングステン酸塩、イソポリタングステン酸塩、ペルオキシタングステン酸塩、及びこれらの組み合わせである。メタタングステン酸塩又はパラタングステン酸塩が好ましい。好適なタングステン酸イオン源としては、例えばメタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、及びタングステン酸アンモニウムなどの、タングステン酸ナトリウム塩、タングステン酸カリウム塩、タングステン酸リチウム塩、タングステン酸カルシウム塩、タングステン酸セリウム塩、タングステン酸バリウム塩、タングステン酸マグネシウム塩、タングステン酸ストロンチウム塩、タングステン酸塩、及びタングステン酸アンモニウム塩が挙げられる。
【0024】
本発明に従って調製される幾つかの配合に含まれることが有益であり得る別の任意成分は、保存剤である。好ましい保存剤の1つは、商品名Surcide P(Surety Laboratories,Cranford,NJから入手可能)として販売されているヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンである。他の類似の保存剤も当業者に知られている。
【0025】
本発明に従って調製されるアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、及び鋼などの金属基材の腐食防止性を改善するために決定された第1の配合(配合A)は、
a)有機酸、
b)重炭酸アンモニウム、
c)保存剤、
d)ヘキサフルオロアルミン酸アンモニウム、
e)メタンスルホン酸、
f)三価クロム化合物、及び
g)残部:水
を含む。
【0026】
表1は、本発明に従って調製される配合Aの好ましい組成の1つを記載する。
【表1】

【0027】
表2は、本発明に従って調製される配合A溶液のための各種代替使用濃度例を記載する。
【表2】

【0028】
本発明に従って調製されるアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、マグネシウム合金、及び鋼などの金属基材の腐食防止性を改善するために決定された別の配合(配合B)は、
a)ヘキサフルオロチタン酸(50%)、
b)純アルミニウム粉末、
c)重炭酸アンモニウム、
d)メタタングステン酸アンモニウム、及び
e)残部:水
を含む。
【0029】
表3は、本発明に従って調製される配合Bの好ましい組成の1つを記載する。
【表3】

【0030】
最後に表4は、本発明に従って調製される配合B溶液のための各種代替使用濃度例を記載する。
【表4】

【0031】
本発明のプロセスで用いるための金属基材は、少なくとも金属表面を有する基材のいずれであってもよい。有用な基材の例としては、鉄、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銅、スズ、又はこれら金属のいずれかを含有している合金で形成される表面を有する基材が挙げられる。鋼シート基材、アルミニウム基材又はアルミニウム合金基材が特に好ましい。
【0032】
鋼シート基材の例としては、溶融亜鉛めっき鋼シート、電気亜鉛めっき鋼シート、鉄−亜鉛合金めっき鋼シート、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼シート、アルミニウム−亜鉛めっき鋼シートなどが挙げられる。クロメート処理、リン酸亜鉛処理、又は複合酸化物膜処理などの化成皮膜処理を施されている亜鉛系金属めっき鋼シートも鋼シート基材として有用である。更に鋼シートアセンブリを鋼シート基材として使用してもよい。
【0033】
本発明の皮膜組成物は、浸漬コーティング、シャワーコーティング、噴霧コーティング、ロールコーティング、及び電着コーティングなどの既知のあらゆるプロセスによって金属基材に塗布されてもよい。接触時間は約30秒間〜約5分間であるが、溶液の濃度が低い場合、又は溶液の温度が比較的低い場合など、より長い接触が必要とされる場合もある。水溶液の温度は、通常100℃未満であり、例えば15℃〜75℃、より好ましくは約周囲温度(例えば約25℃)である。
【0034】
一般に、基材が約60℃〜250℃の最高温度に達する条件下で加熱することにより、組成物を約2秒間〜約30分間乾燥させることが好ましい。
【0035】
三価クロム前処理を実施する前に、当該技術分野において周知のように洗浄及び/又は活性化により基材を処理してもよい。次いで、基材表面上に化成皮膜層を形成するのに十分な時間本発明の組成物と基材とを接触させ、次いで基材を乾燥させてもよい。
【0036】
また本発明の組成物を用いて金属でコーティングされた基材の接着性及び耐食性を改善することができ、これは例えば米国特許第6,511,532号明細書、同第6,527,841号明細書、及び同第6,663,700号明細書(いずれもMatzdorf等)に示唆されており、これらの主題を参照することにより全体を本願に援用する。典型的にはこれら「後処理」皮膜は、最初の皮膜の形成後に被処理金属と接触するため、通常後処理は、金属皮膜中の幾つかの孔を通して接触する可能性を除いて、下層の基材とは直接接触しない。
【0037】
本発明の特定の実施形態を参照し本発明について記載したが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく多くの変更、修正、及び交換を行い得ることは明らかである。したがって本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲内のかかる変更、修正、及び交換を全て包含することを意図する。本明細書に引用される全ての特許出願、特許、及び他の刊行物は全文を参照することにより援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性化成皮膜処理組成物であって、
a)アルミニウムイオン源と、
b)フルオロ化合物と、
c)少なくとも1つのpH調整剤と、
d)タングステン酸イオン及び三価クロムイオンからなる群から選択される少なくとも1つのVIB族金属イオン源と、
e)任意的に保存剤と、
を含む水性化成皮膜処理組成物。
【請求項2】
化成皮膜処理組成物がクロム又はリンを含有しない請求項1に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項3】
フルオロ化合物がヘキサフルオロチタン酸を含み、アルミニウムイオン源がアルミニウム金属を含み、VIB族金属イオンがタングステン酸イオン源を含む請求項1に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項4】
1以上のpH調整剤が重炭酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムを含む請求項1に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項5】
VIB族金属イオンがオルトタングステン酸イオン、メタタングステン酸イオン、パラタングステン酸イオン、ポリタングステン酸イオン、ヘテロポリタングステン酸イオン、イソポリタングステン酸イオン、ペルオキシタングステン酸イオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項6】
VIB族金属イオンが、タングステン酸ナトリウム塩、タングステン酸カリウム塩、タングステン酸リチウム塩、タングステン酸カルシウム塩、タングステン酸セリウム塩、タングステン酸バリウム塩、タングステン酸マグネシウム塩、タングステン酸ストロンチウム塩、タングステン酸塩、及びタングステン酸アンモニウム塩からなる群から選択される請求項5に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項7】
VIB族金属イオンがメタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、及びタングステン酸アンモニウムからなる群から選択される請求項6に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項8】
VIB族金属イオンがメタタングステン酸アンモニウムを含む請求項7に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項9】
アンモニウムイオン源及びフルオロイオン源がヘキサフルオロアルミン酸アンモニウムを含み、
組成物が保存剤を含有し、
VIB族金属イオンが三価クロムイオン源を含む請求項1に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項10】
1以上のpH調整剤が有機酸、重炭酸アンモニウム、及びスルホン酸メタンを含む請求項9に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項11】
有機酸が安息香酸を含む請求項10に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項12】
保存剤がヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンを含む請求項9に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項13】
三価クロムイオン源が塩基性硫酸クロムを含む請求項9に記載の水性化成皮膜処理組成物。
【請求項14】
金属基材を処理して該金属基材上に化成皮膜を形成する方法であって、
a)
i)アルミニウムイオン源と、
ii)フルオロ化合物と、
iii)少なくとも1つのpH調整剤と、
iv)タングステン酸イオン及び三価クロムイオンからなる群から選択される少なくとも1つのVIB族金属イオン源と、
v)任意的に保存剤と、
を含む組成物を前記金属基材と接触させる工程と、
b)処理された金属表面をその後乾燥させる工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
金属基材がアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、鋼、及びこれらの1以上の組み合わせからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水性化成皮膜処理組成物がクロム又はリンを含有しない請求項14に記載の方法。
【請求項17】
フルオロ化合物がヘキサフルオロチタン酸を含み、
アルミニウムイオン源がアルミニウム金属を含み、
VIB族金属イオンがタングステンイオン源を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1以上のpH調整剤が重炭酸アンモニウム又は炭酸アンモニウムを含む請求項14に記載の方法。
【請求項19】
VIB族金属イオンがオルトタングステン酸イオン、メタタングステン酸イオン、パラタングステン酸イオン、ポリタングステン酸イオン、ヘテロポリタングステン酸イオン、イソポリタングステン酸イオン、ペルオキシタングステン酸イオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
VIB族金属イオンが、タングステン酸ナトリウム塩、タングステン酸カリウム塩、タングステン酸リチウム塩、タングステン酸カルシウム塩、タングステン酸セリウム塩、タングステン酸バリウム塩、タングステン酸マグネシウム塩、タングステン酸ストロンチウム塩、タングステン酸塩、及びタングステン酸アンモニウム塩からなる群から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
VIB族金属イオンがメタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、タングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、及びタングステン酸アンモニウムからなる群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
VIB族金属イオンがメタタングステン酸アンモニウムを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アンモニウムイオン源及びフルオロイオン源がヘキサフルオロアルミン酸アンモニウムを含み、
組成物が保存剤を含有し、
VIB族金属イオンが三価クロムイオン源を含む請求項14に記載の方法。
【請求項24】
1以上のpH調整剤が有機酸、重炭酸アンモニウム、及びスルホン酸メタンを含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
有機酸が安息香酸を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
保存剤がヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンを含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
三価クロムイオン源が塩基性硫酸クロムを含む請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2011−515587(P2011−515587A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501862(P2011−501862)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/034457
【国際公開番号】WO2009/120431
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(591069732)マクダーミッド インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
【Fターム(参考)】