説明

アンダートレッド用ゴム組成物

【課題】リサイクル率を高め環境負荷の低減を図るため、再生ゴムを配合しながら従来レベル又はそれ以上の破断強度及び押出加工性を達成するようにしたアンダートレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを60重量%以上含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積100m2/g以下のカーボンブラックを20〜70重量部、再生ゴムを1〜10重量部配合したゴム組成物であり、前記再生ゴムがムーニー粘度35〜65、該再生ゴム中のゴム成分の天然ゴム含有比率が60重量%以上、かつ該再生ゴム中のゾルのゲル透過クロマトグラフによる重量平均分子量が60000以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダートレッド用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、環境負荷の低減を図るため再生ゴムを配合しながら、従来レベル又はそれ以上の破断強度及び押出加工性を達成するようにした空気入りタイヤのアンダートレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境を保護する観点から、空気入りタイヤのリサイクル率を高くすることが要求されるようになり、使用済みのタイヤやチューブから回収された再生粉末ゴムを新しいゴム原料中に配合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような再生ゴムをアンダートレッド用ゴム組成物に配合すると、破断強度が低下したり、ゴム組成物の粘度が増大し押出成形時の押出加工性が悪化するという問題があった。このため、再生ゴムを配合しリサイクル率を高くする技術の実用化が困難であった。
【0003】
したがって、アンダートレッドを構成するゴム組成物に再生ゴムを配合してリサイクル率を高くしながら、従来レベル又はそれ以上の破断強度及び押出加工性を達成可能にしたアンダートレッド用ゴム組成物の実現が望まれている。
【特許文献1】特平11−335488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、リサイクル率を高め環境負荷の低減を図るため、再生ゴムを配合しながら従来レベル又はそれ以上の破断強度及び押出加工性を達成するようにしたアンダートレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを60重量%以上含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積100m2/g以下のカーボンブラックを20〜70重量部、再生ゴムを1〜10重量部配合したゴム組成物であり、前記再生ゴムがムーニー粘度35〜65、該再生ゴム中のゴム成分の天然ゴム含有比率が60重量%以上、かつ該再生ゴム中のゾルのゲル透過クロマトグラフによる重量平均分子量が60000以下であることを特徴とする。
【0006】
前記ジエン系ゴムは、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つのゴムを1〜40重量%含有することができる。
【0007】
このアンダートレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤのアンダートレッドを構成するのに好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物によれば、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを60重量%以上含むジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラックを20〜70重量部、再生ゴムを1〜10重量部配合するようにしたので、再生ゴムを配合しながら、破断強度の低下を抑制することができる。特に、カーボンブラックが窒素吸着比表面積100m2/g以下であり、再生ゴムがムーニー粘度35〜65、再生ゴム中のゴム成分の天然ゴム含有比率が60重量%以上、かつ再生ゴム中のゾルのゲル透過クロマトグラフによる重量平均分子量が60000以下であるようにしたので、ゴム組成物の破断強度を確保すると共に、ゴム組成物の粘度増加を可及的に小さくし押出加工性を維持するため、従来のアンダートレッド用ゴム組成物のレベル又はそれ以上の破断強度及び押出加工性を達成すると共に、リサイクル率を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムとし、そのジエン系ゴムは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを60重量%以上含むようにする。すなわち、ジエン系ゴムは、天然ゴム又はイソプレンゴムの一方を60重量%以上含んでもよいし、天然ゴム及びイソプレンゴムの合計を60重量%以上含んでもよい。ジエン系ゴム中の天然ゴム及び/又はイソプレンゴムの配合量は60重量%以上、好ましくは60〜100重量%、より好ましくは60〜99重量%、さらに好ましくは70〜90重量%にする。天然ゴム及び/又はイソプレンゴムの配合量が60重量%未満の場合には、空気入りタイヤのアンダートレッドとして必要な破断強度、押出加工性、低発熱性の性能が低下する。
【0010】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、天然ゴム、イソプレンゴム以外のジエン系ゴムを任意成分として含むことができる。天然ゴム、イソプレンゴム以外のジエン系ゴムとしては、特に制限されるものではなく、アンダートレッド用ゴム組成物に通常用いられるブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。好ましくはブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムがよい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0011】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、天然ゴム、イソプレンゴム以外のジエン系ゴム、特にブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つのゴムを配合する場合、その配合量はジエン系ゴム中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%にするとよい。40重量%を超えると、破断強度、押出加工性、低発熱性の悪化が懸念される。
【0012】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、再生ゴムを配合することによりリサイクル率を高くし環境負荷を低減する。同時に、後述するように再生ゴムの性状を特定することにより、破断強度の低下及びゴム組成物の粘度増加を抑制することができ、ゴム組成物の押出加工性を維持することができる。再生ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し1〜10重量部、好ましくは3〜6重量部にする。再生ゴムの配合量が1重量部未満では、リサイクル率を高くすることができない。また、再生ゴムの配合量が10重量部を超える場合には、ゴム組成物の破断強度が悪化する。
【0013】
本発明で使用する再生ゴムは、JIS K6313に規定された自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを再生したもの並びにこれと同等の性状を有するものとする。再生ゴムの種類は、チューブ再生ゴム、タイヤ再生ゴム、その他の再生ゴムから選ばれるいずれでもよく、複数の種類を組合わせることもできる。なかでも、タイヤ再生ゴムが好ましい。なお、本発明では、再生ゴムは、JIS K6313の規定に従い、所謂粉末ゴム以外の脱硫処理が施された再生ゴムとする。
【0014】
再生ゴムの特性としては、ムーニー粘度(ML1+4)が35〜65、好ましくは40〜60のものを使用する。ムーニー粘度が35未満であると、混合時の分散性が悪化する。また、ムーニー粘度が65を超えると、ゴム組成物の粘度が大きくなり押出加工性が悪化する。ここで、ムーニー粘度(ML1+4)とは、JIS K6300に準拠し、100℃で測定した値をいう。
【0015】
また、再生ゴム中のゴム成分は、天然ゴム含有比率が60重量%以上、好ましくは60〜85重量%である。天然ゴム含有比率が60重量%未満であると、破断強度及び押出加工性が悪化する。なお、再生ゴム中の天然ゴム含有比率は、熱分解ガスクロマトグラフィー(PyGC)の測定により求められる値をいう。
【0016】
本発明で使用する再生ゴムは、ゾルの分子量がゲル透過クロマトグラフによる重量平均分子量で60000以下、好ましくは30000〜60000にする。ゾルの重量分子量が60000を超える場合には、ゴム組成物のムーニー粘度が増大し、押出加工性が悪化する。ここで、再生ゴム中のゾルは、常温でトルエンに溶解する成分とする。ゾルの分子量は再生ゴムをフィルムにしたものを切断し小片化し、約200倍量のトルエンに浸漬し24時間静置する。次いで、200メッシュの金網で再生ゴムを浸漬したトルエン溶液を濾過し、その濾液に含まれるゾルの分子量をゲル透過クロマトグラフ(Gel permeation chromatography(GPC))により重量平均分子量(ポリスチレン換算)で測定したものをいう。
【0017】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合することにより破断強度を高くする。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し20〜70重量部、好ましくは20〜59重量部にする。カーボンブラックの配合量が20重量部未満の場合には破断強度や弾性率を十分に高くすることができない。また、カーボンブラックの配合量が70重量部を超える場合には、タイヤ耐久性の低下及び転がり抵抗の悪化が懸念される。
【0018】
本発明において使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下、好ましくは30〜80m2/gのものを使用する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が100m2/gを超える場合には、タイヤ耐久性の低下及び転がり抵抗の悪化が懸念される。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K6217−2に準拠して求められるものとする。
【0019】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物には、カーボンブラック以外の無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、マイカ、タルク等を例示することができる。なかでも、シリカ、炭酸カルシウムが好ましい。
【0020】
また、アンダートレッド用ゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、オイルなどのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。アンダートレッド用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0021】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、再生ゴムを使用してリサイクル率を高くしながら、破断強度及び押出加工性の低下を可及的に小さくすることができる。このアンダートレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤのアンダートレッド部に適用することが好ましく、このゴム組成物から構成されたアンダートレッド部を有する空気入りタイヤは、押出加工が容易であり品質安定性が高く、かつ耐久性に優れる。
【0022】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
表1,2に示す配合からなる11種類のゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜6)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7Lのバンバリーミキサーで4分間混練し、温度160℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、アンダートレッド用ゴム組成物を調製した。
【0024】
得られた11種類のゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜6)の押出加工性としてムーニー粘度を下記に示す方法により測定した。また、各ゴム組成物をそれぞれ所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、破断強度を下記に示す方法により測定した。
【0025】
破断強度
JIS K6251に準拠し、3号型ダンベル試験片、25℃、引張り速度500mm/分の条件で測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数で表わし表1,2に示した。この指数が大きいほど破断強度が高いことを意味する。
【0026】
ムーニー粘度(押出加工性)
ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を、JIS K6300に準拠してムーニー粘度計にてL型ロータを使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、温度100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数で表わし表1,2に示した。この指数が小さいほど粘度が低く押出加工性が優れることを意味する。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、SIR−20
IR:イソプレンゴム、日本ゼオン社製Nipol IR2200
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
再生ゴム1:Gujarat社製GR555、(ムーニー粘度(ML1+4@100℃)=45、ゴム成分中の天然ゴム比率=80%、ゾルの重量平均分子量=30000)
再生ゴム2:村岡ゴム工業社製TBR100%タイヤリク、(ムーニー粘度(ML1+4@100℃)=60、ゴム成分中の天然ゴム比率=80%、ゾルの重量平均分子量=60000)
再生ゴム3:アセトン抽出量4.5重量%、クロロホルム抽出量2.2重量%の加硫ゴム(NR/BRの重量比が80/20のもの)を180℃に温調したラボプラストミル(容積60cc)で4分間せん断をかけて脱硫し作製したもの、(ムーニー粘度(ML1+4@100℃)=70、ゴム成分中の天然ゴム比率=80%、ゾルの重量平均分子量=100000)
再生ゴム4:アセトン抽出量4.5重量%、クロロホルム抽出量2.2重量%の加硫ゴム(NR/BRの重量比が40/60のもの)を180℃に温調したラボプラストミル(容積60cc)で8分間せん断をかけて脱硫し作製したもの、(ムーニー粘度(ML1+4@100℃)=45、ゴム成分中の天然ゴム比率=40%、ゾルの重量平均分子量=30000)
カーボンブラック1:東海カーボン社製シーストF(窒素吸着比表面積42m2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン社製ショウブラックN220(窒素吸着比表面積110m2/g)
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
硫黄:アクゾノーベル社製クリステックスHS OT 20
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーNS P

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを60重量%以上含むジエン系ゴム100重量部に対し、窒素吸着比表面積100m2/g以下のカーボンブラックを20〜70重量部、再生ゴムを1〜10重量部配合したゴム組成物であり、前記再生ゴムがムーニー粘度35〜65、該再生ゴム中のゴム成分の天然ゴム含有比率が60重量%以上、かつ該再生ゴム中のゾルのゲル透過クロマトグラフによる重量平均分子量が60000以下であるアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムが、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つのゴムを1〜40重量%含有する請求項1に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンダートレッド用ゴム組成物によりアンダートレッドを構成した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−13494(P2010−13494A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171964(P2008−171964)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】