説明

アントラピリドン化合物又はその塩、そのアントラピリドン化合物を含有するマゼンタインク組成物及び着色体

【課題】インクジェット記録に適する高い鮮明性をもつ色相を有し、且つ記録物の堅牢度が強く、又保存安定性が優れたマゼンタ色素の提供。
【解決手段】下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、並びにこれを含有するインク組成物。


[式(1)中、Rは水素原子、アルキル基等を、XはN,N’−ヒドラジンジイル等の架橋基を、Yは6位にカルボキシル基を有する2−ナフトキシ基、1’−カルボキシ−4,4’−ビフェニルオキシ基等の置換基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なアントラピリドン化合物又はその塩、そのアントラピリドン化合物を含有するマゼンタインク組成物及びこの組成物等により着色された着色体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法において、インクの各種吐出方式が開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材(紙、フィルム、布帛等)に付着させて記録を行うものである。これは、記録ヘッドと被記録材とが接触しない為、音の発生がなく静かであり、また小型化、高速化、カラー化が容易という特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。
従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、水溶性染料を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されており、これらの水溶性インクにおいてはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく一般に水溶性有機溶剤が添加されている。これらの従来のインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求され、また形成される画像には、耐水性、耐光性、耐湿性等の各種堅牢度が求められている。
【0003】
一方、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによりカラーで記録するには、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレー等のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を減法混色画像で出きるだけ忠実に再現するには、できるだけY、M、Cのそれぞれが、それぞれの標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。又インク組成物は長期の保存に対し安定であり、プリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度に優れていることが求められている。
【0004】
インクジェットプリンタの用途はOA用小型プリンタから産業用の大型プリンタにまで拡大されてきており、耐水性、耐湿性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度がこれまで以上に求められている。
耐水性ついては多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル又は特殊セラミック等インク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂等とともに紙の表面にコーティングすることにより、大幅に改良されてきているが、未だ満足できる状況には無い。
耐湿性とは着色された被記録材を高湿度の雰囲気下に保存した際に被記録材中の染料色素が滲んでくるという現象に対する耐性のことである。染料色素の滲みがあると、特に写真調の高精細な画質を求められる画像においては著しく画像品位が低下するため、できるだけこの様な滲みを少なくする事が重要な課題である。
耐光性については大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、特にY、M、C、Kの4原色のうちマゼンタの色素はもともと耐光性が弱いものが多く、その改良が課題とされている。又、最近のデジタルカメラの浸透と共に家庭でも写真をプリントする機会が増しており、得られたプリント物を保管する時に、空気中の酸化性ガスによる画像の変色も問題視されている。その酸化ガスは、記録紙上又は記録紙中で染料と反応し、印刷された画像を変退色させる。酸化性ガスの中でも、オゾンガスはインクジェット記録画像の退色現象を促進させる原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上も課題の1つである。
【0005】
インクジェット記録用水溶性インクに用いられているマゼンタ色素としては、キサンテン系と、H酸を用いたアゾ系色素が代表的である。しかし、キサンテン系については色相及び鮮明性は非常に優れるが耐光性が非常に劣る。又、H酸を用いたアゾ系色素については色相及び耐水性の点では良いものがあるが、耐光性、耐ガス性及び鮮明性が劣る。このタイプでは鮮明性及び耐光性の優れたマゼンタ染料も開発されているが、銅フタロシアニン系色素に代表されるシアン染料やイエロー染料等他の色相の染料に比べ、依然劣る水準である。
【0006】
鮮明性及び耐光性の優れるマゼンタ色素としてはアントラピリドン系色素(例えば、特許文献1〜12参照)があるが、色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐ガス性及び溶液安定性のすべてを満足させるものは得られていない。
特に特許文献9、12及び13には、2分子のアントラピリドン化合物を架橋基により架橋した構造を有する化合物及び該化合物を含有するインク組成物が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−306221号公報(1−3頁、7−18頁)
【特許文献2】特開2000−109464号公報(1−2頁、8−12頁)
【特許文献3】特開2000−169776号公報(1−2頁、6−9頁)
【特許文献4】特開2000−191660号公報(1−3頁、11−14頁)
【特許文献5】特開2000−256587号公報(1−3頁、7−18頁)
【特許文献6】特開2001−72884号公報(1−2頁、8−11頁)
【特許文献7】特開2001−139836号公報(1−2頁、7−12頁)
【特許文献8】WO2004/104108号国際公開パンフレット(20−36頁)
【特許文献9】特開2003−192930号公報(1−4頁、15−18頁)
【特許文献10】特開2005−8868号公報(1−3頁、15−22頁)
【特許文献11】特開2005−314514号公報(1−3頁、15−20頁)
【特許文献12】WO2006/075706号国際公開パンフレット
【特許文献13】WO2008/066062号国際公開パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は水に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、且つ記録物の耐光、耐湿、耐ガス堅牢性に優れたマゼンタ色素(化合物)及びそれを含有するインク組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、特定の下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、
1)
下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)中、
Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロヘキシル基、モノアルキルアミノアルキル基、又はジアルキルアミノアルキル基を、
Xは架橋基を、
Yは下記式(2)又は(3)で表されるいずれか1つの基を、それぞれ表す、
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
[式(3)中、R1は下記式(4)乃至(6)で表されるいずれか1つの基を表す。]
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
[式(6)中、R2は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。]。
【0019】
2)
Rが水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基、シクロヘキシル基、モノC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキル基、又はジ(C1−C4アルキル)アミノC1−C4アルキル基であり、
架橋基Xが、N,N’−ヒドラジンジイル、又は下記式(201)乃至(207)よりなる群から選択されるいずれか1つの基であり、
【0020】
【化201】

【0021】
[式(201)中、nは2乃至8であり、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【0022】
【化202】

【0023】
[式(202)中、R3は水素原子、又はメチル基を表し、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【0024】
【化203】

【0025】
[式(203)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【0026】
【化204】

【0027】
[式(204)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【0028】
【化205】

【0029】
[式(205)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【0030】
【化206】

【0031】
[式(206)中、mは2乃至4であり、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【0032】
【化207】

【0033】
[式(207)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
Yが下記式(7)乃至(9)で表されるいずれか1つの基である、上記1)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
3)
架橋基Xが、N,N’−ヒドラジンジイル;nが2乃至6で表される式(201);式(202);式(203);式(204);式(205);mが3で表される式(206);及び、式(207);よりなる群から選択されるいずれか1つの基である、上記1)又は2)に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
4)
Rが水素原子、直鎖C1−C4アルキル基、2−ヒドロキシエチル基、シクロヘキシル基、又は3−ジエチルアミノプロピル基であり、
架橋基Xが、nが2乃至4である式(201)で表される基である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
5)
Rが水素原子、又は直鎖C1−C4アルキル基であり、
Xが、nが2乃至4である式(201)で表される基であり、
Yが式(7)乃至(9)で表されるいずれか1つの基である、上記1)乃至4)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩、
6)
下記式(10)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
【0038】
【化10】

【0039】
7)
下記式(11)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
【0040】
【化11】

【0041】
8)
下記式(12)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
【0042】
【化12】

【0043】
9)
少なくとも水と、色素として上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩とを含有することを特徴とするインク組成物、
10)
さらに水溶性有機溶剤を含有する上記9)に記載のインク組成物、
11)
インクジェット記録用である上記10)に記載のインク組成物、
12)
インク組成物中に色素として含有する上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の総質量に対して、該化合物中の無機不純物の含有量が1質量%以下である、上記9)乃至11)のいずれか一項に記載のインク組成物、
13)
上記1)乃至8)のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の含有量が、0.1〜20質量%である上記8)乃至12)のいずれか一項に記載のインク組成物、
14)
上記9)乃至13)いずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法、
15)
被記録材が、情報伝達用シートである上記14)に記載のインクジェット記録方法、
16)
情報伝達用シートが、多孔性白色無機物を含有したインク受容層を有するシートである上記15)に記載のインクジェット記録方法、
17)
上記9)乃至13)のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体、
18)
着色がインクジェットプリンタによりなされた上記17)に記載の着色体、
19)
上記9)乃至13)のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ、
に関する。
【発明の効果】
【0044】
本発明の上記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩は、インクジェット記録紙上で非常に鮮明性、明度の高い色相であり、水溶解性に優れ、インク組成物製造過程でのメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特徴を有する。又、この化合物を使用した本発明のインク組成物は長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。そして該化合物又はその塩をインクジェット記録用のマゼンタインクとして使用した印刷物は被記録材(紙、フィルム等)を選択することなく理想的なマゼンタの色相である。更に本発明のマゼンタインク組成物は、写真調のカラー画像の色相を紙の上に忠実に再現させることも可能である。更に写真画質用インクジェット専用紙(フィルム)のような無機微粒子を表面に塗工した被記録材に記録しても、耐光性、耐オゾン性、耐湿性等の各種堅牢性、特に耐湿性と耐水性が良好であり、写真調の記録画像の長期保存安定性に優れている。従って、上記式(1)で表される本発明のアントラピリドン化合物又はその塩はインクジェット記録用のインク色素として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明を詳細に説明する。なお、特に断りの無い限り、以下の本明細書においては煩雑さを避けるため、「本発明のアントラピリドン化合物又はその塩」の両者を含めて、「本発明のアントラピリドン化合物」と簡略して記載する。
本発明のアントラピリドン化合物又はその塩は、前記式(1)で表される。
上記式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロヘキシル基、又はモノ−又はジ−アルキルアミノアルキル基を表す。
Rにおけるアルキル基としては直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C8、好ましくはC1−C6、より好ましくはC1−C4である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の直鎖のもの;iso−プロピル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、iso−ヘキシル、iso−ヘプチル、iso−オクチル等の分岐鎖のもの;シクロヘキシル等の環状のもの;等が挙げられる。
【0046】
Rにおけるヒドロキシアルキル基としては、直鎖、分岐鎖、及び環状のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。該ヒドロキシアルキル基は、上記Rにおける「アルキル基」の任意の水素原子がヒドロキシに置換したものであり、炭素数の範囲についても同様である。ヒドロキシの置換位置は任意の位置でよいが、該アルキル基部分の末端に置換するのが好ましい。具体例としては、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル等が挙げられ、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチルが好ましい。
【0047】
Rにおけるモノアルキルアミノアルキル基としては、好ましくはモノC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばモノメチルアミノプロピル、モノエチルアミノプロピル等が挙げられる。
Rにおけるジアルキルアミノアルキル基としては、好ましくはジ(C1−C4アルキル)アミノC1−C4アルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばジメチルアミノプロピル、ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
上記のうちRとしては水素原子、アルキル基、又はシクロヘキシルが好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましく、メチルが特に好ましい。
【0048】
上記式(1)におけるXは架橋基を表す。
具体的なXとしては、N,N’−ヒドラジンジイル、又は、上記式(201)乃至(207)よりなる群から選択されるいずれか1つの基である。
式(201)乃至(207)中に記載した「*」は、2つの異なるトリアジン環と結合する位置をそれぞれ表し、その結合様式は直接結合である。すなわち式(201)乃至(207)中に記載した「*」を付した結合手は、各窒素原子の結合手を意味し、各窒素原子と2つの異なるトリアジン環は直接結合している。
【0049】
Xが式(201)で表される基である場合、nは通常2乃至8、好ましくは2乃至6、より好ましくは2乃至4の整数であり、特に好ましくは2である。
【0050】
Xが式(202)で表される基である場合、R3は水素原子又はメチルを表す。
【0051】
Xが式(206)で表される基である場合、mは2乃至4の整数が好ましく、より好ましくは3である。
【0052】
上記のうちXとして好ましいものは式(201)乃至(207)であり、より好ましくは式(201)乃至(204)であり、更に好ましくは式(201)又は式(202)であり、最も好ましくは式(201)である。
【0053】
上記式(1)において、Yは上記式(2)又は(3)で表されるいずれか1つの基を表す。
【0054】
Yにおける式(2)としては、カルボキシが1つ置換した1−又は2−ナフチルオキシが挙げられ、2−ナフチルオキシが好ましい。カルボキシの置換位置は特に制限されないが、5乃至8位が好ましく、6位がより好ましい。
【0055】
Yにおける式(3)としては、R1が上記式(4)乃至(6)で表されるいずれか1つの基を有するものが挙げられる。R1の置換位置は、式(3)における酸素原子の置換位置を1位として、2位、3位又は4位であり、2位又は4位が好ましく、4位がさらに好ましい。
式(3)におけるR1としては、式(4)又は(6)が好ましい。
【0056】
該式(6)中、R2は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。R2におけるアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C8、好ましくはC1−C6、より好ましくはC1−C4である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の直鎖のもの;iso−プロピル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、iso−ヘキシル、iso−ヘプチル、iso−オクチル等の分岐鎖のもの;シクロヘキシル等の環状のもの;等が挙げられる。
2におけるアルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C8、好ましくはC1−C6、より好ましくはC1−C4である。具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシロキシ、n−ヘプチロキシ、n−オクチロキシ等の直鎖のもの;iso−プロポキシ、iso−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、iso−ペンチロキシ、iso−ヘキシロキシ、iso−ヘプチロキシ、iso−オクチロキシ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。より好ましいものはn−プロポキシである。
2としてはアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0057】
Yにおける式(2)として特に好ましいものが上記式(7)で表される基であり、式(3)として特に好ましいものが上記式(8)又は式(9)で表される基である。
【0058】
上記式(1)乃至(9)、及び(201)乃至(207)におけるR、X、Y、R1、R2、R3、n、及びmのそれぞれにおいて、好ましいもの同士を組合せたものはより好ましく、より好ましいもの同士を組合せたものはさらに好ましい。さらに好ましいもの同士等についても同様である。
【0059】
上記式(1)における特に好ましい化合物は、上記式(10)乃至(12)で表される化合物である。
【0060】
上記式(1)で表される化合物の塩は、無機又は有機陽イオンの塩である。中でもアルカリ金属塩等、たとえばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等、又は下記式(3)で表される4級アンモニウム塩が好ましい。
【0061】
【化23】

【0062】
上記式(23)中、Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表わす。
【0063】
式(23)のZ1〜Z4におけるアルキル基の例としてはメチル、エチル等があげられ、ヒドロキシアルキル基の例としてはヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等があげられ、更にヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等が挙げられる。
【0064】
好ましい塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの各塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、リチウム、ナトリウム及びアンモニウム塩である。
【0065】
上記の塩の製造法としては、例えば、上記式(1)で表される化合物を含む反応液、ウェットケーキ、又は乾燥品等を水に溶解し、これに塩化ナトリウムを加えて、塩析、濾過分離することによって該化合物のナトリウム塩のウェットケーキを得ることができる。又、得られたウェットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えて例えばpH1以下のような強酸性に調整して得られる固体を濾過分離すれば、式(1)で表される化合物の遊離酸を得ることができる。又、pHを適宜調整することによりナトリウム塩と遊離酸の混合物を望みの比率で得ること等も可能である。更に、その遊離酸のウェットケーキを水と共に撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、上記式(13)で表される有機塩基等を添加してアルカリ性にすれば、各々相当するカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、有機塩が得られる。この際に遊離酸と、例えばナトリウム塩との混合物のウェットケーキを使用し、水酸化カリウムを添加することにより、ナトリウムとカリウムの混塩、又はナトリウム、カリウム及び遊離酸の混合物等を得ることも同様に可能である。これらの塩のうち、特に好ましいものは、前記の通り、リチウム、ナトリウム及びアンモニウム塩である。
【0066】
本発明の式(1)で表されるアントラピリドン化合物の好ましい具体例を、下記表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
以下に本発明の化合物の製造方法を記載する。なお下記式(101)乃至(106)中に記載のR及びXは、上記式(1)におけるのと同じ意味を表す。
即ち、下記式(101)で表されるアントラキノン化合物1モルにベンゾイル酢酸エチルエステル1.1から3モルをキシレン等の極性溶媒中、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物の存在下、130〜180℃、5〜15時間反応を行い、下記式(102)で表される化合物を得る。
【0069】
【化101】

【0070】
【化102】

【0071】
得られた上記式(102)で表される化合物1モルにメタアミノアセトアニリド1〜5モルを、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性有機溶媒中、炭酸ナトリウムのような塩基及び酢酸銅のような銅触媒の存在下、110〜150℃、2〜6時間ウルマン反応をおこなって縮合し、下記式(103)で表される化合物を得る。
【0072】
【化103】

【0073】
得られた上記式(103)で表される化合物を8〜15%発煙硫酸中で、50〜120℃でスルホ化すると同時に、アセチルアミノ基を加水分解する事により、下記式(104)で表される化合物を得る。
【0074】
【化104】

【0075】
得られた上記式(104)で表される化合物2モルと2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)2〜2.4モルとを水中で、pH2〜7、0〜35℃、2〜8時間反応させて得られる下記式(105)の化合物に、上記式(201)乃至(207)で表される架橋基に対応するジアミノ化合物1モルを、pH3〜9、30〜80℃、10分〜5時間反応させることにより、下記式(106)で表される化合物を得ることができる。
【化105】

【0076】
【化106】

【0077】
得られた上記式(106)の化合物に、上記式(2)又は(3)で表される基に対応する、ナフトール又はフェノール誘導体2〜4モルを、pH7〜11、50〜100℃、10分〜8時間反応させることにより、上記式(1)で表される本発明の化合物を得る。
【0078】
なお、2,4,6−トリクロロ−S−トリアジンに対する各化合物の縮合の順序は、各化合物の反応性に応じて適宜定められ、上記の順序には限定されない。
【0079】
上記式(1)で表される化合物は遊離酸の形で、あるいはその塩の形で得ることが可能である。これらの本発明の化合物は遊離酸又はその塩として、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩等に誘導することができる。各種の塩から遊離酸へ導く製造方法、遊離酸から各種の塩又は各種の混塩又は遊離酸と塩との混合物等へ導く製造方法については前記したとおりである。
【0080】
上記式(1)で表される化合物は、その総質量中に含有される金属陽イオンの塩化物及び硫酸塩等の無機不純物量の少ないものを用いるのが好ましく、その含有量の目安は例えば1質量%以下程度である。下限は検出機器の検出限界以下、即ち、0%でもよい。無機不純物の含有量の少ない本発明のアントラピリドン化合物を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法で脱塩処理すればよい。
本発明のインク組成物は、本発明の上記式(1)で表される化合物又はその塩を水又は水性溶媒(後記する水溶性有機溶剤を含有する水)に溶解したものである。本発明のインク組成物は、例えば上記式(1)で表される化合物を含む反応液等を、インク組成物の製造に直接使用することが出来る。又上記反応液から目的物を単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物に加工することもできる。
本発明のインク組成物は、本発明のアントラピリドン化合物を、色素として、通常0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%含有する。このインク組成物はさらに必要に応じて、水溶性有機溶剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有してもよい。水溶性有機溶剤は、染料溶解剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、粘度調整剤、浸透促進剤、表面張力調整剤、消泡剤等のインク調製剤と同様の機能を有する場合もあり、本発明のインク組成物中には含有する方が好ましい。本発明のインク組成物には水溶性有機溶剤0〜30質量%、好ましくは5〜30質量%、インク調製剤0〜5質量%をそれぞれ含有してもよい。
【0081】
使用しうる水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0082】
上記のうち好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンである。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0083】
以下、本発明のインク組成物を調整するに当たり使用しうるインク調整剤について説明する。インク調整剤の具体例としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤及び界面活性剤等が挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤として無水酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム、さらにはアベシア社製、商品名:プロクセルGXL(S)、プロクセルXL−2(S)等が挙げられる。
【0084】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを7.5〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム(アンモニア水)、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0085】
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0086】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化されたベンゾフェノン、スルホン化されたベンゾトリアゾール等が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0087】
界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等がある。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体等がある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系等、さらに日信化学社製、商品名:サーフィノール104E、104PG50、82、465、オルフィンSTG等が挙げられる。これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0088】
本発明の水性インク組成物は、上記式(1)で表される化合物を水又は上記水性溶媒(水溶性有機溶剤を含有する水)に上記インク調製剤等と共に溶解させることによって製造できる。
【0089】
上記製造法において、各成分を溶解させる順序には特に制限はない。あらかじめ水又は上記水溶性有機溶剤に本発明の化合物を溶解させ、インク調製剤を添加してもよいし、該化合物を水に溶解させたのち、水溶性有機溶剤、インク調製剤を添加してもよい。またこれと順序が異なっていてもよいし、該化合物の合成における最終工程後の反応液又は逆浸透膜による脱塩処理を行った該化合物を含有する溶液に、水溶性有機溶剤、インク調製剤を添加してインク組成物を製造してもよい。インク組成物を調製するにあたり、用いられる水はイオン交換水又は蒸留水等の不純物の少ないものが好ましい。更に、必要に応じメンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、更にインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは0.8ミクロン〜0.1ミクロンである。
【0090】
本発明の着色体とは、本発明のアントラピリドン化合物、又は該化合物を含有する本発明のインク組成物で着色された物質である。着色される物質には特に制限はなく、例えば紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられるがこれらに限定されない。着色法としては例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェットプリンタによる方法等が挙げられるが、インクジェットプリンタによる方法が好ましい。
【0091】
本発明のインクジェット記録方法を適用しうる被記録材(メディア)としては、例えば、紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維及び皮革等が挙げられ、情報伝達用シートが好ましい。情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的にはこれを基材としてインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオンポリマーを含浸あるいは塗工すること;又は、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等、インク中の色素を吸着し得る多孔性白色無機物をポリビニルアルコールやポリビニールピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工すること;等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは、通常インクジェット専用紙(フィルム)や光沢紙(フィルム)等と呼ばれ、例えば、旭硝子社製、商品名ピクトリコ;キャノン社製、商品名プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、マットフォトペーパー;エプソン(株)製、商品名クリスピア、写真用紙(光沢)、フォトマット紙、スーパーファイン専用光沢フィルム;日本ヒューレットパッカード(株)製、少雨品名アドバンスフォトペーパー、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム、フォト用紙;コニカ(株)製、商品名フォトライクQP;等がある。なお、普通紙も当然利用できる。
【0092】
これらのうち、多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録した画像のオゾンガスによる変退色は、特に大きくなることが知られているが、本発明の水性マゼンタインク組成物はオゾンガスを含めたガス耐性が優れているため、このような被記録材への記録の際にも効果を発揮する。
【0093】
このような目的で使用される多孔性白色無機物としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、合成非晶質シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。
【0094】
被記録材に本発明のインクジェット記録方法で記録するには、例えば本発明のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置に装填し、通常の方法で被記録材に記録すればよい。本発明のインクジェット記録方法では、本発明のマゼンタのみならず、イエロー、シアン、グリーン、オレンジ、ブルー(又はバイオレット)及び必要に応じてブラック等各色のインク組成物を併用しうる。各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、これらの容器を、本発明のインクジェット記録用水性マゼンタインク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定位置に装填して使用される。インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;プリンタや加熱により生じる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等のプリンタが挙げられ、いずれの方式でも使用できる。
【0095】
本発明のインク組成物は、鮮明なマゼンタ色であり、特にインクジェット光沢紙において高い鮮明な色相を有し、記録画像の堅牢性も高い。又、人に対する安全性も高い。
【0096】
本発明のインク組成物は、貯蔵中に沈殿、分離することがない。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録において使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明によるインク組成物は連続式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても物理的性質の変化を起こさない。
【実施例】
【0097】
以下に本発明を実施例により、より具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り重量基準である。又、合成反応、晶析等の各操作は、いずれも特に断りの無い限り攪拌下に行った。
【0098】
実施例1
(1)キシレン360部中に、下記式(13)で表される化合物94.8部、炭酸ナトリウム3.0部、ベンゾイル酢酸エチルエステル144.0部を順次加えて昇温し、140〜150℃の温度で8時間反応を行った。その間、反応で生成するエタノールと水をキシレンと共沸させながら系外へ留出させ、反応を完結させた。次いで、冷却し、30℃にてメタノール240部を添加して30分攪拌後、析出固体を濾過分離した。得られた固体をメタノール360部で洗浄後、乾燥して、下記式(14)で表される化合物124.8部を淡黄色針状固体として得た。
【0099】
【化13】

【0100】
【化14】

【0101】
(2)N,N−ジメチルホルムアミド300.0部中に、上記式(14)で表される化合物88.8部、メタアミノアセトアニリド75.0部、酢酸銅1水和物24.0部及び炭酸ナトリウム12.8部を順次加えて120〜130℃に昇温し、3時間反応を行った。反応液を約50℃に冷却し、メタノール120部を添加して30分攪拌した。析出固体を濾過分離し、メタノール500部、次いで80℃の温水で洗浄した後、乾燥することにより下記式(15)で表される化合物79.2部を青味赤色固体として得た。
【0102】
【化15】

【0103】
(3)98%硫酸130部に、水冷しながら28%発煙硫酸170部を加え、12%発煙硫酸300部を調製した。水冷下、上記式(15)で表される化合物51.3部を50℃以下で加えた後、85〜90℃へ昇温し、4時間反応を行った。氷水600部中に反応液を加え、その間氷を加えながら発熱による液温の上昇を40℃以下に保持した。さらに水を加えて液量を1000部とした後、この液を濾過して、不溶解物を除去した。得られた母液に温水を加えて1500部とし、液温を60〜65℃に保ちながら、塩化ナトリウム300部を添加して2時間攪拌し、析出した固体を濾過分離した。20%塩化ナトリウム水溶液300部で洗浄し、よく水分を絞って下記式(16)で表される化合物59.2部を含むウェットケーキ100.3部を赤色固体として得た。なおこのウェットケーキ中の化合物の純度(含有量)は、ジアゾ分析法により45.9%だった。
【0104】
【化16】

【0105】
(4)水60部中に実施例1(3)で得た上記式(16)で表される化合物のウェットケーキ67.7部を加え、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液24部を加え、更に25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを3〜4に調整しながら溶液とした。
一方、氷水60部に商品名リパールOH(アニオン界面活性剤、ライオン株式会社製)0.4部、シアヌルクロライド8.9部を加え、30分攪拌した後、得られた懸濁液を、上記の式(16)を含む溶液中に加え、10%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを2.7〜3.0に保ち、25〜30℃で4時間反応を行うことにより、下記式(17)で表される化合物を含有する反応液を得た。
【0106】
【化17】

【0107】
(5)実施例1(4)で得られた上記式(17)で表される化合物を含有する反応液中に、エチレンジアミン1.26部を加え、次いで25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5.5〜6.0を保持しながら、液温を50〜55℃まで昇温し、その温度で3時間反応を行うことにより、下記式(18)で表される化合物を含む反応液を得た。
【0108】
【化18】

【0109】
(6)実施例1(5)で得られた上記式(18)で表される化合物を含む反応液を80℃に加熱し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9.0に調整しながら、下記式(19)
の化合物11.3部を5分間で添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを9.5〜10.0に保持しながら、液温を90℃に加熱し、その温度で2時間反応させた。反応後、水を加えて液量を約350部に調整した後、濾過して不溶解物を除去した。
【0110】
【化19】

【0111】
得られた母液に水を加えて液量を400部とした後、液温を60〜70℃に保ちながら、濃塩酸を加えてpHを4に調整した。次いで塩化アンモニウム20部を加え、30分間攪拌し、析出した固体を濾過分離し、10%塩化アンモニウム水溶液150部で洗浄することにより赤色ウェットケーキを得た。
(7)実施例1(6)で得られた赤色ウェットケーキを、メタノール500部中に加え、60〜65℃に加熱して1時間攪拌した。析出固体を濾過分離し、メタノールで洗浄後、乾燥することにより本発明の下記式(10)で表される化合物30.4部を赤色固体として得た。得られた化合物の水溶液中におけるλmax(最大吸収波長)は、509nmだった。
【0112】
【化10】

【0113】
実施例2
(1)実施例1(1)乃至(5)と同様にして得られた上記式(18)で表される化合物を含む反応液を80℃に加熱し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9.0に調整しながら、下記式(20)
の化合物17.1部を添加し、25%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを9.5に保持しながら、液温を90℃に加熱し、その温度で3時間30分間かけて反応させた。反応後、水を加えて液量を約350部に調整した後、濃塩酸を加えてpHを8に調整後、濾過して不溶解物を除去した。
【0114】
【化20】

【0115】
得られた母液に水を加えて液量を500部とした後、液温を60〜70℃に保ちながら、濃塩酸を加えてpHを5に調整した。次いで塩化アンモニウム50部、次いで濃塩酸を加えて、pHを2.4に調整し、30分間攪拌し、析出した固体を濾過分離し、15%塩化アンモニウム水溶液100部で洗浄することにより、赤色ウェットケーキを得た。
(2)実施例2(1)で得られた赤色ウェットケーキを、メタノール240部中に加え、60〜65℃に加熱して30分間攪拌し、次いでエタノール360部を加え、70℃にて30分間攪拌し、析出固体を濾過分離し、エタノールで洗浄後、乾燥することにより本発明の下記式(11)で表される化合物37.2部を赤色固体として得た。得られた化合物の水溶液中におけるλmax(最大吸収波長)は、510nmだった。
【0116】
【化11】

【0117】
実施例3
(1)実施例1の(1)乃至(4)と同様にして得られた上記式(17)で表される化合物を含有する反応液中に、下記式(21)で表される化合物12.3部を加え、pHを5.5とした後に加熱し、pHを5.5〜6.0に保持しながら50〜55℃にて2時間30分反応させた。このpH調整は、いずれも25%水酸化ナトリウムにて行った。次いでpHを7〜8に保持しながら同温度で2時間反応させ、下記式(22)で表される化合物を含有する反応液を得た。
【0118】
【化21】

【0119】
【化22】

【0120】
(2)実施例3(1)で得られた反応液中にエチレンジアミン1.2部を加え、25%水酸化ナトリウムを加えながらpHを8〜9に保持し、85℃にて2時間反応させた後、温水を加えて液量を400部に調整し下記式(12)で表される化合物を含有する反応液を得た。
【0121】

【0122】
(3)得られた反応液を濾過して不溶解分を除去した後、65℃に加熱し、濃塩酸を加えてpHを1.2に調整した。次いで塩化アンモニウム48部を加え、60〜65℃にて30分攪拌した。析出した固体を濾過分離し、15%塩化アンモニウム水溶液200部で洗浄し、明赤色のウェットケーキ108部を得た。
(4)得られたウェットケーキにメタノールを加えて液量を700部とし、63℃にて30分間加熱、攪拌した後、30℃に冷却し15分攪拌して析出固体を濾過分離、メタノール100部で洗浄し、乾燥して赤色の本発明の上記式(12)で表される化合物25部を得た。
得られた化合物の水溶液中におけるλmax(最大吸収波長)は、535nmだった。
【0123】
実施例4
(A)インクの調製
上記実施例1で得られた化合物を用いて下記表2に示した組成の液体を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により試験用のインクを得た。また水はイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHが8〜10、総量100部になるように水、25%NaOH(水酸化ナトリウム)水溶液を加えた。実施例1で得られた化合物を用いたインクの調製を実施例4とする。又、実施例1で得られた化合物の代わりに、実施例2及び3で得られた化合物をそれぞれ使用する以外は実施例4と同様にして試験用のインクを調製した。この試験用インクの調製を、それぞれ実施例5及び6とする。
【0124】
表2(インク組成物)
実施例1の化合物 6.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(日信化学社製) 0.1部
水+25%NaOH 74.9部
計 100.0部
【0125】
比較例1
実施例1で得られた化合物の代わりに、特許文献13の実施例1に開示された式(2)で表される化合物を用いる以外は実施例4と同様にして比較用のインクを調製した。このインクの調製を比較例1とする。
【0126】
(B)インクジェット記録
インクジェットプリンタ(キヤノン社製、商品名Pixus iP4100)を用いて、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有する3種類の光沢紙にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、チェック柄のパターン(濃度100%と0%の1.5mm角正方形を交互に組み合わせたパターン)を作成し、コントラストの高いマゼンタ/ホワイトの印字物を得て、これを試験片とした。なお、ホワイトの部分はインクによって着色されていない、紙の地肌の部分である。下記の(D)記録画像の耐水性試験を行う際には、このチェック柄の印刷物を用いた。
また、印刷濃度が数段階の諧調が得られるように画像パターンを作り記録物を作成し、これを試験片とした。なお使用した光沢紙は以下の通りである。
光沢紙1:キヤノン社製、商品名プロフェッショナルフォトペーパー
PR−101
光沢紙2:エプソン社製、商品名クリスピア
光沢紙3:ヒューレットパッカード社製、商品名アドバンスフォトペーパー
【0127】
(C)記録画像の耐湿性試験
上記のようにして作成した試験片を、記録後すぐに恒温恒湿器(応用技研産業社製)を用いて30℃、80%RHで168時間放置した。D値が1.7付近の試験前後のブリード性を目視にて判定し、2段階で評価した。
○:ブリードが認められない
×:ブリードが認められる
結果を下記表3に示す。
【0128】
(D)記録画像の耐水性試験
印刷後24時間乾燥を行ったチェック柄パターンの試験片に対して、イオン交換水を一滴落し、自然乾燥させた。乾燥後、パターンの着色部分の滲み具合を目視で評価し、以下の基準で3段階に評価した。
滲みなし・・・・・・・・○
やや滲みあり・・・・・・△
滲みあり・・・・・・・・×
結果を下記表4に示す。
【0129】
表3
耐湿性試験
光沢紙1 光沢紙2 光沢紙3
実施例4 ○ ○ ○
実施例5 ○ ○ ○
実施例6 ○ ○ ○
比較例1 × × ×
【0130】
表4
耐水性試験
光沢紙1 光沢紙2 光沢紙3
実施例4 △ ○ ○
実施例5 ○ ○ ○
実施例6 ○ ○ ○
比較例1 × △ ×
【0131】
表3より明らかなように、耐湿性試験において、実施例4から6は全ての光沢紙において、ブリードが認められないのに対し、比較例1は、全ての光沢紙においてブリードが認められる。以上の結果から、実施例4から6は非常に耐湿性が優れていることがわかる。
また表4より明らかなように、耐水性試験においても、各実施例は比較例1よりも滲みが小さく、耐水性が良好である。これにより本発明のアントラピリドン化合物は、耐湿性、耐水性を有する画像を与える色素であることが明らかであり、インクジェット用マゼンタ色素として極めて優れたものであると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩、
【化1】

[式(1)中、
Rは水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロヘキシル基、モノアルキルアミノアルキル基、又はジアルキルアミノアルキル基を、
Xは架橋基を、
Yは下記式(2)又は(3)で表されるいずれか1つの基を、それぞれ表す、
【化2】

【化3】

[式(3)中、R1は下記式(4)乃至(6)で表されるいずれか1つの基を表す。]、
【化4】

【化5】

【化6】

[式(6)中、R2は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。]。
【請求項2】
Rが水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基、シクロヘキシル基、モノC1−C4アルキルアミノC1−C4アルキル基、又はジ(C1−C4アルキル)アミノC1−C4アルキル基であり、
架橋基Xが、N,N’−ヒドラジンジイル、又は下記式(201)乃至(207)よりなる群から選択されるいずれか1つの基であり、
【化201】

[式(201)中、nは2乃至8であり、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【化202】

[式(202)中、R3は水素原子、又はメチル基を表し、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【化203】

[式(203)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【化204】

[式(204)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【化205】

[式(205)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【化206】

[式(206)中、mは2乃至4であり、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
【化207】

[式(207)中、*は異なる2つのトリアジン環との結合部位を表す。]、
Yが下記式(7)乃至(9)で表されるいずれか1つの基である、請求項1に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
【化7】

【化8】

【化9】

【請求項3】
架橋基Xが、N,N’−ヒドラジンジイル;nが2乃至6で表される式(201);式(202);式(203);式(204);式(205);mが3で表される式(206);及び、式(207);よりなる群から選択されるいずれか1つの基である、請求項1又は2に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
【請求項4】
Rが水素原子、直鎖C1−C4アルキル基、2−ヒドロキシエチル基、シクロヘキシル基、又は3−ジエチルアミノプロピル基であり、
架橋基Xが、nが2乃至4である式(201)で表される基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
【請求項5】
Rが水素原子、又は直鎖C1−C4アルキル基であり、
Xが、nが2乃至4である式(201)で表される基であり、
Yが式(7)乃至(9)で表されるいずれか1つの基である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩。
【請求項6】
下記式(10)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩。
【化10】

【請求項7】
下記式(11)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩。
【化11】

【請求項8】
下記式(12)で表されるアントラピリドン化合物又はその塩。
【化12】

【請求項9】
少なくとも水と、色素として請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物又はその塩とを含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項10】
さらに水溶性有機溶剤を含有する請求項9に記載のインク組成物。
【請求項11】
インクジェット記録用である請求項10に記載のインク組成物。
【請求項12】
インク組成物中に色素として含有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の総質量に対して、該化合物中の無機不純物の含有量が1質量%以下である、請求項9乃至11のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアントラピリドン化合物の含有量が、0.1〜20質量%である請求項8乃至12のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項14】
請求項9乃至13いずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項15】
被記録材が、情報伝達用シートである請求項14に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
情報伝達用シートが、多孔性白色無機物を含有したインク受容層を有するシートである請求項15に記載のインクジェット記録方法。
【請求項17】
請求項9乃至13のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体。
【請求項18】
着色がインクジェットプリンタによりなされた請求項17に記載の着色体。
【請求項19】
請求項9乃至13のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。

【公開番号】特開2010−6969(P2010−6969A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168614(P2008−168614)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】