説明

アレルゲン失活剤

【課題】pHの変動による性能の低下が少なく、アレルゲンを吸着除去できるだけではなく、アレルゲン自体を失活除去できるアレルゲン失活剤を提供すること。
【解決手段】〔1〕光触媒機能を持つ酸化チタン、ならびに水および/または低級アルコールを含有するアレルゲン失活剤、〔2〕好ましくは、酸化チタンの一次粒子の平均粒子径が1〜200nmである前記〔1〕記載のアレルゲン失活剤。ハウスダスト処理剤、スプレーならびにシートに好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウスダスト中のアレルゲンに作用するアレルゲン失活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
室内には、ダニの死骸や糞、花粉、塵埃、繊維屑など、種々のハウスダストが存在する。一般に、電気掃除機などを用いて掃除が行われるが、例えば、カーペット、ソファー、寝具などにからみついた細かいハウスダストは、電気掃除機などをかけただけでは充分に除去することができない。しかしながら、喘息、皮膚炎、花粉症などの種々のアレルギー疾患は、ハウスダストに含まれるアレルゲン、主としてダニアレルゲンや花粉により発症することが知られており、従って、アレルゲンの失活およびハウスダストの除去は重要である。
【0003】
アレルゲンを効果的に除去する技術としては、例えば、水膨潤性粘土、ポリビニルアルコールなどで処理する技術(例えば、特許文献1および2参照)、カオリン、タルクなどの無機粉体で処理する技術(特許文献3参照)などが知られている。これらはいずれも、使用する各成分によりアレルゲンを吸着して除去するものである。また、タンニン酸やアルコール、塩化ベンザルコニウムで処理する技術など(特許文献4〜7参照)が知られており、これらはアレルゲンを変性失活して除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−16941号公報
【特許文献2】特開2002−128680号公報
【特許文献3】特開2002−167332号公報
【特許文献4】特公平2−16731号公報
【特許文献5】特開2000−63207号公報
【特許文献6】特開2000−264837号公報
【特許文献7】特開2001−335474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のようなアレルゲンを吸着して除去する技術の中には、高pHではその吸着性が低下する傾向があった。また、前記のアレルゲンを変性失活させて除去する技術に使用される成分の中には被処理物に染みができるなど、使用性に問題のあるものもあった。また、上記いずれの技術もハウスダストの除去効果としては未だ充分なものではなった。
【0006】
従って、本発明は、pHの変動による性能の低下が少なく、アレルゲンを吸着除去できるだけではなく、アレルゲン自体を失活除去できるアレルゲン失活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
〔1〕光触媒機能を持つ酸化チタンを含有するアレルゲン失活剤
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、pHの変動による性能の低下が少なく、アレルゲンを吸着除去できるだけではなく、アレルゲン自体を失活除去できるアレルゲン失活剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、標準ダストの実体顕微鏡写真(倍率50倍)である。
【図2】図2は、吸着・凝集性が認められない状態を示す実体顕微鏡写真(倍率50倍)である。
【図3】図3は、吸着・凝集性が認められる状態を示す実体顕微鏡写真(倍率50倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアレルゲン失活剤は、光触媒機能を持つ酸化チタンを含有することを一つの特徴とする。かかる特徴を有することにより、酸化チタンの持つアレルゲン吸着能を利用してアレルゲンを吸着して除去できるだけではなく、酸化チタンの光触媒機能によりアレルゲン自体を失活させて除去できるという効果が奏される。また、本発明のアレルゲン失活剤に含有される酸化チタンは金属酸化物であるがゆえに、経時的に変色することなく、従来、問題であった染みなどが生じにくい。
【0011】
本発明のアレルゲン失活剤の失活対象となるアレルゲンとしては、ダニの死骸や糞、花粉などが挙げられる。
【0012】
本明細書において、「光触媒機能」とは、光エネルギーによって発現する酸化力を利用して有機物などを分解できる能力をいう。酸化チタンが光触媒機能を有するか否かは、例えば、メチレンブルーの退色が酸化チタンによって生じるか否かで確認することができる。具体的には、酸化チタンをメチレンブルー水溶液に添加し、光照射を行ないながら、メチレンブルーの退色の程度を目視することで確認することができる。
【0013】
本発明に使用される酸化チタンの結晶型には、アナタース型とルチル型があるが、アレルゲン失活性の観点から、アナタース型が好ましい。
【0014】
本発明に使用される酸化チタンの一次粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、アレルゲン失活性の観点から、1〜200nmが好ましく、1〜30nmがより好ましく、5〜20nmがさらに好ましい。酸化チタンの平均粒子径がかかる範囲であれば、アレルゲン失活剤のアレルゲンの失活・除去効果が高まると共に、その分散安定性が高まる傾向が見られるので好ましい。酸化チタンの一次粒子の平均粒子径は、例えば、数百nm程度であれば電子顕微鏡により測定することができ、それ以下であれば、X線解析の測定結果から、当該分野で公知のScherrerの式を用いて結晶子径として測定することができる。酸化チタンの一次粒子の平均粒子径の調整は、例えば、酸化チタンの焙焼によって容易に行うことができる。なお、酸化チタンは、平均粒子径の異なる1種または2種以上のものを混合して用いることもできる。
【0015】
本発明のアレルゲン失活剤中の酸化チタンの含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、0.005〜100重量%が好ましく、0.01〜20重量%がより好ましい。
【0016】
アレルゲン失活剤に使用される溶剤としては、水および/または低級アルコールが好適である。水としては、例えば、精製水などを用いることができる。低級アルコールの炭素数は、酸化チタンの分散安定性の観点から、1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。したがって、低級アルコールのなかでは、エタノールが好適である。
【0017】
溶剤として水と低級アルコールの混合液を使用する場合、水:低級アルコールの重量比は、ハウスダスト処理剤の乾燥性および使用性を高める観点、ならびに引火性を低減させるとともに刺激性を和らげる観点から、50:50〜80:20であることが好ましく、60:40〜70:30であることがより好ましい。
【0018】
本発明のアレルゲン失活剤には、酸化チタンの分散性の向上の観点から、分散剤を適量で含有させてもよい。分散剤の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないため、その種類などに応じて、本発明の目的が阻害されない範囲内で調整することが好ましい。
【0019】
本発明のアレルゲン失活剤にはさらに、消臭剤、殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤、殺菌剤、防黴防腐剤、帯電防止剤、光沢剤、安定化剤、香料、pH調整剤、風合向上剤などの添加剤を適量で含有させてもよい。添加剤の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないため、その種類などに応じて、本発明の目的が阻害されない範囲内で調整することが好ましい。
【0020】
本発明のアレルゲン失活剤は、例えば、酸化チタンを前記溶剤に分散させることにより調製して使用することもできるし、酸化チタンそのものをアレルゲン失活剤として使用することもできる。
【0021】
本発明のアレルゲン失活剤は幅広いpHにおいてその効果を奏することができるが、アレルゲン失活作用の維持の観点から、pHは好ましくは4〜9である。
【0022】
以下、前記アレルゲン失活剤を含有する本発明のハウスダスト処理剤、スプレーならびにシートについて順に説明する。
【0023】
(1)処理剤
本発明のハウスダスト処理剤の処理対象としては、一般的にハウスダストと称されるものであれば特に限定されないが、ダニの死骸や糞、花粉などのアレルゲンを含むハウスダストに対して優れた除去効果を奏し、ダニの死骸や糞などのダニアレルゲンを含むハウスダストに対して特に優れた除去効果を奏する。
【0024】
本発明のハウスダスト処理剤は、そのものとしても使用可能であるが、後述のスプレーやシートの調製に好適に用いられる。
【0025】
ハウスダスト処理剤に含まれるアレルゲン失活剤の含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、酸化チタンの溶剤への充分な分散性を確保し、ならびに充分なハウスダストの除去効果を発揮させる観点から、酸化チタンとして、好ましくは0.005〜20重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.2重量%である。
【0026】
ハウスダスト処理剤は、さらにポリアクリル酸ナトリウムを含有する。該成分を含有させることで、さらに、例えば、ハウスダストを凝集して、電気掃除機などにより除去しやすくなるという効果が奏される。
【0027】
本発明に使用されるポリアクリル酸ナトリウムの重量平均分子量は、好ましくは200×104〜2000×104であり、より好ましくは500×104〜1000×104である。
【0028】
本発明のハウスダスト処理剤中のポリアクリル酸ナトリウムの含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.0001〜5重量%、より好ましくは0.0005〜1重量%、さらに好ましくは0.0005〜0.1重量%である。
【0029】
ハウスダスト処理剤に使用される溶剤としては、アレルゲン失活剤に含有されている水および/または低級アルコールをハウスダスト処理剤の溶剤としてもよく、また、新たな水および/または低級アルコールをハウスダスト処理剤の溶剤としてもよい。水としては、アレルゲン失活剤と同様に、精製水などを用いることができる。低級アルコールの炭素数は、アレルゲン失活剤と同様に、酸化チタンの分散安定性の観点から、1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。したがって、低級アルコールのなかでは、エタノールが好適である。
【0030】
溶剤として水と低級アルコールの混合液を使用する場合、水:低級アルコールの重量比は、ハウスダスト処理剤の乾燥性および使用性を高める観点、ならびに引火性を低減させるとともに刺激性を和らげる観点から、50:50〜80:20であることが好ましく、60:40〜70:30であることがより好ましい。
【0031】
ハウスダスト処理剤における水と低級アルコールとの合計含有量は、酸化チタンの分散安定性、ハウスダスト処理剤の乾燥性および使用性を考慮して決定される。前記水と低級アルコールとの合計含有量は、通常、酸化チタン、ポリアクリル酸ナトリウム、添加剤および消臭成分との残部であることが好ましい。
【0032】
本発明のハウスダスト処理剤には、例えば、分散剤、殺虫剤、殺ダニ剤、忌避剤、殺菌剤、防黴防腐剤、帯電防止剤、光沢剤、安定化剤、香料、pH調整剤、風合向上剤などの添加剤を適量で含有させてもよい。添加剤の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないため、その種類などに応じて、本発明の目的が阻害されない範囲内で調整することが好ましい。
【0033】
本発明のハウスダスト処理剤には、さらに消臭成分を含有させるのが好ましい。該成分を含有させることで、さらに、例えば、ヒトの皮脂や汗に由来する臭いの除去効果をも発揮させることができる。
【0034】
消臭成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、緑茶、柿、竹、ツバキ、バラ、キク、マツ、スギ、オオバコ、サトウキビ、モウチクソウなどの植物抽出物、ローズ油、ラベンダー油、ベルガモット油、ビターアーモンド油、カナンガ油、カシア油、シダーウッド油、シナモン油、シトロネラ油、レモン油、ライム油、ナツメグ油、ペパーミント油、アビエス油、パイン油、スターアニス油、テレビン油、ベチバー油、ユーカリ油、ローズマリー油、ローズ油、ヒノキ油などの植物精油、アネトール、シトロネラール、シトラール、リモネン、シネオール、α−ピネン、テルピノレンなどの植物精油由来成分、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ピルビン酸エチル、ピルビン酸エステル、マレイン酸ジメチル、ベタインなどの消臭成分などが挙げられる。前記のような臭いの除去効果に優れることから、緑茶、柿、竹などの植物抽出物が好適である。
【0035】
本発明のハウスダスト処理剤中の消臭成分の含有量は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、充分な臭いの除去効果を発揮させる観点から、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜2重量%である。
【0036】
ハウスダスト処理剤としては、例えば、酸化チタンを0.01〜0.2重量%、ポリアクリル酸ナトリウムを0.0005〜0.01重量%、添加剤を0.01〜5重量%、エタノールを20〜50重量%、水を残部として含有してなるハウスダスト処理剤が特に好適である。
【0037】
本発明のハウスダスト処理剤は、前記各成分を適宜混合することにより得られる。酸化チタンは一般的に水に分散しにくいので、通常、水および/または低級アルコールに分散剤を添加して攪拌して分散液として調製するのが好ましい。
【0038】
本発明のハウスダスト処理剤は幅広いpHにおいてその効果を奏することができるが、アレルゲン失活作用の維持の観点から、pHは好ましくは4〜9である。
【0039】
(2)スプレー
本発明のスプレーは、前記ハウスダスト処理剤を公知のスプレー容器に充填してなるものであり、好ましい態様のハウスダスト処理剤を充填してなるものがより好適である。
【0040】
スプレー容器の種類には特に限定がないが、使用時の簡便性の観点から、例えば、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器、蓄圧式スプレー容器などが好ましい。スプレー容器の内容量は、使用性などの観点から、通常、好ましくは10〜1000mL程度、より好ましくは30〜750mL程度、さらに好ましくは50〜500mL程度である。
【0041】
前記ハウスダスト処理剤のスプレー容器への充填は、公知の方法に従って行うことができる。
【0042】
(3)シート
本発明のシートは、前記ハウスダスト処理剤を公知のシート材料に含浸させてなるものであり、好ましい態様のハウスダスト処理剤を含浸させてなるものがより好適である。
【0043】
なお、前記ハウスダスト処理剤の特に好適な態様におけるエタノールの含有量は20〜50重量%であるが、シートの調製に前記ハウスダスト処理剤を用いる場合、特に好適な態様におけるエタノールの含有量はフローリングワックスへの影響などを考慮すると、1〜50重量%である。
【0044】
シートの形状としては、特に限定されるものではないが、通常、縦150〜200mm、横200〜300mm、厚さ0.05〜1mm程度の大きさを有するものが好適である。かかるシートは、単層からなるものであっても、同一若しくは異なる材料・材質からなる層を積層してなるものであってもよい。
【0045】
前記シート材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、不織布、編織布、紙などが挙げられるが、強度が高く、低コストであり、目付の調整が容易であるなどの観点から、不織布が好適である。これらのシート材料は、公知の方法に従って製造することができる。また、市販のものが入手可能であれば、それを用いてもよい。
【0046】
例えば、シート材料として好適に使用される前記不織布は、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法などの公知の方法により製造することができる。また、その材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル、レーヨン、コットン、パルプなどが挙げられる。不織布の材質としては、ハウスダスト処理剤を含浸させ易いことから、レーヨンまたはパルプが好適であり、強度を保つという観点から、ポリエチレンまたはポリエステルが好適である。さらに、両方の観点から、それぞれにおいて好適な材料として例示されたものを適当な割合で混紡したものがより好適である。
【0047】
なお、不織布の目付、すなわち、単位面積当りの繊維重量としては、通常、30〜80g/m2程度が好適である。
【0048】
前記ハウスダスト処理剤のシート材料への含浸は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、前記好適な範囲の目付を有する不織布からなるシート材料に対し前記ハウスダスト処理剤を含浸させる場合、シート材料を目付の2〜3倍量程度の前記ハウスダスト処理剤に浸漬して、該シート材料に前記ハウスダスト処理剤を含浸させるのが好適である。すなわち、目付が50g/m2である場合、不織布からなるシート材料1m2当たり100〜150gの前記ハウスダスト処理剤を含浸させるのが好適である。
【0049】
本発明のハウスダスト処理剤及びスプレーは、例えば、電気掃除機によって掃除しようとする対象である室内のカーペット、ソファー、寝具などに散布などにより適用して用いられる。かかる場合、適用直後に、好ましくは数分間から数時間そのまま放置した後に、電気掃除機により通常通り前記対象の掃除を行うことで、アレルゲンを効果的に失活することができ、またハウスダストを効果的に除去することができる。また、例えば、寝具などを屋外に干す場合に、該寝具などに適用して用いることもできる。その場合、一定時間干した後、室内に取り込む際に、ハタキや手で叩くことでハウスダストを効果的に除去することができる。通常、干した寝具などを叩くと付着したハウスダストが細かく砕け、ますますとれ難くなる場合があるが、本発明のハウスダスト処理剤などを予め適用しておけば、ハウスダストが凝集され、効果的な除去が可能となる。
【0050】
なお、ハウスダスト処理剤は、その散布などが容易でないことから、スプレーとして用いるのが好適である。また、スプレーは、アレルゲンの失活作用およびハウスダストの除去効果を充分に発揮させる観点から、酸化チタンを均一に分散させた状態で用いるのが好適である。従って、通常、対象への適用前にスプレーをよく振って用いるのが好ましい。さらに、その適用時には、対象のスプレー適用部分が濡れているため、適用後一定時間をおき充分に乾燥させた後、掃除などを行うのが好ましい。なお、本発明のハウスダスト処理剤などが、緑茶、柿、竹などの植物抽出物などからなる消臭成分を含有してなる場合、アレルゲンを効果的に失活でき、ハウスダストを効果的に除去できると共に、前記したような臭いを効果的に除去することができる。
【0051】
一方、本発明のシートは、ハウスダストが溜まっている部分、例えば、寝具などの表面や、室内電灯のかさ、窓枠、床などを拭くのに好適に使用される。通常、かかる部分を水拭きした場合、例えば、ハウスダストが濡れるだけで、拭きとることは困難であるが、本発明のシートによれば、アレルゲンを効果的に失活させると共にハウスダストを凝集させて効果的に除去することができる。また、前記のような消臭成分が含有されておれば、前記したような臭いを効果的に除去することもできる。
【実施例】
【0052】
実施例1〜5および比較例1〜3 アレルゲン失活剤の調製
表1に示す酸化チタンA〜F、シリカまたはタルクを表2に示す配合に従って各成分を混合し、試験液1〜5(実施例1〜5)および比較試験液1〜3(比較例1〜3)を得た。
【0053】
なお、酸化チタン、シリカまたはタルクは、常温の水に攪拌下、少量ずつ添加することにより、水に分散させた。また、使用した酸化チタンの光触媒機能を確認するため、酸化チタン0.1gをメチレンブルー水溶液(0.1重量%)100mLに添加攪拌し、得られた分散液をスポイトで採取してその一滴をスライドグラス上にのせ、光照射(ブラックライト、紫外線強度1000μW/cm2)を行ないながら、メチレンブルーの退色の程度を肉眼で観察したところ、光照射開始から1時間後に、酸化チタンA〜Eを分散させた分散液の色は青色から無色透明に変化し、一方酸化チタンFを分散させた分散液の色は青色から変化しなかった。従って、酸化チタンA〜Eは光触媒機能を有し、一方、酸化チタンFは光触媒機能を有していなかった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
試験例1 アレルゲン失活作用の評価
前記試験液1〜5及び比較試験液1〜3のアレルゲン失活作用を、アレルゲンとしてダニアレルゲンを用い、以下の方法に従って評価した。
【0057】
Dfb抗原〔ダニ虫体粗抗原;ササら(Sasa, M. et al., Jpn. J. Exp. Med., 40: p367-382, 1970)の方法により得た〕をPBSに対し20μg/mLの濃度となるように溶解して調製した抗原液1mLに、0.15mLの試験液1〜5及び比較試験液1〜3をそれぞれ添加した。なお、陰性対照では、それらの試験液の代わりに同量の水を添加した。室温で蛍光灯(36W×8)の下、2時間維持した後、各試験液によるアレルゲン失活作用の程度をマイティーチェッカー(ダニアレルゲン検知用キット:シントーファイン社製)により測定した。
【0058】
マイティーチェッカーによれば、被検液中の、アレルゲンとして作用し得るダニアレルゲンDer2(主要アレルゲンの1つ)量を、モノクローナル抗体を用いた水平展開方式により測定することができるので、各試験液によるアレルゲン失活作用の程度は、各試験液のアレルゲンの失活作用を表すものと考えられる。
【0059】
マイティーチェッカーによるダニアレルゲン量の判定基準を以下の表3に、また、該判定基準に基づく各試験液によるアレルゲン失活作用の程度の判定結果を表4に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
表4より、試験液1〜5のアレルゲン失活作用の程度は比較試験液1〜3および陰性対照に比べ高いことがわかる。比較試験液に使用した成分は従来のアレルゲン除去技術に使用された成分である。表4の結果は、これらの成分に比べ、本発明で使用される酸化チタンのダニアレルゲンの失活作用の程度が特に優れることを示す。
【0063】
試験例2 アレルゲン失活作用における光の影響
前記試験液1のアレルゲン失活作用が光によりどのような影響を受けるかを確認するため、光条件を変更する以外は試験例1と同様に、アレルゲン失活作用の程度を評価した。対照として、比較試験液1を使用した。その結果を表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
表5より、試験液1のアレルゲン失活作用の程度は強い光が当たることにより一層向上し、一方、比較試験液1のアレルゲン失活作用の程度は光条件によらず低いままであった。
【0066】
試験例3 アレルゲン失活作用におけるpHの影響
前記試験液1のアレルゲン失活作用がpHによりどのような影響を受けるかを確認するため、試験前に乳酸または炭酸ナトリウムを用いて試験液のpHを調整する以外は試験例1と同様に、アレルゲン失活作用の程度を評価した。その結果を表6に示す。なお、試験液1の試験前のpHは6であった。
【0067】
【表6】

【0068】
表6より、試験液1のアレルゲン失活作用の程度はpHによらず維持されることがわかる。
【0069】
実施例6および比較例4〜11 ハウスダスト処理剤の調製
表7に示す配合に従って各成分を混合し、試験液6(実施例6)および比較試験液4〜11(比較例4〜11)を得た。なお、表7における単位はgである。
【0070】
【表7】

【0071】
試験例4 アレルゲン失活作用の評価
試験液6および比較試験液4〜11について試験例1と同様にアレルゲン失活作用を評価した。その結果を表8に示す。
【0072】
試験例5 ハウスダスト凝集効果の評価
直径9cmのプラスチックシャーレに、塵埃として標準ダスト〔コットンリンタ、(財)日本空気清浄協会製〕10mgを入れ、市販のハンドスプレー容器に充填してなる試験液6または比較試験液4〜11を0.7mL標準ダストめがけて噴霧した。室温にて乾燥させた後、実体顕微鏡(Nikon製;拡大倍率50倍)にて顕鏡し、以下の評価基準に従って、標準ダストの吸着、凝集の程度を観察した。なお、対照として、プラスチックシャーレに標準ダストを入れただけのもの、試験液の代わりに水を噴霧したものを同様に観察した。その結果を表8に示す。
【0073】
〈標準ダストの吸着・凝集性〉
○:吸着・凝集性有り
×:吸着・凝集性無し
【0074】
なお、標準ダストの吸着・凝集性を評価する上では、対照の場合を標準ダストの吸着・凝集性なしとして、標準ダストの吸着・凝集状態を観察することにより評価した。また、標準ダストの実体顕微鏡写真を図1に、各評価(それぞれ×および○)の実体顕微鏡写真を図2および3に示す。
【0075】
【表8】

【0076】
表8の結果より、凝集剤としてアルギン酸ナトリウム、バレイショデンプン、ポリビニルアルコールまたはメチルセルロースを使用した比較試験液において、配合割合が約0.001重量%(比較例4、6、8および10)では、標準ダストに対して吸着・凝集性が認められず(図2)、標準ダストに対する吸着・凝集性を発揮するため配合割合を高めると(比較例5、7、9および11)、酸化チタンのアレルゲン失活作用を阻害した。これに対して、ポリアクリル酸ナトリウム(実施例6)では、約0.001重量%という低濃度でさえ、標準ダストに対する吸着・凝集性が認められ(図3)、アレルゲン失活作用をも阻害しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、アレルゲンの効果的な失活を可能にするアレルゲン失活剤、ハウスダストの効果的な除去を可能にするハウスダスト処理剤、スプレーならびにシートを提供することができる。
【0078】
なお、本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
〔1〕 光触媒機能を持つ酸化チタンを含有するアレルゲン失活剤。
〔2〕 水および/または低級アルコールをさらに含有する〔1〕記載のアレルゲン失活剤。
〔3〕 〔1〕または〔2〕記載のアレルゲン失活剤およびポリアクリル酸ナトリウムを含有するハウスダスト処理剤。
〔4〕 〔3〕記載のハウスダスト処理剤をスプレー容器に充填してなるハウスダスト処理用スプレー。
〔5〕 〔3〕記載のハウスダスト処理剤をシート材に含浸してなるハウスダスト処理用シート。
〔6〕 アレルゲンを失活させるための、光触媒機能を持つ酸化チタンの使用。
〔7〕 水および/または低級アルコールに光触媒機能を持つ酸化チタンおよびポリアクリル酸ナトリウムを分散する工程を含む、ハウスダスト処理剤の製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒機能を持つ酸化チタン、ならびに水および/または低級アルコールを含有するアレルゲン失活剤。
【請求項2】
酸化チタンの一次粒子の平均粒子径が1〜200nmである請求項1記載のアレルゲン失活剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−107253(P2012−107253A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29719(P2012−29719)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2005−89661(P2005−89661)の分割
【原出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】