説明

イメージコーディネート用装置およびそれを用いたイメージコーディネート方法

【課題】個人のイメージコーディネートを簡単に行うことができる方法およびそれに用いられる装置の提供。
【解決手段】本発明によれば、被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および前記全体画像を印刷するプリンターを具備してなるイメージコーディネート用装置が提供される。ここで前記仮想ドレーブ画像部分は、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷される。本発明によれば、この装置を用いたイメージコーディネート方法またはパーソナルカラー診断方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被診断者に調和したイメージコーディネートをするための装置、およびそれを用いたイメージコーディネート方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、生活水準の上昇とともに、各人の個性が重視されるようになり、各個人が自分に似合った服飾品、装身具、あるいは化粧品を求めるようになってきた。このようなニーズに応じて、洋服や和服などの服飾品、帽子、履物、またはアクセサリーなどの装身具、化粧品などのメーカーや販売店は、各種の宣伝媒体、例えばカタログ、雑誌、インターネットなどによって、数多くの商品を紹介している。
【0003】
このような多くの商品の中から、各個人は自分の好みに合ったものを選択して購入する。そして、選択された服飾品等を着装した全体像によってその個人のイメージが形成される。そのイメージは、個人固有のものとしてその個人に対峙する人に認識されるものなので、パーソナリティを重視される現代社会においては重視される傾向がある。このため、各個人に対するイメージの調整、すなわちイメージコーディネートが必要とされている。このイメージコーディネートのうち、大きな割合を占めるのが色の選択である。すなわち、服飾品や、装身具などの色や、顔の色、髪の色、アクセサリーの色によって、そのイメージが大きく変わることが多い。さらには、化粧などにより顔の色なども調整されることも多い。このように、装身具や化粧などの色によるイメージコーディネートがなされている。
【0004】
また、そのような色の選択の中で、昨今は「パーソナルカラー」が重視されるようになってきた。パーソナルカラーとは、各個人のそれぞれに調和する色のことをいい、その人固有のパーソナルカラーに彩られたファッションを採用することで、その個性を強調し、接する人の印象を良くすることができるものである。さらには、ファッションに限らず、化粧などにおいても、口紅、頬紅、アイシャドウ、毛染めなどにおいても、パーソナルカラーが重要と考えられている。また、パーソナルカラーは、ファッションだけにはとどまらず、居住空間や店舗等のインテリアカラーにおいても重視されることがある。
【0005】
すなわち、ファッションに敏感な人たちは、自分のパーソナルカラーを把握することで、自分のファッションをより際立たせることができると考え、そのパーソナルカラーを知り、研究をしようとする人が増加している。
【0006】
パーソナルカラーの診断は、一般的には、色の異なったドレープといわれる布やボードを多数準備し、それを交換しながら被診断者の上半身にあてがい、ドレープの色と披診断者の顔色の調和の度合いを観察することにより行う。そして、被診断者の顔色が最もよくみえる色をパーソナルカラーと決定する。診断者は、そのようにして決定された色を、自分固有のパーソナルカラーとして認識し、その後のファッションの選択の際の参考とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−232576号明細書
【特許文献2】特開2009−300991号明細書
【特許文献3】米国特許第3560229号明細書
【特許文献4】特公昭51−44706号公報
【特許文献5】特公昭51−44707号公報
【特許文献6】特公昭51−44708号公報
【特許文献7】特開昭58−191190号公報
【特許文献8】特開昭60−257289号公報
【特許文献9】特公平4−30355号公報
【特許文献10】特公平4−30916号公報
【特許文献11】特開昭63−315287号公報
【特許文献12】特開平5−254244号公報
【特許文献13】特開平5−262032号公報
【特許文献14】特開平6−48028号公報
【特許文献15】特開平2−188293号公報
【特許文献16】特開平2−188294号公報
【特許文献17】国際特許公開番号WO90/11898号パンフレット
【特許文献18】特開平4−46986号公報
【特許文献19】特開平4−303680号公報
【特許文献20】特開平4−50289号公報
【特許文献21】特開平4−50290号公報
【特許文献22】特開平5−177931号公報
【特許文献23】特許2981558号公報
【特許文献24】特許3380277号公報
【特許文献25】特開2004−148744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような方法では、例えば髪型や髪の色を変更したり、化粧の有無などに応じたイメージコーディネートが難しい。例えば、昨今のファッション事情では、髪型や髪の色、口紅や頬紅の色、メガネの形状や色などを変更することは一般的である。しかし、そのような条件が変わった場合には、イメージコーディネートの判断が異なる可能性が高い。しかし、被診断者がイメージコーディネートを行うときに、これらの条件をひとつひとつ現実に変更しながら判断することは、非常に手間がかかり難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるイメージコーディネート用装置は、
被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および
前記全体画像を印刷するプリンター、
を具備してなり、
前記全体画像の仮想ドレーブ画像部分が、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明によるイメージコーディネート方法は、
被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および
前記全体画像を印刷するプリンター
を具備してなり、
前記全体画像の仮想ドレープ画像部分が、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷されることを特徴とするイメージコーディネート用装置を用いて印刷画像を出力し、
前記印刷画像を加熱して前記仮想ドレープ画像部分の色を変化させ、加熱前後の画像の変化を観察することによって、前記仮想ドレープ画像部分に対する最適な色を決定することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明によるパーソナルカラー診断方法は、
被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および
前記全体画像を印刷するプリンター
を具備してなり、
前記全体画像の前記仮想ドレープ画像部分が、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷されることを特徴とする装置を用いて印刷画像を出力し、
前記印刷画像を加熱して前記仮想ドレープ画像部分の色を変化させ、加熱前後の画像の変化を観察することによって、パーソナルカラーを決定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、個人のイメージコーディネート、特にパーソナルカラーの診断または決定が容易に行うことができ、それによって各個人が自分に適した服飾品、装身具、化粧品などを容易に選択できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に用いることができる感温変色性色彩記憶性トナーのヒステリシス特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0015】
本発明によれば、イメージコーディネートのための装置または方法が提供される。ここで、イメージコーディネートのうちの一つとして、パーソナルカラー診断が包含される。ここでは、まず、パーソナルカラー診断方法を主体として本発明を説明する。
【0016】
従来、パーソナルカラーを診断するためには、ドレープといわれる単一色で着色された布地等を被診断者の上半身にあてがい、ドレープの色と、被診断者の肌、髪、目などの色を含めた顔色との調和を観察することにより行う。ここで、ドレープは色の異なったものが複数準備され、これらを交換しながらドレープの色と被診断者の顔色とを比較して、被診断者の顔色に調和するパーソナルカラーが決定される。このような方法については、例えば特許文献1にも説明されている。
【0017】
本発明においては、このような操作をコンピューターまたは印刷画像により行うものである。本発明においては、現実の診断者自身やドレープを用いず、仮想空間における診断者およびドレープを用いてパーソナルカラー診断を行う。
【0018】
本発明によるパーソナルカラー診断にはコンピューターおよびプリンターを用いる。
まずコンピューターは、被診断者の顔写真や体型情報などを包含する容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するのに用いられる。パーソナルカラー診断またはイメージコーディネートを行うためには、個人に対して行われるものであり、個人の顔や体型などとの対比が必要であるから、被診断者の容姿情報を含む画像が必要である。ここで、容姿情報とは主として被診断者の面差しや、身長、胸囲、胴囲、肩幅等の体型の情報である。本願発明においては、容姿情報を含む画像は、具体的には顔写真や全身写真などの形態で用いることができる。顔写真とは、被診断者の顔が含まれるものであればどのようなものであってもよく、例えばコンピューター処理などで顔の輪郭に沿って切り出された画像であってもよい。ただし、パーソナルカラー診断やイメージコーディネートによって、色を判断することを目的とするものであるので、顔色を忠実に再現したものであることが好ましい。ここで、忠実に再現するとは、化粧などをしていない素顔には限られず、そのパーソナルカラー診断やイメージコーディネートをしようとする時の顔色、髪または目の色に変更されたものであってもよい。すなわち、例えば髪の色を毛染めなどに変えた後のパーソナルカラー診断やイメージコーディネートをしようとする場合には、髪の色を変更してからそれらを行う。そのような変更は、変更後の髪の色のカツラを着装した写真を利用したり、コンピューター処理によって髪の色を変更したりすることができる。
【0019】
また、体型情報は、被診断者の身長、手足の長さ、胸囲、胴囲、腰回り、肩幅などの体躯の寸法に関する情報であり、それを含む画像は全身写真などが代表例であるがそれに限定されない。例えば、洋服仕立てのために測定されたサイズを元に計算された体型を仮想的に画像に再現したものであってもよい。このような仮想的な画像であれば、例えば現実に存在していないデザイン段階の洋服を着用した場合などの容姿情報をパーソナルカラー診断またはイメージコーディネートに利用することができる。
以下、容姿情報を含む画像の代表として顔写真を取り上げて本発明を説明する。
【0020】
また、従来のパーソナルカラー診断では、その顔色に調和する色を決定するためにドレープを用いるが、本発明によるパーソナルカラー診断方法においては、現実のドレープを用いるのではなく、仮想ドレープ画像を用いる。仮想ドレープ画像とは、典型的にはパーソナルカラー診断に用いられるドレープの画像である。すなわち、顔写真画像とドレープ画像とで色の対比することによって、画像の評価によりパーソナルカラー診断を行うことができる。
【0021】
このように顔写真画像とドレープ画像との色の対比を行うためには、これらが一つの画像であることが便利である。このため、本発明においては、被診断者の顔写真と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像をコンピューター上で形成させる。この全体画像は、被診断者がドレープをあてがった状態の写真をそのまま画像データとして取り込んだものであってもよい。また、そのような取り込み画像に対して、必要に応じてその髪の色、顔の色、またはドレープの色をコンピューター処理によって改変したものであってもよい。さらには、被診断者の顔写真と、別に撮影されたドレープの写真とをコンピューター処理によって合成したものであってもよい。
【0022】
また、イメージコーディネートを行う場合には、全体画像に現実のドレープそのものの画像が含まれなくてもよい。例えば、全体画像として被診断者の着服写真を用い、その画像に含まれている服飾品または装身具、例えば服、ベルト、履物、アクセサリー、メガネフレームなどの一部を仮想ドレープとすることができる。また、顔の一部、例えば髪の色、目の色、化粧の色などを調整するために、全体画像中のこれらの部分を仮想ドレープとすることもできる。顔の一部を仮想ドレープとすると、厳密には顔色に調和する色を決定するパーソナルカラー診断には適用できないが、ファッションなどを検討する場合のイメージコーディネートには有効である。また、被診断者の着服写真に、メガネの画像、帽子の画像などを仮想ドレープとして合成したものを全体画像としてもよい。さらには、現実的は着服写真に代えて、被診断者から得られた体型サイズから計算された仮想的な着服写真を用いることもできる。
【0023】
本発明においては、このように形成させた全体画像をプリンターによって印刷する。本発明の特徴の一つは、この印刷の際に、全体画像に含まれる仮想ドレープ部分を特別のトナーまたはインキにより印刷する。ここで用いられるトナーまたはインキは、温度変化によって変色するものである。このようなトナーまたはインキを以下、簡単のために「熱変色性色材」ということがある。用いることができる熱変色性色材は各種のものが知られている。例えば、温度変化によって色が不可逆に変化するもの、可逆的に変化するものがある。また、温度変化によって、ほかの色彩を呈するものや、濃度が変化するもの、特に温度変化によって消色するものもある。また、色が温度に応じて段階的に変化するもの、一定の境界温度を超えると変色し、温度を元に戻しても色は戻らないものなどがある。このような熱変色性色材は、特許文献2〜24に記載されている。
【0024】
これらのうち、最も好ましいのは、特許文献2にも開示されている、感温変色性色彩記憶性トナーである。このトナーは、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体からなる感温変色性色彩記憶性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料と、結着樹脂とを少なくとも含有してなり、前記マイクロカプセル顔料が色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して発色状態と消色状態の互変性を呈し、発色状態にあって温度が上昇する過程では、温度tに達すると消色し始め、温度tより高い温度t以上の温度域で完全に消色状態となり、消色状態にあって温度が下降する過程では、前記温度tより低い温度tに達すると、発色し始め、温度tより低い温度t以下の温度域で完全に発色状態となり、前記温度tと温度tの間の温度域で発色状態或いは消色状態が択一的に視認されるヒステリシス特性を示す変色性色彩記憶性トナーである。このトナーのヒステリシス特性については後述する。
【0025】
このようなトナーの各成分について説明すると以下のとおりである。
前記(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効なピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を用いることもできる。
【0026】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0027】
更に、前記(ハ)成分としては、下記一般式(A)〜(C)のいずれかで示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

(式(A)中、Xa1およびXa2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、m1およびm2はぞれぞれ独立に1乃至3の整数を示し、nは1乃至8の整数を示し、
式(B)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、pは0〜2の整数を示し、Xb1、Xb2のいずれか一方は−(CHOCOR’又は−(CHCOOR’、他方は水素原子を示し、ここでsは0〜2の整数を示し、R’は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Yb1及びYb2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、q1及びq2はそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、
式(C)中、Rは炭素数11以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、r1及びr2はそれぞれ独立に1〜3の整数を示し、Xc1及びXc2はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
【0028】
前記マイクロカプセル顔料の形態は特に限定されないが、その断面形状が非円形であるものが効果的である。
前記マイクロカプセル顔料の断面形状が非円形である場合、トナーの調製過程や熱定着工程における圧力や熱の負荷に対して破壊され難い。また、複写紙表面に肉薄状且つ濃密に配向し易いうえ、熱定着工程におけるロールの圧力が加わった際、適宜に弾性変形して応力を緩和できるため、カプセル壁膜の破壊に対して抑制効果を奏し、加熱過程にあってはカプセルの熱膨脹、収縮に応じて壁膜が弾性変形して、カプセル壁膜の破壊の抑制効果を果たし、内包の感温変色性色彩記憶性組成物を保護して所期の熱変色機能を保持できる。
【0029】
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が一般に0.1μm〜10μmの範囲、好ましくは1〜8μm、更に好ましくは0.5〜5μmの範囲にあり、感温変色性色彩記憶性組成物:マイクロカプセル壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましく、色濃度、変色の鋭敏性、圧力や熱に対する持久性、加工適性を満たす。
【0030】
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径がこの範囲を下回ると高濃度の発色性を示し難く、強度的に不充分となる傾向がある。一方、平均粒子径がこの範囲を越えると結着樹脂と結合させて構成されるトナー自体の粒径は15μm以下が実用的上限であることから、実用性を満足させ難い。
【0031】
トナーの全重量に対するマイクロカプセル顔料の含有量は一般に3〜50質量%、好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜40質量%が有効である。3質量%未満では発色時の色濃度が不十分であり、50質量%を越えると結着樹脂の占める割合が小さすぎて、トナーの定着性が阻害され易くなる。
【0032】
前記感温変色性色彩記憶性組成物をカプセルに内包させる方法としては、界面重合法、界面重縮合法、インサイチュー法、コアセルベート法のカプセル化方法が適用されるが、前記平均粒子径のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法が好適に用いられる。更に、カプセル化が終了した後、カプセル懸濁液を所望に応じて水で希釈してフィルター類を用いて粗大粒子を濾別することにより、不要な粗大粒子を除去することができる。
【0033】
本発明の感温変色性色彩記憶性トナーには汎用の結着樹脂等のトナー成分を適用することができる。
【0034】
前記結着樹脂としては、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩素化パラフィン、ポリ塩素化パラフィン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ尿素系樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂、水添石油樹脂等を挙げることができ、一種又は二種以上併用して用いることができる。
【0035】
又、必要に応じて離型剤、帯電制御剤、流動性向上剤、磁性材料等を添加することができる。
【0036】
本発明の感温変色性色彩記憶性トナーは、マイクロカプセル顔料を結着樹脂その他の成分と混練した後、所定粒子径となすことにより形成されるのが一般的である。
前記感温変色性色彩記憶性トナーの粒子径は1〜15μm、好ましくは3〜15μm、より好ましくは3〜10μmである。粒子径が1μm未満ではトナーの流動性が悪くなり、地汚れ等の問題が発生しがちであり、15μmを超えると画像の鮮明性を損なうことがある。
【0037】
前記トナーの軟化点は50〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜80℃である。軟化点が50℃未満では、プリンター内でのブロッキングを発生し易くなる。
【0038】
なお、前記マイクロカプセル顔料の完全消色温度tトナーの軟化点を超える温度であることが好ましい。これは、紙等の記録用紙にトナーを転移させた後、熱ローラー等の加熱具を適用してトナーを軟化させて定着させる際、完全消色温度がトナーの軟化点を超える温度であればマイクロカプセル顔料が消色することなく、よって、本発明の感温変色性色彩記憶性トナーを用いた印刷物の像形成性に優れるためである。
【0039】
前記トナーは、プリンターに直接収容して実用に供する他、カートリッジに収容し、該カートリッジをプリンターにセットして実用に供することもできる。
【0040】
以上、感温変色性色彩記憶性トナーについて詳述したが、本発明において用いることができる熱変色性色材はこれには限定されず、その他の任意のもの、例えば特許文献3〜24に記載のものを用いることができる。
【0041】
このような熱変色性色材による発色のヒステリシス特性について説明すると以下のとおりである。図1は、本発明に用いることができる、熱変色性色材のヒステリシス特性を示す図である。図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
【0042】
変色温度域は前記tとt間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるtとtの間の温度域が実質変色温度域である。
【0043】
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0044】
変色温度として具体的には、完全発色温度tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度tを加熱具によって得られる温度、即ち50〜150℃、好ましくは60〜150℃、より好ましくは70〜150℃の範囲に特定し、ΔH値を50〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0045】
本発明によれば、このようなヒステリシス特性を利用し、イメージコーディネートまたはパーソナルカラー診断を行うことができる。すなわち、本発明により得られる印刷画像は、仮想ドレープ部分が温度変化によって変色するトナーまたはインキにより印刷されているので、温度を変化させることによって印刷画像のドレープ部分の色を変えることができる。それによって、コンピューター上ではなく、印刷画像で色変化を観察することが可能となる。
【0046】
たとえば、パーソナルカラー診断においては、実際に被診断者の顔色や体型などと現実のドレープとを対比することを必要とせず、印刷画像上で仮想ドレープ画像部分の色を変更し、観察して対比することができる。さらに、温度変化によって、色が可逆的に変化するトナーまたはインキを用いれば、例えば加熱することによって変色させた後、冷却することによって色を戻すことができるので、相互に色を変化させて繰り返し観察することが可能となる。このとき、加熱には専用のヒーターなどが必要ではなく、汎用のドライヤー、オーブンなどを用いることができ、また冷却にも汎用の冷蔵庫、冷却スプレーなどを用いることができる。また、加熱には摩擦熱を利用することもできる。例えば、特許文献25に記載されているような摩擦体を用いれば、印刷画像の必要な個所だけを加熱することができる。したがって、仮想ドレープ画像の一部だけを変色させることも可能である。
【0047】
また、仮想ドレープとして印刷画像に写しこまれた服飾品などを選択し、その部分を温度によって変色するトナーやインキで印刷することにより、一枚の印刷画像で複数の色合いを確認することができるので、イメージコーディネートにもの有効に利用することができる。さらには、仮想ドレープとして、顔の肌、唇、眉などを選択すれば、化粧品の色合いなどを検討する材料に用いることができ、これもイメージコーディネートに利用することができる。
【0048】
さらに仮想ドレープ画像部分は全体画像の一個所には限定されず、複数個所であってもよい。そして、それらの仮想ドレープ画像部分がすべて同じ熱変色性色材によって印刷される必要はなく、異なる熱変色性色材によって塗り分けられていてもよい。ここで、異なる熱変色性色材とは、色が異なるだけではなく、温度変化前には同じ色であって、温度変化後には異なる色になるものであったり、変色する境界温度が異なるものなどであってもよい。
【0049】
このように印刷画像において色を変化させることができることにより、コンピューターがない場所でも、印刷画像の色変化を観察できる。したがって、顧客がイメージコーディネートのために店舗を訪れ、その印刷画像を持ち帰れば、帰宅してから改めて印刷画像の仮想ドレープ画像部分の色を変化させて画像を観察することなどができる。
【0050】
温度変化によって仮想ドレープ画像部分の色が変化するが、その変化の前後の色は任意に選択することができる。これは熱変色性色材を変更することにより選択が可能である。しかしながら、仮想ドレープ画像部分の色は熱変色性色材の色によってのみ決定する必要はない。例えば、印刷画像の仮想ドレープ画像部分の下地に、予めほかの色のトナーまたはインキで着色しておき、熱変色性色材が温度変化によって消色するものを用いれば、熱変色性色材が消色した時には下地の色が表示される。また、熱変色性色材に、温度変化しても変色しないトナーまたはインキを混合しておけば、同様の効果を得ることができる。これらの効果は、加法混色、減法混色、等種々の混色方法を用いることができる。
【0051】
このようにして、本発明によりイメージコーディネートやパーソナルカラー診断が可能となるが、それに際して、さらに印刷画像の調整を行うことができる。すなわち、印刷された全体画像に対して、サインペン、ボールペン、色鉛筆などの筆記具によって加筆を加えることで、さらに最適なイメージコーディネートやパーソナルカラー診断が可能となる。すなわち、例えば加筆によって仮想的な化粧を印刷画像に施すことで、異なった顔色の場合のイメージコーディネートなどができるのである。このような加筆は、加熱の前であっても、後であってもよい。
【0052】
このような加筆に際して、前記した、熱変色性色材によってマーキングする筆記具を用いるとさらに効果的である。このとき、仮想ドレープ画像の部分を印刷するのに用いたものと同じ熱変色性色材、例えば特許文献2に記載されているようなマイクロカプセル顔料を用いれば、印刷画像全体の温度を変化させることにより、仮想ドレープ画像部分と同様の色変化をするようになる。このような熱変色性色材によって、仮想ドレープ画像部分の周囲に加筆すれば、仮想ドレープ画像部分の面積を広げたり、その形状を変化させるなどの修正も可能である。また、仮想ドレープ画像部分と異なる温度で色変化をする熱変色性色材を用いたり、仮想ドレープ画像部分と異なる色または変色をする熱変色性色材を用いることができる。そのような熱変色性色材を用いて仮想ドレープ画像の上に加筆をした場合には、仮想ドレープに模様を加える修正なども可能である。そのように、加筆時に各種インキを用いることにより、様々な色変化をする印刷画像を形成させることができ、それによって種々の色合いの印刷画像を観察することができる。このように多様な印刷画像をイメージコーディネートまたはパーソナルカラー診断の参考とすることが可能となる。
【0053】
また、全体画像の一部分を着色せずに印刷し、印刷後に全体画像の当該一部分をサインペンや色鉛筆で着色することもできる。このような方法によれば、コンピューターによる全体画像の形成時に決定できなかった色合いを後から検討して追加することができる。また、印刷画像における仮想ドレープ画像部分に用いたものとは異なる熱変色性色材を用いることで、別の仮想ドレープ画像を追加することも可能である。この際に、色の変化する温度が異なる熱変色性色材や、変化後の色が異なる熱変色性色材を用いれば、温度を変化させることで、一枚の印刷画像で数種類の異なった色合いの画像を評価してイメージコーディネートも可能となる。この場合にも、特許文献2に記載されているような熱変色性色材を用いることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および
前記全体画像を印刷するプリンター、
を具備してなり、
前記全体画像の仮想ドレーブ画像部分が、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷されることを特徴とするイメージコーディネート用装置。
【請求項2】
前記全体画像が、被験者の着服写真であり、そこに写しこまれた服飾品または装身具の少なくとも一部が仮想ドレープの画像として形成される、請求項1に記載のイメージコーディネート用装置。
【請求項3】
前記全体画像が、被診断者の顔写真の画像と、仮想ドレープ画像とを合成した合成画像である、請求項1に記載のイメージコーディネート用装置。
【請求項4】
前記仮想ドレープ画像が、服飾品、装身具、および顔からなる群から選択されるものの画像である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイメージコーディネート用装置。
【請求項5】
被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および
前記全体画像を印刷するプリンター
を具備してなり、
前記全体画像の仮想ドレープ画像部分が、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷されることを特徴とするイメージコーディネート用装置を用いて印刷画像を出力し、
前記印刷画像を加熱して前記仮想ドレープ画像部分の色を変化させ、加熱前後の画像の変化を観察することによって、前記仮想ドレープ画像部分に対する最適な色を決定することを特徴とするイメージコーディネート方法。
【請求項6】
前記全体画像が被験者の着服写真であり、そこに写しこまれた服の部分を、前記仮想ドレープ画像部分として温度によって変色するインキまたはトナーで印刷して印刷画像を出力する、請求項5に記載のイメージコーディネート方法。
【請求項7】
被診断者の顔写真の画像と、仮想ドレープ画像とを合成して前記全体画像を形成させる、請求項5に記載のイメージコーディネート方法。
【請求項8】
前記仮想ドレープ画像が、服飾品、装身具、および顔からなる群から選択されるものの画像である、請求項5〜7のいずれか1項に記載のイメージコーディネート方法。
【請求項9】
加熱前または加熱後の前記印刷画像に、仮想ドレープ画像の印刷に用いられたものとは別の温度変化によって変色するインキによって加筆をする、請求項5〜8のいずれか1項に記載のイメージコーディネート方法。
【請求項10】
前記印刷画像の一部分を着色せずに印刷し、印刷後に温度変化によって変色するインキによって加筆をする、請求項5〜9のいずれか1項に記載のイメージコーディネート方法。
【請求項11】
加熱後の前記印刷画像を冷却し、加熱によって変色したトナーまたはインキの色を加熱前に戻す、請求項5〜10のいずれか1項に記載のイメージコーディネート方法。
【請求項12】
被診断者の容姿情報を含む画像と、仮想ドレープ画像とを含む全体画像を形成するコンピューター、および
前記全体画像を印刷するプリンター
を具備してなり、
前記全体画像の前記仮想ドレープ画像部分が、温度変化によって変色するインキまたはトナーで印刷されることを特徴とする装置を用いて印刷画像を出力し、
前記印刷画像を加熱して前記仮想ドレープ画像部分の色を変化させ、加熱前後の画像の変化を観察することによって、パーソナルカラーを決定することを特徴とするパーソナルカラー診断方法。

【図1】
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