説明

アングル材切断装置

【課題】アングル材に対して簡単且つ短時間で切断加工を施すことが可能であるアングル材切断装置を提供する。
【解決手段】一方の辺Wa及びこの一方の辺Waと隣接する他方の辺Wbで形成される角部Wcを有するアングル材Wを切断するアングル材切断装置であって、アングル材Wを切断する溶接用のプラズマトーチ2と、アングル材Wの長手方向に移動可能とした台車10と、この台車10に設けられて、台車10の移動方向の端部からプラズマトーチ2を突出させた状態で支持して、プラズマトーチ2の先端をアングル材Wの一方の辺Wa及び他方の辺Wb間で角部Wcを経由して移動させるトーチ支持部20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の辺及びこの一方の辺と隣接する他方の辺で形成される角部を有するアングル材(角筒材も含む)を切断するアングル材切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したアングル材切断装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
このアングル材切断装置は、基台と、この基台の上方で昇降可能に配置された押し刃と、基台に設けられた受け刃を備えており、押し刃を降下させて受け刃に接近させることで、基台上に載置したアングル材の端部にノッチを形成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-170196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のアングル材切断装置において、アングル材を基台上に載置して切断するようになっているので、大型のアングル材の場合には、加工前の位置決め等の取り回しが困難であり、多くの手間隙がかかってしまうという問題を有していた。
このアングル材切断装置に代えて、例えば、6軸ロボットに溶接用のトーチを保持させてアングル材を切断するといった手法も実施されているが、切断コストの上昇を招いてしまうという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0005】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、切断コストの上昇を抑えたうえで、例えば、地面に置いた大型のアングル材をほとんど移動させずに切断することができ、したがって、アングル材に対して簡単且つ短時間で切断加工を施すことが可能であるアングル材切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、一方の辺及びこの一方の辺と隣接する他方の辺で形成される角部を有するアングル材を切断するアングル材切断装置であって、前記アングル材を切断するプラズマトーチや半自動アーク溶接トーチなどの溶接用のトーチと、前記アングル材の長手方向に移動可能としたベースと、このベースに設けられて、該ベースの移動方向の端部から前記トーチを突出させた状態で支持して、該トーチの先端を前記アングル材の一方の辺及び他方の辺間で角部を経由して移動させるトーチ支持部を備えている構成としたことを特徴としており、このアングル材切断装置の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るアングル材切断装置において、前記トーチ支持部は、前記ベースに対して該ベースの移動方向に沿う軸回りに回動可能に取り付けられた回動プレートと、前記トーチを装着した状態で前記回動プレート上に前記ベースの移動方向と直交する方向にスライド可能に配置されたトーチクランプを具備している構成としている。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係るアングル材切断装置において、前記ベースは、前記アングル材における一方の辺及び他方の辺のいずれかの辺上を走行する台車である構成としている。
【0009】
本発明に係るアングル材切断装置では、ベースをアングル材に対して所定の位置にセットして、トーチから例えばビームを照射させつつ、トーチ支持部によりトーチの先端をアングル材の一方の辺及び他方の辺間で角部を経由して移動させると共に、アングル材の長手方向にベースを必要に応じて移動させると、アングル材を切断したり、アングル材の端部にノッチを形成したりし得ることとなる。
【0010】
この際、アングル材が地面に置いた大型のアングル材であったとしても、このアングル材をほとんど移動させることなく、切断したり所望形状に加工したりし得ることとなり、その結果、アングル材の切断加工を簡単且つ短時間で行い得ることとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係るアングル材切断装置では、上記した構成としているので、切断コストの低減を図ったうえで、アングル材の大小にかかわらず、アングル材に対して簡単且つ短時間で切断加工を施すことが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0012】
また、本発明の請求項2,3に係るアングル材切断装置では、上記した構成としているので、構造の簡略化を図りつつ、アングル材に対する簡単且つ短時間での切断加工を実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るアングル材切断装置を示すアングル材を切断している状態の正面説明図である。
【図2】図1におけるアングル材切断装置のニュートラル状態を示す正面説明図(a),側面説明図(b)及び部分平面説明図(c)である。
【図3】図1のA−A線位置に基づく断面説明図(a)及びB−B線位置に基づく断面説明図(b)である。
【図4】図1のアングル材切断装置によりアングル材の端部に形成されるノッチの一例を示すアングル材の端面説明図(a),平面説明図(b)及び側面説明図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明に係るアングル材切断装置の一実施形態を示しており、この実施形態では、本発明に係るアングル材切断装置によって、一方の辺及びこの一方の辺と隣接する他方の辺で形成される角部を有するアングル材にノッチを形成する場合を例に挙げて説明する。
図1及び図2に示すように、このアングル材切断装置1は、プラズマトーチ2と、台車(ベース)10と、この台車10の移動方向の端部からプラズマトーチ2を突出させた状態で支持するトーチ支持部20を備えている。
【0015】
台車10は、車体11の前後左右に車輪12を配置して成り、車体11に搭載した減速機付きモータ13の出力により走行する。車体11の片方の側部に位置する車輪12には、遠心方向に突出する環状突起12aが形成されており、台車10は、地面Eに伏せた状態で置かれているアングル材Wの角部Wcに片側の車輪12の各環状突起12aを引っ掛けてセットされて、アングル材Wの一方の辺Wa上を走行するようになっている。
【0016】
トーチ支持部20は、台車10に設置された支持プレート15と平行配置される回動プレート21を有している。この際、支持プレート15の下端部には、図3にも示すように、台車10の移動方向に沿うピン22が設置されている。回動プレート21は、このピン22にブッシュ23を介して支持されており、このピン22回りに回動自在となっている。
【0017】
この回動プレート21は、ピン22を中心とする円弧状窓21aを有しており、この円弧状窓21aのピン22に近い縁部に沿ってチェーン24が配置されている。
【0018】
一方、支持プレート15の上端部には、モータ25が固定されている。このモータ25の出力軸25aと上記ピン22とは、互いに平行を成しており、このモータ25の出力軸25aには、スプロケット26が装着されている。
回動プレート21は、円弧状窓21aのチェーン24にモータ25のスプロケット26を引っ掛けることで、このモータ25の出力によってピン22回りに回動する。
【0019】
この場合、支持プレート15には、回動プレート21の円弧状窓21aを貫通するガイド支持体27が設置されており、このガイド支持体27には、回動プレート21に表裏から当接するガイドローラ28,28がボルト29,29を介してそれぞれ取り付けられている。これらのガイドローラ28,28は、回動プレート21が振れなく円滑に回動するように案内する。
【0020】
また、このトーチ支持部20は、台車10の移動方向と直交する方向のガイドレール30と、このガイドレール30上を減速機付きモータ31の出力により往復移動するスライダ32と、このスライダ32に連結されたトーチクランプ33を具備している。ガイドレール30は、回動プレート21上に設置され、トーチクランプ33は、プラズマトーチ2を解放可能に把持する。
【0021】
この実施形態において、トーチクランプ33は、スライダ32に対して高さ調整部34を介して連結されている。この高さ調整部34は、スライダ32に固定されたボックス35と、このボックス35内でねじ36の回転操作により上下動するブロック37を具備しており、トーチクランプ33は、ブロック37に装着されている。
【0022】
このような構成を成すアングル材切断装置1によって、地面Eに伏せた状態で置かれているアングル材Wの端部に対して、図4に示すようなノッチNを形成するに際しては、まず、図1に示すように、アングル材Wの角部Wcに、台車10の片側の車輪12の各環状突起12aを引っ掛けてセットする。
【0023】
次いで、減速機付きモータ31を動作させ、ガイドレール30上においてスライダ32を移動させてプラズマトーチ2を所定の加工開始位置(アングル材Wにおける一方の辺Waの側縁)に着かせると共に、高さ調整部34のねじ36を回転操作して、プラズマトーチ2の先端とアングル材Wとの距離合わせを行う。
【0024】
そして、プラズマトーチ2からのビームの照射を開始し、減速機付きモータ31を動作させてプラズマトーチ2をアングル材Wの角部Wcに向けて所定の速度で移動させ、アングル材Wの一方の辺Waに横切る方向(台車10の移動方向と直交する方向)の切れ目を入れる。
【0025】
次に、プラズマトーチ2がアングル材Wの角部Wcに到達した時点で、モータ25を動作させて、回動プレート21とともにプラズマトーチ2をピン22回りに図1反時計方向に略90°回動させる。
【0026】
続いて、減速機付きモータ31によって、アングル材Wにおける一方の辺Waの厚み分だけプラズマトーチ2を他方の辺Wbの側縁に向けて移動させた後、減速機付きモータ13を動作させて、プラズマトーチ2がアングル材Wの端面を超えるまで、アングル材Wの一方の辺Wa上において台車10を走行させると、アングル材Wの端部にノッチNが形成されることとなる。
【0027】
このように、地面Eに置いた大型のアングル材Wであったとしても、このアングル材Wを持ち上げて基台上に置き直すなどといったことをせずに、アングル材Wの端部に対してノッチNを形成し得ることとなり、したがって、アングル材Wの切断加工を簡単且つ短時間で行い得ることとなる。
【0028】
なお、上記した切断加工におけるアングル材切断装置1の各モータ13,25,31のオンオフは、作業者により行ってもよいし、一部ないし全部を自動制御により行ってもよい。
【0029】
上記した実施形態では、本発明に係るアングル材切断装置により、一方の辺Wa及びこの一方の辺Waと隣接する他方の辺Wbで形成される角部Wcを有するアングル材WにノッチNを形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、角部Wcを有する角筒材の切断やノッチの形成に本発明に係るアングル材切断装置を採用することも可能である。
【0030】
本発明に係るアングル材切断装置の構成は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、他の構成として、例えば、アングル材の長手方向にベースを移動させるのに、ラック&ピニオンによる移動手段を採用することが可能であるほか、回動プレートをモータで直接動作させるようにする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 アングル材切断装置
2 プラズマトーチ(溶接用のトーチ)
10 台車(ベース)
20 トーチ支持部
21 回動プレート
22 ピン(台車の移動方向に沿う軸)
33 トーチクランプ
W アングル材
Wa アングル材の一方の辺
Wb アングル材の他方の辺
Wc アングル材の角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の辺及びこの一方の辺と隣接する他方の辺で形成される角部を有するアングル材を切断するアングル材切断装置であって、
前記アングル材を切断する溶接用のトーチと、
前記アングル材の長手方向に移動可能としたベースと、
このベースに設けられて、該ベースの移動方向の端部から前記トーチを突出させた状態で支持して、該トーチの先端を前記アングル材の一方の辺及び他方の辺間で角部を経由して移動させるトーチ支持部を備えている
ことを特徴とするアングル材切断装置。
【請求項2】
前記トーチ支持部は、前記ベースに対して該ベースの移動方向に沿う軸回りに回動可能に取り付けられた回動プレートと、前記トーチを装着した状態で前記回動プレート上に前記ベースの移動方向と直交する方向にスライド可能に配置されたトーチクランプを具備している請求項1に記載のアングル材切断装置。
【請求項3】
前記ベースは、前記アングル材における一方の辺及び他方の辺のいずれかの辺上を走行する台車である請求項1又は2に記載のアングル材切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−224619(P2011−224619A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97033(P2010−97033)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(593083918)株式会社コクホ (6)
【Fターム(参考)】