アンカーピン、ピンニング工法
【課題】コンクリート母材に仕上げ材として設けられたタイルをコンクリート母材に確実に押さえ込むことができ、しかもタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能なアンカーピン、ピンニング工法の提供。
【解決手段】タイル22を貫通し該タイル22が固定されているコンクリート母材21に穿孔深さを確保して形成した下穴23に挿入されてコンクリート母材21に固定される胴部11と、この胴部11の片端の端面の外周部に前記端面から張り出すように突設された係合爪部14とを具備し、胴部11を下穴23に挿入し係合爪部14を前記タイル表面22aに係合させることで胴部11の全長を下穴23内に配置可能となっているアンカーピン10、これを用いたピンニング工法を提供する。
【解決手段】タイル22を貫通し該タイル22が固定されているコンクリート母材21に穿孔深さを確保して形成した下穴23に挿入されてコンクリート母材21に固定される胴部11と、この胴部11の片端の端面の外周部に前記端面から張り出すように突設された係合爪部14とを具備し、胴部11を下穴23に挿入し係合爪部14を前記タイル表面22aに係合させることで胴部11の全長を下穴23内に配置可能となっているアンカーピン10、これを用いたピンニング工法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体等であるコンクリート母材に取り付けられたタイルを前記コンクリート母材に押さえ込んでコンクリート母材からの剥がれや浮きを防止するピンニング工法用のアンカーピン、このアンカーピンを用いたピンニング工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のコンクリート躯体に仕上げ材として取り付けられたタイルをアンカーピンを用いて前記コンクリート躯体に押さえ込んで剥落を防止するピンニング工法としては、タイルを貫通しコンクリート躯体に所望の穿孔深さを以て穿孔した下穴に接着剤を充填した後、前記下穴に例えば全ねじボルト等のロッド状のアンカーピンを挿入して埋め込み、前記下穴の開口部をパテ等を用いてタイルと面一に仕上げる工法(以下、第1従来工法とも言う)が広く採用されている。また、このピンニング工法にあっては、棒状の胴部の片端に頭部を有するアンカーピンを用い、接着剤を充填した前記下穴に前記アンカーピンの胴部を挿入するとともに前記頭部を前記下穴の開口部に形成した座ぐり穴に収納し、さらに前記開口部をパテや樹脂製キャップを用いてタイルと面一に仕上げる工法(以下、第2従来工法とも言う)も広く採用されている。
【0003】
上述の第1従来工法にあってはタイルが薄いものである場合にアンカーピンによる押さえ強度が不足する問題があり、第2従来工法にあっては座ぐり穴の形成箇所でタイルが薄肉になってしまうため、アンカーピンによる押さえ強度が不足する問題がある。
これに鑑みて、前記下穴に挿入される棒状の胴部の片端に0.3mm〜0.5mm厚の薄肉板状の頭部を有するアンカーピンを用い、接着剤を充填した下穴に前記胴部を挿入するとともに前記頭部の前記胴部外周から張り出された部分をタイル表面に当接させた状態で前記アンカーピンをコンクリート躯体に接着固定し、タイルをコンクリート躯体に押さえ込む工法(以下、第3従来工法)も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−238847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の第3従来工法では、アンカーピンの薄肉板状の頭部全体がタイル表面に突出することとなり、美観に与える影響が大きいといった問題があった。
前記アンカーピンの薄肉板状の頭部は、タイルの前記下穴の開口部を覆い、タイルにおける前記下穴の開口部外周に位置する口縁部の全周にわたって当接するサイズを必要とするため、小型化に限界がある。このため、頭部が美観に与える影響を小さくことが容易でない。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みて、コンクリート母材に仕上げ材として設けられたタイルをコンクリート母材に確実に押さえ込むことができ、しかもタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能なアンカーピン、これを用いてタイルをコンクリート母材に押さえ込むピンニング工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、コンクリート母材に取り付けられたタイルを前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法用のアンカーピンであって、前記タイルを貫通し前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して形成した下穴に挿入されて前記コンクリート母材に固定される胴部と、この胴部の片端の端面の外周部の1又は複数箇所に前記端面の外周から張り出すように突設された係合爪部とを具備し、前記係合爪部はその幅寸法が前記端面外周の4〜20%、かつ前記端面に突設された前記係合爪部の前記幅寸法の合計が前記端面外周の50%以下とされ、前記胴部を前記下穴に挿入し前記係合爪部を前記タイル表面に係合させることで前記胴部の全長を前記下穴内に配置可能となっていることを特徴とするアンカーピンを提供する。
第2の発明は、前記胴部が、前記下穴に挿入されて前記コンクリート母材に接着剤によって接着固定されるものであることを特徴とする第1の発明のアンカーピンを提供する。
第3の発明は、前記胴部は、棒状部と、該棒状部の片端に設けられ前記棒状部に比べて太く形成された頭部とを具備し、前記係合爪部は前記頭部の端面の外周部に突設されていることを特徴とする第1又は2の発明のアンカーピンを提供する。
第4の発明は、前記頭部は、その前記棒状部側の端部から前記端面側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状部を有することを特徴とする第3の発明のアンカーピンを提供する。
第5の発明は、前記頭部の最大外径が、前記頭部が前記下穴内に収納されたときに前記頭部の最大外径部分の外周と前記下穴内周面との間に前記接着剤の溢出を可能にするクリアランスが確保される大きさとされていることを特徴とする第2に係る請求項3又は4の発明のアンカーピンを提供する。
第6の発明は、前記頭部の最大外径が、前記下穴の穿孔径と略同等に揃えられていることを特徴とする第3又は4の発明のアンカーピンを提供する。
第7の発明は、前記棒状部の外周に前記接着剤による前記コンクリート母材に対する固着力を高めるための凹凸が形成されていることを特徴とする第2に係る第3〜6のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第8の発明は、前記棒状部がその外周にねじ溝が螺刻されたねじ部とされ、前記ねじ溝と該ねじ溝に沿って延在するねじ山とが前記棒状部の外周の前記凹凸として機能することを特徴とする第7の発明のアンカーピンを提供する。
第9の発明は、前記胴部の前記係合爪部が突設されている端面である基端側端面及び前記係合爪部のうち、少なくとも前記胴部の前記基端側端面が前記タイル表面の色彩と合致するように着色されていることを特徴とする第1〜8のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第10の発明は、全体が金属製の一体成形品であることを特徴とする第1〜9のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第11の発明は、前記胴部に、前記下穴に挿入された該胴部を前記コンクリート母材に機械的に固定するための機械的固定部を有することを特徴とする第1〜10のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第12の発明は、コンクリート母材に取り付けられたタイルを第2、5、7、8、第2の発明に係る第3、4、6、9、10、11のいずれかの発明のアンカーピンを用いて前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法であって、前記タイルを貫通する下穴を前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して穿孔する下穴穿孔工程と、この下穴に接着剤を注入する接着剤注入工程と、前記下穴に前記アンカーピンの胴部を挿入して、胴部片端の端面に突設されている前記係合爪部をタイル表面に係合させるアンカーピン挿入工程とを具備することを特徴とするピンニング工法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアンカーピン、ピンニング工法によれば、胴部を下穴に挿入し係合爪部をタイル表面に係合させることで前記胴部の全長を前記下穴内に配置可能となっているため、タイル表面に配置されるものが係合爪部のみに限定される。したがって、前記係合爪部によって、タイルをコンクリート母材に確実に押さえ込むことができるとともに、タイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減できる。その結果、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る1実施形態のアンカーピンを、タイルを貫通してコンクリート躯体に形成された下穴に挿入した状態を説明する図であって、(a)はタイル表面側から見た図、(b)は断面図である。
【図2】本発明に係る1実施形態のアンカーピンの構造を示す全体斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は図2のアンカーピンの製造方法の一例を説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は図2のアンカーピンの製造方法の他の例を説明する図である。
【図5】(a)〜(c)は図2のアンカーピンの製造方法の他の例を説明する図である。
【図6】本発明に係るアンカーピンの頭部形状の別態様(テーパ状部と等径部とからなる頭部)を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係るアンカーピンの頭部形状の別態様(等径部のみからなる頭部)を説明する斜視図である。
【図8】図2のアンカーピンの頭部の最大外径を変更して、前記頭部の最大外径部分の外周と下穴内壁面との間に接着剤の溢出を可能とするクリアランスを確保可能とした構成を説明する図であって、(a)はタイル表面側から見た図、(b)は断面図である。
【図9】本発明に係るアンカーピンの頭部形状の別態様(接着剤の溢出を可能とする溝を外周に形成した頭部)を説明する図であって、(a)はタイル表面側から見た図、(b)は断面図である。
【図10】本発明に係るアンカーピンの別態様(等径部のみからなる頭部)を説明する斜視図である。
【図11】本発明に係るアンカーピンの別態様を示す図であって、係合爪部を胴部基端側の端面の外周部にひとつだけ突設した構成を説明する斜視図である。
【図12】機械的固定部を設けたアンカーピン、それを用いたピンニング工法の一例を説明する図であって、(a)はアンカーピンを下穴に挿入した状態(アンカーピン先端のコーンへの胴部の打ち込み前)、(b)はアンカーピンの胴部をコーンに打ち込んで拡張部を拡張させ胴部をコンクリート躯体に固着した状態を示す。
【図13】機械的固定部を設けたアンカーピン、それを用いたピンニング工法の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施したアンカーピン、アンカーピンの製造方法について、図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)に示すように、ここで説明するアンカーピン10は、建物外壁等のコンクリート躯体21(コンクリート母材)に仕上げ材として取り付けられたタイル22を前記コンクリート躯体21に押さえ込んでコンクリート躯体21からの剥がれや浮きを防止するピンニング工法に用いられるものである。
なお、コンクリート母材(コンクリート躯体)としては、建物外壁、床等の建物躯体の他、例えば、コンクリート製の橋梁、路床等であっても良い。
【0011】
図1(a)、(b)、図2に示すように、このアンカーピン10は、前記タイル22を貫通し前記コンクリート躯体21に穿孔深さを確保して形成した下穴23に挿入される棒状の胴部11と、この胴部11の片端に設けられた頭部13の端面13a(胴部11の基端側端面。以下、頭部端面とも言う)の外周部の複数箇所(図示例では3箇所)に前記頭部端面13aの外周から該頭部端面13aの仮想延長に沿って放射状に張り出すように突設された係合爪部14(爪部)とを有している。
【0012】
前記胴部11は、棒状部12と、該棒状部12の片端に設けられ前記棒状部12に比べて太く形成された前記頭部13とを具備し、全体として棒状に形成されている。前記頭部端面13aは頭部13の棒状部12とは反対側の端面を指す。また、この胴部11は、頭部13を含む全体が前記下穴23に挿入可能な太さになっている。
【0013】
前記棒状部12は、具体的には、その長手方向全長にわたって外周にねじ溝12a(図1(b)参照)が螺刻されたねじ部とされている。この棒状部12の前記ねじ溝12aと該ねじ溝12aに沿って延在するねじ山12bとは、胴部11を挿入する前記下穴23に充填される接着剤24によるコンクリート躯体21に対する固着力を高めるための凹凸として機能する。
なお、接着剤24によるコンクリート躯体21に対する固着力を高めるための凹凸としては、前記棒状部12をねじ部とする構成に限定されず、棒状部の外周の多数箇所に凸部又は凹部を形成した構成も採用可能である。
【0014】
前記頭部13は、前記棒状部12側の端部から前記頭部端面13a側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状に形成されている。図示例の頭部13はその全体がテーパ状部とされている。また、前記頭部13の最大外径、すなわち頭部端面13a側の端部の外径は、前記下穴23の穿孔径と略同等に揃えられている。
【0015】
図1(a)、(b)に示すように、このアンカーピン10の各係合爪部14は、胴部11の頭部13が下穴23内に収納されたときにタイル22の表面22aに係合可能なように、前記頭部端面13a外周からの突出寸法a(図1(a)参照)を下穴23内径(より詳細には下穴23のタイル表面22aに開口する開口部内径)よりも大きくしてある。
【0016】
また、このアンカーピン10は全体が金属製の1部品(一体成形品)になっている。
このアンカーピン10の材質としては例えばSUS304等を挙げることができる。
【0017】
図1(b)に示すように、前記下穴23は、コンクリート躯体21を貫通しない非貫通穴である。この下穴23は、前記胴部11の全長を収納可能なように、胴部11の長手方向寸法よりも長い(深い)穿孔深さT(タイル表面22a側の開口部と穴奥底23aとの間における穿孔径が一定に確保された部分の全長)を確保して形成される。また、下穴23は、開口部に座ぐり穴を形成しないストレート孔とする。
【0018】
このアンカーピン10を用いたピンニング工法、すなわち、コンクリート躯体21にタイル22を押さえ込むピンニング工法は、まず、ドリル等を用いてタイル22の表面22a側から前記下穴23を穿孔(下穴穿孔工程)し、この下穴23に接着剤24を注入して充填(接着剤注入工程)した後、前記アンカーピン10の胴部11をその基端部(頭部11側の端部)とは反対側の先端部から前記下穴23に挿入(接着剤24が硬化前の液状の状態において挿入)して前記係合爪部14をタイル表面22aに係合させる(アンカーピン挿入工程)。これにより、接着剤24が硬化すると、タイル22をアンカーピン10によってコンクリート躯体21に対して確実に押さえることができ、タイル22の剥がれを防止できる。
また、コンクリート躯体21からの浮きが生じていないタイル22について、このピンニング工法を実施すれば、タイル22の浮きを予防できる。
【0019】
前記アンカーピン10は、胴部11の頭部13が下穴23内に収納されることで、胴部11全体が下穴23の中心軸線に略一致するように位置決めされる。つまり、下穴23に収納された頭部13によって、アンカーピン10全体の傾動防止、及びセンタリング(胴部11中心軸線の下穴23の中心軸線に対する位置合わせ)を容易に実現できる。これにより、棒状部12がその長手方向の広範囲にわたって下穴23内壁面に近接配置されて、接着剤24の被り厚が極端に薄くなる箇所が発生するといった不都合を防止でき、接着剤24によるアンカーピン10の接着強度を確実に確保できる。
【0020】
前記係合爪部14のタイル表面22aに当接される当接部(図示例では当接面14a)は、胴部11の中心軸線に直交する向きの平坦面になっている前記頭部端面13aの仮想延長に高い精度を以て一致あるいはほぼ重なるように形成されている。したがって、前記胴部11を前記下穴23に挿入し前記係合爪部14を下穴23の開口部の周囲(口縁部)に位置する前記タイル表面22aに係合させると、胴部11全体が下穴23内に配置されるとともに、頭部端面13aがタイル表面22aに位置決めされる。
また、この係合爪部14は、具体的には、頭部端面13aの外周部に頭部端面13aに突出する突起状に形成された突起部14bと、この突起部14bに頭部端面13aの外周から張り出すように突設され前記頭部端面13aの仮想延長に重なるところに延在する当接面14aを形成する張出部14cとを有する構成であり、形状が単純であることから、製造効率の向上も図ることもできる。
【0021】
前記頭部端面13aは、タイル表面22aの色彩と合致するように着色されている。このため、頭部端面13aが視覚的に目立ちにくく、タイル22によって形成される仕上げ面の美観を維持することができる。
なお、頭部端面13aの着色は、例えば塗料の塗布や鍍金等によって行うことができるが、例えば着色された樹脂製フィルム等の着色シートの貼付によって行っても良い。また、頭部端面13aの着色は、頭部端面13a全体にわたって単色、均等であることに限定されず、タイル表面22aの色彩に応じて、例えば互いに色が異なる部分が存在するようにしても良い。
【0022】
このアンカーピン10にあっては、係合爪部14も頭部端面13aと同様に着色されている。
但し本発明にかかるアンカーピンにあっては、頭部端面13a、係合爪部14のうち少なくとも頭部端面13aにタイル表面22aの色彩と同様の着色が施されていれば良く、係合爪部14にタイル表面22aの色彩と同様の着色が施されていない構成も含む。
【0023】
前記アンカーピン10は、既述のように、接着剤24が充填された下穴23に胴部11を挿入し、前記係合爪部14を下穴23の開口部の周囲(口縁部)に位置する前記タイル表面22aに係合させることで、胴部11全体が下穴23内に配置された状態で施工(コンクリート躯体21に対して接着固定)される。すなわち、このアンカーピン10は、胴部11がタイル表面22aから突出せず、タイル表面22aから突出されるのは係合爪部14のみである。このため、このアンカーピン10を用いてコンクリート躯体21にタイル22を押さえるピンニング工法を行った場合、コンクリート躯体21のタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能である。
【0024】
前記係合爪部14の、前記頭部端面13aの外周方向の寸法(以下、係合爪部の幅寸法とも言う)は、該アンカーピン10に設けられている全ての係合爪部14の幅寸法の合計が頭部端面13a外周寸法(外周全周長さ)の10〜50%程度、ひとつの係合爪部14の幅寸法が頭部端面13a外周寸法の4〜10%程度の範囲であることが好ましい。アンカーピン10に設けられている全ての係合爪部14の幅寸法の合計が頭部端面13a外周寸法(外周全周長さ)の10〜50%の範囲であれば、ひとつの係合爪部14の幅寸法は頭部端面13a外周寸法の4〜20%程度であっても良い。
また、係合爪部14の頭部端面13a外周からの突出寸法aは、胴部11を下穴23に挿入したときに、各係合爪部14の当接部14aをタイル表面22aに確実に当接できる範囲であれば良いが、タイル仕上げ面(タイル表面22a)からの突出部分をできるだけ小さくして美観に与える影響を低減する点で、この突出寸法aは出来るだけ小さくすることが好ましい。
【0025】
例えばアンカーピン10の頭部端面13aの外径が7mmであるとき、上述の係合爪部14の頭部端面13a外周寸法に対する係合爪部14の幅寸法の寸法比率の範囲であれば、係合爪部14の幅寸法は1〜2mm(0.9〜2.2mm)程度であり、アンカーピン10の施工時(コンクリート躯体21に対する接着固定の完了時)の係合爪部14のタイル仕上げ面(タイル表面22a)からの突出部分のサイズは非常に小さくすることができる。このため、コンクリート躯体21のタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことを容易に実現できる。
【0026】
図3(a)〜(d)は、前記アンカーピン10の製造方法の一例を示す。
図3(a)〜(d)に示すアンカーピンの製造方法は、まず、棒状の金属母材30(図3(a)参照。具体的には金属丸棒)にヘッター加工を行って、図3(b)に示すように直棒部31の片端に該直棒部31よりも太い頭部用大径部32を有する頭部用大径部付き棒状体33Aを得るヘッター加工工程を行い、次いで、このヘッター加工工程によって前記頭部用大径部付き棒状体33の前記直棒部31に例えばローリングダイスを用いてねじを加工しねじ部(ねじ部である棒状部12)を得るねじ加工工程と、ヘッター加工工程によって形成した前記頭部用大径部32のプレス加工により前記係合爪部14(爪部)を形成する爪部形成工程とを行う。この爪部形成工程によって、頭部用大径部32の金属材料の一部が係合爪部14となり、頭部13も完成する。そして、頭部端面13aに着色を施すことでアンカーピン10が得られる。
【0027】
アンカーピン10の製造方法としては、これに限定されず、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(c)に示す方法も採用可能である。
図4(a)〜(d)に示す方法は、まず、棒状の金属母材30(図4(a)参照。具体的には金属丸棒)のヘッター加工によって、直棒部31の片端に該直棒部31よりも太いフランジ付き頭部34(頭部用大径部)を有する頭部用大径部付き棒状体33Bを得るヘッター加工工程を行う。前記フランジ付き頭部34は、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13に、該頭部13の頭部端面13aの外周部の全周にわたって突設されて前記頭部端面13aの外周から張り出すように突出されたフランジ部34aを形成したものである。
次に、このヘッター加工工程によって得た前記頭部用大径部付き棒状体33Bの前記直棒部31に例えばローリングダイスを用いてねじ加工を行ってねじ部(ねじ部である棒状部12)とするねじ加工工程(図4(c)参照)と、ヘッター加工工程によって形成した前記フランジ付き頭部34の一部を除去して前記係合爪部14(爪部)を形成する爪部形成工程とを行う。この爪部形成工程によって、頭部13も形成される。
そして、頭部端面13aに着色を施すことでアンカーピン10が得られる。
【0028】
図5(a)〜(c)に示す方法は、まず、棒状の金属母材30(図5(a)参照。具体的には金属丸棒)のヘッター加工によって、頭部13及び係合爪部14を形成して、直棒部31の片端に頭部13及び係合爪部14を有する頭部付き棒状体333を得る。次いで、前記直棒部31に例えばローリングダイスを用いてねじ加工を行ってねじ部(ねじ部である棒状部12)とするねじ加工工程(図5(c)参照)を行う。そして、頭部端面13aに着色を施すことでアンカーピン10が得られる。
【0029】
アンカーピン10の製造方法としては上述したものに限定されないが、例えば上述の図3(a)〜(d)、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(c)のように、係合爪部14を、頭部形成用大径部を形成する金属材料の一部あるいは金属母材30自体の頭部13形成位置に存在する金属材料の一部によって形成する製造方法であれば、胴部11と一体になっている係合爪部14を容易に得ることができ、その結果、例えば係合爪部を胴部と別体の部材を胴部に固定して設ける構成に比べて、係合爪部14の胴部11に対する曲げ強度の確保や形成位置の精度確保も容易であり、サイズの小さい係合爪部14を容易に得ることができる。
【0030】
本発明に係るアンカーピンの頭部としては、頭部13全体がテーパ状部となっている構成に限定されない。頭部の形状としては、例えば図6に示す頭部41のように、棒状部12側の端部から棒状部12とは反対側の端部側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状部42と、このテーパ状部42を介して棒状部12とは反対側に胴部の中心軸線に沿う方向に外径一定で形成された等径部43とからなる構成としても良い。
また、図7に示すように、テーパ状部が存在せず、等径部43のみからなる構成の頭部51も採用可能である。
【0031】
また、頭部としては、その最大外径が、前記下穴23の穿孔径と略同等に揃えられている構成に限定されない。例えば、図8(a)、(b)に示すように、頭部61の最大外径が下穴23の穿孔径に比べて若干小さく、前記頭部61を前記下穴23内に収納する際に前記頭部61の最大外径部分の外周と前記下穴23内周面との間に接着剤の溢出を可能にするクリアランスCが確保されるようにしても良い。この構成の場合、頭部61を下穴23内に挿入して係合爪部14を下穴23の開口部の周囲に位置するタイル表面22aに係合させる際に、下穴23内の接着剤24が前記クリアランスCを介して頭部端面61aの周囲に溢出したことを確認することで、下穴23内の接着剤24の充填量が充分に確保されていること、及び下穴23内の接着剤24中に胴部11が確実に埋め込まれたことを把握できるといった利点がある。
【0032】
なお、図8(a)、(b)に例示した頭部61は、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13の外径を変更して頭部61の棒状部12とは反対側の端部と下穴23内壁面との間に前記クリアランスCが確保されるようにしたものであるが、頭部形状についてはこれに限定されず、例えば図6、図7に例示した頭部形状も採用可能である。
図8(a)、(b)に例示したアンカーピンは、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13を図中符号61の頭部に変更したものである。このアンカーピンに図中符号10Aを付記する。
【0033】
さらに、本発明にかかるアンカーピンの頭部としては、図9(a)、(b)に示す頭部71のように、その最大外径が前記下穴23の穿孔径と略同等に揃えられ、外周の1又は複数箇所に胴部の中心軸線に沿う方向に延在する溝72が形成され、接着剤24を充填済みの下穴23に収納する際に、頭部71から下穴23の穴奥底23a側の接着剤24が前記溝72を介して溢出可能となっている構成も採用可能である。
この構成であれば、胴部70全体を下穴23に挿入したときに、下穴23内周面と頭部71外周面との接触によって下穴23の中心軸線に対するアンカーピン10Bの位置決めを確実に行えるとともに、溝72からの接着剤24の溢出確認による下穴23内の接着剤24中への胴部の確実な埋め込みの把握も行える。
【0034】
なお、図9(a)、(b)に例示した頭部71は、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13に前記溝72を形成したものであるが、頭部形状についてはこれに限定されず、例えば図6、図7に例示した頭部形状も採用可能である。
図9(a)、(b)に例示したアンカーピンは、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13を図中符号71の頭部に変更したものである。このアンカーピンに図中符号10Bを付記する。
【0035】
また、本発明にかかるアンカーピンとしては、図10に示す胴部81のように、頭部を具備しておらず、その全長にわたって外径一定のねじ部となっている構造の胴部81を採用した構成も含む。
このアンカーピン10Cの場合は、係合爪部14は胴部81の片端(基端)の端面82の外周に突設される。
【0036】
本発明にかかるアンカーピンとしては、図11に示すように、胴部11の端面(図示例では頭部端面13a)の外周部に、胴部端面外周から前記胴部端面の仮想延長に沿って張り出す係合爪部14をひとつだけ形成した構成も採用可能である。胴部端面の外周部に形成する係合爪部の数は1〜6個程度であることが好ましい。
また、タイル表面に当接させた係合爪部を、下穴23に挿入された胴部及びアンカーピン全体を所望の向きに安定に保つことに有効に寄与させる点では、胴部端面における係合爪部14の形成数が3以上(3〜6個)であることが好ましい。さらに、施工後の美観確保のため、タイル表面に配置される係合爪部の数を少なくすることを加味すれば、胴部端面における係合爪部14の形成数は例えば3又は4個であることがより好ましい。
胴部端面に突設される係合爪部14が2以上である場合は、係合爪部14が胴部端面の外周部の周方向に均等配置されるようにして設けられた構成とすることが好ましい。
【0037】
胴部端面の外周部に形成する係合爪部の数が複数である場合は、既述の通り、ひとつの係合爪部14の幅寸法が胴部端面の外周寸法の4〜10%、全ての係合爪部14の幅寸法の合計が頭部端面13a外周寸法の10〜50%程度であることが好ましい。
胴部端面の外周部に係合爪部が1つだけ設けられている場合は、この係合爪部の幅寸法は、胴部端面の外周寸法の4〜20%であることが好ましい。
【0038】
本発明にかかるアンカーピンとしては、例えば図12(a)、(b)に示すアンカーピン10D、図13に示すアンカーピン10Eのように、胴部に、前記下穴23に挿入された状態にて該胴部をコンクリート躯体に機械的に固定するための機械的固定部112を設けた構成のものも採用可能である。
【0039】
図12(a)、(b)に例示したアンカーピンは、胴部として、前記係合爪部14が突設された基端側とは反対側の端部である先端部を割り溝111によって複数に分割した構成の胴部110を採用し、この胴部110の先端部112に該先端部112の拡張用のコーン113を、前記胴部110先端側に突出状態に取り付けた構成になっている。前記コーン113は、該コーン113に突設された取付用細径部113aを、前記胴部110にその先端面114に開口するように形成されたコーン取付孔115に圧入状態に嵌め込んで前記胴部110に取り付けられている。
【0040】
なお、前記コーン13を取り付けるために前記胴部110に形成したコーン取付孔115は、胴部110の先端面114から胴部110の中心軸線に沿って延在するように形成されているが、胴部110基端側の端面には開口しない非貫通孔とされており、胴部110の基端部は中実な棒状に形成されている。
このアンカーピン10Dの胴部110の先端部112は、コーン113の打ち込みによって拡張可能な拡張部とされている。この胴部110の先端部112を、以下、拡張部とも言う。
【0041】
図示例のアンカーピン10Dは、図1(a)、(b)、図2等を参照して説明した既述のアンカーピン10の胴部11の先端部を拡張部112とし、この拡張部112にコーン113を取り付けた点のみが前記アンカーピン10と異なる点であり、他の構成は既述のアンカーピン10と同様の構成を採用できる。
【0042】
ここで、図12(a)、(b)を参照して、前記アンカーピン10Dを用いて、タイル22をコンクリート躯体21に押さえ込むピンニング工法の一例を説明する。
まず、タイル22を貫通する下穴23をコンクリート躯体21に穿孔する下穴穿孔工程を行い、前記下穴23に接着剤24を注入、充填(接着剤充填工程)した後、下穴23にアンカーピン10Dの前記胴部110を挿入し、その先端のコーン113を下穴23の穴奥底23aに突き当てる。そして、例えば胴部110の基端側端面(図示例のアンカーピン10Dにあっては頭部端面13a)に当接させた打ち込み棒91を介して胴部110に打撃力を与えることなどにより、胴部110の拡張部112を概略紡錘形に形成されている前記コーン113に打ち込んで拡張させることで、胴部110をコンクリート躯体21に固着させる。これにより胴部110をコンクリート躯体21に機械的に固定できる。そして、接着剤24が硬化することで、胴部110をコンクリート躯体21に強固に固定できる。
前記アンカーピン10Dにあっては、前記拡張部112が胴部110をコンクリート躯体21に固定する機械的固定部として機能する。
【0043】
なお、このピンニング工法にあっては、図12(a)に示すように、アンカーピン10Dの胴部110を下穴23に挿入してその先端のコーン113を下穴23の穴奥底23aに突き当てたときに、胴部110基端側に突設されている係合爪部14がタイル表面22aから離隔した位置に配置されるようにする。そして、胴部110先端の拡張部112のコーン113への打ち込みによって、胴部110基端側に突設されている係合爪部14をタイル表面22aに当接させる。
このピンニング工法のアンカーピン挿入工程は、接着剤24が注入された下穴23にアンカーピン10Dの胴部110及びコーン113を挿入した後、アンカーピン10Dの係合爪部14をタイル表面22aに当接させ、胴部110全体を下穴23内に収納することによって完了するものであり、胴部110先端の拡張部112をコーン113への打ち込みによって拡張させ胴部110をコンクリート躯体21に固定することを含む。
【0044】
前記アンカーピン10Dは、接着剤24を注入、充填した下穴23に前記胴部110を挿入し、上述のように胴部110の打撃によって前記拡張部112を拡張させてコンクリート躯体21に機械的に固定することで、コンクリート躯体21に対する位置ずれを規制できるため、接着剤23の硬化前であっても下穴23に対する胴部110の埋め込み状態、すなわち、タイル表面22aに当接させた係合爪部14によってタイル22をコンクリート躯体21に対して押さえ込んだ状態を安定に保つことができるといった利点がある。したがって、このアンカーピン10Dは、例えば上向き施工等にも好適に用いることができる。
【0045】
また、本発明にかかるアンカーピンの胴部に設ける機械的固定部としては、例えば、図13に示すアンカーピン10Eのように、棒状の胴部の前記係合爪部14が突設された基端側とは反対側の先端部に、コンクリート躯体21の下穴23内面を形成する孔壁部を押圧して胴部を固定するための弾性片121が複数突設された固定用部品120を取り付け、この固定用部品120を機械的固定部としたもの等も採用可能である。
前記機械的固定部としては、アンカーピンの胴部を下穴23内にてコンクリート躯体21に対して固定できる構成のものであれば良く、図12(a)、(b)、図13に例示した構成のものに限定されない。また、アンカーピンは、機械的固定部を有する場合、機械的固定部を有していない場合のいずれについても、胴部の基端側の端部に、下穴23の開口部を塞ぐように配置される端面を有する構成とされる。
【0046】
図13に例示した固定用部品120は、具体的には金属製スリーブを加工したものであり、アンカーピン10Eの棒状の前記胴部11Aの先端部を小径に形成した先端雄ねじ部15に螺着された螺着リング部122と、この螺着リング部122から胴部基端側へ行くにしたがって胴部先端部(具体的には先端雄ねじ部15)から外側へ拡がるように突設された複数の前記弾性片121とを具備している。また、前記固定用部品120は、前記螺着リング部122から該螺着リング部122を延長するように延出する複数の当接片部123を有し、各当接片部123の前記螺着リング部122とは反対側の端部を、胴部11Aの中間部16(先端雄ねじ部15と基端部との間に位置する部分)と先端雄ねじ部15との間の段差17に当接させている。
なお、図示例のアンカーピン10Eは、図1(a)、(b)、図2等を参照して説明した既述のアンカーピン10の胴部11の先端部を先端雄ねじ部15とし、この先端雄ねじ部15に固定用部品120を取り付けた点のみが前記アンカーピン10と異なる点であり、他の構成は既述のアンカーピン10と同様の構成を採用できる。
【0047】
図13に例示したアンカーピン10Eは、胴部11A及び固定用部品120を下穴23に押し込むだけでコンクリート躯体21に対する機械的固定を行える。胴部11A及び固定用部品120の下穴23への押し込みは、胴部11Aの打ち込み棒91を使用して胴部11Aに打撃力を与えること等により行える。
機械的固定部を具備するアンカーピンを用いたピンニング工法としては、接着剤を注入した下穴23に胴部を挿入して機械的固定部によって固定する工法に限定されず、接着剤を注入していない下穴に胴部を挿入して機械的固定部のみによって胴部をコンクリート躯体21に固定する工法も採用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10、10A、10B、10C、10D、10E…アンカーピン、11、11A…胴部、12…棒状部、12a…ねじ溝、12b…ねじ山、13…頭部、13a…端面(頭部端面)、14…係合爪部、爪部、14a…当接部(当接面)、14b…突起部、14c…張出部、15…先端雄ねじ部、16…中間部、17…段差、21…コンクリート母材(コンクリート躯体)、22…タイル、22a…(タイルの)表面、23…下穴、24…接着剤、
30…金属母材(金属丸棒)、31…直棒部、32…頭部用大径部、33A、33B…頭部用大径部付き棒状体、33C…頭部付き棒状体、34…フランジ付き頭部、34a…フランジ部、
41…頭部、42…テーパ状部、43…等径部、51…頭部、61…頭部、61a…端面(頭部端面)、71…頭部、72…溝、81…胴部、82…端面、
91…打ち込み棒、
110…胴部、111…割り溝、112…拡張部(胴部の先端部)、113…コーン、113a…取付用細径部、114…(胴部の)先端面、115…コーン取付孔、
120…固定用部品、121…弾性片、122…螺着リング部、123…当接部、
a…(係合爪部の)突出寸法、C…クリアランス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体等であるコンクリート母材に取り付けられたタイルを前記コンクリート母材に押さえ込んでコンクリート母材からの剥がれや浮きを防止するピンニング工法用のアンカーピン、このアンカーピンを用いたピンニング工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物のコンクリート躯体に仕上げ材として取り付けられたタイルをアンカーピンを用いて前記コンクリート躯体に押さえ込んで剥落を防止するピンニング工法としては、タイルを貫通しコンクリート躯体に所望の穿孔深さを以て穿孔した下穴に接着剤を充填した後、前記下穴に例えば全ねじボルト等のロッド状のアンカーピンを挿入して埋め込み、前記下穴の開口部をパテ等を用いてタイルと面一に仕上げる工法(以下、第1従来工法とも言う)が広く採用されている。また、このピンニング工法にあっては、棒状の胴部の片端に頭部を有するアンカーピンを用い、接着剤を充填した前記下穴に前記アンカーピンの胴部を挿入するとともに前記頭部を前記下穴の開口部に形成した座ぐり穴に収納し、さらに前記開口部をパテや樹脂製キャップを用いてタイルと面一に仕上げる工法(以下、第2従来工法とも言う)も広く採用されている。
【0003】
上述の第1従来工法にあってはタイルが薄いものである場合にアンカーピンによる押さえ強度が不足する問題があり、第2従来工法にあっては座ぐり穴の形成箇所でタイルが薄肉になってしまうため、アンカーピンによる押さえ強度が不足する問題がある。
これに鑑みて、前記下穴に挿入される棒状の胴部の片端に0.3mm〜0.5mm厚の薄肉板状の頭部を有するアンカーピンを用い、接着剤を充填した下穴に前記胴部を挿入するとともに前記頭部の前記胴部外周から張り出された部分をタイル表面に当接させた状態で前記アンカーピンをコンクリート躯体に接着固定し、タイルをコンクリート躯体に押さえ込む工法(以下、第3従来工法)も知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−238847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の第3従来工法では、アンカーピンの薄肉板状の頭部全体がタイル表面に突出することとなり、美観に与える影響が大きいといった問題があった。
前記アンカーピンの薄肉板状の頭部は、タイルの前記下穴の開口部を覆い、タイルにおける前記下穴の開口部外周に位置する口縁部の全周にわたって当接するサイズを必要とするため、小型化に限界がある。このため、頭部が美観に与える影響を小さくことが容易でない。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みて、コンクリート母材に仕上げ材として設けられたタイルをコンクリート母材に確実に押さえ込むことができ、しかもタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能なアンカーピン、これを用いてタイルをコンクリート母材に押さえ込むピンニング工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、コンクリート母材に取り付けられたタイルを前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法用のアンカーピンであって、前記タイルを貫通し前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して形成した下穴に挿入されて前記コンクリート母材に固定される胴部と、この胴部の片端の端面の外周部の1又は複数箇所に前記端面の外周から張り出すように突設された係合爪部とを具備し、前記係合爪部はその幅寸法が前記端面外周の4〜20%、かつ前記端面に突設された前記係合爪部の前記幅寸法の合計が前記端面外周の50%以下とされ、前記胴部を前記下穴に挿入し前記係合爪部を前記タイル表面に係合させることで前記胴部の全長を前記下穴内に配置可能となっていることを特徴とするアンカーピンを提供する。
第2の発明は、前記胴部が、前記下穴に挿入されて前記コンクリート母材に接着剤によって接着固定されるものであることを特徴とする第1の発明のアンカーピンを提供する。
第3の発明は、前記胴部は、棒状部と、該棒状部の片端に設けられ前記棒状部に比べて太く形成された頭部とを具備し、前記係合爪部は前記頭部の端面の外周部に突設されていることを特徴とする第1又は2の発明のアンカーピンを提供する。
第4の発明は、前記頭部は、その前記棒状部側の端部から前記端面側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状部を有することを特徴とする第3の発明のアンカーピンを提供する。
第5の発明は、前記頭部の最大外径が、前記頭部が前記下穴内に収納されたときに前記頭部の最大外径部分の外周と前記下穴内周面との間に前記接着剤の溢出を可能にするクリアランスが確保される大きさとされていることを特徴とする第2に係る請求項3又は4の発明のアンカーピンを提供する。
第6の発明は、前記頭部の最大外径が、前記下穴の穿孔径と略同等に揃えられていることを特徴とする第3又は4の発明のアンカーピンを提供する。
第7の発明は、前記棒状部の外周に前記接着剤による前記コンクリート母材に対する固着力を高めるための凹凸が形成されていることを特徴とする第2に係る第3〜6のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第8の発明は、前記棒状部がその外周にねじ溝が螺刻されたねじ部とされ、前記ねじ溝と該ねじ溝に沿って延在するねじ山とが前記棒状部の外周の前記凹凸として機能することを特徴とする第7の発明のアンカーピンを提供する。
第9の発明は、前記胴部の前記係合爪部が突設されている端面である基端側端面及び前記係合爪部のうち、少なくとも前記胴部の前記基端側端面が前記タイル表面の色彩と合致するように着色されていることを特徴とする第1〜8のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第10の発明は、全体が金属製の一体成形品であることを特徴とする第1〜9のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第11の発明は、前記胴部に、前記下穴に挿入された該胴部を前記コンクリート母材に機械的に固定するための機械的固定部を有することを特徴とする第1〜10のいずれかの発明のアンカーピンを提供する。
第12の発明は、コンクリート母材に取り付けられたタイルを第2、5、7、8、第2の発明に係る第3、4、6、9、10、11のいずれかの発明のアンカーピンを用いて前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法であって、前記タイルを貫通する下穴を前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して穿孔する下穴穿孔工程と、この下穴に接着剤を注入する接着剤注入工程と、前記下穴に前記アンカーピンの胴部を挿入して、胴部片端の端面に突設されている前記係合爪部をタイル表面に係合させるアンカーピン挿入工程とを具備することを特徴とするピンニング工法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアンカーピン、ピンニング工法によれば、胴部を下穴に挿入し係合爪部をタイル表面に係合させることで前記胴部の全長を前記下穴内に配置可能となっているため、タイル表面に配置されるものが係合爪部のみに限定される。したがって、前記係合爪部によって、タイルをコンクリート母材に確実に押さえ込むことができるとともに、タイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減できる。その結果、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る1実施形態のアンカーピンを、タイルを貫通してコンクリート躯体に形成された下穴に挿入した状態を説明する図であって、(a)はタイル表面側から見た図、(b)は断面図である。
【図2】本発明に係る1実施形態のアンカーピンの構造を示す全体斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は図2のアンカーピンの製造方法の一例を説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は図2のアンカーピンの製造方法の他の例を説明する図である。
【図5】(a)〜(c)は図2のアンカーピンの製造方法の他の例を説明する図である。
【図6】本発明に係るアンカーピンの頭部形状の別態様(テーパ状部と等径部とからなる頭部)を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係るアンカーピンの頭部形状の別態様(等径部のみからなる頭部)を説明する斜視図である。
【図8】図2のアンカーピンの頭部の最大外径を変更して、前記頭部の最大外径部分の外周と下穴内壁面との間に接着剤の溢出を可能とするクリアランスを確保可能とした構成を説明する図であって、(a)はタイル表面側から見た図、(b)は断面図である。
【図9】本発明に係るアンカーピンの頭部形状の別態様(接着剤の溢出を可能とする溝を外周に形成した頭部)を説明する図であって、(a)はタイル表面側から見た図、(b)は断面図である。
【図10】本発明に係るアンカーピンの別態様(等径部のみからなる頭部)を説明する斜視図である。
【図11】本発明に係るアンカーピンの別態様を示す図であって、係合爪部を胴部基端側の端面の外周部にひとつだけ突設した構成を説明する斜視図である。
【図12】機械的固定部を設けたアンカーピン、それを用いたピンニング工法の一例を説明する図であって、(a)はアンカーピンを下穴に挿入した状態(アンカーピン先端のコーンへの胴部の打ち込み前)、(b)はアンカーピンの胴部をコーンに打ち込んで拡張部を拡張させ胴部をコンクリート躯体に固着した状態を示す。
【図13】機械的固定部を設けたアンカーピン、それを用いたピンニング工法の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施したアンカーピン、アンカーピンの製造方法について、図面を参照して説明する。
図1(a)、(b)に示すように、ここで説明するアンカーピン10は、建物外壁等のコンクリート躯体21(コンクリート母材)に仕上げ材として取り付けられたタイル22を前記コンクリート躯体21に押さえ込んでコンクリート躯体21からの剥がれや浮きを防止するピンニング工法に用いられるものである。
なお、コンクリート母材(コンクリート躯体)としては、建物外壁、床等の建物躯体の他、例えば、コンクリート製の橋梁、路床等であっても良い。
【0011】
図1(a)、(b)、図2に示すように、このアンカーピン10は、前記タイル22を貫通し前記コンクリート躯体21に穿孔深さを確保して形成した下穴23に挿入される棒状の胴部11と、この胴部11の片端に設けられた頭部13の端面13a(胴部11の基端側端面。以下、頭部端面とも言う)の外周部の複数箇所(図示例では3箇所)に前記頭部端面13aの外周から該頭部端面13aの仮想延長に沿って放射状に張り出すように突設された係合爪部14(爪部)とを有している。
【0012】
前記胴部11は、棒状部12と、該棒状部12の片端に設けられ前記棒状部12に比べて太く形成された前記頭部13とを具備し、全体として棒状に形成されている。前記頭部端面13aは頭部13の棒状部12とは反対側の端面を指す。また、この胴部11は、頭部13を含む全体が前記下穴23に挿入可能な太さになっている。
【0013】
前記棒状部12は、具体的には、その長手方向全長にわたって外周にねじ溝12a(図1(b)参照)が螺刻されたねじ部とされている。この棒状部12の前記ねじ溝12aと該ねじ溝12aに沿って延在するねじ山12bとは、胴部11を挿入する前記下穴23に充填される接着剤24によるコンクリート躯体21に対する固着力を高めるための凹凸として機能する。
なお、接着剤24によるコンクリート躯体21に対する固着力を高めるための凹凸としては、前記棒状部12をねじ部とする構成に限定されず、棒状部の外周の多数箇所に凸部又は凹部を形成した構成も採用可能である。
【0014】
前記頭部13は、前記棒状部12側の端部から前記頭部端面13a側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状に形成されている。図示例の頭部13はその全体がテーパ状部とされている。また、前記頭部13の最大外径、すなわち頭部端面13a側の端部の外径は、前記下穴23の穿孔径と略同等に揃えられている。
【0015】
図1(a)、(b)に示すように、このアンカーピン10の各係合爪部14は、胴部11の頭部13が下穴23内に収納されたときにタイル22の表面22aに係合可能なように、前記頭部端面13a外周からの突出寸法a(図1(a)参照)を下穴23内径(より詳細には下穴23のタイル表面22aに開口する開口部内径)よりも大きくしてある。
【0016】
また、このアンカーピン10は全体が金属製の1部品(一体成形品)になっている。
このアンカーピン10の材質としては例えばSUS304等を挙げることができる。
【0017】
図1(b)に示すように、前記下穴23は、コンクリート躯体21を貫通しない非貫通穴である。この下穴23は、前記胴部11の全長を収納可能なように、胴部11の長手方向寸法よりも長い(深い)穿孔深さT(タイル表面22a側の開口部と穴奥底23aとの間における穿孔径が一定に確保された部分の全長)を確保して形成される。また、下穴23は、開口部に座ぐり穴を形成しないストレート孔とする。
【0018】
このアンカーピン10を用いたピンニング工法、すなわち、コンクリート躯体21にタイル22を押さえ込むピンニング工法は、まず、ドリル等を用いてタイル22の表面22a側から前記下穴23を穿孔(下穴穿孔工程)し、この下穴23に接着剤24を注入して充填(接着剤注入工程)した後、前記アンカーピン10の胴部11をその基端部(頭部11側の端部)とは反対側の先端部から前記下穴23に挿入(接着剤24が硬化前の液状の状態において挿入)して前記係合爪部14をタイル表面22aに係合させる(アンカーピン挿入工程)。これにより、接着剤24が硬化すると、タイル22をアンカーピン10によってコンクリート躯体21に対して確実に押さえることができ、タイル22の剥がれを防止できる。
また、コンクリート躯体21からの浮きが生じていないタイル22について、このピンニング工法を実施すれば、タイル22の浮きを予防できる。
【0019】
前記アンカーピン10は、胴部11の頭部13が下穴23内に収納されることで、胴部11全体が下穴23の中心軸線に略一致するように位置決めされる。つまり、下穴23に収納された頭部13によって、アンカーピン10全体の傾動防止、及びセンタリング(胴部11中心軸線の下穴23の中心軸線に対する位置合わせ)を容易に実現できる。これにより、棒状部12がその長手方向の広範囲にわたって下穴23内壁面に近接配置されて、接着剤24の被り厚が極端に薄くなる箇所が発生するといった不都合を防止でき、接着剤24によるアンカーピン10の接着強度を確実に確保できる。
【0020】
前記係合爪部14のタイル表面22aに当接される当接部(図示例では当接面14a)は、胴部11の中心軸線に直交する向きの平坦面になっている前記頭部端面13aの仮想延長に高い精度を以て一致あるいはほぼ重なるように形成されている。したがって、前記胴部11を前記下穴23に挿入し前記係合爪部14を下穴23の開口部の周囲(口縁部)に位置する前記タイル表面22aに係合させると、胴部11全体が下穴23内に配置されるとともに、頭部端面13aがタイル表面22aに位置決めされる。
また、この係合爪部14は、具体的には、頭部端面13aの外周部に頭部端面13aに突出する突起状に形成された突起部14bと、この突起部14bに頭部端面13aの外周から張り出すように突設され前記頭部端面13aの仮想延長に重なるところに延在する当接面14aを形成する張出部14cとを有する構成であり、形状が単純であることから、製造効率の向上も図ることもできる。
【0021】
前記頭部端面13aは、タイル表面22aの色彩と合致するように着色されている。このため、頭部端面13aが視覚的に目立ちにくく、タイル22によって形成される仕上げ面の美観を維持することができる。
なお、頭部端面13aの着色は、例えば塗料の塗布や鍍金等によって行うことができるが、例えば着色された樹脂製フィルム等の着色シートの貼付によって行っても良い。また、頭部端面13aの着色は、頭部端面13a全体にわたって単色、均等であることに限定されず、タイル表面22aの色彩に応じて、例えば互いに色が異なる部分が存在するようにしても良い。
【0022】
このアンカーピン10にあっては、係合爪部14も頭部端面13aと同様に着色されている。
但し本発明にかかるアンカーピンにあっては、頭部端面13a、係合爪部14のうち少なくとも頭部端面13aにタイル表面22aの色彩と同様の着色が施されていれば良く、係合爪部14にタイル表面22aの色彩と同様の着色が施されていない構成も含む。
【0023】
前記アンカーピン10は、既述のように、接着剤24が充填された下穴23に胴部11を挿入し、前記係合爪部14を下穴23の開口部の周囲(口縁部)に位置する前記タイル表面22aに係合させることで、胴部11全体が下穴23内に配置された状態で施工(コンクリート躯体21に対して接着固定)される。すなわち、このアンカーピン10は、胴部11がタイル表面22aから突出せず、タイル表面22aから突出されるのは係合爪部14のみである。このため、このアンカーピン10を用いてコンクリート躯体21にタイル22を押さえるピンニング工法を行った場合、コンクリート躯体21のタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことが可能である。
【0024】
前記係合爪部14の、前記頭部端面13aの外周方向の寸法(以下、係合爪部の幅寸法とも言う)は、該アンカーピン10に設けられている全ての係合爪部14の幅寸法の合計が頭部端面13a外周寸法(外周全周長さ)の10〜50%程度、ひとつの係合爪部14の幅寸法が頭部端面13a外周寸法の4〜10%程度の範囲であることが好ましい。アンカーピン10に設けられている全ての係合爪部14の幅寸法の合計が頭部端面13a外周寸法(外周全周長さ)の10〜50%の範囲であれば、ひとつの係合爪部14の幅寸法は頭部端面13a外周寸法の4〜20%程度であっても良い。
また、係合爪部14の頭部端面13a外周からの突出寸法aは、胴部11を下穴23に挿入したときに、各係合爪部14の当接部14aをタイル表面22aに確実に当接できる範囲であれば良いが、タイル仕上げ面(タイル表面22a)からの突出部分をできるだけ小さくして美観に与える影響を低減する点で、この突出寸法aは出来るだけ小さくすることが好ましい。
【0025】
例えばアンカーピン10の頭部端面13aの外径が7mmであるとき、上述の係合爪部14の頭部端面13a外周寸法に対する係合爪部14の幅寸法の寸法比率の範囲であれば、係合爪部14の幅寸法は1〜2mm(0.9〜2.2mm)程度であり、アンカーピン10の施工時(コンクリート躯体21に対する接着固定の完了時)の係合爪部14のタイル仕上げ面(タイル表面22a)からの突出部分のサイズは非常に小さくすることができる。このため、コンクリート躯体21のタイル仕上げ面の美観に与える影響を容易に低減でき、前記美観に与える影響を殆ど無くすことを容易に実現できる。
【0026】
図3(a)〜(d)は、前記アンカーピン10の製造方法の一例を示す。
図3(a)〜(d)に示すアンカーピンの製造方法は、まず、棒状の金属母材30(図3(a)参照。具体的には金属丸棒)にヘッター加工を行って、図3(b)に示すように直棒部31の片端に該直棒部31よりも太い頭部用大径部32を有する頭部用大径部付き棒状体33Aを得るヘッター加工工程を行い、次いで、このヘッター加工工程によって前記頭部用大径部付き棒状体33の前記直棒部31に例えばローリングダイスを用いてねじを加工しねじ部(ねじ部である棒状部12)を得るねじ加工工程と、ヘッター加工工程によって形成した前記頭部用大径部32のプレス加工により前記係合爪部14(爪部)を形成する爪部形成工程とを行う。この爪部形成工程によって、頭部用大径部32の金属材料の一部が係合爪部14となり、頭部13も完成する。そして、頭部端面13aに着色を施すことでアンカーピン10が得られる。
【0027】
アンカーピン10の製造方法としては、これに限定されず、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(c)に示す方法も採用可能である。
図4(a)〜(d)に示す方法は、まず、棒状の金属母材30(図4(a)参照。具体的には金属丸棒)のヘッター加工によって、直棒部31の片端に該直棒部31よりも太いフランジ付き頭部34(頭部用大径部)を有する頭部用大径部付き棒状体33Bを得るヘッター加工工程を行う。前記フランジ付き頭部34は、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13に、該頭部13の頭部端面13aの外周部の全周にわたって突設されて前記頭部端面13aの外周から張り出すように突出されたフランジ部34aを形成したものである。
次に、このヘッター加工工程によって得た前記頭部用大径部付き棒状体33Bの前記直棒部31に例えばローリングダイスを用いてねじ加工を行ってねじ部(ねじ部である棒状部12)とするねじ加工工程(図4(c)参照)と、ヘッター加工工程によって形成した前記フランジ付き頭部34の一部を除去して前記係合爪部14(爪部)を形成する爪部形成工程とを行う。この爪部形成工程によって、頭部13も形成される。
そして、頭部端面13aに着色を施すことでアンカーピン10が得られる。
【0028】
図5(a)〜(c)に示す方法は、まず、棒状の金属母材30(図5(a)参照。具体的には金属丸棒)のヘッター加工によって、頭部13及び係合爪部14を形成して、直棒部31の片端に頭部13及び係合爪部14を有する頭部付き棒状体333を得る。次いで、前記直棒部31に例えばローリングダイスを用いてねじ加工を行ってねじ部(ねじ部である棒状部12)とするねじ加工工程(図5(c)参照)を行う。そして、頭部端面13aに着色を施すことでアンカーピン10が得られる。
【0029】
アンカーピン10の製造方法としては上述したものに限定されないが、例えば上述の図3(a)〜(d)、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(c)のように、係合爪部14を、頭部形成用大径部を形成する金属材料の一部あるいは金属母材30自体の頭部13形成位置に存在する金属材料の一部によって形成する製造方法であれば、胴部11と一体になっている係合爪部14を容易に得ることができ、その結果、例えば係合爪部を胴部と別体の部材を胴部に固定して設ける構成に比べて、係合爪部14の胴部11に対する曲げ強度の確保や形成位置の精度確保も容易であり、サイズの小さい係合爪部14を容易に得ることができる。
【0030】
本発明に係るアンカーピンの頭部としては、頭部13全体がテーパ状部となっている構成に限定されない。頭部の形状としては、例えば図6に示す頭部41のように、棒状部12側の端部から棒状部12とは反対側の端部側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状部42と、このテーパ状部42を介して棒状部12とは反対側に胴部の中心軸線に沿う方向に外径一定で形成された等径部43とからなる構成としても良い。
また、図7に示すように、テーパ状部が存在せず、等径部43のみからなる構成の頭部51も採用可能である。
【0031】
また、頭部としては、その最大外径が、前記下穴23の穿孔径と略同等に揃えられている構成に限定されない。例えば、図8(a)、(b)に示すように、頭部61の最大外径が下穴23の穿孔径に比べて若干小さく、前記頭部61を前記下穴23内に収納する際に前記頭部61の最大外径部分の外周と前記下穴23内周面との間に接着剤の溢出を可能にするクリアランスCが確保されるようにしても良い。この構成の場合、頭部61を下穴23内に挿入して係合爪部14を下穴23の開口部の周囲に位置するタイル表面22aに係合させる際に、下穴23内の接着剤24が前記クリアランスCを介して頭部端面61aの周囲に溢出したことを確認することで、下穴23内の接着剤24の充填量が充分に確保されていること、及び下穴23内の接着剤24中に胴部11が確実に埋め込まれたことを把握できるといった利点がある。
【0032】
なお、図8(a)、(b)に例示した頭部61は、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13の外径を変更して頭部61の棒状部12とは反対側の端部と下穴23内壁面との間に前記クリアランスCが確保されるようにしたものであるが、頭部形状についてはこれに限定されず、例えば図6、図7に例示した頭部形状も採用可能である。
図8(a)、(b)に例示したアンカーピンは、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13を図中符号61の頭部に変更したものである。このアンカーピンに図中符号10Aを付記する。
【0033】
さらに、本発明にかかるアンカーピンの頭部としては、図9(a)、(b)に示す頭部71のように、その最大外径が前記下穴23の穿孔径と略同等に揃えられ、外周の1又は複数箇所に胴部の中心軸線に沿う方向に延在する溝72が形成され、接着剤24を充填済みの下穴23に収納する際に、頭部71から下穴23の穴奥底23a側の接着剤24が前記溝72を介して溢出可能となっている構成も採用可能である。
この構成であれば、胴部70全体を下穴23に挿入したときに、下穴23内周面と頭部71外周面との接触によって下穴23の中心軸線に対するアンカーピン10Bの位置決めを確実に行えるとともに、溝72からの接着剤24の溢出確認による下穴23内の接着剤24中への胴部の確実な埋め込みの把握も行える。
【0034】
なお、図9(a)、(b)に例示した頭部71は、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13に前記溝72を形成したものであるが、頭部形状についてはこれに限定されず、例えば図6、図7に例示した頭部形状も採用可能である。
図9(a)、(b)に例示したアンカーピンは、図1(a)、(b)、図2に例示したアンカーピン10の頭部13を図中符号71の頭部に変更したものである。このアンカーピンに図中符号10Bを付記する。
【0035】
また、本発明にかかるアンカーピンとしては、図10に示す胴部81のように、頭部を具備しておらず、その全長にわたって外径一定のねじ部となっている構造の胴部81を採用した構成も含む。
このアンカーピン10Cの場合は、係合爪部14は胴部81の片端(基端)の端面82の外周に突設される。
【0036】
本発明にかかるアンカーピンとしては、図11に示すように、胴部11の端面(図示例では頭部端面13a)の外周部に、胴部端面外周から前記胴部端面の仮想延長に沿って張り出す係合爪部14をひとつだけ形成した構成も採用可能である。胴部端面の外周部に形成する係合爪部の数は1〜6個程度であることが好ましい。
また、タイル表面に当接させた係合爪部を、下穴23に挿入された胴部及びアンカーピン全体を所望の向きに安定に保つことに有効に寄与させる点では、胴部端面における係合爪部14の形成数が3以上(3〜6個)であることが好ましい。さらに、施工後の美観確保のため、タイル表面に配置される係合爪部の数を少なくすることを加味すれば、胴部端面における係合爪部14の形成数は例えば3又は4個であることがより好ましい。
胴部端面に突設される係合爪部14が2以上である場合は、係合爪部14が胴部端面の外周部の周方向に均等配置されるようにして設けられた構成とすることが好ましい。
【0037】
胴部端面の外周部に形成する係合爪部の数が複数である場合は、既述の通り、ひとつの係合爪部14の幅寸法が胴部端面の外周寸法の4〜10%、全ての係合爪部14の幅寸法の合計が頭部端面13a外周寸法の10〜50%程度であることが好ましい。
胴部端面の外周部に係合爪部が1つだけ設けられている場合は、この係合爪部の幅寸法は、胴部端面の外周寸法の4〜20%であることが好ましい。
【0038】
本発明にかかるアンカーピンとしては、例えば図12(a)、(b)に示すアンカーピン10D、図13に示すアンカーピン10Eのように、胴部に、前記下穴23に挿入された状態にて該胴部をコンクリート躯体に機械的に固定するための機械的固定部112を設けた構成のものも採用可能である。
【0039】
図12(a)、(b)に例示したアンカーピンは、胴部として、前記係合爪部14が突設された基端側とは反対側の端部である先端部を割り溝111によって複数に分割した構成の胴部110を採用し、この胴部110の先端部112に該先端部112の拡張用のコーン113を、前記胴部110先端側に突出状態に取り付けた構成になっている。前記コーン113は、該コーン113に突設された取付用細径部113aを、前記胴部110にその先端面114に開口するように形成されたコーン取付孔115に圧入状態に嵌め込んで前記胴部110に取り付けられている。
【0040】
なお、前記コーン13を取り付けるために前記胴部110に形成したコーン取付孔115は、胴部110の先端面114から胴部110の中心軸線に沿って延在するように形成されているが、胴部110基端側の端面には開口しない非貫通孔とされており、胴部110の基端部は中実な棒状に形成されている。
このアンカーピン10Dの胴部110の先端部112は、コーン113の打ち込みによって拡張可能な拡張部とされている。この胴部110の先端部112を、以下、拡張部とも言う。
【0041】
図示例のアンカーピン10Dは、図1(a)、(b)、図2等を参照して説明した既述のアンカーピン10の胴部11の先端部を拡張部112とし、この拡張部112にコーン113を取り付けた点のみが前記アンカーピン10と異なる点であり、他の構成は既述のアンカーピン10と同様の構成を採用できる。
【0042】
ここで、図12(a)、(b)を参照して、前記アンカーピン10Dを用いて、タイル22をコンクリート躯体21に押さえ込むピンニング工法の一例を説明する。
まず、タイル22を貫通する下穴23をコンクリート躯体21に穿孔する下穴穿孔工程を行い、前記下穴23に接着剤24を注入、充填(接着剤充填工程)した後、下穴23にアンカーピン10Dの前記胴部110を挿入し、その先端のコーン113を下穴23の穴奥底23aに突き当てる。そして、例えば胴部110の基端側端面(図示例のアンカーピン10Dにあっては頭部端面13a)に当接させた打ち込み棒91を介して胴部110に打撃力を与えることなどにより、胴部110の拡張部112を概略紡錘形に形成されている前記コーン113に打ち込んで拡張させることで、胴部110をコンクリート躯体21に固着させる。これにより胴部110をコンクリート躯体21に機械的に固定できる。そして、接着剤24が硬化することで、胴部110をコンクリート躯体21に強固に固定できる。
前記アンカーピン10Dにあっては、前記拡張部112が胴部110をコンクリート躯体21に固定する機械的固定部として機能する。
【0043】
なお、このピンニング工法にあっては、図12(a)に示すように、アンカーピン10Dの胴部110を下穴23に挿入してその先端のコーン113を下穴23の穴奥底23aに突き当てたときに、胴部110基端側に突設されている係合爪部14がタイル表面22aから離隔した位置に配置されるようにする。そして、胴部110先端の拡張部112のコーン113への打ち込みによって、胴部110基端側に突設されている係合爪部14をタイル表面22aに当接させる。
このピンニング工法のアンカーピン挿入工程は、接着剤24が注入された下穴23にアンカーピン10Dの胴部110及びコーン113を挿入した後、アンカーピン10Dの係合爪部14をタイル表面22aに当接させ、胴部110全体を下穴23内に収納することによって完了するものであり、胴部110先端の拡張部112をコーン113への打ち込みによって拡張させ胴部110をコンクリート躯体21に固定することを含む。
【0044】
前記アンカーピン10Dは、接着剤24を注入、充填した下穴23に前記胴部110を挿入し、上述のように胴部110の打撃によって前記拡張部112を拡張させてコンクリート躯体21に機械的に固定することで、コンクリート躯体21に対する位置ずれを規制できるため、接着剤23の硬化前であっても下穴23に対する胴部110の埋め込み状態、すなわち、タイル表面22aに当接させた係合爪部14によってタイル22をコンクリート躯体21に対して押さえ込んだ状態を安定に保つことができるといった利点がある。したがって、このアンカーピン10Dは、例えば上向き施工等にも好適に用いることができる。
【0045】
また、本発明にかかるアンカーピンの胴部に設ける機械的固定部としては、例えば、図13に示すアンカーピン10Eのように、棒状の胴部の前記係合爪部14が突設された基端側とは反対側の先端部に、コンクリート躯体21の下穴23内面を形成する孔壁部を押圧して胴部を固定するための弾性片121が複数突設された固定用部品120を取り付け、この固定用部品120を機械的固定部としたもの等も採用可能である。
前記機械的固定部としては、アンカーピンの胴部を下穴23内にてコンクリート躯体21に対して固定できる構成のものであれば良く、図12(a)、(b)、図13に例示した構成のものに限定されない。また、アンカーピンは、機械的固定部を有する場合、機械的固定部を有していない場合のいずれについても、胴部の基端側の端部に、下穴23の開口部を塞ぐように配置される端面を有する構成とされる。
【0046】
図13に例示した固定用部品120は、具体的には金属製スリーブを加工したものであり、アンカーピン10Eの棒状の前記胴部11Aの先端部を小径に形成した先端雄ねじ部15に螺着された螺着リング部122と、この螺着リング部122から胴部基端側へ行くにしたがって胴部先端部(具体的には先端雄ねじ部15)から外側へ拡がるように突設された複数の前記弾性片121とを具備している。また、前記固定用部品120は、前記螺着リング部122から該螺着リング部122を延長するように延出する複数の当接片部123を有し、各当接片部123の前記螺着リング部122とは反対側の端部を、胴部11Aの中間部16(先端雄ねじ部15と基端部との間に位置する部分)と先端雄ねじ部15との間の段差17に当接させている。
なお、図示例のアンカーピン10Eは、図1(a)、(b)、図2等を参照して説明した既述のアンカーピン10の胴部11の先端部を先端雄ねじ部15とし、この先端雄ねじ部15に固定用部品120を取り付けた点のみが前記アンカーピン10と異なる点であり、他の構成は既述のアンカーピン10と同様の構成を採用できる。
【0047】
図13に例示したアンカーピン10Eは、胴部11A及び固定用部品120を下穴23に押し込むだけでコンクリート躯体21に対する機械的固定を行える。胴部11A及び固定用部品120の下穴23への押し込みは、胴部11Aの打ち込み棒91を使用して胴部11Aに打撃力を与えること等により行える。
機械的固定部を具備するアンカーピンを用いたピンニング工法としては、接着剤を注入した下穴23に胴部を挿入して機械的固定部によって固定する工法に限定されず、接着剤を注入していない下穴に胴部を挿入して機械的固定部のみによって胴部をコンクリート躯体21に固定する工法も採用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10、10A、10B、10C、10D、10E…アンカーピン、11、11A…胴部、12…棒状部、12a…ねじ溝、12b…ねじ山、13…頭部、13a…端面(頭部端面)、14…係合爪部、爪部、14a…当接部(当接面)、14b…突起部、14c…張出部、15…先端雄ねじ部、16…中間部、17…段差、21…コンクリート母材(コンクリート躯体)、22…タイル、22a…(タイルの)表面、23…下穴、24…接着剤、
30…金属母材(金属丸棒)、31…直棒部、32…頭部用大径部、33A、33B…頭部用大径部付き棒状体、33C…頭部付き棒状体、34…フランジ付き頭部、34a…フランジ部、
41…頭部、42…テーパ状部、43…等径部、51…頭部、61…頭部、61a…端面(頭部端面)、71…頭部、72…溝、81…胴部、82…端面、
91…打ち込み棒、
110…胴部、111…割り溝、112…拡張部(胴部の先端部)、113…コーン、113a…取付用細径部、114…(胴部の)先端面、115…コーン取付孔、
120…固定用部品、121…弾性片、122…螺着リング部、123…当接部、
a…(係合爪部の)突出寸法、C…クリアランス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート母材に取り付けられたタイルを前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法用のアンカーピンであって、
前記タイルを貫通し前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して形成した下穴に挿入されて前記コンクリート母材に固定される胴部と、この胴部の片端の端面の外周部の1又は複数箇所に前記端面の外周から張り出すように突設された係合爪部とを具備し、前記係合爪部はその幅寸法が前記端面外周の4〜20%、かつ前記端面に突設された前記係合爪部の前記幅寸法の合計が前記端面外周の50%以下とされ、
前記胴部を前記下穴に挿入し前記係合爪部を前記タイル表面に係合させることで前記胴部の全長を前記下穴内に配置可能となっていることを特徴とするアンカーピン。
【請求項2】
前記胴部が、前記下穴に挿入されて前記コンクリート母材に接着剤によって接着固定されるものであることを特徴とする請求項1記載のアンカーピン。
【請求項3】
前記胴部は、棒状部と、該棒状部の片端に設けられ前記棒状部に比べて太く形成された頭部とを具備し、前記係合爪部は前記頭部の端面の外周部に突設されていることを特徴とする請求項1又は2記載のアンカーピン。
【請求項4】
前記頭部は、その前記棒状部側の端部から前記端面側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状部を有することを特徴とする請求項3記載のアンカーピン。
【請求項5】
前記頭部の最大外径が、前記頭部が前記下穴内に収納されたときに前記頭部の最大外径部分の外周と前記下穴内周面との間に前記接着剤の溢出を可能にするクリアランスが確保される大きさとされていることを特徴とする請求項2に係る請求項3又は4記載のアンカーピン。
【請求項6】
前記頭部の最大外径が、前記下穴の穿孔径と略同等に揃えられていることを特徴とする請求項3又は4記載のアンカーピン。
【請求項7】
前記棒状部の外周に前記接着剤による前記コンクリート母材に対する固着力を高めるための凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2に係る請求項3〜6のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項8】
前記棒状部がその外周にねじ溝が螺刻されたねじ部とされ、前記ねじ溝と該ねじ溝に沿って延在するねじ山とが前記棒状部の外周の前記凹凸として機能することを特徴とする請求項7記載のアンカーピン。
【請求項9】
前記胴部の前記係合爪部が突設されている端面である基端側端面及び前記係合爪部のうち、少なくとも前記胴部の前記基端側端面が前記タイル表面の色彩と合致するように着色されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項10】
全体が金属製の一体成形品であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項11】
前記胴部に、前記下穴に挿入された該胴部を前記コンクリート母材に機械的に固定するための機械的固定部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項12】
コンクリート母材に取り付けられたタイルを請求項2、5、7、8、請求項2に係る請求項3、4、6、9、10、11のいずれかに記載のアンカーピンを用いて前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法であって、
前記タイルを貫通する下穴を前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して穿孔する下穴穿孔工程と、この下穴に接着剤を注入する接着剤注入工程と、前記下穴に前記アンカーピンの胴部を挿入して、胴部片端の端面に突設されている前記係合爪部をタイル表面に係合させるアンカーピン挿入工程とを具備することを特徴とするピンニング工法。
【請求項1】
コンクリート母材に取り付けられたタイルを前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法用のアンカーピンであって、
前記タイルを貫通し前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して形成した下穴に挿入されて前記コンクリート母材に固定される胴部と、この胴部の片端の端面の外周部の1又は複数箇所に前記端面の外周から張り出すように突設された係合爪部とを具備し、前記係合爪部はその幅寸法が前記端面外周の4〜20%、かつ前記端面に突設された前記係合爪部の前記幅寸法の合計が前記端面外周の50%以下とされ、
前記胴部を前記下穴に挿入し前記係合爪部を前記タイル表面に係合させることで前記胴部の全長を前記下穴内に配置可能となっていることを特徴とするアンカーピン。
【請求項2】
前記胴部が、前記下穴に挿入されて前記コンクリート母材に接着剤によって接着固定されるものであることを特徴とする請求項1記載のアンカーピン。
【請求項3】
前記胴部は、棒状部と、該棒状部の片端に設けられ前記棒状部に比べて太く形成された頭部とを具備し、前記係合爪部は前記頭部の端面の外周部に突設されていることを特徴とする請求項1又は2記載のアンカーピン。
【請求項4】
前記頭部は、その前記棒状部側の端部から前記端面側に行くにしたがって外径が次第に大きくなるテーパ状部を有することを特徴とする請求項3記載のアンカーピン。
【請求項5】
前記頭部の最大外径が、前記頭部が前記下穴内に収納されたときに前記頭部の最大外径部分の外周と前記下穴内周面との間に前記接着剤の溢出を可能にするクリアランスが確保される大きさとされていることを特徴とする請求項2に係る請求項3又は4記載のアンカーピン。
【請求項6】
前記頭部の最大外径が、前記下穴の穿孔径と略同等に揃えられていることを特徴とする請求項3又は4記載のアンカーピン。
【請求項7】
前記棒状部の外周に前記接着剤による前記コンクリート母材に対する固着力を高めるための凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2に係る請求項3〜6のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項8】
前記棒状部がその外周にねじ溝が螺刻されたねじ部とされ、前記ねじ溝と該ねじ溝に沿って延在するねじ山とが前記棒状部の外周の前記凹凸として機能することを特徴とする請求項7記載のアンカーピン。
【請求項9】
前記胴部の前記係合爪部が突設されている端面である基端側端面及び前記係合爪部のうち、少なくとも前記胴部の前記基端側端面が前記タイル表面の色彩と合致するように着色されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項10】
全体が金属製の一体成形品であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項11】
前記胴部に、前記下穴に挿入された該胴部を前記コンクリート母材に機械的に固定するための機械的固定部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のアンカーピン。
【請求項12】
コンクリート母材に取り付けられたタイルを請求項2、5、7、8、請求項2に係る請求項3、4、6、9、10、11のいずれかに記載のアンカーピンを用いて前記コンクリート母材に押さえ込むピンニング工法であって、
前記タイルを貫通する下穴を前記コンクリート母材に穿孔深さを確保して穿孔する下穴穿孔工程と、この下穴に接着剤を注入する接着剤注入工程と、前記下穴に前記アンカーピンの胴部を挿入して、胴部片端の端面に突設されている前記係合爪部をタイル表面に係合させるアンカーピン挿入工程とを具備することを特徴とするピンニング工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−38325(P2011−38325A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186804(P2009−186804)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】
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