アンテナ装置および無線通信機
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は移動無線通信に利用する。本発明は無線選択呼出受信機に利用するに適する。特に、ループアンテナおよび無線通信機回路の実装技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、使用波長に比べて形状が小さい携帯形無線通信装置にはループアンテナを利用することが知られている。例えば、無線選択呼出受信機の使用周波数は数百MHzであり(一例として300MHz帯、その波長は約1m)、受信機本体の形状は長手方向でも数cmである。そしてその受信機本体から数十cmの小型アンテナを突き出して装備することは携帯および使用上に不便である。このような装置にアンテナとしてループアンテナを採用すると、そのループの差し渡しが使用波長の数%(すわなち数cm)のもので実用的なアンテナ利得が得られる。したがって、ループアンテナを用いてこれを受信機の筐体周りに実装する形態をとることが合理的である。
【0003】従来のループアンテナの基本構成を図10を参照して説明する。図10は従来から広く知られたループアンテナの基本構成を示す図である。ループアンテナの基本的な構成は図10に示すように、導体線をループ状に形成して、そのループ上の1箇所を切り開いて給電端とするものである。ループは真円でなくともよく、楕円でもあるいは図10に示すように長方形その他の形状でも、とにかく導体がループを形成していればループアンテナとして用いることができる。
【0004】本願出願人は特願平5−026994号(出願日平成5年2月16日、本願出願時において未公開)で、無線通信機の筐体の一部を構成することができるループアンテナの発明について特許出願した。この先願に開示したアンテナ装置は、二枚の方形の導体板を平行に対向させてループアンテナを構成するものである。本発明はその改良である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】例えば、図10に示すような線状のループアンテナでは、これを筐体に組み込もうとすると、アンテナの特性としては不十分な形状になり、アンテナの特性として都合のよい形状にすると筐体に組み込むことはできなくなる。細い導線によりアンテナを形成した場合には、アンテナ損失が大きく、十分な利得が得られないから、損失を減らすために板状のエレメントをループアンテナとすると、この板が邪魔をして表示部その他が装置表面に表れないことになる。
【0006】本発明は、このような背景に行われたものであり、円形の筐体にループアンテナおよび無線通信機回路を効率よく実装することができるアンテナ装置および無線通信機を提供することを目的とする。本発明は円形の筐体形状を有する無線選択呼出受信機に用いるのに最適なアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明は無線選択呼出受信機を小型化することができるアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明はアンテナ利得の大きい小型のループアンテナを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のループアンテナを形成する二枚の導体板はそれぞれ円形であり、この導体板の内、少なくとも一枚は繰り抜きのある環状の導体であり、給電端がその円形の外周の一点に接続され、その給電端から離れた位置に短絡導体が接続され、その短絡導体はこの円形に沿った湾曲した板状が望ましく、その幅は周の長さに比べて十分に小さくかつ使用波長で十分に低いリアクタンスを呈するように設定されている。
【0008】この二枚の導体板の直径は使用波長の2〜15%であり、短絡導体板の幅は使用波長の1〜6%であり、二枚の導体板の間が無線通信機の筐体の一部をなし、その二枚の導体板の間にその無線通信機の操作端または表示器が取り付けられることがよい。
【0009】すなわち、本発明の第一の観点はアンテナ装置であり、その特徴とするところは、環状の導体と、この環状の導体にほぼ平行に配置された導体板と、前記環状の導体と前記導体板の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体とを備えるところにある。
【0010】前記導体板は前記環状の導体の外形とほぼ等しい外形状であることが望ましい。
【0011】前記環状の導体および前記導体板の外形は円であることが望ましい。
【0012】前記環状の導体および前記導体板の外形は楕円またはその近似形状である構成とすることもできる。
【0013】前記環状の導体および前記導体板の前記短絡導体から離れた外縁部の対向する二点間に無線信号を供給する給電端を設けることが望ましい。
【0014】前記環状の導体および前記導体板のさしわたしは使用波長の2%ないし15%であることが望ましい。
【0015】前記短絡導体の環に沿う幅は使用波長の1%ないし6%であることが望ましい。
【0016】前記導体板に代えて環状の導体板を備える構成とすることもできる。
【0017】本発明の第二の観点は、前記アンテナ装置が筐体の一部を構成する無線通信機である。
【0018】
【作用】丸形でさしわたしが使用波長に比べて十分短い二枚の導体板を平面が相互に向かい合うようにし、給電端をその二枚の導体板の外周の一点に設定し、該円形に沿った湾曲した板状でありその幅は前記周の長さに比べて十分に小さくかつ使用波長で十分に低いリアクタンスを呈するように構成された短絡導体を給電端から離れた位置に接続することにより、ループアンテナの損失抵抗が減少する。これらの作用により放射効率がよくなり、同一体積で大きな利得が得られる。さらに、損失が大きくならないように、導体板の縁の部分を残して中央部を繰り抜いているため、この繰り抜き部分に無線通信機の表示部を設置できる。また繰り抜きにより無線通信装置の電子回路との結合が少なくなるから、回路を実装した際の利得劣化が少ない。
【0019】これにより、アンテナ利得を低下させることなく、無線通信装置の電子回路をアンテナ構造の内側に実装することができ、小型化を図ることができる。
【0020】環状の導体および導体板は、円または楕円がよい。楕円に近似する形状でもよい。
【0021】導体板もその一部を繰り抜くことができる。さらに、環状の導体とほぼ同一の形状とすることもできる。
【0022】
【実施例】本発明第一実施例の構成を図1を参照して説明する。図1は本発明第一実施例装置のブロック構成図である。
【0023】本発明はアンテナ装置であり、その特徴とするところは、環状の導体21と、この環状の導体21にほぼ平行に配置された導体板22と、環状の導体21と導体板22の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体24とを備えるところにある。導体板22は環状の導体21の外形とほぼ等しい外形状である。環状の導体21および導体板22の外形は円である。
【0024】環状の導体21および導体板22の短絡導体24から離れた外縁部の対向する二点間に無線信号を供給する給電端23を設けている。
【0025】環状の導体21および導体板22の直径はそれぞれ使用波長の2ないし15パーセントであり、短絡導体24の幅は使用波長の1ないし6パーセントである。
【0026】本発明第一実施例は、環状の導体21および導体板22がその平面が相互に向かい合うように、かつほぼ平行に配置され、その環状の導体21および導体板22を短絡する短絡導体24が接続され、環状の導体21および導体板22はそれぞれ丸形であり、かつ環状の導体21には繰り抜きによる開口部が設けられており、給電端23が一つ設定され、その給電端23から離れた別の位置に短絡導体24が接続され、その短絡導体24は板状であってその幅は円周の長さに比べて十分小さくかつ使用波長で十分に低いリアクタンスを呈するように設定される。
【0027】さらに環状の導体21および導体板22の直径は高い利得を得るため、アンテナエレメント上の電流分布を一様とし、人体に近接された際にアンテナのイメージにより感度が上がる効果を用いており、これは“Small Antenns ”(K.Fujimoto,A.Henderson,K.Hirasawa,J.R.James著)100〜105 頁に述べられており、これより、使用波長の2〜15%と規定される。短絡導体24の環に沿う幅Wは使用波長の1〜6%と限定される。この数値は実験的に導き出されたものであり、従来形のアンテナに比較して高い利得が得られる。
【0028】環状の導体21および導体板22の間が無線通信機の筐体の一部あるいは全部をなし、その環状の導体21および導体板22の間にその無線通信機の電気回路が配置され、その環状の導体21および導体板22にその無線通信機の操作端または表示器が取付けられる。図1のL×dはアンテナを構成する環状の導体21および導体板22の実行開口面積を示し、Wは短絡導体24の幅を示す。
【0029】次に、図2を参照して本発明第一実施例のアンテナ装置の実装例を示す。図2は本発明第一実施例のアンテナ装置が無線通信機の筐体に実装された状態を示す斜視図である。本発明第一実施例のループアンテナの環状の導体21および導体板22の間には、回路基板31(絶縁材料の基板)が配置され、この回路基板31上にスイッチ本体32と表示器33が載置されて筐体34内に収納される。表示器33の表示部は筐体34の外部から見ることができるように構成される。一般に波長に比べて小さなループアンテナの効率ηは、アンテナの放射抵抗をRr、ループ周上の電気抵抗をRlossとすると、 η=Rr/(Rr+Rloss) …(1)
で表すことが一般に知られている。アンテナの効率ηは放射抵抗Rrと電気抵抗をRlossによって決定されることがわかる。ここで、放射抵抗Rrは、ループアンテナの断面積をSとすると、 Rr=20((2π/λ)2 ×S)2 …(2)
であらわすことができる。なお、このときのループアンテナの断面積Sは平行板の辺の長さをそれぞれa、bとし、ループ高さをdとすると、 S=d√(a2 +(b−A/2)2 ) …(3)
で表すことができる。(2)式より放射抵抗Rrはループアンテナの断面積の2乗に比例する。このためループアンテナを図1に示すように、直径上に配置し、短絡導体24で接続することにより、放射抵抗Rrを増加させることができる。
【0030】一方、携帯形無線機が用いられている超短波帯以上の周波数においては、電流は表皮効果により導体の表面を流れるため、幅の等しい部分の電気抵抗Rlossは(4)式に示されるように導体表面の面積Wに反比例する。
【0031】
Rloss=(1/W)×C×√((πfμ)/σ) …(4)
ただし、μは透磁率、σは導電率、fは周波数、Cはエレメントの総長である。したがって、エレメントを板状にすることにより、電気抵抗Rlossが低下し、利得が上昇する。しかし、ループ断面積を最大にするために、短絡導体の幅を細くし、線状にすると、放射抵抗Rrは上昇するものの、短絡導体による電気抵抗Rlossが大きくなってしまい結局効率ηは改善されない。
【0032】本発明第一実施例のアンテナ装置の整合回路を図3に示し、短絡導体幅と利得差との関係を図4に示す。図3は本発明第一実施例のアンテナ装置に用いる整合回路を示す図である。図4は短絡導体幅と利得差との関係を示す図である。横軸に短絡導体幅(λ)をとり、縦軸に利得差(dB)をとる。図3に示す整合回路を用いてアンテナインピーダンスを50Ωに整合させ、短絡素子Wの幅を変化させたときのアンテナ装置のピーク利得を基準とした自由空間中利得の変化を図4に示す。本検討のモデルは図1に示したものと同じ形状であり、300MHzにおいて、アンテナ直径はおよそ0.045λである。同一寸法の従来例のアンテナに比べて3dB程度利得が高い。また、従来例のアンテナに比べ、電気抵抗が大きくなる0.01λ以下と、短絡素子Wが広くなりループ開口面積がとれない0.06λ以上のときを除いては、本技術によりアンテナの開口面積が増加し、従来形のアンテナに比べアンテナ利得が高くなっている。このことから、本アンテナの効果が現れるのは、短絡導体の幅が0.01λから0.06λであるといえる。
【0033】次に、環状の導体21の環の幅とアンテナ利得差との関係を図5に示す。図5は環状の導体21の環の幅とアンテナ利得差との関係を示す図である。横軸に環状の導体の幅(λ)すなわち環の幅をとり、縦軸にアンテナ利得差(dB)をとる。これによると、幅が0.05λ以上のときは環状の導体21の繰り抜きによる損失はなく利得がほとんど一定である。
【0034】さらに、筐体にアンテナを組み込む際には、アンテナ内部に内蔵する金属物、特に電池や回路基板のアースの影響が大きい。その影響を避けるために環状の導体21を用いることは効果がある。実際にアンテナ内寸とほぼ同じ大きさの無線機回路を内蔵した際のアンテナ利得差を図6に示す。図6は無線機挿入時の環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図である。横軸に環状の導体の幅(λ)すなわち環の幅をとり、縦軸にアンテナ利得差(dB)をとる。無線回路を内蔵しないとき、利得は繰り抜きにより2dB以上低下するが、無線機回路を内蔵すると、繰り抜きのないときに比べて環状の導体の幅が0.06λのときに最大で0.5dB感度を向上させることができ、回路を内蔵しないときの利得をほぼ確保することができる。
【0035】次に、本発明第二実施例を図7を参照して説明する。図7は本発明第二実施例の構成を示す斜視図である。ディスプレイやスイッチを装着するため環状の導体21と同様に、電池35や回路基板のアースその他が近接する導体板22も結合の影響を避けるために、繰り抜きを設けるものである。本発明第二実施例では、実際にアンテナ内寸とほぼ同じ大きさの無線機回路を内蔵している。電池35もこの無線機回路の一部として内蔵し、ディスプレイ面の環状の導体21の幅を3mmと固定し、反対側の電池35に近接する導体板22を環状に繰り抜く際の寸法を変化させたものであり、このときの利得の変化を図8に示す。図8は二枚の環状導体を用いたときの環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図である。横軸に環状の導体の幅(λ)すなわち環の幅をとり、縦軸にアンテナ利得差(dB)をとる。繰り抜きが大きくなると結合による損失が小さくなり、繰り抜きを設けないときに比べて利得が最大で0.7dB向上する。
【0036】本発明第一および第二実施例では環状の導体21または導体板22は円として説明したが、楕円またはその近似形状を用いることもできる。その例を図9を参照して説明する。図9は環状の導体21または導体板22の形状を示す図である。図9(a)は真円である。図9(b)は楕円である。図9(c)は長円である。図9(d)は多角形である。図9(e)は円の変形である。これらの形状を用いても本発明第一および第二実施例は同様に説明することができる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、円形の筐体にループアンテナおよび無線通信機回路を効率よく実装することができるアンテナ装置および無線通信機を実現することができる。本発明によれば、円形の筐体形状を有する無線選択呼出受信機に用いるのに最適なアンテナ装置を実現することができる。本発明によれば、無線選択呼出受信機を小型化することができるアンテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例装置のブロック構成図。
【図2】本発明第一実施例のアンテナ装置が装着された状態を示す斜視図。
【図3】本発明第一実施例のアンテナ装置に用いる整合回路を示す図。
【図4】短絡導体幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図5】環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図6】無線機挿入時の環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図7】本発明第二実施例の構成を示す斜視図。
【図8】二枚の環状導体を用いたときの環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図9】環状の導体または導体板の形状を示す図。
【図10】従来例のループアンテナの基本構成を示す図。
【符号の説明】
21 環状の導体
22 導体板
23 給電端
24 短絡導体
31 回路基板
32 スイッチ本体
33 表示器
34 筐体
35 電池
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は移動無線通信に利用する。本発明は無線選択呼出受信機に利用するに適する。特に、ループアンテナおよび無線通信機回路の実装技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、使用波長に比べて形状が小さい携帯形無線通信装置にはループアンテナを利用することが知られている。例えば、無線選択呼出受信機の使用周波数は数百MHzであり(一例として300MHz帯、その波長は約1m)、受信機本体の形状は長手方向でも数cmである。そしてその受信機本体から数十cmの小型アンテナを突き出して装備することは携帯および使用上に不便である。このような装置にアンテナとしてループアンテナを採用すると、そのループの差し渡しが使用波長の数%(すわなち数cm)のもので実用的なアンテナ利得が得られる。したがって、ループアンテナを用いてこれを受信機の筐体周りに実装する形態をとることが合理的である。
【0003】従来のループアンテナの基本構成を図10を参照して説明する。図10は従来から広く知られたループアンテナの基本構成を示す図である。ループアンテナの基本的な構成は図10に示すように、導体線をループ状に形成して、そのループ上の1箇所を切り開いて給電端とするものである。ループは真円でなくともよく、楕円でもあるいは図10に示すように長方形その他の形状でも、とにかく導体がループを形成していればループアンテナとして用いることができる。
【0004】本願出願人は特願平5−026994号(出願日平成5年2月16日、本願出願時において未公開)で、無線通信機の筐体の一部を構成することができるループアンテナの発明について特許出願した。この先願に開示したアンテナ装置は、二枚の方形の導体板を平行に対向させてループアンテナを構成するものである。本発明はその改良である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】例えば、図10に示すような線状のループアンテナでは、これを筐体に組み込もうとすると、アンテナの特性としては不十分な形状になり、アンテナの特性として都合のよい形状にすると筐体に組み込むことはできなくなる。細い導線によりアンテナを形成した場合には、アンテナ損失が大きく、十分な利得が得られないから、損失を減らすために板状のエレメントをループアンテナとすると、この板が邪魔をして表示部その他が装置表面に表れないことになる。
【0006】本発明は、このような背景に行われたものであり、円形の筐体にループアンテナおよび無線通信機回路を効率よく実装することができるアンテナ装置および無線通信機を提供することを目的とする。本発明は円形の筐体形状を有する無線選択呼出受信機に用いるのに最適なアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明は無線選択呼出受信機を小型化することができるアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明はアンテナ利得の大きい小型のループアンテナを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のループアンテナを形成する二枚の導体板はそれぞれ円形であり、この導体板の内、少なくとも一枚は繰り抜きのある環状の導体であり、給電端がその円形の外周の一点に接続され、その給電端から離れた位置に短絡導体が接続され、その短絡導体はこの円形に沿った湾曲した板状が望ましく、その幅は周の長さに比べて十分に小さくかつ使用波長で十分に低いリアクタンスを呈するように設定されている。
【0008】この二枚の導体板の直径は使用波長の2〜15%であり、短絡導体板の幅は使用波長の1〜6%であり、二枚の導体板の間が無線通信機の筐体の一部をなし、その二枚の導体板の間にその無線通信機の操作端または表示器が取り付けられることがよい。
【0009】すなわち、本発明の第一の観点はアンテナ装置であり、その特徴とするところは、環状の導体と、この環状の導体にほぼ平行に配置された導体板と、前記環状の導体と前記導体板の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体とを備えるところにある。
【0010】前記導体板は前記環状の導体の外形とほぼ等しい外形状であることが望ましい。
【0011】前記環状の導体および前記導体板の外形は円であることが望ましい。
【0012】前記環状の導体および前記導体板の外形は楕円またはその近似形状である構成とすることもできる。
【0013】前記環状の導体および前記導体板の前記短絡導体から離れた外縁部の対向する二点間に無線信号を供給する給電端を設けることが望ましい。
【0014】前記環状の導体および前記導体板のさしわたしは使用波長の2%ないし15%であることが望ましい。
【0015】前記短絡導体の環に沿う幅は使用波長の1%ないし6%であることが望ましい。
【0016】前記導体板に代えて環状の導体板を備える構成とすることもできる。
【0017】本発明の第二の観点は、前記アンテナ装置が筐体の一部を構成する無線通信機である。
【0018】
【作用】丸形でさしわたしが使用波長に比べて十分短い二枚の導体板を平面が相互に向かい合うようにし、給電端をその二枚の導体板の外周の一点に設定し、該円形に沿った湾曲した板状でありその幅は前記周の長さに比べて十分に小さくかつ使用波長で十分に低いリアクタンスを呈するように構成された短絡導体を給電端から離れた位置に接続することにより、ループアンテナの損失抵抗が減少する。これらの作用により放射効率がよくなり、同一体積で大きな利得が得られる。さらに、損失が大きくならないように、導体板の縁の部分を残して中央部を繰り抜いているため、この繰り抜き部分に無線通信機の表示部を設置できる。また繰り抜きにより無線通信装置の電子回路との結合が少なくなるから、回路を実装した際の利得劣化が少ない。
【0019】これにより、アンテナ利得を低下させることなく、無線通信装置の電子回路をアンテナ構造の内側に実装することができ、小型化を図ることができる。
【0020】環状の導体および導体板は、円または楕円がよい。楕円に近似する形状でもよい。
【0021】導体板もその一部を繰り抜くことができる。さらに、環状の導体とほぼ同一の形状とすることもできる。
【0022】
【実施例】本発明第一実施例の構成を図1を参照して説明する。図1は本発明第一実施例装置のブロック構成図である。
【0023】本発明はアンテナ装置であり、その特徴とするところは、環状の導体21と、この環状の導体21にほぼ平行に配置された導体板22と、環状の導体21と導体板22の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体24とを備えるところにある。導体板22は環状の導体21の外形とほぼ等しい外形状である。環状の導体21および導体板22の外形は円である。
【0024】環状の導体21および導体板22の短絡導体24から離れた外縁部の対向する二点間に無線信号を供給する給電端23を設けている。
【0025】環状の導体21および導体板22の直径はそれぞれ使用波長の2ないし15パーセントであり、短絡導体24の幅は使用波長の1ないし6パーセントである。
【0026】本発明第一実施例は、環状の導体21および導体板22がその平面が相互に向かい合うように、かつほぼ平行に配置され、その環状の導体21および導体板22を短絡する短絡導体24が接続され、環状の導体21および導体板22はそれぞれ丸形であり、かつ環状の導体21には繰り抜きによる開口部が設けられており、給電端23が一つ設定され、その給電端23から離れた別の位置に短絡導体24が接続され、その短絡導体24は板状であってその幅は円周の長さに比べて十分小さくかつ使用波長で十分に低いリアクタンスを呈するように設定される。
【0027】さらに環状の導体21および導体板22の直径は高い利得を得るため、アンテナエレメント上の電流分布を一様とし、人体に近接された際にアンテナのイメージにより感度が上がる効果を用いており、これは“Small Antenns ”(K.Fujimoto,A.Henderson,K.Hirasawa,J.R.James著)100〜105 頁に述べられており、これより、使用波長の2〜15%と規定される。短絡導体24の環に沿う幅Wは使用波長の1〜6%と限定される。この数値は実験的に導き出されたものであり、従来形のアンテナに比較して高い利得が得られる。
【0028】環状の導体21および導体板22の間が無線通信機の筐体の一部あるいは全部をなし、その環状の導体21および導体板22の間にその無線通信機の電気回路が配置され、その環状の導体21および導体板22にその無線通信機の操作端または表示器が取付けられる。図1のL×dはアンテナを構成する環状の導体21および導体板22の実行開口面積を示し、Wは短絡導体24の幅を示す。
【0029】次に、図2を参照して本発明第一実施例のアンテナ装置の実装例を示す。図2は本発明第一実施例のアンテナ装置が無線通信機の筐体に実装された状態を示す斜視図である。本発明第一実施例のループアンテナの環状の導体21および導体板22の間には、回路基板31(絶縁材料の基板)が配置され、この回路基板31上にスイッチ本体32と表示器33が載置されて筐体34内に収納される。表示器33の表示部は筐体34の外部から見ることができるように構成される。一般に波長に比べて小さなループアンテナの効率ηは、アンテナの放射抵抗をRr、ループ周上の電気抵抗をRlossとすると、 η=Rr/(Rr+Rloss) …(1)
で表すことが一般に知られている。アンテナの効率ηは放射抵抗Rrと電気抵抗をRlossによって決定されることがわかる。ここで、放射抵抗Rrは、ループアンテナの断面積をSとすると、 Rr=20((2π/λ)2 ×S)2 …(2)
であらわすことができる。なお、このときのループアンテナの断面積Sは平行板の辺の長さをそれぞれa、bとし、ループ高さをdとすると、 S=d√(a2 +(b−A/2)2 ) …(3)
で表すことができる。(2)式より放射抵抗Rrはループアンテナの断面積の2乗に比例する。このためループアンテナを図1に示すように、直径上に配置し、短絡導体24で接続することにより、放射抵抗Rrを増加させることができる。
【0030】一方、携帯形無線機が用いられている超短波帯以上の周波数においては、電流は表皮効果により導体の表面を流れるため、幅の等しい部分の電気抵抗Rlossは(4)式に示されるように導体表面の面積Wに反比例する。
【0031】
Rloss=(1/W)×C×√((πfμ)/σ) …(4)
ただし、μは透磁率、σは導電率、fは周波数、Cはエレメントの総長である。したがって、エレメントを板状にすることにより、電気抵抗Rlossが低下し、利得が上昇する。しかし、ループ断面積を最大にするために、短絡導体の幅を細くし、線状にすると、放射抵抗Rrは上昇するものの、短絡導体による電気抵抗Rlossが大きくなってしまい結局効率ηは改善されない。
【0032】本発明第一実施例のアンテナ装置の整合回路を図3に示し、短絡導体幅と利得差との関係を図4に示す。図3は本発明第一実施例のアンテナ装置に用いる整合回路を示す図である。図4は短絡導体幅と利得差との関係を示す図である。横軸に短絡導体幅(λ)をとり、縦軸に利得差(dB)をとる。図3に示す整合回路を用いてアンテナインピーダンスを50Ωに整合させ、短絡素子Wの幅を変化させたときのアンテナ装置のピーク利得を基準とした自由空間中利得の変化を図4に示す。本検討のモデルは図1に示したものと同じ形状であり、300MHzにおいて、アンテナ直径はおよそ0.045λである。同一寸法の従来例のアンテナに比べて3dB程度利得が高い。また、従来例のアンテナに比べ、電気抵抗が大きくなる0.01λ以下と、短絡素子Wが広くなりループ開口面積がとれない0.06λ以上のときを除いては、本技術によりアンテナの開口面積が増加し、従来形のアンテナに比べアンテナ利得が高くなっている。このことから、本アンテナの効果が現れるのは、短絡導体の幅が0.01λから0.06λであるといえる。
【0033】次に、環状の導体21の環の幅とアンテナ利得差との関係を図5に示す。図5は環状の導体21の環の幅とアンテナ利得差との関係を示す図である。横軸に環状の導体の幅(λ)すなわち環の幅をとり、縦軸にアンテナ利得差(dB)をとる。これによると、幅が0.05λ以上のときは環状の導体21の繰り抜きによる損失はなく利得がほとんど一定である。
【0034】さらに、筐体にアンテナを組み込む際には、アンテナ内部に内蔵する金属物、特に電池や回路基板のアースの影響が大きい。その影響を避けるために環状の導体21を用いることは効果がある。実際にアンテナ内寸とほぼ同じ大きさの無線機回路を内蔵した際のアンテナ利得差を図6に示す。図6は無線機挿入時の環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図である。横軸に環状の導体の幅(λ)すなわち環の幅をとり、縦軸にアンテナ利得差(dB)をとる。無線回路を内蔵しないとき、利得は繰り抜きにより2dB以上低下するが、無線機回路を内蔵すると、繰り抜きのないときに比べて環状の導体の幅が0.06λのときに最大で0.5dB感度を向上させることができ、回路を内蔵しないときの利得をほぼ確保することができる。
【0035】次に、本発明第二実施例を図7を参照して説明する。図7は本発明第二実施例の構成を示す斜視図である。ディスプレイやスイッチを装着するため環状の導体21と同様に、電池35や回路基板のアースその他が近接する導体板22も結合の影響を避けるために、繰り抜きを設けるものである。本発明第二実施例では、実際にアンテナ内寸とほぼ同じ大きさの無線機回路を内蔵している。電池35もこの無線機回路の一部として内蔵し、ディスプレイ面の環状の導体21の幅を3mmと固定し、反対側の電池35に近接する導体板22を環状に繰り抜く際の寸法を変化させたものであり、このときの利得の変化を図8に示す。図8は二枚の環状導体を用いたときの環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図である。横軸に環状の導体の幅(λ)すなわち環の幅をとり、縦軸にアンテナ利得差(dB)をとる。繰り抜きが大きくなると結合による損失が小さくなり、繰り抜きを設けないときに比べて利得が最大で0.7dB向上する。
【0036】本発明第一および第二実施例では環状の導体21または導体板22は円として説明したが、楕円またはその近似形状を用いることもできる。その例を図9を参照して説明する。図9は環状の導体21または導体板22の形状を示す図である。図9(a)は真円である。図9(b)は楕円である。図9(c)は長円である。図9(d)は多角形である。図9(e)は円の変形である。これらの形状を用いても本発明第一および第二実施例は同様に説明することができる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、円形の筐体にループアンテナおよび無線通信機回路を効率よく実装することができるアンテナ装置および無線通信機を実現することができる。本発明によれば、円形の筐体形状を有する無線選択呼出受信機に用いるのに最適なアンテナ装置を実現することができる。本発明によれば、無線選択呼出受信機を小型化することができるアンテナ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例装置のブロック構成図。
【図2】本発明第一実施例のアンテナ装置が装着された状態を示す斜視図。
【図3】本発明第一実施例のアンテナ装置に用いる整合回路を示す図。
【図4】短絡導体幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図5】環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図6】無線機挿入時の環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図7】本発明第二実施例の構成を示す斜視図。
【図8】二枚の環状導体を用いたときの環状の導体の幅とアンテナ利得差との関係を示す図。
【図9】環状の導体または導体板の形状を示す図。
【図10】従来例のループアンテナの基本構成を示す図。
【符号の説明】
21 環状の導体
22 導体板
23 給電端
24 短絡導体
31 回路基板
32 スイッチ本体
33 表示器
34 筐体
35 電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】 環状の導体と、この環状の導体にほぼ平行に配置されその外形がほぼ等しい環状の導体板と、前記環状の導体と前記導体板の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体とを備え、前記導体および導体板の外形は円形であってその導体幅は少なくとも使用波長の5%であり、前記短絡導体の環に沿う幅は使用波長の1ないし6%であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】 環状の導体と、この環状の導体にほぼ平行に配置されたその外形がほぼ等しい環状の導体板と、前記環状の導体と前記導体板の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体とを備え、前記導体および導体板の外形は楕円またはその近似形状であってその導体幅は少なくとも使用波長の5%であり、前記短絡導体の環に沿う幅は使用波長の1ないし6%であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】 前記環状の導体および前記環状の導体板の前記短絡導体から離れた外縁部の対向する二点間に無線信号を供給する給電端を設けた請求項1または2記載のアンテナ装置。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか記載のアンテナ装置が筐体の一部を形成する無線通信機。
【請求項1】 環状の導体と、この環状の導体にほぼ平行に配置されその外形がほぼ等しい環状の導体板と、前記環状の導体と前記導体板の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体とを備え、前記導体および導体板の外形は円形であってその導体幅は少なくとも使用波長の5%であり、前記短絡導体の環に沿う幅は使用波長の1ないし6%であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】 環状の導体と、この環状の導体にほぼ平行に配置されたその外形がほぼ等しい環状の導体板と、前記環状の導体と前記導体板の対向する一部を相互に電気的に接続する短絡導体とを備え、前記導体および導体板の外形は楕円またはその近似形状であってその導体幅は少なくとも使用波長の5%であり、前記短絡導体の環に沿う幅は使用波長の1ないし6%であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】 前記環状の導体および前記環状の導体板の前記短絡導体から離れた外縁部の対向する二点間に無線信号を供給する給電端を設けた請求項1または2記載のアンテナ装置。
【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか記載のアンテナ装置が筐体の一部を形成する無線通信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【特許番号】特許第3195882号(P3195882)
【登録日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【発行日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−239226
【出願日】平成6年10月3日(1994.10.3)
【公開番号】特開平8−84016
【公開日】平成8年3月26日(1996.3.26)
【審査請求日】平成9年9月16日(1997.9.16)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【参考文献】
【文献】特開 平4−329006(JP,A)
【登録日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【発行日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成6年10月3日(1994.10.3)
【公開番号】特開平8−84016
【公開日】平成8年3月26日(1996.3.26)
【審査請求日】平成9年9月16日(1997.9.16)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【参考文献】
【文献】特開 平4−329006(JP,A)
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