説明

アンカー

【課題】本発明は、一体に成形され、取付作業の効率を向上させ、パネルの板厚の適応範囲を広くし、構造が簡単で製造が容易なアンカーを提供する。
【解決手段】本アンカー1を板厚の薄いパネルP1に装着する場合には、アンカー1をパネルP1の取付孔6に挿入することにより、一対の第1の係止片3,3が取付孔6の外周方向に付勢された状態で弾性変形し、取付孔6を乗り越えると、復元して一対の第1の係止片3,3に形成された突出部3a,3aがパネルP1の一方側に面する取付孔6の周縁に係止される。一対の第2の係止片5,5は、挿入方向に付勢された状態で、一対の第2の係止片5,5に形成された突出部5a,5aがパネルP1の他方側の面に当接して係止される。本アンカー1を板厚の厚いパネルP2に装着する場合には、一対の第2の係止片5,5がパネルP2の板厚に合わせて弾性変形し、パネルP2の他方側の面に当接(接触)して係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に設けられたパネルの取付孔に装着されるアンカーに関し、特に、板厚の異なるパネルに適応することができるアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイヤハーネス用クランプ、プロテクタ、クリップ、コネクタホルダ等には、車両等に設けられたパネルの取付孔に装着するためのアンカーが設けられている。
【0003】
近年、車両の車種や仕様の多様化、車両のボディに対する軽量化や強度の要求等に伴い、板厚の異なるパネルが多数用いられている。そのため、従来から種々の板厚のパネルに適応することが可能なアンカーが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ワイヤハーネスに取付けられる結束部材と、結束部材と別体であって車体パネルの取付穴に差し込み係止されるクリップ部材とを備え、結束部材に差し込み穴を設けると共に、クリップ部材に結束部材の差し込み穴に差し込み係止される差し込み係止部を設け、かつクリップ部材の差し込み係止部の差し込み深さが相異する係止部を、結束部材の差し込み穴に対して放射状に多段に設けると共に、クランプ部材を回り止めする構造としたワイヤハーネスのクランプが提案されている(以下、この技術を従来例1という)。
【0005】
また、特許文献2には、自動車のパネルに被取付部材を装着するための合成樹脂製のクリップであって、被取付け部材を取り付けることができる取付け部と、パネルに設けられた取付け孔に挿通することにより、このパネルに取り付けられる係合部とを備え、この係合部は、取付け孔に挿通可能な幹部と、この幹部の長さ方向に関して複数段にわたって設けられた係止爪とを備え、各係止爪は、その自由状態で前記幹部の外周面から外方向へ突出し、その状態で取付け孔の縁に係止可能な係止部を有するクリップが提案されている(以下、この技術を従来例2という)。
【特許文献1】特開平9−140032号公報
【特許文献2】特開2005−188623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例1では、結束部材とクリップ部材とが別体に構成されているので、組立工数がかかり、管理が煩雑になるという課題があった。
【0007】
また、事前に結束部材の差し込み深さを調整する必要があるので、取付作業の効率が低下するという課題があった。
【0008】
従来例2では、複数段にわたって設けられた係止爪とスタビライザとによってパネルを係止しているが、スタビライザが外方向に大きく広がった皿状に形成されているので、スタビライザが外側に開く動きに限度があり、適応可能なパネルの板厚の範囲が狭くなるという課題があった。
【0009】
また、係止爪が正面及び側面にそれぞれ設けられているため、構造が複雑であり、金型で製造する際に、引き抜き方向以外の方向に金型をスライドさせる必要が生じる等、製造工程が複雑になりやすく、製造コストがかかるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、一体に成形され、取付作業の効率を向上させ、パネルの板厚の適応範囲を広くし、構造が簡単で製造が容易なアンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のアンカーは、パネルの取付孔に挿入され、対向する第1の面及び第2の面を有する本体部と、当該本体部の第1の面及び第2の面上からそれぞれ突設され、前記挿入の際、前記パネルの取付孔の外周方向に付勢された状態で弾性変形し、前記パネルの一方側に面する取付孔の周縁に係止される一対の第1の係止片と、当該一対の第1の係止片にそれぞれ連設された一対の中間部と、当該一対の中間部にそれぞれ連設され、前記挿入方向に付勢された状態で弾性変形し、前記パネルの他方側の面に係止される一対の第2の係止片とを一体に成形したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンカーによれば、次のような優れた効果を奏する。
【0013】
(1)一体に成形されているので、組立の必要がなく、アンカーの管理が簡単になる。
【0014】
(2)パネルの板厚に応じて、一対の第2の係止片が一対の中間部との連設部分を基点として弾性変形するので、事前にアンカーをパネルの板厚に合わせて調整する必要がなく、取付作業の効率が向上する。
【0015】
(3)一対の第2の係止片が略水平状態になるまでの板厚のパネルに装着できるので、パネルの板厚の適応範囲を広くすることができる
(4)構造が簡単であるので、容易に製造でき、製造コストを低減できる。
【0016】
(5)金型で製造する際に、引き抜き方向以外の方向に金型をスライドさせる必要が生じることがないので、ワイヤハーネス用クランプ、プロテクタ、クリップ、コネクタホルダ等使用可能な用途が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態例に係るアンカーを示す斜視図、図2は本発明の実施形態例に係るアンカーを示す正面図、図3は本発明の実施形態例に係るアンカーを示す側面図、図4は本発明の実施形態例に係るアンカーを示す平面図、図5は本発明の実施形態例に係るアンカーを示す底面図である。
【0018】
本発明の実施形態例に係るアンカー1は、合成樹脂等で一体に成形されて作られており、図1〜図5に示すように、対向する第1の面2a及び第2の面2bを有する板状の本体部2と、本体部2の第1の面2a及び第2の面2bの面上の一端からそれぞれ突設された一対の第1の係止片3,3と、一対の第1の係止片3,3の先端にそれぞれ連設された一対の中間部4,4と、一対の中間部4,4の先端にそれぞれ連設された一対の第2の係止片5,5とを有する。
【0019】
一対の第1の係止片3,3は、本体部2の一端から突設して他側方向へ下り勾配に傾斜して連設されている。
【0020】
一対の中間部4,4は、一対の第1の係止片3,3の先端に本体部2と略平行に連設されている。
【0021】
一対の第2の係止片5,5は、一対の中間部4,4の先端から本体部2の一端方向へ上り勾配に傾斜して連設されている。
【0022】
図6(A)及び(B)は本発明の実施形態例に係るアンカーをパネルに装着した状態を示す断面図である。
【0023】
本発明の実施形態例に係るアンカー1を板厚の薄いパネルP1(例えば厚さ0.65mm程度のパネルP)に装着する場合には、図6(A)に示すように、本発明の実施形態例に係るアンカー1をパネルP1の取付孔6に挿入することにより、一対の第1の係止片3,3が取付孔6の外周方向に付勢された状態で弾性変形し、取付孔6を乗り越えると、復元して一対の第1の係止片3,3に形成された突出部3a,3aがパネルP1の一方側に面する取付孔6の周縁に係止される。一対の第2の係止片5,5は、挿入方向に付勢された状態で、一対の第2の係止片5,5に形成された突出部5a,5aがパネルP1の他方側の面に当接して係止される。
【0024】
なお、突出部5a,5aは、例えば球形状に形成されており、パネルPの板厚が薄い場合に、先端の変形を防止する。
【0025】
本発明の実施形態例に係るアンカー1を板厚の厚いパネルP2(例えば厚さ3.2mm程度のパネルP)に装着する場合には、図6(B)に示すように、一対の第2の係止片5,5がパネルP2の板厚に合わせて弾性変形し、パネルP2の他方側の面に当接(接触)して係止される。
【0026】
本発明の実施形態例に係るアンカー1によれば、一体に成形されているので、組立の必要がなく、アンカー1の管理が簡単になる。
【0027】
また、パネルPの板厚に応じて、一対の第2の係止片5,5が一対の中間部4,4との連設部分を基点として弾性変形するので、事前にアンカー1をパネルPの板厚に合わせて調整する必要がなく、取付作業の効率が向上する。
【0028】
また、一対の第2の係止片5,5が略水平状態になるまでの板厚のパネルP2に装着できるので、パネルPの板厚の適応範囲を広くすることができる
また、構造が簡単であるので、容易に製造でき、製造コストを低減できる。
【0029】
さらに、金型で製造する際に、引き抜き方向以外の方向に金型をスライドさせる必要が生じることがないので、ワイヤハーネス用クランプ、プロテクタ、クリップ、コネクタホルダ等使用可能な用途が広がる。
【0030】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のアンカー1は、合成樹脂等で一体に成形されて作られ、ワイヤハーネス用クランプ、プロテクタ、クリップ、コネクタホルダ等のように、車両等に設けられたパネルPの取付孔6に装着するための用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態例に係るアンカーを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態例に係るアンカーを示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態例に係るアンカーを示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態例に係るアンカーを示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態例に係るアンカーを示す底面図である。
【図6】(A)は本発明の実施形態例に係るアンカーを板厚の薄いパネルに装着した状態を示す断面図、(B)は板厚の厚いパネルに装着した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1:アンカー
2:本体部
2a:第1の面
2b:第2の面
3:第1の係止片
4:中間部
5:第2の係止片
6:取付孔
P,P1,P2:パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔に挿入され、対向する第1の面及び第2の面を有する本体部と、
当該本体部の第1の面及び第2の面上からそれぞれ突設され、前記挿入の際、前記パネルの取付孔の外周方向に付勢された状態で弾性変形し、前記パネルの一方側に面する取付孔の周縁に係止される一対の第1の係止片と、
当該一対の第1の係止片にそれぞれ連設された一対の中間部と、
当該一対の中間部にそれぞれ連設され、前記挿入方向に付勢された状態で弾性変形し、前記パネルの他方側の面に係止される一対の第2の係止片と、
を一体に成形したことを特徴とするアンカー

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−190606(P2008−190606A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24914(P2007−24914)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】