説明

イオン発生器

【課題】共通電極と放電電極間の抵抗値を高くでき、かつ、該抵抗値のばらつきを低減できるイオン発生器を得る。
【解決手段】平面視で矩形形状をなす絶縁基板10と、該絶縁基板10上の一側縁部に長手方向に並置された複数の放電電極11と、絶縁基板10上の他側縁部に放電電極11と一定の間隔を隔てて設けられた帯状の共通電極15と、絶縁基板10上に放電電極11と共通電極15との間に両者を電気的に接続するように一体的に設けられた抵抗体20とを備えたイオン発生器。抵抗体20には複数のハニカム形状の穴21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生器、特に、絶縁基板上に並置した複数の放電電極からイオンを帯状に発生させるイオン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コピー機などの感光体を所定の電位に帯電させるイオン発生器として、感光体の全長に対応した複数の針状放電電極を設けたものが知られている。特許文献1には、絶縁基板上に複数の歯先を有する放電電極とコモン電極を一定間隔を隔てて配置し、放電電極とコモン電極とを電気的に接続する高圧抵抗膜を様々な形状にすることで、高抵抗化し、かつ、抵抗値のばらつきの減少を図るイオン発生器が記載されている。
【0003】
このイオン発生器では、抵抗膜の抵抗値を大きくするには、抵抗自体を大型化する必要があるばかりか、抵抗値のばらつきが増加する傾向にあり、高抵抗化と抵抗値のばらつきの低減がトレードオフの関係にあり、両立が困難であるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−92770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、共通電極と放電電極間の抵抗値を高くでき、かつ、該抵抗値のばらつきを低減できるイオン発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるイオン発生器は、
絶縁基板と、前記絶縁基板上に並置された複数の放電電極と、前記絶縁基板上に前記放電電極と一定の間隔を隔てて設けられた共通電極と、前記絶縁基板上に前記放電電極と前記共通電極との間に両者を電気的に接続するように一体的に設けられた抵抗体と、を備え、
前記抵抗体に複数のハニカム形状の穴が設けられていること、
を特徴とする。
【0007】
前記イオン発生器においては、絶縁基板上に放電電極と共通電極との間に両者を電気的に接続する抵抗体が一体的に設けられ、該抵抗体に複数のハニカム形状の穴が設けられているため、抵抗値が大きくなるとともに各放電電極と共通電極との間の抵抗回路部分における抵抗値のばらつきが低減される。しかも、ハニカム形状では抵抗体が全体的に線状に形成され、線幅(穴の大きさ)を変更することで抵抗値をコントロールでき、かつ、両端部の抵抗値を中央部の抵抗値と揃えることも容易である。そして、抵抗値が大きくなると、複数の放電電極の放電量が放電電極の先端近傍の空気のインピーダンスのばらつきなどに左右されなくなり、各放電電極からの放電量のばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各放電電極と共通電極との間の抵抗値を高くでき、かつ、該抵抗値のばらつきが小さくなるとともに、ひいては、各放電電極からの放電量のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例であるイオン発生器を示す断面図である。
【図2】前記イオン発生器を示す平面図である。
【図3】抵抗体の穴形状に関する電流の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るイオン発生器の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0011】
本発明の一実施例であるイオン発生器は、図1及び図2に示すように、平面視で矩形形状をなす絶縁基板10と、該絶縁基板10上の一側縁部に長辺方向に並置された複数の放電電極11と、絶縁基板10上の他側縁部に放電電極11と一定の間隔を隔てて設けられた帯状の共通電極15と、絶縁基板10上に放電電極11と共通電極15との間に両者を電気的に接続するように一体的に設けられた抵抗体20とを備えている。
【0012】
そして、抵抗体20には複数のハニカム形状の穴21が、六角形の平行な辺が互いに隣接するように複数列(本実施例では3列)に設けられている。また、ハニカム形状の穴21は、放電電極11と接続される第1列において、六角形の頂点が個々の放電電極11に対応して配置されている。
【0013】
放電電極11は、絶縁基板10上に形成された取付け用電極12と、該取付け用電極12上に固定した針状電極13とで構成されている。取付け用電極12の小突起部12aが抵抗体20の上部(ハニカム形状の上側の頂点)と重なった状態で電気的に接続されている。また、共通電極15はその小突起部15aが抵抗体20の下部(ハニカム形状の下側の頂点)と重なった状態で電気的に接続されている。なお、電気的な接続を図るための形状は前記小突起部12a,15aに限定するものではなく、任意の形状とすることができる。
【0014】
以上の構成からなるイオン発生器は、以下のようにして製造される。アルミナを主成分とする絶縁基板10の表面に、銀を主成分とする導電ペーストにて取付け用電極12及び共通電極15を形成する。電極12,15はスクリーン印刷やフォトリソグラフィなどの手法で所定の形状に形成し、焼き付けることで得ることができる。
【0015】
次に、サーメット抵抗を塗布して抵抗体20を形成する。この抵抗体20もスクリーン印刷やフォトリソグラフィなどの手法で所定の形状に形成し、焼き付けることで得ることができ、1回の印刷で済み、生産性が良好である。
【0016】
さらに、各電極12上に針状電極13を取り付ける。針状電極13の取付け方法としては、(1)溶接などで直接固定する方法、(2)図示しない基板に針状電極13を取り付け、該基板を絶縁基板10に貼り合わせ、針状電極13を電極12に電気的に接続する方法がある。それ以外の取付け方法であってもよい。針状電極13としては、ステンレス成形品のほか、ピアノ線、タングステン線、ステンレス線、チタン線などを用いることができる。
【0017】
なお、抵抗体20としては、サーメット抵抗以外に、カーボン抵抗などを用いることができる。サーメット抵抗を用いれば抵抗値を高くすることができる。抵抗体20の表面にシリコーンやガラスグレーズなどでガラスコートを施してもよい。これにて、抵抗体20の表面が汚れることを防止し、放電量のばらつきを抑制することができる。
【0018】
本イオン発生器は図示しないシールドケースに収容され、共通電極15に高電圧を印加することにより、各針状電極13の先端でコロナ放電を生じ、イオンが発生する。この場合、絶縁基板10上に放電電極11と共通電極15との間に両者を電気的に接続する抵抗体20が一体的に設けられているので、各放電電極11と共通電極15との間の抵抗値のばらつきが小さくなる。
【0019】
しかも、抵抗体20に複数のハニカム形状の穴21が形成されているため、各放電電極11と共通電極15との間の電流密度が高くなり、抵抗値が大きくなる。その結果、複数の放電電極11の放電量が放電電極11の先端近傍の空気のインピーダンスのばらつきなどに左右されなくなり、各放電電極11からの放電量のばらつきが抑えられる。
【0020】
ここで、抵抗体20に形成したハニカム形状の穴21の作用について説明する。従来、抵抗体の抵抗値は70MΩ程度であったのが、近年では500MΩまで要求されており、かつ、中央部から両端部にわたって均一な抵抗値を有することが求められている。そこで、500〜800MΩの高抵抗を確保できること、抵抗値のばらつきを低減すること、中央部から両端部にわたって均一な抵抗値を有することを目的に抵抗体20の穴形状について種々検討した結果、ハニカム形状の穴21が最適であることが判明した。
【0021】
ここで、図3(A)に示すハニカム形状の穴21と、図3(B)に示す円形状の穴22とを比較すると、円形状では穴22の中心を結ぶ線上で電流分布が最も密になり、そこから離れると疎になるので、電流分布は均一ではない。また、電流分布密度が高くなる部分の加工精度がばらつくと抵抗値に大きく影響し、負荷も集中するので特性劣化が進行しやすい。
【0022】
これに対して、ハニカム形状の穴21では、互いに平行な辺が直線的に対向しているので、電流分布が均一な部分が多くなる。これにて、抵抗体20にハニカム形状の穴21を形成すると抵抗値が大きくなり、かつ、そのばらつきが小さくなる。また、ハニカム形状の穴21では抵抗体20が全体的に線状に形成されるため、抵抗体20の材料の消費が少なくて済み、しかも、線幅を調整する(穴21の大きさを調整する)ことで抵抗値を任意に設定可能である。特に、両端部の線幅を調整することで、両端部の抵抗値を中央部の抵抗値と揃えることが容易である。
【0023】
また、ハニカム形状の穴21にあっては、放電電極11と接続される第1列において、六角形の頂点が放電電極11に対応して配置されており、各放電電極11に関して電流が独立した経路を流れることはなく、この点でも抵抗値のばらつきが低減される。
【0024】
なお、本発明に係るイオン発生器は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【0025】
特に、本発明においては、必ずしも抵抗体の全ての面に完全なハニカム形状の穴が設けられている必要はない。前記実施例に示したように、抵抗体の両端部はハニカム形状が半分だけ形成されている。両端部においては完全なハニカム形状とするよりも、むしろ半分のハニカム形状とするほうが、抵抗値のコントロールの面で好ましい。また、抵抗体が放電電極や共通電極と電気的に接続される上縁部や下縁部においてもハニカム形状が変形されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明は、イオン発生器に有用であり、特に、共通電極と放電電極間の抵抗値を高くでき、かつ、該抵抗値のばらつきを低減できる点で優れている。
【符号の説明】
【0027】
10…絶縁基板
11…放電電極
12…取付け用電極
13…針状電極
15…共通電極
20…抵抗体
21…ハニカム形状の穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に並置された複数の放電電極と、前記絶縁基板上に前記放電電極と一定の間隔を隔てて設けられた共通電極と、前記絶縁基板上に前記放電電極と前記共通電極との間に両者を電気的に接続するように一体的に設けられた抵抗体と、を備え、
前記抵抗体に複数のハニカム形状の穴が設けられていること、
を特徴とするイオン発生器。
【請求項2】
前記抵抗体は抵抗体材料を塗布した抵抗膜からなることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生器。
【請求項3】
前記複数のハニカム形状の穴は六角形の平行な辺が互いに隣接するように複数列に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン発生器。
【請求項4】
前記複数のハニカム形状の穴は、前記放電電極と接続される列において、六角形の頂点が前記放電電極に対応して配置されていることを特徴とする請求項3に記載のイオン発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−243740(P2010−243740A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91655(P2009−91655)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】