説明

イムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子、イムノクロマト法試薬、それを用いたイムノクロマト法用テストストリップ、及びイムノクロマト法用蛍光検出システム

【課題】含有される標識物質を変えることで様々な色相、蛍光波長等を付与することができ、かつ凝集等によっても黒ずんだ色にならないイムノクロマト用標識シリカナノ粒子、及び、前記シリカナノ粒子を、検体を認識する物質で表面修飾してなるイムノクロマト法試薬を提供することにある。
前記イムノクロマト法試薬を用いてなるイムノクロマト法用テストストリップを提供することにある。前記標識物質として蛍光物質を用いたイムノクロマト法試薬を用いたイムノクロマト法用蛍光検出システムを提供することにある。
【解決手段】標識物質を含有してなるシリカナノ粒子からなるイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識物質を含有したシリカナノ粒子、それを用いることにより、同時多項目検出を可能にしたイムノクロマト法試薬に関する。さらに、前記イムノクロマト法試薬を用いてなるイムノクロマト法用テストストリップ、前記標識物質として蛍光物質を用いた場合の高感度検出を可能にしたイムノクロマト法用蛍光検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマト法とは、被検物質が毛細管現象により多孔質支持体内を移動し、標識粒子に捕捉され、更に多孔質支持体に局所的(例えば、ライン状)に固定化された捕捉物質と効率的に接触することによって前記被検物質が濃縮され、捕捉物質が固定化されたラインが発色することによって被検物質の有無を判定する免疫測定法をいう。
イムノクロマト法の特徴として下記の3点が挙げられる。
(1)判定までに要する時間が20分以下であり迅速な検査が可能である。
(2)検体を滴下するだけで測定でき、操作が簡便であるため、複数の検体処理が可能である。
(3)特別な検出装置を必要とせず、判定が容易なため一般消費者が自身で検査できる。
これらの特徴を利用して、イムノクロマト法は妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬に用いられており、新たなPOCT(Point Of Care Testing)の手法として注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、POCTとは、患者にできる限り近い場所で診断のための検査をいう。従来は採取した血液、尿、患部組織などの検体は、病院の中央検査室や専門の検査センターに送られデータを出すので、診断の確定までに時間がかかっていた(例えば、1日以上)。POCTによれば、瞬時に提供される検査情報をもとに迅速かつ的確な治療が可能となることから、病院での緊急検査や手術中の検査が可能になるので、最近、医療現場でニーズが高い。
【0003】
現在イムノクロマト法では標識物質として金ナノ粒子が最もよく使用されている(例えば、特許文献2参照)。金ナノ粒子は吸光度が高いため視認性に優れるものの、色を一色しか出すことができないため、色の選択の余地がないことが問題であった。また大きい粒径の金粒子や凝集を起こした金粒子は色が黒ずんでしまうため、クリアな色が出せない場合があることが問題であった。
【特許文献1】特開2006−67979公報
【特許文献2】特開2003−262638公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、含有される標識物質を変えることで様々な色相、蛍光波長等を付与することができ、かつ凝集等によっても黒ずんだ色にならないイムノクロマト用標識シリカナノ粒子、及び、前記シリカナノ粒子を、検体を認識する物質で表面修飾してなるイムノクロマト法試薬を提供することにある。
また、本発明の目的は、前記イムノクロマト法試薬を用いてなるイムノクロマト法用テストストリップを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、前記標識物質として蛍光物質を用いたイムノクロマト法試薬を用いたイムノクロマト法用蛍光検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記手段により達成された。
すなわち本発明は、
(1) 標識物質を含有してなるシリカナノ粒子からなる、イムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子、
(2) 前記標識物質が蛍光物質または吸光物質であることを特徴とする、(1)に記載のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子、
(3) 前記標識シリカナノ粒子の平均粒径が20〜600nmであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子、
(4) 検体を認識する物質で表面修飾されてなることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子、
(5) 前記(4)に記載の標識シリカナノ粒子からなるイムノクロマト法試薬、
【0006】
(6) 前記標識物質の種類又はその含有量が異なることにより区別される2種類以上の標識シリカナノ粒子を用い、2種類以上の検体を同時に検出することを特徴とする、(5)に記載のイムノクロマト法試薬、
(7) 前記標識物質が、吸光物質であり、前記吸光物質の吸光スペクトルにおける吸光最大波長が、200〜800nmの範囲にあることを特徴とする(5)又は(6)に記載のイムノクロマト法試薬、
(8) 前記吸光スペクトルの極大波長における、前記シリカナノ粒子のモル吸光係数が5×10−1cm−1以上であることを特徴とする(7)に記載のイムノクロマト法試薬、
(9) 前記標識物質が、蛍光物質であり、前記蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子が発する蛍光を検出することにより高感度検出を可能としたことを特徴とする(5)又は(6)に記載のイムノクロマト法試薬、
(10) 前記蛍光が、青色蛍光、黄色蛍光、オレンジ色蛍光又は赤色蛍光であることを特徴とする(9)に記載のイムノクロマト法試薬、
【0007】
(11) 試料添加用部材、(5)〜(10)のいずれか1項に記載のイムノクロマト法試薬としての標識シリカナノ粒子を含浸させてなる部材、抗体固定化部を有するメンブレン及び吸収パッドが直列連結してなるイムノクロマト法用テストストリップ、
(12) 同一の前記抗体固定化部における発色の色相の違いまたは蛍光波長の違いによって2種類以上の検体を同時に検出することを特徴とする(11)に記載のイムノクロマト法用テストストリップ、
(13) 前記(9)又は(10)に記載のイムノクロマト法試薬を用いてなる検出システムであって、前記シリカナノ粒子が発する蛍光の検出に用いる励起光源の波長が200nm〜400nmであることを特徴とするイムノクロマト法用蛍光検出システム、
(14) 前記励起光源から特定の波長の励起光のみを透過するフィルタと、前記励起光を除去し蛍光のみを透過するフィルタとを備えることを特徴とする(13)に記載のイムノクロマト法用蛍光検出システム、
(15) さらに、前記蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備え、前記光電子倍増管又はCCD検出器により前記蛍光を検出し、前記蛍光の強度を測定することにより検体を定量することを特徴とする(14)に記載のイムノクロマト法用蛍光検出システム、及び
(16) 前記励起光源が、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプのいずれかであることを特徴とする(13)〜(15)のいずれか1項に記載のイムノクロマト法用蛍光検出システム
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子は、様々な吸光特性および蛍光特性を付与することができるので、各種イムノクロマト法に好適に用いられる。
本発明のイムノクロマト法試薬は、前記標識シリカナノ粒子を用いてなり、さらに検体を認識する物質で表面修飾されてなるので、様々な吸光特性および蛍光特性を付与することができ、複数種の検体の同時分析に好適である。
本発明のイムノクロマト法用テストストリップは、前記イムノクロマト法試薬を用いてなるので、複数種の検体の同時検出、定量又は判定が可能であり、新たなPOCTの診断手法として好適である。
さらに、本発明のイムノクロマト法用蛍光検出システムは、前記イムノクロマト法試薬として蛍光物質を含有させてなるシリカナノ粒子を用いてなるので、蛍光検出による高感度検出ないしは定量が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子について説明する。
本発明のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子は、標識物質を含有してなるシリカナノ粒子からなる。
本発明において、前記標識シリカナノ粒子の平均粒径は20〜600nmであることが好ましく、60〜300nmであることがより好ましい。粒径が小さすぎると、検出感度が低下し、粒径が大きすぎると、イムノクロマト法に用いられる多孔質支持体(メンブレン)の目詰まりの原因となる。
本発明において、前記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した50個のシリカナノ粒子の合計の投影面積からシリカナノ粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択したシリカナノ粒子の個数(50個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)を求めたものである。
粒度分布の変動係数いわゆるCV値は特に制限はないが、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。
本明細書及び特許請求の範囲において、単分散とはCV値15%以下の粒子群をいう。
本発明において、用いるシリカ粒子は特に制限はなく、任意のいかなる調製方法によって得られたシリカ粒子であってもよい。例えば、Journal of Colloid and Interface Science, 159, 150−157(1993)に記載のゾル−ゲル法で調製されるシリカ粒子等が挙げられる。
本発明者らは、蛍光色素化合物含有コロイドシリカ粒子の調製方法について特許出願している(例えば、特願2005−376401)。その方法に準じて得られた、標識物質を含有するシリカナノ粒子を用いることが特に好ましい。
具体的には、前記標識物質を含有するシリカナノ粒子は、前記標識物質とシラン化合物とを反応させ、共有結合、イオン結合その他の化学的に結合もしくは吸着させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を重合させることにより調製することができる。
前記標識物質を含有するシリカナノ粒子の好ましい調製方法の態様としては、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基、マレイミド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、アルデヒド基、パラニトロフェニル基、ジエトキシメチル基、エポキシ基、シアノ基等の活性基を有する前記標識物質と、それら活性基と対応して反応する置換基(例えば、アミノ基、水酸基、チオール基)を有するシランカップリング剤とを反応させ、共有結合させて得られた生成物に1又は2種以上のシラン化合物を重合させることにより調製することができる。
【0010】
前記活性基を有する前記標識物質の具体例として、5−(及び−6)−カルボキシテトラメチルローダミン・スクシンイミジルエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)等のNHSエステル基を有する標識物質を挙げることができる。
【0011】
前記置換基を有するシランカップリング剤の具体例として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。中でも、APSが好ましい。
【0012】
前記重合させる前記シラン化合物としては、特に制限はされないが、テトラエトキシシラン(TEOS)、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、及び3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル−トリエトキシシランを挙げることができる。中でも、TEOS、MPS又はAPSが好ましい。
【0013】
上述のように調製すると、球状、もしくは、球状に近いシリカ粒子が製造できる。球状に近いシリカ粒子とは、具体的には長軸と短軸の比が2以下の形状である。
所望の平均粒径のシリカ粒子を得るためには、YM−10、YM−100(いずれも商品名、ミリポア社製)等の限外ろ過膜を用いて限外ろ過を行い、粒径が大きすぎたり小さすぎる粒子を除去するか、または適切な重力加速度で遠心分離を行い、上清または沈殿のみを回収することで可能である。
【0014】
本発明において、前記標識物質は、前記標識シリカナノ粒子中において固定化された状態にある。前記標識物質は蛍光物質または吸光物質などの機能性物質が挙げられる。蛍光物質または吸光物質に関して特に制限はなく、有機分子、無機化合物、半導体粒子等である。前記標識物質が蛍光物質または吸光物質の場合、前記標識シリカナノ粒子に対する蛍光物質または吸光物質の濃度が20mmol/l以上であることが好ましく、40〜80mmol/lであることがより好ましい。
ここで、「前記標識シリカナノ粒子に対する蛍光物質または吸光物質の濃度」とは、蛍光物質あるいは吸光物質のモル数を、前記標識シリカナノ粒子の体積で割ったものである。蛍光物質あるいは吸光物質のモル数は、前記標識シリカナノ粒子の吸光度もしくは蛍光強度から求めたものであり、また前記標識シリカナノ粒子の体積は、前記標識シリカナノ粒子分散液から前記標識シリカナノ粒子を遠心分離または限外ろ過によって回収し、乾燥させ、質量を求め、シリカ粒子の密度を2.3g/cmとして求めたものである。
【0015】
前記標識シリカナノ粒子をイムノクロマト法に用いるためには、検体を認識する物質(例えば、抗体、抗原、DNA、RNAなどの生体分子)で表面修飾されていることが好ましい。
本明細書及び特許請求の範囲において、検体を含有する試料液体としては特に制限ないが、尿、血液などが挙げられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、検出、定量、検査、診断、判定の対象としての検体は、抗原、抗体、DNA、RNA、糖、糖鎖、リガンド、受容体、ペプチド、化学物質等が挙げられる。より具体的には、妊娠の重要なマーカーとして、抗原である、尿中のヒトゴナドトロピン(hCG)・ペプチドホルモンを検体として妊娠の有無を判定もしくは診断することが挙げられる。
前記標識シリカナノ粒子と前記検体を認識する物質を結合させる方法としては特に制限は無く、静電的引力、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等によって前記検体を認識する物質を前記標識シリカナノ粒子に吸着させても良いし、架橋剤や縮合剤によって化学結合で結合させても良い。また、前記標識シリカナノ粒子表面にMPS(γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)等のチオール基を有するシランカップリング剤を用いてチオール基を導入し、前記検体を認識する物質のチオール基とS−S結合によって結合させても良い。
また、前記標識シリカナノ粒子表面の生体分子(例えば、抗体、抗原、DNA、RNA)などの前記検体を認識する物質を結合したときに粒子が凝集する場合は、予め、前記標識シリカナノ粒子表面に交互吸着法によって表面処理を施しておいても良い。交互吸着法とは、電荷を有する基板や粒子の表面に電荷を持った高分子を静電的引力で吸着させることで、基板や粒子の表面に高分子の薄膜を形成する手法である。前記標識シリカナノ粒子の表面に交互吸着処理を行うことにより粒子表面に電荷を付与できるため、粒子間に静電的反発力が生じ、分散性が向上する。また、粒子に結合した高分子は排除体積を持つことから、立体反発力の効果によっても分散性が向上する。
【0016】
次に、本発明のイムノクロマト法試薬について説明する。
本発明のイムノクロマト法試薬は、前記標識シリカナノ粒子からなり、前述のように検体を認識する物質で表面修飾されていることが好ましい。
【0017】
本発明のイムノクロマト法試薬として、前述のように前記標識物質として吸光物質又は蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子からなることが好ましい。
前記吸光物質としては、前記任意の光源による光を吸光する物質であれば特に制限はなく、プレートリーダー等の汎用の検出器(例えば、Vmax(商品名、Molecular Devices社製)、マイクロプレートリーダーMPR−A4i(商品名、東ソー社製))による検出およびデータの互換性の観点から、吸光スペクトルにおける吸光最大波長が200〜800nmの範囲内にある吸光物質が好ましく、吸光スペクトルにおける吸光最大波長が400〜700nmの範囲にある吸光物質がより好ましい。
ここで、「吸光最大波長」とは、吸光スペクトルにおいて、吸収ピークが複数存在する場合において、前記吸収ピークの中で、吸光度が最大であるものの波長をいう。
吸光スペクトルにおける吸光最大波長が200〜800nmの範囲内に存在する吸光物質である限り、任意の吸光性色素を用いることができるが、下記式で表されるDYQ−660(商品名、Dyomics GmbH社製)のNHSエステル等が好ましい。
【0018】

【0019】
前記吸光物質を含有させてなるシリカナノ粒子は、5×10−1cm−1以上のモル吸光係数εとすることができ、εが2×10−1cm−1〜1×1011−1cm−1であることが好ましい。
前記吸光物質を含有させてなるシリカナノ粒子の吸光度、吸光スペクトル及びεは、任意の吸光光度計ないしはプレートリーダーを用いて、水分散液、エタノール分散液、N,N−ジメチルフォルムアミド分散液等の分散液として測定できる。
「前記吸光物質を含有させてなるシリカナノ粒子のモル吸光係数ε」とは、前記吸光物質を含有させてなるシリカナノ粒子の分散液について吸光度を測定し、ランベルト−ベールの式に適用することにより得られた、前記分散液中における前記吸光物質を含有させてなるシリカナノ粒子のモル吸光係数εをいう。
【0020】
本発明のイムノクロマト法試薬において、前記標識物質として蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子であって、検体を認識する物質で表面修飾されたシリカナノ粒子を用いる場合には、前記シリカナノ粒子が発する蛍光を検出することにより高感度検出ないしは定量が可能である。
前記蛍光物質は特に制限はないが、汎用の検出器(例えば、AE−6931FXCF プリントグラフ(商品名、ATTO社製))による検出およびデータの互換性の観点から、青色蛍光(440〜490nm)、黄色蛍光(540〜590nm)、オレンジ色蛍光(590〜620nm)又は赤色蛍光(620〜740nm)である蛍光物質が好ましい。
【0021】
次に、本発明のイムノクロマト法用テストストリップについて説明する。
本発明のイムノクロマト法用テストストリップは、
(1)試料添加用部材(サンプルパッド)と前記標識シリカ粒子を含浸させてなる部材(コンジュゲートパッド)とが、
(2)前記コンジュゲートパッドと抗体固定化部を有するメンブレン(抗体固定化メンブレン)とが、並びに
(3)前記抗体固定化メンブレンと吸収パッドとが
相互に毛細管現象が生じるように直列連結していることがより好ましい。
【0022】
図1a及びbを参照して、本発明のイムノクロマト法用テストストリップの好ましい1つの実施態様について説明する。
図1aは本発明のイムノクロマト法用テストストリップの平面図を示し、図1bは、aで示されたイムノクロマト法用テストストリップの平面図の縦断面図を示す図である。
本発明のイムノクロマト法用テストストリップ1は、試料添加用部材(サンプルパッド)2、標識シリカナノ粒子含浸部材(コンジュゲートパッド)3、抗体固定化メンブレン4、吸収パッド5からなることが好ましい。上記各構成部材は粘着剤付きバッキングシート6により裏打ちされていることがより好ましい。
前記メンブレン4における抗体固定化部としては、検体の有無を判定、すなわち陽性陰性を判定するための捕捉用抗体が固定化されたテストライン41、および標識シリカ粒子により標識された全ての検体を捕捉する抗体が固定化されたコントロールライン42を含むことが好ましい。
【0023】
次に、上記各部材について説明する。
1)試料添加用部材(サンプルパッド)2
サンプルパッド2は検体を含むサンプルを滴下する構成部材である。
2)標識シリカナノ粒子含浸部材(コンジュゲートパッド)3
コンジュゲートパッド3は標識シリカナノ粒子が含浸された構成部材であり、サンプルパッド2から毛細管現象により移動してきた試料液体に含まれる検体が抗原抗体反応等の分子認識反応で、前記標識シリカ粒子によって捕捉され、標識される部分である。
コンジュゲートパッド3における単位面積(cm)当たりの前記標識シリカナノ粒子の含有量は特に制限ないが50μg〜2mgが好ましい。含浸方法としては、前記標識シリカ粒子の分散液を塗布、滴下ないしは噴霧後、乾燥する方法等が挙げられる。
3)抗体固定化メンブレン4
メンブレン4は前記シリカナノ粒子により標識された検体が毛細管現象によって移動する構成部材であり、固定化抗体―検体―標識シリカナノ粒子からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応が行われる抗体固定化部(判定部)を有する。
前記メンブレンにおける前記抗体固定化部(判定部)の形状としては局所的に捕捉用抗体が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられるが、ライン状であることが好ましく、幅0.5〜1.5mmのライン状であることがより好ましい。
固定化抗体―検体―標識シリカナノ粒子からなるサンドイッチ型免疫複合体形成反応により抗体固定化部(判定部)に、前記シリカ粒子により標識された検体が捕捉され、形成された前記複合体中の前記シリカナノ粒子に由来する発色又は蛍光の程度により検体の有無を判定、すなわち陽性陰性を判定することができる。すなわち、前記抗体固定化部(判定部)に標識シリカ粒子が濃縮され、着色シグナルとして目視的に、又は検出機器を用いて検出、判定できる。
前記サンドイッチ型免疫複合体形成反応を充分に完了させるため、あるいは液体試料中の着色物質による測定への影響や検体と結合していない標識シリカナノ粒子による測定への影響を回避するため、メンブレンにおける判定部は、前記コンジュゲートパッドとの連結端及び前記吸収パッドとの連結端からある程度離れた位置(例えば、前記メンブレンの中程など)に設けておくことが好ましい。
【0024】
前記抗体固定化部(判定部)における抗体固定化量は特に制限ないが、形状がライン状の場合、単位長さ(cm)当たりの0.5μg〜5μgが好ましい。固定化方法としては、抗体溶液を塗布、滴下ないしは噴霧後、乾燥して物理吸着により固定化する方法等が挙げられる。
前述の抗体固定化後に、非特異的吸着による測定への影響を防止するために前記メンブレン全体をいわゆるブロッキング処理を施しておくことが好ましい。例えば、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等のブロッキング剤を含有する緩衝液中に適当な時間浸漬した後乾燥する方法等が挙げられる。市販の前記ブロッキング剤としては、例えば、スキムミルク(DIFCO社製)、4%ブロックエース(明治乳業社製)などが挙げられる。
4)吸収パッド5
吸収パッド5は、毛細管現象でメンブレンを移動してきた試料液体および標識シリカ粒子を吸収し、常に一定の流れを生じさせるための構成部材である。
【0025】
これら各構成部材の材料としては特に制限は無く、イムノクロマト法用テストストリップに用いられる部材が使用できるが、サンプルパッドおよびコンジュゲートパッドとしてはGlass Fiber Conjugate Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のガラスファイバーのパッドが好ましく、メンブレンとしてはHi−Flow Plus120メンブレン(商品名、MILLIPORE社製)等のニトロセルロースメンブレンが好ましく、吸収パッドとしてはCellulose Fiber Sample Pad(商品名、MILLIPORE社製)等のセルロースメンブレンが好ましい。
前記粘着剤付きバッキングシートとしては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
前記テストストリップの作製法としては、試料添加用部材(サンプルパッド)、標識シリカ粒子含浸部材(コンジュゲートパッド)、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの並び順に、各部材間で毛管現象を生じさせ易くするために、それら各部材の両端を隣接する部材と1〜5mm程度重ね合わせて(好ましくはバッキングシート上に)貼付することで作製することができる。
【0026】
発色の程度の判定は、目視以外に例えば、プレテスターRM−405、プレテスターRM−505(いずれも商品名、和光純薬工業社製)等の尿試験紙用のテスター、例えばデンシトメーター等を用いて行ってもよいことはいうまでもない。
前記テストストリップは、手技の習熟していない一般需要者でも操作し易くし、かつPOCTの観点から、テストストリップの検出ラインを目視にて観察する観察窓のプラスチック材料等でハウジング(ケーシング)されていることが好ましい。例えば、特開2000−356638等に記載されているハウジング等が挙げられる。
【0027】
本発明のイムノクロマト法試薬としての前記標識シリカナノ粒子は、異なる種類の前記標識物質を含有させることにより様々な色相、蛍光波長等を付与することができる。そのようにして得られた2種類以上の標識シリカナノ粒子を用いることによって、例えば、前記テストストリップにおいて、2種類以上の検体を1回の操作で同時に検出、定量、判定又は診断することが可能である。
このとき、前記2種類以上の標識シリカナノ粒子は、それぞれ、異なる検体に対して分子認識する表面修飾物質で修飾されていることが必要である。
具体例としては、A型インフルエンザウイルス核タンパク質を認識するマウス抗A型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体で表面修飾された赤色色素(例えば、ローダミン)含有シリカナノ粒子と、
B型インフルエンザウイルス核タンパク質を認識するマウス抗B型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体で表面修飾された青色色素(例えば、DYQ−660(商品名、Dyomics社製))含有シリカナノ粒子とからなるイムノクロマト法試薬、及びそれを用いてなるテストストリップ等が挙げられる。
【0028】
前述の2種類以上の標識シリカナノ粒子からなるイムノクロマト法試薬及びそれを用いてなる前記テストストリップにおいて、同一の抗体固定化部における発色の色相の違いまたは蛍光波長の違いによって2種類以上の検体を同時に検出、定量、判定又は診断することができる。前記同一の抗体固定化部は、ライン状であることが好ましい。
従来のナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)は単色しか発色できなかったり、単波長の蛍光しか発光できないことが多く、色相、発光波長が非常に限定されていた。そのため、イムノクロマト法に使用する場合、2種類以上の検体の検出、判定等を行うのが実質的には困難であり、別種の抗体を固定した抗体固定化部(判定部)をメンブレン上の離別した箇所に設けることが必要であった。近接した箇所に複数の抗体固定化部を設けると、単色発色のため又は限られた発光波長のため、いずれの検体に基づく発色ないしは発光シグナルか混同を生じることが多かった。
これに対し、前記標識シリカナノ粒子は、異なる種類の前記標識物質を含有させることにより様々な色相、蛍光波長等を付与することができるので、本発明のテストストリップにおいては、同一の抗体固定化部に複数種の抗体を固定して、複数種の検体を同時に検出、定量、判定又は診断することができる。
具体的には、例えば、検体A及びBを測定する場合、検体Aを認識する抗体またはそのフラグメントで表面修飾された青色色素(例えば、DYQ−660(商品名、Dyomics社製))含有シリカナノ粒子と、検体Bに対する抗体またはそのフラグメントで表面修飾された黄色色素(例えば、フルオレセイン)含有シリカナノ粒子とを用いて、同一の抗体固定化部に検体A及びBに対する抗体を混在させて固定化したテストストリップとする。そのテストストリップのサンプルパッドに検体A、Bを含有しえる未知の試料液体を滴下し、前記抗体固定化部を観察することによって検体の存否を判定することができる。上記の具体例では、反応ラインの色相が青であれば物質Aが大半であり、逆に黄色であれば物質Bが大半であることを示し、AとBがほぼ同量であれば緑の反応ラインが出現することになる。このように、物質AとBの存在比によって、出現する反応ラインの色相が変化することを利用して、その色相を、目視又は検出機器により検出ないし定量することにより検体のお互いの存在比を測定することができる。
発色の程度が特定の色調より薄ければ陰性、濃ければ陽性としておけば、検体の半定量も可能である。また、発色の程度の判定は、例えば、プレテスターRM−405、プレテスターRM−505(いずれも商品名、和光純薬工業社製)等の尿試験紙用のテスター、例えばデンシトメーター等を用いて行ってよいことはいうまでもない。
ここで、「半定量」とは、定量分析を実施する場合には必ず定性分析が先行していなくてはならないが、定性分析を実施する場合にこれをやや定量的に行なって、量的概念をも付け加えて行う場合をいう。
【0029】
次に、本発明のイムノクロマト法用蛍光検出システムについて説明する。
本発明のイムノクロマト法用蛍光検出システムは、前記標識物質として蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子をイムノクロマト法試薬として用いた場合、具体的には前述のようなテストストリップに用いた場合に使用することができる。
すなわち、本発明の蛍光検出システムは、少なくとも下記(1)及び(2)の構成からなる。
(1)サンプルパッド、蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子を含浸した部材(コンジュゲートパッド)、抗体固定化メンブレン及び吸収パッドからなるテストストリップ、及び
(2)励起光源。
前記テストストリップはバッキングシートにより裏打ちされていることが好ましい。
本発明の蛍光検出システムにおいて、前記シリカナノ粒子の部分が発する蛍光を目視等によって検出する観点から、前記励起光源が、波長200nm〜400nmの励起光を発することが好ましい。前記励起光源としては、水銀ランプ、ハロゲンランプ又はキセノンランプが挙げられる。
また、本発明の蛍光検出システムは、前記励起光源から特定の波長の光のみを透過するためのフィルタを備えていることがより好ましく、さらに、蛍光のみを目視等で検出する観点から、前記励起光を除去し蛍光のみを透過するフィルタを備えていることがさらに好ましい。
本発明の蛍光検出システムは、前記蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えることが特に好ましく、これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出でき、さらにはその蛍光強度を測定できることから検体の定量もでき、高感度検出及び定量が可能となる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
参考例1(本発明に用いる標識シリカナノ粒子の調製)
5−(及び−6)−カルボキシテトラメチルローダミン・スクシンイミジルエステル(商品名、emp Biotech GmbH社製)2.9mgを1mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。ここに1.3μlのAPSを加え、室温(23℃)で1時間反応を行った。
得られた反応液400μlにエタノール128ml、TEOS400μl、蒸留水28.8ml、28質量%アンモニア水400μlを加え、室温で24時間反応を行った。
反応液を18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿したシリカ粒子に蒸留水を4ml加え、粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、標識シリカナノ粒子分散液に含まれる未反応のTEOSやアンモニア等を除去し、平均粒径104nmのシリカナノ粒子100.8mgを得た。収率約94%。
図2は、得られた標識シリカナノ粒子のSEM写真像を示す図である。図中、白く見える球形状物質が、得られた標識シリカナノ粒子である。
【0031】
実施例1(hCGの検出)
遠心管に50mMKHPO(pH6.5)を1mLと前記ローダミン含有シリカナノ粒子分散液(10mg/mL)9mLを加えて軽く撹拌した。遠心管に抗hCG抗体(Anti−hCG clone codes/5008, Medix Biochemica社製)1mL(60μg/mL)を撹拌しながら加え、室温で1時間静置し、抗hCG抗体を前記シリカナノ粒子に吸着させた。これに1%PEG(ポリエチレングリコール、分子量20000、和光純薬工業社製)を0.55mL加え軽く撹拌し、更に10%BSAを1.1mL加え軽く撹拌した。
混合液を12000×gで15分間遠心分離し、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。この分散液に保存用バッファー(20mM Tris−HCl(pH 8.2), 0.05% PEG20,000, 150mM NaCl, 1%BSA, 0.1%NaN)を20mL加え、再度遠心分離し、上清を1mL程度残して取り除き、残した上清に沈殿を分散させた。この分散液に蒸留水1mLおよび塗布バッファー(20mM Tris−HCl(pH8.2), 0.05%PEG(分子量20,000), 150mM NaCl, 1%BSA, 0.1%NaN)を2mL加え、軽く撹拌した。
得られた抗体を吸着させてなるシリカナノ粒子分散液をGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)(8×150mm)1枚あたり、上記分散液0.8mLを均等に塗布した。デシケーター内で室温下、一夜減圧乾燥し、参考例1で得られたシリカナノ粒子を含有してなるコンジュゲートパッドを作製した。
【0032】
抗体固定化メンブレンの作製については、メンブレン(丈25mm、商品名Hi−Flow Plus120 メンブレン、MILLIPORE社製)の中央付近(端から約12mm)に幅約1mmのテストラインとして抗hCG抗体(alpha subunit of FSH(LH), clone code/6601、Medix Biochemica社製)が1mg/mL含まれる溶液((50mMKHPO,pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
続いて、幅約1mmのコントロールラインとして抗IgG抗体(Anti Mouse IgG、Dako社製)が1mg/mL含まれる溶液((50mMKHPO,pH7.0)シュガー・フリー)を0.75μL/cmの塗布量で塗布し、50℃で30分乾燥させた。
次に、ブロッキング処理として前記メンブレン全体をブロッキングバッファー中に室温で30分浸した。
メンブレン洗浄/安定バッファーに移し室温で30分以上静置した。メンブレンを引き上げ、ペーパータオル上に置いて室温で一夜乾燥させて、抗体固定化メンブレンを作製した。
前記得られたメンブレン、前記得られたコンジュゲートパッド、サンプルパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)、吸収パッド(Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)(MILLIPORE社製)をバッキングシート(商品名AR9020,Adhesives Research社製)上で組み立て、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、図1a及びbに示した構成のテストストリップを得た。図1a及びbについては前述の通りである。
なお、各構成部材は、図1a及びbに示しているように各々その両端を隣接する部材と2mm程度重ね合わせて貼付した(以下、同様である。)。
50IU/LのリコンビナントhCG(ロート製薬社製)を前記ストリップのサンプルパッド部分に100μL滴下し、一分間放置したところ、抗hCG抗体(alpha subunit of FSH(LH), clone code/6601、Medix Biochemica社製)を塗布したライン(テストライン)および、抗IgG抗体を塗布したライン(コントロールライン)に赤色の発色が確認できた。
【0033】
実施例2(同一ラインで複数の生体分子を検出)
参考例1の方法でローダミン含有シリカナノ粒子を調製した(平均粒径101nm、収率90%)。またDYQ−660−NHS−Ester(Dyomics社製)を用いて、参考例1と同様の方法でDYQ−660含有シリカナノ粒子を調製した。続いて、実施例1と同様の方法で、ローダミン含有シリカナノ粒子にはマウス抗A型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体を吸着により表面修飾し、DYQ−660含有シリカナノ粒子にはマウス抗B型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体で吸着により表面修飾した。
コンジュゲートパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、8×150mm、MILLIPORE社製)にマウス抗A型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体で吸着により表面修飾されたローダミン含有シリカナノ粒子分散液0.8mLを均等に塗布し、これをデシケーターに入れて一晩減圧乾燥した。続いて、同じコンジュゲートパッドにマウス抗B型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体で吸着により表面修飾されたDYQ−660含有シリカナノ粒子分散液0.8mLを均等に塗布し、これをデシケーターに入れて一晩減圧乾燥した。これにより、ローダミンを含有したシリカナノ粒子及びDYQ−660を含有したシリカナノ粒子を含浸してなるコンジュゲートパッドを作製した。
続いて、抗体固定化メンブレンの作製については、メンブレン(丈25mm、商品名Hi−Flow Plus120 membrane、MILLIPORE社製)の中央付近(端から約12mm)に幅約1mmのテストラインとしてマウス抗A型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体とマウス抗B型インフルエンザウイルス核タンパク質モノクローナル抗体がそれぞれ1mg/mL含まれる溶液を0.75μL/cmの塗布量で塗布し、50℃で30分乾燥させた。さらに、コントロールラインとして、抗マウス抗体ウサギポリクローナル抗体(1mg/mL)を0.75μL/cmの塗布量で塗布し50℃で30分乾燥させた。
前記得られたメンブレン、前記得られたコンジュゲートパッド、サンプルパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)、吸収パッド(Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)(MILLIPORE社製)をバッキングシート(商品名AR9020,Adhesives Research社製)上で組み立て、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、図1a及びbに示した構成のテストストリップを得た。図1a及びbについては前述の通りである。
前記テストストリップを2本用意し、一方のテストストリップにはA型インフルエンザウイルスを5×10FFU/mL含む液を滴下し、一分間静置した。もう一方のテストストリップにはB型インフルエンザウイルスを5×10FFU/mL含む液を滴下し、一分間静置した。A型インフルエンザウイルスを含む液を滴下したテストストリップはラインが赤に発色し、B型インフルエンザウイルスを含む液を滴下したテストストリップはサンプルラインが青に発色した。
【0034】
実施例3(蛍光高感度検出)
参考例1と同様の方法でフルオレセインを含有したシリカ粒子を調製し(平均粒径93nm、収率88%)、実施例1と同様の方法で抗hCG抗体(Anti−hCG clone codes/5008, Medix Biochemica社製)を用いて吸着により表面修飾した。実施例1と同様に、前記抗hCG抗体で吸着により表面修飾したフルオレセイン含有シリカナノ粒子0.8mlをGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、8×150mm、MILLIPORE社製)に塗布し、これをデシケーターに入れて一晩減圧乾燥させた。これにより、フルオレセインを含有したシリカナノ粒子を含有してなるコンジュゲートパッドを作製した。
実施例1と同様に、テストラインとして抗hCG抗体(alpha subunit of FSH(LH), clone code/6601、Medix Biochemica社製)、コントロールラインとして抗IgG抗体(Anti Mouse IgG、Dako社製)が塗布されたメンブレン(Hi−Flow Plus120 membrane、MILLIPORE社製)、コンジュゲートパッド、吸収パッド(CFSP、MILLIPORE社製)、サンプルパッド(GFCP、MILLIPORE社製)をバッキングシート(商品名AR9020,Adhesives Research社製)上で組み立て、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、図1a及びbに示した構成のテストストリップを得た。図1a及びbについては前述の通りである。
前記テストストリップのサンプルパッドに0.5IU/LのリコンビナントhCG(ロート製薬社製)を100μL滴下して、一分間静置した。
励起光源側のフィルタとしてFF01−482(商品名、Semrock社製)、検出器側のフィルタとしてFF01−536(商品名、Semrock社製)を用い、前記テストストリップを水銀ランプ(103W)で照射し、検出器としてCCD検出器(C2741−35A(商品名、浜松ホトニクス社製))を用いて画像化を行った。その結果テストラインおよびコントロールラインの蛍光発色を確認した。
上記実施例3の結果から実施例1の目視による検出の検体(コンビナントhCG)量の100分の1の量でも検出され、蛍光による高感度検出が可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1aは本発明のイムノクロマト法用テストストリップの平面図を示し、図1bは、aで示されたイムノクロマト法用テストストリップの平面図の縦断面図を示す図である。
【図2】図2は、得られた標識物質を含有するシリカナノ粒子のTEM写真像を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 テストストリップ
2 サンプルパッド
3 コンジュゲートパッド
4 抗体固定化メンブレン
5 吸収パッド
6 バッキングシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識物質を含有してなるシリカナノ粒子からなる、イムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子。
【請求項2】
前記標識物質が蛍光物質または吸光物質であることを特徴とする、請求項1に記載のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子。
【請求項3】
前記標識シリカナノ粒子の平均粒径が20〜600nmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子。
【請求項4】
検体を認識する物質で表面修飾されてなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイムノクロマト法試薬用標識シリカナノ粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の標識シリカナノ粒子からなるイムノクロマト法試薬。
【請求項6】
前記標識物質の種類又はその含有量が異なることにより区別される2種類以上の標識シリカナノ粒子を用い、2種類以上の検体を同時に検出することを特徴とする、請求項5に記載のイムノクロマト法試薬。
【請求項7】
前記標識物質が、吸光物質であり、前記吸光物質の吸光スペクトルにおける吸光最大波長が、200〜800nmの範囲にあることを特徴とする請求項5又は6に記載のイムノクロマト法試薬。
【請求項8】
前記吸光スペクトルの極大波長における、前記シリカナノ粒子のモル吸光係数が5×10−1cm−1以上であることを特徴とする請求項7に記載のイムノクロマト法試薬。
【請求項9】
前記標識物質が、蛍光物質であり、前記蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子が発する蛍光を検出することにより高感度検出を可能としたことを特徴とする請求項5又は6に記載のイムノクロマト法試薬。
【請求項10】
前記蛍光が、青色蛍光、黄色蛍光、オレンジ色蛍光又は赤色蛍光であることを特徴とする請求項9に記載のイムノクロマト法試薬。
【請求項11】
試料添加用部材、請求項5〜10のいずれか1項に記載のイムノクロマト法試薬としての標識シリカナノ粒子を含浸させてなる部材、抗体固定化部を有するメンブレン及び吸収パッドが直列連結してなるイムノクロマト法用テストストリップ。
【請求項12】
同一の前記抗体固定化部における発色の色相の違いまたは蛍光波長の違いによって2種類以上の検体を同時に検出することを特徴とする請求項11に記載のイムノクロマト法用テストストリップ。
【請求項13】
請求項9又は10に記載のイムノクロマト法試薬を用いてなる検出システムであって、前記シリカナノ粒子が発する蛍光の検出に用いる励起光源の波長が200nm〜400nmであることを特徴とするイムノクロマト法用蛍光検出システム。
【請求項14】
前記励起光源から特定の波長の励起光のみを透過するフィルタと、前記励起光を除去し蛍光のみを透過するフィルタとを備えることを特徴とする請求項13に記載のイムノクロマト法用蛍光検出システム。
【請求項15】
さらに、前記蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備え、前記光電子倍増管又はCCD検出器により前記蛍光を検出し、前記蛍光の強度を測定することにより検体を定量することを特徴とする請求項14に記載のイムノクロマト法用蛍光検出システム。
【請求項16】
前記励起光源が、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプのいずれかであることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のイムノクロマト法用蛍光検出システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−304401(P2008−304401A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153366(P2007−153366)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】