説明

アレルゲン抑制製品、及びアレルゲン抑制組成物

【課題】アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制することができ、即ち、アレルゲンによりアレルギー症状が発現するのを抑制し、かつ、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じ難く、さらに嫌な臭いを発生することが殆どないアレルゲン抑制製品及びアレルゲン抑制組成物を提供する。
【解決手段】対象物が芳香族ポリエーテル化合物で処理されてなるアレルゲン抑制製品、及び芳香族ポリエーテル化合物を含有することを特徴とするアレルゲン抑制組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スギなどの草木の花粉、ダニ、室内の塵などのアレルゲンが特異抗体と反応するのを抑制することができ、かつ、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じ難く、さらに嫌な臭いを発生することが殆どないアレルゲン抑制製品及びアレルゲン抑制組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー疾患が問題となってきている。このアレルギー疾患の主な原因としては、住居内に生息するダニ類、特に、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Crij1、Crij2)などのアレルゲンが生活空間内に増加してきているためである。
【0003】
ヒョウヒダニのアレルゲンは、ヒョウヒダニそのものではなく、ヒョウヒダニの死骸や糞がアレルゲンとなるために、ヒョウヒダニを駆除しても、アレルギー疾患の根本的な解決にはならない。
又、スギ花粉アレルゲンであるCrij1やCrij2は、各々分子量が約40kDaの糖タンパク質、分子量が約37kDaの糖タンパク質であり、これらのスギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜などに付着すると生体外異物として認識されて炎症反応を引き起こす。
【0004】
従って、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するためには、生活空間からアレルゲンを完全に取り除くか、アレルゲンを変性させるなどして不活性化させることが必要となる。
【0005】
アレルゲンは蛋白質であるので、アレルゲンを熱、強酸又は強アルカリ等で変性させると、アレルゲンはアレルゲン性を失うと考えられる。しかしながら、アレルゲンは非常に安定性が高く、家庭で安全に使用できる酸化剤、還元剤、熱、アルカリ、酸等では容易に変性されない(非特許文献1参照)。
【0006】
又、アレルゲンに汚染された対象物に存在するアレルゲンを変性させようとすると、アレルゲンの汚染場所である対象物、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車内用品(シート、チャイルドシート)、車内装材(天井材など)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、その他の繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)などが条件によっては破損してしまう可能性があった。
【0007】
このため、アレルゲンの分子表面を比較的温和な条件で化学的に変性する方法が考えられてきた。例えば、生皮のなめし(タンニング)などに用いられているタンニン酸を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献1)、茶抽出物などを用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献2)、ヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献3)等が提案され、アレルゲン抑制効果も確認されている。
【0008】
しかしながら、これらの方法で用いられる化合物のほとんどはポリフェノールの一種であることから着色しており、上記対象物を着色してしまうといった問題点があった。
又、特許文献4には、芳香族ヒドロキシ化合物を用いてアレルゲンを抑制する方法が提案されており、対象物に対する着色の問題については改善されているが、白色などの淡色の対象物に処理した場合には着色が生じることがあり充分なものではなかった。
【0009】
【非特許文献1】The Journal of Immunology Vol.144:1353-1360
【特許文献1】特開昭61−44821号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開平11−292714号公報
【特許文献4】特開2003−81727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アレルゲンが特異抗体と反応するのを効果的に抑制することができ、即ち、アレルゲンによりアレルギー症状が発現するのを抑制し、かつ、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じ難く、さらに嫌な臭いを発生することが殆どないアレルゲン抑制製品及びアレルゲン抑制組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、対象物が芳香族ポリエーテル化合物で処理されたアレルゲン抑制製品である。(以下、「本発明1」と記す。)
また、本発明他の発明は、芳香族ポリエーテル化合物を含有するアレルゲン抑制組成物である。(以下、「本発明2」と記す)
【0012】
本発明1のアレルゲン抑制製品は、対象物の表面又は内部が芳香族ポリエーテル化合物で処理されていることを特徴とする。アレルゲンの抑制効果が高いので、少なくとも対象物の表面が芳香族ポリエーテル化合物で処理されているのが好ましい。
また、本発明2のアレルゲン抑制組成物は、芳香族ポリエーテル化合物を含有することを特徴とする。
【0013】
上記芳香族ポリエーテル化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェイルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアリレート等が挙げられ、これらは単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。中でも、アレルゲン抑制製品又はアレルゲン抑制組成物における着色などの不測の変色及び経時の変色をより効果的に防止することができることから、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルケトンが好ましく、さらに、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンがより好ましい。特に、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどは、化合物自体に粘着性が殆どなく、加工時にロールなどに付着するという不具合も起こりにくく生産性に優れているという利点がある。また、酸化チタンなどと混合する場合、芳香族ヒドロキシ化合物だと酸化され着色したり、アレルゲン抑制活性が低下したりするが、芳香族ポリエーテル化合物だと酸化されにくく、着色や性能低下の心配が無くアレルゲン抑制製品やアレルゲン抑制組成物の作製に適している。
【0014】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのモノマーと、エピクロロヒドリンとを、重縮合或いは酸化カップリング反応により重合して得られるものが好ましい。
上記フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのモノマーを重縮合或いは酸化カップリング反応により重合して得られるものが好ましい。
上記ポリスルホンとしては、特に限定されないが、例えば、BASF社製の「ウルトラゾーンSシリーズ」、ソルベイアドバンストポリマー社製の「ユーデルPシリーズ」等が市販されている。
上記ポリエーテルスルホンとしては、特に限定されないが、例えば、BASF社製の「ウルトラゾーンEシリーズ」、ソルベイアドバンストポリマー社製の「レーデルAシリーズ」、住友化学社製の「スミカエクセルシリーズ」等が市販されている。
上記ポリフェイルスルホンとしては、特に限定されないが、例えば、ソルベイアドバンストポリマー社製の「レーデルRシリーズ」等が市販されている。
上記ポリエーテルケトンとしては、特に限定されないが、例えば、住友化学社製の「スミブロイシリーズ」等が市販されている。
【0015】
また、得られるアレルゲン抑制製品の着色などの不測の変色及び経時の変色を特に効果的に防止することができることから、上記芳香族ポリエーテル化合物は、一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有するものが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
(R1 〜R12は水素又は炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
【0018】
上記一般式(1)及び一般式(2)において、R1 〜R12は水素又は炭化水素基である。中でもR1 〜R12の全てが水素である場合が好ましい。
上記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基などのアルケニル基;シクロブテニル基などのシクロアルケニル基;フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基;アラルキル基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)において、Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、中でもメチレン基、プロピリデン基、スルホニル基が好ましい。
【0020】
又、上記一般式(1)及び一般式(2)において、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合であり、中でもメチレン基、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合が好ましく、さらに、Z1は、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合がより好ましく、Z2は、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基がより好ましい。
【0021】
上記フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、下記の一般式(3)〜一般式(5)に示す構造を有する有機基が挙げられる。
【0022】
【化2】

【0023】
上記芳香族ポリエーテル化合物が一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物である場合、一般式(1)又は一般式(2)の構成単位を主たる繰返し単位としているか、或いは、一般式(1)及び一般式(2)の構成単位を主たる繰返し単位としておればよく、他の構成単位を含有していてもよい。
【0024】
上記一般式(1)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、ビスフェノールAとビス(4−クロロフェニル)スルホンとを重縮合させて得られるポリスルホン、ビスフェノールAやビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの重縮合により得られるエポキシ樹脂等が好ましい。
【0025】
又、上記一般式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、4−クロロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を用いた溶液重縮合法により得られるポリエーテルスルホン、4−フルオロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を用いた溶液重縮合法により得られるポリエーテルスルホン、4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリドとジフェニルエーテルとを重縮合させて得られるポリアリルスルホン等が好ましい。
【0026】
上記芳香族ポリエーテル化合物の重量平均分子量は、小さくなると、得られるアレルゲン抑制製品及びアレルゲン抑制組成物においてアレルゲン抑制効果が発現しないことがあるので、1500以上が好ましく、2500以上がより好ましい。また、アレルゲン抑制製品においては、重量平均分子量を、好ましくは1500以上、より好ましくは2500以上とすることで、芳香族ポリエーテル化合物をフィルム状などに成型し易くなり、対称物に貼り合わせることでアレルゲン抑制製品とすることができるなど、加工性が向上する。一方、重量平均分子量が大きくなると、取り扱い性が低下することがあるので、50万以下が好ましい。
【0027】
更に、本発明1のアレルゲン抑制製品においては、上記芳香族ポリエーテル化合物に親水性高分子を含有させるのが好ましい。親水性高分子としては、空気中の水分子を集めることによって芳香族ポリエーテル化合物との相互作用を起こし得る反応場を形成し得るものであるものが好ましい。
【0028】
上記芳香族ポリエーテル化合物に親水性高分子を含有させることによって、通常の湿度条件下、例えば、絶対湿度50g/m3以下の雰囲気下においても、芳香族ポリエーテル化合物はアレルゲンを更に効果的に抑制することができる。
【0029】
なお、「空気中の水分子を集めることによって芳香族ポリエーテル化合物との相互作用を起こしうる反応場」とは、アレルゲンが抗原性を発揮する部分(エピトープ)の抗原性を抑制するために何らかの化学的相互作用を及ぼすための反応場のことであり、例えば、イオン化状態などの電気化学的遷移状態を安定化させ、化学反応の遷移状態の障壁エネルギーを下げることにより、自然な化学反応の進行が起こりうるような反応場のことをいう。
【0030】
そして、通常、化学反応を起こすために越えなければならない遷移状態のエネルギー障壁を下げるためには液体状態の水を必要とするが、上述のように、芳香族ポリエーテル化合物に親水性高分子を含有させておくことによって、空気中の水分を集めることが可能となり、作為的に湿度を上げるなどの操作を要することなく、上述の反応場をより確実に形成することができる。
【0031】
上記親水性高分子としては、特に限定されず、例えば、主鎖中にエーテル結合及び/又はアミド結合を有する高分子、側鎖に極性基を有する高分子、主鎖中にエーテル結合及び/又はアミド結合を有し且つ側鎖に極性基を有する高分子等が挙げられる。なお、上記極性基としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン基;アンモニウム塩基などのカチオン性基;硫酸エステルやリン酸エステルなどのエステル基;カルボキシル基、スルホン基などのアニオン性基;ヒドロキシ基、アミド基などのノニオン性基等が挙げられる。
【0032】
上記親水性高分子としては、例えば、でんぷん、セルロース、タンニン、ニグニン、アルギン酸、アラビアゴムなどのヒドロシキ基を有する天然系化合物の他、ポリビニルアルコール、ブチラールなどのポリアルコール;ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリエーテル;ポリアクリル酸などのポリマー酸;ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリマー塩;ポリアリルアミンなどのポリアミン;ポリアクリルアミド;ポリビニルピロリドン;ポリウレタン;アクリル樹脂などの合成系化合物等が挙げられ、中でも通常の室内条件下で潮解性を示さないという点から合成系高分子が好ましく、さらに、吸湿性のみならず保水性が高いことから、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンが好ましい。なお、親水性高分子は単独でも2種類以上のものを併用してもよいが、異なる分子構造を有する2種類以上の親水性高分子を組み合わせることが好ましい。
【0033】
異なる分子構造を有する2種類以上の親水性高分子の組合せとしては、ポリエーテルとポリマー塩との組合せ、ポリエーテルとポリアルコールとの組合せ等が好ましく、具体的には、ポリオキシエチレンとポリアクリル酸ナトリウムとの組合せ、ポリオキシエチレンとポリビニルアルコールとの組合せ等がより好ましい。
【0034】
上記親水性高分子の融点は、低いと、使用雰囲気下にて液体状態となる場合があり、処理した生活用品などの対象物がべとつく等、風合いを損なう虞れがあるので、40℃以上が好ましく、水と接する機会の多い雰囲気下にて用いられる場合にはアレルゲンの抑制効果を持続させるために、50℃以上がより好ましい。
【0035】
上記親水性高分子の含有量は、少ないと、空気中の水分子を十分に集められないため、アレルゲンとの相互作用を起こしうるに十分な反応場を形成することができず、芳香族ポリエーテル化合物が十分なアレルゲンの抑制効果を発揮することができないことがある一方、多いと、芳香族ポリエーテル化合物の量が相対的に少なくなってしまい、芳香族ポリエーテル化合物におけるアレルゲンの抑制効果が低下することがあるので、芳香族ポリエーテル化合物100重量部に対して40〜1000重量部が好ましく、50〜1000重量部がより好ましく、50〜1000重量部が特に好ましい。
【0036】
又、本発明1のアレルゲン抑制製品においては、上記芳香族ポリエーテル化合物に硬化剤を含有させて芳香族ポリエーテル化合物を架橋させることによって、水などの溶剤に対する芳香族ポリエーテル化合物の溶解性を低下させて耐溶剤性を向上させ、芳香族ポリエーテル化合物のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って持続させることができる。例えば、アレルゲン抑制製品に水がかかったり或いはアレルゲン抑制製品を洗濯した場合にあっても、芳香族ポリエーテル化合物が水に溶解してアレルゲン抑制製品から消失するのを防止することができ、アレルゲン抑制製品のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って持続させることができる。
【0037】
上記硬化剤としては、芳香族ポリエーテル化合物を架橋させることができれば、特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物などの化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられ、これらは単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記アミン化合物としては、特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミンなどの脂肪族アミン及びその誘導体;メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどの脂環式アミン及びその誘導体;m−キシレンジアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族アミン及びその誘導体等が挙げられる。
【0039】
上記アミン化合物から合成される化合物としては、特に限定されず、例えば、上記アミン化合物と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などのカルボン酸化合物とから合成されるポリアミノアミド化合物及びその誘導体;上記アミン化合物と、ジアミノジフェニルメタンビスマレイミドなどのマレイミド化合物とから合成されるポリアミノイミド化合物及びその誘導体;上記アミン化合物とケトン化合物とから合成されるケチミン化合物及びその誘導体;上記アミン化合物と、エポキシ化合物、尿素、チオ尿素、アルデヒド化合物、フェノール化合物、アクリル化合物などの化合物とから合成されるポリアミノ化合物及びその誘導体等が挙げられる。
【0040】
上記3級アミン化合物としては、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1、これらの誘導体等が挙げられる。
【0041】
そして、上記イミダゾール化合物としては、特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、これらの誘導体等が挙げられる。
【0042】
上記ヒドラジド化合物としては、特に限定されず、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、これらの誘導体等が挙げられる。
【0043】
上記メラミン化合物としては、特に限定されず、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0044】
上記酸無水物としては特に限定されず、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物、クロレンド酸無水物、これらの誘導体等が挙げられる。
【0045】
上記フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、これらの誘導体等が挙げられる。
【0046】
上記熱潜在性カチオン重合触媒としては、特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素などを対アニオンとした、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩などのイオン性熱潜在性カチオン重合触媒;N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステルなどの非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒等が挙げられる。
【0047】
上記光潜在性カチオン重合開始剤としては特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素などを対アニオンとした、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩及び芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩類、並びに、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体及びアリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類などのイオン性光潜在性カチオン重合開始剤;ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどの非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0048】
本発明1及び本発明2で使用する芳香族ポリエーテル化合物には、アレルゲン抑制効果の有効性を阻害しない範囲において、分散剤、乳化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの製剤用補助剤が配合されていてもよく、また、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤などが含有されていてもよい。
【0049】
次に、上記芳香族ポリエーテル化合物を対象物に処理してアレルゲン抑制製品とする方法について説明する。上記芳香族ポリエーテル化合物は、スプレー型、エアゾール型、燻煙型、加熱蒸散型などの汎用の使用方法を用いて生活用品などの対象物に処理し、アレルゲン抑制製品とすることができる。
上記芳香族ポリエーテル化合物を溶媒に溶解或いは分散させて芳香族ポリエーテル化合物溶液とし、この芳香族ポリエーテル化合物溶液に水溶剤、油剤、乳剤、懸濁剤等を配合することによって、芳香族ポリエーテル化合物をスプレー型とすることができる。なお、スプレー型とは、常圧下にある芳香族ポリエーテル化合物溶液に圧力を加えて芳香族ポリエーテル化合物を霧状に噴霧する使用方法をいう。
上記芳香族ポリエーテル化合物は、懸濁液にした場合の液安定性が優れていることから、スプレーなどの噴霧形態で生活用品などの対象物へ処理する用途に適している。また、上記芳香族ポリエーテル化合物の懸濁液は、カチオン性の添加剤とも相性が良く、幅広い添加剤を使用することができるという特徴を有する。
【0050】
上記溶媒としては、例えば、水(好ましくは、イオン交換水)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミドなど)等が挙げられる。
【0051】
そして、上記スプレー型の芳香族ポリエーテル化合物に、固体担体(タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなど)を添加することにより、芳香族ポリエーテル化合物をエアゾール型とすることができる。
【0052】
ここで、エアゾール型とは、容器内に芳香族ポリエーテル化合物溶液を噴射剤と共に該噴射剤が圧縮された状態に封入しておき、噴射剤の圧力によって芳香族ポリエーテル化合物を霧状に噴霧させる使用方法をいう。なお、噴射剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル、LPGなどが挙げられる。
【0053】
また、上記スプレー型の芳香族ポリエーテル化合物に、酸素供給剤(過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウムなど)、燃焼剤(糖類、澱粉など)、発熱調整剤(硝酸グアニジン、ニトログアニジン、リン酸グアニル尿素など)、酸素供給剤分解用助剤(塩化カリウム、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、活性炭など)等を添加することにより、芳香族ポリエーテル化合物を燻煙型とすることができる。なお、燻煙型とは、芳香族ポリエーテル化合物を微粒子化して煙状とし、分散させる使用方法をいう。
【0054】
そして、上記芳香族ポリエーテル化合物を、各種使用方法に応じて、生活用品などの対象物に噴霧、分散、塗布又は固着させることによって供給することにより、アレルゲンを抑制することができるアレルゲン抑制製品が得られる。
【0055】
また、上記芳香族ポリエーテル化合物を含有するアレルゲン抑制組成物を得る方法としては、上記芳香族ポリエーテル化合物を、用途に応じて適宜マトリックスに混合すればよい。
上記マトリックスとしては、上記芳香族ポリエーテル化合物を変性させないものであれば特には限定されず、例えば、多糖類やその塩、デキストリン、ゼラチン、高級アルコール、油脂類、ステアリン酸などの高級脂肪酸、パラフィン類、流動パラフィン類、白色ワセリン、ハイドロカーボンゲル軟膏、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、水が挙げられる。
【0056】
なお、「アレルゲンを抑制する」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Crij1、Crij2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制することをいう。
【0057】
又、上記対象物としては、特に限定されないが、例えば、畳、絨毯、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブルなど)、寝具(ベッド、布団、シーツなど)、車内用品及び車内装材(シート、チャイルドシートなど)、キッチン用品、ベビー用品、建築内装材(壁紙、床材など)、繊維製品(カーテン、タオル、衣類、ぬいぐるみなど)、フィルター、網戸、医薬品、医薬部外品、化粧品等が挙げられる。
【0058】
本発明1のアレルゲン抑制製品は、上記芳香族ポリエーテル化合物を用いているので、不測の着色や、日常の生活環境における変色が殆どないことから、光による退色、変色が課題となる用途、例えば、建築内装材、車内用品及び車内装材、網戸などの製品表面に存在するフィルター、カーテン、衣服などの繊維製品等であるのが好ましい。
また、本発明1のアレルゲン抑制製品又は本発明2のアレルゲン抑制組成物は、使用する芳香族ポリエーテル化合物が無臭であるため、臭いが気になる用途、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、繊維製品等に適している。
【0059】
上記フィルターとは、分離、濾過、異物を排除する能力等を有するものをいい、例えば、空気清浄機、エアコン、掃除機、換気扇などのフィルターや、埃や花粉などの進入を防ぐマスク、障子、あるいは虫などの進入を防ぐ網戸やカヤ等を挙げることができる。
上記化粧品、医薬品および医薬部外品組成物とは、特に限定されるものではなく、例えば、皮膚外用剤、鼻スプレー、点眼剤、シャンプー、入浴剤、整髪料、ファンデーション、洗顔剤等を挙げることができる。
上記建築内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、床材、壁紙、天井材、塗料、ワックス等を挙げることができる。
上記繊維製品とは、特に限定されるものではなく、例えば、寝具、カーペット、カーテン、衣類、ぬいぐるみ等を挙げることができる
上記車内用品及び車内装材とは、特に限定されるものではなく、例えば、カーシート、チャイルドシート、シートベルト、カーマット、シートカバー等を挙げることができる。
【0060】
本発明1のアレルゲン抑制製品及び本発明2のアレルゲン抑制組成物における芳香族ポリエーテル化合物の使用量としては、少ないと、アレルゲン抑制効果が発現しないことがある一方、多いと、生活用品などの対象物を痛めたり、組成物の場合は組成物の品質を低下させることがあるので、アレルゲン抑制製品の場合は、対象物100重量部に対して0.01〜100重量部が好ましく、0.05〜50重量部がより好ましく、0.1〜50重量部が特に好ましい。アレルゲン抑制組成物の場合は、組成物中0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.2〜5重量%が特に好ましい。
【0061】
本発明1のアレルゲン抑制製品及び本発明2のアレルゲン抑制組成物が対象とするアレルゲンとしては、動物性アレルゲン、花粉などの植物性アレルゲン等が挙げられる。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門など)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
【0062】
以下に。本発明1のアレルゲン抑制製品を得る方法をさらに詳しく説明する。
上記芳香族ポリエーテル化合物を繊維製品などの対象物に処理させる方法としては、対象物に芳香族ポリエーテル化合物を化学的に結合させたり或いは物理的に固着させる方法が挙げられる。
上記対象物の素材としては、芳香族ポリエーテル化合物を処理できるものであれば、特に限定されず、例えば、対象物が繊維製品である場合、繊維製品の素材としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維などの合成繊維;アセテート繊維などの半合成繊維;キュプラ、レーヨンなどの再生繊維;綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維;これら各種繊維の複合化繊維や混綿等が挙げられる。
【0063】
上記芳香族ポリエーテル化合物を上記繊維製品を構成する繊維に化学的に結合させる要領としては、グラフト化反応により繊維に芳香族ポリエーテル化合物を化学的に結合させる方法が挙げられる。グラフト化反応としては、特に限定されず、例えば、(1)繊維となる幹ポリマーに重合開始点をつくり、芳香族ポリエーテル化合物を枝ポリマーとして重合させるグラフト重合方法、(2) 芳香族ポリエーテル化合物を高分子反応によって繊維に化学的に結合させる高分子反応法などが挙げられる。
【0064】
上記グラフト重合方法としては、例えば、(i)繊維への連鎖移動反応を利用し、ラジカルを生成し重合する方法、(ii)第2セリウム塩や硫酸銀塩などをアルコール、チオール、アミンのような還元性物質を作用させて酸化還元系(レドックス系)を形成し、繊維にフリーラジカルを生成して重合を行う方法、(iii)繊維と、芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体とを共存させた状態で、繊維にγ線や加速電子線を照射する方法、(iv)γ線や加速電子線を繊維だけに照射し、その後に芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体を加えて重合を行う方法、(v)繊維を構成する高分子を酸化してペルオキシ基を導入し或いは側鎖のアミノ基からジアゾ基を導入して、これを重合開始点として重合する方法、(vi)水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの側鎖の活性基によるエポキシ、ラクタム、極性ビニルモノマーなどの重合開始反応を利用する方法等が挙げられる。
【0065】
更に、グラフト重合方法を具体的に列挙する。a)芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体中でセルロースを磨砕することによってフリーラジカルを生成させてグラフト重合を行う方法。b)芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体と、繊維として連鎖移動を受けやすい基を持つセルロース誘導体(例えば、メルカプトエチルセルロースなど)を用いてグラフト重合を行う方法。c)オゾンや過酸化物を酸化し、ラジカルを生成させる方法でグラフト重合を行う方法。d)アリルエーテル、ビニルエーテルまたはメタクリル酸エステルなどの二重結合を、セルロースの側鎖に導入してグラフト重合を行う方法。e)アントラキノン−2,7−ジスルホン酸ナトリウムなどを光増感剤として用い、繊維に紫外線を照射してグラフト重合を行う方法。f)カソードの周りに繊維を巻き、希硫酸中に、芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体を加えて外部電圧を加えることにより電気化学的にグラフト重合を行う方法。
【0066】
繊維へのグラフト重合であることを勘案すれば、下記方法が好ましい。g)メタクリル酸グリシジル(GMA)と過酸化ベンゾイルを塗った繊維を、芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体溶液中で加熱することによりグラフト重合する方法。h)過酸化ベンゾイル、界面活性剤(非イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤)及びモノクロロベンゼンを水へ分散させた分散液に、芳香族ポリエーテル化合物の原料となる単量体を加え、繊維として、例えばポリエステル系繊維を浸漬して、加熱してグラフト重合を行う方法。
【0067】
上記高分子反応法としては、汎用の方法が使用でき、例えば、(i)C−Hに対する連鎖移動反応、酸化反応、置換反応、(ii)二重結合に対する付加反応、酸化反応、(iii)水酸基のエステル化、エーテル化、アセタール化、エステル基やアミド基に対する置換反応、付加反応、加水分解反応、ハロゲン基に対する置換反応、脱離反応、(iv)芳香環に対する置換反応(ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、クロルメチル化)などが挙げられる。
【0068】
次に、芳香族ポリエーテル化合物を繊維に物理的に固着させる方法について説明する。芳香族ポリエーテル化合物を繊維に物理的に固着させる方法としては、例えば、(1)芳香族ポリエーテル化合物を溶剤中に溶解或いは分散させ、この芳香族ポリエーテル化合物溶液中に繊維を含浸させて、繊維にアレルゲン抑制化合物溶液を含浸させる方法、(2)芳香族ポリエーテル化合物溶液を繊維表面に塗布する方法、(3)上記芳香族ポリエーテル化合物を溶解或いは分散させてなるバインダー中に浸漬させて、芳香族ポリエーテル化合物をバインダーによって繊維に固着させる方法、(4)上記芳香族ポリエーテル化合物を溶解或いは分散させてなるバインダーを繊維表面に塗布し、芳香族ポリエーテル化合物をバインダーによって繊維に固着させる方法などが挙げられる。なお、上記(1)(2)の方法において、芳香族ポリエーテル化合物溶液中に下記バインダーを含有させてもよい。
【0069】
上記溶剤としては、特に限定されず、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール類;トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類等が挙げられる。
【0070】
上記バインダーとしては、芳香族ポリエーテル化合物を繊維表面に固着できるものであれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂からなるバインダーとしては、一液型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂などのウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0071】
又、上記では、芳香族ポリエーテル化合物を別途製造された繊維に化学的に結合させ或いは物理的に固着させることによって、繊維に芳香族ポリエーテル化合物を含有させる要領を説明したが、芳香族ポリエーテル化合物を化学的に結合させた繊維原料を紡糸して繊維を作製してもよい。
【0072】
芳香族ポリエーテル化合物を化学的に結合させた繊維原料の作製要領としては、特に限定されず、例えば、芳香族ポリエーテル化合物を置換基として有する重合性単量体と、一般の繊維原料となる重合性単量体とを共重合させて繊維原料を作製する方法が挙げられる。
【0073】
又、芳香族ポリエーテル化合物に親水性高分子を含有させることを説明したが、芳香族ポリエーテル化合物及び親水性高分子を置換基として有する重合性単量体を用いることによって、芳香族ポリエーテル化合物及び親水性高分子を化学的に結合させた繊維原料を作製し、この繊維原料を紡糸することによって、芳香族ポリエーテル化合物及び親水性高分子を含有させた繊維を作製することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明のアレルゲン抑制製品及びアレルゲン抑制組成物は、スギなどの草木の花粉、ダニ、室内の塵などのアレルゲンが特異抗体と反応するのを抑制することができ、かつ、不測の変色や日常の使用条件下での変色が生じ難く、さらに嫌な臭いを発生することが殆どない。
従って、光による退色、変色が課題となる用途、例えば、建築内装材、車内用品及び車内装材、網戸などの製品表面に存在するフィルター、カーテン、衣服などの繊維製品等の用途に好適に用いられるものである。
また、臭いが気になる用途、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、繊維製品等の用途に好適に用いられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
ポリスルホン(ソルベイアドバンストポリマー社製 商品名「ユーデルP−1700」)をジメチルホルムアミドに10重量%になるように溶解させて溶液を作製した。
この溶液をジメチルホルアミドで10倍希釈した液に、繊維製品の素材である綿布(財団法人日本規格協会社製、かなきん3号、JIS L0803準拠品)を浸漬し、5分間スターラーで撹拌後、80℃で2時間に亘って放置して乾燥させ、繊維製品であるアレルゲン抑制綿布を得た。
得られたアレルゲン抑制フィルター中のポリスルホンの量は、綿布100重量部に対し、1重量部であった。
【0077】
(実施例2)
ポリエーテルスルホン(ソルベイアドバンストポリマー社製 商品名「レーデルA−300A」)を平均粒径20μmに粉砕した微粉体20重量部、イオン交換水100重量部及びポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤(ライオン社製 商品名「ポリティーPS−1900」)5重量部を混合して攪拌機(エム・テクニック株式会社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて攪拌速度20000rpmで60分間に亘って攪拌した後、ダイユータンガム(三晶社製、商品名「ケルコクリート200」)1重量部及びバインダー(北広ケミカル社製、商品名「TF−3500」)2重量部を加えて、懸濁液を作製した。
この懸濁液をイオン交換水で5倍希釈した液に、実施例1と同様の綿布を浸漬し、5分間スターラーで撹拌後、80℃で2時間に亘って放置して乾燥させ、繊維製品であるアレルゲン抑制綿布を得た。
得られたアレルゲン抑制フィルター中のポリエーテルスルホンの量は、綿布100重量部に対し、1.5重量部であった。
【0078】
(実施例3)
綿布の代わりにフィルターの素材である不織布(東洋紡社製、商品名「ボランス 4301N」)を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、フィルターであるアレルゲン抑制不織布をえた。
得られたアレルゲン抑制不織布中のポリエーテルスルホンの量は、不織布100重量部に対し、2重量部であった。
【0079】
(比較例1)
ポリ4−ビニルフェノール(アルドリッチ社製、重量平均分子量:8000)をエタノールに10重量%になるように溶解させて溶液を作製した。
この溶液をエタノールで10希釈した液に、実施例1と同様の綿布を浸漬し、5分間スターラーで撹拌後、80℃で2時間に亘って放置して乾燥させ、繊維製品であるアレルゲン抑制綿布を得た。
得られたアレルゲン抑制綿布中のポリ4−ビニルフェノールの量は、綿布100重量部に対し、0.8重量部であった。
【0080】
(比較例2)
実施例1と同様の綿布を何も処理せずに用いた。
【0081】
(比較例3)
実施例3と同様の不織布を何も処理せずに用いた。
【0082】
(アレルゲン抑制能の評価)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract-Df」 )をタンパク量が10μg/mlになるようにリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させてアレルゲン溶液を作製した。
【0083】
次に、6つの容器に上記アレルゲン溶液3.5mlを入れ、各々の容器に実施例1〜3及び比較例1で作製したアレルゲン抑制製品及び比較例2,3で作製した綿布及び不織布から切り取った2.5cm2のサンプルをそれぞれ浸漬し、37℃で16時間に亘って振とうした。
【0084】
続いて、アレルゲン溶液100μlをアレルゲン測定具(シントーファイン社製、商品名「マイティーチェッカー」)に添加してアレルゲン性を評価した。そして、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して下記の通り評価した。なお、発色が濃いほどアレルゲンが溶液中に濃い濃度で存在している。結果を表1に示した。
【0085】
4・・・濃く、太くはっきりとしたラインが観測された。
3・・・ラインであることがはっきりとわかる。
2・・・うっすらと発色しているのがわかる。
1・・・全く発色していない。
【0086】
(耐光性の評価)
実施例1〜3及び比較例1で作製したアレルゲン抑制製品及び比較例2,3で作製した綿布及び不織布を紫外線カーボンに対する染色堅牢度試験(JIS L 0842に準拠、但しブラックパネル温度は63℃、相対湿度50%RH、照射時間40時間)を行い評価した。
【0087】
そして、評価は変退色用グレースケール(JIS L 0804)により評価した。結果を表1に示した。
【0088】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が芳香族ポリエーテル化合物で処理されてなるアレルゲン抑制製品。
【請求項2】
対象物がフィルター、建築内装材、繊維製品、車内用品又は車内装材である、請求項1に記載のアレルゲン抑制製品。
【請求項3】
芳香族ポリエーテル化合物が一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアレルゲン抑制製品。
【化1】

(R1 〜R12は水素又は炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
【請求項4】
芳香族ポリエーテル化合物が、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリフェニルスルホンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアレルゲン抑制製品。
【請求項5】
芳香族ポリエーテル化合物を含有することを特徴とするアレルゲン抑制組成物。
【請求項6】
アレルゲン抑制組成物は化粧品、医薬品又は医薬部外品に用いられるものである、請求項5に記載のアレルゲン抑制組成物。
【請求項7】
芳香族ポリエーテル化合物が一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物であることを特徴とする請求項5又は6に記載のアレルゲン抑制組成物。
【化2】

(R1 〜R12は水素又は炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
【請求項8】
芳香族ポリエーテル化合物が、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン又はポリスルホン、ポリフェニルスルホンであることを特徴とする請求項5又は6に記載のアレルゲン抑制組成物。

【公開番号】特開2008−169301(P2008−169301A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3628(P2007−3628)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】