説明

イソプロパノールを含んでなるリモネン含有飲料

【課題】リモネンの香気が良好な嗜好性の高い飲料を提供する。
【解決手段】イソプロパノールを含んでなる飲料であって、イソプロパノール濃度が2000mg/L以下でかつ、リモネン濃度が2〜20mg/Lであることを特徴とする飲料。イソプロパノールを使用することにより、非アルコール飲料、ひいては、完全無アルコール飲料にも適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソプロパノールを含んでなるリモネン含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
イソプロパノールは、従来から飲食品の製造に使用されている。しかし、その多くは原料植物からの成分抽出を目的とするものであり、リモネン含有飲料にイソプロパノールを用いて、リモネンの飲料中における香気を良好にすることについてはこれまでに知られていない。
【0003】
例えば、特許文献1には、シトラスオイルをプロピレングリコールとC1−4アルカノールとの混合物で処理することにより、シトラスオイルフレーバーを調合することが記載されている。しかし、特許文献1は、シトラスオイルフレーバーの洗浄に関するものであり、イソプロパノールをリモネン含有飲料に用いることにより、リモネンの香気を良好にすることについては開示されていない。また、特許文献2には、柑橘類の抽出物の塩基性成分からなる飲食品の呈味改善剤について記載されている。しかし、特許文献2は、イソプロパノールをリモネン含有飲料に用いることにより、リモネンの香気を良好にすることについては開示されていない。
【0004】
一方で、イソプロパノールは、これまで、飲料等に不快臭を与え得る物質として認識されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−535207号公報
【特許文献2】特開2010−41935号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、リモネン含有飲料に、イソプロパノールを特定の濃度範囲で添加することにより、リモネンの香気を良好にし、嗜好性を高めることができることを見出した(実施例2および3)。本発明は、この知見に基づくものである。
【0007】
本発明は、リモネン含有飲料であって、リモネンの香気が良好な嗜好性の高い飲料を提供することを目的とする。
【0008】
本発明によれば、イソプロパノールを含んでなるリモネン含有飲料が提供される。
【0009】
具体的には、以下の発明が提供される。
(1)イソプロパノールを含んでなる、リモネン含有飲料であって、イソプロパノール濃度が2000mg/L以下であり、かつ、リモネン濃度が2〜20mg/Lである、飲料。
(2)リモネン濃度が、2〜10mg/Lである、(1)に記載の飲料。
(3)イソプロパノール濃度が、6〜1000mg/Lである、(1)に記載の飲料。
(4)飲料が、非アルコール飲料である、(1)〜(3)のいずれかに記載の飲料。
(5)飲料が、完全無アルコール飲料である、(1)〜(4)のいずれかに記載の飲料。
(6)容器詰飲料である、(1)〜(5)のいずれかに記載の飲料。
【0010】
本発明による飲料は、イソプロパノールを含んでなるリモネン含有飲料であって、該芳香成分の香気が良好な嗜好性の高い飲料を提供できる点で有利である。本発明による飲料は、また、イソプロパノールを使用することにより、非アルコール飲料、ひいては、完全無アルコール飲料にも適用できる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0011】
定義
本発明において「香気」とは、嗅覚で感じる飲料の香り(臭い)および口腔から鼻腔に抜けた部分で感じる香味をいう。本発明において、本発明の飲料におけるリモネンの香気が良好であるか否かは、該香気が、エタノール含有飲料(ここで、「エタノール含有飲料」は、エタノールを、0.01〜0.9v/v%、好ましくは、0.05〜0.5v/v%、より好ましくは、0.1〜0.2v/v%の濃度で含む飲料)に含まれるリモネンの香気様であるか否かで判定することができる。
【0012】
本発明において「非アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされない、アルコール度数1度未満の飲料を意味する。「非アルコール飲料」のうち、アルコールが全く含まれない、すなわち、アルコール含量が0.00v/v%である飲料については特に「完全無アルコール飲料」と表現することができる。なお、ここでの「アルコール含量」はエタノールの含量を意味し、イソプロパノールは含まれない。
【0013】
本発明による飲料
本発明による飲料は、リモネン含有飲料中のイソプロパノール濃度を調整することにより製造することができる。
【0014】
本発明において用いられるリモネンは、柑橘類の果実や果皮に存在し、芳香を持つモノテルペン系炭化水素である。柑橘類としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、ユズ等の果物が挙げられる。
【0015】
本発明において用いられるリモネンは、柑橘類の果実または果皮を粉砕し、不溶性固形分を含んだ状態で使用することもできるし、果実または果皮の搾汁から不溶性固形分を除いた果汁として使用することもできる。
【0016】
本発明において用いられるリモネンは、市販されている香料、例えば、柑橘類(オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、マンダリン、ユズ等)の香料として入手することができる。
【0017】
本発明において用いられるリモネンは、柑橘類の果実または果皮から、公知の方法に従って、抽出または精製されたものを使用することができる。
【0018】
本発明において用いられるリモネンは、市販されているものを入手することもできる。
【0019】
本発明において用いられるリモネンは、公知の方法に従って製造することもできる。
【0020】
本発明において用いられるリモネンは、リモネン以外の柑橘類由来の芳香成分と組み合わせて使用することができる。リモネン以外の柑橘類由来の芳香成分としては、例えば、リモネン以外のテルペン系化合物が挙げられる。テルペン系化合物としては、例えば、モノテルペン系炭化水素およびその誘導体等(例えば、テルピネン、ピネン、シトラール等)が挙げられる。リモネン以外の柑橘類由来の芳香成分の量は、リモネンの良好な香気を妨げない範囲で、通常の飲料の処方設計に従って適宜決定することができる。
【0021】
本発明において用いられるリモネンは、柑橘類以外の果物(例えば、アップル、ブドウ、モモ、バナナ、パイナップル、ストロベリー、メロン、ウメ、ライチ、マンゴ、パッションフルーツ、ナシ等)由来の芳香成分と組み合わせて使用することができる。柑橘類以外の果物由来の芳香成分の量は、リモネンの良好な香気を妨げない範囲で、通常の飲料の処方設計に従って適宜決定することができる。
【0022】
本発明において、「リモネン含有飲料」としては、リモネンが含有される飲料であればよく、例えば、炭酸飲料、茶飲料、牛乳、豆乳、乳飲料、ドリンクタイプのヨーグルト、コーヒー、ココア、栄養ドリンク、スポーツ飲料、飲用水(ミネラルウォーター等)などの非アルコール飲料;ウイスキー、バーボン、ブランデー、スピリッツ類(ウォッカ、ジン、ラム等)、リキュール類、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、ビール、アルコール度数1%以下のノンアルコールビール、発泡酒、酎ハイなどのアルコール飲料等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
炭酸飲料とは、飲用に適した水に二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸ガスを含む飲料を意味する。炭酸飲料には、甘味料、香料等を加えることもできる。
【0024】
炭酸飲料における炭酸ガス圧は、20℃において測定した場合、例えば、0.1〜0.4MPa、好ましくは、0.13〜0.35MPaとすることができる。炭酸ガス圧は、例えば、国税庁所定の分析法に基づく、ビールのガス圧分析法によって測定できる(例えば、国税庁webページ: http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/sonota/070622/01.htm を参照)。具体的には、穿孔圧力計が使用できる容器に入った検体について、検体を時々振りながら20℃の水槽に30分間保った後、穿孔圧力計を取り付け、針を突き刺し軽く振って圧力を読むことにより測定することができる。また、市販の機械式炭酸ガス圧測定器を用いて測定することもできる。例えば、ガスボリューム測定装置(GVA-500、京都電子工業株式会社製)を用いてもよい。
【0025】
茶飲料とは、ツバキ科の常緑樹である茶樹の葉(茶葉)、または茶樹以外の植物の葉もしくは穀類等を煎じて飲むための飲料をいい、発酵茶、半発酵茶および不発酵茶のいずれも包含される。茶飲料の具体例としては、日本茶(例えば、緑茶、麦茶)、紅茶、ハーブ茶(例えば、ジャスミン茶)、中国茶(例えば、中国緑茶、烏龍茶)、ほうじ茶等が挙げられる。
【0026】
乳飲料とは、生乳、牛乳等またはこれらを原料として製造した食品を主原料とした飲料をいい、牛乳等そのもの材料とするものの他に、例えば、栄養素強化乳、フレーバー添加乳、加糖分解乳等の加工乳を原料とするものも包含される。
【0027】
本発明による飲料は、麦芽を使用しない非麦芽飲料であってもよい。本発明による飲料は、また、麦芽とホップを使用しない非ビール様飲料であってもよい。
【0028】
本発明による飲料には、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、苦味料(例えば、イソα酸、ナリンジン、クワッシャー、カフェイン等)等を加えることもできる。また、本発明による飲料には、野菜汁(例えば、トマト、ニンジン、セロリ、キュウリ、スイカ、ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、クレソン、ケール、ほうれん草、大根、かぼちゃ、白菜、レタス等の野菜汁)を加えることもできる。
【0029】
本発明による飲料は、好ましくは、非アルコール飲料であり、より好ましくは、完全無アルコール飲料である。非アルコール飲料としては、例えば、チューハイ様飲料、カクテル様飲料、ワイン風飲料等として提供することもできる。
【0030】
本発明による飲料は、好ましくは、炭酸飲料である。
【0031】
飲料中のリモネン濃度は、2〜20mg/L、好ましくは、2〜15mg/L、より好ましくは、2〜13mg/L、さらに好ましくは、2〜10mg/L、さらにより好ましくは、3〜10mg/Lとなるように調整することができる。
【0032】
本発明において使用されるイソプロパノールは、リモネン含有飲料におけるリモネンの香気を良好にすることができ、また、本発明による飲料に、後述するような所定のイソプロパノール濃度を与えることができる。
【0033】
本発明において使用されるイソプロパノールは、市販されているものを入手することができる。
【0034】
本発明において使用されるイソプロパノールは、公知の方法に従って製造することもできる。
【0035】
飲料中のイソプロパノール濃度は、2000mg/L以下、好ましくは、1000mg/L以下、より好ましくは、500mg/L以下、さらに好ましくは、100mg/L以下、特に好ましくは、50mg/L以下となるように調整することができる。飲料中のイソプロパノール濃度は、また、6mg/L以上、好ましくは、10mg/Lを超えるように調整することができる。飲料中のイソプロパノール濃度は、6〜2000mg/L、好ましくは、6〜1000mg/L、より好ましくは、6〜500mg/L、さらに好ましくは、6〜100mg/L、好ましくは、6〜50mg/Lとなるように調整することができる。
【0036】
飲料中のイソプロパノール濃度は、リモネンとイソプロパノールとの濃度比が、1:0.4〜1:200、好ましくは、1:0.4〜1:100、より好ましくは、1:0.4〜1:50、さらにより好ましくは、1:0.4〜1:10、特に好ましくは、1:0.4〜1:5となるように調整することができる。
【0037】
本発明による飲料の製造
本発明によれば、リモネン濃度が2〜20mg/Lであるリモネン含有飲料中のイソプロパノール濃度を2000mg/L以下に調整することにより本発明による飲料を製造することができる。
【0038】
本発明による飲料の製造においては、リモネン含有飲料に、イソプロパノール以外に、通常の飲料の処方設計に用いられている甘味料、酸味料、香料、色素、果汁、食品添加剤等を適宜添加することができる。また、リモネン以外の柑橘類由来の芳香成分や柑橘類以外の果物由来の芳香成分も適宜添加することができる。
【0039】
本発明による飲料の製造に当たっては、当業界に公知の製造技術を用いて製造することができ、例えば、「改訂新版ソフトドリンクス」(株式会社光琳)を参考とすることができる。
【0040】
リモネン含有飲料は、対象の飲料にリモネンを添加することにより製造することができる。リモネンは、対象の飲料に直接添加することもできるし、イソプロパノールに溶かしてから添加することもできる。
【0041】
リモネンは、飲料に、2〜20mg/L、好ましくは、2〜15mg/L、より好ましくは、2〜13mg/L、さらに好ましくは、2〜10mg/L、さらにより好ましくは、3〜10mg/Lとなるように添加することができる。
【0042】
飲料中のイソプロパノール濃度の「調整」については、リモネン含有飲料に元々含まれるイソプロパノールの濃度を考慮して、リモネン含有飲料に、イソプロパノールを添加して調整することもできるし、リモネン含有飲料からイソプロパノールを除去して調整することもできる。
【0043】
イソプロパノールは、リモネン含有飲料の製造中、またはリモネン含有飲料の製造後に添加してもよい。なお、イソプロパノールの添加に当たってはリモネン含有飲料に元々含まれるイソプロパノールの濃度を考慮して添加の要否や添加量を決定できることはいうまでもない。
【0044】
イソプロパノールは、例えば、飲料中のイソプロパノール濃度が2000mg/L以下、好ましくは、1000mg/L以下、より好ましくは、500mg/L以下、さらに好ましくは、100mg/L以下、特に好ましくは、50mg/L以下となるように添加することができる。イソプロパノールは、また、例えば、飲料中のイソプロパノール濃度が6mg/L以上、好ましくは、10mg/Lを超えるように添加することができる。イソプロパノールは、例えば、6〜2000mg/L、好ましくは、6〜1000mg/L、より好ましくは、6〜500mg/L、さらに好ましくは、6〜100mg/L、好ましくは、6〜50mg/Lとなるように添加することができる。
【0045】
イソプロパノールは、例えば、飲料中のリモネンとイソプロパノールとの濃度比が、1:0.4〜1:200、好ましくは、1:0.4〜1:100、より好ましくは、1:0.4〜1:50、さらにより好ましくは、1:0.4〜1:10、特に好ましくは、1:0.4〜1:5となるように調整することができる。
【0046】
イソプロパノール以外の、通常の飲料の処方設計に用いられている甘味料、酸味料、香料、色素、果汁、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤等)等の添加剤は、リモネン含有飲料の製造中、またはリモネン含有飲料の製造後に添加してもよい。複数の添加剤を添加する場合も、各成分を一緒に添加しても、別々に添加してもよく、別々に添加される場合にはいずれを先に添加してもよい。
【0047】
リモネン以外の柑橘類由来の芳香成分や柑橘類以外の果物由来の芳香成分は、リモネン含有飲料の製造中、またはリモネン含有飲料の製造後に添加してもよい。複数の芳香成分を添加する場合も、各成分を一緒に添加しても、別々に添加してもよく、別々に添加される場合にはいずれを先に添加してもよい。
【0048】
本発明による飲料は、pHを、例えば、2.6〜7.2、好ましくは、2.8〜4.2に調整することができる。本発明によれば、本発明による飲料に含まれる果実やその由来成分、果汁などを利用してpHを調整することができる。なお、飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、東亜電波工業株式会社製pHメーター)を使用して容易に測定することができる。
【0049】
本発明による飲料が炭酸飲料である場合は、最終製品において、例えば、20℃において測定した場合に、炭酸ガス圧が0.1〜0.4MPa、好ましくは、0.13〜0.35MPaとなるように調整することができる。
【0050】
本発明による飲料は、好ましくは、非アルコール飲料(より好ましくは、完全無アルコール飲料)として提供される。非アルコール飲料としては、例えば、チューハイ様飲料、カクテル様飲料等として提供することができる。
【0051】
「チューハイ様飲料」とは、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。「チューハイ飲料」は、一般的には、果汁または果汁フレーバーを含んでなる炭酸ガス含有アルコール飲料をいう。本発明による飲料は、チューハイ様飲料として、例えば、リモネンを含む果汁または果汁フレーバーと、イソプロパノールと、必要に応じて、甘味料、酸味料等とを含んでなる非アルコール炭酸飲料とすることができる。
【0052】
「カクテル様飲料」とは、カクテル飲料を飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。「カクテル飲料」は、一般的には、アルコール飲料に、果汁または果汁フレーバー、果実、香辛料、甘味料(シロップ)、炭酸水等を混ぜ合わせてつくる飲料をいう。本発明による飲料は、カクテル様飲料として、例えば、リモネンを含む果汁または果汁フレーバーと、イソプロパノールと、必要に応じて、甘味料(シロップ)、果実、香辛料、炭酸水等とを含んでなる非アルコール飲料とすることができる。
【0053】
なお、本発明によって製造された非アルコール飲料に適宜アルコール類を添加して酒税法上のアルコール類として提供することも可能である。
【0054】
本発明による飲料は、好ましくは、容器詰飲料として提供される。本発明による飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、炭酸含有飲料を充填するという観点から、好ましくは、金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、瓶である。
【0055】
本発明の好ましい態様によれば、イソプロパノールを含んでなる、リモネン含有非アルコール飲料であって、イソプロパノール濃度が6〜1000mg/Lであり、かつ、リモネン濃度が2〜15mg/Lである飲料が提供され、より好ましくは、リモネン濃度は2〜10mg/Lである。
【0056】
本発明の好ましい態様によれば、イソプロパノールを含んでなる、リモネン含有完全無アルコール飲料であって、イソプロパノール濃度が6〜1000mg/Lであり、かつ、リモネン濃度が2〜15mg/Lである飲料が提供され、より好ましくは、リモネン濃度は2〜10mg/Lである。
【0057】
本発明によれば、リモネン含有飲料中のイソプロパノール濃度を2000mg/l以下に調整することを特徴とする、飲料の製造方法が提供される。
【実施例】
【0058】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1:香気成分の選抜
(1)飲料の調製
エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、イソペンタノールをそれぞれ表1に示す濃度となるようにイオン交換水に添加し、各サンプル飲料を調整した。
【0060】
(2)飲料の評価
(1)で調製された各サンプル飲料を、官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、飲料の評価に熟練したパネル5名により、以下の基準で飲料の香気について官能評価を行った。
[香気の評価]
○:特有のフーゼル臭がない。
△:特有のフーゼル臭がある。
×:特有のフーゼル臭があり、飲料に含まれるその他の香料等の香気を阻害するおそれがある。
−:省略
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
【0061】
官能評価試験の結果は以下の通りであった。
【表1】

【0062】
イオン交換水にイソブタノール、イソペンタノールをそれぞれ添加した場合は、特有のフーゼル臭があった。一方、イソプロパノールは10〜300mg/lとなるように添加した場合であっても、不快な異臭はなかった(表1)。以上のことから、イソプロパノールは飲料に使用できることが確認された。
【0063】
実施例2:リモネンの香気に対するイソプロパノール濃度の評価
(1)飲料の調製
飲料におけるリモネンの香気に対するイソプロパノールの効果を確認するために、リモネンと、イソプロパノールとをイオン交換水でメスアップして、リモネン濃度10mg/l、イソプロパノール濃度2〜9000mg/lのサンプル飲料を調整した(エタノール含量0.00v/v%)。対照飲料として、リモネンと、エタノールとをイオン交換水でメスアップして、リモネン濃度10mg/l、エタノール濃度2〜9000mg/lのサンプル飲料を調整した。
【0064】
(2)飲料の評価
各サンプル飲料は、官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、飲料の評価に熟練したパネル4名により、以下の試験方法および条件において、以下の基準で官能評価を行った。
[試験方法および条件]
試験方法:試飲用のプラスチックカップ90mlに各サンプル飲料を分注し、香りおよび味を確認した。
試験時の室温:約27℃
試験時の品温:約25℃
[香気の評価]
◎:リモネンの香りが良好。
○:リモネンの香りが感じられる。
△:リモネンの香りが弱い、またはリモネンの香りをマスキングする香りがある。
×:リモネンの香りが感じられない、またはリモネンの香りをマスキングする不快な香りがある。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
[エタノール再現性の評価]
○:リモネンとエタノールの組み合わせ、リモネンとイソプロパノールとの組み合わせで香気の評価が同じである。
△:リモネンとエタノールの組み合わせ、リモネンとイソプロパノールとの組み合わせで香気の評価のずれが1段階以内である。
×:リモネンとエタノールの組み合わせ、リモネンとイソプロパノールとの組み合わせで香気の評価のずれが2段階以上である。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
[総合評価(嗜好性)]
○:イソプロパノールの香気の評価とエタノール再現性の評価がいずれも○以上である、または、イソプロパノールの香気の評価が◎以上であり、かつ、エタノール再現性の評価が△である(嗜好性が高い)。
△:イソプロパノールの香気の評価が△または○であり、かつ、エタノール再現性の評価が△である(嗜好性がやや高い)。
×: イソプロパノールの香気の評価が×である、または、エタノール再現性の評価が×である(嗜好性が低い)。
【0065】
官能評価試験の結果は以下の通りであった。
【表2】

【0066】
リモネン10mg/lに対して、イソプロパノールが4〜2000mg/lの濃度範囲では、リモネンの香気が良好であった。特に、4〜1000mg/lの濃度範囲では、リモネンの純粋な香気が感じられた。一方、3000mg/l以上の濃度範囲では、特有のフーゼル臭が感じられ、リモネンの香気を抑える不快な臭いとなった(表2)。また、香気の評価とエタノール再現性の評価を総合的な嗜好性で評価すると、イソプロパノールの濃度は6mg/l以上、特に、10mg/lを超えることがより好ましいことが確認された。
【0067】
実施例3:リモネンの濃度範囲についての評価
(1)飲料の調製
リモネンと、イソプロパノールとをイオン交換水でメスアップして、リモネン濃度1〜10mg/l、イソプロパノール濃度50mg/lのサンプル飲料を調整した(エタノール含量0.00v/v%)。対照飲料として、リモネンと、エタノールとをイオン交換水でメスアップして、リモネン濃度1〜10mg/l、エタノール濃度50mg/lのサンプル飲料を調整した。
【0068】
(2)飲料の評価
各サンプル飲料は、官能評価試験に供した。具体的には、良く訓練され、飲料の評価に熟練したパネル4名により、以下の試験方法および条件において、以下の基準で官能評価を行った。
[試験方法および条件]
試験方法:試飲用のプラスチックカップ90mlに各サンプル飲料を分注し、吐き出し法にて試飲した。
試験時の室温:約27℃
試験時の品温:約25℃
[香気の評価]
◎:リモネンの香りが良好である。
○:リモネンの香りがある。
△:リモネンの香りが弱い。
×:リモネンの香りが感じられない。
(各パネルがディスカッションを行いながら決定した。)
【0069】
官能評価試験の結果は以下の通りであった。
【表3】

【0070】
イソプロパノール50mg/lに対し、リモネンが2〜10mg/lの濃度範囲では、リモネンの香気が良好に感じられた。特に、3〜10mg/lの濃度範囲では、リモネンの香気がさらに良好に感じられた(表3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロパノールを含んでなる、リモネン含有飲料であって、イソプロパノール濃度が2000mg/L以下であり、かつ、リモネン濃度が2〜20mg/Lである、飲料。
【請求項2】
リモネン濃度が、2〜10mg/Lである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
イソプロパノール濃度が、6〜1000mg/Lである、請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
飲料が、非アルコール飲料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
飲料が、完全無アルコール飲料である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
容器詰飲料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の飲料。

【公開番号】特開2012−60980(P2012−60980A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210184(P2010−210184)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】