説明

アースコネクタ

【課題】本発明は、導電部材の強度設計に関する信頼性が向上されたアースコネクタを提供する。
【解決手段】車両の車体40に取り付けられるアースコネクタ10であって、合成樹脂製のハウジング13と、ハウジング13にインサート成形されており、且つ、電線11に接続された雌端子12と電気的に接続される雄タブ25を有すると共にハウジング13から外部に導出されて車体40に固定されるアース接続部27を有する金属製の導電部材14と、を備え、導電部材14には、ハウジング13の内部に位置する部分に、電線11が引っ張られる力によって破壊可能な凹溝35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるアースコネクタとして、ハウジングと、ハウジングに配されると共に電線に接続された雌端子と電気的に接続される雄タブを備えた導電部材と、を備えるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
導電部材は、ハウジングの外部に導出されて車両の車体に固定されるアース接続部を有する。アース接続部には貫通孔が形成されており、この貫通孔内にボルトが挿通され、このボルトが車体に形成されたねじ孔に螺合されることにより、アースコネクタが車体に固定される。これにより、電線、雌端子、雄タブ、アース接続部、車体が電気的に接続され、接地される。
【0004】
近年、車体をリサイクルすることが求められている。このため、車両の解体作業において、車体を構成する金属以外の材料及び車体を構成する鉄系以外の材料(特に銅系材料)はできるだけ取り外すことが求められている。特に、合成樹脂からなる絶縁被覆を備えた電線を車体から取り外す必要性は高い。
【0005】
しかしながら、上記の構成を有するアースコネクタでは、導電部材はボルトにより車体に固定されている。このため、電線を車体から取り外すためには、アースコネクタのアース接続部に螺合されたボルトを回転させて緩めることによりアースコネクタを車体から取り外さなければならず、作業効率が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、アース接続部に溝等を形成して、比較的に破壊されやすい易破壊部を形成することが考えられた。これにより、車両の解体作業時に、電線をクレーン等で引っ張ることにより、アース接続部が易破壊部において破壊され、容易に電線を車体から取り外すことが可能となった。このような技術の例として、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−40263号公報
【特許文献2】特開2002−231334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車載環境下では、アースコネクタに対して、振動による比較的に小さな応力が繰り返し加えられる。特に、車体に固定されているアース接続部には、車体から直接に振動が加えられる。このため、アース接続部については、比較的に小さな応力に対して金属疲労によって破壊されないように強度設計する必要がある。
【0009】
上記したように、アース接続部には易破壊部が形成されている。従って、易破壊部においては、車両解体時において電線を引っ張るという比較的大きな応力に対しては、他の部分よりも先に破壊されるように強度設計し、振動による比較的に小さな応力が繰り返し加えられる場合には、他の部分よりも先に金属疲労によって破壊されないように強度設計する必要がある。上記の内容を、表1に模式的に示した。
【0010】
【表1】

【0011】
導電部材のうち易破壊部と異なる部分は、車両の振動等による比較的に小さな応力に対しては弾性変形により応力を吸収し、車体の解体時等における比較的に大きな応力に対しては塑性変形するようになっている。
【0012】
一方、易破壊部においては、比較的に大きな応力については、他の部分よりも先に破壊するように強度設計されている。つまり、易破壊部は、比較的に大きな応力に対しては、導電部材のうち易破壊部と異なる部分よりも強度が低くなるように設定されている。それにもかかわらず、易破壊部は、比較的に小さな応力に対しては、他の部分と同様の機械的強度が求められている。
【0013】
つまり、従来技術に係る構成では、比較的に大きな応力に対しては他の部分よりも先に破壊されやすく、且つ、比較的に小さな応力に対しては他の部分よりも先には破壊されないようにするという、一見、相反する要請を、易破壊部という同一部位において充足させる必要がある。このため、導電部材の強度設計には相当の困難を要する。しかも、応力の大小によって破壊の挙動を異ならせるという強度設計は、導電部材を構成する材料の物性に依存せざるを得ない。このため、導電部材の強度設計について、必ずしも十分な信頼性を得ることができないという問題があった。
【0014】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、導電部材の強度設計に関する信頼性が向上されたアースコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、車両の車体に取り付けられるアースコネクタであって、合成樹脂製のハウジングと、前記ハウジングにインサート成形されており、且つ、電線に接続された端子と電気的に接続される接続部を有すると共に前記ハウジングから外部に導出されて前記車体に固定されるアース接続部を有する金属製の導電部材と、を備え、前記導電部材には、前記ハウジングの内部に位置する部分に、前記電線が引っ張られる力によって破壊可能な易破壊部が形成されている。
【0016】
本発明によれば、まず、車体の振動によって発生する比較的に小さな応力がハウジングから露出したアース接続部に加えられた場合、金属製のアース接続部が弾性変形することにより、応力は吸収される。これにより、アース接続部が金属疲労によって破壊されることが抑制される。また、振動に起因する比較的に小さな応力がハウジングに伝達された場合でも、合成樹脂製のハウジングが弾性変形することにより、応力は吸収される。これにより、ハウジングの内部に位置する易破壊部に対して、比較的に小さな応力が伝達されることが抑制される。この結果、易破壊部について、比較的に小さな応力に対して他の部分よりも先に破壊されないように強度設計する必要がなくなる。
【0017】
一方、車両の解体時に電線が引っ張られる際に発生する比較的に大きな応力がハウジングに加えられた場合、合成樹脂製のハウジングは破壊される。ハウジングが破壊されると、易破壊部がハウジングから露出する。すると、比較的に大きな応力は易破壊部に伝達され、易破壊部が破壊される。これにより、導電部材のうち、車体に対してボルトにより固定されたアース接続部と、易破壊部に対してアース接続部側の部分とが、車体に残留する。一方、導電部材のうち易破壊部に対してアース接続部と反対側の部分は、電線と共に車体から取り外される。
【0018】
このように、本発明によれば、比較的に大きな応力によって破壊される易破壊部がハウジングの内部に位置する構成としたので、比較的に小さな応力が易破壊部に伝達されることが抑制される。これにより、導電部材に形成された易破壊部に対しては、比較的に大きな応力を受けることによって他の部分よりも先に破壊されるような強度設計のみを行えばよいので、導電部材の強度設計に関する信頼性を向上させることができる。
【0019】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記電線は複数であって、複数の前記電線にはそれぞれ前記端子が接続されており、前記導電部材には複数の前記接続部が形成されており、複数の前記端子同士が前記導電部材によって電気的に接続されることが好ましい。
【0020】
上記の態様によれば、アースコネクタを複数の端子を電気的に接続するジョイントコネクタに適用することができる。
【0021】
前記ハウジングには、前記端子を収容する端子収容部が形成されており、前記端子収容部には前記端子と係止するランスが形成されており、前記接続部は前記端子収容部内に配されていることが好ましい。
【0022】
本実施形態によれば、1つのハウジングに端子、及び接続部の双方が配されるので、互いに嵌合可能な一対のコネクタハウジングのそれぞれに、端子及び接続部が配される構成に比べて、部品点数を削減できる。
【0023】
前記電線は前記車体から離間する方向に引っ張られることが好ましい。これにより、電線を引っ張る力は、ハウジングと導電部材との境界部分に集中するようになっている。これにより、先ずハウジングが破壊されて、易破壊部が露出した後に、易破壊部に応力が集中するようになっている。
【0024】
前記導電部材のうち前記ハウジングの内部に位置する部分には、前記易破壊部と異なる位置に、前記ハウジングを構成する合成樹脂と接着剤によって接着された接着部が形成されていることが好ましい。
【0025】
接着剤は比較的に機械的強度が高いので、接着部に易破壊部を形成すると、接着部によって応力が受けられることが懸念される。そこで、接着部とは異なる部分に易破壊部を形成することにより、確実に易破壊部が破壊されるようにすることができる。
【0026】
前記易破壊部は、前記導電部材に形成された凹溝であることが好ましい。
【0027】
上記の態様によれば、導電部材に凹溝を形成するという簡易な手法により、易破壊部を形成することができる。
【0028】
前記易破壊部は、前記導電部材の表面及び裏面の双方に形成されており、且つ、前記導電部材の表面及び裏面における対応する位置に形成されていることが好ましい。
【0029】
上記の態様により、易破壊部に確実に応力が集中するようになっているので、車両の解体時において、確実に易破壊部が破壊されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、導電部材の強度設計に関する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明に係るアースコネクタを示す断面図である。
【図2】図2はアースコネクタを示す平面図である。
【図3】図3はアースコネクタを示す斜視図である。
【図4】図4は導電部材を示す斜視図である。
【図5】図5は図2におけるV−V線断面図である。
【図6】図6はキャップを嵌める前の状態を示すアースコネクタを示す側面図である。
【図7】図7はアースコネクタを示す側面図である。
【図8】図8は導電部材を示す側面図である。
【図9】図9は導電部材を示す背面図である。
【図10】図10は凹溝を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図9を参照して説明する。本実施形態に係るアースコネクタ10は、車両(図示せず)の車体40に取り付けられて、複数の電線11を接地する。アースコネクタ10は、複数の電線11の端部に接続された雌端子12(端子に相当)が収容されるハウジング13と、このハウジング13に取り付けられて雌端子12と接続される導電部材14と、を備える。以下の説明では、図1における左方を前方とし、右方を後方とし、また、上方を上方とし、下方を下方とする。また、図2における上下方向を幅方向とする。
【0033】
(端子収容部15)
図1に示すように、合成樹脂製のハウジング13は、複数の雌端子12を収容する端子収容部15を備える。端子収容部15内には、雌端子12が、上下方向に二段に並ぶと共に、幅方向に4つ並んで収容される。各端子収容部15の内壁には、端子収容部15の内壁から前方に向かってランス16が突出して形成されている。ランス16は、基部17においてハウジング13と一体に形成されている。ランス16の先端には、雌端子12と係止する係止爪18が突出して形成されている。上側に位置するランス16の係止爪18は上方に突出しており、下側に位置するランス16の係止爪18は下方に突出している。
【0034】
(雌端子12)
雌端子12は、電線11の端部に圧着される圧着部19と、この圧着部19から前方に延びる接続筒部20と、を備える。接続筒部20は筒状をなしている。接続筒部20の内部には弾性接触片21が形成されている。接続筒部20の壁部には、ランス16の係止爪18と係合する係止孔22が貫通して形成されている。この係止孔22の孔縁に係止爪18が後方から係止することにより、雌端子12が後方へ変位することが規制されるようになっている。
【0035】
端子収容部15の後方(図1における右方)には、防水筒部23が形成されている。防水筒部23は、円筒形状をなしている(図3参照)。防水筒部23は後方(図1における右方)に開口している。防水筒部23の内部には、電線11に外嵌された電線側ゴム栓24が収容されている。電線側ゴム栓24の外周と、防水筒部23の内壁とが密着することにより、電線11とハウジング13との間が液密にシールされる。
【0036】
(導電部材14)
ハウジング13の前端部寄りの位置には、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる導電部材14が、ハウジング13にインサート成形されている。導電部材14の後端部は、雌端子12の接続筒部20内に進入して、弾性接触片21と弾性的に接触することにより雌端子12と電気的に接続される雄タブ25(接続部に相当)とされている。
【0037】
図4に示すように、複数の雄タブ25が、略C字状をなす連結部26に、間隔を空けて並んで形成されている。本実施形態においては、連結部26の上段部分に、幅方向に並んで4つ形成されると共に、連結部26の下段部分に、幅方向に並んで4つ形成されている。合計8つの雄タブ25は、連結部26において電気的に接続されている。
【0038】
図5に示すように、連結部26の下段部分には、下方へ延びると共にハウジング13の内部に位置してハウジング13内に埋設された埋設部41が形成されている。この埋設部41の下方には、ハウジング13から下方に導出されたアース接続部27が形成されている。アース接続部27は、ハウジング13から下方に導出された後に略直角に前方(図5における左方)に曲げ加工されている。アース接続部27には上下方向に貫通する貫通孔28が形成されている。この貫通孔28内に、図示しないボルトが挿通されて、車体40に形成されたねじ孔(図示せず)に螺合されることにより、アース接続部27が車体40に固定される。
【0039】
埋設部41には、接着剤42により、ハウジング13を構成する合成樹脂と接着された接着部43が形成されている。図4に示すように、インサート成形される前の状態における導電部材14においては、埋設部41に、導電部材14を構成する金属と、ハウジング13を構成する合成樹脂の双方に親和性を有する合成樹脂からなる接着剤42が塗布されることにより、接着部43が形成されている。なお、この接着部43に塗布された接着剤42は、導電部材がインサート成形された後には、ハウジング13を構成する合成樹脂と一体になって、区別できない状態となっていてもよい。
【0040】
(ゴム栓30)
図1に示すように、ハウジング13には、端子収容部15の前方(図1における左方)に、ゴム栓収容部29が形成されている。ゴム栓収容部29は前方に開口している。ゴム栓収容部29の内部には、ゴム栓30が収容されるようになっている。
【0041】
図6に示すように、ゴム栓30は、ハウジング13の上壁のうち、前端部寄りの位置にヒンジ31を介して形成されたキャップ32に取り付けられている。キャップ32はヒンジ31を介して回動可能になっている。
【0042】
図6及び図7に示すように、キャップ32の側壁に形成されたロック部33と、ハウジング13の側壁に形成されたロック受け部34とが弾性的に係合することにより、キャップ32とハウジング13とがロックされるようになっている。
【0043】
図1に示すように、キャップ32とハウジング13とがロックされた状態で、キャップ32に取り付けられたゴム栓30は、ハウジング13のゴム栓収容部29内に収容されるようになっている。ゴム栓収容部29の内壁と、ゴム栓30の外面とが密着することにより、キャップ32とハウジング13とが液密にシールされる。
【0044】
(易破壊部)
図8に示すように、埋設部41の前面及び後面の双方には、埋設部41の前面及び後面の対応する位置に、凹溝35(易破壊部に相当)が形成されている。凹溝35は、その断面形状がV字状をなすV溝とされている(図10参照)。埋設部41の前面及び後面に形成された凹溝35の深さ寸法は、略同じ深さに設定されている。
【0045】
図8に示すように、凹溝35は、埋設部41のうち接着部43とは異なる部分に形成されている。本実施形態においては、埋設部41よりも上方の位置に形成されている。また、図9に示すように、凹溝35は、埋設部41のうち幅方向の全域に亘って形成されている。
【0046】
本実施形態に係るアースコネクタ10について、導電部材14(特に凹溝35と異なる部分)、凹溝35、ハウジング13、及び接着剤42の機械的強度の大小に関し、表2に模式的に示した。
【0047】
【表2】

【0048】
導電部材14のうち凹溝35と異なる部分は、車両の振動等により発生する比較的に小さな応力に対しては、弾性変形により応力を吸収するようになっており、車体40の解体時等に発生する比較的に大きな応力に対しては、塑性変形するようになっている。
【0049】
また、導電部材14のうち凹溝35は、車体40の解体時等に発生する比較的に大きな応力に対しては、他の部分に先立って破壊されるように強度設計されている。このため、凹溝35は、比較的に大きな応力に対しては、他の部分よりも強度が低くなっている。
【0050】
そして、本実施形態においては、車両の振動等により発生する比較的に小さな応力に対して、凹溝35は、他の部分と同じ強度に設計されていなくてもよい。これは、凹溝35の強度が、比較的に小さな応力に対して、他の部分よりも強く設計されていてもよく、また、同じであってもよく、また、他の部分よりも弱く設計されていてもよい。表2においては、凹溝35の強度が、他の部分よりもやや弱く設計された例を示している。
【0051】
上記したように、凹溝35は、ハウジング13の内部に位置している。このため、車両の振動等により発生する比較的に小さな振動は、ハウジング13によって受けられるので、ハウジング13の内部に位置する凹溝35には伝達されないようになっている。このハウジング13を構成する合成樹脂の強度は、表2に示すように、比較的に小さな応力に対しては弾性変形することにより応力を吸収するようになっている。
【0052】
一方、ハウジング13は、比較的に大きな応力を受けた場合には、破壊されるようになっている。ハウジング13を構成する合成樹脂が破壊される応力の大きさは、凹溝35が破壊される応力の大きさよりもやや小さく設定されている。これにより、比較的に大きな応力がハウジング13に加えられた場合には、まず、ハウジング13が破壊され、続いて、凹溝35が破壊されるようになっている。
【0053】
上記したように、埋設部41には、接着部43が形成されている。この接着部43は、接着剤42によって、ハウジング13を構成する合成樹脂と接着されている。この接着剤42は、比較的に大きな応力を加えられた場合でも、破壊されることなく、変形することにより応力が吸収されるようになっている。このとき接着剤42は、弾性変形してもよく、また、塑性変形してもよい。本実施形態においては、接着剤42の強度は、凹溝35が破壊される大きさの応力が加えられた場合でも破壊されないように設定されている。
【0054】
(組み付け工程)
続いて、本実施形態に係るアースコネクタ10の組み付け工程の一例について説明する。組み付け工程は、本実施形態に限定されない。電線11の端部に接続された雌端子12を、ハウジング13の後方に開口する防水筒部23から端子収容部15内に収容する。すると、ランス16が雌端子12の接続筒部20と当接して弾性変形する。雌端子12を更に前方に押し込むと、ランス16が復帰変形し、ランス16の係止爪18が接続筒部20の係止孔22の孔縁に後方から係止する。これにより雌端子12の後方への抜け止めが図られる。
【0055】
雌端子12がランス16に係止されて正規位置に保持された状態で、ハウジング13にインサート成形された雄タブ25は、雌端子12の弾性接触片21と弾性的に接触することにより、雌端子12と電気的に接続される。
【0056】
全ての雌端子12をハウジング13に取り付けた後、ゴム栓収容部29から、目視により、又は治具を用いて、ランスが初期位置に復帰することを確認する。これにより、雌端子12が正規位置に挿入されていることを確認する。その後、ゴム栓30が取り付けられたキャップ32をハウジング13に組み付ける。これにより、ゴム栓収容部29が液密にシールされる。続いて、アース接続部27の貫通孔28内にボルトを貫通させ、車体40に固定する。これにより、電線11、雌端子12、雄タブ25、連結部26、及びアース接続部27が、車体40に接地される。
【0057】
(本実施形態の作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。まず、車体40の振動によって発生する比較的に小さな応力がハウジング13から露出したアース接続部27に加えられた場合、金属製のアース接続部27が弾性変形することにより、応力は吸収される。これにより、アース接続部27が金属疲労によって破壊されることが抑制される。また、振動に起因する比較的に小さな応力がハウジング13に伝達された場合でも、合成樹脂製のハウジング13が弾性変形することにより、応力は吸収される。これにより、ハウジング13の内部に位置する凹溝35に対して、比較的に小さな応力が伝達されることが抑制される。この結果、凹溝35について、比較的に小さな応力に対して他の部分よりも先に破壊されないように強度設計する必要がなくなる。
【0058】
一方、電線11を車体40から取り外す際には、例えばクレーンに取り付けられたフックを電線11に引っ掛けて、電線11を引っ張る。すると、ハウジング13の後方から導出された電線11は、車体40から離間する方向(図5に示す矢線の方向)に引っ張られる。この方向は、本実施形態においては上方となっている。
【0059】
電線11が引っ張られると、ハウジング13も上方に引っ張られる。車両の解体時には、比較的に大きな応力が電線11を介してハウジング13に加えられる。ハウジング13が上方に引き上げられる力は、ハウジング13と導電部材14との境界部分に集中する。この結果、ハウジング13は、導電部材14との境界部分から破壊が進行する。本実施形態においては、ハウジング13から導電部材14が下方に導出される部分から、ハウジング13が、導電部材14から離間する方向に破壊される。
【0060】
すると、導電部材14のうち、アース接続部27の上方の部分であって、ハウジング13に埋設されていた領域が露出する。ハウジング13から露出した領域には、凹溝35が形成されている。電線11を引き上げる力は、ハウジング13によって受けられることなく、凹溝35に伝達される。この結果、凹溝35が、破壊される。
【0061】
すると、導電部材14のうち、車体40に対してボルトにより固定されたアース接続部27と、凹溝35に対してアース接続部27側の部分とが、車体40に残留する。一方、導電部材14のうち凹溝35に対してアース接続部27と反対側の部分は、電線11と共に車体40から取り外される。
【0062】
このように、本実施形態によれば、比較的に大きな応力によって破壊される凹溝35がハウジング13の内部に位置する構成としたので、比較的に小さな応力が凹溝35に伝達されることが抑制される。これにより、導電部材14に形成された凹溝35に対しては、比較的に大きな応力を受けることによって他の部分よりも先に破壊されるような強度設計のみを行えばよいので、導電部材14の強度設計に関する信頼性を向上させることができる。から取り外される。
【0063】
また、本実施形態によれば、電線11を引っ張るという単純な作業により、車体40から電線11を取り外すことができるので、電線11を車体40から取り外す作業の効率を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、複数の電線11にはそれぞれ雌端子12が接続されており、導電部材14には複数の雄タブ25が形成されており、複数の雌端子12同士が導電部材14によって電気的に接続される。このように本実施形態によれば、アースコネクタ10を、複数の雌端子12を電気的に接続するジョイントコネクタに適用することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、ハウジング13には、雌端子12を収容する端子収容部15が形成されており、端子収容部15には雌端子12と係止するランス16が形成されており、雄タブ25は端子収容部15内に配されている。このように本実施形態によれば、1つのハウジング13に、雌端子12と雄タブ25とを配することができるので、例えば、互いに嵌合可能な雌ハウジングと雄ハウジングを有するコネクタにおいて、雌ハウジングに雌端子12を配し、雄ハウジングに雄タブ25を配する場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、電線11は車体40から離間する方向に引っ張られるようになっている。これにより、電線11を引っ張る力は、ハウジング13と導電部材14との境界部分に集中するようになっている。これにより、先ずハウジング13が破壊されて、凹溝35が露出した後に、凹溝35に応力が集中するようになっている。
【0067】
また、本実施形態によれば、導電部材14のうちハウジング13の内部に位置する部分には、凹溝35と異なる位置に、ハウジング13を構成する合成樹脂と接着剤42によって接着された接着部43が形成されている。接着剤42は比較的に機械的強度が高いので、接着部43に凹溝35を形成すると、接着部43によって応力が受けられることが懸念される。そこで、接着部43とは異なる部分に凹溝35を形成することにより、確実に凹溝35が破壊されるようにすることができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、導電部材14に凹溝35を形成するという容易な手法により、易破壊部を形成することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、凹溝35は、導電部材14の表面及び裏面の双方に形成されており、且つ、導電部材14の表面及び裏面における対応する位置に形成されている。これにより、車両の解体時において、確実に凹溝35が破壊されるようにすることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、ハウジング13には、端子収容部15と連通する防水筒部23が形成されており、防水筒部23の内面と電線11に外嵌された電線側ゴム栓24の外面とが密着することにより、ハウジング13と電線11との間がシールされている。このように本実施形態係るアースコネクタ10を防水コネクタに適用することができる。
【0071】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態においては、8つの電線11に接続された雌端子12を接地する構成としたが、これに限られず、1つの電線11の端部に接続された1つの端子が接地される構成としてもよい。また、2つ〜7つ、又は9つ以上の電線11に接続された雌端子12を接地する構成としてもよい。
【0072】
(2)本実施形態におけるアースコネクタ10は防水構造を有していたが、これに限られず、アースコネクタ10は防水構造を有しなくてもよい。
【0073】
(3)本実施形態においては、ハウジング13には雌端子12を収容する端子収容部15が形成される構成としたが、これに限られず、ハウジング13は、雌端子12が保持される雌ハウジングと、雌ハウジングが嵌合されるフード部を備えた雄ハウジングと、を備え、雄ハウジングには導電部材14が合成樹脂によってインサート成形される構成としてもよい。この場合、導電部材14の易破壊部は、雄ハウジングを構成する合成樹脂の内部に形成される。
【0074】
(4)易破壊部は断面形状がV字状をなす凹溝35としたが、これに限られず、角溝、U溝、半円溝であってもよい。易破壊部の形状としては、必要に応じて任意の形状を適宜選択しうる。
【0075】
(5)易破壊部は、導電部材14を貫通する複数のスリット、又は、複数の貫通孔が、間隔を空けて並んで形成される構成であってもよい。また、易破壊部は有底孔であってもよい。易破壊部としては、必要に応じて任意の構成を採用しうる。
【0076】
(6)易破壊部は、導電部材14の側縁が切り欠かれた切欠部によって形成してもよい。切欠部の形状は、V字状、U字状、半円形状等、必要に応じて任意の形状を適宜選択しうる。
【0077】
(7)凹溝35は、導電部材14の一方の面に形成されていてもよい。
【0078】
(8)電線11に雄端子を接続し、導電部材14に雌端子12を設ける構成としてもよい。
【0079】
(9)易破壊部は、導電部材14のうち、接着部43の下方の位置に形成される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…アースコネクタ
11…電線
12…雌端子(端子)
13…ハウジング
14…導電部材
15…端子収容部
16…ランス
25…雄タブ(接続部)
27…アース接続部
35…凹溝(易破壊部)
43…接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に取り付けられるアースコネクタであって、
合成樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングにインサート成形されており、且つ、電線に接続された端子と電気的に接続される接続部を有すると共に前記ハウジングから外部に導出されて前記車体に固定されるアース接続部を有する金属製の導電部材と、を備え、
前記導電部材には、前記ハウジングの内部に位置する部分に、前記電線が引っ張られる力によって破壊可能な易破壊部が形成されているアースコネクタ。
【請求項2】
前記電線は複数であって、複数の前記電線にはそれぞれ前記端子が接続されており、前記導電部材には複数の前記接続部が形成されており、複数の前記端子同士が前記導電部材によって電気的に接続される請求項1に記載のアースコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記端子を収容する端子収容部が形成されており、前記端子収容部には前記端子と係止するランスが形成されており、前記接続部は前記端子収容部内に配されている請求項1または請求項2に記載のアースコネクタ。
【請求項4】
前記電線は前記車体から離間する方向に引っ張られる請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項5】
前記導電部材のうち前記ハウジングの内部に位置する部分には、前記易破壊部と異なる位置に、前記ハウジングを構成する合成樹脂と接着剤によって接着された接着部が形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項6】
前記易破壊部は、前記導電部材に形成された凹溝である請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のアースコネクタ。
【請求項7】
前記易破壊部は、前記導電部材の表面及び裏面の双方に形成されており、且つ、前記導電部材の表面及び裏面における対応する位置に形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のアースコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−73925(P2013−73925A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214779(P2011−214779)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)