説明

アレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制製品

【課題】 本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じにくいアレルゲン抑制化剤を提供する。
【解決手段】 本発明のアレルゲン抑制化剤は、 本発明のアレルゲン抑制化剤は、芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を含有し且つ上記芳香族ポリエーテル化合物を40〜95重量%以上含有していることを特徴とするので、アレルゲン抑制効果が相乗的に向上し優れたアレルゲン抑制効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スギなどの草木の花粉、ダニ、室内の塵などのアレルゲンが特異抗体と反応するのを抑制することができ且つ不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じ難いアレルゲン抑制化剤、及び、このアレルゲン抑制化剤を対象物に処理して得られるアレルゲン抑制製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー疾患が問題となってきている。このアレルギー疾患の主な原因としては、住居内に生息するダニ類、特に、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cry j1、Cry j2)などのアレルゲンが生活空間内に増加してきているためである。
【0003】
ヒョウヒダニのアレルゲンは、ヒョウヒダニそのものではなく、ヒョウヒダニの死骸や糞がアレルゲンとなるために、ヒョウヒダニを駆除しても、アレルギー疾患の根本的な解決にはならない。
【0004】
又、スギ花粉アレルゲンであるCry j1やCry j2は、各々分子量が約40kDaの糖タンパク質、分子量が約37kDaの糖タンパク質であり、これらのスギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜などに付着すると生体外異物として認識されて炎症反応を引き起こす。
【0005】
従って、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するためには、生活空間からアレルゲンを完全に取り除くか、アレルゲンを変性させるなどして不活性化させることが必要となる。
【0006】
アレルゲンは蛋白質であるので、アレルゲンを熱、強酸又は強アルカリなどで変性させると、アレルゲンはアレルゲン性を失うと考えられる。しかしながら、アレルゲンは非常に安定性が高く、家庭で安全に使用できる酸化剤、還元剤、熱、アルカリ、酸などでは容易に変性されない(非特許文献1参照)。
【0007】
又、アレルゲンに汚染された対象物に存在するアレルゲンを変性させようとすると、アレルゲンの汚染場所である対象物、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車内用品(シート、チャイルドシート)、車内装材(天井材など)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、その他の繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)などが条件によっては破損してしまう可能性があった。
【0008】
このため、アレルゲンの分子表面を比較的温和な条件で化学的に変性する方法が考えられてきた。例えば、生皮のなめし(タンニング)などに用いられているタンニン酸を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献1)、茶抽出物などを用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献2)、ヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献3)などが提案され、アレルゲン抑制効果も確認されている。
【0009】
しかしながら、これらの方法で用いられる化合物のほとんどはポリフェノールの一種であることから着色しており、上記対象物を着色してしまうといった問題点があった。
【0010】
又、特許文献4には、芳香族ヒドロキシ化合物を用いてアレルゲンを抑制する方法が提案されており、対象物に対する着色の問題については改善されているが、白色などの淡色の対象物に処理した場合には着色が生じることがあり充分なものではなかった。
【0011】
【非特許文献1】The Journal of Immunology Vol.144:1353-1360
【特許文献1】特開昭61−44821号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開平11−292714号公報
【特許文献4】特開2003−81727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制し、アレルギー症状の軽減或いはその発現の予防をすることができると共に、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じにくいアレルゲン抑制化剤、及び、このアレルゲン抑制化剤を対象物に処理して得られるアレルゲン抑制製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアレルゲン抑制化剤は、芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を含有し且つ上記芳香族ポリエーテル化合物を40〜95重量%以上含有していることを特徴とする。
【0014】
なお、アレルゲン抑制化剤とは、アレルゲン抑制効果を有するものをいい、又、「アレルゲン抑制効果」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制する効果をいう。このようなアレルゲン抑制効果を確認する方法としては、例えば、ニチニチ製薬社から市販されているELISAキットを用いてELISA法によりアレルゲン量を測定する方法、アレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)を用いてアレルゲン性を評価する方法などが挙げられる。
【0015】
上記芳香族ポリエーテル化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアリレートなどが挙げられ、アレルゲン抑制製品において、着色などの不測の変色や経時の変色をより効果的に防止することができることから、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルケトンが好ましく、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンがより好ましく、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンが特に好ましい。特に、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンは、化合物自体に粘着性が殆どなく、加工時にロールなどに付着するという不具合も起こりにくく生産性に優れており特に好ましい。なお、芳香族ポリエーテル化合物は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0016】
そして、芳香族ポリエーテル化合物は非水溶性であることが好ましい、このように芳香族ポリエーテル化合物が非水溶性であると、水に溶解して流れだすことがなく、アレルゲン抑制効果を長期間にわたって持続させることができる。ここで、非水溶性とは、20℃で且つpHが5〜9である水100gに対して溶解可能なグラム数(以下「溶解度」という)が1以下であることをいう。
【0017】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのモノマーと、エピクロロヒドリンとを、重縮合或いは酸化カップリング反応により重合して得られるものが好ましい。
【0018】
又、上記フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのモノマーを重縮合或いは酸化カップリング反応により重合して得られるものが好ましい。
【0019】
そして、上記ポリスルホンとしては、特に限定されないが、例えば、BASF社製の「ウルトラゾーンSシリーズ」、ソルベイアドバンストポリマー社製の「ユーデルPシリーズ」などが市販されている。
【0020】
更に、上記ポリエーテルスルホンとしては、特に限定されないが、例えば、BASF社製の「ウルトラゾーンEシリーズ」、ソルベイアドバンストポリマー社製の「レーデルAシリーズ」、住友化学社製の「スミカエクセルシリーズ」などが市販されている。
【0021】
又、上記ポリフェニルスルホンとしては、特に限定されないが、例えば、ソルベイアドバンストポリマー社製の「レーデルRシリーズ」などが市販されている。
【0022】
そして、上記ポリエーテルケトンとしては、特に限定されないが、例えば、住友化学社製の「スミブロイシリーズ」などが市販されている。
【0023】
更に、対象物への着色を特に効果的に防止することができることから、芳香族ポリエーテル化合物は、式(1)及び/又は式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有するものが好ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
(R1〜R12は水素又は炭化水素基であって、全てが同一であってもそれぞれが異なっていてもよい。X1は、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1及びZ2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群より選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
【0026】
ここで、式(1)(2)において、R1〜R12は水素又は炭化水素基である。この炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、シクロブテニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0027】
更に、式(1)において、X1は、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、メチレン基、プロピリデン基、スルホニル基が好ましい。
【0028】
又、式(1)(2)において、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合であり、メチレン基、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合が好ましく、Z1 は、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合がより好ましく、Z2 は、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基がより好ましい。
【0029】
そして、上記フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、下記の式(9)〜(11)に示す構造を有する有機基が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
又、芳香族ポリエーテル化合物が式(1)及び/又は式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物である場合、式(1)又は式(2)の構成単位を主たる繰返し単位としているか、或いは、式(1)及び式(2)の構成単位を主たる繰返し単位としておればよく、他の構成単位を含有していてもよい。
【0032】
上記式(1)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、ビスフェノールAとビス(4−クロロフェニル)スルホンとを重縮合させて得られるポリスルホン;ビスフェノールAやビスフェノールFと、エピクロロヒドリンとの重縮合により得られるエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
又、上記式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、ビス(4−クロロフェニル)スルホンとビスフェノールの芳香族求核置換重合や4,4−オキシベンゼンスルホン酸クロリドとジフェニルエーテルの求電子置換重合、p−フェノキシベンゼンスルホン酸ナトリウムの自己重縮合により得られるポリエーテルスルホン、4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリドとジフェニルエーテルとを重縮合させて得られるポリアリルスルホンなどが好ましい。
【0034】
そして、上記芳香族ポリエーテル化合物の重量平均分子量は、低いと、得られるアレルゲン抑制化剤及びこれを処理してなるアレルゲン抑制製品においてアレルゲン抑制効果が発現しないことがあるので、1500以上が好ましく、2500以上がより好ましい。また、本発明のアレルゲン抑制化剤をフィルム状などに成型して使用する場合には、加工性の観点から、芳香族ポリエーテル化合物の重量平均分子量は50000以上が好ましく、100000以上がより好ましい。アレルゲン抑制化剤からなるフィルムを対象物に貼り合わせることでアレルゲン抑制製品とすることができる。一方、アレルゲン抑制化剤を水に懸濁させて使用する場合は、芳香族ポリエーテル化合物の重量平均分子量が大きくなると、取り扱い性が低下することがあるので、200000以下が好ましく、50000以下がより好ましい。
【0035】
次に、芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香族ヒドロキシ基を有し且つアレルゲン抑制効果を備えたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール樹脂のように主鎖に芳香族ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物;線状高分子に下記式(3)〜(8)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物;式(3)〜(8)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物;複素芳香環式ヒドロキシ化合物;線状高分子に置換基として複素芳香環式ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物;鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、複素芳香環とは、ヘテロ原子の共役系を含む環、換言すれば、環内にヘテロ原子を含む環式構造のうち芳香族性を有する環をいい、複素芳香環を有する化合物としては、フラン、チオフェン、ピリジン、インドール、キノリンなどが挙げられる。
【0036】
先ず、式(3)〜(8)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。この芳香族ヒドロキシ化合物の置換基は、下記式(3)〜(8)で示される。
【0037】
【化3】

【0038】
なお、式(3)〜(8)において、nは、0〜5の整数である。これは、nが6以上となると、式(3)〜(8)で示される置換基が発現するアレルゲン抑制効果が不充分となるからである。
【0039】
各式中の複数個ある置換基R13 、R13・・・において、各置換基R13 は、水素又はヒドロキシ基である。更に、各式中、複数個ある置換基R13 、R13・・・の少なくとも一つは、芳香族ヒドロキシ化合物がアレルゲン抑制効果を発揮するために、ヒドロキシ基である必要がある。しかしながら、ヒドロキシ基の数が多過ぎると、水素アレルゲン抑制化剤を施したものが着色し或いは変色し易くなるため、ヒドロキシ基の数は一つが好ましい。即ち、各式中、複数個ある置換基R13 のうちの一つのみがヒドロキシ基である一方、このヒドロキシ基以外の置換基R13 が全て水素であることが好ましい。
【0040】
更に、ヒドロキシ基の位置は、立体障害の最も少ない位置に結合していることが好ましく、例えば、式(3)では、ヒドロキシ基がパラ位に結合していることが好ましい。
【0041】
上記式(3)〜(8)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体としては、式(3)〜(8)で示される置換基を有しておれば、特に限定されず、例えば、ビニルフェノール、チロシン、1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エテン(式(12))などの一価のフェノール基を有する単量体が挙げられる。
【0042】
【化4】

【0043】
更に、芳香族ヒドロキシ化合物のアレルゲン抑制効果を阻害しない範囲内において、式(3)〜(8)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体、好ましくは、一価のフェノール基を一個以上有する単量体に、この単量体と共重合可能な単量体を共重合させてもよい。
【0044】
このような単量体としては、例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロシキエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0045】
そして、式(3)〜(8)で示される置換基が結合している線状高分子としては、特に限定されず、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。この線状高分子と式(3)〜(8)で示される置換基との間の化学結合については、特に限定されず、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。
【0046】
ここで、線状高分子に式(3)〜(8)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、(1) 式(3)〜(8)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体の重合体又は共重合体、(2) 式(3)〜(8)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体と、この単量体と共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
【0047】
そして、線状高分子に式(3)〜(8)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、具体的には、ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ( 1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン) 、ポリ( 1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン) 、ポリ( 1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン) が好ましい。
【0048】
上記複素芳香環式ヒドロキシ化合物としては、アレルゲン抑制効果を発現するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、2−ヒドロキシフラン、2−ヒドロキシチオフェン、ヒドロキシベンゾフラン、3−ヒドロキシピリジンなどが挙げられる。
【0049】
上記線状高分子に複素芳香環式ヒドロキシ基が側鎖として結合された芳香族ヒドロキシ化合物を構成する、複素芳香環式ヒドロキシ基としては、例えば、チオフェンやフランなどの複素芳香環骨格にヒドロキシ基が結合したもの(下記式(13)(14))、複素芳香環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基が結合したもの(下記式(15))、複素芳香環骨格にヒドロキシ基及び炭素数が5以下のアルキル基が結合したもの、複素芳香環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基及び炭素数が5以下のアルキル基が結合したものなどが挙げられる。
【0050】
【化5】

【0051】
また、上記線状高分子に複素芳香環式ヒドロキシ基が側鎖として結合された芳香族ヒドロキシ化合物を構成する線状高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。
【0052】
この線状高分子と上記複素芳香環式ヒドロキシ基との間の化学結合は、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。
【0053】
上記複素芳香環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロシキ化合物としては、例えば、複素芳香環式ヒドロキシ基を有する単量体の重合体又は共重合体、複素芳香環式ヒドロキシ基を有する単量体と、この単量体と共重合可能な別の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0054】
上記複素芳香環式ヒドロキシ基を有する単量体と共重合可能な別の単量体としては、例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロシキエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0055】
続いて、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。この鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有し且つ鎖状高分子の主鎖或いは側鎖にフェノール基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であるが、対象物の風合いを損ねないという点から、上記脂環式構造が式(16)又は式(17)であることが好ましい。
【0056】
【化6】

【0057】
ここで、式(16)(17)において、R14 〜R21 はそれぞれ、水素、炭化水素基又はフェノール基である。この炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、シクロブテニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基、アラルキル基などが挙げられる。
【0058】
更に、上記脂環式構造部分に式(18)で示される置換基を有することが好ましく、式(16)のR14 〜R17 のうちの少なくとも一つの置換基が式(18)で示される置換基であることがより好ましい。
【0059】
【化7】

【0060】
ここで、式(18)において、R22〜R26はそれぞれ、水素又はヒドロキシ基であり、R22〜R26のうちの少なくとも一つはヒドロキシ基である。R22〜R26のうちの少なくとも一つをヒドロキシ基とすることにより、得られる芳香族ヒドロキシ化合物のアレルゲン抑制効果を確実に発現させることができる。しかしながら、ヒドロキシ基の数が多くなると、アレルゲン抑制化剤を処理した対象物が着色したり或いは変色し易くなるため、式(18)におけるR22〜R26のうち、一つの置換基のみがヒドロキシ基であり、このヒドロキシ基である置換基以外の全ての置換基が水素であることが好ましく、立体障害が少ないことから、R24がヒドロキシ基であって且つR22、R23、R25及びR26が水素であることがより好ましい。
【0061】
又、式(18)において、X2は直接結合又は炭化水素基であり、このような炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが挙げられる。
【0062】
なお、鎖状高分子の主鎖に式(16)で示される脂環式構造を有し且つこの脂環式構造部分に式(18)で示される置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、液状ポリブタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「PPシリーズ」で市販されており、鎖状高分子の主鎖に式(17)で示される脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、ジシクロペンタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「DPPシリーズ」「DPAシリーズ」で市販されている。
【0063】
そして、上記芳香族ヒドロキシ化合物の重量平均分子量は、低いと、得られるアレルゲン抑制化剤及びこれを処理してなるアレルゲン抑制製品においてアレルゲン抑制効果が発現しないことがあるので、1500以上が好ましく、2500以上がより好ましい。また、本発明のアレルゲン抑制化剤をフィルム状などに成型して使用する場合には、加工性の観点から、芳香族ヒドロキシ化合物の重量平均分子量は50000以上が好ましく、100000以上がより好ましい。アレルゲン抑制化剤からなるフィルムを対象物に貼り合わせることでアレルゲン抑制製品とすることができる。一方、アレルゲン抑制化剤を水に懸濁させて使用する場合は、芳香族ヒドロキシ化合物の重量平均分子量が大きくなると、取り扱い性が低下することがあるので、200000以下が好ましく、50000以下がより好ましい。
【0064】
そして、芳香族ヒドロキシ化合物は非水溶性であることが好ましい、このように芳香族ヒドロキシ化合物が非水溶性であると、水に溶解して流れだすことがなく、アレルゲン抑制効果を長期間にわたって持続させることができる。ここで、非水溶性とは、20℃で且つpHが5〜9である水100gに対して溶解可能なグラム数(以下「溶解度」という)が1以下であることをいう。
【0065】
そして、本発明のアレルゲン抑制化剤は、上記芳香族ポリエーテル化合物と上記芳香族ヒドロキシ化合物とを含有してなる。このように、芳香族ポリエーテル化合物と芳香族ヒドロキシ化合物とを併用することによってアレルゲン抑制効果が相乗的に向上し優れたアレルゲン抑制効果を発揮する。
【0066】
アレルゲン抑制化剤中における芳香族ポリエーテル化合物の含有量は、少ないと、対象物にアレルゲン抑制化剤を施した際に対象物が光などによって変色し易くなる虞れがある一方、多いと、芳香族ポリエーテル化合物と芳香族ヒドロキシ化合物とを併用したことによるアレルゲン抑制効果の向上が図れないので、40〜95重量%に限定され、45〜90重量%がより好ましい。
【0067】
そして、本発明のアレルゲン抑制化剤が効果を有するアレルゲンとしては、動物性アレルゲン、花粉などの植物性アレルゲンなどが挙げられる。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門など)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
【0068】
更に、上記アレルゲン抑制化剤に親水性高分子を含有させるのが好ましい。親水性高分子としては、空気中の水分子を集めることによってアレルゲン抑制化剤との相互作用を起こし得る反応場を形成し得るものであるものが好ましい。
【0069】
上記アレルゲン抑制化剤に親水性高分子を含有させることによって、通常の湿度条件下、例えば、絶対湿度50g/m3以下の雰囲気下においても、アレルゲン抑制化剤はアレルゲンを更に効果的に抑制することができる。
【0070】
なお、「空気中の水分子を集めることによってアレルゲン抑制化剤との相互作用を起こしうる反応場」とは、アレルゲンが抗原性を発揮する部分(エピトープ)の抗原性を抑制するために何らかの化学的相互作用を及ぼすための反応場のことであり、例えば、イオン化状態などの電気化学的遷移状態を安定化させ、化学反応の遷移状態の障壁エネルギーを下げることにより、自然な化学反応の進行が起こりうるような反応場のことをいう。
【0071】
そして、通常、化学反応を起こすために越えなければならない遷移状態のエネルギー障壁を下げるためには液体状態の水を必要とするが、上述のように、アレルゲン抑制化剤に親水性高分子を含有させておくことによって、空気中の水分を集めることが可能となり、作為的に湿度を上げるなどの操作を要することなく、上述の反応場をより確実に形成することができる。
【0072】
上記親水性高分子としては、特に限定されず、例えば、主鎖中にエーテル結合及び/又はアミド結合を有する高分子、側鎖に極性基を有する高分子、主鎖中にエーテル結合及び/又はアミド結合を有し且つ側鎖に極性基を有する高分子などが挙げられる。なお、上記極性基としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミンなどのアミン基;アンモニウム塩基などのカチオン性基;硫酸エステルやリン酸エステルなどのエステル基;カルボキシル基、スルホン基などのアニオン性基;ヒドロキシ基、アミド基などのノニオン性基などが挙げられる。
【0073】
上記親水性高分子としては、例えば、でんぷん、セルロース、タンニン、リグニン、アルギン酸、アラビアゴムなどのヒドロシキ基を有する天然系化合物の他、ポリビニルアルコール、ブチラールなどのポリアルコール;ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリエーテル;ポリアクリル酸などのポリマー酸;ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリマー塩;ポリアリルアミンなどのポリアミン;ポリアクリルアミド;ポリビニルピロリドン;ポリウレタン;アクリル樹脂などの合成系化合物などが挙げられ、中でも通常の室内条件下で潮解性を示さないという点から合成系高分子が好ましく、さらに、吸湿性のみならず保水性が高いことから、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンが好ましい。なお、親水性高分子は単独でも2種類以上のものを併用してもよいが、異なる分子構造を有する2種類以上の親水性高分子を組み合わせることが好ましい。
【0074】
異なる分子構造を有する2種類以上の親水性高分子の組合せとしては、ポリエーテルとポリマー塩との組合せ、ポリエーテルとポリアルコールとの組合せが好ましく、具体的には、ポリオキシエチレンとポリアクリル酸ナトリウムとの組合せ、ポリオキシエチレンとポリビニルアルコールとの組合せがより好ましい。
【0075】
上記親水性高分子の融点は、低いと、使用雰囲気下にて液体状態となる場合があり、アレルゲン抑制化剤を対象物に処理してなるアレルゲン抑制製品がべとつくなど、風合いを損なう虞れがあるので、40℃以上が好ましく、水と接する機会の多い雰囲気下にて用いられる場合にはアレルゲンの抑制効果を持続させるために、50℃以上がより好ましい。
【0076】
上記親水性高分子の含有量は、少ないと、空気中の水分子を十分に集められないため、アレルゲンとの相互作用を起こしうるに十分な反応場を形成することができず、アレルゲン抑制化剤が十分なアレルゲンの抑制効果を発揮することができないことがある一方、多いと、アレルゲン抑制化剤の量が相対的に少なくなってしまい、アレルゲン抑制化剤のアレルゲン抑制効果が低下することがあるので、芳香族ポリエーテル化合物と芳香族ヒドロキシ化合物の総量100重量部に対して40〜1000重量部が好ましく、50〜800重量部がより好ましく、50〜300重量部が特に好ましい。
【0077】
本発明のアレルゲン抑制化剤には、アレルゲン抑制効果を阻害しない範囲において、分散剤、乳化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの製剤用補助剤が配合されていてもよく、又、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤などが含有されていてもよい。
【0078】
又、アレルゲン抑制化剤を用途に応じて適宜マトリックスに混合した形で使用することができる。このようなマトリックスとしては、アレルゲン抑制化剤を変性させないものであれば、特に限定されず、例えば、多糖類やその塩、デキストリン、ゼラチン、高級アルコール、油脂類、ステアリン酸などの高級脂肪酸、パラフィン類、流動パラフィン類、白色ワセリン、ハイドロカーボンゲル軟膏、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、水などが挙げられる。
【0079】
次に、アレルゲン抑制化剤を対象物に処理してアレルゲン抑制製品とする方法について説明する。アレルゲン抑制化剤は、スプレー型、エアゾール型、燻煙型、加熱蒸散型などの汎用の使用方法を用いて生活用品などの対象物に処理しアレルゲン抑制製品とすることができる。
【0080】
アレルゲン抑制化剤を溶媒に溶解或いは分散させてアレルゲン抑制化剤溶液とし、この溶液に水溶剤、油剤、乳剤、懸濁剤などを配合することによって、アレルゲン抑制化剤をスプレー型とすることができる。なお、スプレー型とは、常圧下にあるアレルゲン抑制化剤溶液に圧力を加えてアレルゲン抑制化剤を霧状に噴霧する使用方法をいう。
【0081】
上記アレルゲン抑制化剤は、懸濁液にした場合の安定性が優れていることから、スプレーなどの噴霧形態で生活用品などの対象物へ処理する用途に適している。
【0082】
上記溶媒としては、例えば、水(好ましくは、イオン交換水)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミドなど)などが挙げられる。
【0083】
そして、上記スプレー型のアレルゲン抑制化剤に、固体担体(タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなど)を添加することにより、アレルゲン抑制化剤をエアゾール型とすることができる。
【0084】
ここで、エアゾール型とは、容器内にアレルゲン抑制化剤溶液を噴射剤と共に該噴射剤が圧縮された状態に封入しておき、噴射剤の圧力によってアレルゲン抑制化剤を霧状に噴霧させる使用方法をいう。なお、噴射剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル、LPGなどが挙げられる。
【0085】
また、上記スプレー型のアレルゲン抑制化剤に、酸素供給剤(過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウムなど)、燃焼剤(糖類、澱粉など)、発熱調整剤(硝酸グアニジン、ニトログアニジン、リン酸グアニル尿素など)、酸素供給剤分解用助剤(塩化カリウム、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、活性炭など)などを添加することにより、アレルゲン抑制化剤を燻煙型とすることができる。なお、燻煙型とは、アレルゲン抑制化剤を微粒子化して煙状とし、分散させる使用方法をいう。
【0086】
そして、アレルゲン抑制化剤を、各種使用方法に応じて、生活用品などの対象物に噴霧、分散、塗布又は固着させることによって供給することにより、アレルゲンを抑制することができるアレルゲン抑制製品が得られる。
【0087】
又、上記アレルゲン抑制製品において、アレルゲン抑制化剤に硬化剤を含有させて芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を架橋させることによって、芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の水などの溶剤に対する溶解性を低下させて耐溶剤性を向上させ、アレルゲン抑制化剤のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って持続させることができる。
【0088】
例えば、アレルゲン抑制製品に水がかかり或いはアレルゲン抑制製品を洗濯した場合にあっても、アレルゲン抑制化剤が水に溶解してアレルゲン抑制製品から消失するのを防止することができ、アレルゲン抑制製品のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って持続させることができる。
【0089】
上記硬化剤としては、芳香族ポリエーテル化合物及び/又は芳香族ヒドロキシ化合物を架橋させることができれば、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物などの化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体などが挙げられ、これらは単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記アミン化合物としては、特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミンなどの脂肪族アミン及びその誘導体;メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの脂環式アミン及びその誘導体;m−キシレンジアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族アミン及びその誘導体などが挙げられる。
【0091】
上記アミン化合物から合成される化合物としては、特に限定されず、例えば、上記アミン化合物と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などのカルボン酸化合物とから合成されるポリアミノアミド化合物及びその誘導体;上記アミン化合物と、ジアミノジフェニルメタンビスマレイミドなどのマレイミド化合物とから合成されるポリアミノイミド化合物及びその誘導体;上記アミン化合物とケトン化合物とから合成されるケチミン化合物及びその誘導体;上記アミン化合物と、エポキシ化合物、尿素、チオ尿素、アルデヒド化合物、フェノール化合物、アクリル化合物などの化合物とから合成されるポリアミノ化合物及びその誘導体などが挙げられる。
【0092】
上記3級アミン化合物としては、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1、これらの誘導体などが挙げられる。
【0093】
そして、上記イミダゾール化合物としては、特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、これらの誘導体などが挙げられる。
【0094】
上記ヒドラジド化合物としては、特に限定されず、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、これらの誘導体などが挙げられる。
【0095】
上記メラミン化合物としては、特に限定されず、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0096】
上記酸無水物としては特に限定されず、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物、クロレンド酸無水物、これらの誘導体などが挙げられる。
【0097】
上記フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、これらの誘導体などが挙げられる。
【0098】
上記熱潜在性カチオン重合触媒としては、特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素などを対アニオンとした、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩などのイオン性熱潜在性カチオン重合触媒;N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステルなどの非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒などが挙げられる。
【0099】
上記光潜在性カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素などを対アニオンとした、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩及び芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類、並びに、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体及びアリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類などのイオン性光潜在性カチオン重合開始剤;ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどの非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤などが挙げられる。
耐洗濯性などを付与する方法としては、上記以外にもシリコン系樹脂などのバインダーを用いる方法などを挙げることができる。
【0100】
そして、上記対象物としては、特に限定されないが、例えば、畳、絨毯、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブルなど)、寝具(ベッド、布団、シーツなど)、車や飛行機、船などの車内用品及び車内装材(シート、チャイルドシートなど)、キッチン用品、ベビー用品、建築内装材(壁紙、床材など)、繊維製品(カーテン、タオル、衣類、ぬいぐるみなど)、フィルター、網戸、建築内装品、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0101】
特に、上記アレルゲン抑制化剤は、不測の着色や、日常の生活環境における変色が殆どないことから、光による退色、変色が課題となる用途、例えば、建築内装材、車内用品及び車内装材、網戸などのフィルター、衣類などの繊維製品などに適している。
【0102】
上記フィルターとは、分離、濾過、異物を排除する能力を有するものをいい、例えば、空気清浄機、エアコン、掃除機、換気扇などのフィルターや、埃や花粉などの進入を防ぐマスク、障子、或いは、虫などの進入を防ぐ網戸やカヤなどを挙げることができる。
【0103】
上記化粧品、医薬品及び医薬部外品とは、特に限定されるものではなく、例えば、皮膚外用剤、鼻スプレー、点眼剤、シャンプー、入浴剤、整髪料、ファンデーション、洗顔剤などを挙げることができる。
【0104】
上記建築内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、床材、壁紙、天井材、塗料、ワックスなどを挙げることができる。
【0105】
上記繊維製品とは、特に限定されるものではなく、例えば、寝具、カーペット、カーテン、衣類、ぬいぐるみなどを挙げることができる。
【0106】
上記車内用品及び車内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、シート、チャイルドシート、シートベルト、カーマット、シートカバー、絨毯などを挙げることができる。
【0107】
対象物に対するアレルゲン抑制化剤の処理量は、少ないと、アレルゲン抑制効果が発現しないことがある一方、多いと、生活用品などの対象物を痛めたり、組成物の場合は組成物の品質を低下させることがあるので、対象物100重量部に対して0.001〜100重量部が好ましく、0.01〜50重量部がより好ましく、0.05〜30重量部が特に好ましい。
【0108】
上記では、アレルゲン抑制化剤を対象物に処理する場合を説明したが、繊維製品を構成する繊維にアレルゲン抑制化剤を予め処理しておいてもよい。アレルゲン抑制化剤を繊維に処理する方法としては、アレルゲン抑制化剤を繊維に化学的に結合させ或いは物理的に固着させる方法が挙げられる。
【0109】
上記繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維などの合成繊維;アセテート繊維などの半合成繊維;キュプラ、レーヨンなどの再生繊維;綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維;これら各種繊維の複合化繊維や混綿などが挙げられる。
【0110】
次に、アレルゲン抑制化剤を繊維に物理的に固着させる方法について説明する。アレルゲン抑制化剤を繊維に物理的に固着させる方法としては、例えば、(1)アレルゲン抑制化剤を溶剤中に溶解或いは分散させてアレルゲン抑制化剤溶液を作製し、このアレルゲン抑制化剤溶液中に繊維を含浸させて、繊維にアレルゲン抑制化剤を含浸させる方法、(2)アレルゲン抑制化剤を溶剤中に溶解或いは分散させてなるアレルゲン抑制化剤溶液を繊維表面に塗布する方法、(3)アレルゲン抑制化剤を溶解或いは分散させてなるバインダー中に繊維を浸漬させて、アレルゲン抑制化剤をバインダーによって繊維に固着させる方法、(4)アレルゲン抑制化剤を溶解或いは分散させてなるバインダーを繊維表面に塗布し、アレルゲン抑制化剤をバインダーによって繊維に固着させる方法などが挙げられる。なお、上記(1)(2)の方法において、アレルゲン抑制化剤溶液中に下記バインダーを含有させてもよい。
【0111】
上記溶剤としては、特に限定されず、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール類;トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられる。
【0112】
上記バインダーとしては、アレルゲン抑制化剤を繊維表面に固着できるものであれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂からなるバインダーとしては、一液型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂などのウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0113】
又、上記では、アレルゲン抑制化剤を別途製造された繊維に物理的に固着させることによって、繊維にアレルゲン抑制化剤を含有させる要領を説明したが、アレルゲン抑制化剤を化学的に結合させた繊維原料を紡糸して繊維を作製してもよい。
【0114】
アレルゲン抑制化剤を化学的に結合させた繊維原料の作製要領としては、特に限定されず、例えば、芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の原料となる重合性単量体と、一般の繊維原料となる重合性単量体とを共重合させて繊維原料を作製する方法が挙げられる。
【0115】
又、アレルゲン抑制化剤に親水性高分子を含有させることを説明したが、芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の原料となる重合性単量体、親水性高分子を置換基として有する重合性単量体を用いることによって、芳香族ポリエーテル化合物、芳香族ヒドロキシ化合物及び親水性高分子を化学的に結合させた繊維原料を作製し、この繊維原料を紡糸することによって、アレルゲン抑制化剤及び親水性高分子を含有させた繊維を作製することができる。
【発明の効果】
【0116】
本発明のアレルゲン抑制化剤は、芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を含有し且つ上記芳香族ポリエーテル化合物を40〜95重量%以上含有していることを特徴とするので、アレルゲン抑制効果が相乗的に向上し優れたアレルゲン抑制効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0117】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0118】
(実施例1)
ポリエーテルスルホン(ソルベイアドバンストポリマー社製 商品名「GAFONE 3600P」、重量平均分子量:110000)を平均粒径15μmに粉砕した微粉体(以下、単に「ポリエーテルスルホンの微粉体」という)45gと、ポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量:5500)を平均粒径3μmに粉砕した微粉体(以下、単に「ポリ(4−ビニルフェノール)の微粉体」という)5gとからなる混合物に、イオン交換水134g及びポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤(ライオン社製 商品名「ポリティーPS−1900」)15gを加えて、攪拌機(エム・テクニック社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて回転速度20000rpmで2分間の攪拌を5回繰り返し行った後、キサンタンガム(三晶社製 商品名「ケルザン」)1g及びバインダー(北広ケミカル社製 商品名「TF−3500」)50gを加えることによりアレルゲン抑制化剤溶液を得た。
【0119】
そして、得られたアレルゲン抑制化剤溶液をイオン交換水で5倍に希釈して希釈液を調製し、この希釈液に綿布(財団法人日本規格協会製 商品名「かなきん3号」、JIS L0803準拠品)を浸漬させて、スターラーで5分間攪拌した後、80℃で2時間に亘って放置して乾燥させることにより、アレルゲン抑制綿布を得た。なお、得られたアレルゲン抑制綿布におけるアレルゲン抑制化剤の付着量は、綿布100gあたり1.5gであった。
【0120】
(実施例2)
ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマー社製 商品名「ユーデルP−1700」)を平均粒径15μmに粉砕した微粉体(以下、単に「ポリスルホンの微粉体」という)35gと、タンニン酸(和光純薬工業社製)10g及びポリ(L−チロシン)(ICNバイオメディカル社製、重量平均分子量:25000)5gからなる混合物に、イオン交換水164.2g及び特殊芳香族スルホン酸塩型高分子界面活性剤(花王社製 商品名「デモールSNB」)5gを加えて攪拌機(エム・テクニック社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて回転速度20000rpmで2分間の攪拌を5回行った後、ダイユータンガム(三晶社製 商品名「ケルコクリート200」)0.8g及びバインダー(北広ケミカル社製 商品名「TF−3500」)30gを加えることによりアレルゲン抑制化剤溶液を得た。
【0121】
そして、得られたアレルゲン抑制化剤溶液をイオン交換水で5倍に希釈して希釈液を調製し、この希釈液に不織布(東洋紡社製 商品名「ボランス 4301N」)を浸漬させて、スターラーで5分間攪拌した後、80℃で2時間に亘って放置して乾燥させることにより、アレルゲン抑制不織布を得た。なお、得られたアレルゲン抑制不織布におけるアレルゲン抑制化剤の付着量は、不織布100gあたり1.8gであった。
【0122】
(実施例3)
ポリエーテルスルホンの微粉体を45gの代わりに47.5gとし、ポリ(4−ビニルフェノール)の微粉体を5gの代わりに2.5gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。なお、得られたアレルゲン抑制綿布におけるアレルゲン抑制化剤の付着量は、綿布100gあたり1.6gであった。
【0123】
(実施例4)
ポリエーテルスルホンの微粉体を45gの代わりに25gとし、ポリ(4−ビニルフェノール)の微粉体を5gの代わりに25gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。なお、得られたアレルゲン抑制綿布におけるアレルゲン抑制化剤の付着量は、綿布100gあたり1.9gであった。
【0124】
(実施例5)
ポリエーテルスルホン(ソルベイアドバンストポリマー社製 商品名「GAFONE 3000P」、重量平均分子量:160000)40g及びポリ(4−ビニルフェノール)(アルドリッチ社製 商品名「poly(4-vinylphenol)」、重量平均分子量:8000)10gからなる混合物を、N,N−ジメチルホルムアミド450gに溶解させてアレルゲン抑制化剤溶液を作製した。
【0125】
そして、得られたアレルゲン抑制化剤溶液をN,N−ジメチルホルムアミドで10倍に希釈して希釈液を調製し、この希釈液に綿布(財団法人日本規格協会製 商品名「かなきん3号」、JIS L0803準拠品)を浸漬させて、スターラーで5分間攪拌した後、80℃で2時間に亘って放置して乾燥させることにより、アレルゲン抑制綿布を得た。なお、得られたアレルゲン抑制綿布におけるアレルゲン抑制化剤の付着量は、綿布100gあたり1.0gであった。
【0126】
(比較例1)
ポリ(4−ビニルフェノール)を用いなかったこと、イオン交換水を134gの代わりに139gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。
【0127】
(比較例2)
ポリエーテルスルホンを用いなかったこと、イオン交換水を134gの代わりに179gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。
【0128】
(比較例3)
ポリエーテルスルホンを用いなかったこと、ポリ(4−ビニルフェノール)の微粉体を5gの代わりに50gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。
【0129】
(比較例4)
ポリ(4−ビニルフェノール)を用いなかったこと、ポリエーテルスルホンを45gの代わりに50gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。
【0130】
(比較例5)
ポリエーテルスルホンの微粉体を45gの代わりに15gとし、ポリ(4−ビニルフェノール)の微粉体を5gの代わりに35gとした以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。
【0131】
(比較例6)
ポリエーテルスルホンの微粉体を45gの代わりに49.5gとし、ポリ(4−ビニルフェノール)の微粉体を5gの代わりに0.5gとしたこと以外は実施例1と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制綿布を得た。
【0132】
(比較例7)
タンニン酸及びポリ(L−チロシン)を用いなかったこと、ポリスルホンを35gの代わりに50g用いたこと以外は実施例2と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制不織布を得た。
【0133】
(比較例8)
ポリスルホンを用いなかったこと、タンニン酸を10gの代わりに33gとし、ポリ(L−チロシン)を5gの代わりに17gとしたこと以外は実施例2と同様の要領でアレルゲン抑制化剤及びアレルゲン抑制不織布を得た。
【0134】
(比較例9)
何の処理も施していない綿布(財団法人日本規格協会製 商品名「かなきん3号」、JIS L0803準拠品)を用意した。
【0135】
(比較例10)
何の処理も施していない不織布(東洋紡社製 商品名「ボランス 4301N」)を用意した。
【0136】
次に、実施例1〜5及び比較例1〜8で得られたアレルゲン抑制化剤のアレルゲン抑制能と、実施例1〜5及び比較例1〜8で得られたアレルゲン抑制製品、比較例9の綿布、及び、比較例10の不織布のアレルゲン抑制能及び耐光性とを下記の要領で評価し、その結果を表1に示した。
【0137】
(アレルゲン抑制化剤のアレルゲン抑制能)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract-Df」)をリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させて、タンパク量が10μg/ミリリットルのアレルゲン液を調製した。
【0138】
一方、実施例1〜4及び比較例1〜8で得られたアレルゲン抑制化剤溶液をイオン交換水で5倍に希釈したアレルゲン抑制化剤希釈液と、実施例5で得られたアレルゲン抑制化剤溶液をN,N−ジメチルホルムアミドで2.5倍に希釈したアレルゲン抑制化剤希釈液とを調製した。
【0139】
続いて、上記アレルゲン液を1ミリリットルづつ供給した試験管を用意し、上記アレルゲン抑制化剤希釈液をそれぞれ別の試験管に100マイクロリットルずつ添加し、37℃で16時間に亘って振盪した。
【0140】
次に、上記試験管内の液中におけるDer f1の存在量W1(ng/ミリリットル)をELISAキット(ニチニチ製薬社製)により測定した。
【0141】
又、アレルゲン液を供給した試験管にアレルゲン抑制化剤希釈液の代わりにリン酸バッファー(pH7.6)を供給したこと以外は上述と同様の要領で、試験管内の液中におけるDer f1の存在量W0(ng/ミリリットル)を測定した。
【0142】
そして、下記式に基づいてアレルゲン抑制率(%)を算出した。
アレルゲン抑制率(%)=100−(W1/W0)×100
【0143】
(アレルゲン抑制製品のアレルゲン抑制能)
上述の「アレルゲン抑制化剤のアレルゲン抑制能」の評価において作製したアレルゲン液を各試験管に3.5ミリリットル供給した。
【0144】
次に、実施例1〜5及び比較例1〜8で作製したアレルゲン抑制製品、比較例9の綿布、並びに、比較例10の不織布をそれぞれ2cm2になるように切り取り、これらをそれぞれ別の試験管に供給してアレルゲン液に浸漬させ、37℃で16時間振盪した。
【0145】
しかる後、試験管内の液100マイクロリットルを、アレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)に添加し、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して下記の基準によりアレルゲン抑制能を評価した。なお、アレルゲン測定具の発色が濃いほどアレルゲンが液中に濃い濃度で存在している。
【0146】
5・・・濃く、太くはっきりとしたラインが観測された。
4・・・ラインであることがはっきりと分かる。
3・・・ライン状にうっすらと発色している。
2・・・うっすらと発色している。
1・・・全く発色していない。
【0147】
(アレルゲン抑制製品の耐光性)
実施例1〜5及び比較例1〜8で作製したアレルゲン抑制製品、比較例9の綿布、並びに、比較例10の不織布について、JIS L0842に準拠して、紫外線カーボンに対する染色堅牢度試験(ブラックパネル温度:63℃、相対湿度:50%RH、照射時間:40時間)を行い、変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて、1級、1〜2級、2級、2〜3級、3級、3〜4級、4級、4〜5級、5級の9段階で評価を行った。なお、上記耐光性は、変退色用グレースケールによる評価が5級の場合に最も優れており、1級の場合に最も劣っている。
【0148】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエーテル化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物を含有し且つ上記芳香族ポリエーテル化合物を40〜95重量%以上含有していることを特徴とするアレルゲン抑制化剤。
【請求項2】
芳香族ポリエーテル化合物が非水溶性であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制化剤。
【請求項3】
芳香族ポリエーテル化合物が式(1)及び/又は式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアレルゲン抑制化剤。
【化1】


(R1〜R12は水素又は炭化水素基であって、全てが同一であってもそれぞれが異なっていてもよい。X1は、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1及びZ2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群より選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
【請求項4】
芳香族ポリエーテル化合物が、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリフェニルスルホンであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のアレルゲン抑制化剤。
【請求項5】
芳香族ヒドロキシ化合物が非水溶性であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制化剤。
【請求項6】
芳香族ヒドロキシ化合物が、線状高分子の側鎖に式(3)〜(8)で示される少なくとも1つの置換基を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項5に記載のアレルゲン抑制化剤。
【化2】


(nは0〜5の整数である。又、各式中複数個あるR13、R13・・・は水素又はヒドロキシ基であり、各式中におけるR13、R13・・・のうちの少なくとも1つはヒドロキシ基である。)
【請求項7】
芳香族ヒドロキシ化合物が、式(3)〜(8)に示される置換基を少なくとも1つ含む単量体を重合又は共重合してなることを特徴とする請求項1、請求項5又は請求項6の何れか一項に記載のアレルゲン抑制化剤。
【化3】


(nは0〜5の整数である。又、各式中複数個あるR13、R13・・・は水素又はヒドロキシ基であり、各式中におけるR13、R13・・・のうちの少なくとも1つはヒドロキシ基である。)
【請求項8】
芳香族ヒドロキシ化合物が、複素芳香環式ヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制化剤。
【請求項9】
芳香族ヒドロキシ化合物が、線状高分子の側鎖に複素芳香環式ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制化剤。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載のアレルゲン抑制化剤を対象物に処理して得られたことを特徴とするアレルゲン抑制製品。
【請求項11】
対象物が、フィルター、建築内装材、繊維製品、車内用品又は車内装材であることを特徴とする請求項10に記載のアレルゲン抑制製品。

【公開番号】特開2009−40926(P2009−40926A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208857(P2007−208857)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】