説明

アンテナ

【課題】
部品点数が少なく面積が縮小されたフィルタ部を有するアンテナを提供する。
【解決手段】
アンテナAは、ループ状に延びた導体11a〜11dからなるループアンテナ素子部1と、ループアンテナ素子部1の端が接続された中継基板2とを備える。中継基板2は、絶縁板20と、外部接続パッド21,22と、素子接続パッド23a〜23hと、キャパシタパターン24,25とを備える。外部接続パッド21,22は、絶縁板20の表面に設けられ、送受信機器の導体と接続する。素子接続パッド23a〜23hは、絶縁板20の表裏面のいずれかに設けられ、ループアンテナ素子部1の端が接続される。キャパシタパターン24,25は、絶縁板20の裏面のうち、絶縁板20を挟んで外部接続パッド21,22と対向する領域に設けられるとともに素子接続パッド23a,23hと電気的に繋がり、外部接続パッド21,22との間でキャパシタを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信を行うRFID(Radio Frequency Identification)の送受信にはループアンテナが用いられている。例えば、特許文献1には、ハウジングに設けられた接続部に複数の個別電線を接続することにより、直列接続された複数の個別電線に多重のループを形成させたRFIDアンテナが示されている。
【0003】
このようなRFIDアンテナに、RFID以外の無線通信に及ぼすノイズを低減するため、又はRFID以外の無線通信系との結合を低減するため、信号のフィルタを搭載することが考えられる。
【0004】
例えば、特許文献2には、誘電体共振装置が備えるフレキシブルフィルムに、キャパシタを成す互いに対面した導体パターンと、平面状のコイルパターンとからなるフィルタ部が設けられた構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−60519号公報
【特許文献2】特開平10−242706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この誘電体共振装置では、キャパシタとして専用のパターンが配置されているため、フレキシブルフィルム上でフィルタ部が占有する面積が大きい。また、嵩高の共振器との接続するためのL字状の接続部を要するので、誘電体共振装置のベースとなる硬質基板の他にフレキシブルフィルムを要する。したがって、部品点数が多くなってしまう。
【0007】
本発明は上記問題点を解決し、部品点数が少なく、面積が縮小されたフィルタ部を有するアンテナを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のアンテナは、
ループ状に延びた導体からなるループアンテナ素子部と、
上記ループアンテナ素子部と送受信機器との間の信号を中継する、上記ループアンテナ素子部の端が接続された中継基板とを備え、
上記中継基板が、
絶縁板と、
上記絶縁板の表面に設けられた、上記送受信機器の導体と接続する外部接続パッドと、
上記絶縁板の表裏面のいずれかに設けられた、上記ループアンテナ素子部の端が接続された素子接続パッドと、
上記絶縁板の裏面のうち、この絶縁板を挟んで上記外部接続パッドと対向する領域に設けられるとともに上記素子接続パッドと電気的に繋がった、上記外部接続パッドとの間でキャパシタを形成するキャパシタパターンと、
インダクタ素子とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のアンテナでは、ループアンテナ素子部と送受信機器との間の信号を中継する中継基板にキャパシタが直接形成される。また、キャパシタを形成する一対の電極の一方には、外部接続パッドが兼用される。したがって、アンテナの部品点数が少なく、また基板の面積が縮小される。
【0010】
ここで、上記本発明のアンテナにおいて、上記インダクタ素子は、上記絶縁板の表面および裏面においてそれぞれ上記外部接続パッドおよび上記キャパシタパターンに接続されて、表面および裏面の絶縁板を挟んで互いに対向する領域にそれぞれ渦巻状に延び、それぞれ渦巻状に延びた各先端が絶縁板を貫通して互いに接続されていることが好ましい。
【0011】
インダクタ素子は、絶縁板を挟んで互いに対向する領域の双方を利用して配置されるため、小さな領域に配置することができる。したがって、基板の面積がさらに縮小される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、部品点数が少なく、面積が縮小されたフィルタ部を有するアンテナが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態であるRFIDアンテナの外観図である。
【図2】図1に示す中継基板を示す外観図である。図2のパート(A)は表面であり、パート(B)は裏面である。
【図3】図1および図2に示すRFIDアンテナの等価回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態であるRFIDアンテナの外観図である。
【0016】
図1に示すRFIDアンテナAは、RFIDにおける無線通信を行うための装置である。RFIDアンテナAは、図示しない送受信機器に接続されて動作する。
【0017】
RFIDアンテナAは、ループアンテナ素子部1および中継基板2を備えている。
【0018】
ループアンテナ素子部1は、ループ状に延びた複数の電線11a〜11dからなる。より詳細には、ループアンテナ素子部1は、4つの個別電線11a〜11dがそれぞれ被覆され1つに束ねられた多心ケーブルCである。多心ケーブルCが有する4つの電線11a〜11dのそれぞれの両端は、中継基板2に接続されている。4本の電線11a〜11dを有する多心ケーブルCを用いることによって、ケーブルCを所定の長さに切断し両端の被覆を除去するだけで、互いに同じ長さを有し互いに同じ領域を複数回ループするアンテナ素子が安価に作成できる。
【0019】
中継基板2には、4つの電線11a〜11dのそれぞれの両端が接続される。また、中継基板2には、2つの外部接続パッド21,22が設けられている。外部接続パッド21,22には、図示しない送受信機器が接続される。
【0020】
図2は、図1に示す中継基板を示す外観図である。図2のパート(A)には、図1に示された中継基板2の表面が示されており、パート(B)には、パート(A)とは反対側から見た裏面が示されている。
【0021】
図2に示す中継基板2は、絶縁板20、および、絶縁板20の表裏面に設けられた導体パターンを有する。絶縁板20は、絶縁材料(誘電体)からなる板である。ただし、絶縁板20には、絶縁材料からなるフィルムも採用可能である。また、導体パターンは金属材料からなる。
【0022】
図2のパート(A)に示す絶縁板20の表面には、先に説明した外部接続パッド21,22の他に、6つの素子接続パッド23a〜23h、および2つの表面インダクタパターン26a,27aが設けられている。また、図2のパート(B)に示す絶縁板20の裏面には、2つのキャパシタパターン24,25、および、2つの裏面インダクタパターン26b,27bが設けられている。
【0023】
外部接続パッド21,22には、図示しない送受信機器が接続され、送受信機器とRFIDアンテナA(図1参照)との間で電力および信号がやり取りされる。外部接続パッド21,22には、図示しない送受信機器の端子が接触する。ただし、外部接続パッド21,22には、端子の接触以外にも、例えば送受信機器から延びる導線が半田接続されてもよい。外部接続パッド21,22は、少なくとも送受信機器のコンタクトや導線が接続されるための広さを有する。
【0024】
素子接続パッド23a〜23hには、ループアンテナ素子部1(図1参照)を構成する電線11a〜11dの両端が半田接続される。素子接続パッド23a〜23hのいくつかは、4つの電線11a〜11dが直列接続されるように、導体パターンを介して互いに接続されている。このため、4つの電線11a〜11dの両端を素子接続パッド23a〜23hに半田接続するだけで、4周のループアンテナを作ることができる。8つの素子接続パッド23a〜23hのうち両端に配置された2個の素子接続パッド23a,23hが、4周のループからなるループアンテナ素子部1(図1参照)の端子として機能する。
【0025】
キャパシタパターン24,25は、絶縁板20を挟んで外部接続パッド21,22とそれぞれ対向する領域に設けられている。また、キャパシタパターン24,25は、導体パターンおよびスルーホール24h,25hを介して上述した2個の素子接続パッド23a,23hとそれぞれ接続されている。
【0026】
キャパシタパターン24,25のうち、一方のキャパシタパターン24は、外部接続パッド21との間に絶縁板20を挟んでおり、外部接続パッド21との間にキャパシタ素子を形成している。また、他方のキャパシタパターン25は、外部接続パッド22との間に絶縁板20を挟んでおり、外部接続パッド22との間にキャパシタ素子を形成している。キャパシタパターン24,25が、絶縁板20を挟んで外部接続パッド21,22と重なる面積は、絶縁板20の厚みおよび誘電率を考慮して、必要とされる容量が得られるように設定されている。
【0027】
本実施形態では、外部接続パッド21,22が、キャパシタ素子の電極に兼用されている。このため、キャパシタ素子の絶縁板20に占める合計の面積が縮小する。
【0028】
また、中継基板2には、2つのインダクタ素子が形成されている。ここでは、図2のパート(A)に示す2つの表面インダクタパターン26a,27aのうちの一方の表面インダクタパターン26aと、図2のパート(B)に示す2つの裏面インダクタパターン26b,27bのうちの一方の裏面インダクタパターン26bとに着目する。これらの表面インダクタパターン26aおよび裏面インダクタパターン26bは、絶縁板20を挟んで互いに対向する領域にそれぞれ渦巻状に延びており、それぞれ渦巻状に延びた各先端が絶縁板20を貫通するスルーホール26hによって互いに接続されている。表面インダクタパターン26aの渦巻と、裏面インダクタパターン26bの渦巻とは、双方に亘って流れる電流が同じ向きに回転する向きに形成されている。表面インダクタパターン26aおよび裏面インダクタパターン26bの組合せが本発明にいうインダクタ素子の一例に相当する。
【0029】
表面インダクタパターン26aおよび裏面インダクタパターン26bのそれぞれは渦巻状に延びており、それぞれがインダクタンスを有する。本実施形態では、さらに、表面インダクタパターン26aおよび裏面インダクタパターン26bが絶縁板20を挟んで互いに対向する領域にそれぞれ渦巻状に延びているため、表面インダクタパターン26aと裏面インダクタパターン26bとの間の相互インダクタンスが増大する。したがって、例えば2つのインダクタパターンを同じ面に並べた場合や、1つの渦巻形状で形成した場合に比べて、必要とされるインダクタンスを得るための合計の配置面積が縮小する。このことは、他方の表面インダクタパターン27aと裏面インダクタパターン27bとについても同様である。これら他方の表面インダクタパターン27aおよび裏面インダクタパターン27bの組合せも、本発明にいうインダクタ素子の一例に相当する。
【0030】
このようにして、キャパシタ素子およびインダクタ素子が中継基板2に形成される。形成されたキャパシタ素子およびインダクタ素子によって、フィルタ回路が形成される。
【0031】
図3は、図1および図2に示すRFIDアンテナの等価回路を示す回路図である。回路図中の各素子には、図1および図2に示した要素に対応する符号が示されている。
【0032】
外部接続パッド21とループアンテナ素子部1との間には、外部接続パッド21およびキャパシタパターン24からなるキャパシタ素子(21,22)と、表面インダクタパターン26aおよび裏面インダクタパターン26bからなるインダクタ素子(26a,26b)とが並列に接続されている。また、他方の外部接続パッド22とループアンテナ素子部1との間には、外部接続パッド22およびキャパシタパターン25からなるキャパシタ素子(25,22)と、表面インダクタパターン27aおよび裏面インダクタパターン27bからなるインダクタ素子(27a,27b)とが並列に接続されている。
【0033】
これらのキャパシタ素子(21,24),(25,22)、インダクタ素子(26a,26b),(27a,27b)、および、ループアンテナ素子部1のインダクタンスによって、バンドエリミネーションフィルタが構成されている。このフィルタによって、RFIDの通信帯域の信号をRFIDアンテナAから放射させつつ、RFIDアンテナAが搭載される電子機器の、別の無線通信機能に対するノイズの影響を低減したり、他の無線通信系との結合を低減することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態には、本発明にいうアンテナの例として、RFIDアンテナAが示されている。ただし、本発明はRFIDアンテナに限られるものではなく、他の用途や帯域の通信用アンテナであってもよい。
【0035】
また、上述した実施形態におけるキャパシタ素子やインダクタ素子はバンドエリミネーションフィルタを構成する。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、ハイパスフィルタやローパスフィルタ、またはバンドパスフィルタであってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態における中継基板2には、キャパシタ素子やインダクタ素子が2つずつ形成されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、素子が1つまたは3つ以上形成されるものでもよい。また、素子接続パッドは、絶縁板の裏面に設けられてもよい。また、ループアンテナ素子部1におけるループの回数、すなわち、電線の本数も4以外の数であってもよい。
【0037】
また、上述した実施形態には、素子接続パッド23a〜23hが、外部接続パッド21,22と同様に、絶縁板20の表面に配置された例が示されている。ただし、本発明の素子接続パッドは例えば絶縁板の裏面に配置されてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態には、本発明にいうループアンテナ素子部の導体の例として電線が示されている。ただし、本発明の導体は電線に限られるものではなく、例えば中継基板上に形成されたループのパターンであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
A RFIDアンテナ
1 ループアンテナ素子部
11a,11b,11c,11d 電線
2 中継基板
20 絶縁板
21,22 外部接続パッド
23a〜23h 素子接続パッド
24,25 キャパシタパターン
26a,27a 表面インダクタパターン
26b,27b 裏面インダクタパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状に延びた導体からなるループアンテナ素子部と、
前記ループアンテナ素子部と送受信機器との間の信号を中継する、前記ループアンテナ素子部の端が接続された中継基板とを備え、
前記中継基板が、
絶縁板と、
前記絶縁板の表面に設けられた、前記送受信機器の導体と接続する外部接続パッドと、
前記絶縁板の表裏面のいずれかに設けられた、前記ループアンテナ素子部の端が接続された素子接続パッドと、
前記絶縁板の裏面のうち、該絶縁板を挟んで前記外部接続パッドと対向する領域に設けられるとともに前記素子接続パッドと電気的に繋がった、前記外部接続パッドとの間でキャパシタを形成するキャパシタパターンと、
インダクタ素子とを備えたことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記インダクタ素子は、前記絶縁板の表面および裏面においてそれぞれ前記外部接続パッドおよび前記キャパシタパターンに接続されて、該表面および該裏面の該絶縁板を挟んで互いに対向する領域にそれぞれ渦巻状に延び、それぞれ渦巻状に延びた各先端が該絶縁板を貫通して互いに接続されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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