アンチニュートンリングフィルムの製造方法、アンチニュートンリングフィルム、タッチパネル、及び、光学部材
【課題】安定したアンチニュートンリング性を有するアンチニュートンリングフィルムの簡便な製造方法ならびに製造容易なアンチニュートンリングフィルムを提供し、ひいてはタッチパネルや光学部材の品質の安定化を図ることを課題としている。
【解決手段】ポリマー成分と、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒とを含有するポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材上に形成させ、該ポリマー被膜を硬化させることにより表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製することを特徴とするアンチニュートンリングフィルムの製造方法などを提供する。
【解決手段】ポリマー成分と、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒とを含有するポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材上に形成させ、該ポリマー被膜を硬化させることにより表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製することを特徴とするアンチニュートンリングフィルムの製造方法などを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、視認性に優れた透明性タッチパネル及びそれに用いる透明導電膜を備えた透明導電性積層体などに好適に用いられるアンチニュートンリングフィルムの製造方法や、アンチニュートンリングフィルム、タッチパネル、及び、光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の画面に表示されたキーに触れることで入力を行うタッチパネル式の入力装置が広く用いられている。
このような入力装置に用いられるタッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などが知られている。
このうち、抵抗膜方式はその構造が単純であるため、コストパフォーマンスに優れており、例えば、銀行の現金自動受払機(ATM)や交通機関の切符販売機等の表示板用として近年急速に普及している。
【0003】
この抵抗膜方式のタッチパネルは、一般的に透明導電膜を有する透明導電性積層体と透明導電膜付ガラス板とがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性積層体に電流を流して透明導電膜付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。
すなわち、指やペン等によって操作画面を押圧する操作を介して透明導電性積層体を透明導電膜付ガラスに接触させることによって、その接触部分が通電されて押圧位置が検出されように構成されている。
【0004】
ところで、タッチパネルには、指またはペン等でタッチパネルを押圧する際に、指またはペンの周辺に光の干渉による虹模様、いわゆるニュートンリングが発生し、ディスプレイの視認性が低下するといった問題がある。
このような問題に対しては、スペーサーを厚くしたり、多くの箇所にスペーサーを設けたりする対策が提案されている。しかし、この方法ではニュートンリングの発生を抑制することができたとしてもスペーサー自体が視認され易くなる結果、ディスプレイの鮮明性が損なわれるという弊害が生じることになる。
【0005】
このニュートンリングの問題に対しては、例えば、下記特許文献1には、その解決方法として、平均一次微粒子径が0.5〜5μm程度の無機系または有機系微粒子と平均一次微粒子径が100nm以下の金属酸化物または金属フッ化物超微粒子を硬化樹脂層に分散させた透明導電性積層体が開示されている。
【0006】
しかし、この特許文献1の方法で形成された硬化樹脂層は、微粒子によって表面に凹凸形状を形成するため、例えば、硬化樹脂中で前記微粒子の分散不良により、所望のアンチニュートンリング性が発現しなかったり、また、透明性が低下したり、外観不良の問題が生じることがある。
また、無機微粒子などを用いているため、押圧による微粒子の脱落や、透明導電膜を傷つけたりしやすく耐久性が劣るという問題がある。
【0007】
前記ニュートンリングの問題に対する別の解決方法として、例えば、下記特許文献2には、凹凸を有する型に光重合性組成物を接触させ、活性エネルギー線の照射により光重合成組成物を硬化させて凹凸を形成する転写方式も提案されている。
【0008】
しかし、この特許文献2に記載されている方法は、凹凸を有する型に硬化させた樹脂が付着してしまいやすく、型の形状を写し取ることができずに所望のアンチニュートンリング性が発現しなかったり、作業性が煩雑で量産に適さないものとなったりするおそれを有する。
また、凹凸を有する型自身の製造コストもかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再表2005−052956号公報
【特許文献2】特開2008−155387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来のアンチニュートンリングフィルムの製造方法においては、簡便なる方法で表面の凹凸を制御する方法が見出されておらず、アンチニュートンリング性の調整が困難な状況となっている。
そのため、このようなアンチニュートンリングフィルムを利用するタッチパネルや光学部材に対して安定したアンチニュートンリング性を発揮させることが困難となっている。
本発明は、このような問題に鑑み、安定したアンチニュートンリング性を有するアンチニュートンリングフィルムの簡便な製造方法ならびに製造容易なアンチニュートンリングフィルムを提供し、ひいてはタッチパネルや光学部材の品質の安定化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのアンチニュートンリングフィルムの製造方法にかかる本発明は、ポリマー成分と、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒とを含有するポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材上に形成させ、該ポリマー被膜を硬化させることにより表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製することを特徴としている。
【0012】
本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法においては、前記有機溶媒を蒸発させる過程において前記塗膜の表面温度を雰囲気温度よりも低温にさせて該塗膜表面に結露を生じさせ、該結露によって生じた液滴で前記塗膜表面に凹部を形成させて前記ポリマー被膜を形成させることが好ましい。
【0013】
また、本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法においては、前記ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性成分を含み、該非相溶性成分が加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記有機溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性が高く、しかも、前記低分子量物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な有機溶媒であるポリマー溶液を用いて前記塗膜を形成し、前記有機溶媒を蒸発させることによって前記ポリマー成分と前記低分子量物質とを相分離させて前記ポリマー被膜に表面の凹凸を形成させ、さらに、前記ポリマー被膜の少なくとも一部を硬化させた後に前記低分子量物質を加熱して前記ポリマー被膜から蒸発除去させることが好ましい。
【0014】
前記ポリマー成分が紫外線硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施するか、又は、前記ポリマー成分が熱硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜の加熱によって実施するかのいずれかとすることが好ましい。
なお、前記紫外線硬化性樹脂としてはウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂やシリコーンアクリレート系樹脂が好適である。
【0015】
また、前記ポリマー溶液には、アルコール系溶媒が含有されていることが好ましく、前記低分子量物質を含有させる場合には、当該低分子量物質が、60以上300以下の分子量であり、100℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物であることが好ましい。
なお、前記低分子量物質は、水酸基を有する有機化合物であることがさらに好ましい。
【0016】
また、上記課題を解決するためのアンチニュートンリングフィルムに係る本発明は、硬化されたポリマーによって、シート状の基材の少なくとも片面に、表面に凹凸形状を有する被膜が形成されているアンチニュートンリングフィルムであって、上記のような製造方法によって作製されてなり、前記被膜表面の算術平均粗さ(Ra:JIS B0601−2001)が0.025μm以上0.250μm以下であり、且つ、最大高さ粗さ(Rz:JIS B0601−2001)が0.100μm以上2.000μm以下であることを特徴としている。
【0017】
このアンチニュートンリングフィルムは、ヘイズ値が0.1%以上8%以下であり、且つ全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0018】
なお、前記基材は、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明な基材であることが好ましい。
【0019】
また、本発明のアンチニュートンリングフィルムとしては、前記硬化被膜の表面に、さらに、透明導電膜が積層されて備えられているものが好ましく、該透明導電膜が酸化インジウムスズ(ITO)膜であることが好ましい。
【0020】
そして、本発明のタッチパネルは、上記のようなアンチニュートンリングフィルムで操作画面が被覆されていることを特徴とし、本発明の光学部材は、上記のようなアンチニュートンリングフィルムが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させた後に該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて除去する過程で表面に凹凸を形成させ、それによって表面に凹凸を有するポリマー被膜を形成させるものであり、例えば、塗膜表面に結露を生じさせて凹凸を形成させたり、ポリマー溶液にポリマー成分と非相溶な物質を含有させて相分離によって凹凸を形成させたりするなどして凹凸を有するポリマー被膜を形成させるものである。
すなわち、ポリマー溶液の塗布・乾燥という簡便なるプロセスによって表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製するものである。
しかも、温度条件などによって結露の生じ方をコントロールしたり、非相溶な物質の種類や量などによって相分離の状態をコントロールしたりすることができ、凹凸形状の調整が容易に実施可能となる。
したがって、作製するアンチニュートンリングフィルムのアンチニュートンリング性の調整も容易で、アンチニュートンリングフィルムの品質の安定化を容易に図り得る。
また、このようなアンチニュートンリングフィルムが用いられることによってタッチパネルや光学部材もその品質安定性の向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図2】実施例1のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図3】実施例2のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図4】実施例2のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図5】実施例3のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図6】実施例3のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図7】実施例4のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図8】実施例4のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図9】実施例5のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図10】実施例5のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図11】実施例6のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図12】実施例6のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図13】実施例7のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図14】実施例7のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図15】実施例8のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図16】実施例8のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図17】実施例9のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図18】実施例9のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図19】比較例1のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図20】比較例1のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図21】比較例2のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図22】比較例2のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図23】比較例3のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図24】比較例3のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図25】比較例4のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図26】比較例4のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図27】比較例5のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図28】比較例5のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図29】比較例6のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図30】比較例6のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図31】比較例7のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図32】比較例7のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図33】実施例10のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図34】実施例10のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図35】実施例11のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図36】実施例11のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法の第一の実施の形態について説明する。
本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、次のような(a)〜(e)の工程を実施してアンチニュートンリングフィルムを作製するものである。
・工程(a) ポリマー成分として硬化性を有するポリマーなどが含まれており、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒がさらに含まれているポリマー溶液を作製する工程。
・工程(b) ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一方の面に塗布して前記基材上に塗膜を形成する工程。
・工程(c) 塗布したポリマー溶液に含まれている有機溶媒を蒸発させて、この時の蒸発熱によって塗膜表面を雰囲気温度よりも低下させ、空気中の水蒸気などを塗膜表面に結露させ、該結露した液滴で前記塗膜表面に凹部を形成させることによって前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材表面に形成させる工程。
・工程(d) ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分に硬化反応を発生させてポリマー被膜を硬化させ、表面に凹凸形状を有する硬化被膜を形成させる工程。
・工程(e) 該硬化被膜の上に透明導電膜を積層させる工程。
【0024】
まず、本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法に用いられる各材料について説明する。
【0025】
(ポリマー成分)
このポリマー成分は、前記ポリマー溶液によって塗膜が形成された後、該塗膜から当該ポリマー成分の溶媒となっている前記有機溶媒が除去された際に被膜(ポリマー被膜)を形成させるためのものであり硬化性を有しているポリマー又はオリゴマー又はモノマーを少なくとも1種によって構成されるものである。
該ポリマー成分は、例えば、硬化性樹脂単独又は複数種類の樹脂やゴムによって構成させることができ、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが好適な構成材料として挙げられる。
また、該ポリマー成分は、有機溶媒を蒸発させて除去する過程(工程c)における塗膜表面に形成された凹凸形状を、有機溶媒除去後のポリマー被膜が硬化(工程d)されるまで維持可能であることが好ましく、常温(例えば、23℃)において自然流動を示すことがない固形状又は半固体状(ゲル状やグリース状)であることが好ましい。
【0026】
このポリマー成分に好適に用いられる前記紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、アミド系、シリコーン系樹脂等の各種のものが挙げられる。
なお、紫外線硬化性樹脂は、ポリマーの状態のみでポリマー成分を構成させる必要性はなく、紫外線硬化性のモノマーやオリゴマーの状態でポリマー成分を構成させても良い。
なかでも、紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂やシリコーンアクリレート系樹脂が好適である。
このウレタンアクリレート系樹脂は、高硬度であるために耐擦傷性に優れている点においてポリマー成分として好適である。
一方でエポキシアクリレート系樹脂は粘度が高いためにレベリングしにくく形状を保持しやすい点において好適である。
さらに、シリコーンアクリレート系樹脂は極性が低いため水や低分子量物質と比較的非相溶である点において好適である。
【0027】
なお、前記ポリマー成分を構成する樹脂として、紫外線硬化性樹脂が採用される場合には、さらに、光重合開始剤を前記ポリマー溶液に含有させておくことが好ましい。
【0028】
(光重合開始剤)
この光重合開始剤としては、用いる紫外線硬化性樹脂にもよるが、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは0.5重量部以上5重量部以下の割合で前記ポリマー溶液に含有させうる。
【0029】
また、前記熱硬化性樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、メラミン系、尿素系、シリコーン系、フェノール系樹脂等の各種のものが挙げられる。
この熱硬化性樹脂についても、モノマーやオリゴマーの状態でポリマー溶液に含有されていても良い。
これらの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂は、数多くの種類のものが市販されており、用いる樹脂種や組み合わせのバリュエーションを豊富に取り揃えることができ、アンチニュートンリングフィルムの表面の凹凸形状を調整することが容易である点において優れている。
【0030】
これらの樹脂などからなるポリマー成分としては、塗膜に形成された凹凸形状を、該塗膜を乾燥した後、硬化被膜を形成させるまで維持させる観点から、30℃における粘度が、0.1Pa・s以上1000000Pa・s以下であることが好ましく、0.5Pa・s以上100000Pa・s以下であることがさらに好ましい。
なお、アンチニュートンリングフィルムは、通常、透明性が要求されることから、このポリマー成分も透明性の高いポリマーで構成されることが好ましい。
【0031】
(有機溶媒)
前記ポリマー成分とともに前記ポリマー溶液を構成する前記有機溶媒としては、前記ポリマー成分が可溶であることが重要である。
なお、この有機溶媒としては、前記ポリマー成分に対して良溶媒となるものであれば、単独物質からなるものであっても複合物質であってもよく、例えば、前記ポリマー成分に対して良溶媒となる単独物質や、複数の良溶媒が混合されてなる混合溶媒、あるいは、ポリマー成分に対して難溶又は不溶となる貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが用いられ得る。
【0032】
この有機溶媒としては、ポリマー溶液を塗工(工程b)した後、塗膜から溶媒を蒸発させて除去する過程(工程c)において前記塗膜の表面を雰囲気温度以下に低下させて結露を発生させるためには、蒸発熱が大きく蒸発速度の速い有機溶媒が好ましい。
例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
中でもアルコール系溶媒は一般に安価であるとともに蒸発熱も比較的大きく、塗膜の表面温度を低下させる作用に優れていることから前記ポリマー溶液に含有させる有機溶媒として好適なものであるといえる。
【0033】
また、前記ポリマー溶液には、前記ポリマー成分や前記溶媒といった成分以外に、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、耐候剤などといったその他の添加剤を適宜含有させることができる。
【0034】
なお、このポリマー溶液は、その粘度が高すぎると、ポリマー被膜にスジやムラが生じ易くなって均一に塗布することが難しくなる。
したがって、塗布作業(工程b)を容易に実施させ得る点において、前記ポリマー溶液は、その粘度が5Pa・s以下となるように調整されることが好ましく、3Pa・s以下となるように調整されることがより好ましい。
【0035】
(基材)
このポリマー溶液を塗布するシート状の基材としては、特に、その材質を限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン;エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等;イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーやこれらのポリマーのブレンド物等が、その形成材料として挙げられる。
また、光学部材に使用されることを考慮すると、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明性を有する透明基材を用いることが好ましい。
【0036】
次いで、本実施形態におけるアンチニュートンリングフィルムの製造方法における各工程について説明する。
(工程a:ポリマー溶液の作製)
前記ポリマー溶液の作製には、従来公知のポリマー溶液作製方法を採用することができ、例えば、前記ポリマー成分と、前記有機溶媒と、必要に応じて添加剤とを、ミキサーやホモジナイザーなどの混合攪拌手段によって分散混合させてポリマー溶液を作製する方法などが挙げられる。
【0037】
(工程b:基材への塗布)
前記基材に対する前記ポリマー溶液の塗布方法は、任意の塗布方法が利用できる。
小面積のアンチニュートンリングフィルムを作製する場合は、ベーカー式アプリケータやドクターブレード、バーコーターなどを使用して手塗りすることができる。
一方で、塗工機で連続して塗工する場合は、リバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、ダイレクトバーコーター、リバースバーコーター、ダイコーター等、目的とする塗布量に応じて適宜選択が可能である。
なお、塗工の方法を変えることによって、得られるポリマー被膜の形状を変えることができる。
【0038】
このときのポリマー溶液の塗布は、通常、ポリマー溶液を前記基材に塗布、乾燥した場合に、溶媒除去後のポリマー被膜の厚みが0.1μm以上50μm以下の範囲となるように塗布条件を設定して実施することが好ましい。
ただし、このポリマー溶液の塗布厚みを変更することで、有機溶媒の蒸発後のポリマー被膜の表面形状を調整することが可能であるため、ポリマー溶液の塗布厚みはこの範囲には限定されず、目的に応じて任意の塗布厚みとすることができ、この塗布厚みの調整によって凹凸形状を調整することが可能である。
【0039】
(工程c:溶媒除去、凹凸の形成)
先に例示した材料を含むポリマー溶液は、該ポリマー溶液を塗布した基材を室温に近い雰囲気温度下に保持して含有されている有機溶媒を蒸発(揮発)させて除去させることができる。
ただし、雰囲気温度が低すぎると有機溶媒が蒸発するのに時間を要し、塗膜からの熱の奪い方が緩慢になって塗膜表面に結露を生じないおそれが有る。
したがって、雰囲気温度は、通常、0℃以上80℃以下の範囲から選択されうる。
より好ましい温度範囲としては、10℃以上70℃以下であり、更に好ましい温度範囲は、15℃以上50℃以下である。
【0040】
このようにして塗布したポリマー溶液に含まれている溶媒を蒸発させることにより溶媒の蒸発熱によって塗膜表面を雰囲気の露点温度以下に低下させ空気中の水分による水滴を塗膜表面に結露させることができる。
そして塗膜を形成しているポリマー溶液が、水滴をはじく作用を利用して、該水滴の付着部分を凹入させる。
【0041】
なお、ポリマー溶液の溶媒をアルコール系溶媒のみで構成させた場合には、水とアルコールとが親和性が高いためにポリマー溶液が水滴をはじく効果が十分に発揮されず、水滴付着部に所望の凹入形状を形成させることが難しくなるおそれを有する。
また、塗膜と接する雰囲気ガスにおけるアルコール蒸気濃度が高くなって、例えば、結露した水滴にアルコールが溶解されてさらにポリマー溶液との親和性が高い水滴が形成されるおそれも有する。
このようなことから、例えば、水への溶解度が常温(23℃)において10g/100ml以下となるような比較的疎水性の高い、しかも、アルコール系溶媒との混和性に優れた酢酸エチル(水への溶解度、8.3g/100ml:at20℃)などの有機溶媒を、アルコールと併用することが好ましい。
なお、疎水性の高い溶媒とアルコール系溶媒との好適な混合割合は、質量比率で(疎水性溶媒:アルコール系溶媒)1:10〜10:1の割合であり、好ましくは1:4〜4:1の割合である。
また、例えば、水蒸気が飽和状態に近い、例えば、相対湿度80%Rh以上の気体でアルコール蒸気を積極的に置換させるようにして前述のような問題を回避させるようにしてもよい。
【0042】
なお、ポリマー溶液を塗布した後、溶媒を蒸発除去する過程で、目視で塗膜表面に白く濁ったような状態が確認できれば、結露していると判断することができる。
すなわち、結露が生じていない場合は、通常、溶媒を蒸発除去する過程において塗膜が透明であることから、このような透明な状態に比べて曇った状態となっていれば結露していると判断することができる。
【0043】
この工程においては、溶媒の除去が進行して塗膜の乾燥が進むにつれて単位時間あたりに蒸発する溶媒の量が減少して塗膜の表面温度が雰囲気温度に近づくことになる。
また、同時に、塗膜の粘度上昇が進行することになる。
やがて、結露した水滴は、塗膜の表面温度が露点を上回った時点で、表面にその残痕として凹部を残したまま消滅(蒸発)することになる。
したがって、雰囲気の相対湿度(露点)などを調整することによって、水滴の残存期間を調整することができ、ポリマー被膜の表面の凹凸形状を調整することができる。
【0044】
(工程d:硬化)
先の「工程c」において基材表面に形成させたポリマー被膜は、その表面状態を維持させて硬化させることが好ましい。
なお、ポリマー成分として含まれているポリマーやモノマーを硬化させてポリマー被膜の硬化を行うに際しては、表面に結露水による液滴を付着させたままであってもよく、完全に表面を乾燥させた後に硬化を行ってもよい。
【0045】
ポリマー被膜の表面の凹凸形状を、比較的、忠実に硬化被膜に反映させるためには、ポリマー溶液を基材に塗布し、有機溶媒を蒸発除去させた後に速やかにポリマーを硬化させることが好ましい。
そのため、ポリマー被膜のすばやい硬化を行うことが可能な紫外線硬化性樹脂が前記ポリマー成分として好適であるといえる。
すなわち、有機溶媒を蒸発除去させた後に紫外線を照射することによってポリマー被膜を形成している紫外線硬化性樹脂をすばやく硬化させることが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂を用いる場合においては、溶媒の蒸発除去(工程c)と、この硬化の工程とを一連の工程として実施可能である。
すなわち、ポリマー溶液を基材に塗布し、塗膜表面に結露を生じさせ、ある程度の乾燥が進んだところで雰囲気温度を上昇させ塗膜(ポリマー被膜)を加熱することによって硬化被膜を形成させることもできる。
この場合には、水滴が蒸発して、ポリマー被膜の表面が熱硬化性樹脂の軟化によってレベリングされてしまう前に前記熱硬化性樹脂を硬化させることが好ましい。
すなわち、加熱によって、ポリマー被膜の軟化と、ポリマー成分の硬化反応の進行との競争が生じることになるが、この硬化反応を優先させる条件選択を行うことが好ましい。
そのことによって水滴によって形成された凹凸形状をより忠実に硬化被膜に反映させることができる。
【0046】
以上のような工程を実施することで、例えば、結露水の液滴の付着状態が表面の凹部の形成状態に反映された硬化被膜をアンチニュートンリングフィルムに備えさせることができる。
なお、通常、結露した水滴または、結露した水滴同士が結合した水滴よりも特別大きな凹部は形成されない。
ただし、結露する水滴は、有機溶媒を蒸発除去させる際の雰囲気の温・湿度条件や塗布するポリマー溶液の配合内容などによってさまざまな大きさで付着させることができるため、この硬化被膜に形成される凹部の大きさは、通常、小さいものでは直径約0.5μm、大きいものでは直径約500μm程度のものとなる。
【0047】
(工程e:透明導電膜の積層)
上記硬化被膜を形成させた後は、それをそのままの状態でアンチニュートンリングフィルムとして利用することも可能ではあるが、本実施形態においては、タッチパネルなどの操作画面を構成している透明導電膜付ガラス板の相手材として利用可能な状態にすべくこの「工程e」において透明導電膜を硬化被膜の上に積層させる。
【0048】
この透明導電膜を形成させるには、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)などをスパッタや真空蒸着などによって硬化被膜上に付着させるようにすればよい。
なかでも、酸化インジウムスズ(ITO)は、透明性、導電性に優れ透明導電膜の形成材料として好適である。
なお、この透明導電膜の形成は、通常、硬化被膜の表面の凹凸形状に影響を与えず、透明導電膜の表面も硬化被膜の表面形状と略同じとなる。
【0049】
このようにして作製されるアンチニュートンリングフィルムは、アンチニュートンリング性の観点から、その表面(硬化被膜の凹凸=透明導電膜表面の凹凸)の算術平均粗さ(Ra:JIS B0601−2001)が0.025μm以上0.250μm以下であることが好ましく、最大高さ粗さ(Rz:JIS B0601−2001)が0.100μm以上2.000μm以下であることが好ましい。
【0050】
また、タッチパネルの操作画面の視認性などの観点からアンチニュートンリングフィルムは、そのヘイズ値が0.1%以上8%以下であることが好ましく、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0051】
このようなアンチニュートンリングフィルムは、簡便なる方法で表面の凹凸の調整が行われることから、そのアンチニュートンリング性や光透過性などの調整も容易に実施されうる。
なお、本実施形態に係るアンチニュートンリングフィルムは、タッチパネルのみならず偏光板などの光学部材を構成するのにも利用可能であり偏光板以外の光学部材に対しても利用可能なものである。
すなわち、本実施形態に係るアンチニュートンリングフィルムは、そのものを通して反対側のものが視認される透明な部材の構成部品として好適なものである。
【0052】
続いて、本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法の第二の実施形態について説明する。
この第二実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、次のような(イ)〜(ホ)の工程を実施してアンチニュートンリングフィルムを作製するものである。
・工程(イ) ポリマー成分として硬化性を有するポリマーなどが含まれており、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な有機溶媒とを含有し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記有機溶媒が、前記低分子量物質よりも蒸発させることが容易な揮発性の高い有機溶媒であるポリマー溶液を作製する工程。
・工程(ロ) 前記ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して基材上に塗膜を形成する工程。
・工程(ハ) 塗布したポリマー溶液に含まれている溶媒を蒸発除去させて前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製する工程。
・工程(ニ) ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分に硬化反応を発生させてポリマー被膜を硬化させ、硬化被膜を形成させる工程。
・工程(ホ) 前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させる工程。
【0053】
まず、本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法に用いられる各材料について説明する。
【0054】
前記ポリマー溶液に用いられるポリマー成分、溶媒、その他添加剤、基材などについては、第一の実施形態と同じものを本実施形態においても採用可能である。
前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂、あるいは、熱硬化性樹脂が好適である点、紫外線硬化性樹脂であればウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂やシリコーンアクリレート系樹脂が好適である点も第一実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法と同じである。
基材が、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明なものであることが好ましい点においても第一実施形態と共通している。
【0055】
本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、前記低分子量物質(非相溶性物質)が、前記ポリマー溶液に含有される点を第一実施形態との主たる相違点としている。
【0056】
(非相溶性物質)
この非相溶性物質は、特にその物質については限定されるものではないが、前記ポリマー成分に対して非相溶性を示すもので、前記ポリマー成分の硬化後に加熱することで蒸発除去可能な低分子量物質であることが表面に凹凸を有する硬化被膜を簡便に形成させる上で重要である。
【0057】
ただし、上記のように、前記有機溶媒を蒸発除去させる工程(工程ハ)における雰囲気条件で蒸発されやすい低分子量物質を選択すると当該低分子量物質を残存させつつ溶媒を蒸発除去するために高い精度で雰囲気条件を調整することが必要となる。
一方で、高沸点なものを用いると、当該低分子量物質を蒸発除去させる工程(工程ホ)において、この低分子量物質を蒸発除去させるために多大な熱エネルギーを必要とさせるばかりでなく、基材や硬化被膜に熱劣化を与えるおそれを有する。
このような観点から、前記ポリマー成分に対する非相溶性物質として用いられる低分子量物質は、50℃以上350℃以下の沸点を有する有機化合物が好ましく、100℃以上320℃以下の沸点を有する物質であることがさらに好ましい。
さらには、その融点が23℃未満の有機化合物であることが好ましく、20℃未満の融点を有することがより好ましい。
【0058】
また、低分子量物質としては、分子量が300以下であることが好ましく、250未満であることがより好ましく、200未満であることが特に好ましい。
ただし、あまり分子量が小さい物質では、有機溶媒の蒸発時にともに蒸発されてしまう可能性が高くなることから、この低分子量物質としては、分子量が18以上であることが好ましい。
【0059】
このような低分子量物質の具体的な物質名としては、例えば、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのエステル;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトンなどのケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,3−オクチレングリコールなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテートなどの多価アルコールエステル誘導体などが挙げられる。
【0060】
これらは、単独、又は2種類以上混合した混合物であっても良く、用いる物質の種類、組み合わせ方、組み合わせた場合の量の割合などを調整することで前記ポリマー成分との相分離状態、すなわち、凹凸形状の調整が可能となる。
この低分子量物質としては、水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。
この水酸基を有する有機化合物は、一般的に、ポリマー成分との相溶性が低く、また、ポリマー溶液を塗布する前記工程(ロ)や溶媒の蒸発を行う前記工程(ハ)で蒸発しない程度の沸点を有するものが得られやすい点において低分子量物質として好適である。
【0061】
なお、非相溶性物質として、この低分子量物質のような加熱による蒸発除去可能な物質を採用することで、加熱装置などの比較的簡便な装置によって低分子量物質を除去可能となるため、アンチニュートンリングフィルムを安価に作製する上で非相溶性物質として低分子量物質を使用することが重要な要件となるものである。
【0062】
また、第一実施形態においては、塗膜を構成しているポリマー溶液が塗膜表面に結露した水滴をはじく作用を利用して凹凸形状を形成させていたのに対し、この第二の実施形態においては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質との相分離現象を利用するものである。
すなわち、ポリマー溶液の状態においては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが溶媒によって均一分散状態となっているものが塗膜となって溶媒が蒸発除去された際に、均一な状態を保てなくなって互いに相分離を引き起こし、この低分子量物質の存在部分が第一実施形態における水滴箇所と同じように凹部となって凹凸形状が形成されるものである。
したがって、本実施形態においては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質とのポリマー溶液における配合割合などで形成させる凹凸の状態を調整することができる。
また、前記ポリマー成分とどの程度非相溶な低分子量物質を用いるかによっても凹凸の状態を調整することができる。
【0063】
なお、前記ポリマー成分と、この低分子量物質とが非相溶であることは、例えば、次のようにして確認することができる。
(非相溶の判断方法の一例)
50mlスクリュー管にポリマー成分10gと低分子量物質10mlを入れる。
そして、スクリュー管の蓋を閉めて十分に振とうし、1分以上静置した時に目視レベルで不均一なものは非相溶であると判断することが出来る。
また、低分子量物質が樹脂に相溶してしまうと、相分離による凹凸形状が形成されないため、溶媒除去後、及び/又は、硬化後の被膜(ポリマー被膜、及び/又は、硬化被膜)の表面の形状を観察することでも非相溶かどうかの判断は可能である。
【0064】
(有機溶媒)
第一実施形態においては、前記ポリマー成分が可溶なものであれば、ポリマー溶液に用いる有機溶媒は、その他に制限が加えられるものではないが、この第二実施形態における有機溶媒は、前記ポリマー成分とともに前記低分子量物質が可溶なものであることが重要である。
すなわち、均質なポリマー溶液を形成し、良好なる塗膜を基材上に形成させる上において前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが可溶であることが重要である。
また、前記低分子量物質を残存させて相分離による凹凸形状をポリマー被膜に形成させる上において、前記低分子量物質よりも揮発性が高い(蒸発させやすい)ことがこの第二実施形態では有機溶媒に求められる。
なお、この溶媒としては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質との両方に対して良溶媒となる単独物質からなるもの、複数の良溶媒が混合されてなる混合溶媒、あるいは、ポリマー成分と低分子量物質の一方又は両方に対して難溶又は不溶となる貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが用いられ得る。
【0065】
この有機溶媒の具体的な物質としては、用いるポリマー成分や低分子量物質の種類や作製するポリマー溶液の濃度などを勘案して第一実施形態において例示したものの中から適宜選択して採用することができる。
また、この有機溶媒は、ポリマー溶液の粘度を基材に塗布するのに適した粘度に調整する観点からも選択可能である。
【0066】
そして、この第二実施形態においても、上記のような相分離のプロセスによって塗膜(ポリマー被膜)に凹凸を形成させることから、有機溶媒がポリマー溶液から蒸発する速度などによって相分離の状態を変化させることができ、第一実施形態と同様に、有機溶媒の種類や、前記ポリマー溶液における含有量(ポリマー成分や低分子量成分との配合割合)を変化させるなどしてポリマー被膜の凹凸形状の調整を行うことができる。
【0067】
これらのポリマー溶液を構成する主たる成分において、前記低分子量物質の添加量が前記ポリマー成分などに対して多くなり過ぎると、ポリマー成分と低分子量物質とを均一に溶解させたポリマー溶液を作製するために必要となる溶媒の量が多くなり過ぎて、濃度の調整に制約が加わるおそれを有する。
そのため、ポリマー溶液に含有させる前記低分子量物質の含有量は、該ポリマー溶液に含有されるポリマー成分100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下とされることが好ましく、0.1重量部以上10重量部以下とされることがより好ましい。
【0068】
また、このポリマー溶液は、その粘度が高すぎると、ポリマー被膜にスジやムラが生じ易くなって均一に塗布することが難しくなる。
したがって、塗布作業(工程ロ)を容易に実施させ得る点において、前記ポリマー溶液は、その粘度が5Pa・s以下となるように調整されることが好ましく、3Pa・s以下となるように調整されることがより好ましい。
【0069】
また、前記ポリマー溶液における前記溶媒の含有量が少なく、ポリマー溶液の濃度が高くなり過ぎると、互いに混和性の低いポリマー成分と低分子量成分とを均一に溶解させることが困難になる。
したがって、ポリマー溶液は、その濃度が1重量%以上50重量%以下の範囲となるように前記溶媒にて調整されることが好ましく、5重量%以上35重量%以下となるように調整されることがより好ましい。
【0070】
次いで、この第二実施形態におけるアンチニュートンリングフィルムの製造方法における各工程について説明する。
なお、ポリマー溶液の作製(工程イ)、ならびに基材への塗布(工程ロ)に関しては、第一実施形態と同様に実施できるものであるため、その詳述は割愛する。
【0071】
(工程ハ:溶媒除去、相分離状態の形成)
この工程においては、ポリマー溶液が塗布され、表面に塗膜が形成された基材を、例えば、室温に近い雰囲気温度下に保持することによって前記塗膜から溶媒を蒸発(揮発)させる方法を採用することができる。
なお、有機溶媒を除去する方法として、要すれば、一般的な加熱装置を適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、フローティング式オーブン等が挙げられる。
この時の雰囲気温度が高すぎると前記低分子量物質を蒸発させてしまうおそれを有する一方で、雰囲気温度を低く設定し過ぎると溶媒の蒸発に長時間要することになる。
このことから、先に例示の有機溶媒と低分子量物質が用いられているような場合においては、通常、0℃以上80℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましく、10℃以上70℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことがより好ましい。
特に、15℃以上50℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましい。
【0072】
特に有機溶媒を蒸発除去させるにあたっては、塗膜の表面に風を当てることによって、乾燥後に得られるポリマー被膜の表面凹凸形状を変えることができる。
そして、有機溶媒を蒸発除去させることにより、ポリマー成分と低分子量物質とが相分離を起こして、有機溶媒が除去された後のポリマー被膜表面に凹凸形状が形成されることになる。
また、先にも述べたように、ポリマー成分に対する低分子量物質の割合を変えることでも最終的な被膜表面の凹凸形状を異ならせることができる。
特にポリマー被膜の凹部は、相分離した後の低分子量物質の存在位置に相当する箇所に形成され、その形状は、蒸発前の低分子量物質の形状が反映されるため、低分子量物質の添加量を多くすると凹部が大きくなる傾向がある。
したがって、この低分子量物質の量の調整によって所望の凹部を形成させることができる。
【0073】
(工程ニ:硬化)
次いで、相分離状態が形成されたままのポリマー被膜に対して、第一実施形態における「工程d」と同様にしてポリマー被膜を硬化させて表面に凹凸を有する硬化被膜を形成させることができる。
なお、ポリマー被膜の表面に形成されている凹凸形状をより忠実に硬化被膜に反映させるためにはポリマー被膜のすばやい硬化を行うことが可能な紫外線硬化性樹脂が前記ポリマー成分として好適である点においては、第一の実施形態と同じである。
また、熱硬化性樹脂を用いる場合において、溶媒の蒸発除去(工程ハ)と、この硬化の工程とを一連の工程として実施可能である点も第一の実施形態と同じである。
【0074】
(工程ホ:低分子量物質の除去)
硬化被膜からの低分子量物質の除去は、低分子量物質が短時間で蒸発可能な温度で加熱実施することが好ましい。
なお、その際の温度は、低分子量物質の沸点以上とする必要はない。
例えば、沸点100℃の水も室温で蒸発させることが可能であり、沸点197℃のエチレングリコールも60℃程度の温度で蒸発する。
このエチレングリコールが低分子量物質として用いられている場合に、速やかな蒸発除去を目的とするのであれば、加熱温度を80℃以上とすることが好ましい。
また、沸点290℃のグリセリンが低分子量物質として用いられている場合であれば、80℃以上の加熱温度とすることが好ましく、速やかな蒸発を目的とする場合には、加熱温度を100℃以上とすることが望ましい。
ただし、基材の耐熱性に鑑みて、適当な温度を設定することが重要である。
例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが基材として用いられているような場合であれば、加熱収縮によるシワの発生を防止し得るように、140℃以下、好ましくは130℃以下の加熱温度とすることが望ましい。
この加熱による低分子量物質の蒸発除去方法としては、一般的な加熱装置が適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機フローティング式オーブン等が挙げられる。
【0075】
以上のような工程を実施することで、例えば、相分離を生じている際の低分子量物質の大きさが表面の凹部の状態に反映された硬化被膜をアンチニュートンリングフィルムに形成させることができる。
通常、低分子量物質は、ポリマー被膜の表面に種々の大きさで分散されることから、大小広い範囲にわたる凹凸が形成可能であり、上記のような工程を実施することで、小さいものでは直径約0.05μm、大きいものでは直径約80μmの大きさの凹凸をアンチニュートンリングフィルムの表面に形成させうる。
【0076】
なお、この後、前記第一の実施形態のごとく、透明導電膜を形成させる工程を実施しても良い。
さらには、第一実施形態における結露による凹凸形成を、この低分子量物質を含有させたポリマー溶液を利用してアンチニュートンリングフィルムを作製する際に取り入れることもできる。
すなわち、結露によって塗膜表面に付着した水滴と相分離した低分子量物質との両方によってポリマー被膜の表面に凹凸形状を形成させることも出来る。
【0077】
前記第一実施形態においては、塗膜から有機溶媒を除去させる工程において、有機溶媒が盛んに蒸発する工程の前段側において凹凸形状を発生させやすい一方で前記第一実施形態においては、有機溶媒の除去が進んで塗膜中におけるポリマー成分や低分子量物質の濃度が高くなった時点で凹凸形状を発生させやすい。
したがって、このような両者の特徴を活かしてポリマー被膜に凹凸形状を形成させることができる点において、両プロセス併用して表面形状をより幅広く調整させることが、所望のアンチニュートンリングフィルムを製造容易にさせる上で好ましい態様であるといえる。
なお、上記第二実施形態や、この第二実施形態にさらに第一実施形態の要素を取り入れた水滴と低分子量物質との両方で凹凸形状を形成させる態様においても作製するアンチニュートンリングフィルムとしては第一実施形態において述べたような表面粗さ、ヘイズ、光透過性を有することが好適であり、また、このアンチニュートンリングフィルムがタッチパネルや偏光板などに好適に用いられるのも第一実施形態のアンチニュートンリングフィルムと同じである。
【0078】
硬化されたポリマーによってシート状の基材の少なくとも片面に、表面に凹凸形状を有する被膜(硬化被膜)が形成されたアンチニュートンリングフィルムは、上記のような製造方法が採用されることによってその品質が安定されるばかりでなく、簡便に製造可能であるために、製造コスト低減を図り得る。
また、凹凸形状の調整が容易であるため、アンチニュートンリング性の調整も容易に実施することができ、本発明のアンチニュートンリングフィルムは、上記のように製造されることで種々のタッチパネルや光学部材に対してきめ細かく対応することができるものである。
【0079】
したがって、本発明のタッチパネルや光学部材は、アンチニュートンリング性に優れ、その画像表示部などの視認性に優れたものとなる。
なお、タッチパネルや光学部材におけるアンチニュートンリングフィルム以外の構成部材は、従来公知のものが利用されうる。
【0080】
なお、本発明は、上記に例示した態様以外にも種々の改良を加えることができ、例えば、上記に例示の材料以外を採用することや、上記に例示の操作以外の操作を行うことも可能である。
【実施例】
【0081】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
まず、各特性に関する測定方法について説明する。
(1)全光線透過率の測定方法
全光線透過率は、JIS K 7361に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(2)ヘイズの測定方法
ヘイズは、JIS K 7136に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(3)表面粗さの測定方法
算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)を、JIS B0601(2001)に準拠して「日本ビーコ(株)製、機種名:高輝度非接触3次元表面形状粗さ計 Wyko NT9100」を用いて測定した。
測定は、10倍の倍率で行った。
(4)共焦点レーザー顕微鏡画像の測定方法
光学顕微鏡画像を、「オリンパス(株)製、機種名:走査型レーザー顕微鏡LEXT OLS3000」を用いて測定した。
測定は、100倍の倍率で行った。
画像のサイズは2560μm×1920μmである。
3D画像の高さスケールは2倍に伸張して表示している。
(5)アンチニュートンリング性評価方法
平坦な場所に硬化被膜を上にしてフィルムを置き、該フィルム上に100μm厚さの透明PETフィルムを被せ、さらに、硬化被膜と接していない側の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上をペン先で軽く押圧し、斜め45°程度の角度から目視で観察し、ニュートンリングが目立たなかった、もしくは、発生しなかったものを「○」、ニュートンリングが目立ったものを「×」と判定した。
(6)ギラツキ性評価方法
硬化被膜を観測者側に向けてフィルムを設置し、フィルムを通して蛍光灯を観測し、ギラツキのなかったものを「◎」、ほとんどギラツキのなかったものを「○」、多少ギラツキのあったものを「△」、ギラツキのあったものを「×」と評価した。
【0083】
(使用材料:実施例または比較例で使用した材料)
(ポリマー成分)
・アクリル系紫外線硬化性樹脂(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート))(30℃における粘度は2.5Pa・s)(以下、「DPHA」ともいう)
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−17000B)(30℃における粘度は31Pa・s)(以下、「1700」ともいう)
・エポキシアクリレート系紫外線硬化性樹脂(昭和高分子(株)製、商品名:リポキシ VR−77)(25℃における粘度は約1000Pa・s、カタログに記載)(以下、「VR−77」ともいう)
・シリコーンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:AY 42−150)(固形分濃度36%の溶液:溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルが50−60%、(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタンが1−10%、メタノールが1%未満含有されているとMSDSに記載)(粘度は7mm2/s、MSDSに記載)(以下、「AY42−150」ともいう)
(有機溶媒)
・酢酸エチル(太陽化学(株)製、業務用)
・酢酸n−ブチル(太陽化学(株)製、業務用)
・エタノール(キシダ化学(株)製、特級)
・イソプロパノール((株)トクヤマ製、業務用)
・メチルエチルケトン(キシダ化学(株)製、特級)
(低分子量物質)
・エチレングリコール(キシダ化学(株)製、1級)
・グリセリン(和研薬(株)製、特級)
・エチレングリコールジアセテート(和研薬(株)製、1級)
(光重合開始剤)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:イルガキュア184)
【0084】
(実施例1)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」を100部(「重量部(質量部)」、以下、特段のことわりがない限りにおいて「部」とは「重量部(質量部)」を表している。)、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、有機溶媒として酢酸エチルを90部とエタノールを239部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均質な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図1、2に示す。
【0085】
(実施例2)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」に代えてウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を用いた以外は、実施例1と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図3、4に示す。
【0086】
(実施例3)
有機溶媒に「酢酸エチル(160部)とイソプロパノール(170部)との混合溶媒」を用いた以外は、実施例2と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図5、6に示す。
【0087】
(実施例4)
有機溶媒に「酢酸エチル(165部)とエタノール(165部)の混合溶媒」を用いた以外は、実施例2と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図7、8に示す。
【0088】
(実施例5)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを1部、有機溶媒として酢酸エチルを90部とエタノールを238部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図9、10に示す。
【0089】
(実施例6)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」に代えてウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を用いた以外は、実施例5と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図11、12に示す。
【0090】
(実施例7)
低分子量物質に「グリセリン(2部)」、有機溶媒に「酢酸エチル(90部)とエタノール(237部)との混合溶媒」を用いた以外は、実施例6と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図13、14に示す。
【0091】
(実施例8)
有機溶媒に「酢酸エチル(356部)とエタノール(117部)との混合溶媒」を用いて、固形分濃度「18%」のポリマー溶液を調整して、バーコーター「10番手」を用いた以外は、実施例6と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図15、16に示す。
【0092】
(実施例9)
低分子量物質に「エチレングリコール(1部)」を用いた以外は、実施例6と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図17、18に示す。
【0093】
(比較例1)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、有機溶媒として酢酸n−ブチルを329部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られた溶液は無色透明の均質な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露は確認されなかった)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、フィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図19、20に示す。
【0094】
(比較例2)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」に代えてウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を用いた以外は、比較例1と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図21、22に示す。
【0095】
(比較例3)
有機溶媒に「酢酸エチル(275部)とエタノール(54部)との混合溶媒」を用いた以外は、比較例2と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図23、24に示す。
【0096】
(比較例4)
有機溶媒に「酢酸エチル(239部)とイソプロパノール(90部)との混合溶媒」を用いた以外は、比較例2と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図25、26に示す。
【0097】
(比較例5)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを1部、有機溶媒として酢酸n−ブチルを324部とエタノールを4部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均質な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露は確認されなかった)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、フィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図27、28に示す。
【0098】
(比較例6)
低分子量物質に「エチレングリコールジアセテート(1部)」を用いた以外は、比較例5と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図29、30に示す。
【0099】
(比較例7)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質「グリセリン」を1部混合して固形分濃度が99%となる溶液を調整した。
得られた溶液は有機溶媒を添加していないので、塗布した溶液は目視で確認したところ2層に分かれていた。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約8μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露は確認されなかった)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、フィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図31、32に示す。
【0100】
(実施例10)
エポキシアクリレート系紫外線硬化性樹脂「VR−77」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを4部、有機溶媒として酢酸エチルを353部とエタノールを116部混合して固形分濃度が18%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図33、34に示す。
【0101】
(実施例11)
シリコーンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「AY42−150」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを3部、有機溶媒として、メチルエチルケトンを75部とエタノールを60部混合して固形分濃度が25%となるポリマー溶液を調整した。なお、有機溶媒として、プロピレングリコールメチルエーテルを156部と(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタンを12部とメタノールを2部が含まれている(原液中にプロピレングリコールメチルエーテルが56%、(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタンが7%、メタノールが1%含まれているとして計算した)。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図35、36に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
上記のことからも、本発明によれば、優れたアンチニュートンリング性を有するアンチニュートンリングフィルムが得られることがわかる。
しかも、上記に示したように、簡便な方法でアンチニュートンリングフィルムが得られることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、視認性に優れた透明性タッチパネル及びそれに用いる透明導電膜を備えた透明導電性積層体などに好適に用いられるアンチニュートンリングフィルムの製造方法や、アンチニュートンリングフィルム、タッチパネル、及び、光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の画面に表示されたキーに触れることで入力を行うタッチパネル式の入力装置が広く用いられている。
このような入力装置に用いられるタッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などが知られている。
このうち、抵抗膜方式はその構造が単純であるため、コストパフォーマンスに優れており、例えば、銀行の現金自動受払機(ATM)や交通機関の切符販売機等の表示板用として近年急速に普及している。
【0003】
この抵抗膜方式のタッチパネルは、一般的に透明導電膜を有する透明導電性積層体と透明導電膜付ガラス板とがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性積層体に電流を流して透明導電膜付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。
すなわち、指やペン等によって操作画面を押圧する操作を介して透明導電性積層体を透明導電膜付ガラスに接触させることによって、その接触部分が通電されて押圧位置が検出されように構成されている。
【0004】
ところで、タッチパネルには、指またはペン等でタッチパネルを押圧する際に、指またはペンの周辺に光の干渉による虹模様、いわゆるニュートンリングが発生し、ディスプレイの視認性が低下するといった問題がある。
このような問題に対しては、スペーサーを厚くしたり、多くの箇所にスペーサーを設けたりする対策が提案されている。しかし、この方法ではニュートンリングの発生を抑制することができたとしてもスペーサー自体が視認され易くなる結果、ディスプレイの鮮明性が損なわれるという弊害が生じることになる。
【0005】
このニュートンリングの問題に対しては、例えば、下記特許文献1には、その解決方法として、平均一次微粒子径が0.5〜5μm程度の無機系または有機系微粒子と平均一次微粒子径が100nm以下の金属酸化物または金属フッ化物超微粒子を硬化樹脂層に分散させた透明導電性積層体が開示されている。
【0006】
しかし、この特許文献1の方法で形成された硬化樹脂層は、微粒子によって表面に凹凸形状を形成するため、例えば、硬化樹脂中で前記微粒子の分散不良により、所望のアンチニュートンリング性が発現しなかったり、また、透明性が低下したり、外観不良の問題が生じることがある。
また、無機微粒子などを用いているため、押圧による微粒子の脱落や、透明導電膜を傷つけたりしやすく耐久性が劣るという問題がある。
【0007】
前記ニュートンリングの問題に対する別の解決方法として、例えば、下記特許文献2には、凹凸を有する型に光重合性組成物を接触させ、活性エネルギー線の照射により光重合成組成物を硬化させて凹凸を形成する転写方式も提案されている。
【0008】
しかし、この特許文献2に記載されている方法は、凹凸を有する型に硬化させた樹脂が付着してしまいやすく、型の形状を写し取ることができずに所望のアンチニュートンリング性が発現しなかったり、作業性が煩雑で量産に適さないものとなったりするおそれを有する。
また、凹凸を有する型自身の製造コストもかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再表2005−052956号公報
【特許文献2】特開2008−155387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来のアンチニュートンリングフィルムの製造方法においては、簡便なる方法で表面の凹凸を制御する方法が見出されておらず、アンチニュートンリング性の調整が困難な状況となっている。
そのため、このようなアンチニュートンリングフィルムを利用するタッチパネルや光学部材に対して安定したアンチニュートンリング性を発揮させることが困難となっている。
本発明は、このような問題に鑑み、安定したアンチニュートンリング性を有するアンチニュートンリングフィルムの簡便な製造方法ならびに製造容易なアンチニュートンリングフィルムを提供し、ひいてはタッチパネルや光学部材の品質の安定化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのアンチニュートンリングフィルムの製造方法にかかる本発明は、ポリマー成分と、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒とを含有するポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材上に形成させ、該ポリマー被膜を硬化させることにより表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製することを特徴としている。
【0012】
本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法においては、前記有機溶媒を蒸発させる過程において前記塗膜の表面温度を雰囲気温度よりも低温にさせて該塗膜表面に結露を生じさせ、該結露によって生じた液滴で前記塗膜表面に凹部を形成させて前記ポリマー被膜を形成させることが好ましい。
【0013】
また、本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法においては、前記ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性成分を含み、該非相溶性成分が加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記有機溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性が高く、しかも、前記低分子量物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な有機溶媒であるポリマー溶液を用いて前記塗膜を形成し、前記有機溶媒を蒸発させることによって前記ポリマー成分と前記低分子量物質とを相分離させて前記ポリマー被膜に表面の凹凸を形成させ、さらに、前記ポリマー被膜の少なくとも一部を硬化させた後に前記低分子量物質を加熱して前記ポリマー被膜から蒸発除去させることが好ましい。
【0014】
前記ポリマー成分が紫外線硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施するか、又は、前記ポリマー成分が熱硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜の加熱によって実施するかのいずれかとすることが好ましい。
なお、前記紫外線硬化性樹脂としてはウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂やシリコーンアクリレート系樹脂が好適である。
【0015】
また、前記ポリマー溶液には、アルコール系溶媒が含有されていることが好ましく、前記低分子量物質を含有させる場合には、当該低分子量物質が、60以上300以下の分子量であり、100℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物であることが好ましい。
なお、前記低分子量物質は、水酸基を有する有機化合物であることがさらに好ましい。
【0016】
また、上記課題を解決するためのアンチニュートンリングフィルムに係る本発明は、硬化されたポリマーによって、シート状の基材の少なくとも片面に、表面に凹凸形状を有する被膜が形成されているアンチニュートンリングフィルムであって、上記のような製造方法によって作製されてなり、前記被膜表面の算術平均粗さ(Ra:JIS B0601−2001)が0.025μm以上0.250μm以下であり、且つ、最大高さ粗さ(Rz:JIS B0601−2001)が0.100μm以上2.000μm以下であることを特徴としている。
【0017】
このアンチニュートンリングフィルムは、ヘイズ値が0.1%以上8%以下であり、且つ全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0018】
なお、前記基材は、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明な基材であることが好ましい。
【0019】
また、本発明のアンチニュートンリングフィルムとしては、前記硬化被膜の表面に、さらに、透明導電膜が積層されて備えられているものが好ましく、該透明導電膜が酸化インジウムスズ(ITO)膜であることが好ましい。
【0020】
そして、本発明のタッチパネルは、上記のようなアンチニュートンリングフィルムで操作画面が被覆されていることを特徴とし、本発明の光学部材は、上記のようなアンチニュートンリングフィルムが用いられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させた後に該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて除去する過程で表面に凹凸を形成させ、それによって表面に凹凸を有するポリマー被膜を形成させるものであり、例えば、塗膜表面に結露を生じさせて凹凸を形成させたり、ポリマー溶液にポリマー成分と非相溶な物質を含有させて相分離によって凹凸を形成させたりするなどして凹凸を有するポリマー被膜を形成させるものである。
すなわち、ポリマー溶液の塗布・乾燥という簡便なるプロセスによって表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製するものである。
しかも、温度条件などによって結露の生じ方をコントロールしたり、非相溶な物質の種類や量などによって相分離の状態をコントロールしたりすることができ、凹凸形状の調整が容易に実施可能となる。
したがって、作製するアンチニュートンリングフィルムのアンチニュートンリング性の調整も容易で、アンチニュートンリングフィルムの品質の安定化を容易に図り得る。
また、このようなアンチニュートンリングフィルムが用いられることによってタッチパネルや光学部材もその品質安定性の向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図2】実施例1のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図3】実施例2のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図4】実施例2のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図5】実施例3のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図6】実施例3のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図7】実施例4のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図8】実施例4のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図9】実施例5のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図10】実施例5のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図11】実施例6のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図12】実施例6のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図13】実施例7のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図14】実施例7のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図15】実施例8のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図16】実施例8のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図17】実施例9のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図18】実施例9のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図19】比較例1のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図20】比較例1のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図21】比較例2のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図22】比較例2のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図23】比較例3のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図24】比較例3のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図25】比較例4のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図26】比較例4のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図27】比較例5のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図28】比較例5のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図29】比較例6のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図30】比較例6のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図31】比較例7のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図32】比較例7のフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図33】実施例10のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図34】実施例10のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【図35】実施例11のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡2D画像である。
【図36】実施例11のアンチニュートンリングフィルムの共焦点レーザー顕微鏡3D画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法の第一の実施の形態について説明する。
本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、次のような(a)〜(e)の工程を実施してアンチニュートンリングフィルムを作製するものである。
・工程(a) ポリマー成分として硬化性を有するポリマーなどが含まれており、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒がさらに含まれているポリマー溶液を作製する工程。
・工程(b) ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも一方の面に塗布して前記基材上に塗膜を形成する工程。
・工程(c) 塗布したポリマー溶液に含まれている有機溶媒を蒸発させて、この時の蒸発熱によって塗膜表面を雰囲気温度よりも低下させ、空気中の水蒸気などを塗膜表面に結露させ、該結露した液滴で前記塗膜表面に凹部を形成させることによって前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材表面に形成させる工程。
・工程(d) ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分に硬化反応を発生させてポリマー被膜を硬化させ、表面に凹凸形状を有する硬化被膜を形成させる工程。
・工程(e) 該硬化被膜の上に透明導電膜を積層させる工程。
【0024】
まず、本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法に用いられる各材料について説明する。
【0025】
(ポリマー成分)
このポリマー成分は、前記ポリマー溶液によって塗膜が形成された後、該塗膜から当該ポリマー成分の溶媒となっている前記有機溶媒が除去された際に被膜(ポリマー被膜)を形成させるためのものであり硬化性を有しているポリマー又はオリゴマー又はモノマーを少なくとも1種によって構成されるものである。
該ポリマー成分は、例えば、硬化性樹脂単独又は複数種類の樹脂やゴムによって構成させることができ、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などが好適な構成材料として挙げられる。
また、該ポリマー成分は、有機溶媒を蒸発させて除去する過程(工程c)における塗膜表面に形成された凹凸形状を、有機溶媒除去後のポリマー被膜が硬化(工程d)されるまで維持可能であることが好ましく、常温(例えば、23℃)において自然流動を示すことがない固形状又は半固体状(ゲル状やグリース状)であることが好ましい。
【0026】
このポリマー成分に好適に用いられる前記紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、アミド系、シリコーン系樹脂等の各種のものが挙げられる。
なお、紫外線硬化性樹脂は、ポリマーの状態のみでポリマー成分を構成させる必要性はなく、紫外線硬化性のモノマーやオリゴマーの状態でポリマー成分を構成させても良い。
なかでも、紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂やシリコーンアクリレート系樹脂が好適である。
このウレタンアクリレート系樹脂は、高硬度であるために耐擦傷性に優れている点においてポリマー成分として好適である。
一方でエポキシアクリレート系樹脂は粘度が高いためにレベリングしにくく形状を保持しやすい点において好適である。
さらに、シリコーンアクリレート系樹脂は極性が低いため水や低分子量物質と比較的非相溶である点において好適である。
【0027】
なお、前記ポリマー成分を構成する樹脂として、紫外線硬化性樹脂が採用される場合には、さらに、光重合開始剤を前記ポリマー溶液に含有させておくことが好ましい。
【0028】
(光重合開始剤)
この光重合開始剤としては、用いる紫外線硬化性樹脂にもよるが、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、通常、0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは0.5重量部以上5重量部以下の割合で前記ポリマー溶液に含有させうる。
【0029】
また、前記熱硬化性樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系、メラミン系、尿素系、シリコーン系、フェノール系樹脂等の各種のものが挙げられる。
この熱硬化性樹脂についても、モノマーやオリゴマーの状態でポリマー溶液に含有されていても良い。
これらの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂は、数多くの種類のものが市販されており、用いる樹脂種や組み合わせのバリュエーションを豊富に取り揃えることができ、アンチニュートンリングフィルムの表面の凹凸形状を調整することが容易である点において優れている。
【0030】
これらの樹脂などからなるポリマー成分としては、塗膜に形成された凹凸形状を、該塗膜を乾燥した後、硬化被膜を形成させるまで維持させる観点から、30℃における粘度が、0.1Pa・s以上1000000Pa・s以下であることが好ましく、0.5Pa・s以上100000Pa・s以下であることがさらに好ましい。
なお、アンチニュートンリングフィルムは、通常、透明性が要求されることから、このポリマー成分も透明性の高いポリマーで構成されることが好ましい。
【0031】
(有機溶媒)
前記ポリマー成分とともに前記ポリマー溶液を構成する前記有機溶媒としては、前記ポリマー成分が可溶であることが重要である。
なお、この有機溶媒としては、前記ポリマー成分に対して良溶媒となるものであれば、単独物質からなるものであっても複合物質であってもよく、例えば、前記ポリマー成分に対して良溶媒となる単独物質や、複数の良溶媒が混合されてなる混合溶媒、あるいは、ポリマー成分に対して難溶又は不溶となる貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが用いられ得る。
【0032】
この有機溶媒としては、ポリマー溶液を塗工(工程b)した後、塗膜から溶媒を蒸発させて除去する過程(工程c)において前記塗膜の表面を雰囲気温度以下に低下させて結露を発生させるためには、蒸発熱が大きく蒸発速度の速い有機溶媒が好ましい。
例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
中でもアルコール系溶媒は一般に安価であるとともに蒸発熱も比較的大きく、塗膜の表面温度を低下させる作用に優れていることから前記ポリマー溶液に含有させる有機溶媒として好適なものであるといえる。
【0033】
また、前記ポリマー溶液には、前記ポリマー成分や前記溶媒といった成分以外に、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、耐候剤などといったその他の添加剤を適宜含有させることができる。
【0034】
なお、このポリマー溶液は、その粘度が高すぎると、ポリマー被膜にスジやムラが生じ易くなって均一に塗布することが難しくなる。
したがって、塗布作業(工程b)を容易に実施させ得る点において、前記ポリマー溶液は、その粘度が5Pa・s以下となるように調整されることが好ましく、3Pa・s以下となるように調整されることがより好ましい。
【0035】
(基材)
このポリマー溶液を塗布するシート状の基材としては、特に、その材質を限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン;エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等;イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーやこれらのポリマーのブレンド物等が、その形成材料として挙げられる。
また、光学部材に使用されることを考慮すると、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明性を有する透明基材を用いることが好ましい。
【0036】
次いで、本実施形態におけるアンチニュートンリングフィルムの製造方法における各工程について説明する。
(工程a:ポリマー溶液の作製)
前記ポリマー溶液の作製には、従来公知のポリマー溶液作製方法を採用することができ、例えば、前記ポリマー成分と、前記有機溶媒と、必要に応じて添加剤とを、ミキサーやホモジナイザーなどの混合攪拌手段によって分散混合させてポリマー溶液を作製する方法などが挙げられる。
【0037】
(工程b:基材への塗布)
前記基材に対する前記ポリマー溶液の塗布方法は、任意の塗布方法が利用できる。
小面積のアンチニュートンリングフィルムを作製する場合は、ベーカー式アプリケータやドクターブレード、バーコーターなどを使用して手塗りすることができる。
一方で、塗工機で連続して塗工する場合は、リバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、ダイレクトバーコーター、リバースバーコーター、ダイコーター等、目的とする塗布量に応じて適宜選択が可能である。
なお、塗工の方法を変えることによって、得られるポリマー被膜の形状を変えることができる。
【0038】
このときのポリマー溶液の塗布は、通常、ポリマー溶液を前記基材に塗布、乾燥した場合に、溶媒除去後のポリマー被膜の厚みが0.1μm以上50μm以下の範囲となるように塗布条件を設定して実施することが好ましい。
ただし、このポリマー溶液の塗布厚みを変更することで、有機溶媒の蒸発後のポリマー被膜の表面形状を調整することが可能であるため、ポリマー溶液の塗布厚みはこの範囲には限定されず、目的に応じて任意の塗布厚みとすることができ、この塗布厚みの調整によって凹凸形状を調整することが可能である。
【0039】
(工程c:溶媒除去、凹凸の形成)
先に例示した材料を含むポリマー溶液は、該ポリマー溶液を塗布した基材を室温に近い雰囲気温度下に保持して含有されている有機溶媒を蒸発(揮発)させて除去させることができる。
ただし、雰囲気温度が低すぎると有機溶媒が蒸発するのに時間を要し、塗膜からの熱の奪い方が緩慢になって塗膜表面に結露を生じないおそれが有る。
したがって、雰囲気温度は、通常、0℃以上80℃以下の範囲から選択されうる。
より好ましい温度範囲としては、10℃以上70℃以下であり、更に好ましい温度範囲は、15℃以上50℃以下である。
【0040】
このようにして塗布したポリマー溶液に含まれている溶媒を蒸発させることにより溶媒の蒸発熱によって塗膜表面を雰囲気の露点温度以下に低下させ空気中の水分による水滴を塗膜表面に結露させることができる。
そして塗膜を形成しているポリマー溶液が、水滴をはじく作用を利用して、該水滴の付着部分を凹入させる。
【0041】
なお、ポリマー溶液の溶媒をアルコール系溶媒のみで構成させた場合には、水とアルコールとが親和性が高いためにポリマー溶液が水滴をはじく効果が十分に発揮されず、水滴付着部に所望の凹入形状を形成させることが難しくなるおそれを有する。
また、塗膜と接する雰囲気ガスにおけるアルコール蒸気濃度が高くなって、例えば、結露した水滴にアルコールが溶解されてさらにポリマー溶液との親和性が高い水滴が形成されるおそれも有する。
このようなことから、例えば、水への溶解度が常温(23℃)において10g/100ml以下となるような比較的疎水性の高い、しかも、アルコール系溶媒との混和性に優れた酢酸エチル(水への溶解度、8.3g/100ml:at20℃)などの有機溶媒を、アルコールと併用することが好ましい。
なお、疎水性の高い溶媒とアルコール系溶媒との好適な混合割合は、質量比率で(疎水性溶媒:アルコール系溶媒)1:10〜10:1の割合であり、好ましくは1:4〜4:1の割合である。
また、例えば、水蒸気が飽和状態に近い、例えば、相対湿度80%Rh以上の気体でアルコール蒸気を積極的に置換させるようにして前述のような問題を回避させるようにしてもよい。
【0042】
なお、ポリマー溶液を塗布した後、溶媒を蒸発除去する過程で、目視で塗膜表面に白く濁ったような状態が確認できれば、結露していると判断することができる。
すなわち、結露が生じていない場合は、通常、溶媒を蒸発除去する過程において塗膜が透明であることから、このような透明な状態に比べて曇った状態となっていれば結露していると判断することができる。
【0043】
この工程においては、溶媒の除去が進行して塗膜の乾燥が進むにつれて単位時間あたりに蒸発する溶媒の量が減少して塗膜の表面温度が雰囲気温度に近づくことになる。
また、同時に、塗膜の粘度上昇が進行することになる。
やがて、結露した水滴は、塗膜の表面温度が露点を上回った時点で、表面にその残痕として凹部を残したまま消滅(蒸発)することになる。
したがって、雰囲気の相対湿度(露点)などを調整することによって、水滴の残存期間を調整することができ、ポリマー被膜の表面の凹凸形状を調整することができる。
【0044】
(工程d:硬化)
先の「工程c」において基材表面に形成させたポリマー被膜は、その表面状態を維持させて硬化させることが好ましい。
なお、ポリマー成分として含まれているポリマーやモノマーを硬化させてポリマー被膜の硬化を行うに際しては、表面に結露水による液滴を付着させたままであってもよく、完全に表面を乾燥させた後に硬化を行ってもよい。
【0045】
ポリマー被膜の表面の凹凸形状を、比較的、忠実に硬化被膜に反映させるためには、ポリマー溶液を基材に塗布し、有機溶媒を蒸発除去させた後に速やかにポリマーを硬化させることが好ましい。
そのため、ポリマー被膜のすばやい硬化を行うことが可能な紫外線硬化性樹脂が前記ポリマー成分として好適であるといえる。
すなわち、有機溶媒を蒸発除去させた後に紫外線を照射することによってポリマー被膜を形成している紫外線硬化性樹脂をすばやく硬化させることが好ましい。
なお、熱硬化性樹脂を用いる場合においては、溶媒の蒸発除去(工程c)と、この硬化の工程とを一連の工程として実施可能である。
すなわち、ポリマー溶液を基材に塗布し、塗膜表面に結露を生じさせ、ある程度の乾燥が進んだところで雰囲気温度を上昇させ塗膜(ポリマー被膜)を加熱することによって硬化被膜を形成させることもできる。
この場合には、水滴が蒸発して、ポリマー被膜の表面が熱硬化性樹脂の軟化によってレベリングされてしまう前に前記熱硬化性樹脂を硬化させることが好ましい。
すなわち、加熱によって、ポリマー被膜の軟化と、ポリマー成分の硬化反応の進行との競争が生じることになるが、この硬化反応を優先させる条件選択を行うことが好ましい。
そのことによって水滴によって形成された凹凸形状をより忠実に硬化被膜に反映させることができる。
【0046】
以上のような工程を実施することで、例えば、結露水の液滴の付着状態が表面の凹部の形成状態に反映された硬化被膜をアンチニュートンリングフィルムに備えさせることができる。
なお、通常、結露した水滴または、結露した水滴同士が結合した水滴よりも特別大きな凹部は形成されない。
ただし、結露する水滴は、有機溶媒を蒸発除去させる際の雰囲気の温・湿度条件や塗布するポリマー溶液の配合内容などによってさまざまな大きさで付着させることができるため、この硬化被膜に形成される凹部の大きさは、通常、小さいものでは直径約0.5μm、大きいものでは直径約500μm程度のものとなる。
【0047】
(工程e:透明導電膜の積層)
上記硬化被膜を形成させた後は、それをそのままの状態でアンチニュートンリングフィルムとして利用することも可能ではあるが、本実施形態においては、タッチパネルなどの操作画面を構成している透明導電膜付ガラス板の相手材として利用可能な状態にすべくこの「工程e」において透明導電膜を硬化被膜の上に積層させる。
【0048】
この透明導電膜を形成させるには、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)などをスパッタや真空蒸着などによって硬化被膜上に付着させるようにすればよい。
なかでも、酸化インジウムスズ(ITO)は、透明性、導電性に優れ透明導電膜の形成材料として好適である。
なお、この透明導電膜の形成は、通常、硬化被膜の表面の凹凸形状に影響を与えず、透明導電膜の表面も硬化被膜の表面形状と略同じとなる。
【0049】
このようにして作製されるアンチニュートンリングフィルムは、アンチニュートンリング性の観点から、その表面(硬化被膜の凹凸=透明導電膜表面の凹凸)の算術平均粗さ(Ra:JIS B0601−2001)が0.025μm以上0.250μm以下であることが好ましく、最大高さ粗さ(Rz:JIS B0601−2001)が0.100μm以上2.000μm以下であることが好ましい。
【0050】
また、タッチパネルの操作画面の視認性などの観点からアンチニュートンリングフィルムは、そのヘイズ値が0.1%以上8%以下であることが好ましく、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0051】
このようなアンチニュートンリングフィルムは、簡便なる方法で表面の凹凸の調整が行われることから、そのアンチニュートンリング性や光透過性などの調整も容易に実施されうる。
なお、本実施形態に係るアンチニュートンリングフィルムは、タッチパネルのみならず偏光板などの光学部材を構成するのにも利用可能であり偏光板以外の光学部材に対しても利用可能なものである。
すなわち、本実施形態に係るアンチニュートンリングフィルムは、そのものを通して反対側のものが視認される透明な部材の構成部品として好適なものである。
【0052】
続いて、本発明のアンチニュートンリングフィルムの製造方法の第二の実施形態について説明する。
この第二実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、次のような(イ)〜(ホ)の工程を実施してアンチニュートンリングフィルムを作製するものである。
・工程(イ) ポリマー成分として硬化性を有するポリマーなどが含まれており、該ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性物質と、該非相溶性物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な有機溶媒とを含有し、しかも、前記非相溶性物質が、加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記有機溶媒が、前記低分子量物質よりも蒸発させることが容易な揮発性の高い有機溶媒であるポリマー溶液を作製する工程。
・工程(ロ) 前記ポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して基材上に塗膜を形成する工程。
・工程(ハ) 塗布したポリマー溶液に含まれている溶媒を蒸発除去させて前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが相分離して表面に凹凸形状が形成されたポリマー被膜を前記基材の表面に作製する工程。
・工程(ニ) ポリマー被膜を形成している前記ポリマー成分に硬化反応を発生させてポリマー被膜を硬化させ、硬化被膜を形成させる工程。
・工程(ホ) 前記低分子量物質を加熱して蒸発除去させる工程。
【0053】
まず、本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法に用いられる各材料について説明する。
【0054】
前記ポリマー溶液に用いられるポリマー成分、溶媒、その他添加剤、基材などについては、第一の実施形態と同じものを本実施形態においても採用可能である。
前記ポリマー成分として紫外線硬化性樹脂、あるいは、熱硬化性樹脂が好適である点、紫外線硬化性樹脂であればウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂やシリコーンアクリレート系樹脂が好適である点も第一実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法と同じである。
基材が、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明なものであることが好ましい点においても第一実施形態と共通している。
【0055】
本実施形態のアンチニュートンリングフィルムの製造方法は、前記低分子量物質(非相溶性物質)が、前記ポリマー溶液に含有される点を第一実施形態との主たる相違点としている。
【0056】
(非相溶性物質)
この非相溶性物質は、特にその物質については限定されるものではないが、前記ポリマー成分に対して非相溶性を示すもので、前記ポリマー成分の硬化後に加熱することで蒸発除去可能な低分子量物質であることが表面に凹凸を有する硬化被膜を簡便に形成させる上で重要である。
【0057】
ただし、上記のように、前記有機溶媒を蒸発除去させる工程(工程ハ)における雰囲気条件で蒸発されやすい低分子量物質を選択すると当該低分子量物質を残存させつつ溶媒を蒸発除去するために高い精度で雰囲気条件を調整することが必要となる。
一方で、高沸点なものを用いると、当該低分子量物質を蒸発除去させる工程(工程ホ)において、この低分子量物質を蒸発除去させるために多大な熱エネルギーを必要とさせるばかりでなく、基材や硬化被膜に熱劣化を与えるおそれを有する。
このような観点から、前記ポリマー成分に対する非相溶性物質として用いられる低分子量物質は、50℃以上350℃以下の沸点を有する有機化合物が好ましく、100℃以上320℃以下の沸点を有する物質であることがさらに好ましい。
さらには、その融点が23℃未満の有機化合物であることが好ましく、20℃未満の融点を有することがより好ましい。
【0058】
また、低分子量物質としては、分子量が300以下であることが好ましく、250未満であることがより好ましく、200未満であることが特に好ましい。
ただし、あまり分子量が小さい物質では、有機溶媒の蒸発時にともに蒸発されてしまう可能性が高くなることから、この低分子量物質としては、分子量が18以上であることが好ましい。
【0059】
このような低分子量物質の具体的な物質名としては、例えば、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのエステル;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトンなどのケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、1,3−オクチレングリコールなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテートなどの多価アルコールエステル誘導体などが挙げられる。
【0060】
これらは、単独、又は2種類以上混合した混合物であっても良く、用いる物質の種類、組み合わせ方、組み合わせた場合の量の割合などを調整することで前記ポリマー成分との相分離状態、すなわち、凹凸形状の調整が可能となる。
この低分子量物質としては、水酸基を有する有機化合物であることが好ましい。
この水酸基を有する有機化合物は、一般的に、ポリマー成分との相溶性が低く、また、ポリマー溶液を塗布する前記工程(ロ)や溶媒の蒸発を行う前記工程(ハ)で蒸発しない程度の沸点を有するものが得られやすい点において低分子量物質として好適である。
【0061】
なお、非相溶性物質として、この低分子量物質のような加熱による蒸発除去可能な物質を採用することで、加熱装置などの比較的簡便な装置によって低分子量物質を除去可能となるため、アンチニュートンリングフィルムを安価に作製する上で非相溶性物質として低分子量物質を使用することが重要な要件となるものである。
【0062】
また、第一実施形態においては、塗膜を構成しているポリマー溶液が塗膜表面に結露した水滴をはじく作用を利用して凹凸形状を形成させていたのに対し、この第二の実施形態においては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質との相分離現象を利用するものである。
すなわち、ポリマー溶液の状態においては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが溶媒によって均一分散状態となっているものが塗膜となって溶媒が蒸発除去された際に、均一な状態を保てなくなって互いに相分離を引き起こし、この低分子量物質の存在部分が第一実施形態における水滴箇所と同じように凹部となって凹凸形状が形成されるものである。
したがって、本実施形態においては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質とのポリマー溶液における配合割合などで形成させる凹凸の状態を調整することができる。
また、前記ポリマー成分とどの程度非相溶な低分子量物質を用いるかによっても凹凸の状態を調整することができる。
【0063】
なお、前記ポリマー成分と、この低分子量物質とが非相溶であることは、例えば、次のようにして確認することができる。
(非相溶の判断方法の一例)
50mlスクリュー管にポリマー成分10gと低分子量物質10mlを入れる。
そして、スクリュー管の蓋を閉めて十分に振とうし、1分以上静置した時に目視レベルで不均一なものは非相溶であると判断することが出来る。
また、低分子量物質が樹脂に相溶してしまうと、相分離による凹凸形状が形成されないため、溶媒除去後、及び/又は、硬化後の被膜(ポリマー被膜、及び/又は、硬化被膜)の表面の形状を観察することでも非相溶かどうかの判断は可能である。
【0064】
(有機溶媒)
第一実施形態においては、前記ポリマー成分が可溶なものであれば、ポリマー溶液に用いる有機溶媒は、その他に制限が加えられるものではないが、この第二実施形態における有機溶媒は、前記ポリマー成分とともに前記低分子量物質が可溶なものであることが重要である。
すなわち、均質なポリマー溶液を形成し、良好なる塗膜を基材上に形成させる上において前記ポリマー成分と前記低分子量物質とが可溶であることが重要である。
また、前記低分子量物質を残存させて相分離による凹凸形状をポリマー被膜に形成させる上において、前記低分子量物質よりも揮発性が高い(蒸発させやすい)ことがこの第二実施形態では有機溶媒に求められる。
なお、この溶媒としては、前記ポリマー成分と前記低分子量物質との両方に対して良溶媒となる単独物質からなるもの、複数の良溶媒が混合されてなる混合溶媒、あるいは、ポリマー成分と低分子量物質の一方又は両方に対して難溶又は不溶となる貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが用いられ得る。
【0065】
この有機溶媒の具体的な物質としては、用いるポリマー成分や低分子量物質の種類や作製するポリマー溶液の濃度などを勘案して第一実施形態において例示したものの中から適宜選択して採用することができる。
また、この有機溶媒は、ポリマー溶液の粘度を基材に塗布するのに適した粘度に調整する観点からも選択可能である。
【0066】
そして、この第二実施形態においても、上記のような相分離のプロセスによって塗膜(ポリマー被膜)に凹凸を形成させることから、有機溶媒がポリマー溶液から蒸発する速度などによって相分離の状態を変化させることができ、第一実施形態と同様に、有機溶媒の種類や、前記ポリマー溶液における含有量(ポリマー成分や低分子量成分との配合割合)を変化させるなどしてポリマー被膜の凹凸形状の調整を行うことができる。
【0067】
これらのポリマー溶液を構成する主たる成分において、前記低分子量物質の添加量が前記ポリマー成分などに対して多くなり過ぎると、ポリマー成分と低分子量物質とを均一に溶解させたポリマー溶液を作製するために必要となる溶媒の量が多くなり過ぎて、濃度の調整に制約が加わるおそれを有する。
そのため、ポリマー溶液に含有させる前記低分子量物質の含有量は、該ポリマー溶液に含有されるポリマー成分100重量部に対して0.1重量部以上20重量部以下とされることが好ましく、0.1重量部以上10重量部以下とされることがより好ましい。
【0068】
また、このポリマー溶液は、その粘度が高すぎると、ポリマー被膜にスジやムラが生じ易くなって均一に塗布することが難しくなる。
したがって、塗布作業(工程ロ)を容易に実施させ得る点において、前記ポリマー溶液は、その粘度が5Pa・s以下となるように調整されることが好ましく、3Pa・s以下となるように調整されることがより好ましい。
【0069】
また、前記ポリマー溶液における前記溶媒の含有量が少なく、ポリマー溶液の濃度が高くなり過ぎると、互いに混和性の低いポリマー成分と低分子量成分とを均一に溶解させることが困難になる。
したがって、ポリマー溶液は、その濃度が1重量%以上50重量%以下の範囲となるように前記溶媒にて調整されることが好ましく、5重量%以上35重量%以下となるように調整されることがより好ましい。
【0070】
次いで、この第二実施形態におけるアンチニュートンリングフィルムの製造方法における各工程について説明する。
なお、ポリマー溶液の作製(工程イ)、ならびに基材への塗布(工程ロ)に関しては、第一実施形態と同様に実施できるものであるため、その詳述は割愛する。
【0071】
(工程ハ:溶媒除去、相分離状態の形成)
この工程においては、ポリマー溶液が塗布され、表面に塗膜が形成された基材を、例えば、室温に近い雰囲気温度下に保持することによって前記塗膜から溶媒を蒸発(揮発)させる方法を採用することができる。
なお、有機溶媒を除去する方法として、要すれば、一般的な加熱装置を適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機、フローティング式オーブン等が挙げられる。
この時の雰囲気温度が高すぎると前記低分子量物質を蒸発させてしまうおそれを有する一方で、雰囲気温度を低く設定し過ぎると溶媒の蒸発に長時間要することになる。
このことから、先に例示の有機溶媒と低分子量物質が用いられているような場合においては、通常、0℃以上80℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましく、10℃以上70℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことがより好ましい。
特に、15℃以上50℃以下の温度条件を選択して溶媒の蒸発を行うことが好ましい。
【0072】
特に有機溶媒を蒸発除去させるにあたっては、塗膜の表面に風を当てることによって、乾燥後に得られるポリマー被膜の表面凹凸形状を変えることができる。
そして、有機溶媒を蒸発除去させることにより、ポリマー成分と低分子量物質とが相分離を起こして、有機溶媒が除去された後のポリマー被膜表面に凹凸形状が形成されることになる。
また、先にも述べたように、ポリマー成分に対する低分子量物質の割合を変えることでも最終的な被膜表面の凹凸形状を異ならせることができる。
特にポリマー被膜の凹部は、相分離した後の低分子量物質の存在位置に相当する箇所に形成され、その形状は、蒸発前の低分子量物質の形状が反映されるため、低分子量物質の添加量を多くすると凹部が大きくなる傾向がある。
したがって、この低分子量物質の量の調整によって所望の凹部を形成させることができる。
【0073】
(工程ニ:硬化)
次いで、相分離状態が形成されたままのポリマー被膜に対して、第一実施形態における「工程d」と同様にしてポリマー被膜を硬化させて表面に凹凸を有する硬化被膜を形成させることができる。
なお、ポリマー被膜の表面に形成されている凹凸形状をより忠実に硬化被膜に反映させるためにはポリマー被膜のすばやい硬化を行うことが可能な紫外線硬化性樹脂が前記ポリマー成分として好適である点においては、第一の実施形態と同じである。
また、熱硬化性樹脂を用いる場合において、溶媒の蒸発除去(工程ハ)と、この硬化の工程とを一連の工程として実施可能である点も第一の実施形態と同じである。
【0074】
(工程ホ:低分子量物質の除去)
硬化被膜からの低分子量物質の除去は、低分子量物質が短時間で蒸発可能な温度で加熱実施することが好ましい。
なお、その際の温度は、低分子量物質の沸点以上とする必要はない。
例えば、沸点100℃の水も室温で蒸発させることが可能であり、沸点197℃のエチレングリコールも60℃程度の温度で蒸発する。
このエチレングリコールが低分子量物質として用いられている場合に、速やかな蒸発除去を目的とするのであれば、加熱温度を80℃以上とすることが好ましい。
また、沸点290℃のグリセリンが低分子量物質として用いられている場合であれば、80℃以上の加熱温度とすることが好ましく、速やかな蒸発を目的とする場合には、加熱温度を100℃以上とすることが望ましい。
ただし、基材の耐熱性に鑑みて、適当な温度を設定することが重要である。
例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが基材として用いられているような場合であれば、加熱収縮によるシワの発生を防止し得るように、140℃以下、好ましくは130℃以下の加熱温度とすることが望ましい。
この加熱による低分子量物質の蒸発除去方法としては、一般的な加熱装置が適用でき、該加熱装置としては、例えば、熱対流式乾燥機、熱循環式乾燥機フローティング式オーブン等が挙げられる。
【0075】
以上のような工程を実施することで、例えば、相分離を生じている際の低分子量物質の大きさが表面の凹部の状態に反映された硬化被膜をアンチニュートンリングフィルムに形成させることができる。
通常、低分子量物質は、ポリマー被膜の表面に種々の大きさで分散されることから、大小広い範囲にわたる凹凸が形成可能であり、上記のような工程を実施することで、小さいものでは直径約0.05μm、大きいものでは直径約80μmの大きさの凹凸をアンチニュートンリングフィルムの表面に形成させうる。
【0076】
なお、この後、前記第一の実施形態のごとく、透明導電膜を形成させる工程を実施しても良い。
さらには、第一実施形態における結露による凹凸形成を、この低分子量物質を含有させたポリマー溶液を利用してアンチニュートンリングフィルムを作製する際に取り入れることもできる。
すなわち、結露によって塗膜表面に付着した水滴と相分離した低分子量物質との両方によってポリマー被膜の表面に凹凸形状を形成させることも出来る。
【0077】
前記第一実施形態においては、塗膜から有機溶媒を除去させる工程において、有機溶媒が盛んに蒸発する工程の前段側において凹凸形状を発生させやすい一方で前記第一実施形態においては、有機溶媒の除去が進んで塗膜中におけるポリマー成分や低分子量物質の濃度が高くなった時点で凹凸形状を発生させやすい。
したがって、このような両者の特徴を活かしてポリマー被膜に凹凸形状を形成させることができる点において、両プロセス併用して表面形状をより幅広く調整させることが、所望のアンチニュートンリングフィルムを製造容易にさせる上で好ましい態様であるといえる。
なお、上記第二実施形態や、この第二実施形態にさらに第一実施形態の要素を取り入れた水滴と低分子量物質との両方で凹凸形状を形成させる態様においても作製するアンチニュートンリングフィルムとしては第一実施形態において述べたような表面粗さ、ヘイズ、光透過性を有することが好適であり、また、このアンチニュートンリングフィルムがタッチパネルや偏光板などに好適に用いられるのも第一実施形態のアンチニュートンリングフィルムと同じである。
【0078】
硬化されたポリマーによってシート状の基材の少なくとも片面に、表面に凹凸形状を有する被膜(硬化被膜)が形成されたアンチニュートンリングフィルムは、上記のような製造方法が採用されることによってその品質が安定されるばかりでなく、簡便に製造可能であるために、製造コスト低減を図り得る。
また、凹凸形状の調整が容易であるため、アンチニュートンリング性の調整も容易に実施することができ、本発明のアンチニュートンリングフィルムは、上記のように製造されることで種々のタッチパネルや光学部材に対してきめ細かく対応することができるものである。
【0079】
したがって、本発明のタッチパネルや光学部材は、アンチニュートンリング性に優れ、その画像表示部などの視認性に優れたものとなる。
なお、タッチパネルや光学部材におけるアンチニュートンリングフィルム以外の構成部材は、従来公知のものが利用されうる。
【0080】
なお、本発明は、上記に例示した態様以外にも種々の改良を加えることができ、例えば、上記に例示の材料以外を採用することや、上記に例示の操作以外の操作を行うことも可能である。
【実施例】
【0081】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
まず、各特性に関する測定方法について説明する。
(1)全光線透過率の測定方法
全光線透過率は、JIS K 7361に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(2)ヘイズの測定方法
ヘイズは、JIS K 7136に準じて、「(株)村上色彩技術研究所製、機種名:ヘーズメーターHM−150」を用いて測定した。
測定は、硬化被膜の面が光源を向くようにして行った。
(3)表面粗さの測定方法
算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)を、JIS B0601(2001)に準拠して「日本ビーコ(株)製、機種名:高輝度非接触3次元表面形状粗さ計 Wyko NT9100」を用いて測定した。
測定は、10倍の倍率で行った。
(4)共焦点レーザー顕微鏡画像の測定方法
光学顕微鏡画像を、「オリンパス(株)製、機種名:走査型レーザー顕微鏡LEXT OLS3000」を用いて測定した。
測定は、100倍の倍率で行った。
画像のサイズは2560μm×1920μmである。
3D画像の高さスケールは2倍に伸張して表示している。
(5)アンチニュートンリング性評価方法
平坦な場所に硬化被膜を上にしてフィルムを置き、該フィルム上に100μm厚さの透明PETフィルムを被せ、さらに、硬化被膜と接していない側の透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上をペン先で軽く押圧し、斜め45°程度の角度から目視で観察し、ニュートンリングが目立たなかった、もしくは、発生しなかったものを「○」、ニュートンリングが目立ったものを「×」と判定した。
(6)ギラツキ性評価方法
硬化被膜を観測者側に向けてフィルムを設置し、フィルムを通して蛍光灯を観測し、ギラツキのなかったものを「◎」、ほとんどギラツキのなかったものを「○」、多少ギラツキのあったものを「△」、ギラツキのあったものを「×」と評価した。
【0083】
(使用材料:実施例または比較例で使用した材料)
(ポリマー成分)
・アクリル系紫外線硬化性樹脂(日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート))(30℃における粘度は2.5Pa・s)(以下、「DPHA」ともいう)
・ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名:紫光UV−17000B)(30℃における粘度は31Pa・s)(以下、「1700」ともいう)
・エポキシアクリレート系紫外線硬化性樹脂(昭和高分子(株)製、商品名:リポキシ VR−77)(25℃における粘度は約1000Pa・s、カタログに記載)(以下、「VR−77」ともいう)
・シリコーンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:AY 42−150)(固形分濃度36%の溶液:溶媒は、プロピレングリコールメチルエーテルが50−60%、(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタンが1−10%、メタノールが1%未満含有されているとMSDSに記載)(粘度は7mm2/s、MSDSに記載)(以下、「AY42−150」ともいう)
(有機溶媒)
・酢酸エチル(太陽化学(株)製、業務用)
・酢酸n−ブチル(太陽化学(株)製、業務用)
・エタノール(キシダ化学(株)製、特級)
・イソプロパノール((株)トクヤマ製、業務用)
・メチルエチルケトン(キシダ化学(株)製、特級)
(低分子量物質)
・エチレングリコール(キシダ化学(株)製、1級)
・グリセリン(和研薬(株)製、特級)
・エチレングリコールジアセテート(和研薬(株)製、1級)
(光重合開始剤)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、商品名:イルガキュア184)
【0084】
(実施例1)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」を100部(「重量部(質量部)」、以下、特段のことわりがない限りにおいて「部」とは「重量部(質量部)」を表している。)、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、有機溶媒として酢酸エチルを90部とエタノールを239部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均質な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図1、2に示す。
【0085】
(実施例2)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」に代えてウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を用いた以外は、実施例1と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図3、4に示す。
【0086】
(実施例3)
有機溶媒に「酢酸エチル(160部)とイソプロパノール(170部)との混合溶媒」を用いた以外は、実施例2と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図5、6に示す。
【0087】
(実施例4)
有機溶媒に「酢酸エチル(165部)とエタノール(165部)の混合溶媒」を用いた以外は、実施例2と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図7、8に示す。
【0088】
(実施例5)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを1部、有機溶媒として酢酸エチルを90部とエタノールを238部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図9、10に示す。
【0089】
(実施例6)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」に代えてウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を用いた以外は、実施例5と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図11、12に示す。
【0090】
(実施例7)
低分子量物質に「グリセリン(2部)」、有機溶媒に「酢酸エチル(90部)とエタノール(237部)との混合溶媒」を用いた以外は、実施例6と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図13、14に示す。
【0091】
(実施例8)
有機溶媒に「酢酸エチル(356部)とエタノール(117部)との混合溶媒」を用いて、固形分濃度「18%」のポリマー溶液を調整して、バーコーター「10番手」を用いた以外は、実施例6と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図15、16に示す。
【0092】
(実施例9)
低分子量物質に「エチレングリコール(1部)」を用いた以外は、実施例6と同じ方法でアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図17、18に示す。
【0093】
(比較例1)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、有機溶媒として酢酸n−ブチルを329部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られた溶液は無色透明の均質な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露は確認されなかった)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、フィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図19、20に示す。
【0094】
(比較例2)
アクリル系紫外線硬化性樹脂「DPHA」に代えてウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を用いた以外は、比較例1と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図21、22に示す。
【0095】
(比較例3)
有機溶媒に「酢酸エチル(275部)とエタノール(54部)との混合溶媒」を用いた以外は、比較例2と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図23、24に示す。
【0096】
(比較例4)
有機溶媒に「酢酸エチル(239部)とイソプロパノール(90部)との混合溶媒」を用いた以外は、比較例2と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図25、26に示す。
【0097】
(比較例5)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを1部、有機溶媒として酢酸n−ブチルを324部とエタノールを4部混合して固形分濃度が24%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均質な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露は確認されなかった)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、フィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図27、28に示す。
【0098】
(比較例6)
低分子量物質に「エチレングリコールジアセテート(1部)」を用いた以外は、比較例5と同じ方法でフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図29、30に示す。
【0099】
(比較例7)
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「1700」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質「グリセリン」を1部混合して固形分濃度が99%となる溶液を調整した。
得られた溶液は有機溶媒を添加していないので、塗布した溶液は目視で確認したところ2層に分かれていた。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約8μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露は確認されなかった)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、フィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図31、32に示す。
【0100】
(実施例10)
エポキシアクリレート系紫外線硬化性樹脂「VR−77」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを4部、有機溶媒として酢酸エチルを353部とエタノールを116部混合して固形分濃度が18%となるポリマー溶液を調整した。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図33、34に示す。
【0101】
(実施例11)
シリコーンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「AY42−150」を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」を4部、低分子量物質としてグリセリンを3部、有機溶媒として、メチルエチルケトンを75部とエタノールを60部混合して固形分濃度が25%となるポリマー溶液を調整した。なお、有機溶媒として、プロピレングリコールメチルエーテルを156部と(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタンを12部とメタノールを2部が含まれている(原液中にプロピレングリコールメチルエーテルが56%、(ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルメタンが7%、メタノールが1%含まれているとして計算した)。
得られたポリマー溶液は無色透明の均一な溶液であった。
前記ポリマー溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材:厚さ100μm)上に8番手のバーコーターで乾燥硬化後の硬化被膜が約3μmになるように塗布し、気温23℃、湿度68%Rhで1分間乾燥後(結露が確認された)、紫外線(メタルハライドランプ、紫外線照射量450mJ/cm2)を照射して、硬化被膜を形成した後、熱風オーブンを用いて120℃で1分間乾燥させて、表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製した。
各材料の配合量、固形分濃度を表1に、表面物性(算術平均粗さ、最大高さ粗さ)と光学特性(全光線透過率、ヘイズ、アンチニュートンリング性、ギラツキ性)を表2に、共焦点レーザー顕微鏡2D、3D画像をそれぞれ図35、36に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
上記のことからも、本発明によれば、優れたアンチニュートンリング性を有するアンチニュートンリングフィルムが得られることがわかる。
しかも、上記に示したように、簡便な方法でアンチニュートンリングフィルムが得られることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分と、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒とを含有するポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材上に形成させ、該ポリマー被膜を硬化させることにより表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製することを特徴とするアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒を蒸発させる過程において前記塗膜の表面温度を雰囲気温度よりも低温にさせて該塗膜表面に結露を生じさせ、該結露によって生じた液滴で前記塗膜表面に凹部を形成させて前記ポリマー被膜を形成させる請求項1記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性成分を含み、該非相溶性成分が加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記有機溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性が高く、しかも、前記低分子量物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な有機溶媒であるポリマー溶液を用いて前記塗膜を形成し、前記有機溶媒を蒸発させることによって前記ポリマー成分と前記低分子量物質とを相分離させて前記ポリマー被膜に表面の凹凸を形成させ、さらに、前記ポリマー被膜の少なくとも一部を硬化させた後に前記低分子量物質を加熱して前記ポリマー被膜から蒸発除去させる請求項1又は2記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリマー成分が紫外線硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリマー成分が熱硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜の加熱によって実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記紫外線硬化性樹脂が、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂のいずれかである請求項4に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリマー溶液には、アルコール系溶媒が含有されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記低分子量物質が、60以上300以下の分子量であり、100℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物である請求項3乃至7のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記低分子量物質が、水酸基を有する有機化合物である請求項3乃至8のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項10】
硬化されたポリマーによって、シート状の基材の少なくとも片面に、表面に凹凸形状を有する被膜が形成されているアンチニュートンリングフィルムであって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の製造方法によって作製されてなり、前記被膜表面の算術平均粗さ(Ra:JIS B0601−2001)が0.025μm以上0.250μm以下であり、且つ、最大高さ粗さ(Rz:JIS B0601−2001)が0.100μm以上2.000μm以下であることを特徴とするアンチニュートンリングフィルム。
【請求項11】
ヘイズ値が0.1%以上8%以下であり、且つ全光線透過率が85%以上である請求項10記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項12】
前記基材が、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明な基材である請求項10又は11に記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項13】
前記被膜の表面に、さらに、透明導電膜が積層されて備えられている請求項10乃至12のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項14】
透明導電膜が酸化インジウムスズ(ITO)膜である請求項13に記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムで操作画面が被覆されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項16】
請求項10乃至14のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムが用いられていることを特徴とする光学部材。
【請求項1】
ポリマー成分と、該ポリマー成分が可溶な有機溶媒とを含有するポリマー溶液をシート状の基材の少なくとも片面に塗布して塗膜を形成させ、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて前記ポリマー成分で表面に凹凸を有するポリマー被膜を前記基材上に形成させ、該ポリマー被膜を硬化させることにより表面に凹凸形状を有するアンチニュートンリングフィルムを作製することを特徴とするアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒を蒸発させる過程において前記塗膜の表面温度を雰囲気温度よりも低温にさせて該塗膜表面に結露を生じさせ、該結露によって生じた液滴で前記塗膜表面に凹部を形成させて前記ポリマー被膜を形成させる請求項1記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分に対して非相溶性を示す非相溶性成分を含み、該非相溶性成分が加熱することによって蒸発除去可能な低分子量物質で、前記有機溶媒が、前記低分子量物質よりも揮発性が高く、しかも、前記低分子量物質と前記ポリマー成分との両方が可溶な有機溶媒であるポリマー溶液を用いて前記塗膜を形成し、前記有機溶媒を蒸発させることによって前記ポリマー成分と前記低分子量物質とを相分離させて前記ポリマー被膜に表面の凹凸を形成させ、さらに、前記ポリマー被膜の少なくとも一部を硬化させた後に前記低分子量物質を加熱して前記ポリマー被膜から蒸発除去させる請求項1又は2記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記ポリマー成分が紫外線硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜に対する紫外線照射によって実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリマー成分が熱硬化性樹脂を含み、前記硬化を前記ポリマー被膜の加熱によって実施する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記紫外線硬化性樹脂が、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂のいずれかである請求項4に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリマー溶液には、アルコール系溶媒が含有されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記低分子量物質が、60以上300以下の分子量であり、100℃以上350℃以下の沸点を有し、しかも、23℃未満の融点を有している有機化合物である請求項3乃至7のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記低分子量物質が、水酸基を有する有機化合物である請求項3乃至8のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムの製造方法。
【請求項10】
硬化されたポリマーによって、シート状の基材の少なくとも片面に、表面に凹凸形状を有する被膜が形成されているアンチニュートンリングフィルムであって、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の製造方法によって作製されてなり、前記被膜表面の算術平均粗さ(Ra:JIS B0601−2001)が0.025μm以上0.250μm以下であり、且つ、最大高さ粗さ(Rz:JIS B0601−2001)が0.100μm以上2.000μm以下であることを特徴とするアンチニュートンリングフィルム。
【請求項11】
ヘイズ値が0.1%以上8%以下であり、且つ全光線透過率が85%以上である請求項10記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項12】
前記基材が、ヘイズ値が2%以下且つ全光線透過率が85%以上の透明な基材である請求項10又は11に記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項13】
前記被膜の表面に、さらに、透明導電膜が積層されて備えられている請求項10乃至12のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項14】
透明導電膜が酸化インジウムスズ(ITO)膜である請求項13に記載のアンチニュートンリングフィルム。
【請求項15】
請求項10乃至14のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムで操作画面が被覆されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項16】
請求項10乃至14のいずれか1項に記載のアンチニュートンリングフィルムが用いられていることを特徴とする光学部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2011−170308(P2011−170308A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87097(P2010−87097)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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