説明

イオン量測定装置、イオン量測定方法及びイオン発生装置

【課題】イオン量測定期間のイオン濃度の急激な変化による影響を減少させ、イオンの量を高精度に測定することが可能なイオン量測定装置、イオン量測定方法及びイオン発生装置を提供する。
【解決手段】空気中のイオンを収集するイオン収集手段と、コンデンサを含み、イオン収集手段の電位を計測する積分回路と、所定の時間ごとにコンデンサを放電し、積分回路による計測を再開する制御部とを有し、積分回路による計測結果に基づいてイオンの量を測定するイオン量測定装置において、制御部は、所定の時間を計測周期として、該計測周期が終了した時点で積分回路を計測開始の状態にリセットし、計測を再開し、前記計測周期内に計測部により計測された電圧が所定の電圧になった場合に、積分回路による計測を中止させるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中のイオンの量を測定するイオン量測定装置及びイオン量測定方法、並びにこのイオン量測定装置を搭載したイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスイオン及びマイナスイオンを発生して、このイオンを含む空気を送出し、イオンが送出された空間の空気中に浮遊する微粒子及び細菌等の浮遊物を除去して空気を浄化するイオン発生装置が実用化されている。イオン発生装置は、誘電体を介して対向する二つの電極を有しており、数kVの電圧を発生する高電圧発生回路からの電圧を二つの電極間に印加することで電極間に放電プラズマを生じさせ、空気中にプラスイオンであるH+ (H2 O)m (mは自然数)、及びマイナスイオンであるO2-(H2 O)n (nは自然数)を略同量発生させるようにしてある。
【0003】
発生するプラスイオン及びマイナスイオンは、空気中の水蒸気を放電プラズマによりイオン化することで生成されるものであり、水素イオン(H+ )又は酸素イオン(O2-)の周囲に複数の水分子が付随した形態、所謂クラスターイオンの形態をなしている。空気中に放出されたこれらのイオンは、浮遊微粒子又は浮遊細菌と化学反応し、活性物質としての過酸化水素水H2 2 又は水酸基ラジカル・OHとなり、浮遊微粒子又は浮遊細菌から水素を抜き取る酸化反応を行うことで、浮遊微粒子を不活性化し、又は浮遊細菌を殺菌して、空気を清浄にすることができる。
【0004】
しかし、イオン発生装置が発生するプラスイオン及びマイナスイオンは無色透明且つ無味無臭であるため、空気中のプラスイオン及びマイナスイオンが所望の数量又は濃度等(以降の説明において、「イオンの量」と言う)に達したか否かをユーザが確認することは困難である。よって、空気中に含まれるプラスイオン及びマイナスイオンの量を測定してユーザに提示するイオン量測定装置を、イオン発生装置に搭載することが望ましい。
【0005】
特許文献1においては、プラスイオンとマイナスイオンとの両方を測定するイオン測定器が開示されている。このイオン測定器は、電荷反発板に一定の電圧を印加し、電荷反発板に反発されたプラスイオン又はマイナスイオンを電荷集電板で収集し、電荷集電板の電荷を測定し、プラス若しくはマイナスのイオン数量として演算処理することで、電荷集電板における電荷からプラスイオンの数量とマイナスイオンの数量とを自動的に算出する。
【0006】
電荷集電板の電荷の測定には、超高抵抗を用いた微弱電流増幅回路又はコンデンサチャージの積分回路を有する計測部がよく使われている。積分回路を使用して電荷集電板の電荷を測定する場合、積分回路の入力端子を保護するために、電荷集電板と積分回路の入力端子との間に保護回路を設けることは通常である。図10は従来の計測部130の保護回路の構成例を示す回路図である。計測部130には、電圧+5VとGNDとの間に静電気保護用のダイオード134、135が接続してあり、電荷集電板の出力側がダイオード134、135の間に接続し、さらに積分回路のオペアンプの入力端子に接続してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−14694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記計測部130では、イオン濃度が急激に上昇した場合、積分回路が瞬時に積分飽和してしまい、この状態を続けると入力端子の同相モードレベルがGNDレベルを下回って、保護用のダイオードが導通されるおそれがある。よって、積分回路により計測される電圧の波形が破綻となり、積分回路が正常に動作することはできない。つまり、従来の積分回路には、イオン濃度の急激な変化によりイオンの量の測定の精度に大きな影響を与え、イオンの量の測定が不正確になるという課題があった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イオン量測定期間のイオン濃度の急激な変化による影響を減少させ、イオンの量を高精度に測定することが可能なイオン量測定装置、イオン量測定方法及びイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るイオン量測定装置は、空気中のイオンを収集するイオン収集手段と、コンデンサを含み、前記イオン収集手段の電位を計測する積分回路と、所定の時間ごとに前記コンデンサを放電し、前記積分回路による計測を再開する制御手段とを有し、前記積分回路による計測結果に基づいてイオンの量を測定するイオン量測定装置において、前記制御手段は、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった場合に、前記積分回路による計測を中止させるようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、イオン収集手段は空気中のイオンを収集する。積分回路はコンデンサを含み、前記イオン収集手段の電位を計測する。イオン量測定装置は積分回路による電位の計測結果に基づいてイオンの量を測定する。制御手段は、所定の時間ごとに前記コンデンサを放電し、前記積分回路による計測を再開し、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった場合に、前記積分回路による計測を中止させる。
【0012】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記制御手段は、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった時点で、前記コンデンサを放電させるようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、制御手段は、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった時点で、前記コンデンサを放電させる。
【0014】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記制御手段は、前記積分回路による計測結果に基づいて、前記所定の時間を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、制御手段は、前記積分回路による計測結果に基づいて、前記所定の時間を調整する。
【0016】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記コンデンサは容量可変のコンデンサであり、前記制御手段は、前記積分回路による計測結果に基づいて、前記コンデンサの容量を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、コンデンサは容量可変のコンデンサであり、制御手段は、積分回路による計測結果に基づいて、コンデンサの容量を調整する。
【0018】
本発明に係るイオン発生装置は、イオンを発生するイオン発生手段と、前記イオン量測定装置とを有し、前記イオン発生手段が発生したイオンの量を前記イオン量測定装置により測定するようにしてある。
【0019】
本発明においては、イオン発生装置は、イオンを発生するイオン発生手段と、前記イオン量測定装置とを有し、イオン発生手段が発生したイオンの量を前記イオン量測定装置により測定する。
【0020】
本発明に係るイオン量測定方法は、イオン収集手段にて空気中のイオンを収集し、コンデンサを含む積分回路にて該イオン収集手段の電位を計測し、所定の時間ごとに前記コンデンサを放電し、前記積分回路による計測を再開し、前記積分回路による計測結果に基づいてイオンの量を測定するイオン量測定方法において、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった場合に、前記積分回路による計測を中止させることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、イオン収集手段にて空気中のイオンを収集する。コンデンサを含む積分回路にてイオン収集手段の電位を計測する。積分回路による計測結果に基づいてイオンの量を測定する。所定の時間ごとに前記コンデンサを放電し、前記積分回路による計測を再開し、積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった場合に、前記積分回路による計測を中止させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、積分回路により計測された電位が所定の電位以上になった場合に、積分回路による計測を中止することにより、イオン濃度が急激に上昇した場合でも、積分回路が正常に動作することができる。よって、イオン濃度の急激な変化による影響を減少させ、高精度にイオンの量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るイオン量測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る計測部の積分回路の構成例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る制御部の要部構成を示すブロック図である。
【図5】制御部のスイッチ制御動作の手順を示すフローチャートである。
【図6】計測部により計測された電圧の波形を示す概念図である
【図7】計測周期を調整する前後の電圧の波形を示す図である。
【図8】コンデンサの容量を調整する前後の電圧の波形を示す図である。
【図9】計測部により計測された電圧の波形の例を示す図である。
【図10】従来の計測部の保護回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0025】
(実施の形態)
図1は、本発明に係るイオン発生装置1の構成を示すブロック図である。同図において、イオン発生装置1はイオンを発生して空気中に送出するものであり、商用交流電源50からの電力供給により動作するようにしてある。イオン発生装置1は、商用交流電源50から供給される交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換回路2と、AC/DC変換回路2が出力する直流電圧を昇圧して高電圧を発生する高電圧発生回路3と、高電圧発生回路3が出力する高電圧が印加されてイオンを発生するイオン発生素子4と、イオン発生素子4にて発生したイオンを送出するファン5と、イオン発生素子4にて発生したイオンの量を測定するイオン量測定装置10とを備えている。
【0026】
AC/DC変換回路2は、例えばダイオード及びコンデンサを有し、ダイオードの整流特性を利用して交流電圧を整流し、整流した電圧をコンデンサにより平滑化することで、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。
【0027】
高電圧発生回路3は、例えばトランス及びスイッチング素子を有し、AC/DC変換回路2から与えられる直流電圧のトランスへの供給をスイッチング素子にてオン/オフし、トランスを構成する複数の巻線の巻き数の比に応じて昇圧された高電圧をイオン発生素子4へ供給するようにしてある。このとき、スイッチング素子のオン/オフの周期を調整することで発生する電圧の大きさを調整することができる。
【0028】
イオン発生素子4は、誘電体を介して対向する2つの電極を有しており、高電圧発生回路3からの高電圧が2つの電極間に印加された場合、2つの電極間に放電プラズマが生じ、この放電プラズマのエネルギーにより電極近傍の空気中に含まれる水蒸気がイオン化されて、空気中にプラスイオンであるH+ (H2 O)m (mは自然数)、及びマイナスイオンであるO2-(H2 O)n (nは自然数)を略同量発生させる。
【0029】
ファン5は空気の流れを生じるためのものである。図1には、ファン5にて生じる空気の流れが白抜きの矢印にて図示してある。空気の流れによって、イオン発生素子4にて発生したイオンは、イオン発生装置1の内部から外部へ送出され、イオン発生装置1が設置された室内に拡散するようにしてある。
【0030】
イオン量測定装置10は、ファン5にて生じる空気の流れる方向に関してイオン発生素子4より下流側に設けてある。イオン発生装置1は、イオン量測定装置10にて測定したイオンの量を、図示しない表示装置等にてユーザに提示したり、図示しない制御部等にフィードバックしてイオンの発生量を制御したりするようにしてある。
【0031】
次に、本発明に係るイオン量測定装置10を図面に基づいて具体的に説明する。
【0032】
図2は、本発明に係るイオン量測定装置10の要部構成を示すブロック図である。イオン量測定装置10は、反発電極121及び集電電極122にて空気中のイオンの電荷を収集する集電部12と、集電電極122の電位を計測する計測部13と、計測部13にて計測したアナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換部14と、A/D変換部14により出力されるデジタルの電圧に基づいて計測部13の計測動作を制御する制御部15と、A/D変換部14により出力されるデジタルの電圧に基づいてイオンの量を算出する算出部16と、算出したイオンの量を表示する表示部17とを有する。
【0033】
集電部12は、空気中のマイナスイオンを反発させる反発電極121と、反発されたイオンを収集する集電電極122とを有し、反発電極121及び集電電極122は、例えば、一定の間隔で相対して配置されている板状の電極であり、ファン5から流れる空気に接触しやすい位置に配設してある。反発電極121と集電電極122との形状については、特に限定せず、集電電極122を平板状、筒状、又は線状に設計し、反発電極121を集電電極122を取り囲む筒状に設計してもよい。また、反発電極121を設置しない場合もあり、設置スペース等の状況により使い分ける。
【0034】
反発電極121は、測定すべきイオンの種類に応じて、図示しない給電部によって正電位/負電位が印加される。本実施の形態では、反発電極121には負電位が印加されているため、反発電極121と集電電極122との間に存在しているマイナスイオンは、反発電極121で跳ね返されて集電電極122にぶつかって収集される。
【0035】
計測部13は、積分回路13a(図3を参照)を有し、集電部12の集電電極122に接続されており、集電電極122の電位を計測して電圧信号として出力するようにしてある。図3は本発明に係る計測部13の積分回路13aの構成例を示す回路図である。図3に示すように、計測部13は、破線に囲まれている積分回路13aを用いて集電電極122の電位を計測するようにしてある。集電電極122の電位は、例えば接地電位に対する電圧値として計測される。図3において、説明の便宜上、計測部13の保護回路等を省略し、オペアンプの接続を簡素化して記載しており、差動増幅回路を用いる場合もある。
【0036】
積分回路13aはオペアンプ131と、容量可変のコンデンサ132と、スイッチ133とを含んでいる。オペアンプ131は、反転入力端子が集電電極122に接続するとともにコンデンサ132を介して出力端子に接続し、非反転入力端子が接地してある。スイッチ133はコンデンサ132に並列に接続してある。
【0037】
イオンの量を測定する場合、スイッチ133がオフとされ、集電電極122に収集されたマイナスイオンの電荷がコンデンサ132蓄積される。収集されたイオンの量に比例したアナログの電圧信号がオペアンプ131の出力端子から出力され、一定の時間を経て、スイッチ133がオンとされ、コンデンサ132に蓄積している電荷が放電され、1周期の計測が終わり、次の計測周期に入る。イオン量測定装置10では、後述する算出部16にて、計測部13による電位計測結果に基づいて、イオンの量を算出する。ここで、電位計測は複数の周期分の計測を実施してその平均値を取ることが好ましい。
【0038】
A/D変換部14は、計測部13に接続されており、計測部13から出力されるアナログの電圧をデジタルの電圧に変換するようにしてある。A/D変換部14により出力されるデジタルの電圧が制御部15と算出部16とに入力される。
【0039】
制御部15は、入力側がA/D変換部14に、出力側が計測部13に接続されており、計測部13におけるスイッチ133のオン/オフ、コンデンサ132の容量の調整及び計測周期の調整などを制御するようにしてある。図4は本発明に係る制御部15の要部構成を示すブロック図である。図4に示すように、制御部15は、CPU150と、タイマ151と、電圧監視部152と、スイッチ通断部153と、周期調整部154と、容量調整部155とを有する。
【0040】
CPU150は、バスNを介して制御部15全体の動作の制御を行うものである。タイマ151は、計測部13の計測時間を計時するものである。電圧監視部152は、A/D変換部14からのデジタルの電圧を監視するものであり、該デジタルの電圧を所定の電圧と比較し、該デジタルの電圧が所定の電圧以上になった場合、その旨をCPU150に通知するようにしてある。ここで、所定の電圧は、必要に応じて設定するものであり、本実施の形態では、所定の電圧が積分回路13aの飽和電圧とされる場合について説明する。スイッチ通断部153は、CPU150の指示に応じて、計測部13におけるスイッチ133をオン/オフとするものである。
【0041】
図5は制御部15のスイッチ制御動作の手順を示すフローチャートである。ここでは、計測周期が1秒、積分回路の飽和電圧が5Vである場合を例として説明する。図5に示すように、積分回路13aにおけるスイッチ133がオフとされ、積分回路が計測開始の状態になると、CPU150はタイマ151に計時を開始させる(ステップS41)。
【0042】
CPU150は、A/D変換部14からの電圧が5V以上となったか否かを電圧監視部152での監視結果に基づいて判定する(ステップS42)。A/D変換部14からの電圧が5V以上となっていないと判定した場合(ステップS42:NO)、CPU150は処理をステップS44に進める。A/D変換部14からの電圧が5V以上となったと判定した場合(ステップS42:YES)、CPU150はスイッチ通断部153にスイッチオンを指示する。スイッチ通断部153はCPU150の指示に応じて、計測部13のスイッチ133をオンとして、計測動作を中止させる(ステップS43)。
【0043】
CPU150はタイマ151にて計時される時間が1秒に達したか否かを判定する(ステップS44)。計時される時間が1秒に達していないと判定した場合(ステップS44:NO)、CPU150は処理をステップS46に進める。CPU150は、計時される時間が1秒に達したと判定した場合(ステップS44:YES)、スイッチ通断部153に積分回路のリセットを指示する。スイッチ通断部153はCPU150の指示に応じて、スイッチ133のオン/オフを制御して、積分回路13aを計測開始の状態にリセットし、計測を再開する(ステップS45)。ここで、スイッチ133のオン/オフの制御は、積分回路13aを計測開始の状態にリセットする制御であれば、特に限定しない。例えば、スイッチ通断部153は、スイッチ133がオンとされている場合、スイッチ133をオフとさせ、スイッチ133がオフとされている場合、スイッチ133をオンとさせてからオフとさせることにより、積分回路13aを計測開始の状態にリセットし、電位計測を再開する。
【0044】
CPU150は、停止指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS46)。停止指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS46:NO)、処理をステップS42に戻す。停止指示を受け付けたと判定した場合(ステップS46:YES)、CPU150は処理を終了する。
【0045】
図6は計測部13により計測された電圧の波形を示す概念図である。図6において、実線で本発明の制御部15のスイッチ制御動作における電圧の波形を示し、破線で従来のスイッチ制御機能無しの計測部による電圧の波形を示している。また、図6の上部のT1〜T6で、計測周期が終了した場合に積分回路13aをリセットする時点を示し、下部のt1〜t6で、各計測周期内に電圧が所定の電圧になった場合にスイッチ133をオンとさせる時点を示している。図6に示すように、従来の計測部では、時点T4より、イオン濃度が急激に上昇し、積分回路13aが積分飽和した後も、イオンが当て続けられるため、破綻の波形となり、これ以降の各周期において、積分回路13aはリセットされるまでに、正常な動作を行うことができない。一方で、本実施の形態に係る計測部13では、各計測周期において、電圧が5Vになった時点t1〜t6で、スイッチ133がオンとされ、コンデンサ132に蓄積されている電荷が放電され、計測部13の計測動作が中止される。該計測周期が終了した時点T1〜T6で、スイッチ133がオフとされ、積分回路13aがリセットされ、次の周期の計測動作が開始する。よって、計測部13により計測される電圧の波形は破綻することがなく、計測部13は正常に動作することができる。
【0046】
周期調整部154は、計測部13により計測された電圧に基づいて、計測周期を調整するようにしてある。図7は計測周期を調整する前後の電圧の波形を示す図である。図7において、左側は調整前の、計測周期が1秒とされる場合の電圧の波形を示しており、右側は調整後の、計測周期が1.7秒と調整される場合の電圧の波形を示している。図7に示すように、調整前には、電圧のダイナミックレンジがフルに使えないので、誤差を生じるおそれがあるが、調整後には、電圧のダイナミックレンジがフルに使えて、誤差の影響が少なくなる。従って、精度よく電位を計測することができる。
【0047】
容量調整部155は、計測部13により計測された電圧に基づいて、コンデンサ132の容量を調整するようにしてある。図8はコンデンサ132の容量を調整する前後の電圧の波形を示す図である。図8において、左側は調整前の、コンデンサ132の容量が33pFとされる場合の電圧の波形を示しており、右側は調整後の、コンデンサ132の容量を10pFと調整される場合の電圧の波形を示している。図8に示すように、コンデンサ132の容量が下がると、計測部13の感度が高まるため、電圧のダイナミックレンジがフルに使えるようにする。従って、精度よく電位を計測することができる。
【0048】
ここで、周期調整部154及び容量調整部155を組み合わせて使用することが好ましい。また、周期調整部154及び容量調整部155は、電圧監視部152が動作する期間に調整を行わず、予め計測部13により計測された電圧に基づいて計測周期及び/又はコンデンサの容量を調整し、適当な計測部13のパラメータを設定しておくことが好ましい。例えば、計測部13により計測された電圧に基づいてイオン濃度を求め、該イオン濃度が高い場合、コンデンサの容量を増やしたり、計測周期を短くしたりし、イオン濃度が低い場合は逆にすることにより、適当な計測周期及び/又はコンデンサの容量を設定しておき、計測部13はこのように設定されるパラメータで複数回計測する。
【0049】
算出部16は、A/D変換部14からのデジタルの電圧に基づいて、イオンの量を算出するようにしてある。図9は計測部13により計測された電圧の波形の例を示す図である。図9において、TA、TBは夫々同一周期における二つの時点であり、VA、VBは夫々時点TA、TBで計測された電圧である。算出部16は、下記の数式(1)、(2)から、イオンの量を算出することができる。
VB−VA=I×(TB−TA)/C (1)
I=1.6×10-19 ×n (2)
ここで、Cはコンデンサ132の容量であり、Iは集電部12からの電流値であり、nはイオンの数量である。なお、誤差による影響を減少させるために、TA、TBは波形の直線的に変化する部分に対応する時点が好ましい。
【0050】
表示部17は、イオン量測定装置10の外面に装着されており、算出部16にて算出したイオンの量を数字、風景などで表示するようにしてある。
【0051】
本発明では、制御部15は計測部13により計測された電圧を監視し、該電圧に基づいて積分回路13aのコンデンサ132と並列に接続されているスイッチ133の通断を制御するようにしてある。これにより、積分回路13aが積分飽和になると、コンデンサ132への充電が中止されるため、積分飽和の状態が長い時間継続することなく、保護用のダイオードが導通されるおそれがない。よって、計測部13により計測される電圧の波形が破綻することなく、計測部13を正常に動作させることができる。
【0052】
また、本発明では、制御部15は計測部13により計測された電圧に基づいて、積分回路13aでの計測周期又はコンデンサ132の容量を調整するようにしてある。これにより、使用環境に応じて計測部13のパラメータを調整して、イオン量測定装置10はイオンの量を一層正確に測定することができる。
【0053】
以上、イオン発生装置1に内蔵されたイオン量測定装置10について説明したが、イオン量測定装置10はイオン発生装置1と別になる装置であってもよい。
【0054】
また、マイナスイオンの量を測定する場合を例として説明したが、例えばH+ (H2 O)m(mは任意の自然数)等のプラスイオンでは、必要に応じて集電部12の反発電極121に印加する電圧の極性等を変更すれば、同様の説明が成立する。
【0055】
また、計測部13の計測動作を中止する手段として、コンデンサ132と並列に接続されているスイッチ133をオンとさせてコンデンサ132を放電させる例を挙げたが、これに限らず、計測部13(積分回路13a)と集電部12との接続を遮断するようにしてもよい。
【0056】
要するに、本実施の形態は例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 イオン発生装置
2 AC/DC変換回路
3 高電圧発生回路
4 イオン発生素子
5 ファン
10 イオン量測定装置
12 集電部
121 反発電極
122 集電電極
13 計測部
13a 積分回路
14 A/D変換部
131 オペアンプ
132 コンデンサ
133 スイッチ
134、135 ダイオード
15 制御部
16 算出部
17 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中のイオンを収集するイオン収集手段と、コンデンサを含み、前記イオン収集手段の電位を計測する積分回路と、所定の時間ごとに前記コンデンサを放電し、前記積分回路による計測を再開する制御手段とを有し、前記積分回路による計測結果に基づいてイオンの量を測定するイオン量測定装置において、
前記制御手段は、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった場合に、前記積分回路による計測を中止させるようにしてあることを特徴とするイオン量測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった時点で、前記コンデンサを放電させるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載のイオン量測定装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記積分回路による計測結果に基づいて、前記所定の時間を調整するようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン量測定装置。
【請求項4】
前記コンデンサは容量可変のコンデンサであり、
前記制御手段は、前記積分回路による計測結果に基づいて、前記コンデンサの容量を調整するようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン量測定装置。
【請求項5】
イオンを発生するイオン発生手段と、
請求項1から請求項4の何れか一つに記載のイオン量測定装置と
を有し、
前記イオン発生手段が発生したイオンの量を前記イオン量測定装置により測定するようにしてあることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項6】
イオン収集手段にて空気中のイオンを収集し、コンデンサを含む積分回路にて該イオン収集手段の電位を計測し、所定の時間ごとに前記コンデンサを放電し、前記積分回路による計測を再開し、前記積分回路による計測結果に基づいてイオンの量を測定するイオン量測定方法において、
前記積分回路により計測された電位が所定の電位以上となった場合に、前記積分回路による計測を中止させることを特徴とするイオン量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−242220(P2012−242220A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111700(P2011−111700)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】