説明

アンモニア含有液の処理方法及び装置

【課題】アンモニア含有液の処理を常に安定に行うことができるので、良好な液質の処理液を常時安定して得ることができる。
【解決手段】アンモニア含有液のアンモニアを嫌気的に生物脱窒するアンモニア含有液の処理において、アンモニア含有液と嫌気性細菌とを生物処理槽14内で嫌気性雰囲気で接触させながら、一定濃度の亜硝酸を貯留した亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14にアンモニアを処理するための亜硝酸必要量を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンモニア含有液の処理方法及び装置に係り、特に廃水処理分野、ファインケミカル分野等の広い分野において発生するアンモニア含有液のアンモニアを生物学的に脱窒する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場廃液、写真現像廃液、化学生成物を製造する化学工場廃液等においては、低濃度から高濃度のアンモニア含有液が発生する。これらアンモニア含有液が廃液として廃棄される場合には、水域の富栄養化や溶存酸素の低下などの原因となることから、廃棄する前にアンモニアを除去する処理を行うことが必要である。また、液状の化学生成物にアンモニアが含有する場合には、化学生成物の純度を上げるために化学生成物からアンモニアを除去する必要がある。
【0003】
従来、低濃度のアンモニア含有液は、塩素による酸化や生物処理が行われていた。塩素処理では塩素とアンモニアとが反応し、アンモニアが除去されると同時にクロラミンが生成される。このクロラミンは殺菌作用が強く、環境の生態系を乱す虞があると共に、多量の塩素を必要とすることから、中濃度から高濃度のアンモニア含有液の処理には使用されず、通常、硝化・脱窒法による生物処理が行われている。
【0004】
この硝化・脱窒法による生物処理は、アンモニアを硝化細菌で亜硝酸を介して硝酸にする硝化反応と、硝酸を脱窒細菌で窒素ガスに変換する脱窒反応とにより行われる。しかし、硝化・脱窒法によるアンモニア含有液の処理は、脱窒反応において有機物が必要であり、有機物として窒素量の3倍のメタノール量の添加を必要とする。従って、アンモニアの濃度が高くなればなるほど多量のメタノールが使用され、イニシャルコストばかりでなく、多大なランニングコストを要するという欠点がある。
【0005】
これに対し、効率的な生物処理として、最近、嫌気性アンモニア酸化法が検討されている(例えば特許文献1)。この嫌気性アンモニア酸化法は、アンモニアの一部をアンモニア酸化細菌による亜硝酸型の硝化反応で亜硝酸に変換し、この亜硝酸と残りのアンモニアとを嫌気性アンモニア酸化細菌により脱窒する方法である。この嫌気性アンモニア酸化法は、硝化反応において必要酸素量が少なく、また脱窒反応に有機物を必要としないのでランニングコストを大幅に削減できるというメリットがある。
【特許文献1】特開2001−37467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、嫌気性アンモニア酸化法によるアンモニア含有液の処理は、上記の如くランニングコストを大幅に削減できるというメリットがある反面、アンモニアの一部を亜硝酸に変換する硝化反応が安定しないために、アンモニアと反応する亜硝酸の濃度が経時的に変動し易い。これにより、亜硝酸とアンモニアとを常に好ましい比率で脱窒反応させることが難しいので、アンモニア含有液の処理が安定せず、処理液の液質が変動し易いという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アンモニア含有液の処理を常に安定に行うことができるので、良好な液質の処理液を常時安定して得ることができるアンモニア含有液の処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、アンモニア含有液のアンモニアを嫌気的に生物脱窒するアンモニア含有液の処理方法において、前記アンモニア含有液と嫌気性細菌とを生物処理槽内で接触させながら、一定濃度の亜硝酸を貯留した亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽に亜硝酸を添加することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項1では、従来のようにアンモニアの一部をアンモニア酸化細菌により亜硝酸型の硝化反応で亜硝酸に変換し、変換された亜硝酸と残りのアンモニアとを嫌気性細菌により脱窒すると、アンモニアと反応させる亜硝酸の濃度が経時的に変動し易いことに鑑み、一定濃度の亜硝酸を亜硝酸貯留槽に貯留しておき、この亜硝酸貯留槽から一定濃度の亜硝酸を生物処理槽に添加するようにした。
【0010】
即ち、従来は、アンモニアと反応させる亜硝酸を亜硝酸貯留槽で一定濃度に調整し、この一定濃度に調整した亜硝酸を生物処理槽に添加するという技術思想はなく、この技術思想を着想することでアンモニアと反応させる亜硝酸の濃度を常に一定に維持することができる。亜硝酸濃度を常に一定に維持できれば、反応に必要な亜硝酸必要量は添加量で高精度に調整することができる。これにより、亜硝酸とアンモニアとを嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下で常に好ましい比率で脱窒反応させることができるので、アンモニア含有液の処理を安定でき、常時安定し且つ良好な液質の処理液を得ることができる。
【0011】
ここで、亜硝酸貯留槽に貯留する一定濃度の亜硝酸は、亜硝酸金属塩のように天然物や化学的な合成物の亜硝酸でもよく、或いは亜硝酸型の硝化槽でアンモニア酸化細菌により生物学的に生成された亜硝酸でもよい。要は亜硝酸貯留槽から生物処理槽に一定濃度の亜硝酸を添加できる構成であればよい。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記添加された亜硝酸の生物処理槽内における亜硝酸性窒素濃度の最大値が80mg/L以上にならないように、前記亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽へ添加する添加位置を複数に分散させることを特徴とする。
【0013】
これは、一定濃度の亜硝酸を生物処理槽に添加しても、生物処理槽内での亜硝酸濃度に分布があると、結局、アンモニアと亜硝酸との好ましい比率を生物処理槽内全体に形成することができない。特に、嫌気性アンモニア酸化細菌は、亜硝酸を基質とする反面、亜硝酸性窒素濃度が80mg/L以上になると活性が低下する。従って、請求項2のように、生物処理槽内における亜硝酸性窒素濃度の最大値が80mg/L以上にならないように、亜硝酸貯留槽から生物処理槽へ添加する添加位置を複数に分散させることが好ましい。
【0014】
請求項3は請求項1又は2において、前記アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度を測定し、前記測定したアンモニア性窒素濃度に対する亜硝酸必要量を演算し、前記演算結果に基づいて前記一定濃度の亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする。
【0015】
請求項3は、亜硝酸貯留槽に貯留される一定濃度の亜硝酸の添加量を調整するための1例であり、アンモニア含有液のアンモニア濃度が変動する場合に有効である。即ち、アンモニア含有液を測定して得られたアンモニア性窒素濃度から前記亜硝酸必要量を演算し、演算結果に基づいて一定濃度の亜硝酸の添加量を調整する。これにより、アンモニア含有液のアンモニア濃度に応じて亜硝酸の添加量を適切に調整することができる。アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度の測定は、連続的であっても間欠的であってもよい。
【0016】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記生物処理槽に流入するアンモニア含有液の流入量を測定し、前記流入量の測定結果の増減に比例させて前記一定濃度の亜硝酸の添加量を増減させることを特徴とする。
【0017】
請求項4は、亜硝酸貯留槽に貯留される一定濃度の亜硝酸の添加量を調整するための一例であり、現像廃液のようにアンモニア含有液のアンモニア濃度が一定の場合に有効である。即ち、亜硝酸必要量に相当する亜硝酸の添加量を一旦決めた後は、アンモニア含有液の流入量の増減に比例させて亜硝酸の添加量を増減すればよい。亜硝酸必要量に相当する亜硝酸の添加量の決め方としては、請求項3のようにアンモニア含有液の測定から亜硝酸必要量を演算すればよい。これにより、アンモニア含有液の流入量に応じて亜硝酸の添加量を適切に調整することができる。アンモニア含有液の流入量の測定は、連続的であっても間欠的であてもよい。
【0018】
また、請求項4が請求項3に従属される場合のように、アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度の測定に加えて、生物処理槽に流入するアンモニア含有液の流入量を測定し、アンモニア性窒素濃度と流入量の両方に基づいて亜硝酸の添加量を調整すれば、より高精度な調整を行うことができる。
【0019】
請求項5は請求項3又は4において、前記亜硝酸必要量は、前記アンモニアのアンモニア性窒素量に対して前記亜硝酸の亜硝酸性窒素量が1〜1.5倍になる範囲であることを特徴とする。
【0020】
請求項5は好ましい亜硝酸必要量を具体的に示したもので、アンモニアのアンモニア性窒素量に対して1〜1.5倍の範囲の亜硝酸性窒素量にすることで、アンモニア含有液の窒素除去性能を顕著に向上させることができる。
【0021】
請求項6は請求項1又は2において、前記亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽に添加する亜硝酸の添加量を増減させると共に、該増減したときの前記生物処理槽内で生成される窒素ガスのガス生成速度(L/分)の増減を測定し、前記添加量の増減に正比例して前記ガス生成速度が増減しなくなる添加量を亜硝酸必要量として前記亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする。
【0022】
請求項6は、亜硝酸貯留槽に貯留される一定濃度の亜硝酸の添加量を調整するための一例であり、アンモニア含有液のアンモニア濃度の増減や生物処理槽への流入量の増減等の処理負荷の増減に対してリアルタイムに亜硝酸の添加量を調整する方法として有効である。
【0023】
生物処理槽内において、嫌気性アンモニア酸化細菌の存在下でアンモニアと亜硝酸とが反応すると窒素ガスが生成され、この窒素ガスの生成速度の増減は、アンモニア濃度の増減や流入量の増減等の処理負荷の増減をリアルタイムに反映する。例えば、亜硝酸の添加量を増加させたときに窒素ガスのガス生成速度も増大する場合には、亜硝酸の添加量が不足している可能性があるので、ガス生成速度が増大しなくなるまで更に添加量の増加を繰り返す。また、亜硝酸の添加量を増加させてもガス生成速度が増大しない場合には、亜硝酸の添加量が過剰となっており嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下する危険があるので、ガス生成速度が減少するまで亜硝酸の添加量を減少させる。このように、亜硝酸の添加量の増減を繰り介して、ガス生成速度が増大も減少もしなくなるときの亜硝酸の添加量を見つけ、これを亜硝酸必要量として亜硝酸の添加量を調整する。これにより、アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度や流入量を測定しなくても、亜硝酸の添加量を適切に調整することができ、しかもアンモニア濃度の増減や流入量の増減等の処理負荷の増減に対してリアルタイムな調整が可能になる。
【0024】
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、アンモニア含有液のアンモニアを嫌気的に生物脱窒するアンモニア含有液の処理装置において、内部に嫌気性細菌を存在させた生物処理槽と、前記アンモニア含有液を前記生物処理槽に流入させる流入部と、前記生物処理槽で処理した処理液を流出させる流出部と、一定濃度の亜硝酸を貯留する亜硝酸貯留槽と、前記亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽に亜硝酸を添加する添加手段と、前記亜硝酸の添加量を調整する添加量調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項7は、本発明を装置として構成したものであり、アンモニア含有液の処理を常に安定に行うことができるので、良好な液質の処理液を常時安定して得ることができる。
【0026】
請求項8は請求項7において、前記添加手段は、前記添加された亜硝酸の前記生物処理槽内における濃度分布を抑制する濃度分布抑制機構を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項8によれば、添加された亜硝酸の前記生物処理槽内における濃度分布の発生を抑制する濃度分布抑制機構を備えるようにしたので、一定濃度の亜硝酸を生物処理槽に添加することと相まって、アンモニアと亜硝酸との好ましい比率を生物処理槽内全体に形成することができる。
【0028】
請求項9は請求項7又は8において、前記アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度を測定する濃度測定手段を設け、前記添加量調整手段は前記濃度測定手段の測定結果に基づいて亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする。
【0029】
請求項9は、亜硝酸貯留槽に貯留される一定濃度の亜硝酸の添加量を調整するための1例であり、アンモニア含有液のアンモニア濃度が変動する場合に有効である。
【0030】
請求項10は請求項7又は8において、前記アンモニア含有液の前記生物処理槽への流入量を測定する流入量測定手段を設け、前記添加量調整手段は前記流入量測定手段の測定結果に基づいて亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする。
【0031】
請求項10は、亜硝酸貯留槽に貯留される一定濃度の亜硝酸の添加量を調整するための一例であり、現像廃液のようにアンモニア含有液のアンモニア濃度が一定の場合に有効である。
【0032】
請求項11は請求項7又は8において、前記添加手段で添加される亜硝酸の添加量を増減したときに前記生物処理槽内で生成される窒素ガスのガス生成速度(L/分)の増減を測定するガス生成速度測定手段を設け、前記添加量調整手段は前記ガス生成速度測定手段の測定結果に基づいて亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする。
【0033】
請求項11は、亜硝酸貯留槽に貯留される一定濃度の亜硝酸の添加量を調整するための一例であり、アンモニア含有液のアンモニア濃度の増減や生物処理槽への流入量の増減等の処理負荷の増減に対してリアルタイムに亜硝酸の添加量を調整する方法として有効である。
【0034】
請求項12は請求項7〜11の何れか1において、前記生物処理槽をカートリッジ型の着脱可能構造とすると共に前記流入部、流出部、及び添加手段の連結部を複数設け、複数の生物処理槽を前記流入部、前記流出部、及び前記添加手段に装着して成ることを特徴とする。
【0035】
請求項12によれば、生物処理槽をカートリッジ型の着脱可能構造として、連結部をそれぞれ複数設けた流入部、流出部、及び添加手段に着脱自在に装着できるようにしたので、メリーゴーランド式に複数の生物処理槽で順番にアンモニア含有液を処理することもでき、あるいは複数の生物処理槽のうちの1本を非常時の予備の生物処理槽として使用することもできる。このように、生物処理槽をカートリッジ型の着脱可能構造にすることにより、1本の生物処理槽の嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下したり死滅したりした場合には、別の生物処理槽に簡単に交換したり、予備の生物処理槽を使用したりすることができる。。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明のアンモニア含有液の処理方法及び装置によれば、アンモニア含有液を常に安定処理することができるので、常時安定し且つ良好な液質の処理液を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下添付図面に従って本発明に係るアンモニア含有液の処理方法及び装置における好ましい実施の形態について詳説する。
【0038】
本発明のアンモニア含有液の処理装置10は、図1、図3、図4、図5、図7における各種の態様に示される如く、亜硝酸貯留槽12と生物処理槽14とを基本構成として構成され、この基本構成に各種の測定手段、制御手段等を装備することで構成される。従って、先ず、基本構成である亜硝酸貯留槽12と生物処理槽14について説明する。
【0039】
亜硝酸貯留槽12には、一定濃度の亜硝酸になるように亜硝酸金属塩を溶媒(通常水)に溶解した溶液、或いは一定濃度の亜硝酸になるように調整された亜硝酸金属塩の粉体が貯留されており、各種の測定や制御によりアンモニア含有液のアンモニアを処理するのに適切な亜硝酸必要量が、亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14に添加される。この場合、亜硝酸貯留槽12に貯留する亜硝酸は、上記の亜硝酸金属塩のような天然物や化学的な合成物に限らず、アンモニアを亜硝酸型の硝化槽でアンモニア細菌により硝化するときに生成される亜硝酸でもよい。要は、亜硝酸貯留槽12に一定濃度の亜硝酸が貯留されていればよい。
【0040】
生物処理槽14には、嫌気性細菌として嫌気性アンモニア酸化細菌が馴養又は投入されており、嫌気性雰囲気に保持される。嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養としては、例えば、2004年度、第7回の日本水環境学会シンポジウム講演集の125頁に記載されるように、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む活性汚泥や嫌気性消化汚泥等を種汚泥として馴養することができる。尚、アンモニア含有液のアンモニアを嫌気的に生物脱窒するための細菌であって、亜硝酸を基質とする全ての細菌について本発明を適用できる。
【0041】
生物処理槽14内における嫌気性アンモニア酸化細菌の保持形態としては、生物処理槽14内に浮遊菌の形で保持することも可能であるが、上記した活性汚泥等の微生物を充填材に付着させた生物膜、或いは活性汚泥等の微生物を固定化材に包括固定化した包括固定化担体として保持することが好ましい。ここで、包括固定化とは、モノマー材料やプレポリマー材料と微生物を混合し、この混合液を重合して固定化材内部に微生物を固定化することをいう。
【0042】
生物膜や包括固定化担体として嫌気性アンモニア酸化細菌を保持した場合の生物処理槽14への充填量は、固定床タイプの場合に30〜70容積%、懸濁粒子槽や膨張槽のタイプの場合に5〜40容積%がよい。生物膜の充填材としては、不織布、プラスチック材料、スポンジ材料等の材質のものを使用でき、形状も板状、粒状、筒状などの各種の形状のものを使用できる。
【0043】
また、包括固定化担体のモノマー材料としては、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマール等を好適に使用することができる。プレポリマー材料としては、ポリエチレングリコールジアクリレートやポリエチレングリコールメタクリレートが好ましく、その誘導体を好適に使用することができる。包括固定化担体の形状は、角形、球状、筒状等で表面に凹凸が多い形状がアンモニア含有液との接触効率が良く、アンモニア含有液中のアンモニア等の窒素成分の除去効率を向上させることができる。包括固定化担体の大きさは、形状が角形や球状である場合には、1〜10mm程度が好ましい。
【0044】
包括固定化する微生物は、嫌気性アンモニア酸化細菌の純粋菌株、嫌気性アンモニア酸化細菌を含む活性汚泥などの混合微生物を使用することができる。包括固定化担体内部の微生物群の総菌数が105 個/mL以上且つ嫌気性アンモニア酸化細菌が総菌数の1/10〜1/1000の範囲を満足することが好ましい。これは、通常、包括固定化担体内部の微生物群の濃度が106 個/mL以上で活性を発現するが、総菌数が105 個/mL以上で固定化することにより、担体内部で108 個/mL以上まで増殖し、それだけ嫌気性アンモニア酸化細菌の活性も高くなるからである。
【0045】
表1は、嫌気性アンモニア酸化細菌を包括固定した包括固定化担体の代表的な組成例である。
【0046】
【表1】

上記組成の懸濁液に過硫酸カリウムを0.25部添加すると重合が始まり、ゲル化する。このゲルを切断し、任意の大きさにしたものが包括固定化担体となる。
【0047】
次に、上述の亜硝酸貯留槽12と生物処理槽14との基本構成を備えた本発明のアンモニア含有液の処理装置10の各種の態様を説明する。尚、生物処理槽14内に存在する嫌気性アンモニア酸化細菌の保持形態としては、上記したように、浮遊菌、生物膜、包括固定化担体の何れでも良いが、本実施形態では包括固定化担体の例で説明する。
【0048】
図1は、アンモニア含有液の処理装置10の第1の実施の形態であり、内部に嫌気性アンモニア酸化細菌を存在させた嫌気性雰囲気の生物処理槽14と、アンモニア含有液を生物処理槽14に流入させる流入部と、生物処理槽14で処理した処理水を流出させる流出部と、一定濃度の亜硝酸を貯留する亜硝酸貯留槽12と、亜硝酸貯留槽12から生物処理槽に亜硝酸を添加する添加手段と、亜硝酸の添加量を調整する添加量調整手段と、で構成される。
【0049】
即ち、流入部を形成する流入配管16と流入ポンプ17により、アンモニア含有液が生物処理槽14内に流入される。生物処理槽14内には嫌気性アンモニア酸化細菌が包括固定化された包括固定化担体24が充填されており、流入したアンモニア含有液と接触する。この場合、図1では省略してあるが、包括固定化担体24を生物処理槽14内で流動させてアンモニア含有液との接触効率を上げるために、例えば攪拌機や嫌気ガスの吹き込み機のようなものを設けることが好ましい。
【0050】
生物処理槽14の上方に設けられた亜硝酸貯留槽12からは、添加手段として複数に分岐した添加配管20が生物処理槽14の上方まで延設され、亜硝酸貯留槽12に貯留された一定濃度の亜硝酸が生物処理槽14に添加される。これにより、アンモニア含有液のアンモニアと添加された亜硝酸とが嫌気性雰囲気の下で嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒され、窒素ガスとして除去される。生物処理槽14で処理された処理液は流出部を形成する処理水配管18を介して系外に排出される。生物処理槽14の流出部側にはスクリーン26が設けられ、包括固定化担体24が処理液と一緒に流出することを防止する。このように、一定濃度の亜硝酸を亜硝酸貯留槽12に貯留しておき、この亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14に亜硝酸必要量に相当する亜硝酸の添加量を添加することにより、アンモニア含有液の処理を常に安定に行うことができるので、良好な液質の処理液を常時安定して得ることができる。
【0051】
添加配管20は幹管20Aと枝管20Bとで構成され、幹管20Aには亜硝酸の添加量を調整する添加量調整手段としてのバルブ22が設けられると共に、分岐された複数の枝管20Bは生物処理槽14の流入部側から流出部側にかけて亜硝酸の添加位置が分散するように配置される。これにより、添加された亜硝酸の生物処理槽14内における濃度分布を抑制する濃度分布抑制機構が形成される。この濃度分布抑制機構により、添加された亜硝酸の生物処理槽14内における亜硝酸性窒素濃度の最大値が80mg/L以上にならないようにすることが重要である。これは、嫌気性アンモニア酸化細菌は、亜硝酸を基質とする反面、亜硝酸性窒素濃度が80mg/L以上になると活性が低下するためであり、一定濃度の亜硝酸を生物処理槽14に添加しても、生物処理槽14内で局部的に80mg/Lを超えると、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下してしまうためである。
【0052】
亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14へ添加する一定濃度の亜硝酸の添加量は、バルブ22によって調整され、アンモニア含有液のアンモニアを処理するために必要な亜硝酸必要量に相当する添加量が生物処理槽14に添加される。この亜硝酸必要量は、アンモニアのアンモニア性窒素量に対して亜硝酸の亜硝酸性窒素量が1〜1.5倍の範囲であることが好ましい。即ち、図2に示すように、アンモニアのアンモニア性窒素量(NH4 - N)に対する亜硝酸の亜硝酸性窒素量(NO2 - N)の比率(NO2 - N/NH4 - N)は、アンモニア含有液から除去される総窒素除去率(T−N除去率)に密接な関係があり、比率が1〜1.5倍の範囲でT−N除去率が最大になり、比率が1未満及び1.5を超えるとT−N除去率が急激に低下する。
【0053】
図3は、アンモニア含有液の処理装置50の第2の実施の形態である。尚、第1の実施の形態と同じ部材及び手段については同符号を付して説明は省略する。尚、図3から図6には濃度分布抑制機構の図示は省略してある。
【0054】
図3に示すように、流入配管16の途中にアンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度を測定する濃度測定器28が設けられ、濃度測定器28で測定された測定値は濃度モニタリングタイプの亜硝酸制御装置30に送られる。濃度測定器28によるアンモニア性窒素濃度の測定は連続的又は間欠的でもよい。亜硝酸制御装置30では、濃度測定器28で測定された測定結果から亜硝酸必要量に相当する亜硝酸の添加量を演算し、演算した添加量に基づいてバルブ22の開度を調整する。添加量とバルブ開度との関係は予め測定され、亜硝酸制御装置30に入力しておくとよい。これにより、アンモニア含有液のアンモニア濃度に応じて亜硝酸の添加量を適切に制御することができる。従って、本発明のアンモニア含有液の処理装置50の第2の実施の形態は、アンモニア含有液のアンモニア濃度が変動する場合に有効である。
【0055】
尚、図3には示さなかったが、生物処理槽14に流入するアンモニア含有液の流入量も変動する場合には、濃度測定器28に加えて流入配管16に流入量を測定する流量測定器を設け、濃度と流量の両方で亜硝酸の添加量を制御することが好ましい。
【0056】
図4は、アンモニア含有液の処理装置60の第3の実施の形態である。尚、第1及び第2の実施の形態と同じ部材及び手段については同符号を付して説明は省略する。
【0057】
図4に示すように、流入配管16の途中にアンモニア含有液の流入量を測定する流入量測定器32が設けられ、流入量測定器32で測定された測定値は流量モニタリングタイプの亜硝酸制御装置34に送液される。流入量測定器32によるアンモニア含有液の流入量の測定は連続的又は間欠的でもよい。亜硝酸制御装置34では、流入量測定器32で測定された流入量の増減に正比例して前記した亜硝酸必要量に相当する亜硝酸の添加量を増減するように、バルブ22の開度を調整する。亜硝酸必要量は予めアンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度を分析することにより求めておくとよい。
【0058】
第3の実施の形態の処理装置60は、現像廃液のようにアンモニア含有液のアンモニア濃度が一定の場合に有効である。
【0059】
図5は、アンモニア含有液の処理装置70の第4の実施の形態である。尚、第1〜第3の実施の形態と同じ部材及び手段については同符号を付して説明は省略する。
【0060】
図5に示すように、生物処理槽14は密閉式の槽として形成され、生物処理槽14内の上部空間には、生物処理槽14内でアンモニアと亜硝酸とが反応することにより生成される窒素ガスが溜まるトラップ部36が形成される。また、生物処理槽14の上板14Aには、トラップ部36に溜まる窒素ガスを収集するガス収集管38が接続される。図示しないが、処理水配管18が生物処理槽14に接続される接続部には生物処理槽14内で発生した窒素ガスが処理液と一緒に漏洩しないための液封機構を設けることが好ましい。液封機構としては、例えば液封U字管のような公知のものを使用できる。
【0061】
ガス収集管38の途中には、ガス収集管38を流れるガス量を逐次測定することで、生物処理槽14内で発生する窒素ガスのガス生成速度(L/分)を測定するガス生成速度測定器40が設けられる。厳密には、ガス収集管38で収集されるガス中には、アンモニア含有液から持ち込まれる空気成分等も考えられるが、極く微量であるので無視し、ここでは窒素ガスのガス生成速度と称することにする。ガス生成速度測定器40としては、例えば渦式流量計、フロート式流量計、積算流量計等を好ましく使用することができる。
【0062】
ガス生成速度測定器40で測定される測定値は窒素ガスモニタリングタイプの亜硝酸制御装置42に逐次入力される。亜硝酸制御装置42では、亜硝酸の添加量を増減させると共に、増減させたときのガス生成速度測定器42で測定される窒素ガスのガス生成速度Vn(L/分)の増減をモニタリングし、添加量の増減に比例してガス生成速度Vnが増減しなくなる添加量を亜硝酸必要量とし、亜硝酸の添加量をバルブ22で調整する。
【0063】
例えば、図6の窒素ガス発生モニタリングによる亜硝酸制御プログラムに示すように、処理装置10の運転初期の亜硝酸添加量における窒素ガスのガス生成速度を測定し、このガス生成速度Vnのときの亜硝酸添加量を基準添加量とする(ステップ10)。
【0064】
次に、亜硝酸制御装置42は、バルブ22の開度を大きくして、亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14に添加する亜硝酸の添加量を基準添加量よりも3%(重量%でも容量%でもよい)増加させる(ステップ12)。そして、亜硝酸制御装置42は、添加量を3%増加させることによってガス生成速度測定器40で測定されるガス生成速度Vnが増大するかをモニタリングし、添加量の増加に正比例してガス生成速度Vnが増大(例えば3%)する場合には、亜硝酸の添加量が不足している可能性があるので、再びステップ12に戻って亜硝酸の添加量を基準添加量よりも更に3%増加する。
【0065】
添加量の増加に正比例してガス生成速度Vnが増大しない場合には、亜硝酸の添加量が過剰となっており嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下する危険があるので、バルブ22の開度を絞って亜硝酸の添加量を3%減少させる(ステップ14)。亜硝酸制御装置42は、添加量を3%減少させることによってガス生成速度測定器40で測定されるガス生成速度Vnが減少するかをモニタリングし、添加量の減少に正比例してガス生成速度Vnが低下(例えば3%)する場合には、再びステップ12に戻り、ガス生成速度Vnが低下しない場合には亜硝酸が未だ過剰である危険性があるので、ステップ14に戻る。
【0066】
このステップ12からステップ14の操作を繰り返すことにより、ガス生成速度が増大も低下もしなくなるときの亜硝酸の添加量を見つけ、これを亜硝酸必要量として亜硝酸の添加量を調整する。これにより、アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度や流入量を測定しなくても、亜硝酸の添加量を適量に調整することができ、しかもアンモニア濃度の増減や流入量の増減等の処理負荷の増減に対してリアルタイムな調整が可能になる。尚、上記のプログラムでは、亜硝酸の添加量の増減を3%としたが、2〜5%の範囲で適宜選択することが好ましい。これは、2%未満では、ガス生成速度の増大・減少を精度良くモニタリングできず、5%を超えると生物処理槽14内での亜硝酸濃度が急激に上昇する危険があるからである。また、ステップ12やステップ14に戻ったときには、次のサイクルとして亜硝酸の増減量を例えば3%から2%に変えて行ってもよい。
【0067】
図7は、アンモニア含有液の処理装置80の第5の実施の形態である。尚、第1〜第4の実施の形態と同じ部材及び手段については同符号を付して説明は省略する。
【0068】
図7に示すように、処理装置80は、主として、アンモニア含有液を貯留するアンモニア貯留槽44と、一定濃度の亜硝酸を貯留する亜硝酸貯留槽12と、カートリッジ型の着脱可能構造を有する縦型の生物処理槽14と、生物処理槽14で処理された処理液を貯留する処理液貯留槽46とで構成される。カートリッジ型の生物処理槽14は、密閉型の筒状容器とし、その内部に包括固定化担体24を固定床として充填することが好ましい。
【0069】
アンモニア貯留槽44のアンモニア含有液を生物処理槽14に流入させる流入配管16は、先端側(生物処理槽側)が2本に分岐され、分岐された2本の配管16A,16Aの途中にバルブ22が設けられると共に、2本の配管16A,16Aの先端にはワンタッチ式連結器48の雄部が設けられる。また、亜硝酸貯留槽12の亜硝酸を生物処理槽14に添加する添加配管20は、幹管20Aと、生物処理槽14の下部から上部にかけて添加位置が分散されるように分岐された複数の枝管20Bとで構成される。そして、幹管20Aに添加ポンプ49が設けられると共に、枝管20Bの先端にワンタッチ式連結器48の雄部が設けられる。更に、生物処理槽14で処理された処理水の処理水配管18の基端側(生物処理槽側)が2本に分岐されると共に、2本の配管18A,18Aの基端にはワンタッチ式連結器48の雄部が設けられる。
【0070】
一方、生物処理槽14の下端部、上端部、及び側面部の3カ所には、それぞれ連結管52が設けられ、それぞれの連結管52の先端にはワンタッチ式連結器48の雌部が設けられる。これにより、2つの生物処理槽14は、ワンタッチ式連結器48を介して流入配管16、処理水配管18、及び添加配管20に着脱自在に装着することができる。
【0071】
尚、本実施の形態では、2槽の生物処理槽14を着脱できるように構成したが、1槽でも2槽以上でもよく、槽数に合わせて流入配管16、処理水配管18、及び添加配管20の取り合い数を形成すればよい。
【0072】
このように構成された処理装置80の第5の実施の形態は、複数の生物処理槽14をメリーゴーランド式に順番に使用することができる。更には、複数の生物処理槽14のうちの1槽を予備の生物処理槽14として、使用中の生物処理槽14における嫌気性アンモニア酸化細菌が死滅したり、活性が低下したりしたときに、予備の生物処理槽14を使用するようにすれば便利である。従って、処理装置80の第5の実施の形態は、現像廃液のように一定濃度のアンモニアを含む小規模廃液を処理をする場合に有効である。
【実施例】
【0073】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]
実施例1では、図1の処理装置10を使用してアンモニア含有液を処理した。
【0075】
生物処理槽14に充填した包括固定化担体の組成等は表2の通りである。
【0076】
【表2】

過硫酸カリウムを添加することにより上記組成をゲル化させた後、3mm角型に成形して包括固定化担体24とした。
【0077】
(処理装置の試験条件)
・アンモニア含有液:アンモニア性窒素濃度が90〜120mg/Lの工場廃水を使用した。
・亜硝酸必要量:アンモニア性窒素量(NH4 - N)120mg/Lに対して1.3倍量の亜硝酸性窒素量(NO2 - N)となるように、亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14に添加する一定濃度の亜硝酸の添加量を調整した。
・生物処理槽14の滞留時間:1時間
・包括固定化担体の充填率:20%
・生物処理槽14を機械攪拌して包括固定化担体を流動させた。
【0078】
上記の条件で連続処理した結果、生物処理槽14ではアンモニア含有液のアンモニアと亜硝酸貯留槽12から添加された亜硝酸とが同時脱窒され、処理液の総窒素濃度は30〜50mg/Lで安定して推移した。
【0079】
[実施例2]
実施例2では、図3の処理装置50、図4の処理装置60、図5の処理装置70を用いて、実施例1と同じ包括固定化担体、試験条件でアンモニア含有液を処理した。尚、図5の処理装置70では、図6に示したステップにより、亜硝酸の添加量を調整した。
【0080】
実施例2の結果を表3に示す。また、表3には従来法として、生物処理槽10に亜硝酸を添加しないで脱窒を行った場合と、生物処理槽50に亜硝酸の代わりにメタノールを添加して脱窒を行った場合について示した。
【0081】
【表3】

表3から分かるように、本発明法1〜3は、処理液の総窒素濃度は20〜40mg/Lの間であり、アンモニア含有液を安定して処理することができた。
【0082】
これに対し、従来法1及び2は、処理液の総窒素濃度は88〜124mg/Lの間であり、アンモニア含有液のアンモニアを殆ど処理することができなかった。
【0083】
また、従来法によるアンモニアの処理には、硝化反応と脱窒反応が必要であり、硝化反応には滞留時間4〜6時間、脱窒反応にも3〜6時間必要であり、更にメタノールが窒素量の3倍量必要になる。従って、大規模の処理装置を必要とする。
【0084】
これに対し、本発明の処理装置は、アンモニア含有液と嫌気性アンモニア酸化細菌とを生物処理槽14内で嫌気性雰囲気で接触させながら、一定濃度の亜硝酸を貯留した亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14に亜硝酸必要量を添加するだけで、アンモニア含有液の処理を常に安定に行うことができる。従って、硝化槽と脱窒槽を必要とする従来法に比べて処理装置をコンパクト化できるだけでなく、ランニングコストも削減でき非常に安価な処理方法と言える。
【0085】
[実施例3]
実施例3では、図7の処理装置80を使用してアンモニア含有液を処理した。
【0086】
生物処理槽14に充填した包括固定化担体の組成等は表4の通りである。
【0087】
【表4】

過硫酸カリウムを添加することにより上記組成をゲル化させた後、3mm角型に成形して包括固定化担体24とした。
【0088】
(処理装置の試験条件)
・アンモニア含有液:アンモニア性窒素濃度が2000mg/Lの現像廃液希釈水を使用した。
・亜硝酸必要量:アンモニア性窒素量(NH4 - N)2000mg/Lに対して1.3倍量の亜硝酸性窒素量(NO2 - N)となるように、亜硝酸貯留槽12から生物処理槽14に添加する一定濃度の亜硝酸の添加量を調整した。
・生物処理槽14の滞留時間:4時間
・包括固定化担体24の充填率:30%
・生物処理槽14を機械攪拌して包括固定化担体を流動させた。
【0089】
上記の条件で連続処理した結果、生物処理槽14ではアンモニア含有液のアンモニアと亜硝酸貯留槽12から添加された亜硝酸とが同時脱窒され、処理液の総窒素濃度は160〜230mg/Lで安定して推移した。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明のアンモニア含有液の処理装置の第1の実施の形態の概念図
【図2】アンモニアのアンモニア性窒素量に対する亜硝酸の亜硝酸性窒素量(NO2 - N)の比率と、総窒素除去率との関係図
【図3】本発明のアンモニア含有液の処理装置の第2の実施の形態の概念図
【図4】本発明のアンモニア含有液の処理装置の第3の実施の形態の概念図
【図5】本発明のアンモニア含有液の処理装置の第4の実施の形態の概念図
【図6】窒素ガス発生モニタリングによる亜硝酸自動制御システムにおける制御プログラムの説明図
【図7】本発明のアンモニア含有液の処理装置の第5の実施の形態の概念図
【符号の説明】
【0091】
10、50、60、70、80…アンモニア含有液の処理装置、12…亜硝酸貯留槽、14…生物処理槽、16…流入配管、17…流入ポンプ、18…処理水配管、20…添加配管(添加手段)、22…バルブ(添加量調整手段)、24…包括固定化担体、26…スクリーン、28…濃度測定器、30…濃度モニタリングタイプの亜硝酸制御装置、32…流入量測定器、34…流量モニタリングタイプの亜硝酸制御装置、36…トラップ部、38…ガス収集管、40…ガス生成速度測定器、42…窒素ガスモニタリングタイプの亜硝酸制御装置、44…アンモニア貯留槽、46…処理液貯留槽、48…ワンタッチ式の連結器、52…連結管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア含有液のアンモニアを嫌気的に生物脱窒するアンモニア含有液の処理方法において、
前記アンモニア含有液と嫌気性細菌とを生物処理槽内で接触させながら、一定濃度の亜硝酸を貯留した亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽に亜硝酸を添加することを特徴とするアンモニア含有液の処理方法。
【請求項2】
前記添加された亜硝酸の生物処理槽内における亜硝酸性窒素濃度の最大値が80mg/L以上にならないように、前記亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽へ添加する添加位置を複数に分散させることを特徴とする請求項1のアンモニア含有液の処理方法。
【請求項3】
前記アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度を測定し、
前記測定したアンモニア性窒素濃度に対する亜硝酸必要量を演算し、
前記演算結果に基づいて前記一定濃度の亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする請求項1又は2のアンモニア含有液の処理方法。
【請求項4】
前記生物処理槽に流入するアンモニア含有液の流入量を測定し、
前記流入量の測定結果の増減に比例させて前記一定濃度の亜硝酸の添加量を増減させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1のアンモニア含有液の処理方法。
【請求項5】
前記亜硝酸必要量は、前記アンモニアのアンモニア性窒素量に対して前記亜硝酸の亜硝酸性窒素量が1〜1.5倍になる範囲であることを特徴とする請求項3又は4のアンモニア含有液の処理方法。
【請求項6】
前記亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽に添加する亜硝酸の添加量を増減させると共に、該増減したときの前記生物処理槽内で生成される窒素ガスのガス生成速度(L/分)の増減を測定し、
前記添加量の増減に正比例して前記ガス生成速度が増減しなくなる添加量を亜硝酸必要量として前記亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする請求項1又は2のアンモニア含有液の処理方法。
【請求項7】
アンモニア含有液のアンモニアを嫌気的に生物脱窒するアンモニア含有液の処理装置において、
内部に嫌気性細菌を存在させた生物処理槽と、
前記アンモニア含有液を前記生物処理槽に流入させる流入部と、
前記生物処理槽で処理した処理液を流出させる流出部と、
一定濃度の亜硝酸を貯留する亜硝酸貯留槽と、
前記亜硝酸貯留槽から前記生物処理槽に亜硝酸を添加する添加手段と、
前記亜硝酸の添加量を調整する添加量調整手段と、を備えたことを特徴とするアンモニア含有液の処理装置。
【請求項8】
前記添加手段は、前記添加された亜硝酸の生物処理槽内における濃度分布を抑制する濃度分布抑制機構を備えたことを特徴とする請求項7のアンモニア含有液の処理装置。
【請求項9】
前記アンモニア含有液のアンモニア性窒素濃度を測定する濃度測定手段を設け、前記添加量調整手段は前記濃度測定手段の測定結果に基づいて亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする請求項7又は8のアンモニア含有液の処理装置。
【請求項10】
前記アンモニア含有液の前記生物処理槽への流入量を測定する流入量測定手段を設け、前記制御手段は前記流入量測定手段の測定結果に基づいて亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする請求項7又は8のアンモニア含有液の処理装置。
【請求項11】
前記添加手段で添加される亜硝酸の添加量を増減したときに前記生物処理槽内で生成される窒素ガスのガス生成速度(L/分)の増減を測定するガス生成速度測定手段を設け、前記添加量調整手段は前記ガス生成速度測定手段の測定結果に基づいて亜硝酸の添加量を調整することを特徴とする請求項7又は8のアンモニア含有液の処理装置。
【請求項12】
前記生物処理槽をカートリッジ型の着脱可能構造とすると共に前記流入部、流出部、及び添加手段の連結部を複数設け、複数の生物処理槽を前記流入部、前記流出部、及び前記添加手段に装着して成ることを特徴とする請求項7〜11の何れか1のアンモニア含有液の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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