説明

イネコシヒカリの産地判別用プライマーセット及びイネコシヒカリの産地判別方法

【課題】 新潟産のコシヒカリとそれ以外のコシヒカリとを判別することができるイネコシヒカリの産地判別用プライマーセット及びイネコシヒカリの産地判別方法を提供すること。
【解決手段】 イネコシヒカリの産地判別用プライマーセットは、配列番号1で示される塩基配列を有する第1プライマーと、配列番号2で示される塩基配列を有する第2プライマーとを具備するものである。これにより、新潟産のコシヒカリとそれ以外のコシヒカリとを判別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イネコシヒカリの産地判別用プライマーセット及びイネコシヒカリの産地判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コシヒカリと他の品種を区別する方法はあったが(例えば特許文献1参照)、コシヒカリ品種内の産地間区別を行われていない。
【0003】
全国で栽培されているコシヒカリは、その品種としての信憑性が社会的な問題となっている。同時に、コシヒカリには産地間差があることが知られているが、それを厳密に分類する方法はこれまで開発されていない。
【特許文献1】特開2005−245244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新潟産のコシヒカリとそれ以外のコシヒカリとを判別することができるイネコシヒカリの産地判別用プライマーセット及びイネコシヒカリの産地判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のイネコシヒカリの産地判別用プライマーセットは、配列番号1で示される塩基配列を有する第1プライマーと、配列番号2で示される塩基配列を有する第2プライマーとを具備する。
本発明のこのような構成のプライマーセットを用いてPCRを行うことにより、新潟産のコシヒカリとそれ以外のコシヒカリとを判別することができる。
【0006】
本発明のイネコシヒカリの産地判別方法は、上述に記載のプライマーセットとイネコシヒカリから抽出したDNAを用いてPCRを行い、前記PCRで得られた産物を電気泳動する。
【0007】
すなわち、イネゲノムの複数の部位から、コシヒカリと他の品種を区別するDNA断片を見いだし、さらにコシヒカリ品種内の違いを検出するDNA断片により、産地間の区別を行う。DNA断片の検出はPCR法により実施する。
【0008】
イネのトランスポゾンを指標にして、系統特異的なDNA断片を探索した結果、コシヒカリを区別することのできる複数のDNAマーカーを得、さらに新潟タイプのコシヒカリとそれ以外のコシヒカリ(福井タイプのコシヒカリ)を判別するDNAマーカーを取得した。
【0009】
本発明によるDNAマーカー群は、高精度にコシヒカリを他の品種と区別することができ、コシヒカリ品種内の産地間の違い(新潟タイプと福井タイプ)を区別することができた。
【発明の効果】
【0010】
本発明のこのような構成によれば、新潟産のイネコシヒカリを試料としたPCR産物のみに所定の増幅が確認されるため、増幅が確認できれば試料が新潟産のイネコシヒカリであると判別でき、増幅が確認できなければ試料が新潟産のイネコシヒカリでないことを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】新潟産のコシヒカリと福井産のコシヒカリを用いて得られたPCR産物の電気泳動パターンを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
(プライマーセット)
【0013】
本実施形態におけるイネコシヒカリの産地判別用プライマーセットは、配列番号1で示される塩基配列を有する第1プライマー(primerL)と、配列番号2で示される塩基配列を有する第2プライマー(primerR)とを具備する。
【0014】
プライマー設計においては、イネゲノムの配列から、新潟産のコシヒカリとそれ以外のコシヒカリとを判別するための標的として、配列番号3に示されるの遺伝子がコードされている領域(染色体8番の位置にある)を選んだ。
配列番号3に示される遺伝子に関する付加的情報は以下のとおりである。
chr8 64561〜65265
gene Os08t0101000-01
product 新潟274 bp(福井mPing-in 704 bp)
(PCRを用いた判別方法)
試料として、新潟産のコシヒカリと福井産のコシヒカリとを使用した。
<DNAの抽出>
1)イネサンプルの葉をハサミで1〜2mmに刻み、1.5mlエッペンドルフチューブに入れる。
2)サンプルの入ったチューブを液体窒素の入った容器に浸してサンプルを凍結させる(2〜3分間)。
3)ホモジナイザーでサンプルを粉砕する(解凍しないよう素早く)。
粉砕されたサンプルに抽出用バッファーを400μl加え、ボルテックスミキサーを用いて懸濁する。室温に15分以上放置する(時々攪拌)。
4)等量(400μl)のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え、激しく振って混合する。
5)13000rpmで10分間遠心する(室温)。
6)マイクロピペットを使い、上清を別のチューブに移す(300μl程でよい)。
7)等量の2-プロパノールを加え、転倒操作により混和する。
8)13000rpmで10分間遠心する(室温)。9)チューブの底にペレット状のDNAを確認したら、上清をデカントで捨てる。
10)70%エタノールを1ml加え、軽く撹拌してDNAペレットを洗う。
11)13000rpmで5分間遠心する(室温)。
12)マイクロピペットでエタノールを出来る限り除去した後、DNAペレットをデシケータ中で5分間減圧乾固する。
13)50μlのTEバッファーを加えてDNAを溶解し、DNAサンプルとした。
以上のプロトコルにより各DNAを抽出し溶液とした。
<電気泳動>
【0015】
PCR反応液は1μMのプライマー、2.5mMの塩化マグネシウム、PCRバッファー、250μMのd-NTPおよび0.5μlのTaqポリメラーゼにDNA0.5μgを加え調製した。PCRの反応条件は変性温度94℃(30秒)、アニーリング温度をプライマーのTm値にあわせ(30秒)、伸長反応72℃(PCR産物の長さに応じて30秒より1kb)において行い、35サイクルの増幅を実施した。
【0016】
その結果、図1左側に示すように、新潟産のコシヒカリについてのみ274bpの位置にバンドが認められた。尚、図1右側は福井産のコシヒカリのPCR産物を電気泳動の結果である。
【0017】
以上のように、上述のプライマーセットを用いてPCRを行った後、電気泳動を行うことによって、その電気泳動パターンから、試料のコシヒカリが新潟産であるか否かを検出することができる。すなわち、産地が不明なコシヒカリがある場合、試料のコシヒカリから抽出したDNAが上述のプライマーセットを用いてPCRによって274bpのバンドが増幅されるのであれば新潟産と判別でき、704 bpのバンドが増幅されるのであれば新潟産ではないと判別できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示される塩基配列を有する第1プライマーと、
配列番号2で示される塩基配列を有する第2プライマーと
を具備するイネコシヒカリの産地判別用プライマーセット。
【請求項2】
請求項1記載のプライマーセットとイネコシヒカリから抽出したDNAを用いてPCRを行い、前記PCRで得られた産物を電気泳動するイネコシヒカリの産地判別方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−193799(P2011−193799A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64232(P2010−64232)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(511064041)株式会社同位体研究所 (2)
【Fターム(参考)】