説明

イオン検出装置及びイオン発生装置

【課題】空気中に含まれるプラスイオン及びマイナスイオンを検出してユーザに報知することができるイオン検出装置、及びこのイオン検出装置を備えてイオンが正常に発生しているか否かを検出することができるイオン発生装置を提供する。
【解決手段】捕集電極11により空気中のプラスイオンの正電荷を捕集し、マイナスイオンの負電荷を捕集する。捕集電極11により捕集した電荷をダイオード12、13にて分離し、コンデンサ14に正電荷を蓄積し、コンデンサ15に負電荷を蓄積する。また、コンデンサ15にて蓄積した負電荷による電位を反転器20にて極性反転する。コンデンサ14に蓄積された正電荷による電位、又は反転器20の出力電位が所定の電位を超え、LED17の両端に加わる電圧が閾値電圧を超えた場合、LED17が点灯し、イオンの検出を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中のプラスイオン及び/又はマイナスイオンを検出するイオン検出装置、及びこのイオン検出装置を搭載したイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスイオン及びマイナスイオンを発生して、このイオンを含む空気を送出し、イオンが送出された空間の空気中に浮遊する微粒子及び細菌等の浮遊物を除去して空気を浄化するイオン発生装置が実用化されている。イオン発生装置は、誘電体を介して対向する2つの電極を有しており、数kVの電圧を発生する高電圧発生回路からの電圧を2つの電極間に印加することで電極間に放電プラズマを生じさせ、空気中にプラスイオンであるH+ (H2 O)m (mは自然数)、及びマイナスイオンであるO2-(H2 O)n (nは自然数)を略同量発生させるようにしてある。
【0003】
発生するプラスイオン及びマイナスイオンは、空気中の水蒸気を放電プラズマによりイオン化することで生成されるものであり、水素イオン(H+ )又は酸素イオン(O2-)の周囲に複数の水分子が付随した形態、所謂クラスターイオンの形態をなしている。空気中に放出されたこれらのイオンは、浮遊微粒子又は浮遊細菌と化学反応し、活性物質としての過酸化水素水H2 2 又は水酸基ラジカル・OHとなり、浮遊微粒子又は浮遊細菌から水素を抜き取る酸化反応を行うことで浮遊微粒子を不活性化し、または浮遊細菌を殺菌して、空気を清浄にすることができる。
【0004】
しかし、イオン発生装置が発生するプラスイオン及びマイナスイオンは無色透明且つ無味無臭であるため、プラスイオン及びマイナスイオンが実際に発生しているか否かをユーザが確認することは困難である。よって、空気中に含まれるプラスイオン及びマイナスイオンを検出してユーザに報知するイオン検出装置を、イオン発生装置に搭載することが望ましい。
【0005】
特許文献1においては、大気中のイオンの電荷を捕集する捕集電極と、捕集された電荷を蓄積するコンデンサと、所定の極性の電荷のみをコンデンサに蓄積されないように放出するダイオードと、コンデンサに蓄積された電荷により駆動されるネオンランプとを備えることによって、イオナイザから発生する正イオン又は負イオンを選択的に検知できるイオン検知装置が提案されている。
【0006】
特許文献2においては、大気中のイオンの電荷を捕集する捕集電極と、捕集された電荷によって導通する電圧駆動型の半導体スイッチング素子と、半導体スイッチング素子の導通により接続される直流電源からの給電により動作するLEDとを備えることによって、イオンの検知能力及び検知の信頼性が高く、且つ、検知結果の確認が容易に行えるイオン検知装置が提案されている。
【特許文献1】特開平10−197482号公報
【特許文献2】特開平10−282168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のイオン検知装置は、大気中に含まれるプラスイオン又はマイナスイオンのいずれか一方を検知することはできるが、両方を検知することができないという問題がある。プラスイオン及びマイナスイオンの両極性のイオンを発生するイオン発生装置に搭載されるイオン検出装置は、両極性のイオンの発生を検出できる構成であることが望ましい。特許文献1に記載のイオン検知装置では、接続方向を逆とした2つのダイオードをスイッチで切り替えて利用することで、プラスイオン又はマイナスイオンの検知を行う構成について言及されているが、外部からのスイッチの切り替えを必要とするという問題があると共に、スイッチを搭載することによって装置が大型化するという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大気中のイオンの電荷を捕集して正電荷及び負電荷をそれぞれ別に蓄積し、蓄積したいずれか一方の電荷による電位の極性を反転させ、他方の電荷による電位又は反転させた電位が所定電位を超えた場合に報知を行う構成とすることにより、簡単な構成で大気中に含まれるプラスイオン及びマイナスイオンを検知してユーザに報知することができるイオン検出装置を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、大気中のイオンから捕集した電荷を逆に接続された2つのダイオードにより正電荷及び負電荷に分けて、それぞれコンデンサに蓄積する構成とすることにより、簡単な構成で正電荷及び負電荷を別に蓄積することができ、大気中のプラスイオン及びマイナスイオンを検出することができるイオン検出装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的とするところは、コンデンサに蓄積された負電荷による電位の極性を反転させる構成とすることにより、所定電位との比較を正の電位で行うことができるため、簡単な回路構成で検出を行うことができるイオン検出装置を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的とするところは、所定電位を超える電位が入力された場合に駆動される半導体素子を用いて、蓄積された電荷による電位を判定し、大気中のイオンの有無を検出する構成とすることにより、イオンの検出をより精度よく行うことができるイオン検出装置を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、蓄積された電荷による電位を判定するための半導体素子へ入力される電位を制限する構成とすることにより、イオンの大量発生により多量の電荷が蓄積されて高電位が生じた場合に、半導体素子が破壊されることを防止できるイオン検出装置を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的とするところは、半導体素子へ入力される電位をツェナーダイオードにより制限する構成とすることにより、簡単な構成で確実に電位を制限でき、半導体素子が破壊されることを確実に防止できるイオン検出装置を提供することにある。
【0014】
また本発明の他の目的とするところは、イオン発生手段と上述のイオン検出装置とを備えて、イオン発生手段が発生したイオンをイオン検出装置にて検出する構成とすることにより、実際にイオンが発生しているか否かをユーザが確認することができるイオン発生装置を提供することにある。
【0015】
また本発明の他の目的とするところは、イオン発生手段により発生したイオンを空気中に送出する手段を備える構成とすることにより、発生したイオンを装置が設置された部屋などへ確実に送出することができるイオン発生装置を提供することにある。
【0016】
また本発明の他の目的とするところは、イオン発生手段に対してイオン検出装置をイオンの送出方向の下流側に設ける構成とすることにより、イオン発生手段にて発生したイオンを確実に検出してユーザに報知できるイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るイオン検出装置は、イオンの電荷を捕集する捕集手段と、該捕集手段によりイオンの電荷を捕集したことを報知する報知手段とを備え、イオンの検出を行うイオン検出装置において、前記捕集手段が捕集したイオンの正電荷及び負電荷をそれぞれ蓄積する2つの蓄積手段と、一の蓄積手段に蓄積された電荷による電位を極性反転して出力する反転手段と、他の蓄積手段に蓄積された電荷による電位又は前記反転手段が出力する電位が所定電位を超えたことを検出する検出手段とを備え、前記報知手段は、前記検出手段の検出結果に応じて報知を行してあることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、大気中のイオンの電荷を捕集して正電荷及び負電荷に分けてそれぞれ蓄積する。プラスイオンによる正電荷とマイナスイオンによる負電荷とをそれぞれ別に蓄積することによって、スイッチによる切り替えなどを必要とすることなく、両極性のイオンを検出できる。また、蓄積した一方の電荷による電位の極性を反転させ、蓄積した他方の電荷による電位又は反転させた電位が所定電位を超えた場合に報知を行う。一方の電荷による電位の極性を反転させることにより、反転させた電位が所定電位を超えるか否かの判定を、他方の電荷による電位の場合の判定と共に行うことが可能となる。よって、プラスイオン又はマイナスイオンのいずれかが大気中に所定量含まれていることをユーザへ報知することができる。
【0019】
また、本発明に係るイオン検出装置は、2つの前記蓄積手段が、電荷を蓄積するコンデンサをそれぞれ有し、前記捕集手段から一のコンデンサへ逆方向に接続されたダイオードと、前記捕集手段から他のコンデンサへ順方向に接続されたダイオードとを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、捕集した負電荷を逆方向に接続されたダイオードを介して一のコンデンサに蓄積し、正電荷を順方向に接続されたダイオードを介して他のコンデンサに蓄積する。スイッチによる切り替えなどを行うことなく、プラスイオンによる正電荷とマイナスイオンによる負電荷とを別に蓄積することが可能となる。よって、一つの装置で両極性のイオンを検出することができる。
【0021】
また、本発明に係るイオン検出装置は、前記反転手段が、前記一のコンデンサに蓄積された負電荷による電位を極性反転して出力するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、一のコンデンサに蓄積された負電荷による電位の極性を反転させる。正電荷による電位を負の電位に反転させる場合と比較して、所定電位との比較を行うための回路及び報知を行うための回路等を簡単に構成することができる。
【0023】
また、本発明に係るイオン検出装置は、前記検出手段が、前記所定電位を超える電位が入力された場合に駆動される半導体素子を有することを特徴とする。
【0024】
本発明においては、蓄積した電荷に基づく電位を、所定電位を超える電位が入力された場合に駆動される半導体素子を用いて判定し、大気中のイオンの検出を行う。例えば半導体素子としてMOSトランジスタを用い、蓄積した電荷に基づく電位をゲート電極に入力した場合、ゲート−ソース間の電圧が閾値電圧を超えたときにMOSトランジスタがオンするため、これに応じてLEDなどを動作させて報知を行うことができる。検出の基準をMOSトランジスタの閾値電圧で規定できるため、判定の自由度及び精度を高めることができる。
【0025】
また、本発明に係るイオン検出装置は、前記検出手段の前記半導体素子へ入力される電位を制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、MOSトランジスタなどの半導体素子へ入力される電位を制限する手段を設ける。多量のイオンから多量の電荷を捕集して蓄積した場合、半導体素子へ入力される電位が高まり、半導体素子を破壊する虞がある。このため、半導体素子へ入力される電位を制限することによって、半導体素子の破壊を防止する。
【0027】
また、本発明に係るイオン検出装置は、前記制限手段が、ツェナーダイオードを有することを特徴とする。
【0028】
本発明においては、半導体素子へ入力される電位をツェナーダイオードを用いて制限する。イオン検出装置にツェナーダイオードを追加するのみで、簡単に電位をツェナー電圧に応じた電位に制限することができる。
【0029】
また、本発明に係るイオン発生装置は、プラスイオン及び/又はマイナスイオンを発生するイオン発生手段と、上述のいずれか1つのイオン検出装置とを備え、前記イオン発生手段が発生したプラスイオン及び/又はマイナスイオンを前記イオン検出装置により検出するようにしてあることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、イオン発生装置に、イオン発生手段と共に上述のイオン検出装置を搭載する。イオン発生手段にてイオンが発生しているか否かをイオン検出装置にて検出することができ、検出結果をユーザが確認することができる。また、イオン検出装置による検出結果をイオン発生手段にフィードバックし、イオンの発生量を調整するなどの処理を行うことも可能となる。
【0031】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン発生手段が発生したプラスイオン及び/又はマイナスイオンを空気中に送出する送出手段を備えることを特徴とする。
【0032】
本発明においては、イオン発生手段により発生したプラスイオン及び/又はマイナスイオンを、例えば送風機などを用いて空気中に送出する。発生したイオンを広範囲に亘って拡散させることができ、広範囲に亘ってイオンによる空気の浄化を行うことが可能となる。
【0033】
また、本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン検出装置が、前記イオン発生手段に対して前記送出手段による送出方向の下流側に設けてあることを特徴とする。
【0034】
本発明においては、イオン発生手段に対してイオン検出装置をイオンの送出方向の下流側に設ける。これにより、イオン発生手段にて発生したイオンが確実にイオン検出装置の近傍を通過するため、イオン検出装置にて確実にイオンの電荷を捕集することができ、イオン検出の確度が高まる。
【発明の効果】
【0035】
本発明による場合は、大気中のイオンの電荷を捕集して正電荷及び負電荷に分けてそれぞれ蓄積すると共に、蓄積した一方の電荷による電位の極性を反転させ、蓄積した他方の電荷による電位又は反転させた電位が所定電位を超えた場合に報知を行う構成とすることにより、スイッチによる切り替えなどを必要とすることなく、簡単な構成でプラスイオン及びマイナスイオンを検出でき、両極性のイオンを検出することによる装置の大型化を抑制できる。また、プラスイオン又はマイナスイオンのいずれかが大気中に所定量含まれていることをユーザへ報知することができるため、プラスイオン及びマイナスイオンを発生するイオン発生装置にこのイオン検出装置を搭載することによって、イオン発生装置の利便性を向上することができる。
【0036】
また、本発明による場合は、捕集した負電荷を逆方向に接続されたダイオードを介して一のコンデンサに蓄積し、正電荷を順方向に接続されたダイオードを介して他のコンデンサに蓄積する構成とすることにより、スイッチによる切り替えなどを行うことなく、簡単な構成で正電荷及び負電荷を別に蓄積することができるため、一つの装置でプラスイオン及びマイナスイオンを検出することができると共に、この機能を備えることによるイオン検出装置の大型化を抑制できる。
【0037】
また、本発明による場合は、コンデンサに蓄積された負電荷による電位の極性を反転させる構成とすることにより、所定電位との比較を行うための回路及び報知を行うための回路等を簡単に構成することができるため、イオン検出装置の大型化を抑制することができる。
【0038】
また、本発明による場合は、所定電位を超える電位が入力された場合に駆動される半導体素子を用いて、蓄積した電荷に基づく電位を判定し、大気中のイオンの検出を行う構成とすることにより、例えば半導体素子としてMOSトランジスタを用いた場合には、検出の基準をMOSトランジスタの閾値電圧で規定できるため、判定の精度を高めることができ、イオン検出装置の検出精度を向上することができる。
【0039】
また、本発明による場合は、MOSトランジスタなどの半導体素子へ入力される電位を制限する構成とすることにより、多量の電荷が蓄積されることによって半導体素子へ入力される電位が高まることを防止でき、半導体素子が破壊されることを防止できるため、イオン検出装置の信頼性を向上することができる。
【0040】
また、本発明による場合は、半導体素子へ入力される電位をツェナーダイオードにより制限する構成とすることにより、簡単な構成で確実に電位を制限できるため、イオン検出装置の大型化及びコストの上昇を抑制でき、また、入力電位をツェナー電圧に応じた電位に制限することができるため、確実に半導体素子が破壊されることを防止できる。
【0041】
また、本発明による場合は、イオン発生手段と上述のイオン検出装置とを備えて、イオン発生手段が発生したイオンをイオン検出装置にて検出する構成とすることにより、実際にイオンが発生しているか否かをユーザが確認することができるため、イオン発生装置の利便性を向上することができる。
【0042】
また、本発明による場合は、イオン発生手段により発生したプラスイオン及び/又はマイナスイオンを、例えば送風機などを用いて空気中に送出する構成とすることにより、発生したイオンを装置が設置された部屋などへ確実に送出することができ、広範囲に亘ってイオンを拡散させることができるため、イオンによる空気の浄化の効果を高めることができる。
【0043】
また、本発明による場合は、イオン発生手段に対してイオン検出装置をイオンの送出方向の下流側に設ける構成とすることにより、イオン発生手段にて発生したイオンが確実にイオン検出装置の近傍を通過するため、イオン検出装置にて確実にイオンの電荷を捕集することができる。よって、イオン検出装置の検出精度を高めることができるため、イオン発生装置の信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係るイオン発生装置の構成を示すブロック図である。図において1は、イオンを発生して空気中に送出するイオン発生装置であり、商用交流電源50からの電力供給により動作するようにしてある。イオン発生装置1は、商用交流電源50から供給される交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換回路2と、AC/DC変換回路2が出力する直流電圧を昇圧して高電圧を発生する高電圧発生回路3と、高電圧発生回路3が出力する高電圧が印加されてイオンを発生するイオン発生素子4とを備えている。
【0045】
AC/DC変換回路2は、例えばダイオード及びコンデンサを有し、ダイオードの整流特性を利用して交流電圧を整流し、整流した電圧をコンデンサにより平滑化することで、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。高電圧発生回路3は、例えばトランス及びスイッチング素子を有し、AC/DC変換回路2から与えられる直流電圧のトランスへの供給をスイッチング素子にてオン/オフし、トランスを構成する複数の巻線の巻き数の比に応じて昇圧された高電圧をイオン発生素子4へ供給するようにしてある。このとき、スイッチング素子のオン/オフの周期を調整することで発生する電圧の電圧値を調整することができる。
【0046】
イオン発生素子4は、誘電体を介して対向する2つの電極を有しており、高電圧発生回路3からの高電圧が2つの電極間に印加された場合、2つの電極間に放電プラズマが生じ、この放電プラズマのエネルギーにより電極近傍の空気中に含まれる水蒸気がイオン化されて、空気中にプラスイオンであるH+ (H2 O)m (mは自然数)、及びマイナスイオンであるO2-(H2 O)n (nは自然数)を略同量発生させる。
【0047】
また、イオン発生装置1は、イオン発生素子4にて発生したプラスイオン及びマイナスイオンを送出するためのファン5を備えている。なお、図1にはファン5にて生じる空気の流れを白抜きの矢印にて図示してある。ファン5にて生じる空気の流れによって、イオン発生素子4にて発生したプラスイオン及びマイナスイオンは、イオン発生装置1の内部から外部へ送出され、イオン発生装置1が設置された室内に拡散するようにしてある。また、本発明に係るイオン発生装置1は、ファン5にて生じる空気の流れる方向に関してイオン発生素子4より下流側にイオン検出装置10が設けてあり、イオン発生素子4にて発生するイオンを検出してユーザに報知することができるようにしてある。
【0048】
図2は、本発明の実施の形態1に係るイオン検出装置10の構成を示す回路図である。イオン検出装置10は、空気中のイオンの電荷を捕集するための捕集電極11を有している。捕集電極11は、例えば略矩形の金属板で構成され、イオン発生装置1内のファン5から流れる空気に触れやすい位置に配設してある。空気中のイオンが捕集電極11に触れることによって、イオンが有する電荷が捕集電極11へ移動するため、捕集電極11にてイオンの電荷を捕集することができる。
【0049】
捕集電極11には、ダイオード12のアノードと、ダイオード13のカソードとが接続してある。ダイオード12のカソードには、逆側端子が接地されたコンデンサ14が接続してあり、ダイオード13のアノードには、逆側端子が接地されたコンデンサ15が接続してある。2つのダイオード12、13は、捕集電極11にて捕集されたイオンの電荷を、正電荷及び負電荷に分離するためのものであり、2つのコンデンサ14、15は、分離された正電荷及び負電荷をそれぞれ蓄積するためのものである。即ち、捕集電極11にて捕集されたプラスイオンの正電荷は、ダイオード12を通してコンデンサ14に蓄積され、捕集電極11にて捕集されたマイナスイオンの負電荷は、ダイオード13を通してコンデンサ15に蓄積されるようにしてある。
【0050】
また、ダイオード13のアノード及びコンデンサ15の一側の端子には反転器20が接続してある。反転器20は、入力電位の極性を反転して出力する回路であり、コンデンサ15に蓄積された負電荷による負の電位を正の電位に反転して出力するようにしてある。
【0051】
図3は、反転器20の一構成例を示す回路図である。反転器20は、オペアンプ24及び複数の抵抗を用いて構成してある。反転器20の入力端子は抵抗21を介してオペアンプ24の反転入力端子に接続してあり、反転器20の出力端子はオペアンプ24の出力端子に接続すると共に、抵抗22を介してオペアンプ24の反転入力端子に接続してある。また、オペアンプ24の非反転入力端子は抵抗23を介して接地してある。この構成の反転器20は、オペアンプ24を用いた所謂反転増幅器の構成であり、入力電位をVinとし、出力電位をVoutとし、抵抗21の抵抗値をR21とし、抵抗22の抵抗値をR22とした場合、以下の(1)式が成立するため、入力電位の極性を反転させることができる。
Vout = −(R22/R21)Vin …(1)
【0052】
また、ダイオード12のカソード及びコンデンサ14の一側の端子と、反転器20の出力端子とは、抵抗16を介してLED17のアノードに接続してあり、LED17のカソードは接地電位に接続してある。よって、コンデンサ14に蓄積された正電荷による電位が所定電位を超えた場合、又は反転器20の出力電位が所定電位を超えた場合に、LED17の両端に印加される電圧が閾値電圧を超え、LED17が点灯するようにしてある。即ち、蓄積された正電荷又は負電荷による電位の上昇をLED17の閾値電圧を利用して検出し、LED17を点灯させて報知を行うようにしてある。
【0053】
以上の構成のイオン検出装置10では、捕集電極11にてプラスイオンの正電荷を捕集した場合、正電荷がダイオード12を通してコンデンサ14に蓄積され、コンデンサ14に蓄積された正電荷によりLED17のアノードの電位が上昇する。コンデンサ14に蓄積された正電荷が所定量を超えてLED17のアノードの電位が所定電位を超え、LED17の両端に加わる電圧がLED17の閾値電圧を超えた場合、LED17が点灯し、ユーザにイオンの検出を報知することができる。また、捕集電極11にてマイナスイオンの負電荷を捕集した場合、負電荷がダイオード13を通してコンデンサ15に蓄積され、コンデンサ15に蓄積された負電荷による電位が反転器20により極性反転され、LED17のアノードの電位が上昇する。コンデンサ15に蓄積された負電荷が所定量を超えて反転器20により極性反転された電位が所定電位を超え、LED17のアノードの電位が所定電位を超え、LED17の両端に加わる電圧がLED17の閾値電圧を超えた場合、LED17が点灯し、ユーザにイオンの検出を報知することができる。よって、イオン検出装置10は、プラスイオン及びマイナスイオンのどちらであっても、空気中のイオン量が所定量を超えているか否かを検出して報知することができる。
【0054】
また、このイオン検出装置10を備えるイオン発生装置1は、ファン5による空気の流れる方向に関して、イオン検出装置10をイオン発生素子4の下流に配してあるため、イオン発生素子4によりプラスイオン及びマイナスイオンが正常に発生して送出されているか否かを確実に検出することができる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、ファン5による空気の流れる方向に関して、イオン検出装置10をイオン発生素子4の下流に配する構成としたが、少なくともイオン検出装置10の捕集電極11がイオン発生素子4の下流に配してあればよい。また、図3に示した反転器20の構成は一例であって、この構成に限るものではない。また、イオンの検出をLED17により報知する構成としたが、これに限るものではなく、例えばブザーなどを用いて報知する構成としてもよい。
【0056】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係るイオン検出装置10aの構成を示す回路図である。イオン検出装置10aは、空気中のイオンの電荷を捕集するための捕集電極11を有しており、捕集電極11にはダイオード12のアノードとダイオード13のカソードとが接続してある。ダイオード12のカソードには、逆側端子が接地されたコンデンサ14が接続してあり、ダイオード13のアノードには、逆側端子が接地されたコンデンサ15が接続してある。よって、捕集電極11にて捕集されたプラスイオンの正電荷は、ダイオード12を通してコンデンサ14に蓄積され、捕集電極11にて捕集されたマイナスイオンの負電荷は、ダイオード13を通してコンデンサ15に蓄積されるようにしてある。
【0057】
また、ダイオード13のアノード及びコンデンサ15の一側の端子には反転器20が接続してある。反転器20は、入力電位の極性を反転して出力する回路であり、コンデンサ15に蓄積された負電荷による負の電位を正の電位に反転して出力するようにしてある。なお、反転器20の回路構成は図3に示すものと同じである。
【0058】
また、ダイオード12のカソード及びコンデンサ14の一側の端子と、反転器20の出力端子とには、Nチャネル型のMOSトランジスタ26のゲートが接続してある。MOSトランジスタ26のドレインにはLED27のカソードが接続してあり、LED27のアノードには抵抗28の一端が接続してあり、抵抗28の他端には直流電源29の正側端子が接続してあり、直流電源29の負側端子はMOSトランジスタ26のソースに接続してある。即ち、MOSトランジスタ26、LED27、抵抗28及び直流電源29による閉ループが形成され、MOSトランジスタ26がオンすることによってLED27が点灯するようにしてあり、正電荷又は負電荷の蓄積による電位の上昇をMOSトランジスタ26により検知して、MOSトランジスタ26によりLED27の点灯/消灯を制御するようにしてある。
【0059】
よって、コンデンサ14に蓄積された正電荷による電位が所定電位を超えた場合、又は反転器20の出力電位が所定電位を超えた場合、MOSトランジスタ26のゲート−ソース間の電圧が閾値電圧を超えてMOSトランジスタ26がオンし、LED27に直流電源29からの電力が供給され、LED27が点灯するようにしてある。
【0060】
また、MOSトランジスタ26のゲートにはツェナーダイオード25のカソードが接続してあり、ツェナーダイオード25のアノードは接地電位に接続してある。ツェナーダイオード25は、コンデンサ14に蓄積された正電荷による電位の上昇、及び反転器20の出力電位の上昇を、ツェナー電圧以下に制限するものである。これによりMOSトランジスタ26のゲート−ソース間にはツェナー電圧以上の電圧が印加されることがないため、捕集電極11にてプラスイオンの正電荷又はマイナスイオンの負電荷が過剰に捕集された場合であっても、コンデンサ14に蓄積された正電荷による電位又は反転器20の出力電位が過剰に上昇してMOSトランジスタ26が破壊されることを防止できるようにしてある。
【0061】
以上の構成のイオン検出装置10aでは、捕集電極11にてプラスイオンの正電荷を捕集した場合、正電荷がダイオード12を通してコンデンサ14に蓄積され、コンデンサ14に蓄積された正電荷によりMOSトランジスタ26のゲートの電位が上昇する。コンデンサ14に蓄積された正電荷が所定量を超え、MOSトランジスタ26のゲート−ソース間の電圧が閾値電圧を超えた場合、MOSトランジスタ26がオンし、直流電源29からLED27に電力が供給されて、LED27が点灯し、ユーザにイオンの検出を報知することができる。また、捕集電極11にてマイナスイオンの負電荷を捕集した場合、負電荷がダイオード13を通してコンデンサ15に蓄積され、コンデンサ15に蓄積された負電荷による電位が反転器20により極性反転され、MOSトランジスタ26のゲートの電位が上昇する。コンデンサ15に蓄積された負電荷が所定量を超え、反転器20により極性反転された電位が所定電位を超え、MOSトランジスタ26のゲート−ソース間の電圧が閾値電圧を超えた場合、MOSトランジスタ26がオンし、直流電源29からLED27に電力が供給されて、LED27が点灯し、ユーザにイオンの検出を報知することができる。よって、イオン検出装置10aは、プラスイオン及びマイナスイオンのどちらであっても、空気中のイオン量が所定量を超えているか否かを検出して報知することができる。
【0062】
また、蓄積された正電荷又は負電荷による電位の上昇をMOSトランジスタ26の閾値電圧を利用して検出し、MOSトランジスタ26によってLED27の点等を制御する構成とすることにより、図2に示した実施の形態1に係るイオン検出装置10のようにLED17の閾値電圧を利用して電位の上昇を検出する構成と比較して、検出精度を高めることができるため、空気中のプラスイオン又はマイナスイオンの量が少ない場合であっても検出を行うことができる。また、MOSトランジスタ26のゲートの電圧の上昇をツェナーダイオード25によりツェナー電圧以下に制限する構成とすることにより、MOSトランジスタ26が破壊されることを防止することができる。
【0063】
なお、実施の形態2に係るイオン検出装置10aのその他の構成は、実施の形態1に係るイオン検出装置10の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るイオン検出装置の構成を示す回路図である。
【図3】反転器の一構成例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るイオン検出装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0065】
1 イオン発生装置
4 イオン発生素子(イオン発生手段)
5 ファン(送出手段)
10、10a イオン検出装置
11 捕集電極(捕集手段)
12、13 ダイオード
14、15 コンデンサ(蓄積手段)
16 抵抗
17 LED(報知手段、検出手段)
20 反転器(反転手段)
25 ツェナーダイオード(制限手段)
26 MOSトランジスタ(検出手段、半導体素子)
27 LED(報知手段)
28 抵抗
29 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンの電荷を捕集する捕集手段と、該捕集手段によりイオンの電荷を捕集したことを報知する報知手段とを備え、イオンの検出を行うイオン検出装置において、
前記捕集手段が捕集したイオンの正電荷及び負電荷をそれぞれ蓄積する2つの蓄積手段と、
一の蓄積手段に蓄積された電荷による電位を極性反転して出力する反転手段と、
他の蓄積手段に蓄積された電荷による電位又は前記反転手段が出力する電位が所定電位を超えたことを検出する検出手段と
を備え、
前記報知手段は、前記検出手段の検出結果に応じて報知を行うようにしてあること
を特徴とするイオン検出装置。
【請求項2】
2つの前記蓄積手段は、電荷を蓄積するコンデンサをそれぞれ有し、
前記捕集手段から一のコンデンサへ逆方向に接続されたダイオードと、
前記捕集手段から他のコンデンサへ順方向に接続されたダイオードと
を備える請求項1に記載のイオン検出装置。
【請求項3】
前記反転手段は、前記一のコンデンサに蓄積された負電荷による電位を極性反転して出力するようにしてある請求項2に記載のイオン検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記所定電位を超える電位が入力された場合に駆動される半導体素子を有する請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のイオン検出装置。
【請求項5】
前記検出手段の前記半導体素子へ入力される電位を制限する制限手段を備える請求項4に記載のイオン検出装置。
【請求項6】
前記制限手段は、ツェナーダイオードを有する請求項5に記載のイオン検出装置。
【請求項7】
プラスイオン及び/又はマイナスイオンを発生するイオン発生手段と、
請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のイオン検出装置と
を備え、
前記イオン発生手段が発生したプラスイオン及び/又はマイナスイオンを前記イオン検出装置により検出するようにしてあること
を特徴とするイオン発生装置。
【請求項8】
前記イオン発生手段が発生したプラスイオン及び/又はマイナスイオンを空気中に送出する送出手段を備える請求項7に記載のイオン発生装置。
【請求項9】
前記イオン検出装置は、前記イオン発生手段に対して前記送出手段による送出方向の下流側に設けてある請求項8に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−39518(P2008−39518A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212351(P2006−212351)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】