説明

イオントフォレーシス装置

【課題】 分極性電極と、当該分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有する電極構造体において通電を行った場合におけるイオン交換膜の近傍でのガスの発生を抑止又は抑制することが可能なイオントフォレーシス装置を提供する。
【解決手段】 分極性電極と、前記分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有する電極構造体を備えるイオントフォレーシス装置において、前記イオン交換膜と前記分極性電極が非接触となるように、前記イオン交換膜が前記分極性電極から離間して配置する。分極性電極は、単位体重量当たりの静電容量が100mF/g以上の導電体又は比表面積が1m/g以上の導電体を含有する電極であることができる。分極性電極は、活性炭又は活性炭繊維を含有する電極であることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレーシス装置に関し、特に、電極構造体における好ましくない電極反応を抑止ないし抑制できるイオントフォレーシス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオントフォレーシスは、プラス又はマイナスのイオンに解離した薬物(薬物イオン)を電圧により駆動して経皮的に生体内に移行させるものであり、患者に対する負担が少なく、薬物の投与量の制御性に優れるなどの利点を有している。
【0003】
図4は、上記イオントフォレーシスを行うための装置であるイオントフォレーシス装置101の基本的な構成を示す説明図である。
【0004】
図示されるように、イオントフォレーシス装置101は、電極111と、プラス又はマイナスの薬物イオンを含む薬液を保持する薬液保持部112とを有する作用側電極構造体110、電極121と、電解液を保持する電解液保持部122とを有する非作用側電極構造体120、及び給電線131、132を介して電極111、121に両端を接続された電源130を備えており、薬液保持部112及び電解液保持部122を生体皮膚に接触させた状態で電極111に薬物イオンと同一極性の電圧を、電極121にその反対極性の電圧を印加することで薬物イオンが生体に投与される。
【0005】
このようなイオントフォレーシス装置101における解決課題の一つに電極構造体110、120中において通電の際に生じる種々の電極反応がある。
【0006】
例えば、薬液中の薬物イオンがプラスイオンである場合には、電極反応によって電極111において酸素ガスや塩素ガス、或いは水素イオンや次亜塩素酸が発生する場合があり、薬物の種類によっては薬物が化学反応を起こして変質する場合がある。一方、電極121においては水素ガス、或いは水酸基イオンが発生する場合がある。
【0007】
同様に、薬液中の薬物イオンがマイナスイオンである場合には、電極反応によって電極111においては水素ガス、或いは水酸基イオンが発生する場合があり、薬物の種類によっては薬物が化学反応を起こして変質する場合がある。一方、電極121においては酸素ガスや塩素ガス、或いは水素イオンや次亜塩素酸が発生する場合がある。
【0008】
電極構造体110、120において上記のようなガスが発生した場合には、電極111、121から薬液、電解液への通電が阻害されることになり、水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸が生成された場合には、これらが生体界面に移行することで生体に有害な作用を及ぼす懸念を生じる。また薬物の変質を生じると、薬効の低下や消失を生じ、或いは有毒性の物質が生成されるなどの好ましくない状況を生じる場合がある。
【0009】
上記のような通電時における電極反応に起因する問題を解決するための手法としては、電極に銀−塩化銀などの活性電極を使用する手法(例えば特許文献1)や、電極界面に水よりも酸化還元電位の低い電解質を溶解した電解液を介在させる手法(例えば特許文献2)が知られている。
【0010】
しかしながら、前者の手法では、装置の保管中に進行する活性電極と薬物との反応を抑止することが難しく、或いは通電の際に生じる活性電極のモルフォロジー変化に対処するための特別な措置が必要になるなどの副次的な問題が派生する。後者の手法においても、電解液と薬液との混合を防止することが難しく、またその分離のために装置構成が複雑化するなどの副次的な問題が派生する。
【0011】
このため、本願出願人は、通電時における電極反応に起因する問題を解決するための新たな手法を案出し、これを特願2005−229984号として特許出願を行っている。
【0012】
図5は、特願2005−229984号において一実施形態として開示されるイオントフォレーシス装置201の構成を示す説明図である。
【0013】
図示されるように、イオントフォレーシス装置201は、分極性電極211と、分極性電極211の前面側に配置され、薬物イオンを含む薬液を保持する薬液保持部212とを有する作用側電極構造体210、分極性電極221と、分極性電極221の前面側に配置され、電解液を保持する電解液保持部252とを有する非作用側電極構造体220、及び分極性電極211、221に給電線231、232を介してその両端が接続される電源230から構成されている。
【0014】
ここで、分極性電極211、221は、電極の表面に電気2重層が形成されることにより電解液への通電を行いうる性質を有する電極であり、分極性電極211、221から薬液、電解液への通電が分極性電極211、221の表面に電気2重層が形成されることにり生じるために、従来のイオントフォレーシス装置における電極反応による問題を軽減又は解消することが可能である。
【0015】
また、イオントフォレーシス装置201では、特許文献1における電極と薬物の反応の問題や電極のモルフォロジー変化に起因する問題、或いは特許文献2における薬液と電解液の分離の困難性や装置構成の複雑化などの問題も解決することが可能である。
【0016】
更に、本発明者らの検討により、上記特願2005−229984号に開示されるイオントフォレーシス装置、即ち、電極構造体が備える電極として分極性電極が使用されたイオントフォレーシス装置においては、電極構造体中に追加的な部材としてイオン交換膜を配置することにより、種々の面における装置性能の改善を図りうることが明らかとされている。
【0017】
例えば、作用側電極構造体210の薬液保持部212の前面側に薬物イオンと同一極性のイオン交換膜を配置した場合には、生体対イオンの薬液保持部212への移行がこのイオン交換膜により遮断されるために、生体対イオンの移動により消費される電流量を減少させ、薬物イオンの投与効率(輸率)を上昇させることができる。
【0018】
また、作用側電極構造体210においても、分極性電極211の静電容量や通電条件などによっては、通電による電極反応がある程度生じてしまう場合も想定されるが、分極性電極211と薬液保持部212の間に薬物イオンと反対極性のイオン交換膜を配置することにより、或いは、薬液保持部212の前面側に薬物イオンと反対極性のイオン交換膜を配置し、更にその前面側に薬物イオンを含む薬液を保持する追加的な薬液保持部を配置することにより、電極反応により生じた水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸などの有害なイオンや変質した薬物イオンの生体への移行を遮断し、薬物投与の安全性を向上させることが可能である。
【特許文献1】米国特許第4744787号公報
【特許文献2】特許第3040517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、本願発明者らが、上記のような分極性電極とイオン交換膜とを有する電極構造体を備えるイオントフォレーシス装置の検討を行ううちに、装置の構成や通電条件などによっては、通電時にイオン交換膜の近傍において塩素ガスなどの気泡が発生し、これにより電極構造体内における通電性が損なわれる問題を生じることが見出された。
【0020】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電極構造体における電極反応を抑止又は抑制しつつ通電を行うことが可能なイオントフォレーシス装置を提供することをその目的とする。
【0021】
本発明は、分極性電極と、当該分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有する電極構造体を備えるイオントフォレーシス装置であって、通電の際におけるイオン交換膜の近傍でのガスの発生を抑止又は抑制することが可能なイオントフォレーシス装置を提供することをもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、
分極性電極と、前記分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有する電極構造体であって、
前記イオン交換膜と前記分極性電極が非接触となるように、前記イオン交換膜が前記分極性電極から離間して配置された電極構造体を備えることを特徴とするイオントフォレーシス装置である(請求項1)。
【0023】
本発明では、分極性電極における通電は、分極性電極の表面に電気2重層が形成されることにより生じるが故に、電極反応を生じさせることなく、或い電極反応を低減させた状態で、電解液や薬液への通電を行うことが可能であり、その結果、酸素ガス、塩素ガス、水素ガスなどのガスの発生、或いは水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸などの好ましくないイオンの発生、或いは化学反応による薬物イオンの変質を抑止し、又は少なくとも低減することができる。
【0024】
また本発明では、イオン交換膜が分極性電極と非接触となるように、イオン交換膜が分極性電極から離間して配置される結果、通電時におけるイオン交換膜の近傍におけるガスの発生が抑止又は抑制される。なお、この構成によってイオン交換膜の近傍におけるガスの発生が抑止又は抑制される事実は、実験的には確認されているものの、分極性電極とイオン交換膜とを組み合わせて使用した場合にイオン交換膜の近傍においてガスが発生するメカニズム、或いは上記構成によってイオン交換膜の近傍におけるガスの発生が抑止又は抑制されるメカニズムは現段階では明らかとされていない。
【0025】
上記構成を有する電極構造体、即ち、分極性電極と、分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有し、イオン交換膜と分極性電極が非接触となるように、イオン交換膜が分極性電極から離間して配置された電極構造体は、イオントフォレーシス装置における作用側電極構造体及び/又は非作用側電極構造体として使用することができる。
【0026】
即ち、イオントフォレーシス装置は、生体に投与すべき薬物イオンを保持する作用側電極構造体と、その対極としての役割を有する非作用側電極構造体とを有することが通常であるが、その場合には、作用側電極構造体と非作用側電極構造体の少なくとも一方において上記構成を採用したイオントフォレーシス装置が本発明に従うイオントフォレーシス装置であり、好ましくはその双方において上記構成を採用することができる。
【0027】
イオントフォレーシス装置の種類によっては、電源の両極に接続される2つの電極構造体の双方に生体に投与すべき薬物イオンが保持される場合があり(この場合は双方の電極構造体が、作用側電極構造体であるとともに非作用側電極構造体である)、或いは電源のそれぞれの極に複数の電極構造体が接続される場合もあるが、そのような場合は、これらの電極構造体の少なくとも一つにおいて上記構成を採用したイオントフォレーシス装置が本発明に従うイオントフォレーシス装置であり、好ましくはその全てにおいて上記構成を採用することができる。
【0028】
本発明の分極性電極は、単位重量当たりの静電容量が100mF/g以上の導電体を含有する電極とすること(請求項2)が好ましく、これにより、分極性電極の表面に電気2重層が形成されることによる通電量を増大させることができる。上記導電体の単位重量当たりの静電容量は、より好ましくは1F/g以上、特に好ましくは10F/g以上とすることができ、これにより、電極反応を生じることなく、或いは電極反応を低減させた状態で通電しうる電流量を増大させることができる。
【0029】
本発明の分極性電極は、比表面積が1m/g以上の導電体を含有する電極とすること(請求項3)も可能であり、この場合も、分極性電極の表面に電気2重層が形成されることによる通電量を増大させることができる。上記導電体の比表面積は、より好ましくは10m/g以上、特に好ましくは1000m/g以上とすることができ、これにより、電極反応を生じることなく、或いは電極反応を低減させた状態で通電しうる電流量を増大させることができる。
【0030】
請求項2又は3の発明における導電体としては、金、銀、アルミニウム、ステンレスなどの金属導電体、或いは活性炭や酸化ルテニウムなどの非金属導電体を使用することが可能であるが、この導電体として非金属導体を使用することが特に好ましく、これにより、分極性電極から金属イオンが溶出して生体に移行する懸念を低減又は解消することが可能となる。なお、分極性電極を構成する導電体として、アルマイトなどの表面に不溶化処理が施された金属導電体を使用した場合も、同様の効果を得ることができる。
【0031】
請求項2又は3の分極性電極は、単位重量当たりの静電容量が100mF/g以上の導電体、或いは比表面積が1m/g以上の導電体のみから構成されていても良く、例えばこれらの導電体が粉末である場合などには、賦型性や保型性、或いは取扱性向上のためのバインダポリマーなどの他の成分が配合されていても良い。
【0032】
本発明の分極性電極は、活性炭を含有する電極とすること(請求項4)も可能であり、これにより、安価かつ安全であり、また静電容量の高い分極性電極を得ることができる。
【0033】
上記活性炭としては、ヤシ殻、木粉、石炭、ピッチ、コークスなどの炭素を含有する原料を炭化、賦活することで得られるごく普通の活性炭を使用することが可能である。請求項4の発明における活性炭は、単位重量当たりの静電容量が100mF/g以上であること、或いは比表面積が1m/g以上であることが好ましい。
【0034】
請求項4における活性炭は、活性炭繊維とすること(請求項5)が可能でありこれにより、取扱性に優れる分極性電極を得ることができる。天然繊維は、例えば、織布や不織布の形態のものを使用することができる。
【0035】
この場合の活性炭繊維としては、ノボロイド繊維(フェノール樹脂を繊維化した後、架橋処理し、分子構造を3次元化させた繊維)を炭化、賦活させたものを使用することが特に好ましく、これにより、柔軟性や機械的強度(引っ張り強度など)に優れるとともに極めて比表面積が高く、静電容量の大きい分極性電極を得ることができる。
【0036】
なお、請求項4又は5の分極性電極は、活性炭又は活性炭繊維のみから構成されていても良く、賦型性や保型性、或いは取扱性向上のためのバインダポリマーなどの他の成分が活性炭又は活性炭繊維に配合されていても良い。この場合に好適に使用することができるバインダーポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン又はポリフッ化ビニリデンフロライドを例示することができる。活性炭又は活性炭繊維97〜80重量部に対するバインダーポリマーの好ましい配合量は、3〜20重量部である。
【0037】
請求項1〜5の発明では、分極性電極とイオン交換膜との間に、イオンの通過を許容できる絶縁物質よりなる隔離膜を配置すること(請求項6)が好ましく、これにより、分極性電極とイオン交換膜の接触を確実に防止するとともに、分極性電極とイオン交換膜の間の通電性を確保することが可能となる。
【0038】
この場合の隔離膜としては、人工繊維や天然繊維よりなる織布や不織布、表裏を連通する多数の小孔が形成された多孔質膜、或いはゲルなどの内部に電解液(又は薬液)を安定に担持できる部材を使用することが好ましく、これにより、分極性電極とイオン交換膜との間でのより高い導通性を得ることができる。
【0039】
請求項1〜6の発明では、分極性電極に電解液を保持させることが可能であり(請求項7)、これにより、分極性電極から電解液への通電性を向上させることができる。
【0040】
請求項7の発明では、電解液の浸透性に優れる活性炭又は活性炭繊維を含有する分極性電極を特に好ましく使用することができる。また、分極性電極に保持させる電解液に増粘剤を配合して電解液の粘度を調整することにより、分極性電極内における電解液の保持性を更に向上させ、分極性電極の取扱性や装置の組立の容易性を向上させることも可能である。
【0041】
請求項1〜7の発明においては、電極構造体が、第1極性の薬物イオンを含む薬液を保持する薬液保持部を更に備えるものとすることが可能であり(請求項8)、この電極構造体は、作用側電極構造体として使用することが出来る。
【0042】
請求項8の発明においては、分極性電極に薬物イオンを含む薬液を保持させることが可能である(請求項9)。この場合、分極性電極及び薬液保持部の薬液の組成を同一にすることで、作用側電極構造体内での薬液の混合に起因するイオントフォレーシス装置の性能の経時的な変化又は劣化を防止することが可能となる。
【0043】
また、分極性電極に保持させる薬液には増粘剤を配合することが好ましく(請求項10)、これにより、分極性電極内における薬液の保持性を向上させ、分極性電極の取扱性や装置の組立の容易性を向上させることが可能である。この場合、作用側電極構造体内での薬液の混合による装置性能の経時的変化を防止するためには、薬液保持部の薬液に、分極性電極の薬液と同種かつ同量の増粘剤を配合して両薬液組成を同一にすることが好ましい。
【0044】
請求項8〜10の発明においては、分極性電極とイオン交換膜との間に、イオンの通過を許容できる絶縁物質よりなる隔離膜を配置するとともに、隔離膜に薬物イオンを含む薬液を保持させることが可能であり(請求項11)、この場合も、隔離膜、分極性電極及び/又は薬液保持部の薬液組成を同一にすることで、作用側電極構造体内での薬液の混合による装置性能の経時的変化を防止することが可能となる。
【0045】
請求項8〜11の発明においては、イオン交換膜として第2極性のイオン交換膜を使用し、薬液保持部をイオン交換膜の前面側に配置することが可能である(請求項12)。
【0046】
かかる構成によれば、分極性電極における電極反応がある程度生じたとしても、これにより生成される水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸などの生体皮膚界面への移行をイオン交換膜により遮断することができ、薬物投与の安全性を向上させることが可能となる。また、分極性電極及び/又は隔離膜に薬物イオンを含む薬液が保持されている場合であれば、化学反応による薬物イオンの変質が生じたとしても、その変質した薬物イオンの生体界面への移行をイオン交換膜により遮断することができる。
【0047】
請求項12の発明においては、上記薬液保持部の前面側に、薬液保持部に保持される薬物イオンの通過を許容する一方で、生体対イオンの通過を遮断するイオン選択膜を更に配置することが可能である(請求項13)。
【0048】
かかる構成では、生体対イオンの薬液保持部への移行がイオン選択膜により遮断されるために、薬物イオンの投与効率を上昇させることが可能となる。
【0049】
請求項13の発明におけるイオン選択膜は、電荷に基づいて薬物イオンの通過を許容し、生体対イオンの通過を遮断する電荷選択膜の形態を取ることができ、イオンの分子量やサイズ、或いは立体的形状に基づいて薬物イオンの通過を許容し、生体対イオンの通過を遮断する半透膜の形態を取ることができる。
【0050】
請求項13の発明におけるイオン選択膜には、特に好ましくは薬液保持部に保持される薬物イオンと同一極性のイオン交換膜を使用することが可能である。即ち、薬液保持部に保持されるされる薬物イオンがプラスイオンである場合にはカチオン交換膜を使用し、薬液保持部に保持される薬物イオンがマイナスイオンである場合にはアニオン交換膜を使用することができる。
【0051】
請求項13の発明においては、イオン選択膜の前面側に、飽和又は過飽和の薬物イオンを含む薬液を担持させることが可能である(請求項14)。かかる構成では、生体皮膚上における生体対イオン濃度が飽和又は過飽和の薬液との接触により低下するために、薬物イオンの投与効率の更なる増大を達成することができる。
【0052】
請求項8〜11の発明においては、イオン交換膜として第1極性のイオン交換膜を使用するとともに、薬液保持部を分極性電極の前面側に配置し、イオン交換膜を薬液保持部の前面側に配置することが可能である(請求項15)。かかる構成では、生体対イオンの薬液保持部への移行がイオン交換膜により遮断されるために、薬物イオンの投与効率を上昇させることが可能となる。
【0053】
請求項15の発明においては、イオン交換膜の前面側に、飽和又は過飽和の薬物イオンを含む薬液を担持させることが可能である(請求項16)。かかる構成では、生体皮膚上における生体対イオン濃度が飽和又は過飽和の薬液との接触により低下するために、薬物イオンの投与効率の更なる増大を達成することができる。
【0054】
上記各発明においては、分極性電極を、比抵抗又は面抵抗の小さい集電体上に積層して配置することが可能であり、これにより、分極性電極のより広い面積から均等な電流密度での通電が生じるようにすることができる。
【0055】
この場合に使用することができる集電体としては、金属薄膜、金属メッシュ、炭素繊維又は炭素繊維紙などを例示することができるが、これらのうち、炭素繊維又は炭素繊維紙を使用した場合には、金属製の部材を使用することなく電極構造体を構成することが可能となり、集電体から溶出した金属イオンが生体に移行する懸念が低減されたイオントフォレーシス装置を実現することが可能となる。また炭素繊維や炭素繊維紙は面抵抗が低い素材であるため、分極性電極に均等な電流密度で給電を行うことが可能であり、炭素繊維や炭素繊維紙は柔軟性の高い素材であるため、生体の動きや皮膚の凹凸に追随できる柔軟性のある電極構造体を備えるイオントフォレーシス装置を提供することが可能になる。
【0056】
本明細書における「薬物」は、調製されているか否かに関わらず、一定の薬効又は薬理作用を有し、病気の治療、回復又は予防、健康の増進又は維持、病状や健康状態などの診断、或いは美容の増進又は維持などの目的で生体に投与される物質を意味する。
【0057】
本明細書における「薬物イオン」は、薬物がイオン解離することにより生じるイオンであって、薬効又は薬理作用を担うイオンを意味する。
【0058】
本明細書における「薬液」は、薬物イオンを含む流動物を意味し、本明細書における「薬液」には、薬物を溶媒に溶解させた溶液や薬物が液状である場合における原液などの液体状態のものだけでなく、薬物の少なくとも一部が薬物イオンに解離する限り、薬物を溶媒等に懸濁又は乳濁させたもの、軟膏状又はペースト状に調整されたものなど各種の状態のものを含む。
【0059】
本明細書における「薬物対イオン」は、薬液中に存在するイオンであって、薬物イオンとは反対極性のイオンを意味する。
【0060】
本発明の薬液保持部、分極性電極、隔離膜などに保持される薬物イオンは必ずしも単一種類である必要はなく、これらのいずれか一以上に保持される薬物イオンが複数種類であっても構わない。また、本発明の薬液保持部、分極性電極、隔離膜に保持される薬物イオンは、全て同一種類の薬物イオンとすることも可能であり、それぞれ異なる種類の薬物イオンとすることも可能である。
【0061】
本明細書における「皮膚」は、イオントフォレーシスによる薬物イオンの投与を行い得る生体表面を意味しており、例えば口腔内の粘膜なども含まれる。「生体」は人及び動物を含む。
【0062】
本明細書における「生体対イオン」は、生体の皮膚上又は生体内に存在するイオンであって、薬物イオンと反対極性のイオンを意味する。
【0063】
本明細書における「前面側」は、薬物イオンの投与に際して装置内を流れる電流の経路上における生体皮膚に近い側を意味する。
【0064】
本明細書における「第1極性」は、プラス又はマイナスの電気極性を意味し、「第2極性」は第1極性と反対の電気極性(マイナス又はプラス)を意味する。
【0065】
イオン交換膜としては、イオン交換樹脂を膜状に形成したものの他、イオン交換樹脂をバインダーポリマー中に分散させ、これを加熱成型などにより製膜することで得られる不均質イオン交換膜や、イオン交換基を導入可能な単量体、架橋性単量体、重合開始剤などからなる組成物、又はイオン交換基を導入可能な官能基を有する樹脂を溶媒に溶解させたものを、布や網、或いは多孔質フィルムなどの基材に含浸充填させ、重合又は溶媒除去を行った後にイオン交換基の導入処理を行うことにより得られる均質イオン交換膜など各種のイオン交換膜が知られているが、本発明のイオン交換膜には、これらのイオン交換膜を特段の制限無く使用することができる。
【0066】
本明細書における「第1極性のイオン交換膜」は、第1極性のイオンの通過を許容する一方で第2極性のイオンの通過を遮断する機能を有するイオン交換膜(即ち、第1極性のイオンが、第2極性のイオンよりも通過し易いイオン交換膜)を意味する。第1極性がプラスである場合には「第1極性のイオン交換膜」はカチオン交換膜であり、第1極性がマイナスである場合には「第1極性のイオン交換膜」はアニオン交換膜である。
【0067】
同様に、「第2極性のイオン交換膜」は、第2極性のイオンの通過を許容する一方で第2極性のイオンの通過を遮断する機能を有するイオン交換膜(即ち、第2極性のイオンが、第1極性のイオンよりも通過し易いイオン交換膜)を意味する。第2極性がプラスである場合には「第2極性のイオン交換膜」はカチオン交換膜であり、第2極性がマイナスである場合には「第2極性のイオン交換膜」はアニオン交換膜である。
【0068】
カチオン交換膜の具体例としては、(株)トクヤマ製ネオセプタCM−1、CM−2、CMX、CMS、CMBなどの陽イオン交換基が導入されたイオン交換膜を例示することができ、アニオン交換膜の具体例としては、(株)トクヤマ製ネオセプタAM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH、ACSなどの陰イオン交換基が導入されたイオン交換膜を例示することができる。
【0069】
本発明のイオン交換膜には、多孔質フィルム中にイオン交換樹脂が充填されたタイプのイオン交換膜を特に好ましく使用することができる。具体的には、0.005〜5.0μm、より好ましくは0.01〜2.0μm、最も好ましくは0.02〜0.2μmの平均孔径(バブルポイント法(JIS K3832−1990)に準拠して測定される平均流孔径)の多数の小孔が、20〜95%、より好ましくは30〜90%、最も好ましくは30〜60%の空隙率で形成された5〜140μm、より好ましくは10〜120μm、最も好ましくは15〜55μmの膜厚を有する多孔質フィルムを使用し、5〜95質量%、より好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは20〜60質量%の充填率でイオン交換樹脂を充填させたイオン交換膜を使用することができる。
【0070】
本明細書においてイオン選択膜又はイオン交換膜について述べる「イオンの通過の遮断」は、必ずしも一切のイオンを通過させないことを意味するのではなく、例えば、ある特定のイオンの通過速度又は通過量が他の特定のイオンよりも十分に小さいがために、当該イオン選択膜又はイオン交換膜に求められる機能が十全に発揮される場合を含む。同様に、イオン選択膜又はイオン交換膜について述べる「イオンの通過の許容」は、イオンの通過に一切の制約が生じないことを意味するのではなく、例えば、イオンの通過がある程度制約される場合であっても、当該イオン選択膜又はイオン交換膜に求められる機能が十全に発揮される程度のイオンの通過速度又は通過量が確保される場合を含む。
【0071】
同様に、本明細書において隔離膜について述べる「イオンの通過の許容」は、イオンの通過に一切の制約が生じないことを意味するのではなく、例えば、イオンの通過にある程度制約される場合であっても、薬物イオンの投与に必要な通電量を確保できる程度にイオンの通過を生じる場合を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
図1は、本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置1の構成を示す説明図である。
【0073】
図示されるように、イオントフォレーシス装置1は、主として作用側電極構造体10、非作用側電極構造体20及び電源30から構成されている。
【0074】
作用側電極構造体10は、電源30の一方の極に給電線31を介して接続される集電体11、集電体11の前面側に配置される分極性電極12、分極性電極12の前面側に配置される隔離部13、隔離部13の前面側に配置されるイオン交換膜14及びイオン交換膜14の前面側に配置される薬液保持部15を備えており、その全体がケース又は容器18に収容されている。
【0075】
一方、非作用側電極構造体20は、電源30の他方の極に給電線32を介して接続される電極21及び電極21に接触する電解液を保持する電解液保持部25を備えており、その全体がケース又は容器28に収容されている。
【0076】
上記集電体11は、給電線31からの電流を分極性電極12のなるべく広い面積に均等な電流密度で給電するための部材である。
【0077】
集電体11には、金属などの任意の導電性材料を使用することができるが、分極性電極12を構成する導電体よりも比抵抗又は面抵抗が小さい導電性材料を使用することが好ましい。
【0078】
また集電体11に電解液(又は薬液)が接触した場合における集電体11の溶出を防止するなどの意味で、集電体11には、炭素繊維又は炭素繊維紙を特に好ましく使用することができる。この場合、本願出願人による特願2004−317317号に開示されるポリマーマトリクスにカーボンを混入させた端子部材と、当該端子部材に取り付けられた炭素繊維又は炭素繊維紙よりなる導電シートを有する集電体や、特願2005−222892号に開示されるともに炭素繊維又は炭素繊維紙よりなる導電シート部及び延長部を有し、当該延長部の一部に撥水性ポリマーが含浸された集電体を特に好ましく使用することができる。
【0079】
或いは、プラスチックなどの基材上にカーボン粉などの導電粉を含有する導電塗料を塗布することにより形成された導電塗膜により集電体11を形成することで、集電体の形成に係る製造コストを低減させることも可能である。
【0080】
分極性電極12は、比表面積が1m/g以上の導電体又は単位体積当たりの静電容量が100mF/g以上の導電体により構成することができるが、電解液に溶解せず、電解液が浸透できる素材である活性炭又は活性炭繊維により分極性電極12を構成することが好ましい。また活性炭又は活性炭繊維は電解液を含浸可能な素材であるため、分極性電極12に電解液を含浸させて保持することで、分極性電極12から電解液への通電性を向上させることができる。
【0081】
分極性電極12に電解液を保持する場合には、この電解液として、薬液保持部15に保持される薬液と同一組成の薬液を使用することが好ましく、これにより、作用側電極構造体10内における薬液の混合による装置性能の経時的変化を防止することができる。また、この薬液に増粘剤を配合して薬液粘度を調整することで、分極性電極12内における薬液の保持性を向上させ、これにより、分極性電極12の取扱性や装置の組立の容易性を高めることが可能である。この場合に使用できる特に好ましい増粘剤としてはHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を例示することができる。HPCの適切な配合量の範囲は、1〜5%程度である。
【0082】
集電体11と分極性電極12は、導電性接着剤により接着し又は導電性ゲルを介在させて密着させることにより、両者間の電気的接触状態を良好なものとすることができる。
【0083】
隔離部13には、イオンの通過を許容できる素材であって、絶縁性の(自由電子による電子伝導性を有さない)素材により形成される隔離膜Sが保持される。
【0084】
この隔離膜Sとしては、天然繊維、人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、吸収性ゲルなどの形態の部材を使用することができ、より小さい膜厚で分極性電極12とイオン交換膜14とを確実に非接触に保ち、また分極性電極12からイオン交換膜14へのイオン伝導を良好なものとするためには、電解液を含浸させた織布、不織布又は多孔質膜を使用することが特に好ましい。この場合の電解液としては、薬液保持部15(及び分極性電極12)に保持される薬液と同一組成の薬液を使用することが好ましく、これにより、作用側電極構造体10内における薬液の混合による装置性能の経時的変化を防止することができる。従って、薬液保持部15(及び分極性電極12)の薬液に増粘剤が配合されている場合には、隔離膜Sの薬液にも同種かつ同量の増粘剤を配合することが好ましい。
【0085】
なお、隔離膜Sの厚み寸法は、図示のように隔離部13の厚み寸法と同程度にしても良く、これより小さくしても構わない。また図面では、隔離部13において隔離膜Sの周辺にスペースが形成されている様子が模式的に示されているが、このようなスペースは存在しても良く、存在しなくても構わない。このようなスペースが存在する場合には、分極性電極12からイオン交換膜14への通電性を高めるために、そのスペースは電解液(又は薬液)により満たされていることが好ましい。
【0086】
イオン交換膜14としては、薬液保持部15に保持される薬液中の薬物イオンと反対極性のイオン交換膜が使用される。即ち、当該薬物イオンがプラスイオンである場合には、イオン交換膜14としてアニオン交換膜が使用され、当該薬物イオンがマイナスイオンである場合には、イオン交換膜14としてカチオン交換膜が使用される。
【0087】
薬液保持部15には、薬効成分がプラス又はマイナスの薬物イオンに解離する薬物を含む薬液が保持される。この薬液は、薬物を水などの溶媒に溶解した溶液であることができ、薬物が装置の使用条件下(例えば室温)において液体である場合には、薬物の原液であることができる。薬液中における薬物は必ずしも全てが薬物イオンに解離している必要はなく、薬物の一部のみが薬物イオンに解離していても構わない。
【0088】
薬効成分がプラスの薬物イオンに解離する薬物としては、例えば塩酸リドカインや塩酸モルヒネを例示することができ、薬効成分がマイナスの薬物イオンに解離する薬物としては、例えばアスコルビン酸を例示することができる。
【0089】
薬液保持部15は、薬液を液体状体で保持することができ、天然繊維、人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、或いはゲルなどの適当な吸収性の担体に含浸させて保持することもできる。
【0090】
分極性電極12及び/又は隔離膜Sに増粘剤が配合された薬液が保持される場合には、薬液保持部15の薬液にも同種かつ同量の増粘剤を配合して、各薬液の組成を同一にすることが好ましく、これにより、作用側電極構造体10内における薬液の混合による装置性能の経時的変化を防止することができる。
【0091】
本実施形態の非作用側電極構造体20には、従来のイオントフォレーシス装置101、201の非作用側電極構造体120、220と実質的に同一又は類似の構成が採用されている。
【0092】
電極21には、任意の導電性材料を特段の制限無しに使用することが可能であるが、銀/塩化銀電極などの水よりも酸化還元電位の低い導電性材料を用いた電極を使用することで、或いは電極21として、分極性電極12と同様の分極性電極、又は集電体11及び分極性電極12と同様の電極部材を使用することで、水の電気分解による酸素ガス、水素ガス、塩素ガスなどのガスの発生や水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸などの生成を抑止することが可能である。
【0093】
電解液保持部25に保持される電解液を適切に選択するなどによって水の電気分解によるガスの発生やイオンの生成を防止できる場合には、 電極21に金、白金、ステンレス、カーボンなどの不活性電極を使用することも可能である。
【0094】
電解液保持部25は、電極21から生体皮膚への通電性を確保することができる任意の電解質を溶解した電解液を保持することができるが、水の電気分解よりも酸化還元電位の低い電解質を使用し、或いは複数種類の電解質を溶解した緩衝電解液とすることで、通電の際における水の電気分解によるガスの発生やイオンの生成、或いはこれによるpH変化を抑制することができる。
【0095】
上記の目的を達成することができる電解液としては、例えば、0.5Mのフマル酸ナトリウムと0.5Mのポリアクリル酸の5:1混合液を例示することができる。
【0096】
電解液保持部25は、電解液を液体状体で保持することができ、天然繊維、人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、或いはゲルなどの適当な吸収性の担体に含浸させて保持することもできる。
【0097】
作用側電極構造体10及び非作用側電極構造体20の容器18、28は、内部に上述の各要素を収容できる空間が形成され、下面が開放されたプラスチックなどの任意の素材から形成される部材である。容器18、28は、好ましくは内部からの水分の蒸発や外部からの異物の侵入を防ぐことができ、生体の動きや皮膚の凹凸に追随できる柔軟な素材から形成することができる。容器18、28の下面には、イオントフォレーシス装置1の保存中における水分の蒸発や異物の混入を防ぐことができる適宜の材料からなり、使用に際して取り外されるライナー(不図示)を貼付することができ、更には、容器18、28の下面の外周縁などに生体皮膚との密着性を向上させるための粘着剤層を設けることも可能である。
【0098】
電源30としては、電池、定電圧装置、定電流装置、定電圧・定電流装置などを使用することができるが、0.01〜1.0mA/cm、好ましくは、0.01〜0.5mA/cmの範囲で電流調整が可能であり、50V以下、好ましくは、30V以下の安全な電圧条件で動作する定電流装置を使用することが好ましい。
【0099】
イオントフォレーシス装置1では、薬液保持部15及び電解液保持部25を生体皮膚に当接させた状態で、給電線31、32から集電体11及び電極21に、それぞれ薬液保持部15の薬物イオンと同一極性の電圧及び反対極性の電圧を印加することにより、薬液保持部15中の薬物イオンが生体に投与される。
【0100】
イオントフォレーシス装置1の作用側電極構造体10では、電解液(又は薬液)への通電が分極性電極12を介して行われるため、通電の際における電極反応を抑止又は抑制することができ、酸素ガス、塩素ガス、水素ガスなどのガスの発生、水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸などの有害なイオンの生成、或いは薬物イオンの化学反応による変質を防止し、又は少なくとも低減することができる。
【0101】
また、作用側電極構造体10では、分極性電極12とイオン交換膜14の間に隔離部13が配置されることによって分極性電極12とイオン交換膜14が非接触に保たれているために、分極性電極12とイオン交換膜14が接触した状態で通電が行われた場合にイオン交換膜14の下部(薬液保持部15内のイオン交換膜14との界面付近)において生じうるガスの発生が防止され、又は少なくとも低減される。
【0102】
図2(A)、(B)は、イオントフォレーシス装置1において作用側電極構造体10に代えて使用することができる他の態様の作用側電極構造体10a、10bの構成を示す説明図である。
【0103】
図2(A)に示されるように、作用側電極構造体10aは、作用側電極構造体10と同様の集電体11、分極性電極12、隔離部13、イオン交換膜14及び薬液保持部15を備えることに加え、薬液保持部15の前面側にイオン選択膜16を備えている。
【0104】
イオン選択膜16は、生体対イオンの通過を遮断するとともに、薬液保持部15の薬物イオンの通過を許容する特性を有する膜部材であり、特に好ましくは、イオン選択膜16として、薬液保持部15の薬物イオンと同一極性のイオン交換膜が使用される。即ち、当該薬物イオンがプラスイオンである場合にはカチオン交換膜を使用し、当該薬物イオンがマイナスイオンである場合にはアニオン交換膜を使用することができる。
【0105】
イオン選択膜16は、任意的な構成として、その前面側に薬物イオンを含む薬液の層17を担持することができる。この薬液の層17における薬液としては、好ましくは高濃度の薬液が使用され、特に好ましくは飽和又は過飽和の薬液が保持される。
【0106】
薬液の層17は、製造の時点においてイオン選択膜16の前面側に形成することができ、使用(生体への薬物イオンの投与)の直前にイオン選択膜16の前面側に形成することもできる。
【0107】
薬液の層17を製造の時点において形成する場合であれば、薬液の層17の薬液を薬液保持部15の薬液と同一組成とすることにより、作用側電極構造体10a内における薬液の混合による装置性能の経時的変化を防止することができる。また薬液の層17の薬液を薬液保持部15と異なる種類の薬物イオンを含む薬液とすることで、異なる種類の薬物イオンを投与することができるイオントフォレーシス装置を実現できる。
【0108】
薬液の層17は、薬液の保持性を向上させるために、イオン交換繊維、高分子電解質ゲル、界面活性剤、多孔質膜、吸収性ゲル又は繊維シートなどの担体に薬液又は薬物イオンを担持させて保持するものとすることも可能である。
【0109】
作用側電極構造体10aを備えるイオントフォレーシス装置1では、イオン選択膜16(薬液の層17を備える場合には薬液の層17)及び電解液保持部25を生体皮膚に当接させた状態で、給電線31、32から集電体11及び電極21に、それぞれ薬液保持部15の薬物イオンと同一極性の電圧及び反対極性の電圧を印加することにより、薬液保持部15中の薬物イオン(薬液の層17が使用される場合には、これに加えて薬液の層17中の薬物イオン)が生体に投与される。
【0110】
作用側電極構造体10aを備えるイオントフォレーシス装置1では、作用側電極構造体10を備えるイオントフォレーシス装置1と同様の効果が達成されることに加え、生体対イオンの薬液保持部15への移行がイオン選択膜16により遮断されるために、薬物イオンの投与効率(輸率)を上昇させることができる。
【0111】
更に、イオン選択膜16の前面側に薬液の層17が形成されている場合には、生体皮膚面上の生体対イオン濃度の低下によって生体対イオンの薬液保持部15への移行量が一層低下するために、薬物イオンの投与効率(輸率)を一層上昇させることができる。
【0112】
作用側電極構造体10bは、作用側電極構造体10aにおけるイオン交換膜14及び薬液保持部15を備えない点、及び、隔離部13に代えて隔離薬液保持部13bを、イオン選択膜16に代えてイオン交換膜16bを備える点を除いて作用側電極構造体10aと同一の構成を有している。
【0113】
隔離薬液保持部13bには、隔離膜Sと同様の素材により形成される隔離膜Sbに薬液保持部15における薬液と同様の薬液が含浸保持されている。隔離薬液保持部13bの厚み寸法(分極性電極12からイオン交換膜16bまでの距離)及び/又は隔離膜Sbの厚み寸法は、必要な薬液量及び作用側電極構造体10bの断面積に応じて決定される。
【0114】
なお、隔離膜Sbの厚み寸法は、図示のように隔離薬液保持部13bの厚み寸法と同程度としても良く、これよりも小さくしても構わない。隔離薬液保持部13b内において隔離膜Sbの周辺にスペースが形成される場合には、そのスペースが薬液により満たされていることが好ましい。
【0115】
イオン交換膜16bには、イオン選択膜16に関して上記したと同様のイオン交換膜を使用することができる。
【0116】
作用側電極構造体10bを備えるイオントフォレーシス装置1では、イオン交換膜16(薬液の層17を備える場合には薬液の層17)及び電解液保持部25を生体皮膚に当接させた状態で、給電線31、32からそれぞれ隔離薬液保持部13bの薬物イオンと同一極性の電圧及び反対極性の電圧を印加することにより、隔離薬液保持部13b中の薬物イオン(薬液の層17が使用される場合には、これに加えて薬液の層17中の薬物イオン)が生体に投与される。
【0117】
作用側電極構造体10bを備えるイオントフォレーシス装置1では、作用側電極構造体10aを備えるイオントフォレーシス装置1と同様に、生体対イオンの薬液保持部15への移行がイオン交換膜16により遮断されるために、薬物イオンの投与効率(輸率)を上昇させることができ、更に、イオン交換膜16の前面側に薬液の層17が形成されている場合には、生体皮膚面上の生体対イオン濃度の低下によって生体対イオンの薬液保持部15への移行量が一層低下するために、薬物イオンの投与効率(輸率)を一層上昇させることができる。
【0118】
また、作用側電極構造体10bでは、分極性電極12とイオン交換膜16bの間に隔離薬液保持部13bが配置されることによって分極性電極12とイオン交換膜16bが非接触に保たれているために、分極性電極12とイオン交換膜16bが接触した状態で通電が行われた場合にイオン交換膜16bの下部(薬液の層17又は皮膚との界面)において生じうるガスの発生が防止され、又は少なくとも低減される。
【0119】
ただし、作用側電極構造体10bは、作用側電極構造体10、10aにおけるイオン交換膜14を備えない構成であるために、分極性電極12の表面において電極反応による水素イオン、水酸基イオン、次亜塩素酸の生成や薬物イオンの変質を生じた場合には、皮膚界面におけるpH値の変動や変質した薬物イオンの生体への移行を生じうる。
【0120】
従って、作用側電極構造体10bを備えるイオントフォレーシス装置1による薬物イオンの投与に際しては、電極反応が発生しないように、或いは安全性などの面から許容できる程度となるように通電条件などを制御することが望ましい。
【0121】
図3は、本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置2の構成を示す説明図である。
【0122】
イオントフォレーシス装置2は、主として作用側電極構造体10c、非作用側電極構造体20c及び電源30から構成されている。
【0123】
本実施形態の作用側電極構造体10cには、従来のイオントフォレーシス装置101、201の作用側電極構造体110、210と実質的に同一又は類似の構成が採用されている。
【0124】
即ち、作用側電極構造体10cは、電源30の一方の極に給電線31を介して接続される電極11cと、電極11cの前面側に配置される薬液保持部15cを備えており、その全体がケース又は容器18に収容されている。
【0125】
電極11cは、非作用側電極構造体20における電極21と同様の構成とすることができ、薬液保持部15cは、作用側電極構造体10における薬液保持部15と同様の構成とすることができる。
【0126】
一方、非作用側電極構造体20cは、電源30の一方の極に給電線32を介して接続される集電体21c、集電体21cの前面側に配置される分極性電極22c、分極性電極22cの前面側に配置される隔離部23c、隔離部23cの前面側に配置されるイオン交換膜24c及びイオン交換膜24cの前面側に配置される電解液保持部25cを備えている。
【0127】
集電体21c、分極性電極22c及び隔離部23cは、それぞれ作用側電極構造体10における集電体11、分極性電極12及び隔離部13と同様の構成とすることができる。
【0128】
なお、分極性電極22cを活性炭や活性炭繊維などの浸透性の材料により構成し、これに電解液を含浸させて保持する場合には、この電解液として、水よりも酸化還元電位の低い電解質を溶解した電解液を使用することが好ましく、これにより、電極反応を一層効果的に抑制することが可能となる。また、この場合の電解液に増粘剤を配合して電解液の粘度を調整することで、分極性電極22c内における電解液の保持性を向上させ、これにより、分極性電極22cの取扱性や装置の組立の容易性を高めることが可能である。電解液に配合する特に好ましい増粘剤としてはHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を例示することができる。HPCの適切な配合量の範囲は、1〜5%程度である。
【0129】
隔離部23cには、作用側電極構造体10における隔離部13と同様の隔離膜Scが保持される。
【0130】
この隔離膜Scには、分極性電極22cからイオン交換膜24cへの通電性を確保するための任意の電解液を保持することができ、特に、分極性電極22cに電解液が保持されている場合には、これと同一組成の電解液を隔離膜Scに保持することで、電解液の混合による装置性能の経時変化を防止することができる。
【0131】
隔離膜Scの厚み寸法は、隔離部13cの厚み寸法と同程度としても良く、これよりも小さくしても構わない。隔離部13c内において隔離膜Scの周辺にスペースが形成される場合には、そのスペースが電解液により満たされていることが好ましい。
【0132】
イオン交換膜24cとしては、薬液保持部15cに保持される薬液中の薬物イオンと同一極性のイオン交換膜が使用される。即ち、当該薬物イオンがプラスイオンである場合には、イオン交換膜24cとしてカチオン交換膜が使用され、当該薬物イオンがマイナスイオンである場合には、イオン交換膜24cとしてアニオン交換膜が使用される。
【0133】
電解液保持部25cには、イオン交換膜24cから皮膚への通電性を確保するための任意の電解液が保持することが可能であるが、例えば生理食塩水などの生体に対する安全性の高い電解液を使用することで、薬物投与の安全性を高めることができる。或いは、分極性電極22c及び/又は隔離膜Scに保持される電解液と同一組成の電解液を電解液保持部25cにおいて保持することで、電解液の混合による装置性能の経時変化を防止することができる。
【0134】
電解液保持部25cは、電解液を液体状体で保持することができ、天然繊維、人工繊維の織布や不織布、多孔質膜、或いはゲルなどの適当な吸収性の担体に含浸させて保持することもできる。
【0135】
イオントフォレーシス装置2では、薬液保持部15c及び電解液保持部25cを生体皮膚に当接させた状態で、給電線31、32から電極11c及び集電体21cに、それぞれ薬液保持部15cの薬物イオンと同一極性の電圧及び反対極性の電圧を印加することにより、薬液保持部15c中の薬物イオンが生体に投与される。
【0136】
イオントフォレーシス装置2の非作用側電極構造体20cでは、電解液への通電が分極性電極22cを介して行われるため、通電の際における電極反応を抑止又は抑制することができ、電極反応による酸素ガス、塩素ガス、水素ガスなどのガスの発生、水素イオン水酸基イオン、次亜塩素酸などの有害なイオンの発生を防止し、又は少なくとも低減することができる。
【0137】
また、非作用側電極構造体20では、分極性電極22cとイオン交換膜24cの間に隔離部23cが配置されることによって分極性電極22cとイオン交換膜24cが非接触に保たれているために、分極性電極22cとイオン交換膜24cが接触した状態で通電が行われた場合にイオン交換膜24cの下部(電解液保持部25c内のイオン交換膜24cとの界面付近)において生じうるガスの発生が防止又は少なくとも低減される。
【0138】
以上、いくつかの実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の改変が可能である。
【0139】
例えば、上記実施形態では、作用側電極構造体及び非作用側電極構造体のいずれか一方が、本発明に従う電極構造体、即ち、分極性電極と、前記分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有する電極構造体であって、前記イオン交換膜と前記分極性電極が非接触となるように、前記イオン交換膜が前記分極性電極から離間して配置された電極構造体である場合について説明したが、作用側電極構造体及び非作用側電極構造体の双方を本発明に従う電極構造体とすることも可能である。
【0140】
また上記実施形態では、単一の作用側電極構造体と単一の非作用側電極構造体とを備えるイオントフォレーシス装置を例として説明したが、電源の両極に接続される2つの電極構造体の双方に生体に投与すべき薬物が保持されるイオントフォレーシス装置や、電源のそれぞれの極に複数の電極構造体が接続されるイオントフォレーシス装置の場合であれば、その電極構造体のうちの少なくとも一つを本発明に従う電極構造体とすることができ、好ましくはその全ての電極構造体を本発明に従う電極構造体とすることができる。
【0141】
或いは、作用側電極構造体として本発明に従う電極構造体を使用する一方で、イオントフォレーシス装置そのものには非作用側電極構造体を設けずに、例えば、生体皮膚に1又は複数の作用側電極構造体を当接させ、アースとなる部材にその生体の一部を当接させた状態で作用側電極構造体に電圧を印加して薬物の投与を行うようにすることも可能である。
【0142】
また上記実施形態における集電体11、21cやケース18、28などは任意的な部材である。例えば分極性電極の面抵抗を十分に小さくできる場合などには、集電体を使用せずに、給電線を直接分極性電極に接続するよう構成することも可能である。
【0143】
また上記実施形態では、隔離部(又は隔離薬液保持部)において絶縁性の素材により構成される隔離膜が使用される場合について説明したが、隔離部(又は隔離薬液保持部)は、分極性電極とイオン交換膜を非接触に保つことができる他の構成とすることも可能である。
【0144】
例えば、作用側電極構造体10を備えるイオントフォレーシス装置1の場合について説明すれば、ケース18に十分な機械的強度を備える素材を使用するとともに、隔離部13の厚さ(分極性電極12とイオン交換膜14との間隔)を十分な寸法とすることによって分極性電極12とイオン交換膜14を非接触に保つことができる場合には、隔離部13は電解液(又は薬液)のみを保持する構成とすることも可能である。或いは、隔離膜Sに代えて、絶縁性の素材よりなる適切な厚み方向寸法を有するスペーサーを適切な間隔で隔離部13内に配置することによっても分極性電極12とイオン交換膜14を非接触に保つことが可能である。
【0145】
また上記実施形態では、作用側電極構造体、非作用側電極構造体及び電源がそれぞれ別体として構成されている場合について説明したが、これらの要素を単一のケーシング中に組み込み、或いはこれらを組み込んだ装置全体をシート状又はパッチ状に形成して、その取扱性を向上させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の一実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図。
【図2】(A)、(B)は、本発明のイオントフォレーシス装置において使用することができる他の態様の作用側電極構造体の構成を示す説明図。
【図3】本発明の他の実施形態に係るイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図。
【図4】従来のイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図。
【図5】特願2005−229984号において一実施形態として開示されるイオントフォレーシス装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0147】
1、2・・・イオントフォレーシス装置
10、10a〜10c・・・作用側電極構造体
11・・・上記集電体
11c・・・電極
11・・・集電体
12・・・分極性電極
13・・・隔離部
13b・・・隔離薬液保持部
14・・・イオン交換膜
15、15c・・・薬液保持部
16・・・イオン選択膜
16b・・・イオン交換膜
17・・・薬液の層
18・・・容器
20、20c・・・非作用側電極構造体
21・・・電極
21c・・・集電体
22c・・・分極性電極
23c・・・隔離部
24c・・・イオン交換膜
25、25c・・・電解液保持部
28・・・容器
30・・・電源
31、32・・・給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分極性電極と、前記分極性電極の前面側に配置されるイオン交換膜とを有する電極構造体であって、
前記イオン交換膜と前記分極性電極が非接触となるように、前記イオン交換膜が前記分極性電極から離間して配置された電極構造体を備えることを特徴とするイオントフォレーシス装置。
【請求項2】
前記分極性電極が、単位体重量当たりの静電容量が100mF/g以上の導電体を含有する電極であることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項3】
前記分極性電極が、比表面積が1m/g以上の導電体を含有する電極であることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項4】
前記分極性電極が、活性炭を含有する電極であることを特徴とする請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項5】
前記分極性電極が、活性炭繊維を含有する電極であることを特徴とする請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項6】
前記分極性電極と前記イオン交換膜との間に、イオンの通過を許容できる絶縁物質よりなる隔離膜が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項7】
前記分極性電極に電解液が保持されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項8】
前記電極構造体が、第1極性の薬物イオンを含む薬液を保持する薬液保持部を更に備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項9】
前記分極性電極に薬物イオンを含む薬液が保持されていることを特徴とする請求項8に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項10】
前記分極性電極に保持される薬液に増粘剤が配合されていることを特徴とする請求項9に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項11】
前記分極性電極と前記イオン交換膜との間に、イオンの通過を許容できる絶縁物質よりなる隔離膜が配置されており、
前記隔離膜に薬物イオンを含む薬液が保持されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項12】
前記イオン交換膜が第2極性のイオン交換膜であり、
前記薬液保持部が、前記イオン交換膜の前面側に配置されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項13】
前記薬液保持部の前面側に、前記薬液保持部の薬物イオンの通過を許容する一方で、生体対イオンの通過を遮断するイオン選択膜が配置されていることを特徴とする請求項12に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項14】
前記イオン選択膜の前面側に、薬物イオンを含む薬液が担持されていることを特徴とする請求項13に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項15】
前記イオン交換膜が、第1極性のイオン交換膜であり、
前記薬液保持部が前記分極性電極の前面側に配置され、前記イオン交換膜が前記薬液保持部の前面側に配置されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項16】
前記イオン交換膜の前面側に、薬物イオンを含む薬液が担持されていることを特徴とする請求項15に記載のイオントフォレーシス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−167132(P2007−167132A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365275(P2005−365275)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(504153989)トランスキュー・テクノロジーズ 株式会社 (83)
【Fターム(参考)】