説明

アンカー頭部及び頭部背面構造

【課題】アンカー端部の健全性のチェックを頭部背面の分解を必要とせず、容易に目視チェックすることができる頭部背面の構造を提供する。
【解決手段】張力支持部材(11)に作用する張力を支持する支圧板(アンカープレート3)と、支圧板(3)に載置されたアンカーヘッド支持部材(2)と、張力支持部材(テンドン11)の上端近傍を固着するアンカーヘッド(7)を備え、アンカーヘッド支持部材(2)の内側には腐食防止剤(例えばグリース)が充填されており、目視窓(2w)がアンカーヘッド支持部材(2)に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラウンドアンカーに関し、より詳細には、先端が地中に固定されている張力支持部材(テンドン)に地上側から緊張力を付与し、当該テンドンの上端部を保持するアンカー頭部及び頭部背面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウンドアンカーの設置期間が長期化した場合には、アンカー頭部及び頭部背面の劣化が問題になる。そして、アンカー頭部及び頭部背面が劣化すると、張力が作用しているテンドンが地上側で十分に保持されず、グラウンドアンカーの支持力を維持することが困難になってしまう恐れがある。
例えば、鋼撚り線から成るテンドンは、その自由長部ではシースにより防食性が確保されているが、支圧部材であるアンカープレートよりも上方(地中から離隔する方向)の領域にはシースが存在せず、テンドンが露出している。そのため、特にアンカーヘッド直下の領域のテンドンは、腐食や劣化が進行し易い。
そのため、アンカー頭部及び頭部背面の状態、特に、アンカーヘッド直下のテンドンの状態を現場作業員が視認することが出来れば、アンカー頭部及び頭部背面が劣化しているか否かの判断を容易に行うことが出来る。
【0003】
しかし、従来のアンカー頭部の背面構造では、特にアンカーヘッド直下のテンドンの状態は、テンドンに作用する張力を開放して、アンカーヘッドとテンドンの固定状態を解除しない限り、確認することは出来なかった。
そのため、劣化していない健全なアンカー頭部及び頭部背面構造であっても、劣化しているか否かを判断する場合には、一度分解してテンドンに作用する張力を開放しなければならず、そして判定後には、ジャッキ等によって再びテンドンに張力を作用する必要がある。この様に、劣化していない健全なアンカー頭部及び頭部背面構造を分解して、テンドンに作用する張力を開放し、その後、再びテンドンに張力を作用させることは、多大な労力及びコストを費やすことになる。
係る労力及びコストを削減するため、アンカー頭部及び頭部背面の状態、特に、アンカーヘッド直下のテンドンの状態を、視認(或いは目視)することが出来る技術が求められているが、未だに提案されていない。
【0004】
その他の従来技術として、アンカー頭部及び頭部背面の部品を交換する際に、シース材の状態の如何にかかわらず確実に水密性を発揮するアンカー頭部及び頭部背面機構が提案されている(特許文献1参照)。
係る従来技術(特許文献1)によれば、アンカー頭部及び頭部背面の部品を交換するに際して、雨水や湧水がアンカー頭部及び頭部背面に侵入することを防止して、グラウンドアンカーを確実に補修して延命することが出来る。
しかし(特許文献1の技術は)、アンカー頭部及び頭部背面の状態、特に、アンカーヘッド直下のテンドンの状態を、視認することを企図してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−208623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、アンカー頭部及び頭部背面構造を分解することを必要とせずに、アンカー頭部及び頭部背面の状態、特に、アンカーヘッド直下のテンドンの状態を容易に視認(目視)することができるアンカー頭部及び頭部背面構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンカー頭部及び頭部背面構造は、張力支持部材(テンドン11)に作用する張力を支持する支圧板(アンカープレート3)と、支圧板(3)に載置されたアンカーヘッド支持部材(2)と、張力支持部材(テンドン11)の上端近傍を固着するアンカーヘッド(7)を備え、アンカーヘッド支持部材(2)の内側には腐食防止剤(例えばグリース)が充填されており、目視窓(2w)がアンカーヘッド支持部材(2)に設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明において、アンカーヘッド支持部材(2)の内部にはテンドン(11)が挿通され、アンカーヘッド支持部材(2)上方にはアンカーヘッド(7)が設置可能な凹部(段部2k)が形成されており、アンカーヘッド支持部材(2)の内部に挿入された透明な材料製のパイプを有しているのが好ましい(図1〜図5)。
【0009】
ここで、前記アンカーヘッド支持部材(2)の下端にフランジ部(2f)が設けられ、そのフランジ部(2f)は支圧板(アンカープレート3)に取り付けられており、アンカーヘッド支持部材(2)の内部下方には止水具スペーサ(5)が設けられているのが好ましい(図1)。
【0010】
そして、アンカーヘッド(7)及びテンドンの自由端(11e)を覆うキャップ部材(1)が設けられており、アンカーヘッド支持部材(2)上端に形成された雄ねじ部(2st)とキャップ部材(1)下端に形成された雌ねじ部(1st)とが螺合しているのが好ましい(図1)。
あるいは、アンカーヘッド支持部材(2A)の上端にフランジ部(2Af)が設けられ、キャップ部材(1)の下端にフランジ部(1Af)が設けられ、アンカーヘッド支持部材(2A)上端のフランジ部(2Af)とキャップ部材(1)下端のフランジ部(1Af)が締結部材(ボルトBL2)で締結されているのが好ましい(図5)。
【発明の効果】
【0011】
上述した構成を具備する本発明によれば、アンカーヘッド(7)直下の領域のテンドンを視認(目視)する機構が設けられているので、アンカー頭部及び頭部背面構造を分解して、テンドン(11)に作用する張力を開放しなくても、(シースがなく、テンドンを構成する金属材料が露出しているため)腐食や劣化が進行し易い領域であるアンカーヘッド(7)直下の領域のテンドン(11)の状態を、係る視認(目視)する機構によって、腐食や劣化が進行しているか否かを容易且つ正確に判断することが可能となる。
【0012】
その結果、視認(目視)した結果、劣化や腐食が進行していると判断されたアンカー頭部及び頭部背面構造についてのみ分解して、テンドン(11)の張力を解放して、必要な部品交換、補修を行なうことが出来る。
そして、視認(目視)した結果、劣化や腐食が進行していないと判断される場合には、当該アンカー頭部及び頭部背面構造については分解せず、テンドンの張力を解放する必要がなくなるので、その様な作業(アンカー頭部及び頭部背面構造の分解作業、テンドンの張力解放作業)に費やされる労力、コストを節減することが出来る。
【0013】
また、前記視認(目視)する機構がテンドン(11)に作用する張力を支持する場合には、当該機構を剛性の高い材料(例えば、鉄等の金属)で構成し、視認(目視)用の窓(2w)を形成して、その内側に透明材料製の円筒状部材(4)を挿入すれば、アンカーヘッド(7)直下の領域のテンドンの状態を、当該透明材料製の円筒状部材(4)及び視認(目視)用の窓(2w)を透かして、視認(目視)することが出来る。
そして、テンドン(11)に作用する張力は、剛性の高い材料で形成された部分が支持するので、アンカー頭部及び頭部背面構造として、必要な強度を維持することが出来る。
一方、前記視認(目視)する機構がテンドン(11)に作用する張力を支持しない場合には、当該機構を透明材料で構成して、アンカーヘッド(7)直下の領域のテンドンの状態を、当該機構を透かして、視認(目視)することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態の平面図である。
【図3】第1実施形態におけるアンカーヘッド支持部材を示す断面図である。
【図4】アンカーヘッド支持部材の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示している。
図1において、フレーム10上にアンカープレート3が設置されており、アンカープレート3の中央には貫通孔3Hが穿設されている。
アンカープレート3の上面には、全体が円筒形状をしたアンカーヘッド支持部材2が設けられている。アンカーヘッド支持部材2の下端にはフランジ部2f(図3参照)が形成されており、フランジ2fは締結用ボルトBLにより前記アンカープレート3に取り付けられている。
【0016】
アンカーヘッド支持部材2の内部における下方には、止水具スペーサ5が介装されている。
例えば鋼撚り線から構成されている複数のテンドン11が、アンカープレート3の貫通孔3Hを貫通し、止水具スペーサ5を貫通しており、複数のテンドン11の上端近傍はアンカーヘッド7に固着している。
明確には図示されていないが、テンドン11の上部近傍は、従来・公知の固定器具を用いて、アンカーヘッド7に固着されている。そして、アンカーヘッド7は、アンカーヘッド支持部材2の上部に、パッキン材6を介して支持されている。
図示はされていないが、テンドン11の下方端部は地中で固定されており、図示しないジャッキでテンドン11の上方端部に引張力を付加することによって、テンドン11には緊張力(張力)が作用している。
【0017】
明確には図示されていないが、アンカーヘッド支持部材2は、テンドン11に作用する張力を支持可能な剛性を有する材料、例えば各種金属(鉄等)により構成されている。
図1、図3〜図4で示すように、アンカーヘッド支持部材2の側面には、目視窓2wが設けられている。そして、全体が円筒形状をしたアンカーヘッド支持部材2の半径方向内方には、円筒状の樹脂製パイプ4が挿入されている。この樹脂製パイプ4は、透明な樹脂(例えば、アクリル樹脂)により構成されている。
目視窓2wの垂直方向位置は、図1で示すように、アンカーヘッド7の直下の領域のテンドン11が目視出来る位置、或いは、テンドン11において最も劣化や腐食が進行し易い領域が視認可能な位置である。
目視窓2wの円周方向位置については、現場作業者が視認(目視)出来るような位置であれば、特に限定条件は存在しない。
【0018】
アンカーヘッド支持部材2の上方には、アンカーヘッド7およびキャップ部材1が取り付けられている。キャップ部材1は、テンドン11の自由端11eを覆う様な形状に構成されている。
図1において、キャップ部材1の内側と、アンカーヘッド支持部材2の内側には、腐食防止剤として、例えばグリースが充填されている。
なお、図1における符号9aはグリースニップルを示し、符号9bはエアー抜きビスを示している。
【0019】
アンカーヘッド支持部材2の詳細が図3で示されている。
図3において、アンカーヘッド支持部材2の円筒状本体2aの下端部には、フランジ部2fが形成されている。そして、フランジ部2fは、締結用ボルトBLによって、アンカープレート3に取り付けられている。
アンカーヘッド支持部材2の本体2aの側面には、目視窓2wが形成されている。そして、本体2aの半径方向内方の領域には、透明樹脂製パイプ4が遊嵌されている。
アンカーヘッド支持部材2の本体2a上端の外周側には、雄ねじ部2stが形成されている。雄ねじ部2stには、キャップ部材1の雌ねじ部1stが螺合している(図1参照)。
【0020】
図3において、アンカーヘッド支持部材2の本体2a上端の内周側には、段部2kが形成されている。図1で示すように、アンカーヘッド支持部材2の上方における段部2kには、アンカーヘッド7の下面外周縁部が係合している。
なお、図3において、符号2pは、止水具スペーサ5を挿入するための挿入部を示している。
【0021】
図1〜図3を参照して説明したアンカー頭部及び頭部背面構造では、アンカーヘッド支持部材2の半径方向内方の空間に位置しているテンドンであって、最も劣化や腐食が進行し易いアンカーヘッド7直下の領域のテンドン11は、透明な樹脂製パイプ4及び目視窓2wを介して、外側から視認(目視)することが出来る。
すなわち、現場作業者は、目視窓2wを視認(目視)することにより、最も劣化や腐食が進行し易いアンカーヘッド7直下の領域のテンドン11を観察して、劣化や腐食が進行しているか否かを判断することが出来る。
【0022】
そして、目視窓2wから視認(目視)した結果、劣化や腐食が進行していると判断されたアンカー頭部及び頭部背面構造についてのみ分解して、テンドンの張力を解放して、必要な部品交換、補修を行なえば良い。
目視窓2wから視認(目視)した結果、劣化や腐食が進行していないと判断される場合には、当該アンカー頭部及び頭部背面構造については分解することなく、テンドンの張力を解放する必要がない。
第1実施形態において、アンカーヘッド支持部材2は、アンカーヘッド7を介してテンドン11の張力を受ける。
【0023】
図4では、変形例に係るアンカーヘッド支持部材2を示している。
図3で示すアンカーヘッド支持部材2は、その上端部内周に設けた段部2kがアンカーヘッド7と係合している。換言すれば、図3で示すアンカーヘッド支持部材2では、段部2kのみが、テンドン11に作用する張力を支持することになる。しかし、段部2kにおいて、テンドン11の張力を支持する面積は小さいので、段部2kに作用する面圧或いは圧縮応力が大きくなってしまうことが予想される。
これに対して、図4で示すアンカーヘッド支持部材2では、段部2kから半径方向内方に延在する当接面2bが形成されている。係る当接面2bも、アンカーヘッド7と当接して、テンドン11に作用する張力を支持することになる。
【0024】
図4の変形例では、段部2kから半径方向内方に延在する当接面2bを形成することにより、テンドン11の張力を支持する部分を半径方向内方に拡大させて、面圧或いは圧縮応力を低下させることが出来る。
図4の変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図4で説明したのと同様である。
【0025】
次に図5を参照して、第2実施形態を説明する。
図5の第2実施形態は、図1〜図4の第1実施形態とは、アンカーヘッド支持部材とキャップ部材との取付態様が異なっている。
すなわち、図1〜図4の第1実施形態では、アンカーヘッド支持部材2の上端部外周に構成された雄ねじ部2stに、キャップ部材1の下端部の雌ねじ部1stが螺合することにより、アンカーヘッド支持部材2とキャップ部材1が取り付けられている。
【0026】
これに対して、図5では、アンカーヘッド支持部材2Aの上端部にはフランジ2Afが形成され、キャップ部材1Aの下端部にはフランジ1Afが形成されており、フランジ2Afとフランジ1AfはボルトBL2により締結されている。
図5の第2実施形態では、フランジ2Afとフランジ1Afをボルト締結することにより、アンカーヘッド支持部材2Aとキャップ部材1Aの結合部における面圧が低下する。そして、アンカーヘッド支持部材2Aとキャップ部材1Aの結合も強固になる。
図5の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図4の第1実施形態と同様である。従って、図4、図4で示す構成を、図5の第2実施形態に適用することも可能である。
【0027】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【符号の説明】
【0028】
1、1A・・・キャップ部材
2、2A・・・アンカーヘッド支持部材
2w・・・目視窓
3・・・アンカープレート
4・・・樹脂製パイプ
5・・・止水具スペーサ
7・・・アンカーヘッド
10・・・フレーム
11・・・テンドン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
張力支持部材に作用する張力を支持する支圧板と、支圧板に載置されたアンカーヘッド支持部材と、張力支持部材の上端近傍を固着するアンカーヘッドを備え、アンカーヘッド支持部材の内側には腐食防止剤が充填されており、目視窓がアンカーヘッド支持部材に設けられていることを特徴とするアンカー頭部及び頭部背面構造。
【請求項2】
アンカーヘッド支持部材の内部にはテンドンが挿通され、アンカーヘッド支持部材上方にはアンカーヘッドが設置可能な凹部が形成されており、アンカーヘッド支持部材の内部に挿入された透明な材料製のパイプを有している請求項1のアンカー頭部及び頭部背面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132295(P2012−132295A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137051(P2011−137051)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【分割の表示】特願2010−281218(P2010−281218)の分割
【原出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【特許番号】特許第4793955号(P4793955)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(391009291)弘和産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】