説明

アルミニウム技術および銅技術における絶縁材料のためのモノマー

【課題】小さい誘電率、高温安定性および化学安定性を有する、絶縁ポリマーの生成を可能にする、新しい出発材料を利用可能にすること。
【解決手段】本発明は、以下の式Iで表される新しいビス−o−アミノフェノール


に関し、ここで、Mは、請求項1に記載の意味を有する。このビス−o−アミノフェノールは、耐熱ポリベンゾオキサゾールの生成を可能にする。ビス−o−アミノフェノールは、好適には、最初にニトロソ化された、対応するジオールから生成される。次に、ニトロソ化合物は、Pd/C、Hを用いる水素添加によって、アミノ化合物に還元される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス−o−アミノフェノール、およびビス−o−アミノフェノールを生成する方法に関する。ビス−o−アミノフェノールは、対応するポリベンゾオキサゾールに変換された後に、マイクロチップ内で誘電体として用いられ得る、ポリ−o−ヒドロキシアミドを生成するために適切である。
【背景技術】
【0002】
容量性結合によって引き起こされる信号のクロストークを回避するために、マイクロチップ内で隣接し合う導線が、導線間に配置された誘電体によって互いに絶縁される。誘電体として組み込まれる接続は、種々の要求を満たさなければならない。例えば、マイクロチップ内の信号伝搬時間は、導線の材料にも、導線間に配置される誘電体にも依存する。誘電体の誘電率が小さいほど、それだけ信号伝搬時間も短い。これまで用いられてきた二酸化ケイ素ベースの誘電体の誘電率は、約4である。この材料は、誘電率が明らかにより低い有機誘電体と次第に取り替えられている。その材料の誘電率は、大抵の場合、3未満である。
【0003】
現在、一般に用いられているマイクロチップにおいて、導線は、好適には、アルミニウム、AlCuまたはAlCuSiを含む。メモリチップの集積密度が大きくなるにつれ、アルミニウムよりも電気抵抗が小さいという理由で、銅が導線材料として用いられるようになってきた。銅は、信号伝搬時間をより短くし、従って、導線断面を低減することを可能にする。
【0004】
誘電体が導線間の溝に充填される、これまで一般的に用いられてきた技術と対照的に、銅ダマシン技術においては、最初、誘電体がパターニングされる。ここで生じた溝は、まず、例えば、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、炭化ケイ素、窒化ケイ素または窒化炭素ケイ素を含む非常に薄い障壁層(Barriere)が被せられる。これらの障壁層は、マイクロチップの製作において、400℃以上の温度を必要とする製造工程を行う場合、導線からの金属原子が、導線を包囲する誘電体の中に拡散することを回避するために必要とされる。続いて、溝に、最初に銅が充填され、その後、余分な銅が機械的に削磨(abgeschliffen)される。従って、誘電体は、機械的研磨プロセス中に剥離しないように、研磨に用いられる材料に対して安定であり、かつ土台への付着が十分でなければならない。さらに、誘電体は、マイクロチップのさらなる構成素子が生成される続くプロセス工程において、十分な安定性を有しなければならない。そのために、誘電体は、例えば、温度安定性を有し、温度が400度を超えても分解してはならない。さらに、誘電体は、溶剤、剥離液、塩基、酸またはアグレッシブガスといった加工用化学薬品に対して安定でなければならない。さらに、誘電体が生成される前駆体の良好な溶解性および十分な貯蔵安定性が要求される。
【0005】
ポリベンゾオキサゾール(PBO)は、非常に高い耐熱性を有するポリマーである。この物質は、保護層および絶縁層を製作するためにすでに用いられている。ポリベンゾオキサゾールは、ポリ−o−ヒドロキシアミドを環化することによって生成され得る。ポリ−o−ヒドロキシアミドは、有機溶剤中で良好な溶解度および良好な塗膜形成能(Filmbildungseigenschaft)を示す。ポリ−o−ヒドロキシアミドは、遠心分離技術を用いて電子部品上に簡単に付与され得る。ポリ−o−ヒドロキシアミドをポリベンゾオキサゾールに環化する熱処理の後、所望の特性を有するポリマーが取得される。ポリベンザオキサゾールは、環化された形態のままでも直接加工され得る。しかしながら、通常、この場合、ポリマーの溶解度について困難が生じる。ポリ−o−ヒドロキシアミドをポリベンゾオキサゾールに環化する際に進行するメカニズムは、以下の式
【0006】
【化8】

に模式的に示される。加熱の際に、o−ヒドロキシアミドがオキサゾールへと環化され、ここで、水が遊離される。
【0007】
ポリ−o−ヒドロキシアミドは、ジカルボン酸を用いてビス−o−アミノフェノールを変換することによって生成される。ポリ−o−アミノフェノール、およびこのポリ−o−アミノフェノールから生成されるポリベンゾオキサゾールの特性は、実質的に、原料として用いられるモノマーによって決定される。従って、熱的、電気的または機械的挙動だけでなく、溶解度、加水分解安定度、貯蔵安定性およびポリマーの多数のさらなる特性が、生成の際に用いられるアミノフェノールのタイプによる影響を受ける。ポリマーベンゾオキサゾールは、マイクロエレクトロニクスにおいて、例えば、MCM(Multi−Chip−Module)、メモリチップおよび論理チップにて2つの金属レベル間の誘電体として、またはチップとそのハウジングとの間のバッファ層として用いられ得る、ポリベンゾオキサゾールを利用可能にし得るように、ポリマーに、良好な、電気的、化学的、機械的および熱的特性を付与する出発材料が利用可能にされなければならない。
【0008】
良好な溶解性のポリベンゾオキサゾールの前駆体を生成するためのモノマーは、例えば、特許文献1または特許文献2に記載される。しかしながら、マイクロチップの性能、およびこれに伴って同時に生じる半導体素子の小型化に対する要求が益々増大することによって、構成素子の寸法を縮小した場合でもポリマーに対して要求される機械的、電気的および化学的特性を満たし得るように、ポリマー材料の絶え間ない改良が必要とされる。このため、ポリベンゾオキサゾールおよびその溶解性の前駆体を生成するために利用可能なモノマーをさらに開発することもまた必要である。
【0009】
【特許文献1】米国特許4 525 539号
【0010】
【特許文献2】欧州特許出願公開317 942号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、小さい誘電率、高温安定性および化学安定性を有する、絶縁ポリマーの生成を可能にする、新しい出発材料を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本課題は、以下の式Iで表されるビス−o−アミノフェノール
【0013】
【化9】

を用いて解決される。
ここで、
Gは、酸素または硫黄を意味し、
Mは、
【0014】
【化10】

を意味し、R、Rは、それぞれ別個に
【0015】
【化11A】

【0016】
【化11B】

を意味し、Tは、
【0017】
【化12】

を意味し、nは、0〜5を意味する。
【0018】
従って、本発明は、以下を提供する。
【0019】
(1) 以下の式Iで表されるビス−o−アミノフェノール
【0020】
【化101】

であって、
Gは、酸素または硫黄を意味し、
Mは、以下の式、
【0021】
【化102A】

【0022】
【化102B】

を意味し、R、Rは、それぞれ別個に、以下の式、
【0023】
【化103】

を意味し、Tは、以下の式、
【0024】
【化104】

を意味し、nは、0〜5を意味する、ビス−o−アミノフェノール。
【0025】
(2) 以下の式IIで表され
【0026】
【化105】

MおよびGは、項目1に記載の意味を有する、項目1に記載のビス−o−アミノフェノール。
【0027】
(3) Gは、酸素原子を意味する、項目1または2に記載のビス−o−アミノフェノール。
【0028】
(4) 上記式Iで表されるビス−o−アミノフェノールを生成する方法であって、Mが、項目1に記載の意味を有する以下の式IIIの化合物ジオール
【0029】
【化106】

を、ニトロソ化剤を用いてニトロソ化合物へとニトロソ化し、次に、上記ニトロソ化合物を、上記式Iで表されるビス−o−アミノフェノールに還元する、方法。
【0030】
(5) 上記ニトロソ化合物は、触媒の作用下で、水素ガスを用いて還元される、項目4に記載の方法。
【0031】
(6) 上記触媒は、活性炭に担持されたパラジウムである、項目5に記載の方法。
【0032】
(7) 上記ニトロソ化剤は、亜硝酸イソアミル、亜硝酸アルキル、および亜硝酸ナトリウムと濃硫酸との混合物からなる群より選択される、項目4〜6のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
(8) 上記式Iで表されるビス−o−アミノフェノールの生成のための方法であって、MおよびGが項目1に記載の意味を有し、Rが保護基である、以下の式IVで表されるジオール
【0034】
【化107】

を、ニトロ化試薬を用いてニトロ化合物をニトロ化し、次に、上記ニトロ化合物を式Iで表されるビス−o−アミノフェノールに還元する、方法。
【0035】
(9) 上記保護基Rは、還元的に脱離可能な基である、項目8に記載の方法。
【0036】
(10) 上記保護基Rは、ベンジル基である、項目8または9に記載の方法。
【発明の効果】
【0037】
小さい誘電率、高温安定性および化学安定性を有する、絶縁ポリマーの生成を可能にする、新しい出発材料が利用可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明による、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールは、k≦2.7の誘電率を有するポリマー誘電体が取得され得るポリ−o−ヒドロキシアミドを生成するために適切である。これらのポリマーは、狭い溝を充填するために非常に良く適している。ポリ−o−ヒドロキシアミドを環化した後、溶剤、剥離液、塩基、酸またはアグレッシブガスといった加工用化学薬品に対して高い耐性を有するポリベンゾオキサゾールが取得される。これらのポリマーは、さらに、銅ダマシン技術(Kupfer−Damascene−Technik)のために特に適切である。余分な銅が除去される研磨プロセスの間、分解、亀裂の形成または泡の形成といった不利な効果は現れない。ケイ素、炭化ケイ素、窒化炭素ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、チタン、タンタル、窒化チタン、窒化タンタルまたは窒化酸素ケイ素のような誘電体の、チップ技術に関連する表面への付着は非常に良好である。本発明によるビス−o−アミノフェノールから生成されたポリマーは、多くの有機溶剤中で非常に良好に溶ける。適切な溶剤は、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、ジエチレンモノエチルエーテルまたはジエチレンジエチルエーテル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、メトキシメチルアセテート、テトラヒドロフランまたは酢酸エチルエステルである。これらの溶剤は、遠心分離技術、噴霧技術、または浸漬技術において良好に扱われ、非常に良好な品質の薄膜を生じさせ得る。本発明によるビス−o−アミノフェノールから導き出されたポリベンゾオキサゾールは、さらに、非常に高い温度安定性を有する。
【0039】
特に好適なのは、以下の式IIで表されるビス−o−アミノフェノール
【0040】
【化13】

であり、ここで、MおよびGは、上述の意味を有する。式IIで表されるビス−o−アミノフェノールは、高い収量および高い異性体純度を示し、これは、生成物の精製を実質的に容易にする。従って、式IIで表されるビス−o−アミノフェノールは、安いコストで利用可能になり得る。
【0041】
本発明によるビス−o−アミノフェノールは、ビス−o−アミノチオフェノール(G=S)と、ビス−o−アミノフェノール(G=O)とに分類される。簡略化するために、両方の化合物クラス(Verbindungsklasse)は、「ビス−o−アミノフェノール」という名称にまとめられる。有利な特性を有するビス−o−アミノチオフェノールポリマーを用いても生成され得るが、ビス−o−アミノフェノール(G=O)の重要性がより大きい。なぜなら、このビス−o−アミノフェノール(G=O)は、抗酸化性がより高いため加工し易いからである。従って、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールの場合、Gが酸素原子を表す化合物が望ましい。
【0042】
産業用途に適切であるようにするために、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールが簡単かつ安いコストで使用され得ることが重要である。従って、本発明の目的は、さらに、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールを生成する方法を提示することであり、ここで、以下の式IIIで表されるジオール
【0043】
【化14】

(Mは、請求項1に記載の意味を有する)は、ニトロソ化剤を用いてニトロソ化合物へとニトロソ化され、続いて、ニトロソ化合物が式Iで表されるビス−o−アミノフェノールに還元される。
【0044】
式Iで表されるビス−o−アミノフェノールを生成するために、式IIIで表されるジオールは、まず、室温で適切な不活性溶剤中に溶解される。適切な溶剤は、例えば、エタノール、イソプロパノールまたはブタノール等のアルコール;アセトニトリル;エチルアセテートまたはプロピルアセテート等のエステル、アセトン;メチルエチルケトンまたはジエチルケトン等のケトン;あるいはクロロホルム、ジクロルメタンまたは塩化メチレン等の塩素添加された炭化水素である。この場合、溶液は、遊離体として用いられた式IIIで表されるジオールの、好適には5〜30重量パーセントを含む。次に、適切なニトロソ化剤が付加され、取得された混合物は、好適には−15〜40℃、特に、5〜15℃の温度で、遊離体のほぼ完全な変換が起こるまで攪拌される。適切な反応時間は、通常1〜10時間、特に、2〜4時間の範囲である。生じたニトロソ化合物を分離するために、まず、溶剤が、好適には、減圧下で気化させられる。次に、ニトロソ化合物が適切な溶剤から再結晶化されることによって、または、適切な溶離液を用いてカラムクラマトグラフィによって分離することで精製され得る。
【0045】
本発明による方法の利点は、1つには、遊離体として用いられる式IIIで表されるジオールが産業用途に有利な時間内で、ジヒドロキシ結合の著しく完全な変換を達成するために、十分な反応性を有することである。さらに、式IIIで表されるジヒドロキシ結合のヒドロキシ基は、保護基によって保護される必要がないので、保護基の導入および脱離のための作業工程が省略される。ヒドロキシ基がM基とパラ位置にある場合、ニトロソ基は、選択的に、ヒドロキシ基とオルト位置でフェニル還に導入されるので、続いて精製される際に、所望でない異性体を分離する必要がない。このこともまた、式Iで表されるビス−オルト−アミノフェノールを安いコストで生成することに寄与する。
【0046】
ニトロソ化するために、あらゆる一般的なニトロソ化剤が用いられ得る。適切なのは、例えば、亜硝酸イソアミル、亜硝酸アルキル、および亜硝酸ナトリウムと濃硫酸との混合物である。
【0047】
精製されたビス−o−ニトロソ化合物は、次に、ビス−o−アミノ化合物に還元される。このために、このニトロソ化合物は、まず、適切な溶剤中に溶解される。適切なのは、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテルである。アミノ基への還元は、好適には、適切な触媒剤による触媒作用のもとで、水素を用いて行われる。還元を加速するために、有利にも水素圧を高めて水素添加が行われる。適切な触媒は、例えば、活性炭に担持されたパラジウムである。
【0048】
式Iで表されるビス−o−アミノフェノールは、対応するニトロ化合物を介して精製され得る。従って、本発明の目的は、さらに、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールを生成する方法であり、ここで、以下の式IVで表されるジオール
【0049】
【化15】

(MおよびGは、請求項1に記載される意味を有し、Rは、保護基である)は、ニトロ化試薬を用いてニトロ化合物へとニトロ化され、次に、ニトロ化合物は、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールに還元される。
【0050】
式IVで表される保護されたジオールのニトロ化は、例えば、硝酸、硝酸と硫酸との混合物、五酸化二窒素または硝酸アセチル硝酸といった一般的なニトロ化試液を用いて行われる。しかしながら、この反応において、遊離体のヒドロキシ基が、対応する保護基Rによって保護される必要がある。ビス−ニトロ化合物の精製の後、ニトロ基はアミノ基に還元される。このために、ビス−ニトロ化合物は、例えば、テトラヒドロフラン等の適切な溶剤中で、触媒(例えば、活性炭に担持されたパラジウム)と混合され、オートクレーブ内で水素を用いて水素添加される。
【0051】
保護基Rは、ニトロ基をアミノ基に還元する際に還元的に脱離されるように適切に選択される。保護基Rの脱離は、この場合、さらなる製造工程を必要としない。保護基Rとして、ベンジル基が特に適切に用いられる。
【0052】
式Iで表されるビス−o−アミノフェノールは、ジカルボン酸またはその活性誘導体を用いて、所望のポリ−o−ヒドロキシアミドに変換され得る。このために、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールは、ジカルボン酸、または以下の式Vで表される活性ジカルボン酸誘導体
【0053】
【化16】

を用いて変換され、ここで、Lは、ヒドロキシ基または活性基を表し、Yは、それ自体任意の2価炭化水素の残留物である。式Vで表されるジカルボン酸誘導体の活性基として、例えば、酸塩化物、または、例えば、スルホン酸エステルといった活性エステルが用いられ得る。しかしながら、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールおよび式Vで表されるジカルボン酸の変換は、例えば、カルボニルジイミダゾールまたはジシクロヘキシルカルボジイミドといったカルボン酸を活性化する化合物の存在下でもまた行われる。原則的に、反応の際に生じた水自体と結合するすべての試薬が適切である。ポリ−o−ヒドロキシアミドを生成するために、式Iで表されるビス−o−アミノフェノールおよびジカルボン酸、または、場合によっては、式Vで表されるジカルボン酸誘導体は、−20〜150℃で有機溶剤中で、5〜20時間反応させられる。必要に応じて、ポリマーの末端基は、適切な試薬を用いてブロックされ得る。反応後に生じたポリ−o−ヒドロキシアミドは、反応溶液を沈殿剤中に滴下することによって沈殿させられて、洗浄および乾燥させられる。適切な沈殿剤は、水、およびイソプロパノール、ブタノールまたはエタノールといったアルコールである。これらの沈殿剤の混合物もまた用いられ得る。好適には、沈殿剤は、0.1%〜10%のアンモニアもまた含み得る。沈殿したポリマーは、濾過および乾燥されることによって、直ちに次の加工のために用いられ得、例えば、半導体基板上に付与するために、上述の溶剤中で溶解され得る。
【0054】
重合によるポリ−o−ヒドロキシアミドの生成は、遊離する酸を捕えるために、塩基の存在下で行われ得る。適切な塩基酸捕獲剤は、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロオクタンまたはポリビニルピリジンである。しかしながら、他の塩基酸捕獲剤も用いられ得る。特に、例えば、N−メチルピロリドンといった、合成のために用いられる溶剤、および、例えば、水または水とアルコールとの混合液といった、沈殿剤中で良好に溶解するか、または、例えば、網目状に結合したポリビニルピリジンといった、溶剤中で全く溶解しない結合が望ましい。酸捕獲剤は、その後、反応生成物を加工する際に生じたポリ−o−ヒドロキシアミドから容易に分離され得る。
【0055】
ポリマー合成のために特に適切な溶剤は、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンおよびジメチルアセトアミドである。しかしながら、それ自体、出発成分が良好に溶解するあらゆる溶剤が用いられ得る。
【0056】
このようにして示されたポリ−o−ヒドロキシアミドを、上述のメカニズムに従って、環化下で加熱することによって、所望のポリベンゾオキサゾールに変えられ得る。このポリ−o−ヒドロキシアミドは、良好な電気的、機械的および化学的特性を有するので、マイクロエレクトロニクスにおいて使用するために非常に良く適している。
【0057】
本発明は、実施例を用いて、さらに詳細に説明される。
【実施例】
【0058】
(実施例1:3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンの合成)
合成スキーム
【0059】
【化17】

第1の工程:ニトロソ化
20.07g(0.057mol)の4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンを100mlの氷酢酸中に溶解し、室温で、20mlの亜硝酸イソアミルを一滴ずつ滴下する。変換の工程は、出発材料が薄層クロマトグラフィによってもはや検出されなくなるまで行われる。100〜200mlの水を加え、沈殿した固形物から濾別する。この固形物を、メタノールを用いてすりつぶし、数時間の間、放置する。吸引濾過および乾燥の後、この生成物を、熱トルエン中で取り出し、かつ溜分して結晶化される。
収量:21.27g(理論値の91%)。
【0060】
第2の工程:水素添加および塩酸塩として分離
水素添加を、例えば、EP 905121号の実施例8に記載されるように、ニトロ化合物を水素添加する公知の方法により行う。
【0061】
20.5g(0.05mol)の4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジニトロソテトラフェニルメタンを、250mlのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解し、保護ガス下で、2.00g、Pd−C5%と混合する。この懸濁液を、Ar保護ガス下で、予め十分に加熱された水素添加反応器の中に充填し、室温で24時間および2barのH圧で水素添加する。この懸濁液を、24時間水素添加した後、保護ガス下で、150mlの純エタノールの中に入れる。この混合物を、攪拌下で、10mlの濃塩酸と混合し、生成物が完全に溶解すると、Pd触媒を除去するためにブーフナー漏斗を介して3度濾過する。このようにして取得された溶液は、70℃および300mbarで、約20mlのエタノールが残留するまで濃縮し、高速攪拌下で、700mlのジエチルエーテルおよび30mlのアセトンからなる溶液(Selectipur)に付与する。この懸濁液を、−18℃で24時間貯蔵する。次に、固形物が吸引濾過および乾燥する。
収量:21.39g(理論値の94%)。
【0062】
(実施例2:9,10−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−アントラセンの合成)
合成スキーム:
【0063】
【化18】

第1の工程:9,10−ビス−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−アントラセン
23.43g(60mmol)の9,10−ビス−(4−メトキシ)−アントラセンを、250mlの無水酢酸中に提供し、溶解する。次に、100mlの無水酢酸に18.7ml(0.184mol)の硝酸(62%の)が含まれる溶液を、30分以内に0℃の冷たい溶液に滴下する。同じ温度で、4時間攪拌され、フリット上に沈殿した固形物が吸引濾過される。反応の終了後、この混合液を、500mlの氷水の中に慎重に注ぎ、十分に攪拌する。
【0064】
生成物を吸引濾過し、水で丹念に洗浄し、そして再結晶化する。さらに、粗生成物を、室温でトルエン中に溶解(2ml/g)し、90℃にまで加熱し、(4ml/g)の石油エーテルと混合した後に結晶化が開始する。次に、この混合物を、ゆっくりと室温にまで冷却する。この懸濁液を、−18℃の冷蔵庫で4時間貯蔵し、次に、濾過する。生成物を、200mbarおよび55℃で24時間乾燥される。
【0065】
収量:21.9g(理論値の76%)。
【0066】
第2の工程:9,10−ビス−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)−アントラセン
19.2g(0.04mol)の9,10−ビス−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−アントラセンを、200mlのブタノールおよび200mlの濃シュウ酸からなる混合物中で、攪拌して過熱して24時間還流する。この懸濁液を、反応が終了した後、回転エバポレーション装置にて半分の体積にまで濃縮し、生成物を吸引濾過する。次に、トルエンから再結晶化する。
収量:16.64g(理論値の92%)。
【0067】
第3の工程:9,10−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノール)−アントラセン
水素添加を、例えば、EP905121号の実施例8に記載されるように、ニトロ化合物を水素添加する公知の方法に従って行う。
【0068】
13.56g(30mmol)の9,10−ビス−(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)−アントラセンを、300mlのテトラヒドロフラン中に溶解し、保護ガス下で、3.00gのPd−C5%と混合する。この懸濁液を、予め十分に加熱された水素添加反応装置の中にAr保護ガス下で充填し、室温で2barのH圧で24時間水素添加する。24時間水素添加された後、この懸濁液を、保護ガス下で、100mlの精製エタノールの中に入れる。この混合液を、攪拌下で10mlの濃塩酸と混合し、Pd触媒を除去するために、生成物が完全に溶解された状態で、ブーフナー漏斗を介して3度濾過する。このようにして取得された溶液を、70℃および300mbarで、約20mlのエタノールが残留するまで濃縮し、高速攪拌下で、500mlのジエチルエーテルおよび20mlのアセトンからなる溶液(Selectipur)の中に付与する。ここで、生成物は、暗紫色の結晶の形態で沈殿する。この懸濁液を、−18℃で24時間貯蔵する。次に、固形物を吸引濾過および乾燥する。
収量:12.37g(理論値の89%)。
【0069】
(実施例3:4,4’−ジ−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルオキシ)−テトラフェニルメタンの合成)
合成スキーム:
【0070】
【化19A】

【0071】
【化19B】

第1の工程:3−ベンジルオキシ−4−ニトロ−フルオロベンゼン
3つ口コルベン(KPG攪拌器、還流冷却器、保護ガス連結器)において、157g(1.00mol)の3−フルオロ−6−ニトロフェノールを500mlのアセトニトリル中に提供し、保護ガス下で、174g(1.02mol)の臭化ベンジルおよび345g(2.50mol)の炭酸カリウムを、この順序で付加する。この混合物を、沸騰するまで加熱して、90℃で3時間還流する。室温にまで冷却された後、この混合物を吸引濾過し、残留固形物を、1度につき100mlのアセトニトリルで2度再洗浄する。この溶液を、結晶化するまで濃縮し、粗生成物を吸引濾過する。この粗生成物を、エチルアセテート(1ml/g粗生成物)中に溶解し、ヘキサン(3.6ml/g粗生成物)を用いて室温で沈殿させる。この混合液を、完全に結晶化するまで、T<−10℃で一晩貯蔵する。収量:194g(理論値の80%)
融点:58℃。
【0072】
第2の工程:4,4’−ジ−(4−ベンジルオキシ−3−ニトロフェニルオキシ)−テトラフェニルメタン
保護ガス連結器ならびにKPG攪拌器および還流冷却器が差し込まれた三つ口コルベン攪拌装置において、30.74g(87.3mmol)の4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンおよび43.65g(176mmol)の3−フルオロ−6−ニトロ−ベンジルオキシフェノールを提供する。この混合物に、350mlのN,N−ジメチルホルムアミドを、室温で加える。保護ガス下で、61.0g(354mmol)のKCOを、この溶液に加え、この溶液を沸騰するまで加熱して、135℃で4時間還流する。反応の進行は、薄層クロマトグラフィを用いて1時間ごとに点検する(溶離液:石油エーテル(溜分80〜120℃):エチルアセテート=2:1(Rproduct=0.49))。変換が完了した後、この懸濁液を、室温にまで冷却し、水酸化カリウム水溶液(350mlのHO/7.2gのKOH/100gの氷)中に注ぐ。この生成物は、黄色の結晶の形態で沈殿する。沈殿は、約20mlのエチルアセテートを添加することによって容易になる。この生成物を濾過し、200mlのHOで1度再洗浄し、次に、350mlの酢酸溶液(320mlのHO/30mlの濃酢酸)中に注ぐ。この溶液を、30分間攪拌し、濾過し、さらに200mlのHOで2度洗浄する。
【0073】
粗生成物60gを350mlのテトラヒドロフラン中に溶解し、沸騰温度にまで加熱する。この溶液を、30分間沸騰温度で保ち、次に、濾過する。この溶液を、再び、沸騰温度にまで加熱し、さらに30分間攪拌する。この生成物の沈殿が65℃で開始するまで石油ベンジンを滴下し続ける(沸騰範囲60〜80℃)。この溶液を、室温にまで冷却し、冷蔵庫内で、4℃で24時間貯蔵する。この生成物を、濾過によって分離し、100mlの石油ベンジンで2度(溜分60〜80℃)再洗浄する。再結晶化された生成物を、50℃/200mbarで24時間乾燥する。
【0074】
収量:63.35g(理論値の90%)。
【0075】
第3の工程:塩酸塩としての4,4’−ジ−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルオキシ)−テトラフェニルメタン
水素添加を、例えば、EP905121号の実施例8に記載されるように、ニトロ化合物を水素添加する公知の方法に従って行う。
【0076】
54.48g(67.57mmol)の4,4’−ジ−(4−ベンジルオ−3−ニトロフェニルオキシ)−テトラフェニルメタンを、600mlのテトラヒドロフラン中に溶解し、保護ガス下で、5.00gのPd−C5%と混合する。この懸濁液は、予め十分に加熱した水素添加反応器にAr保護ガス下で充填し、室温で24時間および2barのH圧で水素添加する。24時間の水素添加時間の後、この懸濁液を、保護ガス下で、200mlの純エタノールの中に入れる。攪拌下で、10mlの濃塩酸が加える。この生成物が完全に溶解した後、Pd触媒を除去するために、この混合物を、ブーフナー漏斗を介して3度濾別する。このようにして取得された溶液を、70℃および300mbarで、約30mlのエタノールが残留するまで濃縮し、高速攪拌下で、700mlのジエチルエーテルと30mlのアセトンからなる溶液(Selectipur)中に付与する。ここで、この生成物は、暗紫色結晶の形態で沈殿する。この懸濁液を、−18℃で24時間貯蔵し、次に、固形物を、吸引濾過および乾燥する。
【0077】
収量:37.46g(理論値の87%)。
【0078】
(発明の要旨)
本発明は、以下の式Iで表される新しいビス−o−アミノフェノール
【0079】
【化20】

に関し、ここで、Mは、請求項1に記載の意味を有する。このビス−o−アミノフェノールは、耐熱ポリベンゾオキサゾールの生成を可能にする。ビス−o−アミノフェノールは、好適には、最初にニトロソ化された、対応するジオールから生成される。次に、ニトロソ化合物は、Pd/C、Hを用いる水素添加によって、アミノ化合物に還元される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
小さい誘電率、高温安定性および化学安定性を有する、絶縁ポリマーの生成を可能にする、新しい出発材料が利用可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iで表されるビス−o−アミノフェノール
【化1】


であって、
Gは、酸素または硫黄を意味し、
Mは、以下の式、
【化2A】


を意味し、R、Rは、Hであり、nは、0〜5を意味する、ビス−o−アミノフェノール。
【請求項2】
以下の式IIで表され
【化5】


MおよびGは、請求項1に記載の意味を有する、請求項1に記載のビス−o−アミノフェノール。
【請求項3】
Gは、酸素原子を意味する、請求項1または2に記載のビス−o−アミノフェノール。
【請求項4】
前記式Iで表されるビス−o−アミノフェノールを生成する方法であって、Mが、請求項1に記載の意味を有する以下の式IIIの化合物ジオール
【化6】


を、ニトロソ化剤を用いてニトロソ化合物へとニトロソ化し、次に、該ニトロソ化合物を、前記式Iで表されるビス−o−アミノフェノールに還元する、方法。
【請求項5】
前記ニトロソ化合物は、触媒の作用下で、水素ガスを用いて還元される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、活性炭に担持されたパラジウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ニトロソ化剤は、亜硝酸イソアミル、亜硝酸アルキル、および亜硝酸ナトリウムと濃硫酸との混合物からなる群より選択される、請求項4〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記式Iで表されるビス−o−アミノフェノールの生成のための方法であって、MおよびGが請求項1に記載の意味を有し、Rが保護基である、以下の式IVで表されるジオール
【化7】


を、ニトロ化試薬を用いてニトロ化合物をニトロ化し、次に、該ニトロ化合物を式Iで表されるビス−o−アミノフェノールに還元する、方法。
【請求項9】
前記保護基Rは、還元的に脱離可能な基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記保護基Rは、ベンジル基である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
明細書に記載される方法によって生産される化合物。

【公開番号】特開2007−84580(P2007−84580A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356839(P2006−356839)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【分割の表示】特願2003−180250(P2003−180250)の分割
【原出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (331)
【Fターム(参考)】