説明

アンテナ装置

【課題】良好な指向性が維持するとともに、製造コストを低くでき、かつ、小型化できるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】壁や柱等の取付箇所に取り付けられるケース20の表層である内面に反射層を設けるとともにケース20にアンテナ素子30を収容し、このアンテナ素子30を隠蔽するようにレドーム40をケース20に取り付けている。そして、レドーム40の表面あるいは裏面40aあるいは両面の表層に導波素子41を設けたので、導波素子41を取り付ける部材を省略できるとともに、レドーム40に導波素子41を取り付けるための凹部等の取付部を設ける必要がないので、アンテナ装置10の軽量化・小型化を図るとともに、作製が容易になる。また、指向性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置に係り、例えば携帯電話等と通信する中継局や基地局等で使用するアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、中継局あるいは基地局等の屋内外の壁面や柱等の取付箇所に固定されたアンテナ装置は、一般に、壁面や柱に取り付けられるケースと、ケースに収容されるアンテナ素子および導波素子と、アンテナ素子に対面するケースの内面に施された反射層と、アンテナ素子を隠蔽するようにケースに取り付けられるレドームとを備えている。
アンテナ素子および導波素子は、回路基板に形成された回路パターンにより設けられていて、ケースに固定されている。
従って、アンテナ素子が放射器、反射層が反射器、導波素子が導波器として機能することにより、レドーム正面に向けて指向性が得られる。
【0003】
このようなアンテナ装置は、アンテナ素子とは別に導波素子を設けているため、部品点数が多いとともに、全体形状を小型化する上での障害となっていた。
このような問題に対して、熱防護システム内に導波素子を配設して小型化を図った耐熱性アンテナが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図6に示すように、特許文献1に記載のアンテナ装置100では、入出力コネクタ101及び放射素子102はアンテナ構造体103によって一体化されており、アンテナ構造体103は機体構造体104において電波透過窓となるハニカム板105が設けられた位置にネジ106によって取り付けられている。
【0005】
セラミックタイル107、107a及び歪緩衝材109からなる熱防護システムは、セラミックタイル107の表面に対して熱が加わってもその熱が機体構造体104やアンテナ構造体103に対して伝導しにくい構造となっている。
導波素子108a、108bはセラミックタイル107内及び歪緩衝材109とハニカム板105との間に夫々配設されており、導波素子108a、108b同士や導波素子108a、108bと放射素子102との間、及び導波素子108a、108bとアンテナ構造体103との間は夫々接続されていない。
これにより、アンテナ形状を大きくすることなく利得増加を図り、小型化及び軽量化と低価格化とを図っている。
【特許文献1】特開平8−181518(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載のアンテナ装置においては、導波素子を配設するために、あらかじめ熱防護システムにくぼみを形成しておく必要があり、製造が煩雑になるという不都合があった。
【0007】
本発明は、前述した不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、良好な指向性を損なうことなく製造コストを低くでき、かつ、小型化できるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、取付箇所に取り付けられるケースと、前記ケースの表層に施された反射層と、前記ケースに収容されるアンテナ素子と、前記アンテナ素子を隠蔽するように前記ケースに取り付けられるレドームとを備えるアンテナ装置であって、導波素子が前記レドームの表層に設けられていることを特徴としている。
ここで、表層としては、ケースの内面あるいは外面のうちのいずれか一方、または双方を指す。
【0009】
このように構成されたアンテナ装置においては、壁や柱等の取付箇所に取り付けられるケースの内面に反射層を設けるとともにケースにアンテナ素子を収容し、このアンテナ素子を隠蔽するようにレドームをケースに取り付けている。
そして、レドームの表面あるいは裏面あるいは両面の表層に導波素子を設けたので、導波素子を取り付ける部材を省略できるとともに、レドームに導波素子を取り付けるための凹部等の取付部を設ける必要がないので、アンテナ装置の軽量化を図るとともに、作製が容易になる。また、これにより指向性を損なう虞はない。
【0010】
また、本発明のアンテナ装置は、前記導波素子が前記レドームに金属箔を貼付することにより設けられていることを特徴としている。
【0011】
このように構成されたアンテナ装置においては、レドームの表面あるいは裏面の表層に、例えば接着剤や両面テープ等によって金属箔を貼り付けて導波素子を形成するため、容易に導波素子を設けることができる。また、大きく嵩張ることがなく、アンテナ装置の小型化を図ることができる。
【0012】
また、本発明のアンテナ装置は、前記導波素子が前記レドームに金属塗料を塗布することを特徴としている。
【0013】
このように構成されたアンテナ装置においては、レドームの表面あるいは裏面の表層に、金属塗料を塗布することにより導波素子を設けるため、容易に導波素子を設けることができる。また、大きく嵩張ることがなく、アンテナ装置の小型化を図ることができる。
【0014】
また、本発明のアンテナ装置は、前記導波素子が前記レドームに金属材料を蒸着することを特徴としている。
【0015】
このように構成されたアンテナ装置においては、レドームの表面あるいは裏面の表層に、金属材料をメッキのように蒸着することにより導波素子を設けるため、容易に導波素子を設けることができる。また、大きく嵩張ることがなく、アンテナ装置の小型化を図ることができる。
【0016】
また、本発明のアンテナ装置は、前記アンテナ素子が回路基板に形成された回路パターンであるとともに、前記回路基板における前記回路パターンが形成されていない領域が肉抜きされていることを特徴としている。
【0017】
このように構成されたアンテナ装置においては、アンテナ素子の回路基板で回路パターンが形成されていない部分を切り欠いて肉抜きしているため、軽量化を図ることができるとともに、アンテナ特性上良好となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レドームの表面あるいは裏面あるいは両面の表層に導波素子を設けたので、従来設けられていた導波素子を取り付けるための部材を省略できるとともに、レドームに導波素子を取り付けるための凹部等の取付部を設ける必要がないので、アンテナ装置の軽量化を図るとともに、作製が容易になる。また、指向性を損なう虞がないという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明のアンテナ装置に係る実施形態を取付箇所側から見た分解斜視図、図2は本発明のアンテナ装置に係る実施形態を外側から見た分解斜視図、図3はアンテナ素子の回路パターンとレドームに設けられている導波素子との位置関係を示す説明図である。
【0020】
図1および図2に示すように、本発明の実施形態にかかるアンテナ装置10は、壁や柱等の取付箇所に取り付けられるケース20と、ケース20の表層である内面20aに例えば亜鉛メッキ等を施された反射層21と、ケース20に収容されるアンテナ素子30と、アンテナ素子30を隠蔽するようにケース20に取り付けられるレドーム40とを備えている。そして、導波素子41がレドーム40の表層に設けられている。
なお、反射層としては、ケース20の外面に設けてもよく、あるいはケース20を導体により形成することにより設けてもよい。
【0021】
ケース20は、一面が開口した金属製あるいは樹脂製の矩形箱状であり、外面20b(壁や柱等の取付箇所に対面する側)には、外面20bに直交して多数のリブ22が設けられており、外面20bの外周縁に沿って、レドーム40をねじにより取り付けるための取付穴23が設けられている。また、ケース20の下面隅部にはアンテナケーブル31を内部に導くためのケーブル用導入口25(図2参照)、が設けられており、このケーブル用導入口25には導入管24が取り付けられている。ケース20内部の外周部には、レドーム40を止めるための貫通穴26aを有する取付凸部26が設けられている。また、アンテナ素子30をねじ止めするための取付部27が設けられている。
【0022】
アンテナ素子30は、例えば矩形平板状の樹脂回路基板32の上に金属箔33を接着し、エッチングにより回路パターン34以外の金属箔33を除去するとともに、回路パターン34が形成されていない領域は打ち抜き等によって肉抜きされて空間35を形成している。回路パターン34はMおよびWを上下に対向配置した形状をしており、回路パターン34の中央部には、アンテナケーブル31の先端が接続される端子36が設けられている。アンテナ素子30の四隅にはねじ穴37が設けられており、ねじによりケース20の内側に設けられている取付部27に取り付けられるようになっている。
【0023】
レドーム40は、電波を透過させる樹脂製の蓋であり、レドーム40の内面40aには導波素子41が取り付けられている。
導波素子41は、接着剤や両面テープ等によって金属箔を貼り付けたり、金属塗料を塗布したり、あるいは金属材料をメッキのように蒸着することにより、表層からわずかに突出した状態で設けることができる。
【0024】
また、図3に示すように、導波素子41はレドーム40の表層としての裏面(内側面40a)において、アンテナ素子30の電波の特性上の平均位置、あるいは回路パターン34の正面位置に、使用周波数の波長の4分の1よりも短めの長さで例えば合計4個以上設けられている。
【0025】
また、レドーム40の内面40aの外周部には、ケース20にねじ止めするための取付部42が設けられている。
従って、アンテナ素子30が取り付けられたケース20の外面20b側からねじを挿入して、レドーム40をねじ止めしてアンテナ装置10を一体化している。
【0026】
以上、上述したアンテナ装置10においては、レドーム40の内面40aあるいは外面40bあるいは両面40a、40bの表層に導波素子41を設けたので、導波素子41を取り付ける部材(基板)を省略できる。
また、レドーム40に導波素子41を取り付けるための凹部等の取付部を設ける必要がないので、アンテナ装置10の軽量化および小型化を図るとともに、作製が容易になり、コストダウンを図ることができる。また、従来に比較して指向性を損なう虞はない。
また、アンテナ素子30の回路基板32おいて、形成された回路パターン34以外の部分を切り欠いて肉抜きしているため、軽量化を図ることができるとともに、アンテナ特性上良好となる。
【0027】
なお、本発明のアンテナ装置は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した実施形態において、導波素子41をレドーム40の内面40aに設けた場合を例示したが、図4および図5に示すように、本発明のアンテナ装置はレドーム40の外面40bに導波素子41を設けるようにすることもできる。あるいは、表裏両面40a、40bに導波素子41を設けることも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に係るアンテナ装置は、レドームの表面あるいは裏面あるいは両面の表層に導波素子を設けたので、導波素子を取り付ける部材を省略できるとともに、レドームに導波素子を取り付けるための凹部等の取付部を設ける必要がないので、アンテナ装置の軽量化を図るとともに、作製が容易になる。また、指向性を損なう虞がないという果を有し、携帯電話等と通信する中継局や基地局等で使用するアンテナ装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のアンテナ装置に係る実施形態を取付箇所側から見た分解斜視図である。
【図2】本発明のアンテナ装置に係る実施形態を外側から見た分解斜視図である。
【図3】アンテナ素子の回路パターンとレドームに設けられている導波素子との位置関係を示す説明図である。
【図4】本発明のアンテナ装置に係る別の実施形態を取付箇所側から見た分解斜視図である。
【図5】本発明のアンテナ装置に係る別の実施形態を外側から見た分解斜視図である。
【図6】従来のアンテナ装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 アンテナ装置
20 ケース
20a 内面(表層)
21 反射層
30 アンテナ素子
32 回路基板
34 回路パターン
35 空間(回路パターンが形成されていない領域)
40 レドーム
41 導波素子
40a 内面(表層)
40b 外面(表層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付箇所に取り付けられるケースと、
前記ケースの表層に施された反射層と、
前記ケースに収容されるアンテナ素子と、
前記アンテナ素子を隠蔽するように前記ケースに取り付けられるレドームとを備えるアンテナ装置であって、
導波素子が前記レドームの表層に設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記導波素子が前記レドームに金属箔を貼付することにより設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記導波素子が前記レドームに金属塗料を塗布することにより設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記導波素子が前記レドームに金属材料を蒸着することにより設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子が回路基板に形成された回路パターンであるとともに、前記回路基板における前記回路パターンが形成されていない領域が肉抜きされていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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