説明

アンテナおよびそれを利用した無線通信装置

【課題】アンテナを効率よく配置しながら、所望のアンテナ指向性を確保したい。
【解決手段】アンテナ領域52は、基板50上の隅の領域に設けられている。アンテナ導体56は、アンテナ領域52に設けられており、かつ接地端58と開放端60との間に屈曲部62が設けられた形状を有する。第1グランド領域94は、アンテナ導体56の接地端58側において、接地端58と接続しながら、基板50上に設けられている。第2グランド領域96は、アンテナ導体56の開放端60側において、基板50上に設けられている。給電部66は、アンテナ導体56に給電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関し、特に基板上に設けられたアンテナおよびそれを利用した無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを小型化するためには、アンテナ導体の体積が小さい方が好ましく、アンテナ導体の体積を小さくするために、接地アンテナが一般的に使用される。代表的なアンテナとして、アンテナ導体を途中の部分において屈曲することによって、アンテナ導体とグランドとの距離を短縮するL型アンテナ、アンテナ導体の一端がグランドに接続される逆F型アンテナが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、ゲーム装置とゲーム機用操作装置との間にて無線通信を行う場合、両者にはアンテナが設けられる。特に、ゲーム機用操作装置は小型であるので、それに設けられるアンテナにも小型化が要求される。また、ゲーム機用操作装置には、小型でありながらも、さまざまな機能の実装が要求されるため、スペースの有効利用を実現することが望ましい。また、ゲーム機用操作装置は、手に持って使用されるため、人体方向への放射は遮閉される。そのため、アンテナからの放射電力を有効に使用することが望まれる。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、アンテナを効率よく配置しながら、所望のアンテナ指向性を確保する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアンテナは、基板上の隅部に形成されたアンテナ領域と、アンテナ領域に設けられ、第1導体部と第2導体部とが屈曲部を介して連接ないし連設された形状を有するアンテナ導体と、アンテナ領域に接して形成され、第1導体部の端部に接続する第1グランド領域と、アンテナ領域に接して形成され、第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向に、第2導体部の端部から離間した第2グランド領域と、アンテナ導体に給電を行う給電部と、を備える。
【0006】
この態様によると、低背型接地アンテナを基板上の隅部に配置するとともに、第2導体部の近傍に第2グランド領域を形成することによって、アンテナを効率よく配置しながら、所望のアンテナ指向性を確保できる。
【0007】
本発明の別の態様は、無線通信装置である。この装置は、アンテナと、アンテナを介して無線通信を実行する通信部とを備える。アンテナは、基板上の隅部に形成されたアンテナ領域と、アンテナ領域に設けられ、第1導体部と第2導体部とが屈曲部を介して連接された形状を有するアンテナ導体と、アンテナ領域に接して形成され、第1導体部の端部に接続する第1グランド領域と、アンテナ領域に接して形成され、第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向に、第2導体部の端部から離間した第2グランド領域と、アンテナ導体に給電を行う給電部と、を備える。
【0008】
この態様によると、無線通信装置において、低背型接地アンテナを基板上の隅部に配置するとともに、第2導体部の近傍に第2グランド領域を形成することによって、アンテナを効率よく配置しながら、所望のアンテナ指向性を確保できる。
【0009】
本発明のさらに別の態様もまた、無線通信装置である。この装置は、接地アンテナを備える無線通信装置であって、接地アンテナは、ユーザによる通常の操作の際に、ユーザの手によって覆われない位置にアンテナ導体の開放端を配置し、かつアンテナ導体の開放端付近にグランド領域を備えている。
【0010】
この態様によると、アンテナ導体の端部が、ユーザの手によって覆われない位置に配置されることで、ユーザの手がアンテナ指向性に及ぼす影響を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アンテナを効率よく配置しながら、所望のアンテナ指向性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)−(b)は、本発明の実施例に係るゲーム機用操作装置の構成を示す図である。
【図2】図1(a)−(b)のゲーム機用操作装置の機能ブロックを示す図である。
【図3】図1(b)の基板の構成を示す図である。
【図4】図4(a)−(b)は、図1(b)のアンテナ特性と比較するための他の基板の構成を示す図である。
【図5】図5(a)−(c)は、図3の構成によるアンテナ特性および比較対象のアンテナ特性を示す図である。
【図6】図1(b)の基板の別の構成を示す図である。
【図7】図6の構成によるアンテナ特性を示す図である。
【図8】図8(a)−(e)は、図1(b)の基板のさらに別の構成を示す図である。
【図9】図8(a)の基板のさらに別の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例は、ゲーム機本体と無線回線にて接続されたゲーム機用操作装置に関し、特にゲーム機用操作装置の内部に備えられたアンテナに関する。ゲーム機本体は、ゲームプログラムが記録された記録媒体である光ディスクを再生し、ゲームプログラムにしたがってテレビジョン受像機の画面に背景画面とともにゲームキャラクタを表示させる機能を有する。また、ゲーム機用操作装置は、ユーザの操作を受け、ゲーム機本体の動作を制御することによって、光ディスクに記録されたゲームソフトを実行させる。このようなゲーム機用操作装置に備えられるアンテナには、小型化が要求される。また、ゲーム機用操作装置の内部の空間を有効に利用するために、アンテナを効率よく配置することが要求される。さらに、人がゲーム機用操作装置を操作する場合、手で持っての操作が前提となるため、ゲーム機用操作装置の後方には人体が存在することとなる。当該方向への指向性を小さくするとともに、前方への指向性を大きくする方が望ましい。以上の背景のもと、本実施例に係るアンテナは以下のように構成される。
【0014】
図1(a)−(b)は、本発明の実施例に係るゲーム機用操作装置100の構成を示す。図1(a)は、ゲーム機用操作装置100の外観の上面図である。ゲーム機用操作装置100は、第1把持部2、第2把持部4、方向ボタン8と総称される第1方向ボタン8a、第2方向ボタン8b、第3方向ボタン8c、第4方向ボタン8d、指示ボタン10と総称される第1指示ボタン10a、第2指示ボタン10b、第3指示ボタン10c、第4指示ボタン10d、回転操作子12と総称される第1回転操作子12a、第2回転操作子12b、選択スイッチ14、スタートスイッチ16を含む。
【0015】
方向ボタン8は、ゲーム機用操作装置100の上面側に突出しながら、互いに直交するように配設されている。また、4つの方向ボタン8は、一体に互いに連結されている。方向ボタン8は、例えば表示キャラクタの移動を制御する方向指示制御部として機能し、第1方向ボタン8aから第4方向ボタン8dを選択的に押圧操作することによって、押圧操作された方向ボタン8の配列方向に表示キャラクタを移動させる。
【0016】
指示ボタン10は、互いに直交するように配設されている。第1指示ボタン10aから第4指示ボタン10dは、それぞれ独立の部材として形成されており、各指示ボタン10に対応しながら信号入力素子としてのスイッチ素子が設けられる。例えば、第1指示ボタン10aから第4指示ボタン10dの押圧操作に対応したスイッチをオン操作することによって、各指示ボタン10に割り付けられた表示キャラクタの機能が実行される。
【0017】
回転操作子12は、第1把持部2および第2把持部4の連結部側のコーナ部の相対向する位置に配設されている。回転操作子12は、支軸を中心に360°方向に回転可能であり、操作されることによって可変抵抗素子等の信号入力素子を動作させる。すなわち、回転操作子12は、付勢部材により中立位置に復帰するように取り付けられた支軸の先端側に取り付けられ、支軸の回動支点を中心に360°方向に回転操作される。回転操作子12の回転操作によって、表示キャラクタを回転しながら移動させ、あるいは速度を可変しながら移動させ、さらには形態を変更させる等のアナログ的な動きが実行される。
【0018】
スタートスイッチ16は、方向ボタン8と指示ボタン10との間に位置して、ゲームの開始を指示する。また、選択スイッチ14は、例えば、ゲームを開始するときにゲームの難易度等を選択する。
【0019】
第1把持部2、第2把持部4を両手の掌で包み込むように把持することにより、ゲーム機用操作装置100を指で支持する必要がなくなり、両手の最大10本の指、少なくとも6本の指を自由に動かせる状態で把持することができる。図1(a)では、ゲーム機用操作装置100を把持している人の手が点線にて示される。例えば、第1把持部2および第2把持部4を両手の掌で包み込むように把持したとき、左右の手の親指にて第1回転操作子12aおよび第2回転操作子12b、方向ボタン8および指示ボタン10を操作できる。
【0020】
また、これら各回転操作子12、方向ボタン8および指示ボタン10は、選択的に押圧されることが可能である。特に、回転操作子12は、両手の掌で包み込むように把持される第1把持部2および第2把持部4のゲーム機用操作装置100への連結部側に相対向して配置されている。そのため、回転操作子12は、第1把持部2および第2把持部4を左右の手によって把持したとき、左右の手の親指に最も近い位置に位置される。したがって、各回転操作子12は、左右の手の親指により容易に回転操作されることを可能にする。
【0021】
なお、図1(a)に示されたゲーム機用操作装置100の後方には、ゲーム機用操作装置100を操作する人体が存在し、前方には、ゲーム機本体が存在するものとする。以下では、便宜上、図1(a)に矢印Aで示される方向を「前方」と呼び、矢印Bで示される方向を「後方」と呼ぶ。
【0022】
図1(b)は、図1(a)に示されたゲーム機用操作装置100の内部の構成を示す。ここでは、特に、本発明の実施例に係るアンテナに関する部分を示す。ゲーム機用操作装置100は、基板50を含む。また、基板50は、アンテナ領域52、アンテナ導体56、給電部66を含む。図示のごとく、アンテナ領域52は、基板50の前側の隅の部分に設けられている。アンテナ領域52が基板50の隅部に形成されるため、基板50のふたつの縁部のそれぞれ一部がアンテナ領域52の2辺を構成している。なお、基板50は、グランド領域としても使用され、グランド領域、アンテナ導体56、開放端60によって接地アンテナが構成される。ここで、前述のごとく、一般的に、前方にゲーム機本体が存在するので、電波を前方に有効に放射するために、アンテナ領域52は、基板50のうちの前側の部分に配置されるのが好ましい。
【0023】
図1(a)−(b)に示すように、ゲーム機用操作装置100の操作時において、第1把持部2および第2把持部4が手によって把持され、このとき、左手の親指が、方向ボタン8を押し下げ可能な位置にそえられ、右手の親指が、指示ボタン10を押し下げ可能な位置にそえられている。このような、ユーザによる通常の操作における手の位置は、図1(b)にも点線によって示される。アンテナ領域52の近傍に、図1(a)に示された第1把持部2、方向ボタン8が配置されるので、アンテナ領域52の近傍には左手が存在する。その結果、アンテナ領域52に配置されたアンテナの指向性は、人の手による影響を受けやすくなる。
【0024】
図1(b)に示すように、接地端58、給電部66、アンテナ導体56の少なくとも一部が、ユーザの手によって覆われている。一方、開放端60は、ユーザによる通常の操作の際に、ユーザの手によって覆われない位置に配置され、かつ開放端60付近にも、基板50のグランド領域が存在する。詳細は、後述するが、以上のような配置によって、アンテナ指向性への人の手による影響が低減される。また、以上の配置の結果、基板50のうち、アンテナ領域52以外の部分であって、かつ連続した領域の部分を広くとることができる。その結果、電子部品などを実装する際の自由度が向上する。
【0025】
図2は、ゲーム機用操作装置100の機能ブロックを示す。ゲーム機用操作装置100は、アンテナ30、通信部32、制御部36、操作部38を含む。アンテナ30は、図1(b)のアンテナ領域52および図示しないアンテナ導体等によって構成されており、所定の無線周波数の信号を送信し、また受信する機能を持つ。ここで、無線周波数の信号の送信や受信の対象は、図示しないゲーム機本体である。なお、アンテナ30の構成は後述するので、ここでは、説明を省略する。
【0026】
通信部32は、アンテナ30を介して無線通信を実行する。すなわち、通信部32は、送信機能として、符号化、変調、周波数変換を実行し、受信機能として、周波数変換、復調、復号を実行する。ここで通信部32における通信機能は、図示しないゲーム機本体での通信機能に対応する。また、通信部32は、ゲーム機用操作装置100に備えられているので、ゲームの操作に関する情報を送受信する。
【0027】
操作部38は、ゲームの操作に関する情報を受けつける。操作部38は、図1(a)の方向ボタン8、指示ボタン10、回転操作子12、選択スイッチ14、スタートスイッチ16に相当し、表示キャラクタを移動させる指示や、所定の機能を発揮させる指示を受けつける。操作部38は、受けつけた指示を制御部36に出力する。制御部36は、操作部38において受けつけた指示を通信部32に出力する。また、制御部36は、通信部32から受けつけた情報を操作部38に出力する。
【0028】
以上の構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0029】
図3は、基板50の構成を示す。基板50は、アンテナ領域52、グランド領域54、アンテナ導体56、給電線64、給電部66を含む。また、グランド領域54は、第1グランド領域94、第2グランド領域96を含む。なお、図3に示された基板50は、図1(b)に示された基板50、あるいはその一部に相当するが、ここでは、説明を簡易にするために、基板50が前方縁部40、左側方縁部42、右側方縁部44、後方縁部46の4つの縁部で区画される長方形の形状を有するものとする。
【0030】
アンテナ領域52は、基板50の前側で左方の領域に配置される。アンテナ領域52はグランド領域54に接して形成される。ここで、アンテナ領域52も長方形の形状を有しており、アンテナ領域52とグランド領域54との間の境界が、図3において直交する第1境界線80および第2境界線82とで示される。アンテナ領域52は、第1境界線80、第2境界線82の他に、前方縁部40の一部と左側方縁部42の一部によっても区画される。
【0031】
アンテナ導体56は、基板50上のアンテナ領域52に設けられている。アンテナ導体56は、接地端58と開放端60との間に屈曲部62が設けられた形状、すなわち「L型」の形状を有する。ここで、アンテナ導体56は、屈曲部62にて直角に曲がっているものとする。なお、説明の便宜上、アンテナ導体56のうち、接地端58から屈曲部62へ至る部分を、第1導体部90と呼び、屈曲部62から開放端60へ至る部分を、第2導体部92と呼ぶ。
【0032】
アンテナ導体56の形状は、第1導体部90と第2導体部92が屈曲部62で直交して接続された形状と等価である。また、接地端58は、第1グランド領域94に接続されながら、開放端60が第2境界線82の近傍に配置される。すなわち、開放端60は、屈曲部62よりも、左側方縁部42に対して基板50の中央よりの位置に配置されている。ここで、基板50の中央とは、左側方縁部42から右側方縁部44との中間位置を意味する。以上の構成において、第1導体部90は、第2境界線82、左側方縁部42に平行に配置されており、第2導体部92は、第1境界線80、前方縁部40に平行に配置されている。
【0033】
グランド領域54は、基板50上に設けられており、図示のごとく、第1グランド領域94と第2グランド領域96によって構成されている。なお、説明を簡潔にするために、グランド領域54は、基板50のうち、アンテナ領域52以外の領域を占め、基板50上で連続した領域として形成されているものとする。第1グランド領域94は、アンテナ領域52に隣接しながら、その後側の部分に形成されており、第1グランド領域94とアンテナ領域52との境界が、第1境界線80に相当する。また、第1グランド領域94は、接地端58と接続されている。一方、第2グランド領域96は、アンテナ領域52に隣接しながら、その右側の部分を含むように形成されている。すなわち、第2グランド領域96は、第2導体部92の屈曲部62から開放端60へ向かう方向に、開放端60から離間して配置される。第2グランド領域96は、基板50の前方縁部40側に沿って形成されており、前方縁部40から後方縁部46に向かう方向における第2グランド領域96の長さは、アンテナ領域52に設けられる導体のうち、最前方の導体を鏡映可能な長さ以上であればよい。ここで、最前方の導体は、第2導体部92に相当する。また、第2グランド領域96の一部とアンテナ領域52との境界が、第2境界線82に相当する。
【0034】
給電部66は、給電線64を介して、アンテナ導体56に給電を行う。給電線64は、アンテナ導体56のうち、第1導体部90と平行に配置されながら、第2導体部92に接続される。
【0035】
以上の構成によって、アンテナ導体56と給電線64とが、「逆F字」に配置されており、これらと第1グランド領域94とによって、逆F型の接地アンテナが構成される。なお、逆F型の接地アンテナにおいて、屈曲部62における電界強度よりも開放端60における電界強度の方が大きくなる。ここでは、アンテナ領域52内の左側、すなわち左側方縁部42側に、電界強度の相対的に小さい屈曲部62を配置している。一方、アンテナ領域52内の右側、すなわち第2境界線82側に、電界強度の相対的に大きい開放端60を配置している。その結果、左手によって覆われない部分に開放端60を配置できる。そのため、中央側の電界を強めることができ、人の手による遮閉の影響を低減して、前方向きのアンテナ指向性を維持できる。
【0036】
また、第2グランド領域96において、逆F型の接地アンテナのイメージが形成される。その結果、右側グランド領域から、イメージのアンテナ指向性が形成される。さらに、逆F型の接地アンテナによるアンテナ指向性とイメージによるアンテナ指向性とが重なって、前方に向かう指向性を高めることができる。なお、以上の構成において、アンテナ導体56の第2導体部92の長さは、λ/4程度に設計される。ここで、λは、使用される電波の波長を示す。また、第2グランド領域96の左右の長さ、すなわち、グランド領域54の右端から第2境界線82までの長さも、少なくともλ/4程度であればよい。そのため、基板50の左側方縁部42から右側方縁部44までの長さは、少なくともλ/2程度であればよく、基板50の小型化を実現できる。
【0037】
図4(a)−(b)は、図3の基板50のアンテナ特性と比較するための基板の構成を示す。図4(a)に示された基板150は、アンテナ領域52、グランド領域54を含み、アンテナ領域52は、アンテナ導体156を含む。アンテナ導体156は、第1導体部190と第2導体部192とが、屈曲部162で直交して接続された形状を有する。また、第1導体部190は、第2境界線82の近傍において第2境界線82、左側方縁部42と平行に配置されており、第2導体部192は、前方縁部40の近傍において第1境界線80、前方縁部40と平行に配置されている。また、第1導体部190の接地端158は、第1グランド領域94に接続されており、第2導体部192の開放端160は、開放した左側方縁部42の近傍に配置される。図4(a)に示されるように、基板150においても、アンテナ導体156、給電線64、給電部66、第1グランド領域94によって、逆F型の接地アンテナが形成されている。
【0038】
前述のごとく、逆F型の接地アンテナにおいて、開放端60における電界強度は、屈曲部62における電界強度よりも大きくなっている。ここで、図4(a)の開放端60は、図3の開放端60よりも第2グランド領域96から離れるように配置されている。そのため、図4(a)に示されたアンテナの構成は、図3に示されたアンテナの構成よりも、一般的に設計されるアンテナの構成といえる。
【0039】
図4(b)に示された基板250は、アンテナ領域252、グランド領域254を含む。アンテナ領域252は、アンテナ導体256を含む。アンテナ導体256を形成している第1導体部290、第2導体部292、接地端258、開放端260、屈曲部262は、図3のアンテナ導体56を形成している第1導体部90、第2導体部92、接地端58、開放端60、屈曲部62にそれぞれ対応する。また、基板250の前側の部分にアンテナ領域252が配置され、基板250の後側の部分にグランド領域254が配置されている。アンテナ導体256とグランド領域254によって、逆F型の接地アンテナが構成されるが、開放端260の近傍には、グランド領域254が配置されていない。そのため、前方向へのイメージが均一に形成されない。
【0040】
図5(a)−(c)は、ゲーム機用操作装置100が人の手によって握られている場合における図3の構成によるアンテナ特性および図4(a)−(b)の構成によるアンテナ特性を示す。図5(a)は、図4(a)の構成によるアンテナ特性を示す。ここで、アンテナ特性は、アンテナ指向性に相当し、方向に対するアンテナ利得を示す。図5(a)の上方、すなわち「0°」の部分が、基板150の前側の方向に相当する。また、実線が水平偏波特性を示し、点線が垂直偏波特性に相当する。なお、ゲーム機本体に備えられたアンテナは、水平偏波を使用しているので、ここでは、水平偏波特性を中心に説明を行う。このとき、図4(a)の開放端160は、人の手によって覆われることになる。そのため、左側の部分のアンテナ利得は、人の手の影響を受けることによって、右側部分のアンテナ利得よりも全体的に減衰している。
【0041】
図5(b)は、図4(b)の構成によるアンテナ特性を示す。図5(b)に示されたアンテナ特性は、図5(a)に示されたアンテナ特性と比較して、左側部分のアンテナ利得が大きくなっている。開放端260が、人の手によって覆われない位置に配置されることによって、利得が改善している。しかしながら、「315°」近傍のアンテナ利得は、それ以外の部分のアンテナ利得と比較して減衰している。
【0042】
図5(c)は、図3の構成によるアンテナ特性を示す。条件は、図5(a)−(b)に示したアンテナ特性取得時の条件と同一である。図5(c)に示されたアンテナ特性は、図5(b)に示されたアンテナ特性と比較して、「315°」近傍のアンテナ利得も大きくなっている。図5(c)に示すアンテナ特性では、第2グランド領域96に形成されたイメージによって、前方への指向性を大きくでき、前方へのアンテナ利得を全体的に大きくできる。
【0043】
図6は、基板50の別の構成を示す。図6の基板50は、図3に示した構成に加えて、導波器68を含む。導波器68は、アンテナ領域52に設けられている。また、導波器68は、アンテナ導体56の第2導体部92よりも、基板50の開放した縁部側、すなわち前方縁部40側に配置される。図示のごとく、導波器68は、アンテナ導体56よりも前側に配置される。
【0044】
導波器68は、アンテナ導体56の第2導体部92と略平行に配置されている。ここで、略平行とは、導波器68の大部分がおおよその程度にて平行であればよいということに相当し、完全に平行であることは要求されない。導波器68は、前述の逆F型の接地アンテナによって形成されたアンテナパターンをさらに前方に向けるように機能する。また、導波器68の長手方向に第2グランド領域96が配置されることによって、第2グランド領域96に導波器68のイメージを生成できる。
【0045】
そのため、仮に導波器68の長さが短くても、イメージにおける長さを加えることによって、導波器68の長さを実質的に長くできる。その結果、アンテナパターンをより前方に向けることが可能になる。なお、図6において、第2グランド領域96は、図3での第2グランド領域96と同様の領域を占めるように示されているが、第2グランド領域96は、少なくとも導波器68を鏡映可能な位置だけに設けられてもよい。すなわち、第2グランド領域96は、導波器68のイメージを形成するために必要な領域を有していればよい。このような構成は後述するが、第2グランド領域96を狭くすることによって、基板50の残りの領域を、所定の部品を実装するために利用できる。
【0046】
また、導波器68のうちの開放端60側の部分、すなわち第2境界線82側の部分は、コンデンサ部70を構成する。ここで、コンデンサ部70は、第2境界線82と略平行になるように屈曲されている。すなわち、導波器68は、「L型」の形状を有する。さらに、導波器68のうち、コンデンサ部70は、相対する第2グランド領域96、すなわち第2境界線82の近傍の部分とによって、コンデンサを形成する。このようなコンデンサによって、導波器の長さまたは第2グランド領域96の長さを短くすることができる。
【0047】
導波器68のインダクタンスをL1とし、第2グランド領域96のうち、導波器68のイメージに対応した部分におけるインダクタンスをL2とし、コンデンサの容量をCとすると、共振周波数F0は、以下のように示される。
F0=1/(2π√(L1+L2)C)
そのため、L1やL2が小さくなっても、Cによって、F0として同一の値を維持できる。以上の結果、図6に示す基板50の左端から右端までの長さが、図3に示す基板50より短くなっても、アンテナパターンを前方に向けることができる。例えば、グランド領域54の右端から第2境界線82に至る部分の長さをλ/4よりも短くできる。その結果、基板50の左側方縁部42から右側方縁部44の幅をλ/2よりも短くでき、基板50をさらに小型化できる。
【0048】
図7は、図6の構成によるアンテナ特性を示す。図7は、図5(a)−(c)と同様に示されている。図7に示されたアンテナ特性と図5(c)に示されたアンテナ特性とを比較すると、図6のごとく、アンテナ領域52に導波器68を設けることによって、図3による構成でのアンテナ特性と同等のアンテナ特性を実現しながらも、アンテナを小型化できる。
【0049】
図8(a)−(e)は、基板50のさらに別の構成を示す。図8(a)に示された基板50のアンテナ領域52は、図6に示す基板50と同様に、基板50の左側であって、かつ前側に配置されている。ここで、前述のごとく、第2グランド領域96が、導波器68のイメージを形成可能な位置に配置されている。すなわち、第2グランド領域96は、基板50の右側であって、かつ前側に配置されているが、前方縁部40から後方縁部46に向かう方向における第2グランド領域96の長さが、アンテナ領域52や図3の第2グランド領域96における長さよりも短くなっている。これにより、部品実装領域72を、第2グランド領域96の後側の位置に設けることができる。ここで、部品実装領域72には、所定の機能を有した部品が実装される。このように、基板50上に、アンテナ領域52やグランド領域54だけではなく、部品実装領域72も設けることによって、装置の小型化が可能になる。なお、グランド領域54は、第1グランド領域94と第2グランド領域96とが連続した領域として形成されている。
【0050】
図8(b)に示された基板50は、図6に示された基板50と同様の構成を有する。ここでは、導波器68がメアンダ状に形成されている。その結果、図8(b)では、導波器68の左側方縁部42側から第2境界線82側までの直線距離が同一である場合に、導波器68が直線状に形成されている場合よりも、導波器68の実質的な電気長を長くできる。そのため、導波器68のうち、アンテナ領域52の左端からコンデンサ部70に至る部分の直線の長さが、図6での導波器68の場合よりも短くなっても、図6のアンテナ特性と同様のアンテナ特性を実現できる。図8(c)に示された基板50では、図8(b)での構成に加えて、アンテナ導体56の第2導体部92もメアンダ状に形成されている。その結果、図8(c)では、第2導体部92の両端の直線距離が同一である場合に、第2導体部92が直線状に形成されている場合よりも、アンテナ導体56の実質的な電気長を長くできる。
【0051】
図8(d)に示された基板50は、図6に示された基板50と同様の構成を有する。ここでは、導波器68にチップコイル74が付加されている。導波器68によるインダクタンスにチップコイル74によるインダクタンスが加算されるので、共振周波数が同一である場合に、導波器68の長さを短くできる。そのため、基板50の小型化が可能になる。図8(e)に示された基板50は、アンテナ導体56の第2導体部92にチップコイル74が付加されている。その結果、共振周波数が同一である場合に、アンテナ導体56の長さを短くできる。なお、図8(a)−(e)を組み合わせた構成も、本発明の実施例として有効である。例えば、図8(a)に示された部品実装領域72が、図8(b)−(e)に備えられてもよい。また、図8(b)−(e)におけるメアンダ状の構成とチップコイル74とが、任意に組み合わされてもよい。
【0052】
本発明の実施例によれば、手によって覆われない部分に開放端を配置するので、手の遮閉によるアンテナ利得の低減を改善できる。また、開放端を基板の端の方向に向けないので、外的要因によるアンテナ特性の影響を低減できる。また、開放端をグランド領域の方向に向けるので、グランド領域におけるイメージとの重ね合わせによって、アンテナ指向性を前方に向けることができる。また、イメージとの重ね合わせを利用するので、アンテナ導体の長さを短くできる。また、アンテナ導体の長さを短くできるので、アンテナの小型化を実現できる。また、導波器およびそのイメージを利用することによって、アンテナ指向性を前方に向けながら、基板を小型化できる。また、導波器のグランド領域側の部分を屈曲させるので、導波器とグランド領域によってコンデンサを形成できる。
【0053】
また、コンデンサを形成するので、導波器やグランド領域の長さを短くできる。また、導波器やグランド領域の長さを短くするので、アンテナの小型化を実現できる。また、グランド領域の内部に部品実装領域を設けるので、装置全体の小型化を実現できる。また、アンテナ導体および導波器の両方あるいはいずれか一方をメアンダ状に形成するので、アンテナ導体および導波器の両方あるいはいずれか一方の長さを短くできる。また、アンテナ導体および導波器の両方あるいはいずれか一方にチップコイルを付加するので、アンテナ導体および導波器の両方あるいはいずれか一方の長さを短くできる。
【0054】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
本実施例において、基板50の左側の部分にアンテナ領域52を設けている。しかしながらこれに限らず例えば、基板50の右側の部分にアンテナ領域52を設けてもよい。その場合の構成は、実施例に示した構成を左右対称に配置すればよい。本変形例によれば、アンテナの設計の自由度を向上できる。つまり、基板50の隅部にアンテナ領域52が設けられればよい。
【0056】
本実施例において、アンテナ導体56、給電線64、給電部66、第1グランド領域94によって、逆F型の接地アンテナが形成されている。しかしながらこれに限らず例えば、アンテナ導体56、給電部66、第1グランド領域94によって、逆L型の接地アンテナが形成されてもよい。その場合、アンテナ導体56の接地端58に給電部66が接続される。本変形例によれば、アンテナの設計の自由度を向上できる。つまり、低背型の接地アンテナが使用されればよい。
【0057】
本実施例において、第1境界線80と第2境界線82は、直角に交わっている。しかしながらこれに限らず例えば、両者は直角に交わっていなくてもよい。基板50の形状、および要求されるアンテナ特性に応じて、両者の角度、すなわちアンテナ領域52の形状が設計されればよい。なお、第1導体部90と第2導体部92についても同様である。本変形例によれば、アンテナの設計の自由度を向上できる。つまり、低背型の接地アンテナとしての機能が得られる程度に設計されればよい。
【0058】
本実施例において、基板50は、ゲーム機用操作装置100に設けられている。しかしながらこれに限らず例えば、基板50は、その他の通信装置に設けられてもよい。本変形例によれば、基板50をさまざまな装置に適用できる。つまり、無線通信を実行すべき装置に適用されればよい。
【0059】
本実施例において、図8(a)では、部品実装領域72が、第2グランド領域96の後側の位置に設けられている。しかしながらこれに限らず例えば、図9のように基板50が構成されてもよい。図9において、図8(a)における符号と同一の符号を付した構成要素は、図8(a)の対応する構成要素と同一の形状、機能をもつ。第2グランド領域96は、前方縁部40のうちアンテナ領域52に含まれない部分を含み、かつアンテナ領域52に設けられた導体のうち、最も前方縁部40側に配置された導体、例えば、導波器68を鏡映可能な領域と、右側方縁部44に沿った帯状の領域とを含むように形成される。第1グランド領域94は、アンテナ領域52に接する帯状の領域と、左側方縁部42のうち、アンテナ領域52に含まれていない部分に沿った帯状の領域とを含むように形成される。ここで、帯状の領域の幅は、必要とされるアンテナ特性に応じてそれぞれ決定されればよい。以上の構成のもと、部品実装領域72は、アンテナ領域52、第1グランド領域94、第2グランド領域96以外の領域に形成される。本変形例によれば、部品実装領域72の占める面積を広くできる。
【符号の説明】
【0060】
50 基板、 52 アンテナ領域、 54 グランド領域、 56 アンテナ導体、 58 接地端、 60 開放端、 62 屈曲部、 64 給電線、 66 給電部、 80 第1境界線、 82 第2境界線、 100 ゲーム機用操作装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の隅部に形成されたアンテナ領域と、
前記アンテナ領域に設けられ、第1導体部と第2導体部とが屈曲部を介して連接された形状を有するアンテナ導体と、
前記アンテナ領域に接して形成され、前記第1導体部の端部に接続する第1グランド領域と、
前記アンテナ領域に接して形成され、前記第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向に、前記第2導体部の端部から離間した第2グランド領域と、
前記アンテナ導体に給電を行う給電部と、
前記アンテナ領域に設けられ、かつ前記アンテナ導体の第2導体部よりも前記基板の開放した前方縁部側に配置される導波器とを備え、
前記第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向における前記第2グランド領域の長さが、前記第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向における前記導波器の長さよりも長くされることによって、前記第2グランド領域は、少なくとも前記導波器を鏡映可能な位置に設けられていることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ領域から前記第1グランド領域へ向かう方向における前記第2グランド領域の長さが、前記アンテナ領域から前記第1グランド領域へ向かう方向における前記アンテナ領域の長さよりも短くされることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第2グランド領域は、前記基板の前方縁部に設けられ、かつ前方縁部から前記第1グランド領域へ向かう方向において、少なくとも前記導波器を鏡映可能な長さ以上で設けられることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第2グランド領域は、前方縁部から前記第1グランド領域へ向かう方向において、前記アンテナ導体を鏡映不可能であり、前記導波器を鏡映可能な長さで設けられることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
アンテナと、前記アンテナを介して無線通信を実行する通信部とを備え、
前記アンテナは、
基板上の隅部に形成されたアンテナ領域と、
前記アンテナ領域に設けられ、第1導体部と第2導体部とが屈曲部を介して連接された形状を有するアンテナ導体と、
前記アンテナ領域に接して形成され、前記第1導体部の端部に接続する第1グランド領域と、
前記アンテナ領域に接して形成され、前記第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向に、前記第2導体部の端部から離間した第2グランド領域と、
前記アンテナ導体に給電を行う給電部と、
前記アンテナ領域に設けられ、かつ前記アンテナ導体の第2導体部よりも前記基板の開放した前方縁部側に配置される導波器とを備え、
前記第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向における前記第2グランド領域の長さが、前記第2導体部の屈曲部から端部へ向かう方向における前記導波器の長さよりも長くされることによって、前記第2グランド領域は、少なくとも前記導波器を鏡映可能な位置に設けられていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
前記アンテナ領域から前記第1グランド領域へ向かう方向における前記第2グランド領域の長さが、前記アンテナ領域から前記第1グランド領域へ向かう方向における前記アンテナ領域の長さよりも短くされることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第2グランド領域は、前記基板の前方縁部に設けられ、かつ前方縁部から前記第1グランド領域へ向かう方向において、少なくとも前記導波器を鏡映可能な長さ以上で設けられることを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記第2グランド領域は、前方縁部から前記第1グランド領域へ向かう方向において、前記アンテナ導体を鏡映不可能であり、前記導波器を鏡映可能な長さで設けられることを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157065(P2012−157065A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91822(P2012−91822)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2006−103881(P2006−103881)の分割
【原出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】