説明

イソニコチン酸ヒドラジドの合成法

本発明は、結核の治療に有用なイソニコチン酸ヒドラジド(INH)の製造方法を提供する。本発明は、ヒドラジン水和物による、95%(w/w)より高い収率且つ99%より高い純度のイソニコチン酸ヒドラジドへのイソニコチンアミドからの一段階転化に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソニコチン酸ヒドラジドの合成法に関する。より具体的には、本発明は、イソニコチンアミドからのイソニコチン酸ヒドラジド(INH)の合成法に関する。イソニコチン酸ヒドラジド(INH)は結核の治療に用いられている。
【背景技術】
【0002】
ピリジンカルボン酸ヒドラジドは、エステル又は酸クロライドと、ヒドラジン又は置換ヒドラジンとの反応によって調製される。非置換ピリジンカルボヒドラジドの調製については、エステル及びヒドラジンの間の反応は良好な収率を与える。酸クロライドを用いる場合、ジピリドイルヒドラジンが形成されるが、2−及び4−ヒドラジドにおける活性ハロゲンの置換は困難である。
【0003】
酸ヒドラジド類は、通常、エステル又はアシルクロライドとヒドラジンとの反応によって調製される。アミド類及び酸類はまた、ヒドラジン水和物による処理によってそれぞれのヒドラジドに転化されうるが、通常はヒドラジン水和物との反応において、アミドはエステルよりも反応が遅いようにみえる。酸ヒドラジドの全収率は満足できるものではない。
【0004】
インド国特許第100112号明細書を参照すると、その方法段階は、硝酸による、4−ピコリンのイソニコチン酸への酸化;イソニコチン酸のエステル化、及び得られたエステルのヒドラジン水和物による処理、を含んでいる。この方法の欠点は、反応器の腐食を引き起こし、且つエステルの分離が非常に厄介なことである。
【0005】
またインド国特許第107934号明細書を参照すると、その方法段階は、過マンガン酸カリウムによる4−ピコリンのイソニコチン酸への酸化;イソニコチン酸のエステル化及び得られたエステルのヒドラジン水和物による処理、を含んでいる。この方法の欠点は、全収率が非常に悪く、且つエステルの分離が非常に困難なことである。
【0006】
イソニコチンアミドからのイソニコチン酸ヒドラジドの合成についての従来技術調査を文献調査及び特許データベースに基づいて行ったが、関連する文献は得られなかった。
【特許文献1】インド国特許第100112号明細書
【特許文献2】インド国特許第107934号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主目的は、ヒドラジン水和物によるイソニコチンアミドのイソニコチン酸ヒドラジド(INH)への転化法であって、上述した欠点を防止するものを提供することである。
【0008】
本発明の別な目的は、ヒドラジン水和物によるイソニコチンアミドのイソニコチン酸ヒドラジド(INH)への転化法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、イソニコチンアミドを転化して、99%純度のイソニコチン酸ヒドラジドを95%(w/w)よりも高い収率を得ることである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、有害な化学薬品を避け、且つエネルギーを節約する、簡単且つ一段階の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、結核の治療に有用なイソニコチン酸ヒドラジド(INH)の製造法を提供する。本発明は、ヒドラジン水和物による、95%(w/w)より高い収率且つ99%より高い純度のイソニコチン酸ヒドラジドへのイソニコチンアミドからの一段階転化に関する。
【0012】
従って、本発明はイソニコチン酸ヒドラジドの調製法を提供し、この方法はイソニコチンアミドをC1〜C3アルコールに溶かし、このイソニコチンアミド溶液にヒドラジン水和物を加え、得られた混合物を還流し、さらにアルコールを留去してイソニコチン酸ヒドラジドを得ること、を含む。
【0013】
本発明の1つの態様においては、上記反応は一段階で実施される。
【0014】
本発明の別の態様においては、イソニコチンアミドとアルコールの比は、1:1〜1:8の範囲である。
【0015】
本発明のさらに別の態様においては、イソニコチンアミドに対するヒドラジン水和物の比が0.4〜2の範囲で、イソニコチンアミドの溶液にヒドラジン水和物が添加される。
【0016】
本発明のさらに別の態様においては、ヒドラジン水和物とイソニコチンアミド溶液との混合物が100〜120℃の範囲の温度で3〜5時間の範囲の間、還流される。
【0017】
本発明の別な態様においては、イソニコチン酸ヒドラジドの収率は、ヒドラジン水和物(100%)が使われた場合には95%(w/w)より高い。
【0018】
本発明の別の態様においては、用いられたヒドラジン水和物は0.7〜1.1の比の範囲であり、97%(w/w)より高いイソニコチン酸ヒドラジド(INH)収率を得る。
【0019】
本発明の別の態様においては、得られたイソニコチンヒドラジド(INH)の純度は99%より高い。
【0020】
〔本発明の詳細な説明〕
本発明の新規性は、多段階の従来方法と比較して、一段階反応でアミド(イソニコチンアミド)をイソニコチン酸ヒドラジド(INH)に転化すること、及び、添加したアルコールを反応後に完全に回収すること、にある。
【0021】
上述した新規性及び有用性は、本発明の自明でない一段階の創意あるステップによって達成される。
【0022】
以下の実施例は本発明を説明するために示され、そして本発明の範囲を制限するために解釈されるべきではない。
【0023】
〔実施例1〕
イソニコチンアミド9.9918gを無水アルコール77.97gに溶かし、ヒドラジン水和物(100%)10.1gをそこに加えた。反応混合物をグリセリン浴中で4時間、115℃で還流し;その後、アルコールを留去して、固体塊であるイソニコチン酸ヒドラジド(INH)を熱い状態で取り出した。回収されたイソニコチン酸ヒドラジドは9.727g、すなわち、97.34質量%であり、得られた融点は実際の169.9℃に対して170℃だった。
【0024】
〔実施例2〕
イソニコチンアミド19.3989gをメチルアルコール39.488gに溶解し、ヒドラジン水和物(100%)14.14gをそこに加えた。反応混合物をグリセリン浴中で4時間、110℃で還流し;その後、アルコールを留去して、固体塊であるイソニコチン酸ヒドラジド(INH)を熱い状態で取り出した。回収されたイソニコチン酸ヒドラジドは19.3g、すなわち、99.49質量%であり、得られた融点は実際の170℃に対して169.9℃だった。
【0025】
〔実施例3〕
イソニコチンアミド24.99gをメチルアルコール39.48gに溶解し、ヒドラジン水和物(100%)20.20gをそこに加えた。反応混合物をグリセリン浴中で4時間、110℃で還流し;その後、アルコールを留去して、固体塊であるイソニコチン酸ヒドラジド(INH)を熱い状態で取り出した。回収されたイソニコチン酸ヒドラジドは24.0g、すなわち96.03質量%であり、得られた融点は実際の170℃に対して169.9℃だった。
【0026】
〔本発明の主な長所〕
1.簡単かつ一段階法であり、有害な化学薬品の取り扱いを避け、エネルギーの節約になる。
2.生成物の純度は融点測定及びFTIRスペクトルによって証明されているとおり、99%より高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソニコチンアミドをC1〜C3アルコールに溶解し、前記イソニコチンアミド溶液にヒドラジン水和物を添加し、得られた混合物を還流し、さらにアルコールを留去してイソニコチン酸ヒドラジドを得ること、を含む、イソニコチン酸ヒドラジドの製造方法。
【請求項2】
前記反応が一段階で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イソニコチン酸アミドとアルコールとの比が、1:1〜1:8の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
イソニコチンアミドに対するヒドラジン水和物の比が0.4〜2の範囲で、前記ヒドラジン水和物が前記イソニコチンアミド溶液に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒドラジン水和物とイソニコチンアミド溶液との混合物が、100〜120℃の範囲の温度で3〜5時間の間還流される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ヒドラジン水和物(100%)を用いた場合、イソニコチン酸ヒドラジドの収率が95%(w/w)よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
用いられた前記ヒドラジン水和物の比が0.7〜1.1の範囲であり、97%(w/w)よりも高いイソニコチン酸ヒドラジド(INH)の収率を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
得られたイソニコチン酸ヒドラジド(INH)の純度が99%よりも高い、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2006−514031(P2006−514031A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561717(P2004−561717)
【出願日】平成14年12月23日(2002.12.23)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005605
【国際公開番号】WO2004/056778
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】