説明

アルミニウム含有量判定器及び有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法

【課題】例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備において、簡易迅速に部材中のアルミニウム含有量判定器及び有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム含有量判定器10は、アルミニウムを含む金属廃棄物に有機ハロゲン化物が含有する際に、アルミニウム含有量を計測する判定器であって、金属廃棄物試料を内筒内に投入する測定筒11と、該測定筒11内にアルカリ剤を注入するアルカリ注入筒12と、発生した水素ガスを捕集するガス捕集筒13と、前記測定筒11とアルカリ注入筒12とガス捕集筒13とを連通可能に連結するバルブV1〜V4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する際に、洗浄効率を向上させるために、アルミニウム含有量の判定を行うアルミニウム含有量判定器及び有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年有機ハロゲン化物であるPCBの汚染物を完全処理することが提案され、PCB処理設備が稼動している。
PCB汚染された各種の電気機器のなかでも、蛍光灯安定器、水銀灯安定器は、そのサイズが例えば5×5×30cm等と柱状トランス等に較べて比較的小さく、またPCBは液体状態ではなく、絶縁紙等に含浸されているため、無害化処理を効率よく行うことが難しく、処理されずにそのままの状態で保管されている。
【0003】
このため、本出願人は先に蛍光灯安定器を処理する方法として、安定器中からコンデンサを取り出し、各部材毎に個別に処理することを提案した(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−94013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各部材毎に処理する際に、洗浄処理工程があるが、蛍光灯安定器に含まれるアルミニウムの含有量が高いと、洗浄処理を効率良く行うことができない、という問題がある。
【0006】
これは、アルミニウムは箔状態の場合には極めて薄く、その他の金属(例えば鉄)にへばりつく結果、例えばPCBをその内部に含有することとなるので、洗浄効果が発揮できず、洗浄の卒業判定(PCB含有量:0.01mg/Kg)基準以下とするには、洗浄操作を繰り返す必要がある。
【0007】
従来においては、部材中のアルミニウムの含有量の計測は、JIS法(M8220-1955)によっているが、この方法は時間を要し、しかもPCBの処理設備内において迅速に対応できないという、問題がある。
【0008】
ここで、実験室でのアルミニウムの測定方法の一例を示す。
1.「酸溶解―元素分析法」
先ず、被処理物を適量(10〜100g程度)、分析試料としてビーカに採取秤量した後、希塩酸を加えて部材に同伴するアルミニウムを溶解する。
次に、アルミニウムが完全に溶解した後、メスフラスコに液をろ過しながら移しいれ、純水で定容し分析検液とする。
その後、分析検液中のアルミニウム濃度を原子吸光分析装置(JIS G1257)やプラズマ発光分析装置(JIS G1258)で求める。
そして、求めたアルミニウム濃度から分析試料重量ベースの含有濃度として計算で求める。
【0009】
そこで、洗浄効果を向上させるために、部材中に含まれるアルミニウムの含有量を迅速に判定する機器の出現が望まれていた。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備において、簡易迅速に部材中のアルミニウム含有量判定器及び有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、アルミニウムを含む金属廃棄物に有機ハロゲン化物が含有する際に、アルミニウム含有量を計測する判定器であって、金属廃棄物試料を内筒内に投入する測定筒と、該測定筒内にアルカリ剤を注入するアルカリ注入筒と、測定筒とアルカリ注入筒とを連通可能に連結するバルブとを具備することを特徴とするアルミニウム含有量判定器にある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、発生した水素ガスを捕集するガス捕集筒を具備することを特徴とするアルミニウム含有量判定器にある。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記アルカリ剤が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とするアルミニウム含有量判定器にある。
【0014】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、金属廃棄物試料を内筒内に投入する際、アセトン又はイソプロピルアルコールを混入してなることを特徴とするアルミニウム含有量判定器にある。
【0015】
第5の発明は、有機ハロゲン化物を含有する部材を破砕する破砕工程と、破砕した部材を粗洗浄する粗洗浄工程と、第1乃至4のいずれか一つの発明のアルミニウム含有量判定器を用いてアルミニウム含有量を判定するアルミニウム含有量判定工程と、アルミニウム含有量が所定値以下の場合に、アルカリ洗浄するアルカリ洗浄工程とを含むことを特徴とする有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備において、簡易迅速に部材中のアルミニウム含有量を判定することができ、しかも有害物質汚染部材の効率的な洗浄・無害化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0018】
本発明による実施例に係るアルミニウム含有量判定器について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るアルミニウム含有量判定器の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るアルミニウム含有量判定器10は、アルミニウムを含む金属廃棄物に有機ハロゲン化物が含有する際に、アルミニウム含有量を計測する判定器であって、金属廃棄物試料を内筒内に投入する測定筒11と、該測定筒11内にアルカリ剤を注入するアルカリ注入筒12と、発生した水素ガスを捕集するガス捕集筒13と、前記測定筒11とアルカリ注入筒12とガス捕集筒13とを連通可能に連結するバルブV1〜V4とを具備するものである。
【0019】
ここで、前記アルカリ注入筒12に供給するアルカリ剤としては、アルミニウムと反応して水素が効率的に発生する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等を用いるのが好ましい。例えば10〜20%のNaOHかKOHを使用するのが好ましい。
【0020】
また、有機ハロゲン化物(PCB)や絶縁油との反応妨害対策として、溶解液にアセトンやIPA(イソプロピルアルコール)の添加剤を添加するのがより好ましい。
【0021】
また、反応促進手段として、遥動操作や超音波振動操作を行うのが好ましい。
【0022】
このアルミニウム含有量判定器10を用いて、アルミニウムの含有量の計測を行う工程を図2乃至4を参照しつつ説明する。
【0023】
<工程1>
先ず、電子天秤でアルミニウムを含有した鉄の試料を計量する。
次に、計量した試料を測定筒11内の内筒11a内に入れる。
次に、10%NaOHを、アルカリ注入筒12に入れる。終了時の各筒容積を読取り、集計する。
【0024】
<工程2>
その後、アルカリ注入筒12の10%NaOHを、弁V1〜V3を操作して、測定筒11に移送する。
アルミニウムとNaOHとの反応で水素ガスの泡が測定筒11内で発生する。この水素の発生に伴い、測定筒11内のシリンジ11bが移動する。
【0025】
アルミニウムの含有量にもよるが、約15〜60分程度で水素の発生は完了する。
なお、測定筒11内で発生した水素ガスが測定筒11の容量よりも多い場合には、ガス捕集筒13に弁V1、V4を切り替えて捕集する。
【0026】
<工程3>
終了後の各筒容積を読取り、集計し計算する。ここで、測定筒11内での水素ガス量をX1、ガス捕集筒13内での水素ガス量をX2とすると、水素ガス量は両者の総和となる。
【0027】
ここで、アルミニウム1mgで1.2447mLの水素が生成される(図5の水素ガス量とアルミニウム量との関係図参照)。
【0028】
ここで、測定筒11内の初期の容量が10mLであり、終了後の容量が70mLであるとする。水酸化ナトリウムを入れたアルカリ注入筒12の初期の容量が50mLであり、終了後の容量が0mLであるとする。
ガス捕集筒13の初期の容量が0mLであり、終了後の容量が30mLであるとする。
このような場合には、終了後の総容量が100mLであり、初期の総容量が60mLであるので、100−60=40mLとなる。
よって、アルミニウム量は32.1mgとなり、アルミの比率は0.0624となる。
【0029】
ここで、アルカリ洗浄に移行することができる被洗浄部材中のアルミニウム含有量の制限値を0.06%以下とすると、基準以上のアルミニウムが含有されているので、粗洗浄を行う必要があると判定することができる。
また、制限値(0.06%)以下の場合には、引き続きアルカリ洗浄工程を行うことができることとなる。
【0030】
図6に有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法であるPCBを含む蛍光灯安定器の洗浄処理のフローチャートについて説明する。
図6に示すように、有機ハロゲン化物を含有する部材を破砕する破砕工程(S11)と、破砕した部材を粗洗浄する粗洗浄工程(S12)と、前記アルミニウム含有量判定器を用いてアルミニウム含有量を判定するアルミニウム含有量判定工程(S13)と、アルミニウム含有量が所定値以下(例えば0.06%以下:OK)の場合に、アルカリ洗浄するアルカリ洗浄工程(S14)とを含むものである。
【0031】
また、アルミニウム含有量が所定値以上(例えば0.06%以上:NO)の場合に、再度粗洗浄工程(S12)で洗浄を行うか、別に処理する別処理工程(S20)として、再度アルミニウム含有量判定工程(S13)を行うようにする。
【0032】
これにより、アルカリ洗浄工程S14及び仕上げ洗浄工程S15での洗浄効率の向上を図ることができると共に、アルカリ剤、仕上げ洗浄剤の使用量の削減を図ることができる。
【0033】
このように、本発明に係る計測装置では、構成が簡易であると共に、コンパクトであるので、現場においても迅速計測が可能となる。しかも安価に製造することができる。
【0034】
また、計測時間も約30分間前後で測定が完了するので、迅速計測が可能となる。
測定結果もアルカリ剤とアルミニウムとの反応は直線性があり、計測結果の精度がある。従来の手分析の精度と同等である。
【0035】
また、測定操作時の安全性があり、現場でも専任の分析担当者でなくとも計測が容易であるので、安全で現場使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明によれば、例えばPCB等の有機ハロゲン化物質を無害化処理する処理設備において、簡易迅速に部材中のアルミニウムの含有量を判定することができ、しかも有害物質汚染部材の効率的な洗浄・無害化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施例に係るアルミニウム含有量判定器の概略図である。
【図2】アルミニウム含有量判定工程(工程1)の概略図である。
【図3】アルミニウム含有量判定工程(工程2)の概略図である。
【図4】アルミニウム含有量判定工程(工程3)の概略図である。
【図5】水素ガス量とアルミニウム量との関係図である。
【図6】PCBを含む蛍光灯安定器の洗浄処理方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
10 アルミニウム含有量判定器
11 測定筒
12 アルカリ注入筒
13 ガス捕集筒
1〜V4 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含む金属廃棄物に有機ハロゲン化物が含有する際に、該アルミニウム含有量を計測する判定器であって、
金属廃棄物試料を内筒内に投入する測定筒と、
該測定筒内にアルカリ剤を注入するアルカリ注入筒と、
測定筒とアルカリ注入筒とを連通可能に連結するバルブとを具備することを特徴とするアルミニウム含有量判定器。
【請求項2】
請求項1において、
発生した水素ガスを捕集するガス捕集筒を具備することを特徴とするアルミニウム含有量判定器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記アルカリ剤が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることを特徴とするアルミニウム含有量判定器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
金属廃棄物試料を内筒内に投入する際、アセトン又はイソプロピルアルコールを混入してなることを特徴とするアルミニウム含有量判定器。
【請求項5】
有機ハロゲン化物を含有する部材を破砕する破砕工程と、
破砕した部材を粗洗浄する粗洗浄工程と、
請求項1乃至4のいずれか一つのアルミニウム含有量判定器を用いてアルミニウム含有量を判定するアルミニウム含有量判定工程と、
アルミニウム含有量が所定値以下の場合に、アルカリ洗浄するアルカリ洗浄工程とを含むことを特徴とする有害物質汚染部材の洗浄・無害化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−195855(P2009−195855A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42046(P2008−42046)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】