説明

イソシアヌレート化合物

【課題】エポキシ樹脂の原料としての用途が期待される、新規なイソシアヌレート化合物の提供。
【解決手段】グリシジル基として7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸2,1−エタンジイルエステル基およびトリアジン環を有するイソシアヌレート化合物であり、従来知られたエポキシ化合物の代替が可能であり、これを硬化させて得られるエポキシ樹脂は、優れた耐候性や耐熱性を発揮することが期待される。そして、このイソシアヌレート化合物は液体であるので、エポキシ樹脂の添加剤として使用される種々の改質剤や充填剤との相溶性に優れることが期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なイソシアヌレート化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に類似する物質として、例えば特許文献1には、化学式(II)で示されるイソシアヌレート化合物が開示されている。この物質はグリシジル基を有するところから、エポキシ樹脂の原料として好適なものである。
【0003】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−001424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂の原料としての用途が期待される、新規なイソシアヌレート化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物を合成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
【化2】

【発明の効果】
【0008】
本発明のイソシアヌレート化合物は、グリシジル基およびトリアジン環を有する物質であるので、広く使用されているエポキシ化合物の代替が可能であり、これを硬化させて得られるエポキシ樹脂は、優れた耐候性や耐熱性を発揮することが期待される。そして、このイソシアヌレート化合物は液体であるので、エポキシ樹脂の添加剤として使用される種々の改質剤や充填剤との相溶性に優れることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、前記の化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物である。
【0010】
本発明のイソシアヌレート化合物は、モノまたはビス(ヒドロキシエチル)イソシアネート化合物と、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステルとのエステル交換反応により得られる生成物を、更にエポキシ化することにより合成することができる。
【0011】
このエステル交換反応においては、公知のエステル交換反応触媒を使用することができる。該触媒としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物および弱酸塩;Mn、Zn、Zr、Cd、Ti、Pb、Co、Snの酸化物、水酸化物、アルコラート、有機酸塩(例えば酢酸塩)及びアセチルアセトナト錯体;ジブチル錫オキサイド、二塩化ジブチル錫(IV)、ジオクチル錫オキサイド等が挙げられる。
【0012】
このエステル交換反応は、生成するメタノールを反応系外に留去することにより進行し、メタノールの留去が完結することにより、当該エステル交換反応が完了する。
【0013】
反応溶媒としては、例えばトルエン、ベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類や、四塩化炭素、ジクロロエタン及びトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0014】
また、エステル交換反応の反応温度は、使用する原料、反応溶媒や反応スケール等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは80〜150℃である。この反応温度が80℃未満の場合には反応が遅くなり、一方、反応温度が150℃を超える場合は、反応系が不安定になって副反応が起こり易くなったり、反応液がゲル化する虞がある。
【0015】
前記のエポキシ化の手段としては、公知の方法を採用することができる。このような方法としては、例えば過酢酸、メタクロロ過安息香酸などの過酸を用いる方法や、タングステン酸ナトリウムを触媒とした過酸化水素を用いる方法を挙げることができる。
【0016】
本発明のイソシアヌレート化合物のうち、アリール基を有するイソシアヌレート化合物は、SiH基を有するケイ素化合物とのヒドロシリル化付加反応により変性物(エポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)とすることができる。
【0017】
本発明のイソシアヌレート化合物および前記の変性物は、公知のエポキシ化合物の代わりに、または公知のエポキシ化合物と共に、硬化剤および硬化促進剤(硬化触媒)を配合してエポキシ樹脂組成物とすることができる。
【0018】
このような公知のエポキシ化合物としては、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂、
フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、
脂環式エポキシ樹脂、
3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのような環状脂環式エポキシ樹脂、
トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートやヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環状エポキシ樹脂、
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
脂肪族系エポキシ樹脂、
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、
ビスフェノールS型エポキシ樹脂、
ビフェニル型エポキシ樹脂、
ジシクロ環型エポキシ樹脂、
ナフタレン型エポキシ樹脂や、
ハロゲン化エポキシ樹脂等の他、
炭素−炭素二重結合およびグリシジル基を有する有機化合物と、SiH基を有するケイ素化合物とのヒドロシリル化付加反応によるエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物(例えば、特開2004−99751号公報や特開2006−282988号公報に開示されたエポキシ変性オルガノポリシロキサン化合物)が挙げられる。
なお、上記のエポキシ樹脂とは、硬化前のエポキシ化合物を指す。
【0019】
前記の硬化剤としては、
フェノール性水酸基を有する化合物、
酸無水物や
アミン類の他、
メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂末端メルカプト化合物等のメルカプタン化合物、
トリフェニルホスフィン、ジフェニルナフチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン等の有機ホスフィン系化合物、
芳香族ホスホニウム塩、
芳香族ジアゾニウム塩、
芳香族ヨードニウム塩、
芳香族セレニウム塩等が挙げられる。
【0020】
前記のフェノール性水酸基を有する化合物としては、
ビスフェノールA、
ビスフェノールF、
ビスフェノールS、
テトラメチルビスフェノールA、
テトラメチルビスフェノールF、
テトラメチルビスフェノールS、
テトラクロロビスフェノールA、
テトラブロモビスフェノールA、
ジヒドロキシナフタレン、
フェノールノボラック、
クレゾールノボラック、
ビスフェノールAノボラック、
臭素化フェノールノボラック、
レゾルシノール等が挙げられる。
【0021】
前記の酸無水物としては、
メチルテトラヒドロ無水フタル酸、
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、
ヘキサヒドロ無水フタル酸、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、
無水トリメリット酸、
ナジック酸無水物、
ハイミック酸無水物、
メチルナジック酸無水物、
メチルジシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、
ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、
メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
前記のアミン類としては、
ジエチレンジアミン、
トリエチレンテトラミン、
ヘキサメチレンジアミン、
ダイマー酸変性エチレンジアミン、
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、
4,4’−ジアミノジフェノールエーテル、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等や、
2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
【0023】
前記の硬化促進剤としては、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物、
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等イミダゾール化合物、
トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、
テトラブチルホスフォニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホロジチオネート等のホスホニウム化合物、
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−メチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、
酢酸鉛、オクチル酸錫、ヘキサン酸コバルト等の脂肪族酸金属塩等が挙げられる。
【0024】
前述のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて非晶性シリ力、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、マグネシア、クレー、タルク、ケイ酸カルシウム、酸化チタン等の無機質充填材の他、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル等の各種ポリマーを配合することができる。
【0025】
また、これら以外にも、エチレングリコール、プロピレングリコール等脂肪族ポリオール、脂肪族又は芳香族カルボン酸化合物、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、シラン系等のカップリング剤、無機充填材の表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、有機ポリマービーズ、ガラスビーズ、グラスファイバー等の無機充填材等の耐衝撃性改良剤、揺変性付与剤、界面活性剤、表面張力低下剤、消泡剤、沈降防止剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、離型剤、蛍光剤、導電性充填材等の添加剤を配合することができる。
【0026】
このようなエポキシ樹脂組成物は、プリント配線板や半導体、LED等の電子部品用の塗料、封止剤、接着剤、レジストインクなどの他、木工用塗料、光ファイバーやプラスチック、缶の表面を保護するためのコーティング剤としての利用が期待される。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に示した合成試験によって具体的に説明する。
【0028】
〔実施例1−1〕
<3−シクロヘキセン−1−カルボン酸、1,1’−[(1−メチル−2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−3,5(2H,4H,6H)−ジイル)ジ−2,1−エタンジイル]エステルの合成>
1−メチル−3,5−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業社製)5.0g(21.6mmol)を、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステル33.3g(237.5mmol)中に分散し、二塩化ジブチル錫(IV)0.2gを加え、メタノールを減圧留去しながら120℃にて6時間攪拌した。
反応混合物から過剰の3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステルを減圧留去し、乾固物を酢酸エチル100mlに溶解し、100mlの蒸留水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、脱溶媒して黄色透明の液体を得た。続いて、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/クロロホルム)に付し、化学式(III)で示される標題の物質(以下、前駆体Aと云う)4.6g(収率47.5%)を得た。
【0029】
【化3】

【0030】
〔実施例1−2〕
<7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸、3,3’−[(1−メチル−2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−3,5(2H,4H,6H)−ジイル)ジ−2,1−エタンジイル]エステルの合成>
75%メタクロロ過安息香酸4.07g(17.7mmol)をジクロロメタン30mlに溶解し、10℃に冷却し攪拌しながら、前述の前駆体A3.3g(7.37mmol)を溶解したジクロロメタン溶液10mlを徐々に加えた。この反応液を10℃にて3時間攪拌し、5℃にて20時間静置した。
沈殿物をろ別した反応液を10%亜硫酸ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで2回洗浄し、蒸留水50mlで2回洗浄した。次いで、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、乾固物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/クロロホルム)に付し、無色透明の粘稠な液体2.5g(収率71%)を得た。
【0031】
得られた液体のマススペクトルデータおよびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・MS:479(M+)
1H-NMR (CDCl3) δ:4.33(t,4H),
4.17(t,4H), 3.34(s,3H), 3.2-3.1(dd,4H), 2.5-1.3(m,14H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化学式(IV)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
【0032】
【化4】

【0033】
〔実施例2−1〕
<3−シクロヘキセン−1−カルボン酸、1,1’−[(1−アリル−2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−3,5(2H,4H,6H)−ジイル)ジ−2,1−エタンジイル]エステルの合成>
1−アリル−3,5−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業社製)5.1g(19.8mmol)を、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステル36.0g(256.8mmol)中に分散し、二塩化ジブチル錫(IV)0.2gを加え、メタノールを減圧留去しながら120℃にて6時間攪拌した。
反応混合物から過剰の3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステルを減圧留去し、乾固物を酢酸エチル100mlに溶解し、100mlの蒸留水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、酢酸エチルを減圧留去して黄色透明の液体を得た。続いて、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/クロロホルム)に付し、化学式(V)で示される標題の物質(以下、前駆体Bと云う)6.4g(収率64.0%)を得た。
【0034】
【化5】

【0035】
〔実施例2−2〕
<7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸、3,3’−[(1−アリル−2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−3,5(2H,4H,6H)−ジイル)ジ−2,1−エタンジイル]エステルの合成>
75%メタクロロ過安息香酸5.83g(25.3mmol)をジクロロメタン50mlに溶解し、10℃に冷却し攪拌しながら、前述の前駆体B5.0g(10.5mmol)を溶解したジクロロメタン溶液10mlを徐々に加えた。この反応液を10℃にて3時間攪拌し、5℃にて20時間静置した。
沈殿物をろ別した反溶液を10%亜硫酸ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで2回洗浄し、蒸留水50mlで2回洗浄した。次いで、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、乾固物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/クロロホルム)に付し、無色透明の粘稠な液体2.5g(収率47%)を得た。
【0036】
得られた液体のマススペクトルデータおよびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・MS:505(M+)
1H-NMR (CDCl3) δ:6.0-5.8(m,1H),
5.4-5.2(ddd,2H), 4.48(d,2H), 4.33(t,4H), 4.17(t,4H), 3.2-3.1(dd,4H),
2.5-1.3(m,14H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、図2に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化学式(VI)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
【0037】
【化6】

【0038】
〔実施例3−1〕
<3−シクロヘキセン−1−カルボン酸、1−[(1,3−ジアリル−2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−5(2H,4H,6H)−イル)−2,1−エタンジイル]エステルの合成>
1,3−ジアリル−5−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業社製)7.5g(32.4mmol)を、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステル35.0g(249.6mmol)中に分散し、二塩化ジブチル錫(IV)0.2gを加え、メタノールを減圧留去しながら120℃にて6時間攪拌した。
反応混合物から過剰の3−シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルエステルを減圧留去し、酢酸エチル100mlに溶解し、100mlの蒸留水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、脱溶媒して黄色透明液体を得た。続いて、これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/クロロホルム)に付し、化学式(VII)で示される標題の物質(以下、前駆体Cと云う)3.4g(収率65.1%)を得た。
【0039】
【化7】

【0040】
〔実施例3−2〕
<7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸、3−[(1,3−ジアリル−2,4,6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン−5(2H,4H,6H)−イル)−2,1−エタンジイル]エステルの合成>
75%メタクロロ過安息香酸3.8g(16.5mmol)をジクロロメタン45mlに溶解し、10℃に冷却し攪拌しながら、前述の前駆体C5.0g(13.8mmol)を溶解したジクロロメタン溶液15mlを徐々に加えた。この反応液を10℃にて3時間攪拌し、5℃にて20時間静置した。
沈殿物をろ別した反溶液を10%亜硫酸ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで2回洗浄し、蒸留水50mlで2回洗浄した。次いで、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、乾固物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/クロロホルム)に付し、無色透明の粘稠な液体3.4g(収率65%)を得た。
【0041】
得られた液体のマススペクトルデータおよびH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
・MS:377(M+)
1H-NMR (CDCl3) δ:6.0-5.8(m,2H),
5.4-5.2(ddd,4H), 4.48(d,4H), 4.33(t,2H), 4.17(t,2H), 3.2-3.1(dd,2H),
2.5-1.3(m,7H).
また、この液体のIRスペクトルデータは、図3に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた生成物は、化学式(VIII)で示される標題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
【0042】
【化8】

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1−2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【図2】実施例2−2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【図3】実施例3−2で得られた液体のIRスペクトルチャートである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、エポキシ樹脂の原料としての用途が期待されるイソシアヌレート化合物を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示されるイソシアヌレート化合物。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92062(P2012−92062A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241593(P2010−241593)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】