説明

イオン交換樹脂を使用してフルオロポリマー分散物からフッ素化乳化剤を除去する方法、及びそこから得られる分散物

本発明は、低分子量の両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤の存在下で、フルオロポリマー分散物をアニオン交換樹脂と接触させる工程による、フルオロポリマー分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減する方法を提供し、低量のフッ素化乳化剤を含有し、非イオン性界面活性剤を含有しない又は低量のみ含有するフルオロポリマー分散物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂及びイオン性界面活性剤を使用して、フルオロポリマー分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減する方法に関する。本発明はまた、イオン性界面活性剤を含有し、非イオン性界面活性剤及びフッ素化乳化剤を含有しない又は低量のみ含有するフルオロポリマー分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、すなわち、フッ素化主鎖を有するポリマーは昔から知られており、耐熱性、耐化学薬品性、耐候性、紫外線安定性等の望ましい特性のために様々な用途に使用されてきている。様々なフルオロポリマーは、例えば、「現代フルオロポリマー(Modern Fluoropolymers)」、ジョン・シャイアーズ(John Scheirs)編、ワイリー・サイエンス(Wiley Science)1997年に記載されている。フルオロポリマーは、部分的にフッ素化された主鎖、一般に少なくとも40重量%フッ素化された、又は完全にフッ素化された主鎖を有していてもよい。フルオロポリマーの特定例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(FEP);ペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA);エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのターポリマー(THV);並びにポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)が挙げられる。
【0003】
フルオロポリマーは、基材をコーティングして、例えば耐化学薬品性、耐候性、撥水及び撥油性等のような所望の特性を基材に提供するために使用されてもよい。例えば、フルオロポリマーの水性分散物は、台所製品をコーティングするため、繊維製品若しくはガラス繊維のような布地に染み込ませるため、又は紙若しくは高分子基材をコーティングするために使用されてもよい。
【0004】
フルオロポリマーの水性分散物を製造するために頻繁に使用される方法は、1つ以上のフッ素化モノマーの水性乳化重合を伴い、通常、エマルション重合後に得られる原料分散物中の固体の含有量を上昇するための濃縮工程がその後に続く。フッ素化モノマーの水性乳化重合は、一般にフッ素化乳化剤の使用を伴う。頻繁に使用されるフッ素化乳化剤としては、ペルフルオロオクタン酸及びその塩、特にペルフルオロオクタン酸アンモニウムが挙げられる。使用される更なるフッ素化乳化剤としては、欧州特許出願公開第1059342号、欧州特許出願公開第712882号、欧州特許出願公開第752432号、欧州特許出願公開第816397号、米国特許第6,025,307号、米国特許第6,103,843号及び米国特許第6,126,849号に開示されているもののようなペルフルオロポリエーテル界面活性剤が挙げられる。今、尚、使用されている更なる乳化剤は、米国特許第5,229,480号、米国特許第5,763,552号、米国特許第5,688,884号、米国特許第5,700,859号、米国特許第5,804,650号、米国特許第5,895,799号、PCT国際公開第00/22002号及びPCT国際公開第00/71590号に開示されている。
【0005】
これらのフッ素化乳化剤のほとんどは、低分子量、すなわち1000g/mol未満の分子量を有する。フッ素化乳化剤は、一般に高価な化合物であり、場合によっては、フッ素化乳化剤は、生分解性ではないことが見出されている。したがって、水性フルオロポリマー分散物中のフッ素化低分子量乳化剤の量を最小限にするために、方策がとられてきた。
【0006】
PCT国際公開第00/35971号には、乳化重合により得られたフルオロポリマー分散物を、アニオン交換樹脂と接触させる工程により、フッ素化乳化剤の量を低減する方法が記載されている。アニオン交換樹脂と接触させながら、分散物の重量の約0.5〜約15重量%、好ましくは約1重量%〜約5重量%の非イオン性界面活性剤を、水性分散物に添加し、分散物を安定させる。
【0007】
フルオロポリマー分散物の特定の商業的応用においては、非イオン性界面活性剤の存在を回避する又は低減することが望ましい場合がある。例えば、非イオン性界面活性剤は、特にコーティングの調製が、穏やかな温度、すなわち、約60〜約250℃の温度範囲での加熱工程を伴う場合、非イオン性界面活性剤を含有するフルオロポリマー分散物から調製されるコーティングの表面上でのべたつきのある(smeary)フィルムの形成を導く可能性があることが、観察されてきた。例えば、これらの温度範囲は、フルオロポリマー分散物が、紙、繊維製品又は熱感受性布地のようなコーティング温度感受性基材のために使用される方法、又はフルオロポリマー自体若しくはコーティング組成物を含有するフルオロポリマーが、低分解温度、例えば、260℃未満、あるいは好ましくは200℃未満の分解温度を有する方法における役割を果たす。典型的に、コーティングされる熱感受性基材は、次に続く穏やかな温度での乾燥工程を受ける前に、フルオロポリマーに浸される。これらの温度の適用は、ポリマーからの非イオン性界面活性剤の分離、及び表面への界面活性剤の移行を導き得ると考えられている。温度範囲は、非イオン性界面活性剤の完全な分解のためには、低過ぎる可能性がある。蒸発により非イオン性界面活性剤を十分に除去するために、例えば、12時間を超える又は24時間さえ超える期間の熱処理を伴う可能性があるので、フィルムからの非イオン性界面活性剤の除去は困難又は高価である。
【0008】
他の用途においては、特に硬質及び耐性表面(例えば、ベアリング又はスライディング表面をコーティングするための材料)を作製するためにフルオロポリマー又はフルオロポリマー含有複合材料が使用される場合、フルオロポリマーは、分散物から凝析により分離される。非イオン性界面活性剤は、通常、不活性化されず、湿度とのそれらの相互作用は、コーティングの柔軟化をもたらす可能性がある。
【0009】
したがって、非イオン性界面活性剤の使用が必須ではなく、今だ、尚、安定化した分散物をもたらすフルオロポリマー分散物からフッ素化乳化剤を除去する方法を提供するという要望が存在する。あるいは、非イオン性界面活性剤の使用を回避又は低減するが、尚、安定化した分散物をもたらす方法への要望が存在する。また、フッ素化乳化剤を含有しない又は少量のみ含有し、非イオン性界面活性剤を含有しない又は少量のみ含有するフルオロポリマー分散物を提供する必要性も存在する。
【0010】
PCT国際公開第03/020836は、分散物中の固体含有量の約1〜12重量%の非イオン性界面活性剤の存在下で、フッ素化乳化剤がアニオン交換樹脂によりフルオロポリマー分散物から除去される方法を開示している。得られる分散物は、更に非フッ素化アニオン性界面活性剤を含有する可能性がある(固体含有量の10〜5,000ppm)。
【0011】
欧州特許出願公開第1676868 A1号は、フルオロポリマー分散物からフッ素化乳化剤を除去する方法を記載しており、ここでは、分散物をイオン交換樹脂に提示する前に、分散物に非フッ素化アニオン性乳化剤を添加する。得られる分散物は、分散したフルオロポリマーを含有し、アニオン性界面活性剤を含有し、フッ素化乳化剤を含有しない又は少ししか含有しない。欧州特許出願公開第1676868 A1号に従うと、非フッ素化アニオン性界面活性剤が高分子量を有している場合、精製された分散物、すなわち、フッ素化乳化剤を含有しない又は少ししか含有しない分散物のみが安定であった。
【0012】
しかし、高分子量を有するアニオン性界面活性剤の使用は費用がかかる。更に、高分子量界面活性剤は、例えば熱処理により、特に穏やかな温度での熱処理により、分散物から又は分散物で処理した物品から除去することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、現在、非イオン性界面活性剤の使用を回避する又は低減する水性フルオロポリマー分散物からフッ素化乳化剤を除去する方法を見出すことが望ましいであろう。特に、穏やかな温度での処理に際し、フルオロポリマーコーティング上にべたつきのある(smeary)フィルムを形成しない界面活性剤を採用する方法を提供することが望ましい。更に、経済的である、又は商業的に容易に入手可能な界面活性剤を採用することが可能である方法を提供することが望ましいであろう。好ましくは、方法は、工業規模で実施されるときでさえも、経済的に魅力的である。更に、非イオン性界面活性剤及びフッ素化乳化剤を含有しない又は低量のみ含有する安定化したフルオロポリマー分散物を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
アニオン性又は両性界面活性剤の存在下で、分散物をアニオン交換体と接触させることにより、フッ素化乳化剤が、フルオロポリマー分散物から除去される可能性があることが見出された。非イオン性界面活性剤の使用は、この方法において任意であり、したがって、この方法を、フッ素化乳化剤含有量が少なく、非イオン性界面活性剤の含有量がない又は少しのみである分散物を製造するために使用することができる。
【0015】
更に、また、フッ素化乳化剤は、低量のみの非イオン性界面活性剤の存在下又はその不存在下でさえ、アニオン性及び/又は両性界面活性剤と共に装填されたアニオン交換樹脂を使用してフルオロポリマー分散物から除去される可能性があることも見出された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1つの態様においては、フルオロポリマー分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減する方法が提供され、この方法が、分散物を、分散物と接触する前に、アニオン性及び/又は両性界面活性剤を装填したアニオン交換樹脂と接触させる工程を含み、アニオン性及び/又は両性界面活性剤は、好ましくはフッ素化されていない。
【0017】
別の態様においては、フルオロポリマー分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減する方法が提供され、この方法が、非フッ素化イオン性界面活性剤の存在下で分散物をアニオン交換樹脂と接触させる工程を含み、イオン性界面活性剤が両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤のいずれかであり、分散物がアニオン交換樹脂と接触する前又は接触中に、樹脂によって取り上げられることができ、かつ、非フッ素化イオン性界面活性剤の量を上回る量で、非フッ素化イオン性界面活性剤が分散物中に存在している。
【0018】
更に、水性フルオロポリマー分散物であって、
a)分散物の重量の約5重量%〜約35重量%のフルオロポリマーと、
b)分散物の固体含有量の約0.02重量%未満のフッ素化乳化剤と、
c)分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%からの非フッ素化イオン性界面活性剤であって、イオン性界面活性剤は両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤であり、アニオン性界面活性剤は約600g/mol未満の分子量を有する、非フッ素化イオン性界面活性剤と、
d)固体含有量の約0.5重量%未満の非イオン性界面活性剤と、
を含む水性フルオロポリマー分散物が提供される。
【0019】
更に、水性フルオロポリマー分散物であり、
a)分散物の重量の約35重量%〜約70重量%のフルオロポリマーと、
b)分散物の固体含有量の約0.02重量%未満のフッ素化乳化剤と、
c)分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%からの非フッ素化イオン性界面活性剤であって、イオン性界面活性剤は両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤であり、アニオン性界面活性剤は600g/mol未満の分子量を有する、非フッ素化イオン性界面活性剤と、
d)固体含有量の約0.5重量%未満の非イオン性界面活性剤と、を含む水性フルオロポリマー分散物が提供される。
【0020】
また、約60〜約250℃の温度において、基材をコーティング又は含浸するための、前述のようなフルオロポリマー分散物の使用も提供される。
【0021】
更に、また、260℃未満の温度で分解するコーティング組成物中での、前述のようなフルオロポリマー分散物の使用も提供される。
【0022】
更に、フルオロポリマー分散物の凝析を伴う基材のコーティングにおけるフルオロポリマー分散物の使用が提供される。
【0023】
また、ベアリングをコーティングするための前述のようなフルオロポリマー分散物の使用も提供される。
【0024】
イオン性界面活性剤
好適なイオン性界面活性剤は、アニオン性若しくは両性界面活性剤、又はこれらの混合物であってもよい。両性界面活性剤は、アニオン性基及びカチオン性基の両方を含有する。好適な両性界面活性剤は、フルオロポリマー分散物のpHにおいて実質的にアニオン性界面活性剤のように挙動するものであり、すなわち、アニオン性基は、実質的に脱プロトン化している。
【0025】
典型的に、界面活性剤は、分散物をアニオン交換体にかけると、分散物を安定化することが可能であり、すなわち、フルオロポリマーの樹脂上への凝析又は沈殿を低減又は回避する。更に、イオン性界面活性剤は、アニオン交換体への結合が、フルオロポリマー分散物に含有されるフッ素化乳化剤よりも弱くなるように、選択される。界面活性剤の最適量は、所定の実験により特定してよい。
【0026】
イオン性界面活性剤は、低分子量界面活性剤である。低分子量アニオン性界面活性剤は、約600g/mol以下、好ましくは約350g/mol以下、より好ましくは約300g/mol以下の分子量を有する。低分子量両性界面活性剤は、1500g/mol未満、又は600g/mol未満、好ましくは350g/mol以下又は300g/mol以下の分子量を有していてよい。
【0027】
典型的に、イオン性界面活性剤は、1つ以上のイオン性基及び非極性鎖を含む。イオン基は、分子の頭若しくは中心に位置付けられてよく、又はいくつかのイオン基は、互いに反対側、例えば分子の頭及び尾に位置付けられてよい。
【0028】
好ましくは、イオン性界面活性剤は、1分子当たり2以下のアニオン性基、より好ましくは1のみのアニオン性基を含有する。
【0029】
本発明に従う両性界面活性剤は、1つ、2つ、又は2つを超えるアニオン性及びカチオン性基を含有してもよい。両性界面活性剤は、1を超えるカチオン性基又はアニオン性基を含有しないことが好ましい。
【0030】
典型的なカチオン性基としては、例えば、アンモニウム基、又はアルキル、ジアルキル若しくはトリアルキルアンモニウム基のような置換されたアンモニウム基が挙げられる。
【0031】
典型的なアニオン性基としては、例えば、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びホスホネートが挙げられる。
【0032】
また、本発明に従うイオン性界面活性剤は、例えば、1つ以上のエステル又はエーテル基(単数又は複数)、例えば1つ以上のポリエチレングリコール基(単数又は複数)、1つ以上の−CONH−、−CONH又は−CONRR’基(単数又は複数)のような非イオン性基を含んでもよく、式中、R及びR’は、同一若しくは異なるアルキルを表し、又は式中、R及びR’は水素であってよい。
【0033】
イオン性界面活性剤の非極性残基は、例えば、飽和又は非飽和、直鎖又は分枝鎖アルキル、アルキルアリール、アルキル又はアリールエーテル又はシリコーンであってもよい。好ましい界面活性剤は、分枝状若しくは直鎖状又は環状アルキル残基に基づく界面活性剤であり、好ましくはアルキル残基は、8を超えて30未満、より好ましくは10を超えて20未満、最も好ましくは12〜18の炭素原子を含む。
【0034】
本発明に従って使用されてもよいアニオン性界面活性剤の典型的な例としては、アルキル(例えば、C〜C20、好ましくはC12〜C18アルキル);スルホネート、例えばラウリルスルホネート、アルキル(例えば、C〜C20、好ましくはC12〜C18アルキル);スルフェート、例えばラウリルスルフェート、アルキルラウリルスルホネート;脂肪酸、例えばラウリン酸、リン酸アルキル又はアルキルアリールエステル;及びこれらの塩が挙げられる。他の好適なアニオン性非フッ素化界面活性剤としては、リン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基及びこれらの塩、並びにこれらの混合物のようなペンディング(pending)アニオン性基を有するシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0035】
他の例としては、ラウレススルフェート、ラウレスシトレート、ラウレスホスフェート、ラウレススルホスクシネート、ラウレスアセテート、ラウリルホスフェート、ラウリルスルフェート、ラウリルスルホスクシネート、ラウリルスルホアセテート、ラウリルスルホネート、C12〜15パレススルフェート、C12〜15パレスホスフェート、C12〜15パレススルホスクシネート、デシルスルフェート、ステアレート、カプリレススルフェート、ノノキシノールスルフェート、ノノキシノールスルホスクシネート、ノノキシノールホスフェート、ノノキシルスルフェート、オクチルスルフェート、オクチルホスフェート、オレイックスルフェート、オレイックスルホネート、オレイルスルフェート、ステアロイルラクチレート、C9〜15アルキルホスフェート、カプリレスカルボン酸、セテアレスホスフェート、セチルホスフェート、クメンスルホン酸、シクロカルボキシプロピルオレイン酸、オレスホスフェート、オレススルホスクシネート、デセスホスフェート、ジシクロヘキシルスルホスクシネート、ジヘキシルスルホスクシネート、ジイソブチルスルホスクシネート、ジイソデシルスルホスクシネート、ジイソヘキシルスルホスクシネート、ジオクチルスルホスクシネート、ジイソデシルスルホスクシネート、ナトリウム塩(エマルソゲン(Emulsogen)SF8)、ジイソデシルスルホコハク酸塩、ナトリウム塩+イソプロピルアルコール(エマルソゲンSB10)、ジラウレスシトレート、ジラウレスホスフェート、ステアリルスルホスクシナメート、2−エチルヘキシルホスフェート、グリセリルステアレート、グリコールジラウレート、グリコールジオレエート、グリコールジステアレート、グリコールラウレート、グリコールオレエート、グリコールステアレート、イソステアレスホスフェート、ラウレス−12カルボン酸、オレイル/セチルスルフェート、PEG(ポリエチレングリコール)−2ジラウレート、PEG−2ジオレエート、PEG−2ジステアレート、PEG−2ラウレート、PEG−2オレエート、PEG−9ステアラミドカルボン酸、PEG−2ステアレート、ラウロイルサルコシネート、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールオレエート、プロピレングリコールステアレート、C13〜17アルカンスルホン酸ナトリウム、C8〜10アルキル硫酸ナトリウム、C9〜14アルキル硫酸ナトリウム、C12〜13アルキル硫酸ナトリウム、C12〜14アルキル硫酸ナトリウム、C12〜15アルキル硫酸ナトリウム、C12〜18アルキル硫酸ナトリウム、C9〜22アルキルsecスルホン酸ナトリウム、C14〜17アルキルsecスルホン酸ナトリウム(ホスタプア(HOSTAPUR)SAS30)、セテアリールスルフェート、セチル/オレイル硫酸、C14〜16オレフィンスルホン酸ナトリウム(ポリステップ(POLYSTEP)A−18)、ラウリル/セテアリール硫酸ナトリウム、ラウリル/オレイル硫酸ナトリウム、トリデセス−3カルボン酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、対応する塩、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
市販のアニオン性界面活性剤としては、ステファン社(Stepan Company)からのポリステップ(POLYSTEP)(商標)A16(ドデシルベンジルスルホン酸ナトリウム、クラリアント社(CLARIANT, GmbH)(ドイツ)から入手可能なホスタプア(HOSTAPUR)(商標)SAS30(二級アルキルスルホン酸ナトリウム塩)、エマルソゲン(Emulsogen)(商標)LS(ラウリル硫酸ナトリウム)、エマルソゲン(商標)EPA1954(C12〜C14アルキルスルホン酸ナトリウムの混合物)、ユニオンカーバイドから入手可能なトリトン(TRITON)(商標)X−200(アルキルスルホン酸ナトリウム)及びエデノール(Edenor)(商標)C12(ラウリン酸)が挙げられる。
【0037】
典型的な両性界面活性剤としては、N−アルキルベタインが挙げられ、これは、トリメチルグリシンの誘導体、又は、例えば、N−アルキルアミノプロピオネートであり得る。市販の両性界面活性剤の例としては、アセチル化レシチン、アミノプロピルラウリルグルタミン、C12〜14アルキルジメチルベタイン、カプリン酸/カプリル酸アミドプロピルベタイン、カプリロアミドプロピルベタイン、セチルベタイン、コカミドプロピルジメチルアミノヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、N,N−ジメチル−N−ラウリン酸−アミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−ミリスチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−パルミチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−ステアルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−ステアリル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、エチルヘキシルジプロピオネート、イソステアルアミドプロピルベタイン、オクチルジプロピオネート、C12〜15アルコキシプロピルイミノジプロピオネート、ステアリルベタインが挙げられる。
【0038】
本発明に従う好ましいイオン性界面活性剤は、非フッ素化界面活性剤である。同様に好ましいイオン性界面活性剤は、非芳香族界面活性剤である。より好ましいのは、非フッ素化、非芳香族、イオン性界面活性剤である。
【0039】
イオン性界面活性剤のアニオン性基に対応する典型的なカチオン(対イオン)は、H:例えばNa、K又はLiのようなアルカリ金属カチオン:アンモニウム又は例えばアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム及びテトラアルキルアンモニウムのような置換アンモニウム:マグネシウム又はカルシウムカチオンのようなII群金属カチオン又はランタノイドカチオンからなる群から選択することが可能である。
【0040】
フルオロポリマー分散物
フッ素化乳化剤が除去される又はそれらの量が低減されるフルオロポリマー分散物は、いかなる供給源にも由来することができるが、典型的にフルオロモノマーの水性乳化重合から生じる水性フルオロポリマー分散物である。典型的に原料分散物、すなわち、乳化重合後に直接得られる分散物は、通常約5重量%〜約35重量%のフルオロポリマーを含む。濃縮された分散物、すなわち、約35重量%〜約70重量%のフルオロポリマー含有量を有する分散物は、別個の濃縮工程において、粗反応混合物を濃縮することにより、例えば、限外濾過、蒸発、熱デカンテーション又は電気デカンテーションにより、通常得られる。
【0041】
分散物中に含有されるフルオロポリマーとしては、融解処理可能な、並びに非融解処理可能なフルオロポリマーが挙げられる。
【0042】
融解処理可能なフルオロポリマーとしては、フルオロエラストマーの調製のためのいわゆるフルオロ熱可塑性物質及びフルオロポリマーが挙げられる。
【0043】
フルオロ熱可塑性物質は、典型的に顕著な融点を有する。
【0044】
非融解処理可能なフルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びいわゆる変性されたPTFEが挙げられ、これは、少量の、例えば1%以下の、別のフッ素化モノマー、例えばペルフルオロビニルエーテルで変性されたテトラフルオロエチレンのポリマーである。
【0045】
また、フルオロポリマー分散物のフルオロポリマーは、硬化の際、フルオロエラストマーを生じるポリマーであってもよい。典型的に、こうしたフルオロポリマーは、融点を有さない、又はほとんど目立たない融点を有する非晶質フルオロポリマーである。尚、更に、フルオロポリマーは、いわゆるマイクロパウダーを含んでよく、これは典型的に低分子量ポリテトラフルオロエチレンである。低分子量のPTFEに起因して、マイクロパウダーは融解処理可能である。
【0046】
フルオロポリマー分散物のフルオロポリマーの例としては、TFEホモポリマー(PTFE)又はTFEコポリマーのようなテトラフルオロエチレン(TFE)に基づくポリマーが挙げられる。TFEコポリマーは、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素官能性を含有するモノマーとのコポリマーであることが可能である。例えば、ポリマーは、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を含むことが可能である。またポリマーは、ヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むことが可能である。またポリマーは、フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むことが可能である。またポリマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むことが可能である。フルオロポリマー分散物のフルオロポリマーの他の例は、VDF(フッ化ビニリデン)系ホモポリマー又はコポリマー、VDF系フルオロエラストマー、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)系ホモポリマー又はコポリマーである。更なる例は、変性されたPTFE;マイクロパウダー;フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;テトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデンのコポリマー;テトラフルオロエチレン及びプロピレンのコポリマー;テトラフルオロエチレン及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;フッ化ビニリデン及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;テトラフルオロエチレン、エチレン若しくはプロピレン、及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びヘキサフルオロプロピレン並びに所望によりクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(CTFE);フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;並びにテトラフルオロエチレン、エチレン又はプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びペルフルオロビニルエーテルのコポリマー;又はテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのターポリマーである。
【0047】
本発明に従う好ましいフルオロポリマーは、約200℃未満の融点を有するポリマーである。本発明の別の好ましいフルオロポリマーは、約100℃〜約170℃、より好ましくは120℃〜160℃の融点を有するポリマーである。
【0048】
水性フルオロポリマー分散物中のフルオロポリマーの粒径は、典型的に50nm〜400nm(数平均直径)である。例えば20nm〜50nmのより小さい粒径も同様に意図され、これは典型的にミクロ乳化重合で得ることが可能である。
【0049】
分散物は、単峰性、二峰性又は多峰性であってよく、好ましくは粒径に関して単峰性又は二峰性である。
【0050】
非イオン性界面活性剤の使用は、必須ではない。したがって、フルオロポリマー(fluoropoymer)分散物は、非イオン性界面活性剤を含有しなくてもよく、又は非イオン性界面活性剤を少量のみ含有してもよい。本発明の意味における少量の非イオン性界面活性剤は、分散物の固体含有量の0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満、及び最も好ましくは0.025重量%未満である。
【0051】
必須ではないが、フルオロポリマー分散物は、非イオン性界面活性剤を含有することが可能で、例えば、PCT国際公開第00/35971号に記載されるもの、特に下式に対応するものが挙げられる:
−O−[CHCHO]−[RO]−R
式中、
は、少なくとも8つの炭素原子を有する芳香族若しくは脂肪族炭化水素又は一級若しくは二級アルコール基を表し、Rは、3つの炭素原子を有するアルキレンを表し、Rは、水素若しくはC〜Cアルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、n+mの合計は少なくとも2である。
上記の式において、n及びmにより示される単位は、ブロックとして現れてもよく、それらが交互の構成若しくはランダムな構成で存在してもよいということが理解されるであろう。
【0052】
上式に従う界面活性剤の例としては、例えばトリトン(TRITON)(商標)X100のような商標トリトン(TRITON)(商標)として市販されているエトキシ化p−イソオクチルフェノールが挙げられ、エトキシ単位の数は約10である。
【0053】
尚、更なる例としては、上式のRが炭素原子4〜20のアルキル基を表し、mが0であり、Rが水素であるものが挙げられる。それらの例としては、約8のエトキシ基でエトキシ化されたイソトリデカノールが挙げられ、これはゲナポール(GENAPOL)(登録商標)X080としてクラリアント社(Clariant GmbH)から市販されている。親水性部分がエトキシ基及びプロポキシ基のブロックコポリマーを含む、上式に従う非イオン性界面活性剤も同様に使用してもよい。こうした非イオン性界面活性剤は、クラリアント社(CLARIANT GmbH)から売買表記ジェネポール(GENAPOL)(登録商標)PF40及びジェネポール(登録商標)PF80として、又はダウケミカル(Dow Chemical)から入手可能なタージトール(TERGITOL)(商標)TMN100X、タージトール(商標)TMN10及びタージトール(商標)TMN6として、市販されている。
【0054】
所望により使用できる他の非イオン性界面活性剤は、アミンオキシド界面活性剤であり、アルキルアミン(alkyamine)オキシド、すなわち、アルキル基及びアミンオキシド(N−O)基を含有する界面活性剤、例えば、ジメチルアルキルアミンオキシド(ハンツマン・パフォーマンス・プロダクツ(Huntsman Peformance Products)、(米国、テキサス州、ウッドランド(Woodlands))からのエンピゲン(EMPIGEN)(商標)OSシリーズ)又はアミドプロピルアミンオキシド(ハンツマン・パフォーマンス・プロダクツからのオキサミン(OXAMIN)(商標))である。アミンオキシド界面活性剤は、分散物の固体含有量の5%までの量で存在することが可能である。
【0055】
フッ素化乳化剤の除去方法
非フッ素化イオン性界面活性剤の存在下で分散物を塩基性アニオン交換樹脂と接触させる工程により、フッ素化乳化剤は、それを含有するフルオロポリマー分散物から除去される。
【0056】
本発明に従う方法において、分散物をアニオン交換樹脂と接触させる前又は接触させる間に、分散物をイオン性界面活性剤で処理することが可能である。これは、イオン性界面活性剤を分散物に添加する工程により行うことができる。好ましい方法は、樹脂を分散物と接触させる前に、イオン性界面活性剤を装填したアニオン交換樹脂を使用して、分散物をイオン性界面活性剤と接触させる工程を伴う。樹脂は、フッ素化乳化剤と結合する一方で、イオン性界面活性剤を放出すると考えられており、これは、分散物の安定化を導くと考えられている。
【0057】
また、イオン性界面活性剤が装填されたイオン交換樹脂の使用に加えて、分散物がイオン性界面活性剤で処理され得ることも、本発明の意義の範囲内にある。
イオン性界面活性剤の組み合わせを採用する工程、例えば、アニオン性界面活性剤を装填した樹脂を採用し、樹脂と接触前、接触中、接触後に、同一又は異なるアニオン性界面活性剤を分散物に添加することも可能である。
【0058】
イオン性界面活性剤は、分散物を安定させるために有効な量で使用される。イオン性界面活性剤は、アニオン交換後のイオン性界面活性剤の量が、分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%、又は少なくとも約0.5重量%、好ましくは少なくとも約1.0重量%であるように、選択することが可能である。分散物中のアニオン性界面活性剤の量の上限は、分散物の粘度がまだ尚、基材のコーティングを可能にするように選択される。典型的に、イオン性界面活性剤は、分散物の固体含有量の約10重量%以下、好ましくは約8重量%以下、又はより好ましくは約6重量%以下の量で、分散物に存在することが可能である。
【0059】
プロセス装置の腐食を抑制するために、残留過硫酸塩のような残留反応開始剤を崩壊するための化合物をフルオロポリマー分散物に更に添加してもよい。例えば、ヒドロキシルアミン、アゾジカルボンアミド及びビタミンCのような有機還元剤を添加することが可能である。
【0060】
フッ素化ポリマーが除去されるべき分散物は、2〜11のpH、好ましくは約3〜約10のpHを有することが可能である。分散物をイオン性界面活性剤で処理する前に、分散物のpHは、使用されるイオン性界面活性剤の性質(pKa)に適していなければならない可能性がある。例えば、分散物のpHは、イオン性界面活性剤が主にそのアニオン形態であることを確実とするように調整することが可能である。同様に、イオン性界面活性剤は、分散物のpHに適合性があるように選択することが可能で、分散物のpH調整は必要ではないこともある。
【0061】
フッ素化乳化剤は、フルオロポリマー分散物中に任意の量で存在することが可能で、そこから、分散物中の固体含有量の約0.02重量%〜約5重量%、より典型的に約0.05重量%〜約2重量%の量で除去されるべきである。
【0062】
乳化剤が除去されてもよいフルオロポリマー分散物は、原料分散物又は濃縮された分散物であることが可能で、原料分散物が好ましい。原料分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減した後、分散物を濃縮してよい。
【0063】
したがって、
a)約5重量%〜約35重量%(原料分散物の場合)又は約35重量%〜約70重量%(濃縮された分散物の場合)のフルオロポリマーと、
b)分散物の固体含有量の約0.02重量%未満、好ましくは約0.01重量%未満、より好ましくは約0.005重量%未満のフッ素化乳化剤と、
c)分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%、好ましくは少なくとも約0.5重量%、より好ましくは少なくとも1.0重量%、又は約0.02重量%〜約10重量%、又は約0.5重量%〜約8重量%、又は約1.0〜約6重量%の非フッ素化イオン性界面活性剤と、
d)固体含有量をの約0.5重量%未満、好ましくは約0.1重量%未満、より好ましくは約0.05重量%未満、最も好ましくは約0.01重量%未満、又は約0.001〜約0.05重量%の非イオン性界面活性剤と、
を含むフルオロポリマー原料分散物及び濃縮された分散物もまた提供される。
【0064】
本発明に従うフッ素化乳化剤の除去後、フルオロポリマー分散物は、穏やかな温度、すなわち、温度約260℃以下、好ましくは約200℃以下における、基材のコーティング又は含浸に有用である可能性がある。また、フルオロポリマー分散物は、温度260℃未満、又は200℃未満において分解する組成物のコーティング又は含浸において使用されてもよい。
【0065】
特に、本発明に従う方法により得られるフルオロポリマー分散物は、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリアセテート(poylacetates)のような有機ポリマーを含有する、例えば繊維製品、紙、ガラス繊維又は布地のような繊維の含浸に適している可能性がある。
【0066】
また、フルオロポリマー分散物は、分散物の凝析を伴う基材のコーティングに使用されてもよい。また、フルオロポリマー分散物は、硬質及び耐性表面を作製するために、基材のコーティングに使用することも可能である。したがって、本発明に従う方法により得られるフルオロポリマー分散物のための別の適用は、金属表面のコーティング又は例えば、滑り接触ベアリング(sliding-contact bearings)、ブッシュベアリング(bush bearings)、摩擦型接触ベアリング(friction-type contact bearings)等のベアリングのコーティングである。
【0067】
フッ素化乳化剤
フッ素化乳化剤は、典型的にフルオロポリマーを使用する水性乳化重合において一般に使用されるようなアニオン性フッ素化界面活性剤である。一般に使用されるフッ素化界面活性剤は、非テロゲン性(non-telogeni)であり、式(I)に対応するものが挙げられる:
(Y−R−Z)n−M、(I)
式中、Yは、水素、Cl又はFを示し;Rは、4〜10の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンを表し;ZはCOO又はSOを表し;Mは、一価及び多価のカチオン、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン又はカルシウムイオンを包含するカチオンを表し、nはMの価数に対応し、典型的に1、2又は3の値を有する。
【0068】
上式(I)に従うフッ素化乳化剤の代表例は、ペルフルオロアルカン酸及びその塩、例えばペルフルオロオクタン酸及びその塩、特にアンモニウム塩である。
【0069】
本発明に従う使用される他のフッ素化乳化剤としては、一般式(II)に対応するフッ素化カルボン酸又はそれらの塩が挙げられる:
[R−O−L−COOi+ (II)
式中、Lは、直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化されたアルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは、直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基、又は1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基、を表し、Xi+は、価数i(iは1、2又は3である)を有するカチオンを表す。カチオンの例としては、H、アンモニウム、一価金属カチオン、二価金属カチオン及び三価カチオンが挙げられる。典型的なカチオンは、H及びNHである。
【0070】
簡便化のために、用語「フッ素化カルボン酸」は本明細書では以後、遊離の酸並びにその塩を示すために使用する。一般に、フッ素化カルボン酸は低分子量の化合物、例えば、化合物のアニオン部分に関する分子量が1000g/mol以下、典型的には600g/mol以下の化合物となり、及び特定の実施形態では、フッ素化カルボン酸のアニオンは500g/mol以下の分子量を有することが可能である。
【0071】
好ましい化合物は、任意のフッ素化アルキレン基が3以下の炭素原子を有し、化合物のフッ素化アルキル基が3以下の炭素原子を有するものである。
【0072】
上式(II)において、Lは連結基を表す。一実施形態では、連結基は、直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化されたアルキレンであることができる。完全にフッ素化されたアルキレン基としては、炭素及びフッ素原子のみからなるアルキレン基が挙げられ、一方、部分的にフッ素化されたアルキレン基は追加で水素を含有することが可能である。一般に、部分的にフッ素化されたアルキレン基は、高度にフッ素化され及び非テロゲン性(non-telogenic)であるか又は少なくとも最小限のテロゲン効果(telogenic effects)を有するように、2を超える水素原子を含有すべきではない。完全にフッ素化されたアルキレン基の例としては、1〜6の炭素原子を有する直鎖状ペルフルオロアルキレン、例えば炭素原子1、2、3、4、又は5の直鎖状ペルフルオロアルキレン基が挙げられる。
【0073】
直鎖状の部分的にフッ素化されたアルキレン基の例としては、1〜6の炭素原子を有するものが挙げられる。特定の実施形態では、直鎖状の部分的にフッ素化されたアルキレン連結基は、1、2、3、4、5、又は6の炭素原子を有し、水素原子は1又は2だけ有する。部分的にフッ素化されたアルキレン基が2つの水素原子を有するとき、それらは同じ炭素原子に結合されてもよく、又は異なる炭素原子に結合されることもできる。それらが異なる炭素原子に結合されるとき、こうした炭素原子は互いに隣接し得るか又は隣接し得ない。また、特定の実施形態では、1又は2の水素原子を有する炭素原子は、連結基が結合しているエーテル酸素原子に隣接していてもよく、又はそのもう一方の端部において連結基が結合しているカルボン酸基に隣接していてもよい。
【0074】
別の実施形態では、連結基Lは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基の例としては、直鎖状、分枝状、又は環状脂肪族基が挙げられる。脂肪族基の特定の例としては、例えばメチレン又はエチレンのような1〜4の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキレン基が挙げられる。
【0075】
連結基Lの特定の例は、以下から選択することが可能である:
−(CF−、式中、gは1、2、3、4、5、又は6である;
−CFH−(CF−、式中、hは0、1、2、3、4、又は5である;
−CF−CFH−(CF−、式中、dは0、1、2、3、又は4である;
−CH−(CF−、式中、hは1、2、3、又は4である;
−(CH−、式中、cは1、2、3、又は4である;
【0076】
上記の例では、連結基の式の左側は、連結基が式(II)中のエーテル酸素に連結している部位である。
【0077】
式(II)中のR基は、直鎖状の部分的にフッ素化された若しくは完全にフッ素化された脂肪族基、又は1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基を表す。一実施形態では、Rは、1〜6の炭素原子を有する、好ましくは1、2、3、又は4の炭素原子を有する直鎖状のペルフルオロ脂肪族基である。別の実施形態によれば、Rは、1つ以上の酸素原子で中断され、その酸素原子の間のアルキレン基が4又は6以下の炭素原子、例えば3以下の炭素原子を有し、末端アルキル基が4又は6以下の炭素原子、例えば3以下の炭素原子を有する、直鎖状のペルフルオロ脂肪族基である。更に別の実施形態によれば、Rは1〜6の炭素原子及び2以下の水素原子を有する直鎖状の部分的にフッ素化された脂肪族基又は1つ以上の酸素原子で中断され2以下の水素原子を有する直鎖状の部分的にフッ素化された脂肪族基である。後者の実施形態では、いずれのペルフルオロアルキレン部分も4又は6以下の炭素原子を有し、同様にいずれの末端ペルフルオロアルキル基も好ましくは6よりも多い炭素原子を有するべきではなく、例えば4以下の炭素原子を有することが一般に好ましいであろう。部分的にフッ素化された脂肪族基Rの特定例は、CFCFH−である。
【0078】
特定の実施形態では、Rは以下の式:
−[OR−[OR− (III)
に対応することが可能で、
式中、Rは炭素原子1〜6(例えば3以下)のペルフルオロ直鎖状脂肪族基であり、RとRとはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、又は4の直鎖状ペルフルオロアルキレンを表し、及びpとqはそれぞれ独立して0〜4の値を表し、pとqとの合計は少なくとも1である。
【0079】
別の実施形態では、Rは以下の式:
f−(O)t−CFH−CF− (IV)
に対応することが可能で、
式中、tは0又は1であり、Rは任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化された脂肪族基を表す。典型的にはRは、4を超える又は6の炭素原子のペルフルオロ脂肪族部分を含有しない。例えば、一実施形態では、Rは炭素原子1〜6のペルフルオロ直鎖状脂肪族基である。別の実施形態では、Rは上記の式(III)に対応する基である。
【0080】
更に別の実施形態では、Rは以下の式:
−(OCF− (V)
に対応することが可能で、
式中、aは1〜6の整数であり、Rは1、2、3、又は4の炭素原子を有する直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化された脂肪族基である。Rが部分的にフッ素化された脂肪族基であるとき、炭素原子の数は、好ましくは1〜6であり、部分的にフッ素化された脂肪族基中の水素原子の数は、好ましくは1又は2である。
【0081】
更に別の実施形態では、Rは以下の式:
−O−(CF− (VI)
に対応することが可能で、
式中、bは1〜6の整数であって好ましくは1、2、3、又は4であり、及びRは1、2、3、又は4の炭素原子を有する直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化された脂肪族基である。Rが部分的にフッ素化された脂肪族基であるとき、炭素原子の数は、好ましくは1〜6であり、この部分的にフッ素化された基中の水素原子の数は、好ましくは1又は2である。
【0082】
本発明の特定の実施形態では、フッ素化カルボン酸は以下の式:
[R−(O)t−CHF−(CF−COOi+ (VII)
に対応し、
式中、Rは任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化された脂肪族基を表し、tは0又は1であり、nは0又は1であり、Xi+は価数i(iは1、2又は3である)を有するカチオンを表し、但し、tが0であるときRは少なくとも1つのエーテル酸素原子を含有する。
【0083】
本実施形態の特定の態様では、Rは、炭素原子1〜6の、好ましくは1〜4の炭素原子を有する直鎖状のペルフルオロ脂肪族基と、式R−[OR−[OR−のペルフルオロ基、式中、Rは炭素原子1〜6、好ましくは炭素原子1〜4の直鎖状ペルフルオロ脂肪族基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、又は4の直鎖状ペルフルオロアルキレンを表し、pとqとはそれぞれ独立して0〜4の値を表し、pとqとの合計は少なくとも1である、並びに式R−[OR−[OR−O−CF−のペルフルオロ基、式中、Rは炭素原子1〜6、好ましくは炭素原子1〜4の直鎖状ペルフルオロ脂肪族基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、又は4の直鎖状ペルフルオロアルキレンを表し、k及びmはそれぞれ独立して0〜4の値を表す、からなる群から選択される。
【0084】
式(VII)のフッ素化カルボン酸は、次の一般式のフッ素化オレフィンから誘導できる:
−(O)−CF=CF (VIIa)
式中、R及びtは上記で定義したとおりである。式(VIIa)に従う化合物は当該技術分野において周知であり、それらとしては、フッ素化オレフィン、例えばペルフルオロアルキルビニル化合物、ビニルエーテル、特にペルフルオロビニルエーテル、及びアリルエーテル、特にペルフルオロアリルエーテルが挙げられる。
【0085】
nが0である式(VII)に従うフッ素化カルボン酸は、式(VIIa)のフッ素化オレフィンを塩基と反応させることによって調製することができる。反応は、一般には水性媒体中で行われる。有機溶媒を添加して、フッ素化オレフィンの溶解性を改善することが可能である。有機溶媒の例としては、グライム、テトラヒドロフラン(THF)、及びアセトニトリルが挙げられる。加えて又は代替として、相間移動触媒を使用することが可能である。塩基として、例えば、アンモニア水酸化物、アルカリ水酸化物、及びアルカリ土類水酸化物を使用することができる。いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、塩基としてアンモニアが使用されるとき、反応は、以下の順序に従って進められると考えられている:
−(O)−CF=CF+NH+HOaR−(O)−CHF−COONH+NH
【0086】
上記反応は、一般に、0〜200℃の間、例えば、20〜150℃の間で、約100kPa(1bar)〜約2000kPa(20bar)までの圧力で行われる。更に精製する場合、得られた塩を、遊離酸を介して蒸留するか、又は最初に酸をエステル誘導体に転換した後にエステル誘導体を蒸留し、次いでそのエステルを加水分解することにより、精製された酸又は塩を得ることができる。
【0087】
式中、nが0である式(VII)のフッ素化カルボン酸はまた、式(VIIa)のフッ素化オレフィンを炭化水素アルコールとアルカリ性媒体中で反応させた後、得られたエーテルを酸性条件下で分解し、それによって相当するカルボン酸を形成することによって調製することができる。好適な炭化水素アルコールとしては、1〜4の炭素原子を有する低級アルカノールのような脂肪族アルコールが挙げられる。具体例としては、メタノール、エタノール、及びt−ブタノールを包含するブタノールが挙げられる。フッ素化オレフィンとアルコールとのアルカリ性媒体中での反応は、「ファーリン(Furin)ら、韓国化学会誌(Bull Korean Chem. Soc.)20、220(1999年)」に記載されているようにして行うことが可能である。この反応の反応生成物は、フッ素化オレフィンのエーテル誘導体である。この得られるエーテルは、「D.C.英国,有機化学ジャーナル(D. C. England, J. Org. Chem.)49、4007(1984)」に記載されるような酸性条件下で分解することができ、対応するカルボン酸又はそれらの塩を生じる。
【0088】
式中、nが1である式(VII)のフッ素化カルボン酸を調製するために、式(VIIa)のフッ素化オレフィンとメタノールとのフリーラジカル反応を行い、次いで得られた反応生成物を酸化してもよい。フリーラジカル反応は、典型的に、フリーラジカル重合反応で通常使用されるようなフリーラジカル反応開始剤を用いて行われる。好適なフリーラジカル反応開始剤の例としては、例えば、過硫酸アンモニウムのような過硫酸塩が挙げられる。フッ素化カルボン酸とアルコールのフリーラジカル反応の詳細な条件は、「S.V.ソコロフ(Sokolov)ら、Zh.Vses.Khim Obsh 24、656(1979)」に見ることができる。得られた、フッ素化オレフィンのアルコール誘導体は、酸化剤を用いて対応するカルボン酸へ化学的に酸化することができる。酸化剤の例としては、例えば、任意にNaOCl、硝酸/鉄触媒、四酸化二窒素の存在下での、過マンガン酸カリウム、酸化クロム(VII)、RuO、又はOsOが挙げられる。典型的には、酸化は、酸性又は塩基性条件下、10〜100℃の温度で行われる。化学酸化に加えて、電気化学酸化も同様に使用することが可能である。
【0089】
別の実施形態では、フッ素化カルボン酸は以下の式:
−(O)t−CFH−CF−O−R−G (VIII)
に対応し、
式中、Rは、任意に1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化された脂肪族基を表し、Rは脂肪族炭化水素基であり、Gはカルボン酸又はその塩を表し、tは0又は1である。Rの特定例としては、メチレン基又はエチレン基が挙げられる。
【0090】
この実施形態の特定の態様では、Rは、炭素原子1〜6の、好ましくは1〜4の炭素原子を有する直鎖状のペルフルオロ脂肪族基、(式R−[OR−[OR−のペルフルオロ基、式中、Rは炭素原子1〜6、好ましくは炭素原子1〜4の直鎖状のペルフルオロ脂肪族基であり、RとRとはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、又は4の直鎖状ペルフルオロアルキレンを表し、pとqとはそれぞれ独立して0〜4の値を表し、pとqとの合計は少なくとも1である)、と式R−[OR−[OR−O−CF−のペルフルオロ基、(式中、Rは炭素原子1〜6、好ましくは炭素原子1〜4の直鎖状ペルフルオロ脂肪族基であり、RとRとはそれぞれ独立して炭素原子1、2、3、又は4の直鎖状ペルフルオロアルキレンを表し、kとmとはそれぞれ独立して0〜4の値を表す)とからなる群から選択される。
【0091】
式(VIII)に従うフッ素化カルボン酸は、式(VIIIa)の中間体の調製を介して調製され得る:
−(O)−CFH−CF−O−R−Z
式中、R、t、及びRは上記で定義したのと同じ意味を有する。Zはカルボン酸エステル又はカルボキシアミドを表す。
【0092】
式(VIIIa)に従う中間体化合物は、一般式(VIIa)のフッ素化オレフィンを式
HO−R−Z (VIIIb)
の有機化合物と反応させることにより調製することができ、
式中、Z及びRは上記に定義したとおりである。式(VIIIb)に従う化合物は当該技術分野において周知であり、及び/又は市販されている。化合物(VIIa)と化合物(VIIIb)との反応は典型的には塩基の存在下で行われるが、酸性又は中性条件下で反応を行うことも可能である。好適な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸リチウムのような炭酸塩、水酸化物、アルコラート等が挙げられる。使用される塩基の量は、広く変化し得る。例えば触媒量を使用してもよい。一般に、使用される塩基の量は、式(VIIIb)の反応体の量の少なくとも約1又は2重量%となる。特定の実施形態では、塩基の量は、式(VIIIb)の反応体のモル量の2倍までとすることができる。反応は、典型的に、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、グライム、ジグライム等のような非プロトン性溶媒中で行われる。更なる好適な非プロトン性溶媒は、DE 3828063に開示されている。反応は、典型的に温度0〜200℃、例えば10〜150℃で行われる。一般に反応は、周囲気圧(100kPa(1バール))又は2000kPa(20バール)以下で行われる。反応後、得られる化合物を、蒸留によって単離及び精製することが可能である。
【0093】
式(VIII)のフッ素化カルボン酸は、上記の式(VIIIa)の中間化合物を加水分解する工程により容易に調製することができる。上記の式(VIIIa)では、Zはカルボン酸エステル又はカルボキシアミドを表す。典型的には、カルボン酸エステルが使用される。一実施形態では、エステルは、脂肪族エステル、例えばアルキル基の炭素原子数が1〜4であるアルキルエステルとすることができる。中間化合物の加水分解は、酸性又は塩基性条件下で行なうことが可能で、一般に中間化合物のアルコール酸性又はアルコール塩基性溶液中で行われる。あるいは、中間化合物は、ケトン、エーテル等のような他の水混和性有機溶媒の酸性溶液又は塩基性溶液中で加水分解され得る。典型的に、例えば、塩基としてアルカリ金属水酸化物を含有するメタノール溶液又はエタノール溶液のような、塩基性アルコール溶液が使用される。典型的に、加水分解は、室温で行われるが、例えば溶液の沸点までの高温を使用することも可能である。
【0094】
あるいは、フッ素化界面活性剤は、上式(VIIa)のフッ素化オレフィンと、ヒドロキシ置換カルボン酸、又はその塩を反応させることにより、調製することが可能である。したがって、この実施形態によれば、式(VIIa)のフッ素化オレフィンは式:
HO−R−G (VIIIc)の化合物と反応され、
式中、Gはカルボン酸基又はその塩であり、Rは上記に定義したとおりである。式(VIIa)のフッ素化オレフィンと式(VIIIc)のヒドロキシ化合物との反応は、式(VIIIb)の化合物との反応に関して上述したのと同様の条件下で行うことができる。
【0095】
尚、更なる実施形態では、フッ素化カルボン酸は以下の式の一つに対応する:
−(OCF−O−(CF−AC (IX)
式中、uは1〜6の整数であり、vは1〜6の整数であり、Rは炭素原子1、2、3、又は4の直鎖状ペルフルオロ脂肪族基を表し、ACはカルボン酸基又はその塩を表す、並びに
−O−(CF−O−L−AC (X)
式中、yは1、2、3、4、5又は6の値を有し、Lは、1、2、3、4、5又は6の炭素原子の直鎖状ペルフルオロアルキレン、又は1〜6の炭素原子及び1若しくは2の水素原子を有する直鎖状の部分的にフッ素化されたアルキレンを表し、Rは、上式(IX)において定義されるとおりであり、ACはカルボン酸基又はそれらの塩を表す。Lの特定例としては式−CFH−の基が挙げられる。式(X)に従う特定の化合物としては、RがCFCFH−を表すものが挙げられる。このような基は、JOC 34,1841(1969年)に記載されているように、−CF(CF)COOX基(Xはカチオン)の、プロトン性物質の存在下における脱カルボキシ化により得ることができる。
【0096】
式(IX)のフッ素化カルボン酸は、アンレス社(Anles Ltd.)(ロシア、サンクトペテルブルグ(St. Petersburg))から市販されている。これらの化合物は、例えば、フルオラインノーツ(Fluorine Notes)、4(11)、2002年においてエルソフ(Ershov)及びポポバ(Popova)により記載されているように調製され得る。また、これらのフッ素化カルボン酸は典型的に、ヘキサフルオロプロピレンの直接酸化によるヘキサフルオロプロピレンオキシドの製造において副生成物として生成する。
【0097】
式(X)に従うフッ素化カルボン酸は、米国特許第6,255,536号に記載されているように、フッ素化ビニルエーテルの製造においても使用される反応体から誘導することができる。
【0098】
別の実施形態では、式(XI)の酸フッ化物は、KF又はCsFのような金属フッ化物と反応される:
−COF (XI)
式中、Rは、任意に1つ以上の酸素原子で中断された部分的に又はペルフルオロ化された直鎖状脂肪族鎖である。この反応はアルコキシラートをもたらし、これを更に式(XII)のカルボン酸誘導体と反応させることができる。
【0099】
Y−(CH−Q (XII)
式中、Yはヨウ化物、臭化物、塩化物、メシラート、トシラート等のような脱離基を表し、nは1〜3の整数であり、及びQはカルボン酸基又は低級アルキルエステルを表す。反応は式(XIII)のフッ素化カルボン酸誘導体をもたらす。
【0100】
−CF−O−(CHQ (XIII)
、n、及びQは上述したのと同様の意味を有する。対応する塩は鹸化により得ることができる。
【0101】
更に別の実施形態では、フッ素化カルボン酸は式(XIV)に対応する:
CF−CF−O−R−COOX (XIV)
は任意に1つ以上の酸素原子で中断された、炭素原子1〜8の直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化された直鎖状炭素鎖、例えば炭素原子1〜6、例えば炭素原子1、2、3、又は4のペルフルオロ直鎖状脂肪族基であり、Xは一価のカチオンである。この式の化合物は、例えば、五フッ化アンチモンの存在下で式(XV)の二フッ化二塩基酸を転換することにより、作製できる。
【0102】
FOC−CF(CF)−O−R−COF (XV)
この転換は米国特許第3,555,100号に記載されている方法によって高温において行うことが可能で、詳しくは2級COF基の脱カルボキシ化をもたらす。得られるモノ酸フッ化物は周知の方法を用いて相当する塩へと転換することができる。−O−CF−COOX基を有するフッ素化カルボン酸は、相当するビニルエーテル、−O−CF=CFから得ることができる。米国特許第4,987,254号によるビニルエーテルと酸素との反応は、−O−CFCOF基を保持する酸フッ化物を生じ、これは相当する酸又は塩に容易に転換することができる。
【0103】
式(II)に従う化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる:
−O−CHF−COOH:
−O−CHF−COOH、CF−O−CFCF−CF−O−CHF−COOH、CFCFCF−O−CFCF−CF−O−CHF−COOH、CF−O−CF−CF−O−CHF−COOH、CF−O−CF−O−CF−CF−O−CHF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CHF−COOH、
CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CHF−COOH;
−O−CHF−CF−COOH:
CF−O−CHF−CF−COOH、CF−O−CF−CF−O−CHF−CF−COOH、CF−CF−O−CHF−CF−COOH、CF−O−CF−CF−CF−O−CHF−CF−COOH、CF−O−CF−O−CF−CF−O−CHF−CF−COOH、
CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CHF−CF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CHF−CF−COOH;
−O−CF−CHFCOOH:
CF−O−CF−CHF−COOH、C−O−CF−CHF−COOH、CF−O−CF−CF−CF−O−CF−CHF−COOH、CF−O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−COOH;
−O−CF−CHF−CFCOOH:
CF−O−CF−CHF−CF−COOH、C−O−CF−CHF−CF−COOH、C−O−CF−CHF−CF−COOH、CF−O−CF−CF−CF−O−CF−CHF−CF−COOH、CF−O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−CF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−CF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−CF−O−CF−CHF−CF−COOH;
−(O)−CHF−CF−O−(CH−COOH n=1、2又は3;m=0又は1:
CF−O−CHF−CF−O−CH−COOH、CF−O−CF−CF−CF−O−CHF−CF−O−CH−COOH、C−O−CHF−CF−O−CH−COOH、C−O−CHF−CF−O−CH−CH−COOH、C−O−CF−CF−O−CHF−CF−OCHCOOH、C−O−CF−CF−CF−O−CHF−CF−OCHCOOH、C−O−CF−CHF−CF−OCHCOOH、CF−CHF−CF−O−CHCOOH、C−CF−CHF−CF−OCH−COOH、CF−O−CF−CF−O−CH−COOH、CF−O−CF−CF−CF−O−CF−CF−O−CH−COOH、C−O−CF−CF−O−CH−COOH、C−O−CF−CF−O−CH−CH−COOH、C−O−CF−CF−O−CF−CF−OCHCOOH、C−O−CF−CF−CF−O−CF−CF−OCHCOOH、C−O−CF−CF−CF−OCHCOOH、C−O−CH−COOH、C−O−CH−CH−COOH、C−O−CHCOOH、C13−OCH−COOH、R−O−CF−CF−COOH、CF−O−CF−CF−COOH、C−O−CF−CF−COOH、C−O−CF−CF−COOH、
−O−CF−CF−COOH、
−(O−CF−O−CF−COOH(uは上で定義したとおり):
CF−(O−CF−O−CF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−COOH、CF−(O−CF−O−CF−COOH;
−(O−CF−CF−O−CF−COOH(kは1、2又は3):
CF−(O−CF−CF−O−CF−COOH、C−(O−CF−CF−O−CF−COOH、C−(O−CF−CF−O−CF−COOH、C−(O−CF−CF−O−CF−COOH、C−(O−CF−CF−O−CF−COOH、CF−(O−CF−CF−O−CF−COOH、C−(O−CF−CF−O−CF−COOH、C−(O−CF−CF−O−CF−COOH;
−O−CF−COOH:
−O−CF−COOH、CF−O−CF−CF−CF−O−CF−COOH;
CF−CHF−O−(CF−COOH(oは1、2、3、4、5又は6の整数):
CFCFH−O−(CF−COOH、CFCFH−O−(CF−COOH
CF−CF−O−(CF−COOH(oは上のとおり):
CF−CF−O−(CFCOOH、CF−CF−O−(CFCOOH
【0104】
上記の一般式では、Rは一般式(II)に関して上記で定義した意味を有する。上記リストの化合物は酸のみを列挙しているが、相当する塩、特にNH塩、カリウム塩、ナトリウム塩、又はリチウム塩も同様に使用できることが分かる。
【0105】
アニオン交換
好ましくは、本発明に従う方法において使用されるアニオン交換樹脂は、塩基性である。アニオン交換樹脂は、弱塩基性、中程度の強塩基性又は強塩基性であってよい。用語、強塩基性、中程度の強塩基性及び弱塩基性アニオン交換樹脂は、エンサイクロペディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・エンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineeringg)」、ジョン・ワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1985、第8巻、第347頁、及びカーク−オスマー(Kirk−Othmer)」、ジョン・ワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、第3版、第13巻、第687頁において定義される。アニオン交換機能として、強塩基性アニオン交換樹脂は、典型的に四級アンモニウム基を含有し、中程度の強塩基性樹脂は、通常、三級アミン基を有し、弱塩基性樹脂は、通常、二級アミンを有する。本発明において使用するための市販のアニオン交換樹脂の例としては、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)IRA−402、アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4200、アンバーライト(登録商標)IRA−67及びアンバーライト(登録商標)IRA−92(全てローム&ハース(Rohm & Haas)から入手可能);プロライト(PUROLITE)(登録商標)A845(プロライト社(Purolite GmbH))及びレバチット(LEWATIT)(登録商標)MP−500(バイエル社(Bayer AG));レバチット(登録商標)MP−62(バイエル社(Bayer AG)、又はダウエックス(DOWEX)550A(ダウケミカル社(Dow Chemical Company))又はダウエックス・マラソン(DOWEX MARATHON)A2(ダウケミカル社)が挙げられる。
【0106】
本発明において採用される樹脂は、平均ビーズ直径についてビーズ径のガウス分布を有する可能性があり、ビーズは、単分散であってもよい。
【0107】
アニオン交換樹脂は、アニオン性界面活性剤又はこれらの混合物で処理される可能性があり、これは樹脂がフルオロポリマー分散物と接触する前に、樹脂がアニオン性界面活性剤又はこれらの混合物と接触することを意味する。樹脂の装填をアニオン性界面活性剤で達成するために、アニオン交換樹脂とアニオン性界面活性剤を接触することは、例えば水性界面活性剤溶液のような装填媒質を使用して、行うことができる。界面活性剤は樹脂により取り上げられ、樹脂は、アニオン性界面活性剤により装填される。アニオン交換樹脂を、部分的に装填、少なくとも約50%まで、少なくとも約70%まで、少なくとも約80%まで、少なくとも約90%まで、少なくとも約95%まで装填してもよく、又は完全に装填してもよい。装填媒質から界面活性剤がこれ以上実質的に取り上げられないならば、完全な装填(100%装填)が達成される。樹脂が装填される程度は、分散物から除去されるフッ素化乳化剤の量に、及び処理された分散物の体積に適合することができる。典型的に、イオン交換樹脂は、イオン交換樹脂と接触する間にフルオロポリマー分散物を安定させるために、すなわち樹脂上へのフルオロポリマーの凝析又は沈殿を防止するために、効果的であるイオン性界面活性剤の量で装填される。有効量は、決まった実験にて当業者により容易に確定できる。ポリマー分散物の不安定化は、樹脂上へのポリマー粒子の凝析をもたらす。これは、目視により、又は例えば一定流量において樹脂に蓄積する圧力により、又は一定圧力においてカラムを通過する流量の減少により、決定できる。典型的に、樹脂の装填は、十分な濃度で、及び所望の程度までの樹脂の装填を達成するために十分な時間で、樹脂に、イオン性界面活性剤を含有する溶液を接触させる工程により行われる。
【0108】
樹脂は、「非固定樹脂床」又は「固定樹脂床」内に存在することが可能である。固定樹脂床において、イオン交換樹脂は撹拌されない。典型的に、固定樹脂床は、樹脂が置かれて、及び物質の除去がクロマトグラフ法を通して起こるカラム技術を網羅する。用語、非固定樹脂床は、樹脂が撹拌される(agitated)、例えば、流動化される、攪拌される(stirred)、又は振盪されることを示すために使用される。非固定樹脂技術は、工業化学のウルマン百科事典(Ullmann Encyclopedia of Industrial Chemistry)、5版、A14巻、439頁以下参照に記載されている。
【0109】
イオン交換樹脂の大きさ(カラムを含有する樹脂の体積)は、フッ素化乳化剤の濃度に、及び処理されるべきフルオロポリマー分散物の体積に適合する。イオン性界面活性剤で装填された樹脂の場合、樹脂の体積及び/又はその装填度は、樹脂から放出され得るアニオン性界面活性剤の量が、分散物から除去されるフッ素化乳化剤の量と等しい、又は好ましくはこれを超えるような量である。
【0110】
フッ素化界面活性剤の除去方法に従って、フルオロポリマー分散物は、有効量のアニオン交換樹脂と、フッ素化界面活性剤のレベルを所望のレベルに低減するのに十分な時間、接触する。また、分散物に、1を超える樹脂、例えば本発明に従う一連のアニオン交換樹脂を接触させることも可能である。樹脂に、同一若しくは異なるイオン性界面活性剤、又は同一若しくは異なるそれらの混合物を装填することが可能である。
【0111】
フルオロポリマー分散物及びアニオン交換樹脂の混合物を穏やかに攪拌する工程により、フルオロポリマー分散物を、アニオン交換樹脂と接触させてもよい。撹拌する方法としては、混合物を含有する容器を振盪する工程と、容器内の混合物を攪拌棒で攪拌する工程と、又は容器をその軸周りに回転させる工程、とが挙げられる。軸周りの回転は、完全であっても又は部分的であってもよく、回転の方向を交互に入れ替える工程を包含してもよい。容器の回転は、攪拌を生じるために一般に便利な方法である。回転を使用する場合、バッフルが容器内に包含されてもよい。交換樹脂とフルオロポリマー分散物との混合物の攪拌を引き起こす、更なる魅力的な選択肢は、交換樹脂の流動化である。流動化は、容器内で分散物を交換樹脂を通過して流す工程により引き起こしてもよく、分散物の流れは、交換樹脂に渦巻きを生じさせる。
【0112】
分散物と樹脂の接触は、いわゆるバッチ式方法又は連続方法で実行できる。バッチ式方法においては、容器にアニオン交換樹脂及びフルオロポリマー分散物を充填する。その後、容器内の混合物を残留フッ素化乳化剤を所望のレベルに低減するのに十分な時間撹拌し、その後、例えば濾過を通して、分散物と交換樹脂を分離する。その後、容器を、新たにフルオロポリマー分散物及び交換樹脂で充填することが可能で、その後、その方法を繰り返す。
【0113】
連続方法においては、フッ素化乳化剤を除去することが必要なフルオロポリマー分散物を、1つの端から、アニオン交換樹脂を含有する(好ましくは攪拌されている)容器に連続的に添加し、低減された量のフッ素化乳化剤を有するフルオロポリマー分散物を連続方法で容器の別の端から引き出す。連続方法においては、装置は、容器中での分散物の滞留時間が、フッ素化乳化剤の量を所望のレベルに低減するために十分であるように、設計されるであろう。連続方法の特定の実施形態においては、それぞれアニオン交換樹脂が充填された複数の、例えば2以上の、(好ましくは攪拌されている)容器を使用することが可能である。したがって、フルオロポリマー分散物は、連続して添加されて、第一容器から引き出すことが可能である。第一容器からのフルオロポリマー分散物は、それが連続的に引き出される次の容器に連続的に供給され得、2を超える容器を使用する場合、この方法を繰り返すことができる。複数の容器を使用する場合、典型的に直列(cascading arrangement)に配列される。
【0114】
フッ素化乳化剤を充填したアニオン交換樹脂は、例えば米国特許第4,282,162号、PCT国際公開第01/32563号及び欧州特許出願公開第1069078号に開示された方法に従って、アニオン交換樹脂を溶出する工程により再生でき、その後、フッ素化乳化剤は、溶出液から回収され得る。その後、回収されたフッ素化乳化剤を、例えば1つ以上のフッ素化モノマーの水性乳化重合においてフルオロポリマーを製造するために、再使用することが可能である。米国特許第4,282,162号に開示されるアニオン交換樹脂の再生方法は、鉱酸と、水が溶解できる有機溶媒例えばメタノールの混合物との、樹脂の溶出を伴う。PCT国際公開第01/32563号に開示されるようなアニオン交換樹脂の再生方法は、アンモニアと150℃未満の沸点を有する水混和性有機溶媒の混合物での、弱塩基性又は中程度の強塩基性アニオン交換樹脂の溶出を伴う。欧州特許出願公開第1069078号に開示された方法において、アニオン交換樹脂は、水、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、アルカリフッ化物又はアルカリ塩化物、並びに水とハロゲン化物が溶解し得る有機溶媒の混合物で溶出される。溶出液からフッ素化乳化剤を回収するために、米国特許第5,442,097号に開示された方法を使用できる。
【0115】
以下の実施例を用いて本発明を更に例示するが、本発明をそれら実施例に制限することを意図するものではない。
【0116】
方法
粒径:
フルオロポリマー分散物の粒径は、ISO/DIS 13321に従って、マルヴァーン・ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)1000HSAを使用して、動的光散乱により確定されてもよい。測定前に、ポリマーラテックスを0.001mol/LのKCl溶液で希釈した。測定は25℃で行われる。
【0117】
PFOA含有量:
フッ素化乳化剤の含有量は、乳化剤をメチルエステルに変換し(硫酸及びメタノールを使用)、内部標準としてペルフルオロドデカン酸のメチルエステルを使用する工程により、ガスクロマトグラフィー(ヘッドスペース)により測定できる。
【0118】
固体含有量:
固体含有量は、ISO 12086(2時間120℃、35分間380℃)に従って確定された。
【0119】
界面活性剤含有量:
分散物中の界面活性剤の含有量は、HPLCを使用して確定できる。高度に濃縮された分散物の場合、希釈が必要である可能性がある。
【実施例】
【0120】
(実施例1)
イオン性界面活性剤を充填した強塩基性アニオン交換樹脂の調製
315mLの強塩基性アニオン交換樹脂(アンバージェット(AMBERJET)IRA 4200 Cl、ローム&ハース(Rohm & Haas)から市販されている)、及び850gのドデシル硫酸ナトリウム水溶液(15重量%、フルカ(Fluka)から入手可能である)を、回転ベッド内で6日間混合した。上澄みをクロライド濃度のために分析した。アニオン交換樹脂の塩化物を、ドデシル硫酸ナトリウムにてほぼ定量的に置換した(>95%)。
【0121】
(実施例2)
イオン性界面活性剤を充填した弱塩基性アニオン交換樹脂の調製
200mLの弱塩基性アニオン交換樹脂(レバチット(LEWATIT)MP62、バイエル社(BAYER AG)から市販されている)、及び1,450gのドデシル硫酸ナトリウム水溶液(15重量%、フルカ(Fluka)から入手可能である)を、回転ベッド内で7日間混合した。
【0122】
(実施例3)
実施例1において調製した100mLの樹脂を、ガラスカラム(長さ対幅の比が7:1)に移動し、300mLの脱イオン水(100mL/時)で洗浄(平衡化)した。固体含有量が26.8重量%であり、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)含有量が600ppmであるPTFE分散物を、希釈(10重量%)硫酸を使用してpH3に調整した。その後、分散物をイオン交換樹脂の底から上面に流量50mL/時で通過させた。550mLの分散物の後から取った試料を、200ppmのAPFOを含有するカラムに通過させた。1200mLの分散物が通過した後から取った別の試料は、残留APFOの含有量が160ppmであった。イオン交換を停止し、カラムを1000mLの脱イオン水で洗浄した。目詰まりは観察されなかった。
【0123】
(実施例4)
実施例1において調製した100mLの樹脂を、実施例3に記載したようなガラスカラムに移動し、300mLの脱イオン水(100mL/時)で洗浄(平衡化)した。固体含有量が25.3重量%であり、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)含有量が600ppmであり、pHが9.1であるPTFE分散物に、固体含有量の0.1重量%の非イオン性乳化剤(ジェネポール(GENAPOL)X080、クラリアント(CLARIANT)から入手可能)を添加した。その後、分散物をイオン交換樹脂の底から上面に流量100mL/時で通過させた。500mLの分散物の後から取った試料を、170ppmのAPFOを含有するカラムに通過させた。800mLの分散物が通過した後から取った別の試料は、残留APFOの含有量が140ppmであった。イオン交換を停止し、カラムを1000mLの脱イオン水で洗浄した。目詰まりは観察されなかった。
【0124】
この実施例は、分散物中に存在する非イオン性界面活性剤が影響しないことを示している。
【0125】
(実施例5)
実施例1において調製した100mLの樹脂を、実施例3に記載したようなガラスカラムに移動し、300mLの脱イオン水(100mL/時)で洗浄(平衡化)した。固体含有量が23.2重量%であり、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)含有量が1600ppmであり、pHが6.2であるTHV分散物を、イオン交換カラムの底から上面に流量100mL/時で通過させた。400mLの分散物の後から取った試料を、600ppmのAPFOを含有するカラムに通過させた。800mLの分散物が通過した後から取った別の試料は、残留APFOの含有量が700ppmであった。イオン交換を停止し、カラムを1000mLの脱イオン水で洗浄した。目詰まりは観察されなかった。
【0126】
(実施例6)
実施例2において調製した100mLの樹脂を、実施例3に記載したようなガラスカラムに移動し、300mLの脱イオン水(100mL/時)で洗浄(平衡化)した。固体含有量が26.8重量%であり、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)含有量が600ppmであるPTFE分散物を、希釈した(10重量%)硫酸を使用してpH6.1に調整した。その後、分散物をイオン交換樹脂の底から上面に流量50mL/時で通過させた。400mLの分散物の後から取った試料を、100ppmのAPFOを含有するカラムに通過させた。800mLの分散物が通過した後から取った別の試料は、残留APFOの含有量が100ppmであった。イオン交換を停止し、カラムを1000mLの脱イオン水で洗浄した。目詰まりは観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減する方法であって、
前記分散物を、前記分散物と接触する前に、イオン性界面活性剤で処理したアニオン交換樹脂と接触させる工程を含み、
前記イオン性界面活性剤が、両性界面活性剤、又はアニオン性界面活性剤、又はこれらの混合物である、方法。
【請求項2】
前記イオン性界面活性剤が、約600g/mol以下の分子量を有するアニオン性界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン性界面活性剤が非芳香族である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン性界面活性剤が、1分子当たり1以下のアニオン性基を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン交換後の前記分散物中のイオン性界面活性剤の濃度が、前記分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%であるように、前記イオン交換前、前記イオン交換中、又は前記イオン交換後に、前記イオン性界面活性剤を添加する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロポリマー分散物が、0,5%未満の非イオン性界面活性剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマー分散物が、約200℃未満の融点を有するフルオロポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマー分散物が、分散物の固体含有量の0.5重量%未満の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アニオン交換樹脂との接触前の前記フルオロポリマー分散物が、前記分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%のフッ素化乳化剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フッ素化乳化剤が、一般式(II):
[R−O−L−COOi+ (II)
(式中、
Lは、直鎖状の部分的に又は完全にフッ素化されたアルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表し、
は、直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基、又は1つ以上の酸素原子で中断された直鎖状の部分的に若しくは完全にフッ素化された脂肪族基を表し、
i+は、価数i(iは1、2又は3である)を有するカチオンを表す)
に対応する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
フッ素化乳化剤を含有するフルオロポリマー分散物中のフッ素化乳化剤の量を低減する方法であって、
非フッ素化イオン性界面活性剤の存在下で前記分散物をアニオン交換樹脂と接触させる工程を含み、
前記イオン性界面活性剤が両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤のいずれかであり、
前記分散物が、アニオン交換樹脂と接触する前又は接触中に、前記樹脂によって取り上げられることができ、かつ、前記分散物を安定化させるためのイオン性界面活性剤の効率的な量を上回る量で、前記イオン性界面活性剤が前記分散物中に存在し、
前記アニオン性界面活性剤の分子量が約600g/mol未満である、方法。
【請求項12】
イオン性界面活性剤の存在下での前記分散物を前記アニオン交換樹脂と接触させる工程が、前記分散物による接触前に、前記イオン性界面活性剤で処理したアニオン性交換樹脂の使用を伴う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水性フルオロポリマー分散物であって、
i.前記分散物の約5重量%〜約35重量%のフルオロポリマーと、
ii.前記分散物の固体含有量の約0.02重量%未満のフッ素化乳化剤と、
iii.前記分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%からの非フッ素化イオン性界面活性剤であって、前記イオン性界面活性剤は両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤であり、前記アニオン性界面活性剤は約600g/mol未満の分子量を有する、非フッ素化イオン性界面活性剤と、
iv.前記固体含有量の約0.5重量%未満の非イオン性界面活性剤と、
を含む水性フルオロポリマー分散物。
【請求項14】
水性フルオロポリマー分散物であって、
i.前記分散物の約35重量%〜約70重量%のフルオロポリマーと、
ii.前記分散物の固体含有量の約0.02重量%未満のフッ素化乳化剤と、
iii.前記分散物の固体含有量の少なくとも約0.02重量%からの非フッ素化イオン性界面活性剤であって、前記イオン性界面活性剤は両性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤であり、前記アニオン性界面活性剤は約600g/mol未満の分子量を有する、非フッ素化イオン性界面活性剤と、
iv.前記固体含有量の約0.5重量%未満の非イオン性界面活性剤と、
を含む水性フルオロポリマー分散物。
【請求項15】
温度260℃未満において分解するコーティング組成物中における請求項13又は14に記載のフルオロポリマー分散物の使用。
【請求項16】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、紙又はガラス繊維を含有する基材のコーティングにおける、請求項13又は14に記載のフルオロポリマー分散物の使用。
【請求項17】
金属表面又はベアリングをコーティングするための、請求項13又は14に記載のフルオロポリマー分散物の使用。

【公表番号】特表2010−513602(P2010−513602A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541550(P2009−541550)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087210
【国際公開番号】WO2008/076746
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】