説明

イケール

【課題】 軽量性、作業時の安全性を保持するための電気絶縁性、及び使用後の資源としての活用を考慮したリサイクル性等の優れた機能を有するイケールを提供することを課題とする。
【解決手段】 イケール1は、工作機械のパレット等のパレット面(図示しない)に基台当接面4を当接させ、固定するための基台固定部10を有する長方形の板状の基台部6と、該基台部6から垂設された垂体部7と、互いに直交する基台部6及び垂体部7の間を連結する直角三角形状の三角リブ8とを具備して主に構成されている。そして、係るイケール1は、液晶ポリマー樹脂3を射出成型することにより一体化して構成されているため、軽量化、絶縁性、及びリサイクル性に優れたものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イケールに関するものであり、特に、L字形状を呈し、自動車部品等の各種ワークを加工するための工作機械のパレットまたはテーブルに複数設置されるイケールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種工作機械を用いて自動車等を製造する製造工場において、加工対象となるワークを工作機械のパレットやテーブル上に支持したり、さらに該ワークを加工するための溶接や切断用の治具を支持するための「イケール」と呼ばれる硬質性の部材が用いられている。イケールは、その一般的な構成として、基台部及び垂体部の二つの構成に大別することができ、基台部は、水平に保たれたパレット面またはテーブル面に当接する基台当接面を有し、基台固定部に設けられた複数の基台固定孔及びパレット等に穿設された固定孔の位置をそれぞれ合致させ、該基台固定孔に挿通可能なボルト軸を有する固定用ボルト及び固定用ボルトと螺合可能なナット等の固定具を利用して水平状態を保持した状態にパレット等に強固に固定される。一方、パレット等に固定された基台の一端部から垂設された垂体部は、その先端近傍にワークを加工するための治具などの作業用ユニットを同じく固定用ボルト及びナットを利用して着脱自在に取設可能なユニット取設部を有している。
【0003】
そして、パレットに固定されたイケールは、ワークの加工時において治具による加工精度を安定させるために、基台部及び垂体部の変形や歪みがない性能が求められている。そのため、ワークや作業用ユニット自体の重み(荷重)に耐えうることができ、さらに作業用ユニットを構成する治具の動き(重心変化等)に対しても上述した変形、捻れ、歪み等が発生することがないような硬質の素材のものが使用されている。例えば、一例を挙げると、鉄、アルミニウム、鋳物等の主に金属材料が利用されていることが多い。
【0004】
以上の従来技術は、当業者として当然に実施されているものであり、本願出願人は、係る従来技術が記載された文献等を本願出願において特に知見するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した金属材料から作られたイケールは、その使用において下記に掲げる問題を生じることがあった。すなわち、これらのイケールは、金属製のため重かった。ここで、加工対象となるワーク種を変更する場合、工作機械に取設されたイケールのレイアウトを変更したり、イケールのサイズ或いは本数の交換などの作業を行う必要があった。そのため、イケールが重量物であることは、上述の交換作業を行う作業者にとって多くの負担となっていた。すなわち、パレット近傍まで交換するイケールを運搬する作業やパレットから取外されたイケールを保管場所まで移送する作業、或いはパレットへイケールを固定する際の位置調整などに多くの時間と労力が必要となり、多品種少量生産のワークを加工する工場等では、これらの作業を頻繁に行う必要があった。そのため、ワーク加工の作業効率及び作業者の作業性が極端に低下する可能性があった。
【0006】
さらに、金属材料からなるイケールは、その素材の性質上、高導電性を有していた。そのため、溶接作業などワークに対して電気的処理を施す場合があった。このとき、イケールが導電性材料によって形成されていることによる漏電や作業者の感電の危険性を回避するために、イケールを絶縁化する必要があった。係る場合、一般にイケールの表面全体を、絶縁性物質を含んだコーティング材料で被覆する処理が行われることがあり、その作業及び使用するコーティング材料のコストなどが多く必要となる場合があった。
【0007】
加えて、金属材料からなるイケールは、主にダイカスト鋳造や重力鋳造などの一般的な鋳造技術を用いて製作されることが多かった。この場合、高温で金属を溶解した液状の溶湯を、イケールの型内に流し込み、高温の溶湯を冷却し、固体化することが行われている。この場合、金属を溶解させるためには、アルミニウム等の比較的融点の低い金属であっても、およそ700℃以上の高温が要求されることがあり、金属の種類や性状によっては、1000℃から1500℃以上のより高温で加熱溶解させる必要があった。そのため、一度、鋳造されたイケールは、再利用をする場合、上述したような超高温で再び加熱する必要があり、それには高度な処理技術及び加熱処理用の設備が求められていた。そのため、製作されたイケールを再び溶解し、金属材料の原料として用いることは、再利用性(リサイクル性)の点で著しく劣る点があり、使用済みのイケールが野積みされて放置されたりするなど、資源の有効活用の点から再利用(リサイクル)の容易なイケールが求められていた。また、溶湯の型への充填特性によって、鋳造可能なイケールの形状が制限されることがあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、ワーク加工の作業効率を向上するためにイケール全体の重量の軽量化を図り、さらに作業時の安全性を保持するための電気絶縁性、及び使用済みのイケールの資源としての有効活用を図ることの可能なリサイクル性に優れた機能を有するイケールの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるイケールは、「ワークを加工するための工作機械のパレット若しくはテーブルの装着面に基台固定部を介して固定される基台部と、前記基台部からの一端部から垂設され、前記ワークを加工するための治具を含む作業用ユニットをユニット取設部を介して着脱自在に取設可能な垂体部とを具備するL字形状を呈するイケールであって、前記基台部及び前記垂体部は、高強度性を有する液晶ポリマー樹脂及び繊維強化プラスチック樹脂のいずれか一方を原材料として使用し、一体成型によって形成される」ものから主に構成されている。
【0010】
ここで、液晶ポリマー樹脂とは、飽和ポリエステルを主体として構成され、アラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)に代表的に示されるように溶液状態において、液晶性を示す溶液型液晶と、芳香族ポリエステルに代表的に示されるように溶融状態で液晶性を示す溶液型液晶の二種類に大別することができる所謂「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」と呼ばれる高機能性材料の一種である。係る液晶ポリマー樹脂は、液晶状態による異方性は大きいものの、高強度・高弾性率に優れ、さらに成型後の収縮性が小さいため精密成型に適する寸法安定性、耐薬品性、耐熱性、及び難燃性等の種々の優れた特性を有することが知られている。
【0011】
一方、繊維強化プラスチック樹脂(FRP)とは、樹脂中に繊維を混在させ、主に力学的特性を強化したものであり、一般には不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びケイ素樹脂などをマトリックス(母材)とし、混在する繊維には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、硼素繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などを利用することができる。なお、混在させる繊維の配向性を整えることにより、特定方向に優れた力学的特性を有する高機能材料を構成することができる。
【0012】
したがって、本発明のイケールによれば、基台部及び垂体部から構成されるL字形状のイケールであって、液晶ポリマー樹脂または繊維強化プラスチック樹脂を材料として一体成型されている。これらの樹脂は、高強度性を有するエンジニアリングプラスチック(またはスーパーエンジニアリングプラスチック)と呼ばれる高機能性材料の一種であり、従来のアルミニウムを用いた金属材料に匹敵する強度を付与することが可能となる。特に、射出成型時に液晶ポリマーの配向性を一致させる或いは繊維強化プラスチック樹脂の繊維方向を一致させることにより、特異方向に力学的特性を強化した樹脂材料とすることができる。なお、係る配向性または繊維方向を一致させるために、原材料となる樹脂材料を射出成型する際の射出条件及び冷却条件は、特に重要となる。例えば、イケール型に樹脂材料を注入する射出時間を射出開始から完了までに要する時間を7s以上、12s以下に設定し、その後、140s以上、160s以下の冷却時間を与え、型から取出すことにより、力学的特性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0013】
その結果、アルミニウムや鉄等の金属材料を使用する既存のイケールに匹敵する強度等の力学的特性を有するとともに、樹脂材料の使用によるイケール全体の軽量化を図ることが可能となる。例えば、アルミニウム製のイケールに対し、液晶ポリマー樹脂を用いた場合、同一サイズで重量を約1/2にすることが可能となる。
【0014】
さらに、これらの樹脂は、高分子材料の一種であり、一般的な特性として導電性がほとんどない。そのため、これらの樹脂材料によって製作されたイケールに対し、通電したとしても電気絶縁性により電気が流れることがなく、ワークの溶接加工時などの感電や漏電の可能性のある作業であっても、従来のようにイケールの表面全体を絶縁材料によってコーティングするなどの絶縁処理が不要となる。
【0015】
また、液晶ポリマー樹脂の場合、使用済みのイケールを粉砕処理し、ペレットにすることによって、再び原材料として使用することが可能となる。なお、一般的な射出成型の温度条件は、300℃〜400℃の範囲で設定することが可能である。さらに、リサイクル回数による力学的特性(引っ張り強度、曲げ強度、曲げ弾性率、Izod衝撃値等)の変化もリサイクル前の値に対し、約80%を保つことが確認されている。
【0016】
さらに、本発明にかかるイケールは、上記構成に加え、「前記基台部及び前記垂体部の少なくともいずれか一方は、鉛直方向に沿って配される複数の縦リブ及び水平方向に沿って配される複数の横リブが交叉して形成されたリブ構造体によって構築される」ものであっても構わない。
【0017】
したがって、本発明のイケールによれば、基台部及び垂体部の一部を刳抜いて形成したような所謂「リブ構造体」によって構築されている。すなわち、イケールの原材料として樹脂材料を用いることにより、係るリブ構造体を構築可能な射出成型を行うことが可能となり、また鉛直方向及び水平方向に沿ってそれぞれ配された縦リブ及び横リブの交叉によって、それぞれの方向に加えられる荷重に対して十分な抗力を発することが可能となる。その結果、基台部及び垂体部自体の重量をさらに軽量化することが可能となるとともに、荷重に対する歪みや捻れ等の変形に対する強度が低下することがない。そのため、アルミニウム製のイケール等に対し、比強度の値がさらに向上することとなる。一例を挙げると、鉄製のイケールに対し、同一サイズで約1/6の重量に抑えられることが確認されている。
【0018】
さらに、本発明にかかるイケールは、上記構成に加え、「前記リブ構造体は、前記基台固定部に設けられた複数の基台固定孔または前記ユニット取設部に設けられた複数のユニット取設孔の周囲近傍に前記縦リブ及び前記横リブを斜め方向に架渡して連結する斜めリブをさらに配して」構成されている。
【0019】
したがって、本発明のイケールによれば、基台固定部に穿孔して設けられた基台固定孔及びユニット取設部に穿孔して設けられたユニット取設孔の周囲近傍に補強用の斜めリブが配されている。ここで、基台固定孔及びユニット取設孔は、それぞれ工作機械のパレット等または作業用ユニットとイケールとを固定(取設)するためのものであり、この孔に挿通可能なボルト及びボルトと螺合可能なナットの組合わせからなる固定具を利用して固定される。そのため、ワークの加工時などにおいて、イケールに過度の荷重が加えられた場合、ボルト等を利用して固定された基台固定部またはユニット取設部のそれぞれの孔付近に最も大きな負荷が掛かることが予想される。そこで、縦リブ及び横リブによって構築されるリブ構造体において、縦リブ及び横リブを斜め方向に架渡して連結する斜めリブを孔近傍に配することにより、斜めリブによる補強作用によって負荷が集中する箇所であっても耐えることができるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果によれば、高強度性を有する液晶ポリマー樹脂等の樹脂材料を利用し、基台部及び垂体部を一体成型することによって形成したイケールにより、従来の金属製のイケールと比して、強度を低下させることなく、大幅な軽量化が図られ、作業性の向上を図ることができる。さらに、樹脂材料が使用されるため、イケール全体で電気絶縁性を示すため、絶縁処理の省略化による製造コストの低下が可能となる。加えて、使用済みのイケールを粉砕してペレット化し、再び射出成型温度(300℃〜400℃程度)に加熱することにより、原材料としてリサイクルすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態であるイケール1について、図1乃至図6に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のイケール1の構成を示す斜視図であり、図2はイケール1の構成を示す正面図であり、図3はイケール1の構成を示す側面図であり、図4は基台部6のリブ構造体2の構成を示す説明図であり、図5は垂体部7のリブ構造体2の構成を示す説明図であり、図6はイケール1を背面から見た斜視図である。なお、本実施形態のイケール1は、樹脂材料として液晶ポリマー樹脂3(LCP)を使用し、射出成型によって製作されている。
【0022】
本実施形態のイケール1は、図1乃至図6に示すように、工作機械のパレット等のパレット面(図示しない)に基台当接面4を当接させ、強固に固定するための基台固定部10を一端部6aの近傍に有する直方体形状の基台部6と、該基台部6の他端(前述の一端部6aの反対側:図示しない)から垂設された直方体形状の垂体部7と、互いに直交して構成される基台部6及び垂体部7の間を架け渡して連結する略直角三角形状の三角リブ8とを具備して主に構成されている。なお、三角リブ8の斜辺に相当する箇所は、基台部6及び垂体部7の連結部に向かって所定の曲率で若干凸状(或いは円弧状)に形成されている(図3参照)。
【0023】
さらに詳細に説明すると、基台部6は、パレット等と固定するための二種類の孔径(大4・小2)の合計で6つの基台固定孔9からなる基台固定部10を備えている。なお、前述した基台固定孔9の配置は、三角リブ8を挟んで左右(図2における紙面左右方向に相当)にそれぞれ三つずつ配され、かつ大きな孔径の基台固定孔9の間に小孔径の基台固定孔9を配するレイアウトとなっている。そして、基台部6を基台当接面4の側(図4の紙面手前方向に相当)から観察すると、複数の縦リブ11及び横リブ12が縦横に交叉したリブ構造体2として構築されている。すなわち、基台当接面4の側から基台部6の一部を刳抜いたような構造を呈している。
【0024】
一方、垂体部7は、上述の基台部6と略同様の構成を採り、ワーク加工用の各種作業用ユニットを取設するための二種類の孔径(大4・小2)の合計で6つのユニット取設孔14からなるユニット取設部15を備えている。なお、ユニット取設孔14の配置は、基台固定孔9の配置と略同一である。そして、垂体部7をイケール1の背面(三角リブ8の取付面の反対側の面に相当)から観察すると(図5参照)、基台部6と同様に複数の縦リブ11及び横リブ12が縦横に交叉したリブ構造体2として構築されている。ここで、垂体部7のリブ構造体2は、ワーク加工作業において加えられる負荷に対する強度を高めるために、直交した縦リブ11及び横リブ12の間を斜め方向に架け渡すようにした斜めリブ16が設けられている。なお、この斜めリブ16は垂体部7の補強のために垂体部7の幅方向(図5における紙面左右方向に相当)のそれぞれの端部近傍にも設けられている。さらに、固定用のボルトのボルト軸(図示しない)が挿通される基台固定孔9及びユニット取設孔14の周囲には、係る縦リブ11、横リブ12、或いは斜めリブ16と連結し、当該孔9,16の強度を高めるために円形状のリブ孔17が設けられている。
【0025】
なお、本実施形態のイケール1は、既存の金属材料を用いたアルミニウム製のイケールを基準として、同一サイズとなるように、幅100mm、基台部長さ150mm、垂体部高さ300mm、基台部6及び垂体部7の肉厚20mmのサイズに設定されている。なお、これらのサイズ及びイケール1の全体の外観形状や、従来のように各種用途や使用状況に応じて任意に変更することは当然可能である。
【0026】
なお、本実施形態のイケール1は、上述したように、既存の樹脂成形技術を応用し、予め製作されたイケール型(図示しない)に対し、流動性を呈するように約300℃の成型温度に加熱された液状の液晶ポリマー樹脂3を射出成型することによって構成されている。係るイケール1の製造条件は、例えば、1ショット当たりの所要時間を180sに設定することが可能であり、その内容は、流動性を呈する液状の液晶ポリマー樹脂3をイケール型へ注入し、充填を完了するまでの工程(射出工程)に9s、充填された液晶ポリマー樹脂3の温度がイケール型内で低下し、液状から固体状に変化するまでの工程(冷却工程9)に150s、固体化した液晶ポリマー樹脂3からなるイケール1をイケール型から取り出す工程(型抜工程)に21sと設定することができる。これにより、液晶ポリマー樹脂3の射出からイケール1のイケール型からの取出しを工程化し、一連の流れとして処理することにより、同一形状のイケール1を大量に製作することが可能となる。なお、イケール型からイケール1を取出した後、エージングなどの後加工を施し、イケール1の力学的特性を向上させることを行ってもよい。
【0027】
上記構成によって製作されたイケール1は、図6等に示されるように、基台部6及び垂体部7が複数のリブ11等を組み併せて構築されたリブ構造体2として形成されている。このリブ構造体2の構造は、比較的複雑なものであり、金型への溶湯の充填性の問題、或いは冷却後の型抜き性の問題から、従来の金属材料では採用することが困難なことがあった。しかしながら、本実施形態のイケール1は、樹脂材料を射出成型することにより、上記の問題を解消することができる。その結果、金属材料に対して比重の小さい樹脂材料によって、同一サイズの場合のイケール1全体の重量を低下させ、軽量化を図ることができるようになり、さらにリブ構造体2を構築することにより、軽量化とともに樹脂材料(液晶ポリマー樹脂3)の消費量を抑えることができる。すなわち、軽量化及び製造コストの削減が可能となる。
【0028】
特に、金属材料の鋳造の際の溶湯の温度(例えば、700℃以上)に対し、300℃程度の比較的低温の成型温度でイケール1の成型を行うことが可能であり、高温で加熱するための加熱設備等のイケール製造設備の簡素化を図ることができる。加えて、縦リブ11及び横リブ12に架け渡した斜めリブ16によって、垂体部7に加えられる負荷に対する抗力が高められることとなり、金属材料と同様の過酷な使用環境においても十分使用に耐えうることが可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態のイケール1は、絶縁性の液晶ポリマー樹脂3が用いられているため、イケール1全体で電気を通すことがない。そのため、漏電等のおそれがある加工作業においても、絶縁処理等の対策をすることなくそのまま加工作業に利用可能となっている。
【0030】
加えて、本実施形態のイケール1は、使用済みとなったイケール1を粉砕機によって粉砕し、ペレット状に加工することができる。そして、粉砕処理されたペレットを、再びイケール1を製作する際の原料、或いはその他の樹脂製品の原料に応用することができる。これに対し、従来の金属材料からなるイケールは、リサイクルは可能であるものの、金属を溶解するために再び多量の加熱エネルギーを要することとなり、リサイクルのための設備の構築に多くの資金を必要とする場合があった。すなわち、再び300℃前後の成型温度に加熱することにより、ペレット化した液晶ポリマー樹脂3を溶融し、射出成型することにより、ほぼ新品同様の力学的特性を有するイケール1を繰り返し製作することができる。
【0031】
上記に示したように、液晶ポリマー樹脂3を素材として射出成型することにより、軽量性、絶縁性、及びリサイクル性に優れた従来の金属材料のイケールにはない顕著な特徴を有するイケール1を製作することができる。そして、製作されたイケール1は、従来のアルミニウム等の金属材料からなるイケールに匹敵するような高い強度を有し、実用上の点でほとんど問題となるようなことがない。
【0032】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0033】
すなわち、本実施形態において、スーパーエンジニアリングプラスチックの一種である液晶ポリマー樹脂3を用いてイケール1を形成するものを示したが、樹脂材料として用いるものは係る液晶ポリマー樹脂3に限定されるものではない。例えば、その他のエンジニアリングプラスチックや或いは樹脂中にガラス繊維や炭素繊維等の繊維状物質を混在させ、係る繊維の配向性を統一し、力学的特性を向上させた繊維強化プラスチックのようなものであっても構わない。これにより、用途に応じて強度や耐熱性等を変化させてイケールを設計することが可能となる。イケールの形状やサイズ等も用途等に応じて適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】イケールの構成を示す斜視図である。
【図2】イケールの構成を示す正面図である。
【図3】イケールの構成を示す側面図である。
【図4】基台部のリブ構造体の構成を示す説明図である。
【図5】垂体部のリブ構造体の構成を示す説明図である。
【図6】イケールを背面から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 イケール
2 リブ構造体
3 液晶ポリマー樹脂
4 基台当接面
6 基台部
7 垂体部
9 基台固定孔
10 基台固定部
11 縦リブ
12 横リブ
14 ユニット取設孔
15 ユニット取設部
16 斜めリブ
17 リブ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工するための工作機械のパレット若しくはテーブルの装着面に基台固定部を介して固定される基台部と、
前記基台部からの一端部から垂設され、前記ワークを加工するための治具を含む作業用ユニットを、ユニット取設部を介して着脱自在に取設可能な垂体部と
を具備するL字形状を呈するイケールであって、
前記基台部及び前記垂体部は、
高強度性を有する液晶ポリマー樹脂及び繊維強化プラスチック樹脂のいずれか一方を原材料として使用し、一体成型によって形成されることを特徴とするイケール。
【請求項2】
前記基台部及び前記垂体部の少なくともいずれか一方は、
鉛直方向に沿って配される複数の縦リブ及び水平方向に沿って配される複数の横リブが交叉して形成されたリブ構造体によって構築されることを特徴とする請求項1に記載のイケール。
【請求項3】
前記リブ構造体は、
前記基台固定部に設けられた複数の基台固定孔または前記ユニット取設部に設けられた複数のユニット取設孔の周囲近傍に前記縦リブ及び前記横リブを斜め方向に架渡して連結する斜めリブをさらに配して構成されることを特徴とする請求項2に記載のイケール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−54915(P2007−54915A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243820(P2005−243820)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(591004478)株式会社グラベル・クリーン (5)
【Fターム(参考)】