説明

イオン交換樹脂を使用する酸化触媒の回収方法

化学プロセスに於ける液体流からの少なくとも1種の重金属及び少なくとも1種のハロゲンの除去及び回収方法が開示されている。この方法は、前記液体流を、強塩基性アニオン交換樹脂と接触させる工程及び第一の工程からの排出流を、キレート化カチオン交換樹脂と接触させる工程を含む。この回収方法には、任意的に、このアニオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂再生溶液と接触させることによってアニオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及びハロゲンを形成する工程が含まれる。最適には、本発明の回収方法には、また、キレート化カチオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及びハロゲンを形成する工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するクロスリファレンス
本件特許出願は、2007年5月31日出願の米国仮特許出願第60/932,400号の利益を請求する。
本発明は、一連のイオン交換樹脂及びキレート化樹脂を使用する重金属及びハロゲンの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族カルボン酸の製造は、しばしば、芳香族炭化水素の直接酸化の手段によって起こる。これらの中で、テレフタル酸はポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、多くの異なったポリマーの製造に於いて使用されているこのような1種のカルボン酸である。テレフタル酸は、重金属、例えばCo及びMn並びにラジカル開始剤、例えば臭素によって触媒作用される、p−キシレンの直接酸化によって製造される。この酸化生成物は、続いて、結晶化され、i)生成物を含む固体流、ii)部分的に酸化方法にリサイクルされる母液流及びiii)液体流を生成する固液分離に付される。この液体流は、溶媒回収のために処理され、この溶媒回収操作に於いて、液体流中に存在する触媒及びラジカル開始剤は、失われるか又は低い効率の化学的及び/若しくは物理的方法の手段によって部分的にのみ回収される。更に、芳香族カルボン酸の製造のために、低い純度の供給原料が使用されるとき、液体流は他の流と相対的に増加させ、液体流によって失われる触媒及び開始剤の値を増加させなくてはならない。
【0003】
芳香族カルボン酸の生産の間の触媒の損失に取り組むための最近の努力が試みられてきた。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5の全てには、触媒の成分、例えば重金属及び/又はハロゲンを回収するための種々の方法が記載されている。しかしながら、上記の先行技術文献には、重金属若しくはハロゲンを回収する方法に含まれる流れ(stream)の1個若しくはそれ以上の前処理を必要とする方法及び/又は高価な資本設備の使用を必要とする余分の処理工程を必要とする方法が記載されている。
【0004】
記載された重金属及びハロゲン回収のための他の努力には、イオン交換樹脂の使用が含まれる。例えば特許文献6、特許文献7及び特許文献8には、イオン交換樹脂の使用による重金属イオン及び/又はハロゲンの回収方法が記載されている。しかしながら、これらの文献は、高価な前処理工程又は高価な資本設備を必要とする他の処理工程を必要とする。
【0005】
重金属及びハロゲンを含有する流れの余分の処理工程又は前処理を必要としない一層効率的な方法で、より大量の重金属及びハロゲンを回収し、精製することが、重金属及びハロゲンの回収の技術分野に於ける利点であろう。また、重金属及びハロゲンの回収を最適化する手段に於いてイオン交換樹脂を利用することが、重金属及びハロゲンの回収の技術分野に於ける利点であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0016500A1号明細書
【特許文献2】米国特許第3,959,449号明細書
【特許文献3】米国特許第4,202,797号明細書
【特許文献4】米国特許第4,162,991号明細書
【特許文献5】特開平10−15390A号明細書
【特許文献6】米国特許第4,238,294号明細書
【特許文献7】米国特許第5,880,313号明細書
【特許文献8】米国特許第5,955,394号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の面に於いて、本発明は、化学プロセスに於ける液体流からの少なくとも1種の重金属及び少なくとも1種のハロゲンの除去及び回収方法であって、a)この液体流を、強塩基性アニオン交換樹脂と接触させ、そしてb)工程(a)からの排出流を、キレート化カチオン交換樹脂と接触させる工程を含んでなる方法である。この回収方法には、任意的に、このアニオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂再生溶液と接触させることによってアニオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及びハロゲンを形成する工程が含まれる。最適には、本発明の回収方法には、また、キレート化カチオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及びハロゲンを形成する工程が含まれる。
【0008】
第二の面に於いて、本発明は、化学プロセスに於ける液体流から、i)Co、Mn及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種の重金属並びにii)臭素を除去及び回収する方法であって、a)前記液体流を、ハロゲン化物形である強塩基性アニオン交換樹脂と接触させ、b)工程(a)からの排出流を、キレート化カチオン交換樹脂と接触させ、c)前記アニオン交換樹脂を、水及び酢酸を含むアニオン交換樹脂再生溶液と接触させることによって、工程(a)に於けるアニオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及び臭素を形成し、d)前記キレート化カチオン交換樹脂を、HBrを含む再生プライマーと接触させ、その後、前記キレート化カチオン交換樹脂を、水を含む再生溶液と接触させることによって、前記キレート化カチオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及び臭素を形成し、e)前記の回収された重金属及び臭素を、水酸化物形である強塩基性アニオン交換樹脂と接触させることによって、前記の回収された重金属及び臭素を精製して、精製された重金属及び臭素を形成し、そしてf)前記の化学プロセスに於いて前記の精製された重金属及び臭素を使用する工程を含んでなる除去及び回収方法である。
【0009】
本発明は、液体流の前処理又は余分の処理工程を必要としない、金属及びハロゲンの回収方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の回収システムの一つの態様のフロー図である。
【図2】図2は本発明の回収システムの別の態様のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、化学プロセスに於いて使用される触媒の回収方法である。一つの面に於いて、この化学プロセスは、これらに限定するものではないが、1個又はそれ以上の、触媒を含有する液体流を製造する、ジ−及びトリメチルベンゼンを含むアルキル芳香族の液相酸化プロセスである。一つの態様に於いて、この液体流(群)は、酸化プロセスから取り出され、次いで分離されて、固体含有生成物流、母液流及び液体流(ここで、この液体流は、触媒、反応溶媒、反応中間体、反応副生物及び腐食生成物を含む)を生成する。液相酸化プロセスの例には、テレフタル酸、イソフタル酸及びトリメリット酸の製造が含まれる。テレフタル酸の製造は、例えばテレフタル酸を生成するためのp−キシレンの酸化を含む。液相酸化に使用され、液体流中で終わる触媒は、重金属及び/又はハロゲンを含む。多くの態様、例えばテレフタル酸、イソフタル酸及びトリメリット酸プロセスに於いて、この重金属は、コバルト、マンガン、セリウム、ジルコニウム及びハフニウムのうち1種又はそれ以上を含み、ハロゲンは臭素を含む。
【0012】
図1は本発明のために使用することができる回収システム10の一態様を示す。図示されるように、回収システム10はリザーバー11、イオン交換樹脂を含有する塔(column)13及びキレート化樹脂を含有する床(bed)17を含んでいる。
【0013】
図1に示されるように、液体流12は、リザーバー11から取り出される。リザーバー11の形状は本発明にとって重要ではなく、殆どの化学処理システムでのように、化学プロセスの特性によって、リザーバー11及び他の補助装置の形状及び構造材料が決定されるであろう。
【0014】
液体流12中の重金属及びハロゲンの濃度は、本発明にとって重要ではなく、本発明は、重金属及び/又はハロゲンの殆ど全ての濃度で有効である。液体流中の重金属及びハロゲンの典型的な濃度範囲は、例えば200〜1000部/100万(ppm)の臭化物濃度、100ppm〜800ppmのコバルト濃度及び200ppm〜1000ppmのマンガン濃度であってよい。
【0015】
この液体流は、リザーバー11からイオン交換樹脂床13に供給され、そこで、液体流は、それがイオン交換樹脂床13を貫通するとき、少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触状態になる。最適には、イオン交換樹脂と接触するときの液体流12の温度は、20〜150℃、更に好ましくは40〜100℃、最も好ましくは65〜100℃の範囲内である。
【0016】
このイオン交換樹脂は、液体流から重金属及びハロゲンの少なくとも一部を吸収するように選択された、強塩基性アニオン交換樹脂である。好ましくは、この強塩基性アニオン交換樹脂はハロゲン化物形である強塩基性アニオン交換樹脂、更に好ましくは塩素化された又は臭素化されたアニオン交換樹脂である。好ましくは強塩基性アニオン交換官能基はアミン基である。最も好ましくは強塩基性アニオン交換樹脂は臭素化物形である強塩基性第四級アミンアニオン交換樹脂である。臭素化物形であるアニオン交換樹脂について、当該技術分野で公知のように、強塩基性アニオン交換樹脂の臭素化物形への転化は、何れかの形である樹脂の床を、樹脂床体積(本明細書に於いて、イオン交換樹脂床の体積として定義する)の10〜50倍の強塩基溶液で洗浄し、次いで5〜20樹脂床体積の、好ましくは少なくとも3重量%の臭化物の濃度で臭化物を含有する溶液で洗浄することによって得ることができる。
【0017】
この強塩基性アニオン交換樹脂は任意のマトリックス上に支持されることができる。好ましくは強塩基性アニオン交換樹脂はスチレン系マトリックス、更に好ましくはスチレン−ジビニルベンゼンマトリックス上に支持される。
【0018】
樹脂床13を通過する液体流の流れの方向は重要ではない。しかしながら、図1に示されるように、典型的には、液体流は、それが樹脂床13通って下方に流れるように、樹脂床13の頂部に供給されるであろう。
【0019】
塔13からの排出流16は、反応溶媒、強塩基性アニオン交換樹脂によって吸収されなかった残留触媒、反応副生物、反応中間体及び腐食生成物を含む。排出流16は、床17に供給され、そこでキレート化樹脂と接触状態になる。このキレート化樹脂は、得られる排出流18が、重金属触媒及び/又はハロゲンを実質的に含有しないように、残留する重金属及び/又はハロゲンを吸収する。従って、排出流18は、反応副生成物、反応中間体、腐食生成物の大部分から本質的になる。
【0020】
床17内のキレート化樹脂は液体流から重金属及び/又はハロゲン、更に詳しくは、コバルト、マンガン、セリウム、ジルコニウム、ハフニウム、臭素を吸収するように選択された樹脂である。好ましくはキレート化樹脂のキレート化基は、カルボン酸キレート化基、更に好ましくはジカルボン酸基である。最も好ましくはキレート化樹脂はイミド二酢酸樹脂である。キレート化樹脂は、任意の形、例えばナトリウム又は水素形であってよく、更に好ましくは水素形であってよい。
【0021】
このキレート化樹脂は任意のマトリックス上で支持されることができる。好ましくはキレート化樹脂は、スチレン系マトリックス、更に好ましくはスチレン−ジビニルベンゼンマトリックス上に支持される。
【0022】
キレート化樹脂床17を通過する排出流16の流れの方向は重要ではない。しかしながら、図1に示されるように、典型的には、排出流16は、それが床17通って下方に流れるように、床17の頂部に供給されるであろう。
【0023】
一定時間後に、殆どのイオン交換樹脂及びキレート化樹脂でのように、塔13内のアニオン交換樹脂及び床17内のキレート化樹脂は重金属及び/又はハロゲンによって完全に充たされるようになり、従って再生しなければならない。当業者であれば、樹脂床は、典型的には、再生が必要になる前の特定の時間、持続するようなサイズに作られること又は排出流18中の重金属及び/又はハロゲンの濃度レベルが変化し、再生の必要性を知らせることを理解している。再生工程の間、重金属及び/又はハロゲンは、回収され、最適には、芳香族カルボン酸のための製造方法に使用することができる。
【0024】
アニオン交換樹脂を再生するために、アニオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂再生溶液と接触させる。好ましくはアニオン交換樹脂再生溶液は水又は水と酢酸との組合せを含む。好ましくはアニオン交換樹脂再生溶液中の水の濃度は10〜100重量%、更に好ましくは30〜70重量%である。好ましくはアニオン交換樹脂再生溶液中の酢酸の濃度は90〜0重量%、更に好ましくは70〜30重量%である。
【0025】
キレート化樹脂を再生するために、キレート化樹脂は、最初に再生プライマーと接触させ、次いでキレート化カチオン交換樹脂再生溶液と接触させる。
【0026】
再生プライマーは、酸、例えば塩酸又は臭化水素酸を含み、また酢酸を含有してよい。再生プライマー中の臭化水素酸又は塩酸の濃度は、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜10重量%、なお更に好ましくは3〜6重量%である。再生プライマー中の酢酸の濃度は、好ましくは0〜98重量%、更に好ましくは10〜95重量%、なお更に好ましくは85〜90重量%である。任意的に、水を、再生プライマーに、1.5〜100重量%、更に好ましくは3〜50重量%、なお更に好ましくは4〜35重量%の好ましい濃度で添加することができる。使用される再生プライマーの体積は、吸収される金属1グラム毎に3〜10gの臭化物を樹脂に供給するように選択される。この工程の間、樹脂による臭化物の吸収と一緒に、重金属の一部が回収される。例えばコバルト及びマンガンが重金属であるとき、キレート化樹脂に充たされたコバルトの10%以下及びマンガンの50%以下を、この工程の間にキレート化樹脂から回収することができる。
【0027】
キレート化カチオン交換樹脂再生溶液は、好ましくは水又は水と酢酸との組合せを含む。キレート化カチオン交換樹脂再生溶液中の水の濃度は、好ましくは30〜100重量%、更に好ましくは50〜100重量%、なお更に好ましくは80〜100重量%であり、キレート化カチオン交換樹脂再生溶液中の酢酸の濃度は0〜30重量%である。得られる流れは、回収された重金属及びハロゲンを、約3〜約10のハロゲン化物対重金属の比で含有している。PTAプロセスに於いて、例えばBr-:(Co+Mn)の比は、約2〜約10、更に好ましくは2〜8、なお更に好ましくは2〜5である。回収された重金属及びハロゲンを含有するこの流れは、次いで下記のようにして精製される。
【0028】
図2を参照するに、代替態様の回収システム20も可能である。図2に於ける回収システム20はリザーバー21及びキレート化樹脂床23を含む。図示されるように、キレート化樹脂は、重金属及びハロゲンを回収するために、キレート化樹脂のみが必要とされ、アニオン交換樹脂が必要とされないように選択される。他の点では、床23は図1に示す態様に於ける床17と同じ方式で稼働する。排出流24は図1に示す態様に於ける排出流18のものと同様の特性を有する。
【0029】
最適には、回収された重金属及び/又はハロゲンは、芳香族カルボン酸プロセスに使用される前に精製される。このような精製工程には、回収された重金属及びハロゲンを、強塩基性アニオン交換樹脂と接触させることが含まれる。精製のために使用される強塩基性アニオン交換樹脂は、好ましくは水酸化物形又はアセテート形であり、更に好ましくは水酸化物形である。
【0030】
図1に示されるように、供給物流19には、精製すべき、回収された重金属及びハロゲンが含有されている。図2に示される態様に於いて、供給物流25には、精製すべき、回収された重金属及びハロゲンが含有されている。供給物流19又は供給物流25は、精製のために使用される強塩基性アニオン交換樹脂を含有している床40に、供給される。供給物流19又は供給物流25は、強塩基性アニオン交換樹脂床及びキレート化カチオン交換樹脂床17/23に直列に又はポンプが取り付けられた緩衝容器30の手段により、床40に供給することができる。供給物流19又は供給物流25は、最適には、また、精製段階の及び図2に示されるような、OH形である強塩基性アニオン交換樹脂40の運転の効率を最適にするように、少なくとも35%の水を含有している。精製工程の後で、精製された重金属及びハロゲンを含有している流れ41を、酸化プロセスに戻し供給することができる。
【0031】
床40中の強塩基性アニオン交換樹脂が臭化物によって完全に充たされたとき、これを再生しなければならない。当業者であれば、樹脂床は、典型的には、再生が必要になる前の特定の時間、持続するようなサイズに作られること又は出口流中の重金属及び/又はハロゲンの濃度レベルが変化し、再生の必要性を知らせることを理解している。図2に示されるように、床40内のこの強塩基性アニオン交換樹脂の再生は、熱強塩基溶液42、例えばNaOH溶液又はKOH溶液である再生剤で洗浄することによって行われる。出口43からの得られる溶液は、適切に廃棄するか又はリサイクルするために送られる。
【実施例】
【0032】
実施例中に使用される、定義された用語
「DOWEX 21K−XLT」は、ザ・ダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)によって製造された、塩化物形である強塩基性アニオン交換樹脂を意味する。
【0033】
「DOWEX IDA−1」は、ザ・ダウ・ケミカル社によって製造された、キレート化カチオン交換樹脂を意味する。
【0034】
「塔A」は、250mLのDOWEX 21K−XLTを充填した、ジャケット付きガラス塔を意味する。
【0035】
「塔B」は、250mLのDOWEX 21K−XLTを充填した、ジャケット付きガラス塔を意味する。
【0036】
「塔C」は、390mLのDOWEX IDA−1を充填した、ジャケット付きガラス塔を意味する。
【0037】
「供給物」は、本発明に従って処理すべき、PTA方法からの液体流を意味する。
【0038】
「排出物」は塔A、B又はCからの排出流を意味する。
【0039】
「溶離した触媒」は本発明に従って塔A、B又はCから再生した触媒を意味する。
【0040】
実施例中に使用した手順
アニオン交換樹脂を臭化物形に転化させるための手順
DOWEX 21K−XLTを、下記のようにして臭化物形に転化させた。NaOH4重量%水溶液12リットルを、塔ジャケット内に70℃で水を循環させながら、塔A内の樹脂床に貫通させた。次いで、水を樹脂床に貫通させて、排出側で中性pHにし、次いで、樹脂床を、HBr4重量%の水溶液1000mLで洗浄した。
【0041】
アニオン交換樹脂をOH形に転化させるための手順
塔B内のDOWEX 21K−XLTを、下記のようにしてOH形に転化させた。NaOH4重量%水溶液12リットルを、塔ジャケット内に70℃で水を循環させながら、塔B内の樹脂床に貫通させた。次いで、水を樹脂床に貫通させて、排出側で中性pHにした。
【0042】
金属イオンの濃度を決定するための手順
金属イオンの濃度を、Perkin Elmerによる原子吸光分光光度計分析300を使用して決定した。分析すべきサンプルを、水で適切に希釈し、吸光度値を、下記の操作条件を使用して測定した。
【0043】
【表1】

【0044】
サンプルの吸光度値を、メーカーによって認証された濃度で溶液を含有するNormexバイアル中の、原子吸光分析法のための標準物質の吸光度と比較した。それぞれの単一金属のmg/Lでの濃度を、この器械のコントロールソフトウエアによって自動的に計算する。
【0045】
臭化物濃度を測定するための手順
臭化物を、下記の手順に従って、硝酸銀(AgNO3)による滴定によって測定した。
【0046】
約30gのサンプルを秤量する。
【0047】
硫酸アンモニウム鉄溶液5mL及び1:1硝酸5mLをフラスコの中に添加する。溶液の最終の色は黄緑色である。
【0048】
0.02Nチオシアン酸アンモニウム(NH4CNS)溶液2〜3滴を添加する。この溶液は橙赤色になるであろう。
【0049】
0.02N AgNO3を、過剰で、橙赤色が消える点まで添加する。
【0050】
過剰のAgNO3を、NH4CNSによって、橙赤色が新たに出現するまで滴定する。
【0051】
臭化物濃度の計算は、式:Br=(A−B)×N×79.9×100/P×1000(式中、
A=消費されたAgNO3のmL;
B=消費されたNH4CNSのmL;
N=滴定のための溶液の規定度(0.02N)及び
P=サンプル重量)
を使用して行う。
【0052】
実施例1
塔A及び塔Cを、図1に示される形状と同様に直列に置く。ここで、樹脂床13は塔Aであり、樹脂床17は塔Cである。塔Aへの供給物流は、表I中に報告した特定の濃度で、重金属及びハロゲン、反応溶媒、酸化反応副生成物、酸化反応中間体並びに腐食生成物を含む。この供給物流を70℃まで加熱する。500mLの氷酢酸を、2個の樹脂床に通してポンプ輸送し、次いで、試験すべき流を樹脂床に供給し、最後の床の排出側で回収する。塔ジャケット温度を、試験の間一定に保持する。吸収後に、試験した流を、氷酢酸を2個の床に通してポンプ輸送することによって、塔から除去する。再生は、塔Aのための再生剤として100%水、塔Cのためのプライマーとして酢酸/HBr/水=90/4/6重量%から構成される溶液及び塔Cのための再生溶液として100%水の溶液を使用して実施した。試験の最後に、2個の樹脂床を、氷酢酸で洗浄した。関連データを表Iに報告する。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例2
配置は図2に示されるものと同様であり、ここで、塔Cは樹脂床23であるようにして、塔Cのみを試験する以外は、実施例1で使用した手順を繰り返す。再生は、塔Cのためのプライマーとして酢酸/HBr/水=90/4/6重量%から構成される溶液及び塔Cのための再生溶液として100%水の溶液を使用して実施した。関連データを表Iに報告する。
【0055】
実施例3
配置は図1及び図2に示されるものと同様であり、ここで、塔Bは樹脂床40であるようにして、塔Bを試験する。それぞれ、図1及び図2に於ける流19及び25の組成を表す供給物流組成を、表Iに報告する。500mLの氷酢酸を、樹脂床に通してポンプ輸送し、次いで、試験すべき流を樹脂床に供給し、この床自体の排出側で回収する。塔ジャケット温度を、試験の間一定に保持する。吸収後に、試験した流を、水を床に通してポンプ輸送することによって、塔から除去する。関連データを表Iに報告する。
【0056】
実施例4
供給物流の水濃度を35重量%まで上昇させた以外は、実施例3で実施した同じ手順を繰り返す。関連データを表Iに報告する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学プロセスに於ける液体流からの少なくとも1種の重金属及び少なくとも1種のハロゲンの除去及び回収方法であって、
a)前記液体流を、強塩基性アニオン交換樹脂と接触させ、そして
b)工程(a)からの排出流を、キレート化カチオン交換樹脂と接触させる
工程を含んでなる方法。
【請求項2】
c)前記アニオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂再生溶液と接触させることによって、前記アニオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及びハロゲンを形成する
工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン交換樹脂再生溶液が水及び酢酸を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
d)前記キレート化カチオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及びハロゲンを形成する
工程を更に含む請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(d)が、前記キレート化カチオン交換樹脂を再生プライマーと接触させ、その後、前記キレート化カチオン交換樹脂を、キレート化カチオン交換樹脂再生溶液と接触させることを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記再生プライマーが臭化水素又は塩化水素を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記キレート化カチオン交換樹脂再生溶液が水である請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
e)前記回収された重金属及びハロゲンを精製する
工程を更に含む請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)が、前記回収された重金属及びハロゲンを、水酸化物形又はアセテート形である強塩基性アニオン交換樹脂と接触させて、精製された重金属及びハロゲンを形成する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
f)前記化学プロセスに於いて前記の精製された重金属及びハロゲンを使用する
工程を更に含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記重金属がCo、Mn、Ce、Zr、Hf又はこれらの組合せである請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記化学プロセスがテレフタル酸製造プロセス、イソフタル酸プロセス及びトリメリット酸プロセスである請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロゲンがBrである請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)に於ける前記アニオン交換樹脂がハロゲン化されたアニオン交換樹脂である、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アニオン交換樹脂が臭素化されたアニオン交換樹脂である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)に於ける前記キレート化交換樹脂がイミド二酢酸樹脂である請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
化学プロセスに於ける液体流からの、i)Co、Mn、Ce、Zr、Hf及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種の重金属並びにii)臭素の除去及び回収方法であって、
a)前記液体流を、ハロゲン化物形である強塩基性アニオン交換樹脂と接触させ、
b)工程(a)からの排出流を、キレート化カチオン交換樹脂と接触させ、
c)前記アニオン交換樹脂を、水及び酢酸を含むアニオン交換樹脂再生溶液と接触させることによって、工程(a)に於けるアニオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及び臭素を形成し、
d)前記キレート化カチオン交換樹脂を、HBrを含む再生プライマーと接触させ、その後、前記キレート化カチオン交換樹脂を、水を含む再生溶液と接触させることによって、前記キレート化カチオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及び臭素を形成し、
e)前記の回収された重金属及び臭素を、水酸化物形である強塩基性アニオン交換樹脂と接触させることによって、前記の回収された重金属及び臭素を精製して、精製された重金属及び臭素を形成し、そして
f)前記化学方法に於いて前記の精製された重金属及び臭素を使用する
工程を含んでなる除去及び回収方法。
【請求項18】
工程(a)に於ける前記強塩基性アニオン交換樹脂が臭素化されたアニオン交換樹脂である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記キレート化カチオン交換樹脂がイミド二酢酸樹脂である請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
PTAプロセス中の液体流から、i)Co、Mn及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種の重金属並びにii)臭素を除去及び回収する方法であって、
a)前記液体流を、キレート化カチオン交換樹脂と接触させ、
b)前記キレート化カチオン交換樹脂を、HBrを含む再生プライマーと接触させ、その後、前記キレート化カチオン交換樹脂を、水を含む再生溶液と接触させることによって、前記キレート化カチオン交換樹脂を再生させて、回収された重金属及び臭素を形成し、
c)前記の回収された重金属及び臭素を、水酸化物形である強塩基性アニオン交換樹脂と接触させることによって、前記の回収された重金属及び臭素を精製して、精製された重金属及び臭素を形成し、そして
d)前記PTA方法に於いて前記の精製された重金属及び臭素を使用する工程
を含んでなる除去及び回収方法。
【請求項21】
前記キレート化カチオン交換樹脂がイミド二酢酸樹脂である請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527785(P2010−527785A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509919(P2010−509919)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003112
【国際公開番号】WO2009/022237
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509328375)ダウ イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミテ (3)
【Fターム(参考)】