説明

アルミニウム基材の表面窒化方法

【課題】堆積層の付着を軽減でき、表面粗さの低い窒化層を形成することが可能なアルミニウム基材の表面窒化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】アルミニウム基材Wと充填粉末Pとをバレル槽2に投入し、このバレル槽2内において窒素ガスの存在下でアルミニウム基材Wと充填粉末Pとを加熱しつつ攪拌することでアルミニウム基材Wの表面に窒化物層を形成させるものであって、充填粉末として、研磨剤としてのアルミナ粉末と活性化粉末としてのマグネシウム含有粉末を含むものを使用する。または、充填粉末として、研磨剤としてのアルミナ粉末と活性化粉末としてのマグネシウム粉末とを含むものを使用し、かつ、アルミナ粉末として、粒度の大きいアルミナ粉末と粒度の小さいアルミナ粉末とを混合したものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム基材の表面窒化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用材料として使用されるアルミニウム部材には、耐摩耗性の改善等を目的として表面窒化処理が施されることがある。ここで、一般に、アルミニウムは材料表面に自然酸化皮膜ができるため、鉄鋼材料と比較して窒化処理が困難と言われている。本願発明者らは、効率的にアルミニウム表面の窒化処理を行う方法として、これまでにバレル窒化法の開発を行ってきた(特許文献1参照)。このバレル窒化法は、バレル研磨機のバレル槽のように揺動または回転可能な窒化炉の内部に、処理対象となるアルミニウム基材とともに、研磨剤としてのアルミナ粉末、および活性化粉末としてのアルミニウム−マグネシウム合金粉末を投入し、アルミニウム基材表面の自然酸化皮膜を物理的研磨により除去しつつ窒化を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−7102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなバレル窒化法では、バレル槽に投入するアルミナ粉末およびアルミニウム−マグネシウム合金粉末が材料表面に付着し、厚い堆積層を形成するため、処理後のアルミニウム基材の表面粗さが増大し、形状が変形する。このため、工業分野への応用をいま一歩進めることができない状況であった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、堆積層の付着を軽減でき、表面粗さの低い窒化物層を形成することが可能なアルミニウム基材の表面窒化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の第1のアルミニウム基材の表面窒化方法は、アルミニウム基材と充填粉末とをバレル槽に投入し、前記バレル槽内において窒素ガスの存在下で前記アルミニウム基材と前記充填粉末とを加熱しつつ攪拌することで前記アルミニウム基材の表面に窒化物層を形成させるものであって、前記充填粉末が、研磨剤としてのアルミナ粉末と活性化粉末としてのマグネシウム粉末を含むものである。
【0007】
また、本発明の第2のアルミニウム基材の表面窒化方法は、アルミニウム基材と充填粉末とをバレル槽に投入し、前記バレル槽内において窒素ガスの存在下で前記アルミニウム基材と前記充填粉末とを加熱しつつ攪拌することで前記アルミニウム基材の表面に窒化物層を形成させるものであって、前記充填粉末が、研磨剤としてのアルミナ粉末と活性化粉末としてのマグネシウム含有粉末とを含むものであり、前記アルミナ粉末が、第1のアルミナ粉末と、前記第1のアルミナ粉末よりも粒度の小さい第2のアルミナ粉末とを混合したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、活性化粉末として、従来のアルミニウム−マグネシウム合金粉末に代えてマグネシウム粉末を使用する。
【0009】
ここで、アルミニウム基材の表面に堆積層が形成される原因は、窒化温度(600℃)で溶融したAl−Mg合金粉末(融点462℃)がその周囲のアルミナ粉末の破片を巻き込みつつアルミニウム基材の表面に付着するためであると考えられる。これに対し、融点が処理温度より高い649℃であるマグネシウム粉末は処理温度では溶融せず、しかも活性化材としてはAl−Mg合金粉末と同等の効果を示す。したがって、Al−Mg合金粉末に代えてマグネシウム粉末を使用することにより、窒化物層形成の効率を低下させることなく堆積層の厚さを低減し、処理後のアルミニウム基材の表面粗さを低減することができる。
【0010】
また、アルミナ粉末としては、第1のアルミナ粉末と、この第1のアルミナ粉末よりも粒度の小さい第2のアルミナ粉末とを混合したものを使用する。
【0011】
ここで、アルミニウム基材の表面に形成される窒化物層は、基材表面から内側に向かって成長するとともに、外側に向かっても成長していることが、発明者らにより確認されている。このために、窒化物層はバレル処理中、基材周囲にあるアルミナをどうしても巻き込んでしまう。つまり、処理後の基材表面の粗さは、基材表面上側へ成長した窒化物層(アルミナを巻き込んだ層)に依存しているといえる。ここで、2種類の粒径のアルミナを混合して使用すると、粒径の小さいアルミナは表面エネルギーが高いために粒径の大きいアルミナよりも基材に付着しやすく、また、粒径の大きいアルミナは粒径の小さいアルミナに比べて質量が大きく研磨能力が大きいため、付着した粒径の小さいアルミナを取り除いているのではないかと考えられる。この結果から、適度な粒度のアルミナを2種類混合することで、処理後のアルミニウム基材の表面粗さを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のバレル窒化装置1を正面から見た概略図
【図2】活性化粉末としてAl−50%wtMg合金粉末を用いた場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真
【図3】活性化粉末としてマグネシウム粉末を用いた場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真
【図4】活性化粉末としてAl−50%wtMg合金粉末を用いた場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真
【図5】活性化粉末としてマグネシウム粉末を用いた場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真
【図6】アルミナ粉末として粒度F180の粉末を使用した場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真
【図7】アルミナ粉末として粒度F220の粉末を使用した場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真
【図8】アルミナ粉末として粒度F180の粉末と粒度F220の粉末とを混合して使用した場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真
【図9】アルミナ粉末として粒度F180の粉末を使用した場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真
【図10】アルミナ粉末として粒度F220の粉末を使用した場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真
【図11】アルミナ粉末として粒度F180の粉末と粒度F220の粉末とを混合して使用した場合における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1によって説明する。図1には、本実施形態のバレル窒化装置1を正面から見た概略図を示す。
【0014】
本実施形態のバレル窒化装置1は、一般的なバレル研磨機と同様の機構のものであって、側方から見て正多角形の容器状をなすバレル槽2を備えている。このバレル槽2は両側面にバレル軸3を有し、このバレル軸3が、架台4に設けられた軸受に支持されることで、バレル槽2が架台4に対して回転または揺動可能に支持されている。一対のバレル軸3のうち一方には、駆動源であるモータ5の駆動力が、駆動プーリ6、ベルト7および受動プーリ8を介して伝達され、これによりバレル槽2が回転または揺動される。
【0015】
このバレル槽2には、ガスボンベ9から配管10を介して窒素ガスが導入されるようになっている。バレル槽2への窒素ガスの流量は配管10に設けられたマスフローコントローラ(図示せず)によって調整可能とされる。また、バレル槽2の周囲には、加熱のためのヒータ11が配されている。このヒータ11には温度調節器12が接続され、この温度調節器12には、バレル槽2の内部温度を計測するための熱電対が接続されている。これにより、熱電対による内部温度の測定値に基づいて温度調節器12がヒータ11の出力を調整するようにされている。
【0016】
このバレル窒化装置1による窒化処理の対象となるアルミニウム基材Wは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるブロック状(塊状)のものである。ここで、アルミニウム合金とは、例えば、アルミニウムを主成分とし、銅、マンガン、亜鉛、シリコン、マグネシウム等が添加されたものを含み、熱処理型合金も含む。
【0017】
このバレル窒化装置1によってアルミニウム基材Wの窒化処理を行う際には、まず、バレル槽2の内部にアルミニウム基材Wと充填粉末Pとを投入する。充填粉末Pは、研磨剤としてのアルミナ粉末、および活性化粉末としてのマグネシウム粉末を含む。
【0018】
次いで、バレル槽2内に窒素ガスを供給してバレル槽2内を窒素雰囲気下とし、ヒータ11によってバレル槽2内を所定の窒化温度まで加熱する。窒化温度は、通常600℃程度である。この状態で、モータ5を駆動させてバレル槽2を回転または揺動させる。すると、バレル槽2内でアルミニウム基材Wの表面に充填粉末Pが衝突し、この衝突によりアルミニウム基材Wの表面に窒化物層(AlN層)が形成される。
【0019】
窒化物層(AlN層)形成のメカニズムは、以下のようであると考えられている。
1)アルミニウム基材Wの表面に充填粉末Pが衝突することにより、アルミニウム基材Wの表面に形成されている自然酸化皮膜が研磨・除去される。
2)自然酸化皮膜が除去されたアルミニウム基材Wの表面に、溶融した活性化粉末がアルミナ粉末の破片を巻き込みつつ付着することにより、アルミニウム基材Wの表面に堆積層(Al+AlN+Al)が形成される。
3)堆積層の形成に伴い、活性化粉末に含まれるMgがアルミニウム基材Wの内部へと侵入・拡散し、アルミニウム基材Wの表面にMg拡散層を形成する。
4)堆積層に含まれるAlNからNがアルミニウム基材Wに供給される。供給されたNがAlと反応して窒化物層がアルミニウム基材Wの表面に形成される。このとき、Mgの還元作用によりアルミニウム基材Wの表面が化学的に活性化され、窒化物層の形成が促進される。
5)形成された窒化物層中をNが拡散し、窒化物層と母材との界面でAlと反応することによって、窒化物層が成長する。
【0020】
さて、従来のバレル窒化法では、充填粉末(アルミナ粉末およびアルミニウム−マグネシウム合金粉末)が材料表面に付着し、厚い堆積層を形成するため、処理後のアルミニウム基材の表面粗さが増大し、形状が変形する、という問題があった。この問題を解決するため、活性化粉末として、従来のアルミニウム−マグネシウム合金粉末に代えてマグネシウム粉末を使用することが好ましい。
【0021】
ここで、堆積層が基材に付着する原因は、窒化温度(600℃)で溶融したAl−Mg合金粉末(融点462℃)がその周囲のアルミナ粉末の破片を巻き込みつつアルミニウム基材Wの表面に付着するためであると考えられる。これに対し、融点が処理温度より高い649℃であるマグネシウム粉末は処理温度では溶融せず、しかも活性化材としてはAl−Mg合金粉末と同等の効果を示す。したがって、Al−Mg合金粉末に代えてマグネシウム粉末を使用することにより、窒化物層形成の効率を低下させることなく堆積層の厚さを低減し、処理後のアルミニウム基材Wの表面粗さを低減することができる。
【0022】
また、アルミナ粉末としては、粒度の大きなアルミナ粉末と粒度の小さなアルミナ粉末とを含むものを使用することが好ましい。
【0023】
ここで、アルミニウム基材Wの表面に形成される窒化物層は、基材表面から内側に向かって成長するとともに、外側に向かっても成長していることが、発明者らにより確認されている。このために、窒化物層はバレル処理中、基材周囲にあるアルミナをどうしても巻き込んでしまう。つまり、堆積層のない処理後の基材表面の粗さは、基材表面上側へ成長した窒化物層(アルミナを巻き込んだ層)に依存しているといえる。ここで、2種類の粒度のアルミナを混合して使用すると、粒径の小さいアルミナは表面エネルギーが高いために粒径の大きいアルミナよりも基材に付着しやすく、また、粒径の大きいアルミナは粒径の小さいアルミナに比べて質量が大きく研磨能力が大きいために、付着した粒径の小さいアルミナを取り除いているのではないかと考えられる。この結果から、適度な粒度のアルミナを2種類混合することで、窒化処理後のアルミニウム基材Wの表面粗さを低減することが可能である。
【0024】
なお、本実施形態では、研磨剤として2種類の粒度のアルミナ粉末を混合したものを、また活性化粉末としてマグネシウム粉末をそれぞれ使用したが、研磨剤としては1種類の粒度のアルミナ粉末を使用し、活性化粉末としてマグネシウム粉末を使用して窒化処理を行っても構わない。また、研磨剤としては2種類の粒度のアルミナ粉末を混合したものを使用し、活性化粉末としてはAl−Mg合金粉末を使用して窒化処理を行っても構わない。
【実施例】
【0025】
〔Mg粉末とAl−Mg合金粉末とを比較する実施例群〕
1.試験方法
<実施例1>
1)材料
アルミニウム基材としては、工業用純アルミニウムA1070を直径15mm、厚さ6mmの円柱状に加工したものを用いた。
充填粉末としては、研磨剤としてのアルミナ粉末200gと活性化粉末としてのマグネシウム粉末5gとを混合したものを用いた。アルミナ粉末としては、JIS R6001−1998に規定される粒度F180のものを使用した。
2)窒化処理
バレル窒化装置としては、上記実施形態に記載したものと同等の構成のものであって、側面から見て正八角形状のバレル槽を備えるものを使用した。このバレル窒化装置におけるバレル槽の内部に、上記1)で記載したアルミニウム基材と充填粉末とを投入した。
次いで、バレル槽2内を数Paまで減圧した後、このバレル槽内に窒素ガスを供給した。バレル槽内の窒素ガス圧が大気圧以上になったら、マスフローコントローラで窒素ガス流量を1500cc/minに調整し、バレル槽内を大気開放にした。次いで、ヒータの電源を入れるとともに、モータを駆動させてバレル槽を揺動させ、昇温時間1時間でバレル槽内を窒化温度600℃(ヒータ設定温度600℃:槽内温度595±5℃)まで昇温した。昇温後、バレル槽の揺動を12時間継続して窒化処理を行った。窒化処理後、自然冷却で槽内を室温まで冷却した。
【0026】
<比較例1>
活性化粉末として、マグネシウム粉末に代えてAl−50%wtMg合金粉末5gを使用した他は、実施例1と同様にして試験を行った。
【0027】
2.光学顕微鏡による試料観察
窒化処理後のアルミニウム基材の断面を、Nikon社製 POTIPHOT−100、およびOMRON社製 VC7700 3D DIGITAL FINE SCOPEにより観察した。
【0028】
3.表面粗さ測定
窒化処理後のアルミニウム基材の表面粗さを、Mitutoyo社製 SURF TEST SV−400により測定した。
【0029】
4.結果
図2および図3には、活性化粉末としてAl−50%wtMg合金粉末を用いた場合(比較例1)、および活性化粉末としてマグネシウム粉末を用いた場合(実施例1)における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真をそれぞれ示した。
また、図4および図5には、活性化粉末としてAl−50%wtMg合金粉末を用いた場合(比較例1)、および活性化粉末としてマグネシウム粉末を用いた場合(実施例1)における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真をそれぞれ示した。
【0030】
図2〜図5より分かるように、活性化粉末としてAl−50%wtMg合金粉末を用いた場合と比較して、活性化粉末としてマグネシウム粉末を用いた場合には堆積層の厚さが大幅に減少していた。
【0031】
〔アルミナ粉末の粒度を検討する実施例群〕
1.試験方法
<実施例2>
1)材料
アルミニウム基材としては、工業用純アルミニウムA1070を直径15mm、厚さ6mmの円柱状に加工したものを用いた。
充填粉末としては、研磨剤としてのアルミナ粉末200gと活性化粉末としてのマグネシウム粉末5gとを混合したものを用いた。アルミナ粉末としては、JIS R6001−1998に規定される粒度F180の粉末と粒度F220の粉末とを1:1で混合したものを使用した。
2)窒化処理方法
バレル窒化装置としては、上記実施形態に記載したものと同等の構成のものを使用した。このバレル窒化装置におけるバレル槽の内部に、上記1)で記載したアルミニウム基材と充填粉末とを投入した。
次いで、バレル槽2内を数Paまで減圧した後、このバレル槽内に窒素ガスを供給した。バレル槽内の窒素ガス圧が大気圧以上になったら、マスフローコントローラで窒素ガス流量を1500cc/minに調整し、バレル槽内を大気開放にした。次いで、ヒータの電源を入れるとともに、モータを駆動させてバレル槽を揺動させ、昇温時間1時間でバレル槽内を窒化温度600℃(ヒータ設定温度600℃:槽内温度595±5℃)まで昇温した。昇温後、バレル槽の揺動を12時間継続して窒化処理を行った。窒化処理後、自然冷却で槽内を室温まで冷却した。
【0032】
<比較例2−1>
アルミナ粉末として、実施例2の混合粉末に代えて、JIS R6001−1998に規定される粒度F180の粉末200gを用いた。その他は、実施例2と同様にして、試験を行った。
【0033】
<比較例2−2>
アルミナ粉末として、実施例2の混合粉末に代えて、JIS R6001−1998に規定される粒度F220の粉末200gを用いた。その他は、実施例2と同様にして、試験を行った。
【0034】
2.光学顕微鏡による試料観察
窒化処理後のアルミニウム基材の断面を、Nikon社製 POTIPHOT−100、およびOMRON社製 VC7700 3D DIGITAL FINE SCOPEにより観察した。
【0035】
3.表面粗さ測定
窒化処理後のアルミニウム基材の表面粗さを、Mitutoyo社製 SURF TEST SV−400により測定した。
【0036】
4.結果
図6、図7、図8には、アルミナ粉末として粒度F180の粉末を使用した場合(比較例2−1)、アルミナ粉末として粒度F220の粉末を使用した場合(比較例2−2)、およびアルミナ粉末として粒度F180の粉末と粒度F220の粉末とを混合して使用した場合(実施例2)における、窒化処理後のアルミニウム基材の写真をそれぞれ示した。
また、図9、図10、図11には、アルミナ粉末として粒度F180の粉末を使用した場合(比較例2−1)、アルミナ粉末として粒度F220の粉末を使用した場合(比較例2−2)、およびアルミナ粉末として粒度F180の粉末と粒度F220の粉末とを混合して使用した場合(実施例2)における、窒化処理後のアルミニウム基材の断面の光学顕微鏡写真をそれぞれ示した。
【0037】
窒化処理後のアルミニウム基材の表面の算術平均粗さRaは、アルミナ粉末として粒度F180の粉末を使用した場合(比較例2−1)には28.66μm、アルミナ粉末として粒度F220の粉末を使用した場合(比較例2−2)には9.40μmであった。これに対し、アルミナ粉末として粒度F180の粉末と粒度F220の粉末とを混合して使用した場合(実施例2)には、窒化処理後のアルミニウム基材の表面の算術平均粗さRaは3.63μmであり、窒化処理前のアルミニウム基材の表面の算術平均粗さRa3.30μmとほぼ変わりなかった。このように、適度な粒度のアルミナ粉末を混合して使用することで、窒化処理後のアルミニウム基材の表面粗さを、窒化処理前のアルミニウム基材の表面粗さとほぼ変わらない程度にまで抑えることができた。
【符号の説明】
【0038】
2...バレル槽
W...アルミニウム基材
P...充填粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基材と充填粉末とをバレル槽に投入し、前記バレル槽内において窒素ガスの存在下で前記アルミニウム基材と前記充填粉末とを加熱しつつ攪拌することで前記アルミニウム基材の表面に窒化物層を形成させるものであって、
前記充填粉末が、研磨剤としてのアルミナ粉末と活性化粉末としてのマグネシウム粉末を含むものである、アルミニウム基材の表面窒化方法。
【請求項2】
アルミニウム基材と充填粉末とをバレル槽に投入し、前記バレル槽内において窒素ガスの存在下で前記アルミニウム基材と前記充填粉末とを加熱しつつ攪拌することで前記アルミニウム基材の表面に窒化物層を形成させるものであって、
前記充填粉末が、研磨剤としてのアルミナ粉末と活性化粉末としてのマグネシウム含有粉末とを含むものであり、
前記アルミナ粉末が、第1のアルミナ粉末と、前記第1のアルミナ粉末よりも粒度の小さい第2のアルミナ粉末とを混合したものである、アルミニウム基材の表面窒化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−1788(P2012−1788A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139565(P2010−139565)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(592032636)学校法人トヨタ学園 (57)
【Fターム(参考)】