説明

アンカー

【課題】優れた施工性で地盤からの引抜抵抗が高く、地盤から抜け難いアンカーを提供する。
【解決手段】アンカー本体10の先端部14に対して引き抜き防止金具30が取り付けられている。この引き抜き防止金具30は基部31と4枚羽根部材32とで囲まれる捕集空間CSをアンカー1本体10の先端の反対側に有し、アンカー本体10の先端部14に対して可動自在に設けられている。アンカー本体10を地盤5に打ち込むときに引き抜き防止金具30は地盤5から受ける抵抗によってアンカー本体10の先端部14に対する姿勢を変化させてアンカー本体10に作用する抵抗を低減させる。また、地盤5へのアンカー本体10の打込によって引き抜き防止金具30はアンカー本体10とともに地盤5内に入り込みながら捕集空間CSに流入する地盤5中の土石を捕集し、これが地盤5からのアンカー本体10の引抜抵抗となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、網、ワイヤーロープ等を固定するために使用されるアンカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路に面した法面からの落石を防止するために、このような法面に対して落石防止網を張り巡らせている。また、法面を構成する地盤に対してアンカーの先端部を埋め込む一方、地盤表面上に残っているアンカー後端部に落石防止網やワイヤーロープ等を係留して落石防止網を地盤にしっかりと固定している。このように落石防止網などを固定するためのアンカーとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のアンカーは、帯板をスパイラル状に形成したアンカー本体の上部に係留を兼ねる回転止部材が取付けられている。そして、回転止部材が取り外された状態でアンカー本体が回転駆動されながら地中に埋込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3111252号公報(例えば、図6、図9等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のアンカーを地盤に埋め込むためにアンカー本体を回転駆動させる必要があり、施工性の面で改善の余地があった。また、上記のように施工されたアンカーに対しては、落石防止網などから引張力が与えられ、これがアンカーに対する引抜力として作用する。したがって、落石防止網などを長期間にわたって安定的に固定するためには、地盤からのアンカーの引抜抵抗を従来のアンカーよりも高めることが重要である。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、優れた施工性で地盤からの引抜抵抗が高く、地盤から抜け難いアンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるアンカーは、上記目的を達成するため、第1方向に延設される先端部が地盤に対して第1方向に打ち込まれるアンカー本体と、第1方向において互いに離間してアンカー本体の先端部に設けられる第1係止部および第2係止部と、アンカー本体の先端部が挿通される基部と、基部からアンカー本体の先端と反対側に向かって延設される複数の羽根部材とを有し、基部に対してアンカー本体の先端と反対側で基部および複数の羽根部材で囲まれる捕集空間が形成され、基部と複数の羽根部材が一体的に第1係止部および第2係止部の間でアンカー本体の先端部に対して可動自在となっている抜止部材とを備え、抜止部材は、アンカー本体が地盤に打ち込まれるときに地盤から受ける抵抗に応じてアンカー本体の先端部に対する姿勢を変化しながらアンカー本体とともに地盤内に入り込み、捕集空間内に流入する地盤中の土石を捕集することを特徴としている。
【0007】
このように構成されたアンカーでは、アンカー本体を地盤に打ち込むことで地盤に対してアンカー本体の先端部が埋め込まれる。この先端部に対しては、上記のように構成された抜止部材が設けられている。すなわち、抜止部材は基部と複数の羽根部材とで囲まれる捕集空間をアンカー本体の先端の反対側に有しており、地盤へのアンカー本体の打込によってアンカー本体とともに地盤内に入り込む。また、抜止部材の捕集空間に地盤中の土石が流入して抜止部材(基部+複数の羽根部材)で捕集され、これが地盤からのアンカー本体の引抜抵抗となる。このように従来のようにアンカー本体を回転させることなく、単なるアンカー本体の打込作業のみで地盤から抜け難いアンカーが得られる。
【0008】
一方、このようにアンカー本体の先端部に抜止部材を設けた場合、地盤へのアンカー本体の打込時に抜止部材が打込抵抗となり、アンカー施工性を低下させる要因に作用するおそれがある。しかしながら、本発明では、アンカー本体の先端部に第1係止部および第2係止部を設け、その間で上記抜止部材を先端部に対して可動自在としているため、アンカー本体を地盤に打ち込むときに抜止部材は地盤から受ける抵抗に応じてアンカー本体の先端部に対する姿勢を変化させる、つまり当該姿勢変化によりアンカー本体に作用する抵抗を減じている。したがって、地盤から抜け難いアンカーを優れた施工性で地盤に埋め込むことができる。
【0009】
ここで、複数の羽根部材の一方端部が基部と繋がるとともに複数の羽根部材が基部からアンカー本体の先端と反対側に向かって裾広がり状に傾斜するように構成してもよい。このように構成することで、アンカー本体を第1方向に確実にかつ安定的に案内してアンカーの施工性をさらに高めることができる。また、このような構成を採用することで打込抵抗を低減することができる。
【0010】
また、隣り合う羽根部材の一方端部を互いに離間させてもよく、これによりアンカー本体の先端側で複数の羽根部材の間に隙間が形成され、アンカー本体の打ち込みとともに隙間を介して地盤中の土が捕集空間に効果的に流れ込む。このため、地盤へのアンカー本体の打込抵抗が低減するとともに、地盤からのアンカー本体の引抜抵抗を高めることができる。
【0011】
また、隣り合う羽根部材の他方端部についても一方端部側と同様に互いに離間させてもよく、これにより複数の羽根部材の間に形成される隙間を介して地盤中の土を捕集空間に効率的に流入させて打込抵抗の低減と引抜抵抗の向上とが同時に達成される。
【0012】
また、複数の羽根部材のうち少なくとも1枚が、アンカー本体に引抜力が与えられたときに地盤から受ける抵抗によって基部に対する傾斜角度が拡大する向きに変形可能となるように構成してもよい。この場合、アンカー本体に対する引抜力の発生によって羽根部材が変形して地盤に対して抜け難くなる抵抗が発生してアンカーを抜け難い状態とする。
【0013】
さらに、抜止部材として、抜止部材の基部と各羽根部材とを繋げた状態で単一のバネ鋼板から抜き取られた後で基部に対して各羽根部材を折り曲げたものを用いてもよく、バネ特性を利用して羽根部材に可撓性および弾発力を与えることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、基部と複数の羽根部材で構成される抜止部材をアンカー本体の先端部に対して可動自在に設けているので、抜け難いアンカーを地盤に対して優れた施工性で埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるアンカーの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のアンカーで使用される引き抜き防止金具を示す図である。
【図3】引き抜き防止金具の動作態様を模式的に示す図である。
【図4】図1のアンカーを地盤に施工する手順を模式的に示す図である。
【図5】本発明にかかるアンカーの他の実施形態を示す図である。
【図6】本発明にかかるアンカーの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明にかかるアンカーの一実施形態を示す斜視図であり、同図(a)はアンカーの全体斜視図であり、同図(b)は同図(a)のR部分の拡大図である。また、図2は図1のアンカーで使用される引き抜き防止金具を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。さらに、図3は引き抜き防止金具の動作態様を模式的に示す図である。
【0017】
このアンカー1は、図1に示すように、アンカー本体10と、2つのEリング21、22と、引き抜き防止金具30とを有している。これらのうちアンカー本体10は、第1方向Xに延びる棒状の鋼材を加工してなるものであり、一方端部は先行して地盤中に埋め込まれる先端部を構成する一方、後端部は地盤表面上に残って落石防止網やワイヤーロープ等の被係留物4を係留する係留部を構成する。この実施形態では、アンカー本体10の後端部11は図1(a)に示すように側面視で逆レ字状に折り曲げられ、その谷部12で落石防止網などの被係留物4を係止して係留可能となっている。また、折り曲げ部の山部(頭部)13をハンマーなどで叩くことでアンカー本体10の先端部14を地盤に打ち込むことが可能となっている。
【0018】
アンカー本体10の先端部14は、先端に近づく程尖るように円錐形に形成された円錐部15と、その円錐部15よりも後端側(図1中の上方側)に形成された2つのリング溝16、17とを有する。
【0019】
これらのリング溝16、17は第1方向Xにおいて互いに離間して先端部14の外周側面で円環溝状に設けられている。なお、この実施形態では、第1方向Xにおいてリング溝16とリング溝17とはアンカー本体10の直径と同程度だけ離間されているが、この離間距離に関しては任意である。また、リング溝16、17には、Eリング21、22がそれぞれ装着され、次に説明する引き抜き防止金具30がEリング21、22の間でアンカー本体10の先端部14に遊挿されている。このようにEリング21、22が第1方向Xにおける引き抜き防止金具30の可動範囲を規定している。
【0020】
この引き抜き防止金具30は、地盤中に先端部14と一体的に地盤中に入り込んで地盤中に埋設されることによってアンカー本体10に引抜抵抗を与えるものであり、金属材料で構成されている。引き抜き防止金具30は、図2に示すように中心部に円形の貫通孔31aを有するドーナツ盤状の基部31と、その基部31の外周縁に繋がる4つの羽根部材32とを有する。なお、基部31と各羽根部材32とが繋がっている部分は折り曲げ箇所となっており、具体的には、次のようにして作製された後、アンカー本体10に取り付けられる。
【0021】
まず、基部31から各羽根部材32が平面に展開された略十字形状で、かつ基部31の中央にアンカー本体10の直径よりも大きく、かつEリング21、22の外径よりも小さな内径の貫通孔31aを有する平板を、単一の金属板、例えばバネ鋼板から型抜きした後、アンカー本体10の先端と反対側(図1の上側)に向かって裾広がり状に傾斜するように、基部31と羽根部材32との境界部分を同じ方向に折り曲げる。このように、本実施形態では、1回のプレス成形により引き抜き防止金具30が作製される。このように基部31と各羽根部材32とが単一の金属板で構成されているので、部品点数を少なくすることができる。そして、このようにして形成された引き抜き防止金具30では、基部31に対してアンカー本体10の先端の反対側(図1の上側)で、基部31および4枚の羽根部材32で囲まれる捕集空間CSが形成されており、後述するようにアンカー1を地盤に施工した際、捕集空間CSに流入する地盤中の土石を引き抜き防止金具30で捕集し、これが引抜抵抗として作用する。
【0022】
また、各羽根部材32の一方端部は上記境界部分を介して基部31と繋がっているが、図1や図2に示すように、隣り合う羽根部材32の一方端部は互いに離間している。このため、アンカー本体10の先端側で複数の羽根部材32の間に隙間33が形成され、地盤へのアンカー本体10の打ち込み時、隙間33を介して地盤中の土や細かい石や砂が捕集空間CSに流れ込み、地盤へのアンカー本体10の打込抵抗を低減させるとともに、地盤からのアンカー本体10の引抜抵抗を高めることができる。
【0023】
また、隣り合う羽根部材32の他方端部(自由端部)についても一方端部側(基部31側)と同様に互いに離間するように羽根部材32の形状が規定されている。このように隙間33が基部31側から羽根部材32の先端側まで繋がり大きく空いているため、それらの隙間33を介して地盤中の土砂や細かい石を捕集空間CSに効率的に流入させて打込抵抗の低減および引抜抵抗の増大を同時に達成させることが可能となっている。
【0024】
さらに、基部31および羽根部材32は単一の金属板から型抜きされ、基部31に対して羽根部材32が折り曲げられて整形されているため、地盤から受ける抵抗によって折り曲げ部(基部31と羽根部材32との境界部分)を支点として可撓可能となっている。特に、本実施形態ではバネ鋼から型抜きしているため、各羽根部材32の弾性変形範囲は広く、各羽根部材32が受ける抵抗が弾性限以下である場合、各羽根部材32は抵抗の減少に伴って初期状態に戻る。なお、弾性限を超える応力が地盤から各羽根部材32に与えられると、例えば図3の右欄に示すように羽根部材32は塑性変形して地盤に対する引抜抵抗を高めた状態で地盤中に埋設される。
【0025】
このように構成された引き抜き防止金具30は次のようにしてアンカー本体10に取り付けられる。この実施形態では、2つのEリングのうち先端側Eリング21がリング溝16に装着されていない状態で、引き抜き防止金具30の捕集空間CSをアンカー本体10の先端に対向させたまま引き抜き防止金具30の貫通孔31aに対してアンカー本体10の先端部14を挿入し、引き抜き防止金具30をアンカー本体10に対して串刺し状態に取り付ける。そして、引き抜き防止金具30をリング溝16、17の間に位置させたまま先端側のEリング21をリング溝16に装着する。これによって、図1(a)に示すアンカー1が作製される。
【0026】
こうして作製されたアンカー1では、2つのEリング21、22で挟まれた範囲で引き抜き防止金具30の貫通孔31aにアンカー本体10の先端部14が遊挿されているため、図3に示すように、
・上下方向(第1方向X)に昇降自在、
・アンカー本体10を回転中心として回転自在、
・アンカー本体10に対して傾斜自在
となっている。このように本実施形態では、Eリング21、22が本発明の「第1係止部」および「第2係止部」としてそれぞれ機能し、それらの間でアンカー本体10の先端部14に対して本発明の「抜止部材」に相当する引き抜き防止金具30が種々の態様で可動自在となっている。したがって、アンカー1を地盤に施工する際、引き抜き防止金具30は地盤から受ける抵抗に応じてアンカー本体10の先端部14に対する姿勢を変化させてアンカー1の施工時に要する力を低減させる。以下、図4を参照しつつ石が含まれる地盤へのアンカー1の施工について説明する。
【0027】
図4は図1のアンカーを地盤に施工する手順を模式的に示す図である。まず、図1に示すアンカー1を準備し、このアンカー1のアンカー本体10の先端を地盤5の表面に突き立てた状態で山部(頭部)13をハンマーなどで叩くことでアンカー本体10の先端部14を第1方向Xに打ち込んでいく(図4(a))。これにより地盤5内では、同図(a)、(b)に示すように、引き抜き防止金具30は後端側のEリング22で係止されながら地盤5内を第1方向Xに進行する。このとき、本実施形態では引き抜き防止金具30をバネ鋼で構成しているので、地盤5からの抵抗を受けて4枚の羽根部材32の他方端部(自由端部)はアンカー本体10に近接する方向に撓んで全体として尻すぼみ形状となってアンカー本体10に与える抵抗、つまり打込抵抗を減少させながら地盤5中を進んでいく。また、アンカー本体10の先端部14の進行に伴って引き抜き防止金具30が地盤5内も進行するが、このとき羽根部材32間の隙間33を介して地盤5中の土や細かい石が捕集空間CSに流入していく。
【0028】
そして、アンカー本体10をさらに打ち込んでいくと、例えば同図(b)に示すように、一部の羽根部材32aが地盤5中の石RCに当接して引き抜き防止金具30に作用する抵抗が高まる。しかしながら、引き抜き防止金具30は上記したようにアンカー本体10に対して可動自在に構成されているため、羽根部材32aが石RCと当接する点を作用点とし、基部31とEリング22との当接点を支点として引き抜き防止金具30に回転力が与えられる。これによって引き抜き防止金具30はアンカー本体10に対して傾斜して石RCからの干渉を受け流し、上記抵抗が低減される。このような傾斜動作と並行してアンカー本体10はさらに打ち込まれていき、引き抜き防止金具30は石RCから離れていく(同図(c))。そして、同図(d)に示すように予め設定した深さ位置にアンカー本体10の先端部14が達すると、アンカー本体10の打ち込みを停止する。このようにアンカー本体10の打ち込みを行っている間に隙間33を介して地盤5中の土や細かい石が捕集空間CSに流入し、引き抜き防止金具30は捕集空間CSで地盤5の土石をアンカー本体10の先端側から後端側(地盤表面側)に向けて抱き込んでいる。このため、地盤5からのアンカー本体10の引抜抵抗が高められる。
【0029】
最後に、こうして地盤5に打ち込まれたアンカー本体10の後端部11、より詳しくは地盤5の表面上に残した後端部11の谷部12に落石防止網などの被係留物4を係止して係留する。
【0030】
この状態において、例えば落石により落石防止網やワイヤーロープ等の被係留物4に引張力が与えられると、これがアンカー1に対する引抜力として作用するが、この場合においても、アンカー本体10が地盤5から引き抜かれるのを効果的に防止することができる。というのも、引抜力が発生した場合、同図(e)に示すように、地盤表面側へのアンカー本体10の移動に伴い各羽根部材32が地盤5の土石から抵抗を受けて変形するからである。より具体的には、各羽根部材32は基部31に対する傾斜角度θ(図2参照)が拡大する向きに変形し(つまり羽根部材32が開き)、第1方向Xと直交する面内において引き抜き防止金具30が地盤5の土石を抱え込む面積が変形前より増大する。その結果、上記面積が増大した分だけ引抜抵抗が増大し、地盤5に対してより一層抜け難くなる。
【0031】
以上のように、本実施形態では、アンカー本体10の後端部11を叩くことで地盤5内にアンカー本体10の先端部14および引き抜き防止金具30が埋め込まれる。この引き抜き防止金具30は基部31と4枚羽根部材32とで囲まれる捕集空間CSをアンカー1本体10の先端の反対側に有しており、地盤5へのアンカー本体10の打込によってアンカー本体10とともに地盤5内に入り込みながら捕集空間CSに流入する地盤5中の土石を引き抜き防止金具30が捕集し、これが地盤5からのアンカー本体10の引抜抵抗となる。このように簡単な作業により地盤5から抜け難いアンカー1が得られる。
【0032】
また、引き抜き防止金具30は、アンカー本体10の先端部14に取り付けられたEリング21、22の間でアンカー本体10の先端部14に対して可動自在に設けられているため、アンカー本体10を地盤5に打ち込むときに引き抜き防止金具30は地盤5から受ける抵抗によってアンカー本体10の先端部14に対する姿勢を変化させる。したがって、アンカー本体10に作用する抵抗を低減させながらアンカー1を施工することができる。このように、本実施形態によれば、地盤5から抜け難いアンカー1を優れた施工性で地盤5に埋め込むことができる。
【0033】
また、引き抜き防止金具30を構成する4枚の羽根部材32が基部31からアンカー本体10の先端と反対側に向かって裾広がり状に傾斜するように、各羽根部材32の一方端部が基部31と繋がっている。したがって、アンカー本体10を第1方向Xに打ち込んだ際、アンカー本体10はより少ない打込抵抗で第1方向Xに確実にかつ安定的に案内される。このように上記構成を有する引き抜き防止金具30を用いることでアンカー1の施工性をさらに高めることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、隣り合う羽根部材32を互いに離間させて隙間33を形成しているため、アンカー本体10の打ち込みとともに隙間33を介して地盤5中の土や細かい石が捕集空間CSに流れ込み、地盤5へのアンカー本体10の打込抵抗を低減させるとともに、地盤5からのアンカー本体10の引抜抵抗を効果的に高めることができる。なお、本実施形態では各羽根部材32の一方端部から他方端部にかけて隣り合う羽根部材32を互いに離間させているが、各羽根部材32の一方端部側のみまたは他方端部側のみ、隣り合う羽根部材32が互いに離間して隙間が形成されるように構成してもよい。
【0035】
さらに、上記実施形態では、アンカー本体10に引抜力が与えられてアンカー本体10が地盤表面側に移動した際に、基部31に対する傾斜角度が拡大する向きに全羽根部材32が変形するように構成している。したがって、落石により落石防止網やワイヤーロープ等の被係留物4に引張力が与えられたとしても、それに応じて全羽根部材32が変形して地盤5に対して抜け難くなる抵抗を発生させ、この抵抗によりアンカー1をより抜け難い状態とすることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、図1における側面視で逆円錐台形状の羽根部材32を4枚用いているが、羽根部材32の形状や枚数はこれに限定されるものではなく、任意形状の羽根部材を用いることができる。例えば図5に示すように矩形形状の羽根部材32を用いてもよい。また、図6に示すように羽根部材32の他方端部32bを基部31の反対側に折り広げてもよい。また、基部31の形状についてもドーナツ円盤形状に限定されるものではなく、任意である。
【0037】
また、上記実施形態では、4枚の羽根部材32が基部31からアンカー本体10の先端と反対側に向かって裾広がり状に傾斜するように設けているが、基部31に対する各羽根部材32の傾斜角度θを90゜に設定してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、Eリング21、22により第1方向Xにおける引き抜き防止金具30を規制しているが、Eリング21、22の代わりに、他の係止部材、例えばCリングなどを用いてもよい。また、Eリング22をリング溝17に取り付ける代わりに、リング溝17の代わりにアンカー本体10の側面部に対し、リング状突起を設けたり、複数の突起部をリング状に設けてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態においては落石防止網やワイヤーロープ等を固定する場合を例に挙げているが、本発明の適用範囲はこれに限らない。例えば、テントなどを設置する場合に支柱を引っ張るためのロープを固定するためのアンカーにも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1…アンカー
4…被係留物
5…地盤
10…アンカー本体
14…(アンカー本体の)先端部
21…Eリング(第1係止部)
22…Eリング(第2係止部)
30…引き抜き防止金具(抜止部材)
31…基部
32、32a…羽根部材
33…隙間
CS…捕集空間
θ…傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延設される先端部が地盤に対して前記第1方向に打ち込まれるアンカー本体と、
前記第1方向において互いに離間して前記アンカー本体の前記先端部に設けられる第1係止部および第2係止部と、
前記アンカー本体の先端部が挿通される基部と、前記基部から前記アンカー本体の先端と反対側に向かって延設される複数の羽根部材とを有し、前記基部に対して前記アンカー本体の先端と反対側で前記基部および前記複数の羽根部材で囲まれる捕集空間が形成され、前記基部と前記複数の羽根部材が一体的に前記第1係止部および前記第2係止部の間で前記アンカー本体の先端部に対して可動自在となっている抜止部材とを備え、
前記抜止部材は、前記アンカー本体が地盤に打ち込まれるときに前記地盤から受ける抵抗に応じて前記アンカー本体の先端部に対する姿勢を変化しながら前記アンカー本体とともに前記地盤内に入り込み、前記捕集空間内に流入する前記地盤中の土石を捕集することを特徴とするアンカー。
【請求項2】
前記複数の羽根部材が前記基部から前記アンカー本体の先端と反対側に向かって裾広がり状に傾斜するように、前記複数の羽根部材の一方端部が前記基部と繋がる請求項1に記載のアンカー。
【請求項3】
隣り合う羽根部材の一方端部は互いに離間する請求項2に記載のアンカー。
【請求項4】
隣り合う羽根部材の他方端部は互いに離間する請求項2または3に記載のアンカー。
【請求項5】
前記複数の羽根部材のうち少なくとも1枚は、前記アンカー本体に引き抜き力が与えられたときに前記地盤から受ける抵抗によって前記基部に対する傾斜角度が拡大する向きに変形可能である請求項4に記載のアンカー。
【請求項6】
前記抜止部材は、前記抜止部材の基部と各羽根部材とを繋げた状態で単一のバネ鋼板から抜き取られた後で前記基部に対して各羽根部材を折り曲げたものである請求項4または5に記載のアンカー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−26144(P2012−26144A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165028(P2010−165028)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(390039284)株式会社若本製作所 (6)
【Fターム(参考)】