説明

アンカーボルト支持具

【課題】アンカーボルトを支持する際の作業性を高めるとともに、アンカーボルトを安定した状態で支持することが可能なアンカーボルト支持具を提供する。
【解決手段】一対の型枠に対し架け渡した状態で支持される支持プレート2と、支持プレート2に切欠形成され、アンカーボルトBを側方から挿入させることが可能な切欠部6と、切欠部6の内縁に沿って形成されるとともに、支持プレート2の上面から立設され、切欠部6内に挿入されたアンカーボルトBに当接可能な当接部7と、アンカーボルトBと当接部7とを突合わせた状態で取り囲む環状の囲繞部(枠部材9の先端部分9a及び押圧片10)、及びその囲繞部によって取り囲まれる空間を締付操作によって小さくする固定ボルト11を有する結束部材8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルト支持具に関するものであり、特に、型枠を用いてコンクリート基礎を構築する際に、一対の型枠に架け渡され、打設されたコンクリートが硬化するまでアンカーボルトを支持するアンカーボルト支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物のコンクリート基礎には、構造部材を固定するためのアンカーボルトが埋め込まれている。このアンカーボルトは、コンクリートの打設前に任意の位置に位置決めされ保持される。アンカーボルトを保持する手段として、例えば図4(a)に示すアンカーボルト支持具50が知られている(例えば特許文献1)。このアンカーボルト支持具50は、対向して配置された一対の型枠60に架け渡して配置される板状の支持プレート51と、支持プレート51の中央部分に設けられアンカーボルトBを保持する保持部52と、支持プレート51の両端側を型枠60に固定するプレート支持具56とを備えて構成されている。保持部52は、アンカーボルトBが挿通可能な挿通孔53aを有する円筒状の支持筒部53と、支持筒部53の高さ方向の略中央部分において径方向に螺合された固定ネジ54とを備えている。つまり、アンカーボルトBを支持筒部53の挿通孔53aに挿入した後、固定ネジ54を締付操作することにより、アンカーボルトBを押圧固定することができるようになっている。
【0003】
ところが、上記のアンカーボルト支持具50によれば、上下方向に細長い棒状のアンカーボルトBを、型枠60内で、支持プレート51の下方から支持筒部53の挿通孔53aに挿入しなければならず、組付け作業に手間を要していた。詳しく説明すると、アンカーボルトBは一般に、引抜強度が増大するように、下端部分が曲げられてL字形またはJ字形となっているため、支持筒部53の挿通孔53aにアンカーボルトBを挿入する際には、支持筒部53の下側の開口からアンカーボルトBを差し込まなければならなず、ひいては見え難い場所で、しかも狭い型枠60内での嵌込作業となり、作業性が悪くなっていた。さらに、アンカーボルトBを支持筒部53の下方に移動させる際、アンカーボルトBの下端がコンクリート基礎のベース部(図示しない)に接する場合があり、これによれば、プレート支持具56を外して支持プレート51を一旦持ち上げなければならず、作業性の悪さが助長されていた。
【0004】
一方、上記の不具合を解消するために、図4(b)に示すようなアンカーボルト支持具70も知られている(例えば特許文献2)。このアンカーボルト支持具70では、支持プレート71の中央部分に保持部72が設けられている。この保持部72は、アンカーボルトBの外周面の上下二箇所に当接することで位置決めする位置決め部73と、位置決め部73に対向するとともにネジ孔(図示しない)が形成された支持壁部74と、ネジ孔に螺合され締付操作によりアンカーボルトBを押圧固定する固定ネジ75とを備えて構成されている。このアンカーボルト支持具70によれば、位置決め部73と支持壁部74との間の隙間、すなわち側方に開口した溝状の切欠部76からアンカーボルトBを挿入することができるため、アンカーボルトBの嵌込作業が容易になるとともに、支持プレート71を持ち上げることなく、アンカーボルトBを配設することができ、作業性を高めることが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のアンカーボルト支持具70によれば、アンカーボルトBは、位置決め部73における上下二箇所の当接点、及び固定ネジ75の先端の点、の合計三点のみで支持され、しかも、それらの三点は全て同一の鉛直面上に位置することから、アンカーボルトBの支持が不安定となる虞れ、すなわちアンカーボルトBが上記の鉛直面上から逸脱する方向に変位する可能性があった。なお、このようなアンカーボルトBの変位を規制するために、図4(b)の二点鎖線に示すように、位置決め部73において凹部73aを形成することも考えられるが、これによれば、アンカーボルトBを凹部73a内に挿入させる際、またはアンカーボルト支持具70を取外すにあたりアンカーボルトBを凹部73aから相対的に離脱させる際には、アンカーボルトBを固定ネジ75の軸方向に移動させることが必要となり、ひいては固定ネジ75における軸方向の変位量が長くなり、締付操作及び取外操作に多くの時間を要することになる。
【0006】
また、アンカーボルトBを三点で支持することから、アンカーボルトBの上端が、少なくとも上部側の位置決め部73よりも上方に位置するように配置しなければならず、ひいてはアンカーボルトBの配置高さを低い位置(例えばアンカーボルトBの上端が支持プレート71よりも僅かに突出した状態)に設定することができず、利便性の悪いものとなっていた。なお、上部側の位置決め部73の高さを低くするほど、アンカーボルトBの下限位置を下げること、すなわちアンカーボルトBの高さにおける自由度を高くすることが可能となるが、これによれば、上側の位置決め部73の当接点が固定ネジ75の先端に近づき、アンカーボルトBの支持状態が一層不安定となることから好ましくない。
【0007】
また、アンカーボルトBを固定ネジ75の先端で押圧固定するため、大きな保持力を生じさせることが困難となり、保持しているにも拘わらず、アンカーボルトBが自重によって降下(または落下)することが懸念されていた。さらに、固定ネジ75の締付けが強すぎる場合には、アンカーボルトBに加わる集中的な押圧力によりアンカーボルトBの周面に傷がついたり変形したりする場合、または固定ネジ75を支持する支持壁部74が変形する場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、アンカーボルトを支持する際の作業性を高めるとともに、アンカーボルトを安定した状態で支持することが可能なアンカーボルト支持具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンカーボルト支持具は、
「一対の型枠に対し架け渡した状態で支持される支持プレートと、
該支持プレートに切欠形成され、アンカーボルトを側方から挿入させることが可能な切欠部と、
該切欠部の内縁に沿って形成されるとともに、前記支持プレートの上面から立設され、前記切欠部内に挿入された前記アンカーボルトに当接可能な当接部と、
前記アンカーボルトと前記当接部とを突合わせた状態で取り囲む環状の囲繞部、及び該囲繞部によって取り囲まれる空間を締付操作によって小さくするネジ部を有する結束部材と
を備える」
ことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、「アンカーボルト」の形状は特に限定されるものではなく、例えば下端部分が曲げられて全体がL字形またはJ字形となっているアンカーボルトに対しても適用することが可能である。また、「当接部」は、支持プレートと一体に形成してもよいが、別部材で形成し、支持プレートの上面に溶着または接着することで一体的に構成するようにしてもよい。
【0011】
本発明のアンカーボルト支持具によれば、一対の型枠の上面に架け渡された支持プレートに対し、アンカーボルトが支持される。詳しく説明すると、支持プレートには、側方に開口した切欠部が形成されており、上下方向に長い棒状のアンカーボルトを、支持プレートと交差するように、側方の開口部分から切欠部の内部(すなわち支持プレートの内部)に挿入させることが可能になっている。このようにアンカーボルトを側方から挿入可能とすることで、例えば、全体の形状がL字形またはJ字形であるアンカーボルトにおいても、極めて容易に挿入することが可能になる。また、アンカーボルトの下端がコンクリート基礎のベース部に接触することなく、また、支持プレートを持ち上げることもなく、アンカーボルトを任意の位置に配置させることが可能になる。
【0012】
また、支持プレートの上面には、切欠部の内縁に沿って形成された当接部が立設されているため、アンカーボルトを切欠部の奥まで水平方向に挿入すると、アンカーボルトの外周面が当接部に突き当たり、アンカーボルトは位置決めされた状態となる。そして、このように位置決められたアンカーボルトは、結束部材によって保持される。詳しく説明すると、結束部材には、環状の囲繞部が設けられているため、アンカーボルトと当接部とを突合わせた状態で、アンカーボルトの上方から囲繞部を嵌め込むと、アンカーボルト及び当接部が、環状の囲繞部に取り囲まれた状態となる。そして、結束部材に設けられた操作ネジ部を締付操作すると、囲繞部によって取り囲まれた空間が小さくなり、アンカーボルトと当接部とが結束される。すなわちアンカーボルトが、支持プレートに対して固定された状態となる。
【0013】
このように、結束部材を用いることにより、アンカーボルトは、当接部と一緒に、結束部材の囲繞部によって挟持され、複数の面または複数の線で支持された状態となる。したがって、アンカーボルトの安定性を高めるとともに、保持力を高め、アンカーボルトの自重による落下または過度の締付によるアンカーボルト等の破損を抑制することが可能になる。なお、結束部材の囲繞部は環状に形成されているが、アンカーボルトの上端側から挿入されるものであるため、視認可能で且つ比較的広い空間での作業となり、作業者の負担を大きくすることはない。
【0014】
本発明のアンカーボルト支持具において、
「前記切欠部は、開放側を底辺とする三角形の形状を呈し、前記当接部は、平面視形状がV字形である壁状部材からなる」
構成としてもよい。
【0015】
本発明のアンカーボルト支持具によれば、支持プレートに形成された切欠部の形状は、開放側を底辺とする三角形(すなわち切欠部内縁の平面視形状がV字形)であるため、アンカーボルトの挿入間口を広くするとともに、アンカーボルトを切欠部の中央位置に向かって案内することが可能になる。したがって、切欠部に対するアンカーボルトの挿入作業を一層簡単なものとすることができる。また、当接部は、平面視形状(横断面形状)がV字形の壁状部材(高さのある部材)からなり、アンカーボルトの支持部分は、横断面形状が円形である棒材からなるため、アンカーボルトの径に拘わらず、アンカーボルトの外周面と当接部とを二箇所で上下方向に線接触させることができ、アンカーボルトの安定性をさらに高めることが可能になる。また、当接部をV字形に形成することにより、当接部の強度が高められ、変形等を抑制することが可能になる。なお、結束部材における囲繞部の上下方向の幅を、比較的大きく形成すれば(例えば当接部の高さと一致させれば)、アンカーボルトの安定性を大幅に高めることが可能になる。
【0016】
さらに、本発明のアンカーボルト支持具において、
「前記当接部は、前記切欠部の先端部分に対してのみ形成され、
前記アンカーボルトが前記当接部に突合わされた際、前記アンカーボルトの少なくとも一部が、前記当接部の間の空間からはみ出している」
ように構成してもよい。
【0017】
これによれば、アンカーボルトが当接部に突合わされた状態では、アンカーボルトの一部分(当接部と反対側の部位)がV字形の当接部で囲まれた空間からはみ出していることから、アンカーボルトの外周面に、結束部材の囲繞部を直接接触させることが可能となる。したがって、当接部をV字形に形成した場合であっても、アンカーボルトの少なくとも一部に囲繞部を直接接触させることができ、アンカーボルトと当接部とが圧接するように力を加えることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明によれば、支持プレートに切欠部が形成されているため、例えばL字形またはJ字形のアンカーボルトにおいても、極めて容易に挿入することができる。また、結束部材の囲繞部は、アンカーボルトの上端側から挿入されるため、作業者から視認可能で且つ比較的広い空間での作業となり、作業性を大幅に高めることができる。また、アンカーボルトが、当接部と一緒に、結束部材によって挟持されるため、アンカーボルトを安定した状態で支持することができるとともに、保持力を高めることができ、ひいてはアンカーボルトの落下または過度の締付による破損を抑制することが可能になる。さらに、アンカーボルトの配置が比較的低い位置であってもアンカーボルトを保持することができるため、アンカーボルトの設置可能な高さを広範囲とすることができ、使い勝手を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のアンカーボルト支持具を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】アンカーボルト支持具を分解し斜め前方から見た分解斜視図である。
【図3】アンカーボルト支持具における使用方法を示す概念図である。
【図4】(a)は第一の従来技術を示す斜視図であり、(b)は第二の従来技術を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態であるアンカーボルト支持具1について説明する。図1に示すように、アンカーボルト支持具1は、型枠60を用いてコンクリート基礎を構築する際に、打設されたコンクリートが硬化するまでアンカーボルトBを支持するものであり、一対の型枠60に架け渡された支持プレート2と、支持プレート2に対してアンカーボルトBを保持する保持手段3と、支持プレート2の両端側を型枠60に固定するプレート固定手段4と、を備えて構成されている。なお、型枠60は、立設された本体壁部61と、本体壁部61の上端から水平方向外側に延出した天板部62と、天板部62の外縁から垂下した折返し部63とを備えて構成されており、本体壁部61同士が対向するように一対の型枠60を配置することにより、一対の型枠60の間にコンクリートを流し込むための空間が形成されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、支持プレート2は、金属製の板状部材からなり、架け渡し方向(長手方向)の中央部分に、切欠部6が形成されている。この切欠部6は、一方の側面側を開放するとともに、その開放側を底辺とする三角形の形状となっている。切欠部6の開放側の大きさはアンカーボルトBの直径よりも広くなっており、アンカーボルトBを側方から支持プレート2の内部に挿入することが可能となっている。
【0022】
保持手段3について詳細に説明する。図2に示すように、保持手段3は、切欠部6内に挿入されたアンカーボルトBに当接可能な当接部7と、アンカーボルトB及び当接部7を突合せた状態で結束する結束部材8と、から構成されている。当接部7は、切欠部6の内縁に沿って形成されるとともに、支持プレート2の上面から立設されており、アンカーボルトBを切欠部6の奥側まで挿入することで、当接部7に当接させることが可能となっている。また、当接部7は、平面視形状(横断面形状)がV字形である壁状部材からなり、支持プレート2の上面に溶接によって固設されている。また、当接部7は、切欠部6の先端部分に対してのみ配置されており、アンカーボルトBが当接した際、アンカーボルトBの略半分が、V字形の当接部7で囲まれた空間から、はみ出るように設けられている(図3(b)参照)。なお、当接部7の高さは特に限定されるものではないが、本例では25mmに設定されている。
【0023】
一方、結束部材8は、先端部分9aが円弧状でその他の部位が平板状である枠部材9と、枠部材9の内部に配置され、先端部分9aと対向するように配設された円弧状の押圧片10と、枠部材9の基部側を通して螺合され、軸方向先端部分が押圧片10に対し回転可能に連結された固定ボルト11とを備えて構成されている。つまり、固定ボルト11のつまみ部11aを持って、固定ボルト11を締付操作すると、押圧片10を回転させることなく枠部材9の先端部分9aに向かって移動させることが可能になっている。すなわち、円弧状である枠部材9の先端部分9aと押圧片10とにより、環状の囲繞部が構成されており、固定ボルト11を操作することにより、枠部材9の先端部分9aと押圧片10との間隔を小さくすることが可能になっている。なお、枠部材9及び押圧片10の高さは、支持プレート2の上面から突出する当接部7の高さと等しくなっており、締付操作を行う前の枠部材9の先端部分9aと押圧片10との間隔は、アンカーボルトBの直径に当接部7の厚みを加えた長さよりも大きくなっている。なお、本例の結束部材8は、水道の給水管にホースを接続する際に用いられる結束具(所謂「ホースバンド」)と同一の構成であるため、市販のホースバンドを用いることも可能である。ここで、固定ボルト11が本発明のネジ部に相当する。
【0024】
続いて、プレート固定手段4について詳細に説明する。図1及び図2に示すように、プレート固定手段4は、一対の型枠60に架け渡された支持プレート2を支持するものであり、金属製の板材を折曲げて形成された取付部材15と、蝶ネジからなる取付ボルト16及び支持ボルト17とを備えて構成されている。取付部材15は、型枠60の天板部62上に載置される平板状のベース部18と、ベース部18の内側の端部から垂下し本体壁部61の上部内面に掛止される内側掛止部19と、ベース部18の外側の端部から垂下し折返し部63と対向する外側支持片20と、ベース部18の一方の側方端部から立設された立設片21と、立設片21の上端から水平方向に延出しベース部18の上方に位置する上側支持片22とを備えて構成されている。外側支持片20の中央位置には、外側支持片20を貫通して形成された第一ネジ孔23が設けられており、取付ボルト16を、型枠60の本体壁部61に対して直交する方向に螺合させることが可能になっている。また、上側支持片22における中央よりも先端寄りの部位には、上側支持片22を貫通して形成された第二ネジ孔24が設けられており、支持ボルト17を、本体壁部61と平行な方向に螺合させることが可能になっている。
【0025】
また、ベース部18は、内側端部の中央部分から真直ぐ水平方向に延出した延出部25を備えており、延出部25における両方の側方端部には、内側掛止部19として、一対の折曲片26が下方に折曲げ形成されている。つまり、ベース部18の内側先端部分では、延出部25を残して幅方向に切断され、その後、延出部25の両側を下方に折曲げることにより、一対の折曲片26が形成されており、それぞれの折曲片26における内側の端面を本体壁部61に当接させることが可能になっている。
【0026】
次に、図1乃至図3を基に、アンカーボルト支持具1の使用方法について説明する。まず、一対の型枠60に対して取付部材15をそれぞれ取付ける。具体的には、内側掛止部19が型枠60の内側を向くように、板状のベース部18を型枠60の天板部62上に載置する。すると、ベース部18の内側の端部から垂下した内側掛止部19が型枠60の本体壁部61に掛止され、ベース部3の外側の端部から垂下した外側支持片20が型枠60の折返し部63に対向した状態となる。その後、外側支持片20の第一ネジ孔23に螺合された取付ボルト16を締付けると、取付ボルト16の先端が折返し部63に圧接し、取付部材15が、型枠60に対して固定される。
【0027】
その後、それぞれの型枠60に固定された左右一対の取付部材15に対し、支持プレート2の端部側を支持する。具体的には、取付部材15におけるベース部18と上側支持片22との間に支持プレート2を挿入する。なお、ベース部18及び上側支持片22は立設片21を介して接続されているが、立設片21は上側支持片22の一端側にのみ接続され、立設片21の相対側が開放されているため、支持プレート2の端部側を、開放側から差込むことが可能である。
【0028】
支持プレート2の両端部側が、それぞれ一対の取付部材15に差込まれた後、上側支持片22の第二ネジ孔24に螺合された支持ボルト17を締付ける。すると、支持ボルト17の先端が支持プレート2の上面に圧接し、支持プレート2は、取付部材15に対して固定される。つまり、一対の型枠60に対して支持プレート2の両端側が支持された状態となる。
【0029】
続いて、支持プレート2に対してアンカーボルトBを装着する。具体的には、図3(a),(b)に示すように、アンカーボルトBが、支持プレート2と交差するように、支持プレート2における側方の開口部分から切欠部6の内部にアンカーボルトBを水平方向に挿入する。なお、切欠部6は、開放側を底辺とする三角形の形状を呈しているため、アンカーボルトBの挿入間口を広くするとともに、切欠部6の奥側に向かって案内することができる。そして、アンカーボルトBを切欠部6の奥側まで挿入すると、アンカーボルトBの外周面が当接部7に突き当たり、アンカーボルトBは位置決めされた状態となる。特に、当接部7は平面視形状がV字形であり、アンカーボルトBの支持部分は、横断面形状が円形であるため、アンカーボルトBの径に拘わらず、アンカーボルトBの外周面は当接部7に対し二箇所で線接触することとなり、アンカーボルトBが、支持プレート2の長手方向への移動すること、及び幅方向へ移動することが、ともに規制される。
【0030】
次に、位置決められたアンカーボルトBを、結束部材8によって保持する。つまり、図3(c)に示すように、結束部材8における枠部材9の先端部分9a(円弧状の部分)と押圧片10との間に、アンカーボルトB及び当接部7が挿入されるように、アンカーボルトBの上方から、結束部材8を嵌め込む。これによれば、押圧片10を当接部7の背面側に当接させ、枠部材9の先端部分9aをアンカーボルトBの外周面に当接させることが可能になる。その後、結束部材8に設けられた固定ボルト11を締付操作する。すると、枠部材9の先端部分9aと押圧片10との間隔が短くなり、アンカーボルトB及び当接部7が挟持された状態、すなわち、アンカーボルトBが、支持プレート2に対して固定された状態となる。
【0031】
このように、本例のアンカーボルト支持具1によれば、支持プレート2に切欠部6が形成されているため、アンカーボルトBの種類に拘わらず、アンカーボルトBを極めて容易に挿入することができる。また、上方から視認可能で且つ比較的広い空間での作業となり、作業性を大幅に高めることができる。
【0032】
また、本例のアンカーボルト支持具1によれば、アンカーボルトB及び当接部7が、枠部材9の先端部分9aと押圧片10とによって挟持されるため、アンカーボルトBを安定した状態で支持することができるとともに、保持力を高め、アンカーボルトBの落下または過度の締付による破損を抑制することができる。また、アンカーボルトBの配置が比較的低い位置であっても保持できるようになり、使い勝手をさらに高めることができる。
【0033】
また、本例のアンカーボルト支持具1によれば、当接部7がV字形の壁状部材からなるため、アンカーボルトBの径の大きさに拘わらず、アンカーボルトBに対して二箇所で線接触させることが可能となり、アンカーボルトBの安定性をさらに高めることができる。また、当接部7の強度が高くなり、当接部7の破損を抑制することができる。
【0034】
また、本例のアンカーボルト支持具1によれば、アンカーボルトBが、V字形の当接部7で囲まれた空間からはみ出ているため、アンカーボルトBの外周面を、枠部材9の先端部分9aに直接接触させることができ、ひいてはアンカーボルトB及び当接部7を確実に圧接させることができる。
【0035】
また、本例のアンカーボルト支持具1によれば、固定ボルト11のつまみ部11aが、支持プレート2の幅方向外側に突出している(図3(c)参照)ため、固定ボルト11の配置が支持プレート2に接近した高さであっても、支持プレート2に干渉することなく、つまみ部11aを操作することが可能となる。したがって、結束部材8の装着作業が一層容易となる。
【0036】
さらに、本例のアンカーボルト支持具1によれば、当接部7にアンカーボルトBを突合わせた状態で結束部材8を上方から挿入させるため、固定ボルト11における軸方向の変位量を短くすることができ、締付操作及び取外操作における作業時間を短縮することが可能になる。
【0037】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0038】
すなわち、上記実施形態では、型枠60に支持プレート2を支持する手段として、取付部材15を備えるものを示したが、図4に示すようなクランプ部材からなるプレート支持具56、またはマグネットによって保持する支持具(図示しない)など、従来から知られている各種の支持具を用いるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、一つの支持プレート2で一本のアンカーボルトBを支持するものを示したが、支持プレート2に複数の切欠部を形成し、複数のアンカーボルトBを支持できるように構成してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、当接部7をV字形に構成するものを示したが、当接部の壁面を円弧状としアンカーボルトBの外周面に対して面接触させるように構成してもよい。ただし、この場合には、直径が一定のアンカーボルトBに対応したものとなる。また、上記実施形態では、一つの当接部7を切欠部6の内縁に沿って形成するものを示したが、複数の当接部(例えばピン形状のもの)を所定の間隔で配設して構成してもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、結束部材8の固定ボルト11として、作業者の手によって締付操作可能な蝶ボルトを示したが、工具を用いて締付操作される通常のボルトを用いてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 アンカーボルト支持具
2 支持プレート
6 切欠部
7 当接部
8 結束部材
9 枠部材(囲繞部)
10 押圧片(囲繞部)
11 固定ボルト(ネジ部)
60 型枠
B アンカーボルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】実開昭50−29013号公報
【特許文献2】特開2002−242201号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の型枠に対し架け渡した状態で支持される支持プレートと、
該支持プレートに切欠形成され、アンカーボルトを側方から挿入させることが可能な切欠部と、
該切欠部の内縁に沿って形成されるとともに、前記支持プレートの上面から立設され、前記切欠部内に挿入された前記アンカーボルトに当接可能な当接部と、
前記アンカーボルトと前記当接部とを突合わせた状態で取り囲む環状の囲繞部、及び該囲繞部によって取り囲まれる空間を締付操作によって小さくするネジ部を有する結束部材と
を備えることを特徴とするアンカーボルト支持具。
【請求項2】
前記切欠部は、開放側を底辺とする三角形の形状を呈し、
前記当接部は、平面視形状がV字形である壁状部材からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のアンカーボルト支持具。
【請求項3】
前記当接部は、前記切欠部の先端部分に対してのみ形成され、
前記アンカーボルトが前記当接部に突合わされた際、前記アンカーボルトの少なくとも一部が、前記当接部の間の空間からはみ出している
ことを特徴とする請求項2に記載のアンカーボルト支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−31582(P2012−31582A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169894(P2010−169894)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(310011620)
【Fターム(参考)】