説明

イオン検知装置

【課題】 イオナイザから発生する正イオン若しくは負イオンを選択的に検知できるイオン検知装置を提供する。
【解決手段】 負イオンから負電荷が捕集電極11によって捕集されると、コンデンサ15と可変抵抗19とにより定まる時定数で、捕集電極11から接地電極13を通じてコンデンサ15側に至る閉ループでコンデンサ15に充電される。ダイオード21は逆バイアスのため充電電流はダイオード21を通らない。コンデンサ15の充電電圧がネオンランプ17の放電電圧に達すると、上記時定数でネオンランプ17が放電する。正イオンから正電荷が捕集電極11によって捕集されると、捕集電極11からの電流に対してダイオード21は順バイアスとなるため、捕集電極11からの電流はダイオード21を通るのでコンデンサ15は充電されず、ネオンランプ17は放電しない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気中に存在するイオンを検知するためのイオン検知装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、図1に示した構成のイオン検知装置が知られている。この装置では、捕集電極1がイオンの電荷を捕集すると、その電荷が接地電極3を通じてコンデンサ5に充電され、コンデンサ5の充電電圧が上昇してネオンランプ7の放電電圧に達するとネオンランプ7が放電することで空気中のイオンの存在を報知する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、負イオンについては、空気のビタミンと称されるほど人体に有益であることが知られている。そのため、近年では、この負イオンを生成して空気中に放出する負イオン発生装置(=イオナイザ)と、この負イオン発生装置により生成された負イオンを検知することを目的としたイオン検知装置とが開発され、実用に供されている。
【0004】しかし、上述したイオン検知装置では、捕集電極1が空気中のイオンから電荷を捕集すると、捕集した電荷が正負いずれの電荷であっても、接地電極3を通じてコンデンサ5に充電されるので、コンデンサ5の充電電圧がネオンランプ7の放電電圧に達するとネオンランプ7が放電してしまう。そのため、上記構成のイオン検知装置では、正負の区別なく単に空気中に所定量のイオンが存在するか否かを検知することができるのみであり、果たして負イオン発生装置から所定量以上の負イオンが放出されているか否かをユーザが確認できないという問題点があった。
【0005】従って本発明の目的は、イオナイザから発生する正イオン若しくは負イオンを選択的に検知できるイオン検知装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の側面に従うイオン検知装置は、大気中のイオンの電荷を捕集するための捕集電極と、捕集電極に捕集される電荷を蓄積するコンデンサと、コンデンサに蓄積された電荷により駆動される報知手段と、捕集電極に捕集される電荷のうち所定の極性の電荷のみをコンデンサに蓄積されないよう放出する放電手段とを備える。
【0007】上記構成によれば、放電手段が捕集電極に捕集される電荷のうち所定の極性の電荷のみをコンデンサに蓄積されないよう放出するので、正イオン若しくは負イオンのいずれか一方を選択的に検知することができる。
【0008】本発明の第1の側面に係る好適な実施形態によれば、コンデンサと放電手段とは、捕集電極、及び捕集電極に対向して配置されている接地電極に夫々並列接続されており、放電手段としては、検出すべき極性の電荷がコンデンサに充電されるよう、陽極側端子と陰極側端子とが両電極に夫々接続されるダイオードが用いられる。この場合、コンデンサに、可変コンデンサを用いれば報知手段の駆動状態を調節することができる。
【0009】また、報知手段の駆動状態を調節するために、放電手段及びコンデンサに対して並列に可変抵抗を設けることとしてもよい。
【0010】なお、報知手段としては、例えばネオンランプのような放電灯が用いられる。
【0011】本発明の第2の側面に従うイオン検知装置は、大気中のイオンの電荷を捕集するための捕集電極と、捕集電極に捕集される電荷を蓄積するコンデンサと、コンデンサに蓄積された電荷により駆動される報知手段と、捕集電極に捕集される電荷のうちの正電荷のみをコンデンサに蓄積されないよう放出する第1の放電手段と、捕集電極に捕集される電荷のうちの負電荷のみをコンデンサに蓄積されないよう放出する第2の放電手段と、第1、第2の放電手段を選択する選択手段とを備える。
【0012】上記構成においても、第1の側面に係るイオン検知装置と同様の効果を奏し得る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0014】図2は、本発明の一実施形態に係るイオン検知装置の全体構成を示すもので、図2(a)は、上記装置を表面側から見た斜視図、図2(b)は、上記装置を裏面側から見た斜視図である。
【0015】この装置は、正イオン又は負イオンのうちのいずれか一方(本実施形態では負イオン)を検知可能に構成されるもので、図1に示した従来の装置におけると同様、捕集電極11と、接地電極13と、コンデンサ15と、ネオンランプ17とを備えるのに加えて、可変抵抗19及びダイオード21をも備える。そして、コンデンサ15、可変抵抗19、及びダイオード21は、図2R>2(b)に示すように、夫々捕集電極11と接地電極13との間に並列に接続されている。
【0016】捕集電極1、及び接地電極13は、共に平板状に形成されており、基板10の裏面において、図2(b)に示すように配置されている。そして、この両電極11、13間に、コンデンサ15、可変抵抗19、及びダイオード21が夫々並列に取付けられている。一方、ネオンランプ17は、図2(a)に示すように、基板10の表面に取付けられている。
【0017】なお、本実施形態に係る装置では、ユーザが基板10の下方、即ち、接地電極13側を手12で握ることにより、手12がアースとなる。
【0018】図3は、上記装置の構成を等価回路で示したものである。
【0019】図3を参照して明らかなように、上記装置は、負イオンのみを検知するよう、即ち、負電荷のみがコンデンサ15に充電されるようダイオード21がアノード側端子を捕集電極11側にカソード側端子を接地電極13側にして捕集電極11と接地電極13との間に接続されている。可変抵抗19は、その抵抗値を可変することによってネオンランプ17の放電頻度を変更するために設けられたものである。なお、ネオンランプ17の放電頻度を変更するための手段としては、この他にも例えばコンデンサ15に可変コンデンサを用いる方法や、ネオンランプ17に放電電圧の異なるものを用いる方法や、捕集電極11の大きさを変える方法等が挙げられる。また、可変抵抗19により最適な抵抗値を見出した後に、可変抵抗19に代えて、その最適な抵抗値を有する固定抵抗を接続する方法を採用することも勿論可能である。
【0020】上記構成において、負イオン発生装置(図示しない)により生成された負イオンの空気中への放出により負電荷が捕集電極11に捕集される。これらの負電荷はコンデンサ15と可変抵抗19とにより定まる時定数で捕集電極11から接地電極13を通じてコンデンサ15側に至る閉ループでコンデンサ15に充電される。この場合、ダイオード21は逆バイアスとなっているから充電電流はダイオード21を通らない。このようにして充電された負電荷によってコンデンサ15の充電電圧がネオンランプ17の放電電圧に達すると、上記時定数でネオンランプ17が放電する。この場合も、ダイオード21は逆バイアスとなるためにコンデンサ15からの放電電流はダイオード21を通らない。
【0021】一方、空気中に正イオンが存在することで、正電荷が捕集電極11に捕集される場合には、捕集電極11からの電流に対してダイオード21は順バイアスとなる。そのため、捕集電極11からの電流はダイオード21を通ることとなるので、コンデンサ15は充電されない。よって、正イオンが存在することにより正電荷が捕集されるときはネオンランプ17は放電しない。
【0022】従って本実施形態によれば、空気中に負イオンが存在することにより、捕集電極11に負電荷が捕集されたときにのみコンデンサ15が充電され、コンデンサ15の充電電圧がネオンランプ17の放電電圧に達した時点でネオンランプ17が放電することで負イオンを検知した旨をユーザ等に報知することができる。
【0023】なお、本実施形態に係る装置には、上記効果に加えて以下のような利点がある。
【0024】(1)非常に少ない部品点数で構成できる。
【0025】(2)装置の駆動電源を必要としない。
【0026】(3)イオンを視覚(ネオランプ17の放電)で認識できる。
【0027】(4)回路部品の組合わせにより、容易にネオンランプ17の放電頻度を調節できる。
【0028】(5)イオン発生源(=負イオン発生装置)からの距離を調節することにより、容易にネオンランプ17の放電頻度を調節できる。
【0029】(6)ネオンランプ17の放電頻度により、イオン発生量の相対的な比較が可能である。
【0030】(7)オシロスコープ等の測定器と併用することにより、発生イオン量の絶対値を測定することが可能である(但し、事前に校正する必要がある)。
【0031】図4は、本発明の一実施形態の第1の変形例に係るイオン検知装置の構成を等価回路で示したものである。
【0032】本変形例に係る装置は、図3と比較対照して明らかなように、ダイオード21に代えて、空気中の正イオンを検知するようアノード側端子を接地電極13側にカソード側端子を捕集電極11側にして捕集電極11と接地電極13との間に接続したダイオード23を設けた点で、上記実施形態に係る装置と相違する。その他の構成については、上記実施形態におけると同様である。
【0033】上記のような回路構成とすることにより、上述した実施形態とは逆に、捕集電極11が正イオンから正電荷を捕集したときにのみ、ネオンランプ17が放電し、空気中の正イオンの存在をユーザに報知することができる。
【0034】図5は、本発明の一実施形態の第2の変形例に係るイオン検知装置の構成を等価回路で示したものである。
【0035】本変形例に係る装置は、上述したダイオード21、23を共に捕集電極11と接地電極13との間に設けて、切替えスイッチ25によりダイオード21、23のいずれか一方が選択的に接続されるよう構成した点で上記実施形態、及び第1の変形例に係る装置と相違する。その他の構成については、上記実施形態、及び第1の変形例に係る装置におけると同様である。
【0036】上記構成において、切替えスイッチ25を図示のようにダイオード21側を接続するよう切替えると、装置は負イオンのみを検知する負イオン検知モードになり、図2及び図3の装置で説明したのと同様の原理で、捕集電極11が負イオンから負電荷を捕集したときにのみ、ネオンランプ17が放電する。一方、図示とは逆にダイオード23側を接続するよう切替えると、装置は正イオンのみを検知する正イオン検知モードになり、図4の装置で説明したのと同様の原理で、捕集電極11が正イオンから正電荷を捕集したときにのみ、ネオンランプ17が放電する。
【0037】上記構成によれば、切替えスイッチ25を操作するだけで、正イオンのみを検知する正イオン検知モード、又は、負イオンのみを検知する負イオン検知モードのいずれか一方をユーザの好みに応じて自由に選択することができる。
【0038】図6は、上述した各イオン検知装置による正イオン、及び負イオンの検出結果を示す図である。
【0039】図6において、符号(A)は、図1で示した従来の装置を用いたときの実験結果を、符号(B)は、図4で示した一実施形態の第1の変形例又は図5で示した一実施形態の第2の変形例に係る装置を正イオン検知モードに設定して用いたときの実験結果を、夫々示す。更に、符号(C)は、図3で示した一実施形態又は図5で示した一実施形態の第2の変形例に係る装置を負イオン検知モードに設定して用いたときの実験結果を示す。
【0040】図6を参照して明らかなように、従来の装置では、正イオン、及び負イオンのいずれが空気中に存在する場合でもネオンランプ17を駆動して報知動作を行う。これに対して、本発明の一実施形態に係る装置、及び負イオン検知モードに設定したときの第2変形例に係る装置では、負イオンが存在するときのみネオンランプ17を駆動して報知動作が行われることが分かる。また、第1の変形例に係る装置、及び正イオン検知モードに設定したときの第2変形例に係る装置では、正イオンが存在するときのみネオンランプ17を駆動して報知動作が行われることも分かる。
【0041】上述した内容は、あくまで本発明の一実施形態、及びその変形例に関するものであって、本発明が上記内容のみに限定されることを意味するものではない。例えば、上述した一実施形態及び各変形例では、ネオンランプ17の放電によりユーザが正負いずれかのイオンの存在を視認できるようにしているが、ネオンランプ17に代えて別の放電ランプを採用することとしても勿論差支えない。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、イオナイザから発生する正イオン若しくは負イオンを選択的に検知できるイオン検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のイオン検知装置の構成を示す等価回路図。
【図2】本発明の一実施形態に係るイオン検知装置を示す斜視図。
【図3】一実施形態に係るイオン検知装置の構成を示す等価回路図。
【図4】一実施形態の第1の変形例に係るイオン検知装置の構成を示す等価回路図。
【図5】一実施形態の第2の変形例に係るイオン検知装置の構成を示す等価回路図。
【図6】各イオン検知装置による正イオン、及び負イオンの検出結果を示す図。
【符号の説明】
10 基板
11 捕集電極
12 手
13 接地電極
15 コンデンサ
17 ネオンランプ
19 可変抵抗
21、23 ダイオード
25 切替えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 大気中のイオンの電荷を捕集するための捕集電極と、前記捕集電極に捕集される電荷を蓄積するコンデンサと、前記コンデンサに蓄積された電荷により駆動される報知手段と、前記捕集電極に捕集される電荷のうち所定の極性の電荷のみを前記コンデンサに蓄積されないよう放出する放電手段と、を備えることを特徴とするイオン検知装置。
【請求項2】 請求項1記載のイオン検知装置において、前記コンデンサと前記放電手段とは、前記捕集電極、及び前記捕集電極に対向して配置されている接地電極に夫々並列接続されていることを特徴とするイオン検知装置。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載のイオン検知装置において、前記放電手段は、前記検出すべき極性の電荷が前記コンデンサに充電されるよう、陽極側端子と陰極側端子とが前記両電極に夫々接続されるダイオードであることを特徴とするイオン検知装置。
【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれかの項記載のイオン検知装置において、前記コンデンサは、可変コンデンサであることを特徴とするイオン検知装置。
【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれかの項記載のイオン検知装置において、前記放電手段及び前記コンデンサに対して並列に可変抵抗を設けることを特徴とするイオン検知装置。
【請求項6】 請求項1乃至請求項5のいずれかの項記載のイオン検知装置において、前記報知手段は、放電灯であることを特徴とするイオン検知装置。
【請求項7】 大気中のイオンの電荷を捕集するための捕集電極と、前記捕集電極に捕集される電荷を蓄積するコンデンサと、前記コンデンサに蓄積された電荷により駆動される報知手段と、前記捕集電極に捕集される電荷のうち正電荷のみを前記コンデンサに蓄積されないよう放出する第1の放電手段と、前記捕集電極に捕集される電荷のうち負電荷のみを前記コンデンサに蓄積されないよう放出する第2の放電手段と、前記第1、第2の放電手段を選択する選択手段と、を備えることを特徴とするイオン検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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