説明

イオン発生装置の検査用治具

【課題】実際にイオン発生装置を作動させた状態で検査するため、正確な検査結果が得られるものの、実際にイオン発生装置を作動させると、電極間で放電が生じることになる。この放電は、空気などの絶縁層を貫いて発生するため、例えば、気温や空気中の湿度によって絶縁層の絶縁係数が変化すると、放電の状態が変化するという不具合が生じる。放電の状態が変化すると高圧発生部の出力端子間の高電圧にも影響が及び、結果的に気温や湿度の影響が検査結果に影響する。
【解決手段】両電極に印加される高圧発生部の出力端子に当接するプローブの他に、プローブがこの出力端子に接触している状態で開口電極の開口内に挿入され、かつ針状の電極を囲繞して、両電極間での放電を阻害する絶縁体からなる筒状の放電阻害部材5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の電極間に高電圧を印加して放電させ、イオンを発生させるイオン発生装置の検査用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のイオン発生装置では、定電圧の交流電源を1次電源として、昇圧コイルで1次電源の電圧を昇圧させ、放電に必要な高電圧の交流を出力する高圧発生部を有している。そして、この高圧発生部の出力端子に上記1対の電極を接続し、両端子間で放電させてイオンを発生させている。
【0003】
高圧発生部や電極はケーシングに納められており、このようにケーシングに納められ、完成品となった状態で正常に作動するか否かを最終的に検査する必要がある。そのため、ケーシングの一部であって、上記高圧発生部の出力端子に対応する部分にプローブを挿入することのできる開口を設け、実際にイオン発生装置を作動させた状態で検査することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−242254号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のものでは実際にイオン発生装置を作動させた状態で検査するため、正確な検査結果が得られるものの、実際にイオン発生装置を作動させると、電極間で放電が生じることになる。
【0006】
この放電は、空気などの絶縁層を貫いて発生するため、例えば、気温や空気中の湿度によって絶縁層の絶縁係数が変化すると、放電の状態が変化するという不具合が生じる。
【0007】
放電の状態が変化すると高圧発生部の出力端子間の高電圧にも影響が及び、結果的に気温や湿度の影響が検査結果に影響することになる。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、気温や湿度用の外乱の影響を受けないでイオン発生装置の検査を行うことのできるイオン発生装置の検査用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置の検査用治具は、針状の電極と、この針状の電極を囲繞する開口が設けられた開口電極との間に、高電圧を印加させてイオンを発生させるイオン発生装置の、両電極に印加される電圧を測定するための検査用治具であって、両電極に印加される高圧発生部の出力端子に当接するプローブの他に、プローブがこの出力端子に接触している状態で開口電極の開口内に挿入され、かつ針状の電極を囲繞して、両電極間での放電を阻害する絶縁体からなる筒状の放電阻害部材を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成では放電阻害部材が針状の電極を囲繞して両電極間に高電圧が印加されても放電が生じないようにできる。この状態で高圧発生部の出力端子の電圧を測定すれば、気温や湿度といった外乱の影響が排除される。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、高圧発生部の端子間に電圧を測定する際に外乱の影響を排除することができるので、検査結果に外乱の影響が及ばず、安定した検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】放電阻害部材の装着状態を示す図
【図3】放電阻害部材の他の形状を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2を参照して、1は本発明を用いての検査対象であるイオン発生装置である。このイオン発生装置1は樹脂製のケーシング11で覆われている。ケーシング11の上面には4個の開口部12が設けられており、開口部12の中心には針状の電極21が配設されている。また、ケーシング11の内側には開口部12と同心の開口22であって、電極21を囲繞する開口22が設けられた板状の開口電極23が設けられている。
【0014】
ケーシング11に着脱自在に取り付けられたリード線3から低電圧の電力が供給されると、ケーシング11内に配置された図示しない高圧発生部が高電圧の交流電力を出力し、その高圧電力が両電極21,23に印加される。すると、両電極21,23間で放電が生じ、イオンが発生する。その発生したイオンは開口部12から外部へと放出される。
【0015】
ケーシング11には高圧発生部の出力端子の位置に対応して1対の開口13が設けられている。このイオン発生装置1を最終的に検査する際にはリード線3から電力を供給して実際にイオン発生装置1を作動させた状態で行う。すなわち、イオン発生装置1が棹津している状態で開口13から1対のプローブ41を挿入して高圧発生部から出力されている高圧の交流電力の電圧等を検査する。
【0016】
このプローブ41は検査用治具4に取り付けられており、検査用治具4をイオン発生装置1の上方から降ろすことによりプローブ41が開口13内に挿入されるように構成されている。
【0017】
また、この検査用治具4には絶縁性セラミック製の筒状の放電阻害部材5が各電極21に対応して設けられている。上述のように、検査用治具4を降ろすと、プローブ41が開口13に挿入され、高圧発生部の出力端子に当接するが、その状態で、放電阻害部材5は、図2に示すように、電極21を囲繞して、電極23と電極21との間を遮断する。なお、放電阻害部材5は絶縁性の材料であればセラミックに限らず、例えばプラスチック等の樹脂で形成してもよい。また、上下の貫通している必要は必ずしも無く、図3に示すように、電極21を覆う部分のみ筒状に形成してもよい。
【0018】
放電阻害部材5は絶縁性を有しているので、電極21,23間の放電経路が遮断され、両電極間に放電が生じなくなる。この状態であってもリード線3から電力が供給されると高圧発生部は高電圧を発生させるので、その発生した電圧等をプローブ41を介して測定することができる。
【0019】
このように、高圧発生部の出力電圧等を測定する際に放電が生じないので、気温や湿度によって放電条件が変化しても測定結果にそれらの外乱要素が影響するとこがない。
【0020】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0021】
1 イオン発生装置
4 検査用治具
5 放電阻害部材
11 ケーシング
21 電極
23 開口電極
41 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状の電極と、この針状の電極を囲繞する開口が設けられた開口電極との間に、高電圧を印加させてイオンを発生させるイオン発生装置の、両電極に印加される電圧を測定するための検査用治具であって、両電極に印加される高圧発生部の出力端子に当接するプローブの他に、プローブがこの出力端子に接触している状態で開口電極の開口内に挿入され、かつ針状の電極を囲繞して、両電極間での放電を阻害する絶縁体からなる筒状の放電阻害部材を備えたことを特徴とするイオン発生装置の検査用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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