説明

イムノアッセイにおいて有用なアタザナビルコンジュゲートおよび抗体

HIVプロテアーゼインヒビターであるアタザナビルに対する免疫原を作成するために有用な活性化ハプテン、アタザナビルに対する抗体を生成するために有用な免疫原、ならびにアタザナビル測定についてのイムノアッセイにおいて有用な抗体および標識コンジュゲート。このハプテンは、中央非末端ヒドロキシル基における活性化官能性を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プロテアーゼインヒビターを検出するためのイムノアッセイ法において有用なプロテアーゼインヒビターコンジュゲートと抗体に関する。さらに具体的には、本発明は、アタザナビルのコンジュゲートおよび誘導体を作成するのに有用な活性化ハプテン、アタザナビルに対する抗体を生成するのに有用な免疫原、ならびにアタザナビルのイムノアッセイに有用な抗体および標識コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
HIVプロテアーゼインヒビターは、最初のサキナビルが1995年に市場に導入されてから、AIDS患者の医療に有意な影響を与えてきた重要な新しいクラスの薬剤である。他のプロテアーゼインヒビターの例としては、アンプレナビル、インジナビル、ネルフィナビル、ロピナビル、リトナビル、およびアタザナビルが挙げられる。これらは、逆転写酵素インヒビターまたは他のHIVプロテアーゼインヒビター等の他の抗HIV薬剤と組み合わせられると特に効果的である。これらの新規治療投薬計画での著しい成功にも関わらず、プロテアーゼインヒビターの濃度をモニターする治療薬テスト方法があれば、結果がより改善されるであろうという強い指摘がある。全ての患者が、プロテアーゼインヒビター併用療法に対して最適に応答するわけではない。実際に応答する患者でさえも、HIVウイルスの突然変異率が周知のごとく高いために、その後、薬剤耐性を示し得る。しかし、ウイルス量の減少およびCD4細胞数の増加に基づき、プロテアーゼインヒビターの血漿中レベルと治療効力とに明確な関係性があることが示されてきた。1つの問題は、薬剤が広範囲で代謝され、複雑な薬剤−薬剤相互作用に供されるという事実にある。その結果、非常に複雑な薬物動態、および任意の特定の患者についての任意の特定の時間における投薬量と得られる薬剤レベルとの強い予測不可能要素が生じる。治療薬をモニタリングすれば、薬剤投薬量を患者に応じて個別化でき、ウイルスを監視下におく確率がはるかに高くなる。しかし、プロテアーゼインヒビターの日課的な治療薬モニタリングのためには、ハイスループット臨床分析器に適合可能な単純な自動化テストが利用可能である必要がある。プロテアーゼインヒビターの治療薬モニタリングについての現在のほとんどの報告では、遅く、労力が多く、費用のかかるHPLC法を使用している。最近、サキナビル用のラジオイムノアッセイ(RIA)法の報告がなされた(非特許文献1)。しかし、このような方法は、ハイスループット治療薬モニタリングには適合可能ではなく、全てのRIA法と同様、アッセイで使用する放射性同位体標識に関する調節面、安全面および廃棄処理面の課題を抱えているという欠点がある。治療薬モニタリングのために最も望ましいアッセイ形式は、非同位体イムノアッセイであり、このような方法は、HIVプロテアーゼインヒビターをモニタリングするためにはこれまでに未知であった。
【0003】
上述したように、HPLCは、これまでHIVプロテアーゼインヒビターをモニタリングする際に選択される方法であった。最近の文献における2つの報告では、ヒト血漿中のいくつかのプロテアーゼインヒビターの同時測定のためのHPLCアッセイが記載されている(非特許文献2および非特許文献3)。
【0004】
化学的および生化学的アッセイは、一般的に、目的の被分析物を、所定量の1つ以上のアッセイ試薬と接触させ、得られる生成物(検出生成物)の1つ以上の性質を測定し、(典型的に、テストするサンプルについて予測される範囲内の既知量の目的の被分析物を含む標準または較正サンプルから決定される関係を使用して)測定した値を元のサンプルに存在する被分析物の量と相関させることを伴う。典型的に、検出生成物は、1つ以上のアッセイ試薬により得られる1つ以上の検出可能標識を取り込む。よく使用される標識の例としては、機能化微粒子、放射性同位体標識(125Iおよび32P等)、酵素(ペルオキシダーゼおよびβガラクトシダーゼ等)ならびに酵素基質標識、蛍光標識(フルオレセインおよびローダミン等)、電子スピン共鳴標識(ニトロキシド遊離基等)、免疫反応性標識(抗体および抗原等)、結合対(ビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジン等)の一方のメンバーである標識、ならびに電気化学発光標識(ルテニウムビピリジル部分を含むもの等)が挙げられる。サンドウィッチアッセイは、典型的に、目的の被分析物が、最終的に分離のために使用される1つのアッセイ試薬(例えば、抗体、抗原または結合対の一方のメンバー)と、検出可能な標識を提供する第2のアッセイ試薬との間に挟まれた複合体を形成することを伴う。競合アッセイは、典型的に、目的の被分析物、および被分析物の類似体の両方が、別の試薬(例えば、抗体)上の結合部位について競合する系(被分析物、類似体または結合試薬の1つが検出可能標識を有する)を伴う。
【0005】
2000年11月14日に出願され、本願と出願人が同じであり、2002年5月22日に特許文献1として公開された、同時係属出願中の特許文献2は、HIVプロテアーゼインヒビターについての非同位体イムノアッセイを記載しており、これは、インヒビターを含むサンプルを、インヒビターまたは該インヒビターの代謝物質に特異的な受容体とインキュベートし、さらに、該インヒビターの類似体および非同位体シグナル生成部分を含むコンジュゲートとインキュベートすることを含む。受容体とインヒビターとの結合によって生成されるシグナルを測定し、元のサンプル中のプロテアーゼインヒビターの有無または量と相関させる。本発明のプロテアーゼインヒビターコンジュゲートは、このようなアッセイにおいて特に有用である。
【非特許文献1】Wiltshireら, Analytical Biochemistry 281, 105−114, 2000
【非特許文献2】Poirierら, Therapeutic Drug Monitoring 22, 465−473, 2000
【非特許文献3】Remmelら, Clinical Chemistry 46, 73−81, 2000
【特許文献1】EP 1 207 394
【特許文献2】米国特許出願第09/712,525号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの問題の中でも特に、HIVプロテアーゼインヒビターであるサキナビル、アンプレナビル、インジナビル、ネルフィナビル、ロピナビル、およびリトナビルまたはアタザナビル代謝物質4−ピリジン−2−イル−安息香酸と本質的に交差反応性がないアタザナビルに特異的な抗体に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
上記の背景に対して、本発明は、従来技術に対して非自明の利点および進歩を提供するものである。特に、発明者らは、イムノアッセイにおいて有用なアタザナビルコンジュゲートおよび抗体の改良の必要性を認識している。
【0008】
本発明は、HIVプロテアーゼインヒビターであるアタザナビルに対する免疫原、コンジュゲートおよび抗体の作成に有用な、アタザナビルの活性化ハプテンを提供する。これらの活性化ハプテンは以下の一般構造:
I−X−(C=Y)m−L−A
[式中、Iはアタザナビル基であり、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、O、SまたはNHであり、
mは、0または1であり、
Lは、0〜40個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のリンカーであって、さらに最大2つまでの環式構造および0〜20個のヘテロ原子を含むが、ただし2個以下のヘテロ原子しか並んで連結されないリンカーであり、
Aは、活性エステル、イソシアネート、イソチオシアネート、チオール、イミドエステル、無水物、マレイミド、チオラクトン、ジアゾニウム基およびアルデヒドからなる群より選択される活性化官能基(activated functionality)である]
を有する。
【0009】
本発明はまた、以下の構造:
[I−X−(C=Y)m−L−Z]n−P
[式中、Iはアタザナビル基であり、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、O、S、またはNHであり、
mは、0または1であり、
Lは、0〜40個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のリンカーであって、さらに最大2つまでの環式構造および0〜20個のヘテロ原子を含むが、ただし2個以下のヘテロ原子しか並んで連結されないリンカーであり、
Zは、−CONH−、−NHCO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−OCONH−、−NHOCO−、−S−、−NH(C=NH)−、−N=N−、−NH−、および
【化1】

【0010】
からなる群より選択される部分であり、
Pは、ポリペプチド、多糖類および合成高分子からなる群より選択され、
nは、Pの分子量50キロダルトンにつき、1〜50の数である]
を有するアタザナビル免疫原も提供する。
【0011】
本発明はまた、以下の構造:
[I−X−(C=Y)m−L−Z]n−Q
[式中、Iはアタザナビル基であり、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、O、S、またはNHであり、
mは、0または1であり、
Lは、0〜40個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のリンカーであって、さらに最大2つまでの環式構造および0〜20個のヘテロ原子を含むが、ただし2個以下のヘテロ原子しか並んで連結されないリンカーであり、
Zは、−CONH−、−NHCO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−OCONH−、−NHOCO−、−S−、−NH(C=NH)−、−N=N−、−NH−、および
【化2】

【0012】
からなる群より選択される部分であり、
Qは、非同位体標識からなる群より選択され、
nは、Qの分子量50キロダルトンにつき、1〜50の数である]
を有する標識コンジュゲートも提供する。
【0013】
本発明はまた、サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、アンプレナビル、リトナビル、およびロピナビルからなる群より選択されるHIVプロテアーゼインヒビターに対して1%未満の交差反応性しか持たない、HIVプロテアーゼインヒビターであるアタザナビルに対する抗体も提供する。
【0014】
本発明はまた、HIVプロテアーゼインヒビターであるサキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、アンプレナビル、リトナビル、およびロピナビルに対して1%未満の交差反応性しか持たない、HIVプロテアーゼインヒビターであるアタザナビルに対する抗体も提供する。
【0015】
本発明はまた、アタザナビル代謝物質である4−ピリジン−2−イル−安息香酸に対して1%未満の交差反応性しか持たない、HIVプロテアーゼインヒビターであるアタザナビルに対する抗体も提供する。
【0016】
最後に、本発明は、本発明の免疫原から作成される抗体ならびに該抗体および本発明の標識コンジュゲートを採用したイムノアッセイ方法およびテストキットを提供する。
【0017】
本発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、下記の発明の詳細な説明を特許請求の範囲と共に考えればさらに十分に理解されるであろう。特許請求の範囲は、その記載によって定義され、本明細書で説明する特徴および利点の具体的な考察により定義されるものではない点に留意すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明をより容易に理解するために下記の実施例を参照するが、この実施例は本発明を例示することを意図するものであって、その範囲を限定するものではない。
【0019】
本明細書において、「好ましくは」「一般的に」および「典型的に」といった用語は、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するために用いるものではなく、または特定の特徴が、特許請求の範囲に記載された発明の構成または機能にとって重大な意味を持ち、必要不可欠であり、または重要であるということを示唆するために用いるものではないという点に留意すべきである。むしろ、これらの用語は単に、本発明の特定の実施形態において用いても用いなくともよい代替的なまたは付加的な特徴を強調することを意図するものにすぎない。
【0020】
本発明を記載および定義するため、本明細書において「実質的に」という用語は、任意の定量比較、定量値、定量的測定、または他の表現による特有の不確実性の度合いを表すために用いられる点に留意すべきである。本明細書において、「実質的に」という用語は、問題の対象の基本的機能に変化を生じることなく、定量的表現が規定の基準から変動し得るような度合いを表すためにも用いられる。
【0021】
本明細書で使用する、被分析物とは、有無または量を測定すべき物質または物質群を指す。
【0022】
抗体とは、被分析物の特異的な結合パートナーを意味し、被分析物に対して特異的な結合親和性を有し、他の無関係な物質を本質的に除く任意の物質または物質群である。本用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および抗体フラグメントを含む。
【0023】
ハプテンは、部分的または不完全な抗原である。抗体形成を刺激することはできないが、抗体とは反応する、タンパク質を含まない物質(大部分が低分子量の物質)である。抗体は、ハプテンを高分子量担体とカップリングさせ、このカップリング生成物をヒトまたは動物に注射することにより形成される。ハプテンの例としては、治療薬(ジゴキシンおよびテオフィリン)、乱用薬物(モルヒネおよびLSD等)、抗生物質(ゲンタマイシンおよびバンコマイシン等)、ホルモン(エストロゲンおよびプロゲステロン等)、ビタミン(ビタミンB12および葉酸等)、チロキシン、ヒスタミン、セロトニン、アドレナリン等が挙げられる。
【0024】
活性化ハプテンとは、誘導体コンジュゲートを合成するための活性化基の結合または供給(furnishing)等により、反応のために利用可能な部位を得たハプテン誘導体を指す。
【0025】
リンカーという用語は、ハプテンを、担体、免疫原、標識、トレーサー、または別のリンカーに結合させる化学的残基を指す。リンカーは、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の炭素鎖であり得る。これらはまた、鎖内または鎖の末端において、1つ以上のヘテロ原子も含み得る。ヘテロ原子とは、酸素、窒素および硫黄からなる群より選択される炭素以外の原子を意味する。リンカーの使用は、具体的なハプテンと担体との対に応じて、有利なこともそうでないこともあり、または必要であることもそうでないこともある。
【0026】
本明細書で使用する用語としての担体は、ハプテンと結合してハプテンが免疫応答を刺激できるようにする免疫原性物質(一般的にはタンパク質)である。担体物質としては、外来物質として認識され、宿主から免疫応答を引き出す、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖類および核酸が挙げられる。
【0027】
本明細書中で使用する免疫原および免疫原性という用語は、生物中において免疫応答を引き起こすまたは生じさせることが可能な物質を指す。
【0028】
コンジュゲートおよび誘導体という用語は、1つ以上の化学反応により、親化合物または分子から作られる化合物または分子を指す。
【0029】
本明細書で使用する、検出分子、標識またはトレーサーは、担体物質または分子に結合した場合に被分析物を検出するのに使用できる識別タグである。標識は、連結または架橋部分により直接的または間接的に担体物質に結合され得る。標識の例としては、βガラクトシダーゼおよびペルオキシダーゼ等の酵素、ローダミンおよびフルオレセインイソチオシアネート (FITC)等の蛍光化合物、ジオキセタンおよびルシフェリン等の発光化合物、ならびに125I等の放射性同位体が挙げられる。
【0030】
本発明の意味において活性エステルという用語は、求核試薬担持物質の他の反応基との妨害的副反応が有意に生じない条件下で、ペプチドの遊離アミノ基、ポリアミノ酸、多糖類または標識(ただしこれらに限定されない)等の求核試薬と反応できる活性化エステル基を包含する。
【0031】
本発明の目的は、アタザナビルに対する免疫原を作成するために使用できる活性化アタザナビルハプテンを提供することである。これらの活性化ハプテンは、以下の式:
I−X−(C=Y)m−L−A
[式中、Iはアタザナビル基であり、
XはOまたはNHであり、
YはO、SまたはNHであり、
mは0または1であり、
Lは、0〜40個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のリンカーであって、さらに最大2つまでの環式構造および0〜20個のヘテロ原子を含むが、ただし2個以下のヘテロ原子しか並んで連結されないリンカーであり、
Aは、活性エステル、イソシアネート、イソチオシアネート、チオール、イミドエステル、無水物、マレイミド、チオラクトン、ジアゾニウム基およびアルデヒドからなる群より選択される活性化官能基(activated functionality)である]
で表される。
【0032】
本明細書で使用するHIVプロテアーゼインヒビター基とは、ヒドロキシル基またはアミノ基、すなわちXH(ここで、XはOまたはNH)のみを欠く無傷の薬物である。XおよびC=Y部分としては、エステル(ここで、XはO、YはO、およびmは1)、アミド(ここで、XはNH、YはO、およびmは1)、ウレタン(ここで、XはO、YはO、mは1、およびC=Yに隣接するLの一番目の原子はN)、尿素(ここで、XはNH、YはO、mは1、およびC=Yに隣接するLの一番目の原子はN)、チオ尿素(ここで、XはNH、YはS、mは1、およびC=Yに隣接するLの一番目の原子はN)、アミジン(ここで、XはNH、YはNH、およびmは1)、エーテル(ここで、XはO、およびmは0)ならびにアミン(ここで、XはNR(RはHもしくは低級アルキル)、およびmは0)が挙げられるがこれらに限定されない。「低級アルキル」とは、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピル基を意味する。好ましい活性化ハプテンは、全てのHIVプロテアーゼインヒビターに共通する中央(central)、非末端ヒドロキシル基で形成されるエステルまたはウレタンである。この中央ヒドロキシル基は、プロテアーゼインヒビターの治療的活性のために機能的に重要であるが、誘導化およびリンカー結合のための都合のよいハンドルともなる。さらに、一般的に、プロテアーゼインヒビターの代謝は、末端残基において起こり、従って、中央ヒドロキシル基は、親薬物と代謝物質とを区別する抗体を生成するように免疫原を設計するためには魅力的な部位である。本明細書で使用する場合、この中央ヒドロキシル基は、HOcと表記する。中央ヒドロキシル基の水素が(C=Y)m−L−A基により置き換えられる場合、残る結合酸素はOcと示す。
【0033】
リンカーLは、末端活性化官能基AとHIVプロテアーゼインヒビター基との間の追加のスペーサー(一番目のスペーサーはXおよびC=Y基である)を提供する目的を果たす。リンカーの長さおよび組成は、免疫原応答およびコンジュゲートの性能に重要な影響を有することが当業者に周知である。市販のリンカーまたは簡単に合成されるリンカーの多くの例が、ヒドロキシル基およびアミノ基への結合についての文献において記載されている。この題目についての良い論文については、Bioconjugate Techniques, G. Hermanson, Academic Press, 1996を参照されたい。場合によっては、追加のリンカーLは不要で、C=Y部分は活性化官能基に直接結合される。好ましいリンカー部分Lの一例は、−(CH2)x−NH−(ここで、xは1〜12)である。特に好ましいのは、x = 5と、C=Yとの組み合わせである(ここで、YはOである(すなわち、アミノカプロイルエステル)。このようなリンカーは、N保護アミノ酸(すなわち、アミノカプロン酸)でのHIVプロテアーゼインヒビターのアシル化により形成される。保護基は、HIVプロテアーゼインヒビター基中のX−C=Y結合または他の部分の完全性に影響しないような穏やかな塩基性または酸の条件下で除去されるものであることが好ましい。穏やかな塩基性の条件下で除去されるN保護基の一例は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)である。酸で除去し易いN保護基の一例は、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)である。多くの他の適切なN保護基が、当該分野で周知である(Organic Synthesis, 第二版, T. GreeneおよびP. Wuts, Wiley−Interscience, 1991に掲載の“Protective Groups”を参照)。
【0034】
HIVプロテアーゼインヒビターのヒドロキシル基またはアミノ基とN−保護アミノ酸とのアシル化反応は、触媒と共にまたは無しで、カルボジイミド等の縮合試薬を使用して達成される。好ましい組み合わせは、ジシクロヘキシルカルボジイミドとジメチルアミノピリジン(触媒)である。アシル化反応は、塩化メチレンなどの適切な溶媒中で、0〜35℃にて、典型的に0.5〜7日間にわたる時間で実行する。生成物を単離した後、N保護基を除去する。好ましいFMOC保護基のためには、これは、塩化メチレンに入った10%ピペリジン溶液で0.5〜2時間処理することにより達成される。得られたアミノアシル−プロテアーゼインヒビターのアミノ基は、本発明が属する分野の当業者に周知の様々なカルボキシル活性化リンカー伸長または標識でのアシル化反応の影響を受け易い。リンカー伸長は、この段階で末端活性化基A(活性エステル、イソシアネートおよびマレイミド等)を生成するために行われることが多い。例えば、テレフタル酸等のビス−カルボン酸のホモ二官能基(homobifunctional)N−ヒドロキシスクシンイミドエステルの一端とアミノアシルプロテアーゼインヒビターとの反応は、ポリペプチド、多糖類および標識上のアミンへのコンジュゲートのために有用な安定したN−ヒドロキシスクシンイミドエステル末端リンカー付加物を生成する。リンカー伸長は、マレイミドアルカン酸(alkanoic acid)N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等のヘテロ二官能性(heterobifunctional)試薬で、ポリペプチドおよび標識上のチオール基へのその後のコンジュゲートのための末端マレイミド基を生成しても達成され得る。あるいはまた、アミノ末端リンカーは、一端でアミド結合を形成し、他端で遊離または保護されたチオールを形成するように反応するヘテロ二官能性チオール化試薬で伸長できる。当該分野で周知のこの種のチオール化試薬のいくつかの例としては、2−イミノチオレン(2−IT)、スクシンイミジルアセチルチオプロピオネート(SATP)、およびスクシンイミド2−ピリジルジチオプロピオネート(SPDP)が挙げられる。脱保護した後、初期(incipient)チオール基が利用可能になり、マレイミドまたはブロモアセチル化改変型免疫原または標識とチオールエーテルを形成する。さらに別の代替例は、アミノ末端リンカーのアミノ基を、ジアゾニウム基に変換し、その後、例えば酸の存在下での亜硝酸アルカリ金属との反応により該物質をジアゾニウム塩に変換し、その後に該ジアゾニウム塩が適切な求核部分(例えば、ペプチド、タンパク質、ポリアミノ酸等のチロシン残基が挙げられるがこれらに限定されない)と反応することである。このようなジアゾニウム塩への変換用の適切なアミノ末端リンカーの例としては、芳香族アミン(アニリン)が挙げられるが、上記言及したアミノカプロエートおよび同様の物質も挙げられ得る。このようなアニリンは、上述したプロテアーゼインヒビターのヒドロキシルとN保護アミノ酸とのカップリング反応において、アミノ基が芳香族アミン(すなわち、アニリン)からなる対応するアミノ酸を、(N−アセチルまたはN−トリフルオロアセチル基として)適切に保護され、その後当該分野で周知の方法を用いて脱保護されるアミンと置換することで得ることができる。ジアゾニウム塩に対する他の適切なアミン前駆体は、有機合成の分野の当業者は思いつくであろう。
【0035】
別の好ましい種類のヘテロ二官能性リンカーは、スクシンイミド−オキシカルボニル−塩化ブチリル等の混合された活性エステル/酸塩化物である。リンカーの反応性がより高い酸塩化物末端は、HIVプロテアーゼインヒビター上のアミノまたはヒドロキシル基を優先的にアシル化して、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルリンカー付加物を直接生じる。
【0036】
本発明において有用なさらに別の種類の末端活性化基は、アルデヒド基である。アルデヒド基は、プロテアーゼインヒビターのヒドロキシルを、オメガ位(遠位端)においてアセタール基等のマスクされたアルデヒド基(1,3−ジオキソラン−2−イルまたは1,3−ジオキサン−2−イル部分等)で置換されたアルキルまたはアリール酸と、上記したのと同様の手法でカップリングさせ、その後当該分野で周知の方法を用いて基を脱マスクすることにより、生成され得る(例えば、T. GreeneおよびP. Wuts、前掲を参照)。あるいはまた、オメガ位置において、例えばアセトキシ部分等の保護されたヒドロキシ基により置換されるアルキルまたはアリールカルボン酸がカップリング反応において使用されてもよく、その後、ヒドロキシの脱保護、および適切な溶媒(好ましくは塩化メチレン)中での重クロム酸ピリジニウム等の試薬での穏やかな酸化を行い、対応するアルデヒドを得る。アルデヒド末端化物質を生成する他の方法は、当業者に明らかであろう。
【0037】
特定の場合には、リンカー組成物に極性を導入して、目的のアッセイにおける可溶性または性能特性を改善することが望ましい。この点で特に有用なのは、最適化のために多様な可能性を提供し、固相ペプチド合成または他の手段により容易に利用可能なペプチドリンカーである。
【0038】
プロテアーゼインヒビターへの結合点においてウレタン、尿素またはチオ尿素結合を有するアシル化HIVプロテアーゼインヒビターを生成するために特に有用な別のアプローチは、プロテアーゼインヒビターのヒドロキシルまたはアミノ基を、リンカーイソシアネートまたはリンカーイソチオシアネートと反応させることである。例えば、カルボキシル基上に保護基を有するかまたは持たないカルボキシアルキルイソシアネートを、プロテアーゼインヒビター上の標的ヒドロキシル基と直接反応させて、保護されたカルボキシアルキルウレタンまたはカルボキシアリールウレタンを得てもよい。保護されたカルボキシは、塩基性または酸性条件下で除去されるエステルであることが好ましい。遊離後、カルボキシル基を活性化させて、その後のコンジュゲートのための活性エステルを得るか、またはポリペプチド、多糖類および標識に直接コンジュゲートさせてもよい。あるいはまた、N−ヒドロキシスクシンイミジル−イソシアナトベンゾエート(isocyanatobenzoate)等の予め活性化されたカルボキシアルキルイソシアネートまたはカルボキシアリールイソシアネートを、プロテアーゼインヒビターのヒドロキシルまたはアミン基と直接反応させて、活性エステル末端を有するリンカー−アシル化プロテアーゼインヒビターを得てもよい。
【0039】
HIVプロテアーゼインヒビターとの結合点におけるウレタン、尿素およびチオ尿素結合を生成するためのさらに別のアプローチは、まず標的ヒドロキシル官能基またはアミン官能基をホスゲンまたはチオホスゲンで処理して、塩化オキシカルボニルまたは塩化オキシチオカルボニルを得ることである。後者の中間体は、アミンと反応し易く、ウレタン、尿素またはチオ尿素を生じる。カルボニルジイミダゾールまたはジスクシンイミジル−カーボネート等の代替的なホスゲン等価物も、同様に反応する。
【0040】
中央ヒドロキシル基から、HIVプロテアーゼインヒビターのアルキル化誘導体を生成するためには、別のアプローチも有用である。例えば、プロテアーゼインヒビター(または正しく保護されたプロテアーゼインヒビター)を、適切な条件下で強力な塩基と反応させて、中央ヒドロキシル基を脱プロトン化させてもよい。これを、保護されたカルボン酸または適切に保護された官能基(フタルイミドとして保護されたアミノ基等)を担持する様々なハロアルキル試薬と反応させて、エーテル結合を形成してもよい。保護されたカルボキシル基は、酸性または塩基性条件下で除去されるエステルであることが好ましい。遊離カルボン酸基を活性化させて、その後のポリペプチド、多糖類および標識基へのコンジュゲートのための活性エステルを得てもよい。脱保護後、遊離アミノ基を、二官能性リンカーを活性化カルボン酸基と共に用いて伸長してもよいし、または尿素結合または同様の基によりポリペプチドにコンジュゲートさせてもよい。
【0041】
アミジン付加物の生成のために、HIVプロテアーゼインヒビターのアミンを、イミドエステル(その多くがバイオコンジュゲート(bioconjugate)化学においてリンカーとして公知である)と反応させる(Hermanson、同書を参照)。
【0042】
あるいはまた、イミデート(imidate)部分(イミドエステル;またはイミニウム(im inium)基)を活性化基として担持するリンカーで誘導体化されたプロテアーゼインヒビターを、例えば、プロテアーゼインヒビターを適切に官能化する際に、適切な前駆基(例えば、末端ニトリル基)を担持するリンカーを用いて得てもよい。例えば、末端ニトリルを担持する、ネルフィナビル等のOC−アルキル化誘導体もしくはOar−アルキル誘導体、またはアンプレナビル等のNar−アルキル誘導体を、上述したのと同様の手法で合成し、例えば、アルコールに入った塩化水素での処理等の当該分野で公知の方法によりニトリルをイミデート基に変換してもよい。Hermanson、同書;およびJerry March, Advanced Organic Chemistry, 第三版, John Wiley and Sons, 1985も参照のこと。イミドエステルを得るための他の方法は、当業者は思いつくであろう。
【0043】
同じプロテアーゼインヒビター中に複数のヒドロキシ基を有する特定のプロテアーゼインヒビター(すなわち、インジナビルおよびネルフィナビル)、または同じプロテアーゼインヒビター中にヒドロキシ基およびアミノ基を有する特定のプロテアーゼインヒビター(すなわち、アンプレナビル)では、一方の基を保護して、専ら他方の官能基において反応させる必要があり得る。例えば、インジナビルのインダンヒドロキシル基を、隣接するアミド窒素と架橋するイソプロピリジン基で保護できる。本出願の目的のために、インダンヒドロキシル基を、HOinと表示して、HOCと区別する。伸長によるイソプロピリジン保護インジナビル HOinは、OinNin−イソプロピリジニルと称する。
【0044】
別の例では、ネルフィナビルの芳香族ヒドロキシル(本明細書で使用する場合にはHOar)は、中央ヒドロキシル基、すなわちHOCとの反応の前に、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基で保護される。アルコールおよびフェノールのための多くの他の適切な保護基が、当該分野で知られており、さらなる例としてGreeneおよびWutsを同じく参照されたい。
【0045】
別のケースでは、反応条件の調節により、他方の官能基に対して一方の官能基を選択することが可能になり、保護が必要でなくなる。後者のアプローチの一例は、アンプレナビルのヒドロキシル基またはアミノ基の選択的アシル化である。別の例は、非保護脂肪族中央ヒドロキシル基の存在下での、ネルフィナビルのフェノールヒドロキシル基(HOar)の選択的アルキル化である。
【0046】
上記説明から、目的のHIVプロテアーゼインヒビターハプテン組成物中に活性化末端基Aを生じるリンカー技術の改変法が多くあることが明らかである。以下、これらの改変法の一部をより詳細に記載する。活性エステルは、最も好ましいA基である。本発明の活性エステルは、求核試薬、特に第一級アミンと、比較的低温度(一般的に0〜100℃)にて、様々な水性および非水性溶媒混合液中で、反応性を有する。アミドを得るための第一級または第二級アミンとの活性エステルのカップリングのための典型的な条件は、水が添加されたかまたはされていない、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルスルホキシド(DMSO)等の両性非プロトン性溶媒中での室温における反応である。緩衝液または第三級アミンを添加して、第一級アミン反応物質を脱プロトン化状態のままにするために必要な塩基性pHを維持することが多い。典型的な活性エステルは、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾリルエステル、およびペンタフルオロフェニルエステルである。安定性、反応性、および副産物であるN−ヒドロキシスクシンイミドの除去が簡単なことのバランスから、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルが特に好ましい。他の活性エステルは、当業者に周知であり、同様に使用され得る。
【0047】
末端にカルボン酸を有するプロテアーゼインヒビターリンカーのための代替的な活性化方法は、無水物のin situ調製である。クロロギ酸イソブチルなどのクロロギ酸アルキルで形成される混合炭酸無水物が特に好ましい。これらの混合無水物は、DMFまたはテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒に入ったトリエチルアミンまたはN−メチルモルホリン等の第三級アミンの存在下で、5分間〜1時間の、カルボン酸とクロロギ酸アルキルとの反応により、典型的に−30℃〜+30℃、通常は−20℃〜0℃の範囲の温度にて容易に形成される。次に、混合無水物を、標識、免疫原および担体上のアミノ基と、典型的に5分〜1時間、0℃〜+30℃にて反応させて、安定したアミドコンジュゲートを得る。また、THF、DMFまたはジクロロメタン等の様々な溶媒中での、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはエチル−ジメチルアミノプロピル−カルボジイミド(EDAC)等のカルボジイミドとの、2当量のプロテアーゼインヒビターリンカーカルボン酸基の反応により対称無水物を形成してもよい。活性化およびアミンへのカップリングは、典型的には、上記混合無水物カップリングと同様の条件下で行われる。
【0048】
末端にカルボン酸を有するプロテアーゼインヒビターリンカーのさらに別の活性化方法は、カルボン酸基を、ホモシステインチオラクトン等の物質と結合させることにより、チオラクトン等のマスクされたチオール基へ変換することである(例えば、米国特許第5,302,715号を参照)。その後、得られたリンカー−チオラクトンを、穏やかな塩基でマスクを外して、末端チオールを得てもよく、これはその後、マレイミド−またはハロアセチル−改変型ペプチド、多糖類、ポリアミノ酸、標識等の上にあるようなマレイミド基またはブロモアセチルもしくはヨードアセチル基等の部分と反応して、先に記載したのと同様の手法によりチオ−マレイミドまたはチオ−アセチル付加物を生じる。
【0049】
その他の有用なA基は、イソチオシアネートまたはイソシアネート部分である。イソチオシアネートは、第一級アミン等の求核試薬とも反応し易く、上記した活性エステル反応と同様の条件下でチオ尿素を生じる。一方、イソシアネートは、同様に反応して尿素を生じる。イソチオシアネートまたはイソシアネート反応のさらなる利点は、置換ではなく付加であること、従って、活性エステルの場合のように副産物を考慮する必要がないことである。例えばp−ニトロフェニルオキシカルボニルアミノ部分等のイソシアネート等価物は、第一級アミンと同様に反応して、尿素を生じる。
【0050】
最後に、標的求核試薬がチオール基である場合、非常に穏やかな条件下(すなわち、周囲温度および中性pH)でチオールエーテルを迅速に形成することから、マレイミドが特に好ましい。あるいはまた、ヨードアセチルまたはブロモアセチル等の活性ハロアルキルA基も反応し易く、安定したチオールエーテルを形成する。
【0051】
本発明の別の目的は、以下の構造:
[I−X−(C=Y)m−L−Z]n−P
[式中、Iはアタザナビル基であり、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、O、SまたはNHであり、
mは、0または1であり、
Lは、0〜40個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のリンカーであって、さらに最大2つまでの環式構造および0〜20個のヘテロ原子を含むが、ただし2個以下のヘテロ原子しか並んで連結されないリンカーであり、
Zは、−CONH−、−NHCO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−OCONH−、−NHOCO−、−S−、−NH(C=NH)−、−N=N−、−NH−、および
【化3】

【0052】
からなる群より選択される部分であり、
Pは、ポリペプチド、多糖、または合成高分子からなる群より選択され、ならびに
nは、Pの分子量50キロダルトンにつき、1〜50の数である]
を有する免疫原を提供することである。
【0053】
免疫原について、本発明の好適な形態は、全てのHIVプロテアーゼインヒビターに共通する中央ヒドロキシル基から、アシル化反応により連結して、エステル結合を形成することである(すなわち、XはO、mは1、およびYはO)。多様なリンカーLおよび活性化官能基Aが、上述したように使用できる。したがって、I−X−(C=Y)m−L−Aタイプの活性化ハプテンを構築し、免疫原担持物質と反応させる。免疫原担体は、典型的に、10 kDを上回る分子量のポリペプチドまたは多糖である。好ましい免疫原担体は、100 kDを上回る分子量のポリペプチドである。好ましい担体物質の例は、スカシガイヘモシアニン(KLH)、アメリカカブトガニヘモシアニン(LPH)およびウシサイログロブリン(BTG)である。活性化ハプテンと担体上のアミノ基との反応は、典型的に、水とDMSO等の水混和性有機溶媒との緩衝化混合液中で、室温にて0.5〜5日間行われる。緩衝液のpHは、典型的に、活性化エステル、イソシアネートおよびイソチオシアネートについては6〜8、イミデートについては7〜10であり、担体アミノ基の既知の反応性および活性化官能性に応じて調節される。末端基Aがマレイミドの場合、担体上の反応基はチオールである。チオール基は、担体に本来備わっているものであるか、または2−ITもしくはSATP等のチオール化試薬を用いて導入され得る。マレイミドをチオール基にコンジュゲートして、チオエーテルを得るための最適pHは、典型的に5〜7である。反応後、免疫原を、透析するか、またはサイズ排他クロマトグラフィーにかけて、コンジュゲートしていないハプテンおよび有機溶媒を除去する。
【0054】
免疫原を得るための代替的な方法は、活性化ハプテン(Aはアルデヒド)を、担体タンパク質またはポリペプチドのアミノ基と反応させてシッフ塩基を形成し、その後、シアノホウ水素化物(cyanoborohydride)等の穏やかな還元剤で還元して、安定したアミン結合を形成することである。この最後のアプローチに対する変更も、本発明が属する分野の当業者は思いつくであろう。
【0055】
本発明のさらに別の目的は、本発明の免疫原から生成された、HIVプロテアーゼインヒビターに対する抗体を提供することである。抗体を生成するために、免疫原は、凍結乾燥した免疫原を再水和し、免疫原の溶液または懸濁液を形成して、宿主動物への注射用に調製することができる。あるいはまた、免疫原を予め調製した液体溶液としてまたは緩衝液に入った懸濁液として使用してもよい。次いで、免疫原溶液を、フロイントアジュバント等のアジュバントと組み合わせて、免疫原混合液を形成する。免疫原は、様々な部位に、いくつかの用量で、1回以上、数週間かけて、投与され得る。
【0056】
本発明の免疫原を使用するポリクローナル抗体の調製は、当業者に公知の従来技術のいずれに従ってもよい。一般的に、ウサギ、ヤギ、マウス、モルモットまたはウマ等の宿主動物に、免疫原混合液を注射する。血清の抗体力価を評価しながら、最適な力価に到達したと決定されるまでさらなる注射を行う。その後、宿主動物から採血し、適切な容量の特異的な抗血清を産生する。所望の場合には、精製ステップを行い、抗血清がアッセイの実施において使用するのに適していると判断されるまで、非特異的抗体等の所望でない物質を除去する。
【0057】
Methods in Enzymology 73 (Part B), pp. 3−46, 1981に記載される技術等のポリエチレングリコール法を使用して、上述したように免疫化したマウスから得たマウスリンパ球と骨髄腫細胞とを融合することによりモノクローナル抗体を得てもよい。
【0058】
ELISAアッセイの場合、ウシ血清アルブミン(BSA)にコンジュゲートしたプロテアーゼインヒビター誘導体がマイクロタイタープレートを被覆するのに好ましい。
【0059】
本発明の別の目的は、以下の構造:
[I−X−(C=Y)m−L−Z]n−Q
[式中、Iは、アタザナビル基であり、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、O、S、またはNHであり、
mは、0または1であり、
Lは、0〜40個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の直鎖状または分岐鎖状のリンカーであって、さらに最大2つまでの環式構造および0〜20個のヘテロ原子を含むが、ただし2個以下のヘテロ原子しか並んで連結されないリンカーであり、
Zは、−CONH−、−NHCO−、−NHCONH−、−NHCSNH−、−OCONH−、−NHOCO−、−S−、−NH(C=NH)−、−N=N−、−NH−、および
【化4】

【0060】
からなる群より選択される部分であり、
Qは、非同位体標識からなる群より選択され、ならびに
nは、Qの分子量50キロダルトンにつき、1〜50の数である]
を有する標識化コンジュゲートを提供することである。
【0061】
HIVプロテアーゼインヒビターおよび非同位体標識のコンジュゲートの合成のために、免疫原を調製するのと同様の手順を採用する。
【0062】
あるいはまた、活性化ハプテンを、酵素上のアミノまたはチオール基にコンジュゲートさせて、ELISA用途のための標識を調製してもよい。コンジュゲートが当該分野で周知であるELISA用の有用な酵素のいくつかの例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、およびβ−ガラクトシダーゼがある。酵素を始めとするタンパク質のコンジュゲートは、典型的に、水と水混和性有機溶媒との緩衝化混合液中で調製され、その後、免疫原の調製と同様の条件で透析する。ラテックス凝集アッセイの場合、10 kD〜300 kD、好ましくは40 kDの分子量を有するアミノ化デキストラン担体とのコンジュゲートが特に有用である。これらのコンジュゲートは、上述したように緩衝化溶媒混合液中で、またはトリエチルアミン等の第三級アミンを含むDMSO等の無水有機溶媒中で調製されて、反応を促進する。低分子量(すなわち1 kD未満)の標識の場合、標識の性質に応じて反応条件を調節する。特に好ましい標識の1つは、標識化アビジンまたはストレプトアビジンと組み合わせられるビオチンである。非同位体検出における(ストレプト)アビジン/ビオチン系の万能性は、バイオコンジュゲート化学の分野においては周知である(Hermanson, 同書を参照)。アビジンおよびストレプトアビジンの様々な酵素−およびフルオロフォア標識化コンジュゲートは、市販されており、高親和性相互作用においてビオチン標識化物質を検出する。さらに、様々なビオチン化剤が市販されており、活性化官能基Aと反応する。例えば、ビオチン−アミン誘導体を、Aが活性エステル、イソシアネートまたはイソチオシアネートである本発明の活性化ハプテンと反応させて、ビオチンアミド、尿素およびチオ尿素コンジュゲートをそれぞれ得てもよい。これらのカップリング反応は、典型的に、トリエチルアミン等の有機塩基を含む、DMFまたはDMSO等の両性非プロトン性溶媒中で、室温にて、0.5〜5日間行われる。ビオチンコンジュゲートは、逆相HPLC等のクロマトグラフィー法により優先的に単離される。
【0063】
他の好ましい標識は、フルオレセイン、ローダミン、TEXAS RED(蛍光色素(Molecular Probes, Inc.))、ダンシルおよびシアニン染料(例えば、Cy−5)等の発蛍光団であり、そのうちの多くの活性化誘導体は市販されている。一般的に、これらのコンジュゲートは、第三級アミンを含む両性非プロトン性溶媒中でビオチンコンジュゲートと同様に調製され、その後クロマトグラフィーにより単離され得る。
【0064】
検出系と間接的にカップリングされたリポーター基を標識として使用することも可能である。一例は、上述したようなビオチンである。別の例は、2001年1月4日に公表されたPCT公報WO 200101135に記載されるようなイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼの阻害のためのミコフェノール酸誘導体である。
【0065】
HIVプロテアーゼインヒビター活性化ハプテン上の活性化基Aとの反応について、ルテニウムビピリジル誘導体等の電気化学発光標識、アクリジニウムエステル等の化学発光標識、電気化学伝達物質、ならびに標識上に適切な求核基を適切に導入した後に本発明のために使用できる様々な微粒子およびナノ粒子(例えば、アミンまたはチオール)を含めて、非同位体標識について他の可能性があることも当業者には明らかであろう。
【0066】
本発明の詳細、およびその具体的実施形態を参照することにより、特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく改変および変更が可能であることは明らかであろう。さらに具体的には、本発明の態様の幾つかは好ましく、または特に有利であることが本明細書において確認されているが、必ずしも本発明をこれらの好ましい態様に限定するものではないことが意図される。
【実施例】
【0067】
具体的な実施形態
以下の実施例では、参照数字は図中に示す対応する構造を指す。これらの実施例は、例示のために提示されるものであり、本発明を限定することを意図したものではない。
【0068】
アタザナビルのO−アシル化
実施例1
Oc−(N−FMOC−アミノカプロイル)−アタザナビル(2)の合成
アタザナビル(1、0.20 g)、FMOC−アミノカプロン酸(0.010 g、1当量)、DCC(0.059 g、1当量)、およびDMAP(0.038 g、1当量)を、無水塩化メチレン(40 mL)中で室温にて一晩攪拌し、Oc−(N−FMOC−アミノカプロイル)−アタザナビル(2)を調製した。その後、0.5当量のFMOC−アミノカプロン酸および0.5当量のDCCを追加的に添加し、さらに3日間攪拌し続けた。混合液を濾過し、濾過液を減圧下で蒸発乾固し、シリカゲルクロマトグラフィーにより窒素の正圧下で直接精製(3%メタノール含有クロロホルム溶出液)して、生成物であるOc−(N−FMOC−アミノカプロイル)−アタザナビル(7A、210 mg、71%)を白色の固体として得た。M+H 1040.5。
【0069】
O−アシル化アタザナビルの脱保護
実施例2
Oc−(アミノカプロイル)−アタザナビル(3)の合成
実施例1で得たOc−(N−FMOC−アミノカプロイル)−アタザナビル(2)(0.092 g)を、10%ピペリジン含有無水塩化メチレン(4 mL)中で室温にて1時間攪拌した。混合液を減圧下で蒸発乾固した。2本のカラムを用いたシリカゲルクロマトグラフィー精製を行い(第1のカラムには40%メタノール含有酢酸エチル(EtOAc)を、第2のカラムには20%メタノール含有EtOAcを使用)、生成物であるOc−(アミノカプロイル)−アタザナビル3を固体(0.070 g、97%)として得た。M+H 818.4。
【0070】
別の精製を実施し、分取RP−HPLC(C18、0.1%TFA−アセトニトリル含有0.1%TFA−水の5%〜100%勾配)による精製の後、3をトリフルオロ酢酸(TFA)塩として単離した。
【0071】
O−アシル化アタザナビルのリンカー伸長による活性化ハプテンの作成
実施例3
Oc−(スクシンイミド−オキシカルボニル−ブチリル−アミノカプロイル)−アタザナビル(4)の合成
TFA塩としてのOc−(アミノカプロイル)−アタザナビル(3)(0.070 g)、トリエチルアミン(22 μL)、およびスクシンイミド−オキシカルボニル塩化ブチリル(0.0195 g)を、乾燥THF中で約0℃(氷水バス)にて3時間攪拌した。反応液を蒸発乾固し、15%THF含有酢酸エチル中に再溶解し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製した(30%THF含有EtOAcで溶出し、カラムは数カラム量の15%THF含有EtOAcで予洗した)。生成物を含有する画分を、混合し、蒸発させ、乾燥塩化メチレン(CH2Cl2)中に再溶解させてから再蒸発させ(数回反復)、Oc−(スクシンイミド−オキシカルボニル−ブチリル−アミノカプロイル)−アタザナビル(4)を固体(24 mg、31%)として得た。M+H 1029.4。
【0072】
実施例4
Oc−[4'−(スクシンイミド−オキシカルボニル)−ベンゾイル−アミノカプロイル]−アタザナビル(5)の合成
Oc−(アミノカプロイル)−アタザナビル(3、0.054 g)を含む2 mLの乾燥DMF溶液を、攪拌されている、ジスクシニミジルテレフタレート(0.0228 g)を含む4.5 mLの乾燥DMFの冷却した溶液(氷水バス)に徐々に添加した。しばらく攪拌した後、トリエチルアミン(50 μL)を添加し、反応液を一晩攪拌した。HPLCによる分析は反応の本質的な完了を示していた。溶媒を高減圧下(25℃未満)にて、ロータリーエバポレーター(rotovap)によって除去し、残渣をアセトニトリル−水中に再溶解し、分取RP−HPLC(C18、0.1%TFA−アセトニトリル含有0.1%TFA−水の5%〜100%勾配)により精製し、アセトニトリルを蒸発させて凍結乾燥させた後、メインピークから、生成物であるOc−[4'−(スクシンイミド−オキシカルボニル)−ベンゾイル−アミノカプロイル]−アタザナビル(5)を、トリフルオロ酢酸塩として2片(0.036 gと0.007 g、混合して0.043 g、55%)得た。M+H 1063.5(遊離塩基)。
【0073】
タンパク質へのアタザナビルのコンジュゲーション
実施例5
Oc−(スクシンイミド−オキシカルボニル−ブチリル−アミノカプロイル)−アタザナビルとKLHとのコンジュゲート(6)の合成
精製したスカシガイヘモシアニン(60 mg)と、実施例3で得たOc−(スクシンイミド−オキシカルボニル−ブチリル−アミノカプロイル)−アタザナビル(4)(17 mg)から、Oc−(スクシンイミド−オキシカルボニル−ブチリル−アミノカプロイル)−アタザナビルKLHコンジュゲートを調製した。スカシガイヘモシアニンとOc−(スクシンイミド−オキシカルボニル−ブチリル−アミノカプロイル)−アタザナビルを、40%DMSOを含有する50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)(1.5 mL)中で、室温において2日間攪拌した。混合液を、順番に30%、20%、10%および0%DMSOを含有する1リットルの50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)に対して室温にて透析し、その後、1リットルの50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)に対して4℃にて透析した。クーマーシーブルータンパク質アッセイによる保持液のタンパク質定量は、10.8 mg/mL、92%のタンパク質回収率を示した(KLH標準/対照)。TNBS比色アッセイによるアミン定量は、56%のリシンが修飾されていることを示した。
【0074】
実施例6
Oc−[4'−(スクシンイミド−オキシカルボニル)−ベンゾイル−アミノカプロイル]−アタザナビルとBSAとのコンジュゲート(7)の合成
ウシ血清アルブミン (100 mg)と、実施例4で得たTFA塩としてのOc−[4'−(スクシンイミド−オキシカルボニル)−ベンゾイル−アミノカプロイル]−アタザナビル(5)(3 mg)から、Oc−[4'−(スクシンイミド−オキシカルボニル)−ベンゾイル−アミノカプロイル]−アタザナビルBSAコンジュゲートを調製した。ウシ血清アルブミンとOc−[4'−(スクシンイミド−オキシカルボニル)−ベンゾイル−アミノカプロイル]−アタザナビルを、40%DMSOを含有する50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)(1.5 mL)中で、室温において2日間攪拌した。混合液を、順番に30%、20%、10%および0%DMSOを含有する1リットルの50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)に対して室温にて透析し、その後、1リットルの50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)に対して4℃にて透析した。クーマーシーブルータンパク質アッセイによるタンパク質定量から、10.0 mg/mLにおいてタンパク質の定量的回収率が示された(BSA標準/対照)。UV差分光法から、ハプテン対BSAが1:1.7であることが示された。
【0075】
アタザナビルに対する抗体の構築
実施例7
免疫化と融合
8週齢のメスBalb/cマウスを、完全フロイントアジュバント中に乳化させた100 μgのKLH免疫原6を腹腔注射して免疫化した。21日後、不完全フロイントアジュバント中に乳化させた同じ投与量の免疫原を用いて、もう1回免疫化した。同じ投与量で、約21日間隔でRibiアジュバントと交互に用いて、さらに4回注射を行った。全てのアジュバントは、Sigma Chemical Co.から入手した。
【0076】
融合のために選択したマウスを放血により屠殺した。脾臓を回収し、2枚の滅菌スライドガラスの間ですりつぶして、リンパ球を放出させた。得られたリンパ球懸濁液を、F0骨髄腫細胞株(ATCC CRL 1646)と融合させるために使用した。
【0077】
融合は、骨髄腫細胞(リンパ球の数の1/5)をリンパ球に添加し、遠心分離をして洗浄し、無血清の温かいイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中に再懸濁し、再度遠心分離することにより行った。得られたペレットを含む遠心分離管を、軽く叩いて細胞をほぐし、緩やかに混合しながら1 mLの温めたPEG/DMSO溶液(Sigma Chemicals)をゆっくりと添加した。細胞を1.5分間温かく維持し、その後、予め温めた無血清IMDMを、1 ml/分、2 ml/分、4 ml/分、および10 ml/分の速度で添加した。その後、遠心分離管を50 mlまで満たし、密封して15分間インキュベートした。細胞懸濁液を遠心分離にかけ、上清をデカントし、10%ウシ胎仔血清を含むIMDMを添加した。細胞を再度遠心分離にかけ、完全クローニング培地中に再懸濁した。この培地は、IMDM、10%FCS、10%Condimed H1(Roche Molecular Systems)、4 mMグルタミン、50 μM 2−メルカプトエタノール、40 μM エタノールアミン、Pen/Strep抗生物質で構成されていた。細胞を4 x 105リンパ球/mlの密度で懸濁し、滅菌96ウェルマイクロカルチャープレートに100 μL/ウェルで分配し、5%CO2中で37℃にて24時間インキュベートした。翌日、100 μLのヒポキサンチン−メトトレキセート−チミジン(HMT)選択培地(クローニング培地 + 1:25 HMTサプリメント、Sigma Chemicals製)を添加した。インキュベーション6日目に、軽真空源に接続した滅菌8連マニホールドを用いて、各ウェルから約150 μLの培地を抜いた。その後、150μLのヒポキサンチン−チミジン(HT)培地を添加した。この培地は、クローニング培地 + 1:50 HTサプリメント(Sigma Chemicals)で構成されていた。プレートをインキュベーターに戻し、成長の徴候について毎日検査した。成長が十分であると判断された場合、抗体産生についてELISAによりウェルをスクリーニングした。
【0078】
実施例8
抗体スクリーニング
アタザナビル−BSAコンジュゲート(7)と遊離型アタザナビルを用いたELISAにより、成長ハイブリドーマのスクリーニングを行った。50μLのアタザナビル−BSAコンジュゲートを1μg/mL含有する0.1 M炭酸緩衝液(pH 9.5)を用いて、37℃(加湿下)で1時間マイクロプレートを被覆した。次いで、プレートを空にし、Tris緩衝液、1%ゼラチン加水分解物、2%スクロースおよび0/17%TWEEN20(全てSigma Chemical Co.製)で構成される被覆後溶液で満たした。プレートをさらに1時間37℃(加湿下)でインキュベートし、その後、0.1%TWEEN20を含むリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。その後、0.15 M Trisに入った2%スクロース溶液(pH 7.2〜7.4)で一時プレートを満たし、そして空にして、室温にて風乾した。乾燥したら、プレートを、いくつかの乾燥剤クッションを含むジップロックバッグにパッキングして、密封し、使用時まで4℃にて保存した。
【0079】
成長しているクローンを試験する準備が整ったと判断したら、ウェルから25μLの上清を採り、96ウェルフレキシブルプレートに移した。培地を各ウェルに添加して、培地サンプルの1:10希釈液を得た。試験する各培養ウェルとして、2つのアタザナビル−BSA被覆ウェルを使用した。一方のウェルには25μLのPBS緩衝液を加え、他方には800 ng/mlの濃度でアタザナビル剤を含む25μLのPBSを加えた。25μLの希釈サンプルを、上記2つの被覆ウェルのそれぞれに移した。プレートを覆って37℃で1時間インキュベートした後、PBS−TWEENで洗浄した。次いで、PBS−TWEENで1:5,000希釈した100 μLのヤギ抗マウスIgG−HRPコンジュゲート(Zymed Labs)でウェルを満たし、プレートを1時間再度インキュベートした。プレートを再度洗浄し、100μLのK−BLUE SUBSTRATE(Neogen Corp)を各ウェルに添加した。これを5〜15分間発色させ、100μLの1 N HClを加えて反応を止めた。マイクロプレートリーダーを用いて450 nmにて色を読み取り、分析のためコンピューターで収集した。選択の基準は、PBSを加えたウェルに対する結合、および遊離剤を加えたウェルにおける結合の有意な阻害とした。
【表1】

【0080】
融合培養プレートからのクローンの選択後、限界希釈を介して、細胞をストリンジェントなクローニングに供した。顕微鏡により単一の細胞が確認されたウェルから成長したサブクローンを、上記方法により再度試験した。抗体発現の安定性は、抗体を示すウェルの数、結合のレベル、および成長は示すが、ほとんどまたは全く抗体を示さないウェルの存在で判断した。後者が一つでも見つかれば、高い抗体分泌を示すウェルを使用して、ストリンジェントなサブクローニングを繰り返した。必要に応じてこの操作を繰り返し、等量の抗体を分泌するサブクローンを100%得た。その後、選択したウェルから得た細胞を培養中で増殖させ、予備細胞バンクを調製するために使用した。これらの培養由来の上清を特異性分析に供した。
【0081】
実施例9
抗体特異性
増殖培養から得た、抗体を含む培養上清を、以下の手順により特異性分析に供した。第1に、分析に適した力価を希釈分析により決定した。最大結合の約50%を生じる抗体の希釈を、次のステップに進むために選択した。第2に、アタザナビル−BSAコンジュゲートへの結合を、上記抗体希釈にて、様々な量の7種のHIVプロテアーゼインヒビターの存在下で調査した。データを、4−パラメータロジスティック関数に適合する非線形回帰曲線による分析に供した。遊離剤の非存在下における結合の50%に相当する遊離剤の濃度を表すパラメータを、該薬剤についてのED50と呼ぶ。従って、抗体の特異性は、同族薬剤であるアタザナビルのED50、すなわちatz ED50と、他の薬剤についての他の値(この例ではネルフィナビルのデータを使用)とを、下記の式に当てはめて比較することにより表すことができる:
%交差反応性=(atzED50/nelED50)x 100
使用する4−パラメータロジスティック関数は:
ODx=(ODmax/(1+(ED50/X)s)− ODmin
[式中、Sは曲率パラメータであり、
ODmaxは薬剤濃度が0のときの光学濃度であり、
ODminは機器のバックグラウンドの光学濃度であり、そして
ODx は薬剤濃度X(モル/リットル(M/L)で表す)において観測される光学濃度である]
である。
【0082】
表2は、表1に示す細胞株のサブクローンの特異性を示す。アタザナビル代謝物は、4−ピリジン−2−イル−安息香酸(Synchem, Inc.)である。試験した抗体は、アタザナビルに対して極めて特異的であることが示された。試験化合物の相対濃度の30倍増にて試験した交差反応性は偏向を示さず、競合阻害を示唆していた。
【表2】

【0083】
実施例10
アタザナビルの濃度反応曲線
特異性試験に用いたELISAアッセイを使用し、アタザナビル−BSAコンジュゲート7、アタザナビル遊離薬剤、および抗体ATZ 4.1を用いて濃度反応曲線を作成した。アタザナビル濃度(モル/リットル)をX軸上にプロットし、波長450 nmにおける4分間の吸光反応をY軸上にプロットした。得られたデータを図2に示し、有効なアッセイ範囲が2 x 10−8〜2 x 10−6モル、または0.16μg/ml〜16μg/mlであることを示している。
【0084】
マウスハイブリドーマ ATZ 4.1を、2004年10月19日にAmerican Type Culture Collection (ATCC)に寄託し、ATCC No.PTA−6257が付与された。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、0−アシル化アタザナビル活性化ハプテン、KLH免疫原、およびBSAコンジュゲートの合成についてのスキームを示す。
【図2】図2は、本発明のアタザナビル−BSAコンジュゲート7および抗体ATZ 4.1を使用して実施例10で得られた結果をプロットする濃度反応曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、アンプレナビル、リトナビル、およびロピナビルからなる群より選択されるHIVプロテアーゼインヒビターまたはHIVプロテアーゼインヒビター代謝産物との交差反応性が1%未満である、アタザナビル特異的モノクローナル抗体。
【請求項2】
サキナビル、ネルフィナビル、インジナビル、アンプレナビル、リトナビル、およびロピナビルとの交差反応性が1%未満である、請求項1に記載のアタザナビル特異的モノクローナル抗体。
【請求項3】
4−ピリジン−2−イル−安息香酸との交差反応性が1%未満である、請求項1に記載のアタザナビル特異的モノクローナル抗体。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のマウスハイブリドーマATZ 4.1(ATCC No. PTA−6257)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−518897(P2008−518897A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538365(P2007−538365)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011808
【国際公開番号】WO2006/048300
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】