説明

アルミ材の塗装前処理方法

【課題】アルミ材の塗装前処理として、環境負荷の少ないクロムフリー仕様であって、クロメート処理に匹敵する優れた塗装密着性及び耐食性を達成できる方法を提供する。
【解決手段】アルミ材の表面に、ノンクロム金属化成処理液によって遷移金属を含む化成皮膜を形成したのち、アミン化合物とカルボン酸との共重合体の水溶液からなるポリマー処理液で表面処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる材料(以下、アルミ材と総称する)の表面に各種塗装を施す場合の前処理として行うクロムフリーの塗装前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アルミ材は、非常に軽量で高強度である上に加工性もよいことから、窓枠や手摺りの如き建築材料、空調機器、飲料缶、家庭用品、車両や航空機の外被及び構造材その他の広汎な分野で利用されているが、耐食性ならびに塗料に対する密着性に劣るため、これら特性を改善する手段として従来よりクロメート処理が汎用されていた。
【0003】
しかるに、クロメート処理は、6価のクロム酸によってアルミ材表面を不動態化するものであるが、6価クロムが有毒であり、その処理操作を行う作業環境上で問題があると共に、処理後のクロム含有排水やアルミ製品廃棄物からの溶出等による環境汚染が懸念されることから、近年においては地球環境保全の観点から厳しい規制が課せられるようになり、既に6価クロムの使用を全廃することが決定されている。このため、クロムフリーの代替手段、つまりクロムを使用せずにアルミ材の耐食性や塗装密着性を高め得る手段が必要になっている。
【0004】
このような代替手段としては、Mo,W,Ti,Zr,V,Mn,Co,Fe等の遷移金属のフッ化物、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等によって耐食性皮膜を形成する化成処理(特許文献1〜3)が代表的であるが、これらの化成処理後にオルガノアルコキシシラン等のシランカップリング剤による処理を行ったり(特許文献4)、同様の化成処理後にエポキシ樹脂(特許文献5)やアクリル系樹脂等の皮膜を形成する等、極めて多様な方法が提案されている。
【特許文献1】 特開2000−282251号公報
【特許文献2】 特開2001−247977号公報
【特許文献3】 特開2004−232047号公報
【特許文献4】 特開2003−27253号公報
【特許文献5】 特開平9−314050号公報
【0005】
しかしながら、上記のような既存の代替手段では、いずれもアルミ材の耐食性や塗装密着性はある程度は改善されても、以前のクロメート処理による性能には遠く及ばず、とりわけ塗装密着性及び塗装耐食性に関しては甚だ不充分である。そのため、現状では取り敢えず6価クロムを3価クロムに変えた処理方法で対応している事業者が多いが、処理液管理が複雑で手間を要し、ランニングコストが高くつく上、将来的には全てのクロム処理が禁止される方向にあるため、一時凌ぎの手段でしかない。従って、特にアルミ材の塗装分野では、更なる性能向上を可能とするクロムフリーの塗装前処理方法の開発が強く要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の事情に鑑みて、アルミ材の塗装前処理方法として、環境負荷の少ないクロムフリー仕様であって、しかもクロメート処理に匹敵する優れた塗装密着性及び塗装耐食性を達成できる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の請求項1に係るアルミ材の塗装前処理方法は、アルミ材の表面に、ノンクロム金属化成処理液によって遷移金属を含む化成皮膜を形成したのち、アミン化合物とカルボン酸との共重合体の水溶液からなるポリマー処理液で表面処理することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明は、上記請求項1のアルミ材の塗装前処理方法において、ポリマー処理液の共重合体がジアリルアミン無機酸塩と脂肪族不飽和カルボン酸との共重合体である構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのアルミ材の塗装前処理方法において、ポリマー処理液のポリマー濃度が0.2〜25重量%である構成としている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのアルミ材の塗装前処理方法において、ポリマー処理液のポリマー濃度が0.2〜5.0重量%である構成としている。
【0011】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのアルミ材の塗装前処理方法において、ノンクロム金属化成処理液が、クロムを除く遷移金属イオンとフッ素イオンを含むリン酸塩化成処理液である構成としている。
【0012】
請求項6の発明は、上記請求項5のアルミ材の塗装前処理方法において、ノンクロム金属化成処理液が、前記遷移金属イオンとしてモリブデンイオン及びコバルトイオンを含有する構成としている。
【0013】
請求項7の発明は、上記請求項1〜6のいずれかのアルミ材の塗装前処理方法において、上記ポリマー処理液による表面処理後に、ポリエチレン系樹脂水性エマルジョンによる表面処理を施す構成としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係るアルミ材の塗装前処理方法によれば、アルミ材の表面にノンクロムの遷移金属を含む化成皮膜が形成され、更に該化成皮膜上にアミン化合物とカルボン酸との共重合体の皮膜が形成され、この共重合体が両性高分子として下地の化成皮膜と各種塗料に対する強い親和性を発揮するため、該アルミ材の表面に所要の塗装を施した際、その塗膜がアルミ材に対して強固に密着すると共に、塗装耐食性も著しく向上するから、クロメート処理を施したものに匹敵する塗膜強度及び耐久性を備えるクロムフリーのアルミ塗装品を提供できる。
【0015】
そして、上記ポリマー処理液の共重合体として、請求項2の発明で規定するジアリルアミン無機酸塩と脂肪族不飽和カルボン酸との共重合体を用いることにより、その形成皮膜が下地の化成皮膜と各種塗料に対してより強い親和性を発揮し、もって該アルミ材により優れた塗装耐食性及び塗装密着性を付与できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、上記ポリマー処理液のポリマー濃度が特定範囲にあることから、そのポリマー皮膜による下地の化成皮膜と各種塗料に対する良好な親和性を確保できる。更に、請求項4の発明によれば、ポリマー処理液のポリマー濃度が最適な範囲にあることから、上記親和性を充分に確保して、且つ余分な薬剤使用をなくして処理コストを低減できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、上記のノンクロム金属化成処理液が、クロムを除く遷移金属イオンとフッ素イオンを含むリン酸塩化成処理液であることから、これによってアルミ材表面に形成される化成皮膜が次の表面処理による両性高分子の皮膜との親和性により優れたものとなる。更に、該リン酸塩化成処理液として請求項6の発明で規定する特定の遷移金属イオンを含むものを使用することにより、形成される化成皮膜は両性高分子の皮膜との協働によってアルミ材の塗装密着性及び塗装耐食性がより向上させるものとなる。
【0018】
請求項7の発明によれば、上記ポリマー処理液による表面処理後に、ポリエチレン系樹脂水性エマルジョンによる表面処理を施すことから、アルミ材表面に優れた耐水性が付与され、これによってアルミ材の塗装密着性及び塗装耐食性が更に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明に係るアルミ材の塗装前処理方法は、種々の塗装を施すアルミ材の表面に、前処理として、ノンクロム金属化成処理液によって遷移金属を含む化成皮膜を形成する一段目と、アミン化合物とカルボン酸との共重合体の水溶液からなるポリマー処理液によって当該共重合体の皮膜を形成する二段目とからなる二段階の表面処理を施すものであり、アルミ材に6価のクロム酸を用いるクロメート処理に匹敵する優れた塗装耐食性及び塗装密着性を付与できることが判明している。
【0020】
上記一段目の表面処理に用いるノンクロム金属化成処理液は、クロム以外の遷移金属を含む不動態化した化成皮膜を形成し得るものであればよく、例えばMo,W,Ti,Zr,V,Mn,Co,Fe等の複数種の遷移金属のフッ化物、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を含む水溶液が挙げられ、従来よりアルミ材に対するクロムフリーの化成処理に使用される種々の組成のものを包含するが、とりわけクロムを除く遷移金属イオンとフッ素イオンを含むリン酸塩化成処理液が好適である。
【0021】
すなわち、上記のリン酸塩化成処理液では、遷移金属イオンがクロメート処理における6クロムイオンと同様に作用し、フッ素イオンと協働してアルミ材表面に不動態化した化成皮膜を形成すると共に、リン酸イオンの存在によって当該皮膜の形成反応が安定して進行するため、得られる化成皮膜は緻密で高い耐食性を発揮するものとなる。
【0022】
そして、このようなリン酸塩化成処理液の中でも、遷移金属イオンとしてモリブデンイオン及びコバルトイオンを必須成分として含むものが、特に耐食性に優れた化成皮膜を形成し得るものとして好ましい。また、これらと併用する他の好適な遷移金属イオンとして鉄イオンが挙げられる。更に、リン酸塩化成処理液には、アルミ材の表面に対する濡れ性を高めるために、必要に応じて非イオン界面活性剤を配合してもよい。
【0023】
しかして、リン酸塩化成処理液における各成分は、例えばリン酸塩ではリン酸ナトリウム、モリブデンイオンではモリブデン酸ナトリウム、コバルトイオンや鉄イオンでは硝酸塩の如き無機酸塩、フッ素イオンはケイフッ化アンモニウムやホウフッ化アンモニウムの如きアンモニウム塩等の形で添加配合される。
【0024】
ノンクロム金属化成処理液による一段目の表面処理は、処理液中に液温45〜60℃程度の加温下で所要のアルミ材を10〜20分程度浸漬すればよい。しかして、この浸漬中の反応により、アルミ材の表面に処理液成分の遷移金属を含む不動態化した化成皮膜が形成される。なお、この処理では同時に脱脂作用も発現するが、処理に供するアルミ材の付着油脂分が多い場合は、前もって適当な手段で予備脱脂を行うことが望ましい。また、この処理後には、アルミ材表面に残る処理液を除去するために水洗を行うのがよい。
【0025】
二段目の表面処理に用いるポリマー処理液は、既述のようにアミン化合物とカルボン酸との共重合体の水溶液からなり、前記一段目の表面処理を経たアルミ材表面の化成皮膜上に当該共重合体のポリマー皮膜を形成するものである。この共重合体は、分子内に原料単量体のアミンに由来する塩基性基と酸性基であるカルボキシル基とを有するため、両性高分子として機能するが、特にカルボキシル基が下地の化成皮膜と反応することにより、該化成皮膜に強固に密着一体化したポリマー層を形成すると共に、その上に塗装する各種塗料の塗膜に対して前記塩基性基が強い親和力を発揮するため、アルミ材表面に非常に優れた塗装密着性及び塗装耐食性を付与する。
【0026】
上記共重合体の一方の原料成分であるアミン化合物としては、モノアリルアミン、ジアリルアミン、これらの無機酸塩、第四級アンモニウム塩のように分子中に少なくとも1個の二重結合を有するアリルアミン系化合物がよく、特にジアリルアミンの塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩が好適である。他方の原料成分であるカルボン酸としては、分子中に1個の二重結合と1個以上のカルボキシル基を有するものがよく、とりわけ脂肪族不飽和カルボン酸が好適であり、更にマレイン欄、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸が好適である。
【0027】
また、上記共重合体の平均分子量は、1,000〜1000,000程度であり、低過ぎても高過ぎても良好なポリマー皮膜を形成できない。更に、共重合体におけるアミン化合物成分とカルボン酸成分との割合は、窒素含有基/カルボキシル基の比率として1/3〜3/1の範囲がよく、この比率が一方に偏り過ぎては前記の塗装密着性及び塗装耐食性が低下することになる。
【0028】
なお、特に好適な共重合体としては、ジアリルアミン塩酸塩−マレイン酸共重合体である次の構造式(I);
【0029】
【化1】

で表されるものが挙げられる。しかして、上式で表される共重合体の市販品としては、日東紡社製の商品名PAS−410(25%水溶液)がある。
【0030】
ポリマー処理液による二段目の表面処理は、ノンクロム金属化成処理液による一段目の表面処理後の水洗を経たアルミ材をポリマー処理液に浸漬すればよい。このとき、ポリマー処理液の濃度は、0.2〜25重量%の範囲が好ましく、特に0.2〜5.0重量%が最適であり、薄過ぎては充分な塗装密着性及び塗装耐食性が得られず、逆に濃過ぎても塗装密着性及び塗装耐食性が低下する。
【0031】
しかして、この二段目のポリマー処理液においては、pHの安定化のために、アンモニアの如きアルカリ成分とリン酸の如き酸成分を添加混合することが推奨される。また、処理温度(液温)は40〜80℃程度、処理時間は1〜10分程度であり、処理後には水洗を行った上で80〜200℃程度で乾燥すればよい。
【0032】
本発明の塗装前処理を施したアルミ材に適用する塗料としては、特に限定されないが、例えば焼付け用アクリル系塗料、焼付け用ウレタン系塗料等が代表的なものとして挙げられる。
【0033】
なお、この発明の塗装前処理方法では、必要に応じて、既述のノンクロム金属化成処理液による一段目の表面処理と、ポリマー処理液による二段目の表面処理に加えて、三段目の処理としてポリエチレン系樹脂水性エマルジョンによる表面処理を施してもよい。この三段目の表面処理によれば、アルミ材表面に優れた耐水性が付与されるため、塗装密着性及び塗装耐食性が更に向上する。処理液濃度は0.5〜15重量%程度、最適には2〜8重量%、処理温度は30〜60℃程度、処理時間は1〜10分程度である。
【実施例】
【0034】
以下に、この発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。なお、以下において、部及び%とあるのは重量部及び重量%を意味する。
【0035】
実施例1
縦70mm、横150mm、厚さ0.8mmの清浄なアルミニウム合金(A1050P−H24)板を試験片とし、下記のノンクロム金属化成処理液中に試験片を液温50℃で10分間浸漬して一段目の表面処理を施したのち、常温下で水道水による1分間の水洗を2回行った。次に、この水洗後の試験片を下記のポリマー処理液中に液温50℃で2分間浸漬して二段目の表面処理を施したのち、常温下で水道水による1分間の水洗を行い、最後に乾燥炉内で100℃にて30分乾燥させて塗装前処理を完了した。
【0036】
〔ノンクロム金属化成処理液〕
次の処理剤A,Bの各6%水溶液を容量比1:1で混合したもの(全酸価6.0P 、酸消費0.9P)。
<処理剤A>…中外ケミテック社製の商品名サプロテックKCF−1A
リン酸ナトリウム ・・・・・・・・25.0部
モリブデン酸ナトリウム ・・・・・ 1.5部
酸性フッ化アンモニウム ・・・・・ 1.5部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・72.0部
<処理剤B>…中外ケミテック社製の商品名サプロテックKCF−1B
ケイフッ化アンモニウム ・・・・・ 1.5部
ホウフッ化アンモニウム ・・・・・ 3.0部
硝酸コバルト ・・・・・・・・・・ 0.2部
硫酸第二鉄 ・・・・・・・・・・・ 0.2部
非イオン界面活性剤 ・・・・・・・10.0部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・85.1部
【0037】
〔ポリマー処理液〕
次の共重合体水溶液とアンモニア水及びリン酸水溶液を混合したもの(ポリマー濃 度3.0%、全酸価4.6P、遊離酸価0.6P)。
ジアリルアミン塩酸塩−マレイン酸共重合体の
25%水溶液(前出・PAS−410)・・・・・50部
25%アンモニア水 ・・・・・・・・・・・・ 5部
75%リン酸水溶液 ・・・・・・・・・・・・ 7部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38部
【0038】
実施例2
ポリマー処理液による二段目の表面処理後、水洗を行った試料片を、更にポリエチレン系樹脂水性エマルジョン(東邦化学工業社製の商品名HYTEC−S3121、エマルジョン濃度25%、pH9.3、遊離アルカリ価1.2P)を水で希釈してポリマー濃度3%にした処理液中に液温40℃で3分間浸漬して三段目の表面処理を施し、最後に乾燥炉内で100℃にて30分乾燥させた以外は、実施例1と同様にして塗装前処理を完了した。
【0039】
実施例3
二段目の表面処理におけるポリマー処理液のポリマー濃度を0.5%に変更した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0040】
実施例4
二段目の表面処理におけるポリマー処理液のポリマー濃度を1.0%に変更した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0041】
実施例5
二段目の表面処理におけるポリマー処理液のポリマー濃度を5.0%に変更した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0042】
実施例6
二段目の表面処理におけるポリマー処理液のポリマー濃度を8.0%に変更した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0043】
実施例7
三段目の表面処理における水性エマルジョンポリマー処理液のポリマー濃度を1%に変更した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0044】
実施例8
三段目の表面処理における水性エマルジョンポリマー処理液のポリマー濃度を10%に変更した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0045】
実施例9
一段目の表面処理におけるノンクロム金属化成処理液として、次の処理剤A,Bの各6%水溶液を容量比1:1で混合したもの(全酸価6.0P、酸消費0.9P)を使用した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0046】
<処理剤A>
リン酸ナトリウム ・・・・・・・・25.0部
タングステン酸ナトリウム ・・・・ 1.5部
酸性フッ化アンモニウム ・・・・・ 1.5部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・72.0部
<処理剤B>
ケイフッ化アンモニウム ・・・・・ 1.5部
ホウフッ化アンモニウム ・・・・・ 3.0部
硝酸コバルト ・・・・・・・・・・ 0.2部
硫酸第二鉄 ・・・・・・・・・・・ 0.2部
非イオン界面活性剤 ・・・・・・・10.0部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・85.1部
【0047】
実施例10
一段目の表面処理におけるノンクロム金属化成処理液として、次の処理剤A,Bの各6%水溶液を容量比1:1で混合したもの(全酸価6.0P、酸消費0.9P)を使用した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を完了した。
【0048】
<処理剤A>
リン酸ナトリウム ・・・・・・・・25.0部
モリブデン酸ナトリウム ・・・・・ 1.5部
酸性フッ化アンモニウム ・・・・・ 1.5部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・72.0部
<処理剤B>
ケイフッ化アンモニウム ・・・・・ 1.5部
ホウフッ化アンモニウム ・・・・・ 3.0部
硝酸コバルト ・・・・・・・・・・ 0.2部
非イオン界面活性剤 ・・・・・・・10.0部
水 ・・・・・・・・・・・・・・・85.3部
【0049】
比較例1
ノンクロム金属化成処理液による一段目の表面処理を行ったのち、ポリマー処理液による二段目の表面処理を省略して水洗及び乾燥を行った以外は、実施例1と同様にして塗装前処理を行った。
【0050】
比較例2
ノンクロム金属化成処理液による一段目の表面処理後、ポリマー処理液による二段目の表面処理を省略して水性エマルジョン処理液による三段目の表面処理を行った以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を行った。
【0051】
比較例3
二段目の表面処理に用いるポリマー処理液として、ジアリルアミン塩酸塩−マレイン酸共重合体水溶液に代えて、ジアリルアミン塩酸塩−2酸化硫黄共重合体のポリマー濃度3.0%水溶液(日東紡社製の商品名PAS−A1の水希釈液)を使用した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を行った。
【0052】
比較例4
二段目の表面処理に用いるポリマー処理液として、ジアリルアミン塩酸塩−マレイン酸共重合体水溶液に代えて、ジアリルアミン塩酸塩−アクリルアミド共重合体のポリマー濃度3.0%水溶液(日東紡社製の商品名PAS−J81の水希釈液)を使用した以外は、実施例2と同様にして塗装前処理を行った。
【0053】
比較例5,6
実施例で用いたものと同じ試験片をクロメート処理業者に委託して6価クロメート処理(比較例5)及び3価クロメート処理(比較例6)を行った。
【0054】
上記の実施例1〜10及び比較例1〜6の塗装前処理を施した各試験片について、それぞれ表面に市販のアルミ用アクリル塗料(ロックペイント社製の商品名AK−3555、160℃,20分焼付けタイプ)を塗布・焼付けして約30μm厚の塗膜を形成した。そして、これら塗装試験片について、下記方法によって塗装密着性試験及び塗装耐食性試験を行った。その結果を次の表1に示す。
【0055】
〔塗装密着性試験〕
塗装試験片を恒温槽内で50±1℃に加温した非メチクロ酸性剥離剤(中外ケミテック社製の商品名サプロテックP−57GX)の液中に浸漬し、塗装皮膜が剥がれるまでの時間を測定した。
【0056】
〔塗装耐食性試験〕
塗装試験片の塗装面にクロスカットを入れた上で、この塗装試験片を恒温槽内で50±1℃に加温したCASS試験液(5%食塩水1Lに塩化第二銅を0.26g添加し、酢酸にてpHを3.0〜3.1に調整したもの)に168時間浸漬したのち、水洗、乾燥した上でクロスカット部に沿ってセロテープを貼着して引き剥がした際の塗装の剥離状態を観察し、次の四段階で評価した。
◎・・・全く剥離なし。
○・・・クロスカットに沿う領域に部分的に微小な剥離がある。
△・・・クロスカットに沿って幅5mm未満の剥離がある。
×・・・クロスカットに沿って幅5mm以上の剥離又は全面剥離を生じている。
【0057】
【表1】

【0058】
上表から明らかなように、本発明の塗装前処理によれば、アルミ材に対して従来の6価クロメート処理に匹敵する優れた塗装密着性及び塗装耐食性を付与できる。しかるに、比較例3,4のように、二段目の表面処理に用いるポリマー処理液として、単量体成分の一部が本発明の規定外である共重合体の水溶液を用いた場合、良好な塗装密着性及び塗装耐食性は得られないことが判る。
【0059】
次に、前記実施例1,2,4,5及び比較例1,3〜6の塗装前処理を施した各試験片について、それぞれ表面に市販のアルミ用ウレタン塗料(大橋化学社製の商品名メタリック#140、150℃,20分焼付けタイプ)を塗布・焼付けして約30μm厚の塗膜を形成した。そして、これら塗装試験片について、前記同様に塗装密着性試験及び塗装耐食性試験を行った。その結果を次の表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
上表の結果から、本発明の塗装前処理によれば、塗料種が前記のアクリル系とは異なるウレタン系の場合でも、アルミ材に対して従来の6価クロメート処理に匹敵する優れた塗装密着性及び塗装耐食性を付与できることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ材の表面に、ノンクロム金属化成処理液によって遷移金属を含む化成皮膜を形成したのち、アミン化合物とカルボン酸との共重合体の水溶液からなるポリマー処理液で表面処理することを特徴とするアルミ材の塗装前処理方法。
【請求項2】
前記ポリマー処理液の共重合体がジアリルアミン無機酸塩と脂肪族不飽和カルボン酸との共重合体である請求項1記載のアルミ材の塗装前処理方法。
【請求項3】
前記ポリマー処理液のポリマー濃度が0.5〜25重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のアルミ材の塗装前処理方法。
【請求項4】
前記ポリマー処理液のポリマー濃度が1.0〜5.0重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のアルミ材の塗装前処理方法。
【請求項5】
前記ノンクロム金属化成処理液が、クロムを除く遷移金属イオンとフッ素イオンを含むリン酸塩化成処理液である請求項1〜4のいずれかに記載のアルミ材の塗装前処理方法。
【請求項6】
前記ノンクロム金属化成処理液が、前記遷移金属イオンとしてモリブデンイオン及びコバルトイオンを含有する請求項5記載のアルミ材の塗装前処理方法。
【請求項7】
前記ポリマー処理液による表面処理後に、ポリエチレン系樹脂水性エマルジョンによる表面処理を施す請求項1〜6のいずれかに記載のアルミ材の塗装前処理方法。

【公開番号】特開2007−154303(P2007−154303A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380769(P2005−380769)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(506007389)
【Fターム(参考)】