説明

イリノテカン毒性を推定する方法および組成物

本発明は、患者のUGT1A1遺伝子の-3156位の遺伝子型または-3156変異内のいずれかの位置の連鎖不平衡を基に、癌患者におけるイリノテカン毒性のリスクを評価する方法および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の技術分野
本発明は概して、薬理遺伝学および癌療法の分野に関する。より詳細に述べると、これは患者においてUGT酵素によりグルクロン酸抱合されたイリノテカンおよび他の化合物の毒性レベルを推定または予測する方法および組成物に関する。このような方法および組成物は、イリノテカン-ベースの療法またはUGT基質に関連した療法が、特定の患者に投与された場合に、毒性を有し得るかどうかを評価するために使用することができる。示された療法の別法では、毒性が問題であるかどうかを確認することができる。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術の説明
イリノテカンは、転移性結腸直腸癌の治療に関して世界中で承認されているトポイソメラーゼIインヒビターである。イリノテカンは、5-フルオロウラシル-抗療性患者における単剤として(Rougier et al., 1998;Cunningham et al., 1998)に加え、第一選択の療法としての5-フルオロウラシル/ロイコボリンとの併用において(Saltz et al., 2000;Rothenberg et al., 2001)よく確立されている。補助的設定療法(adjuvant setting)におけるその役割が研究されている。
【0003】
イリノテカン治療は、本疾患におけるその効能および他の腫瘍型におけるその広い活性スペクトルにもかかわらず、重大な毒性に関連している。イリノテカンの主な重度の毒性は、遅発性の下痢および骨髄抑制である。初期の単剤臨床試験において、3〜4度(grade)の下痢が患者の約1/3において発生し、投与量が制限された(Negoro et al., 1991;Rothenberg et al., 1993)。その頻度は、試験毎に変動し、スケジュール依存型でもある。週3回の投薬様式における3〜4度の下痢の頻度(19%)は、週1回のスケジュール(36%, Fuchs et al., 2003)と比べ有意に低い。下痢に加え、3〜4度の好中球減少症も一般的な有害事象であり、週1回および週3回の両投薬様式において患者の約30〜40%がこれを経験している(Fuchs et al., 2003;Vanhoefer et al., 2001)。イリノテカン治療時の致命的事象が報告されている。週1回および週3回の単剤イリノテカン投薬様式において、各々、5.3および1.6%の高度の死亡率が報告されている(Fuchs et al., 2003)。
【0004】
一部の情報は、最終的に忍容できない毒性に冒されるであろう患者を予測する方法を知ることができる(Ratain, 2002)が、追加情報が有用であり得る。このシナリオは落胆させるもののようであるが、重度の毒性のリスクは、イリノテカンの薬理学を理解しかつイリノテカン代謝の遺伝的変更を調べることにより予測することができる。カルボキシルエステラーゼ-2によるイリノテカンの加水分解は、イリノテカンよりもはるかに効力の高いトポイソメラーゼIインヒビターであるSN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)へのその活性化に寄与している(参考文献)。イリノテカンの主要な不活性化経路は、活性型SN-38の不活性型SN-38グルクロニド(SN-38G)への生体内変換である。SN-38Gの全身性の形成の患者間差は、イリノテカンで治療される患者において明確な臨床結果をもたらすことが示されている。SN-38のより高いグルクロン酸抱合を伴う患者は、おそらく週1回のスケジュールに投与量制限する下痢の毒性から保護されるであろう(Gupta et al., 1994)。SN-38は、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合される(Iyer et al., 1997)。
【0005】
UGT1A1酵素はビリルビンのグルクロン酸抱合を触媒する(参考文献)ので、UGT1A1の遺伝的変異が、高ビリルビン血症候群に関して集中的に研究された。可変数の反復配列(5、6、7および8)が、UGT1A1 TATAボックスにおいて認められた。遺伝子転写効率は、TA反復配列の数に反比例する(Beutler et al., 1998)。(TA)7対立遺伝子のホモ接合性は、ジルベール症候群の古典的病像に関連している(Burchell et al.;Monaghan et al.)。ジルベール症候群は同じく、特にこれらの変異が比較的共通であるようなアジア人において、UGT1A1遺伝子のミスセンスをコードしている変異にも関連している。
【0006】
イリノテカン治療においてグルクロン酸抱合経路は臨床的に重要であるので、UGT1A1は、イリノテカン治療後の重度の毒性事象を予測するために研究される遺伝子の候補である。様々なイリノテカン-ベースの投薬様式後の重度の毒性に関連するUGT1A1遺伝的変異のレトロスペクティブ分析が、日本人患者において実行された(Ando et al., 2000)が、大規模臨床試験においてプロスペクティブな評価は行われていない。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、UGT1A1上流領域の-3156位のヌクレオチドはイリノテカン毒性に相関しているという知見を基にしている。その位置のAはイリノテカン毒性に正に相関しているが、その位置のGはイリノテカンに対する耐性に相関している。従って本発明は、患者がイリノテカンから毒性を経験するかどうかを評価、予測、および決定する方法および組成物に関する。イリノテカンからの毒性は、薬物の副作用として証拠だてられているが、これは腫瘍遺伝子学者およびその患者にとって周知である。
【0008】
本発明の一部の態様において、患者は、イリノテカンが投与される場合に、その薬物の毒性に冒されるかまたは受けるかどうかを予測する方法が存在する。方法は、患者の一方または両方の対立遺伝子のUGT1A1プロモーターの塩基-3156の核酸配列の決定に関連している。Aヌクレオチドの存在は、そのヒトにイリノテカン毒性のリスクがあることを示している。AA遺伝子型は、その位置での他の遺伝子型よりも4度の好中球減少症により密接に関連している。更に一部の態様において、これは、UGT1A1プロモーター内のTAインデルの遺伝子型とは無関係である。
【0009】
結果的に、ヒトがイリノテカン毒性のリスクがあると同定された場合には、療法の別の経路または通常投与されるものよりもより少ないイリノテカン投与量を検討することができる。加えてこの方法は、-3156変異を伴う連鎖不平衡(LED)における他の多型の配列またはインデル(挿入/欠失)を決定することも含む。従って本発明の一部の態様において、反復配列の数を決定するために、TAインデルが評価される。同じくUGT1A1の他の変異または他の遺伝子(用語「遺伝子」は、コードされたポリペプチドの発現または活性レベルに影響する非-コード領域を含む。)は、-3156変異を伴うLEDの変異について評価することができる。
【0010】
本発明の組成物は、UGT1Aの-3156位の配列を決定するために使用することができる核酸またはそれに関連する他の試薬を含む。複数の試料をスクリーニングするためのアレイおよび他のアッセイも、本発明の一部として含まれる。
【0011】
グルクロン酸抱合による、イリノテカンの活性代謝産物であるSN-38の代謝は、患者をイリノテカンの毒性作用から保護する機構を表し、その結果SN-38グルクロン酸抱合の減少が、患者がイリノテカンに関連した毒性を経験し得る確率に寄与している。減少したSN-38グルクロン酸抱合の遺伝的基礎の一部は確定されているが、他の基礎は依然確定されていない。従って患者の一方または両方のUGT1A1遺伝子の多型を評価し、ならびに遺伝子型を様々な療法の有害作用と相関するための改善された方法および組成物の必要性が依然残されている。
【0012】
本発明は、遺伝的変異は、UGT1A1発現と相関し、かついくつかの重要な臨床的意義を有するという事実を基にしている。本発明の改善された方法および組成物は、治療が患者に有害に作用する性向を有するかどうか、またはどの治療が特定の患者にとって適切もしくは不適であるかを決定する際に使用することができる。UGT1A1基本転写は、本明細書に説明されたような、誘導性遺伝子発現に影響する変異を含むフェノバルビタール-反応性エンハンサーモジュール(PBREM)に加え、多型性の(TA)反復配列により影響される(図4参照、Innocenti et al., 2002の説明)。本明細書において使用される「多型」または「遺伝子多型」は、例えば単独のヌクレオチドまたは1個もしくは複数のヌクレオチドの反復配列などの、特定の特徴の2種またはより多くの変異形の存在である。一般に変動は、DNA配列のある位置での1個または複数のヌクレオチドの付加、欠失もしくは置換、またはタンデム反復配列の数の変動に起因する。様々な態様において、本明細書に参照として組入れられているGenbankアクセッション番号AF297093を参照し、UGT1遺伝子座の内部または外側の他の多型を、特定の表現型および/またはハプロタイプを伴う多型の関係が確立される限りは使用することができる。UGT1A遺伝子の遺伝子タイピング法の例は、少なくとも米国特許第6,479,236号、第6,472,157号および第6,395,481号に開示されており、これらの各特許は本明細書に参照として組入れられている。
【0013】
本発明の様々な態様において、(TA)多型と、PBREMにおける変異との、またはUGT1遺伝子座の内側もしくは外側の他の変異との間の有意な連鎖不平衡は、そのような他の変異を有する患者は、イリノテカン毒性のリスクがあることを示唆している。連鎖不平衡に関して使用される「有意な」とは、当業者により決定されるように、統計学的p値またはα値が、0.25または0.1であること、および0.1、0.05、0.001、0.00001またはそれ未満であることが意図されている。「連鎖不平衡」(本明細書において使用される「LD」は、当該技術分野において「LED」とも記される)は、対立遺伝子(すなわち所定の遺伝子の変異形)の特定の組合せまたは2個の遺伝子座の多型が、偶然予想される頻度よりもより頻繁に認められるような状況を意味する。PBREM-(TA)nハプロタイプとUGT1A1基質SN-38のグルクロン酸抱合率の間の関係は、遺伝子型(すなわち、生物の遺伝的構成(genetic make up))を表現型(すなわち、生物または細胞により示された物理的形質)と相関するために使用することができる。「ハプロタイプ」は本明細書において、2個またはそれよりも多いより密接に連鎖した遺伝子座の集合的遺伝子型を意味するように使用される。各ハプロタイプは、対立遺伝子の配列または相同染色体の片方に沿った多型を明示する。一部の態様において、多型は、互いに0.001、0.01、0.1、0.2cMまたはそれよりも大きくてよい。
【0014】
本発明の様々な態様は、患者におけるイリノテカンまたは他のUGT1A1基質の毒性のリスクを評価する方法を含む。多型は、一塩基多型(SNP)であってよく、かつ(TA)n反復配列との連鎖不平衡であってよい。ある態様において、本方法は、UGT1A1遺伝子の一方もしくは両方のコピーおよび/または患者のUGT1遺伝子座に位置したいずれか他の遺伝子の一方もしくは両方のコピーにおいて1種または複数の多型を検出することを含む。特定の態様において、プロモーター多型が検出される。本発明の方法および組成物は、UGT1A1多型が一方または両方の対立遺伝子に存在するかまたは存在しないかの決定を実行することが特に企図される。
【0015】
ある態様において、多型は、例えばプロモーター領域または転写に影響する5'フランキング領域(これはプロモーター領域を含む)におけるような、UGT1A1の転写に影響する多型であってよく、これは特に、0と指定されたヌクレオチドを伴わず+1と指定されるヌクレオチドUGT1A1遺伝子転写開始点から、-3440、-3401、-3279、-3177、-3175、または-3156位のヌクレオチドでの多型であってよい。TA反復配列の数は5、6、7、8個またはより多くのTA反復配列であることができる。特定の態様において、多型は下記のものである:-3440C>A、-3401T>C、-3279G>T、-3177C>G、-3175A>G、-3156G>A、またはそれらのいずれかの組合せ。例えば表記-3440C>Aは、-3440位のシトシンヌクレオチド(C)がアデノシン(A)により交換されたことを示す。
【0016】
本発明の方法は、患者から核酸試料を得ること、および様々な方法を用いUGT1A1遺伝子の1種または複数の多型を検出することを含むことができる。ある態様において、多型検出は、UGT1A1遺伝子の特定の領域の全てまたは一部を含む核酸を増幅し、増幅産物を得ること;および/または、1種もしくは複数の多型の存在または非存在について増幅産物を分析することを含むことができる。当該技術分野において公知の他の多型検出法も企図されている。
【0017】
ある態様において、UGT1A1遺伝子のプロモーター多型が、様々な公知のアッセイのひとつを行うことにより検出される。これらは、ハイブリダイゼーションアッセイ、シークエンシングもしくはマイクロシークエンシングアッセイ、対立遺伝子特異的増幅アッセイまたは核酸多型の検出について公知のいずれか他の方法を含むが、これらに限定されるものではなく、核酸の増幅を含んでも含まなくてもよい。多型の「検出」とは、その位置のヌクレオチド配列の同定および/またはその多型が存在するかどうかの決定を含むと理解される。
【0018】
1種または複数の多型と、イリノテカン、またはビリルビン、エストリオール、β-エストラジオール、2-ヒドロキシエストリオール、2-ヒドロキシエストロン、2-ヒドロキシエストラジオール、サイロキシン(T4)、rT3、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、アントラフラビン酸(anthraflavic acid)、ケルセチン、フイセチン(fisetin)、ナリンゲニン、1-ナフトール、およびエチニルエストラジオールを含むが、これらに限定されるものではないUGT1A1の他の基質のグルクロン酸抱合率の間の相関関係を使用し、UGT1A1により直接または間接に代謝されるイリノテカンおよび/または他の薬物もしくは化合物を含む治療様式の様々な局面を決定してもよい。一部の態様において、これらの方法は、様々な多型および多型組合せに関連したグルクロン酸抱合率の分析も含み、グルクロン酸抱合率の分析に関連した例証的方法および組成物については、本明細書に参照として組入れられている米国特許第6,319,678号を参照のこと。これらの方法は、患者の胆汁輸送能の決定を含むこともできる。特定の態様において、プロモーター多型の評価を使用し、患者の治療のためのイリノテカンまたは他の化合物の投与量を最適化するかまたはそれらの毒性を軽減することができる。
【0019】
本発明の方法は、イリノテカンまたはUGT1A1の他の基質の毒性を軽減するために、イリノテカンを他の薬学的物質と組合せて適当な用量で、患者へ投与することによる患者の治療を更に含んでもよい。特定の態様において、胆汁を介した活性イリノテカン種の排出を低下する第二の物質を、本発明の方法および組成物を用いて成された決定を基に、イリノテカンと共に投与することができ、関連した方法および組成物については、本明細書に参照として組入れられている米国特許第6,407,117号、第6,287,834号および第5,786,344号を参照のこと。
【0020】
本発明は、UGT1A1上流領域の-3156位のヌクレオチドは、イリノテカン毒性と相関しているという知見も基にしている。その位置のAはイリノテカン毒性と正に相関しているが、その位置のGはイリノテカンに対する耐性と相関している。従って本発明は、患者がイリノテカンから毒性を経験するかどうかを評価、予測、および決定する方法および組成物に関する。イリノテカンからの毒性は、薬物の副作用として証拠だてられているが、これは腫瘍遺伝子学者およびその患者にとって周知である。
【0021】
本発明の一部の態様において、イリノテカンが投与される場合に、患者がその薬物の毒性に冒されるかまたは受けるかどうかを予測する方法には、患者の一方または両方の対立遺伝子のUGT1A1 5'フランキング領域における塩基-3156の核酸配列の決定が関連している。Aヌクレオチドの存在は、そのヒトにイリノテカン毒性のリスクがあることを示唆している。AA遺伝子型は、その位置での他の遺伝子型よりも4度の好中球減少症により密接に関連している。更に一部の態様においては、これは、UGT1A1プロモーターのTAインデルの遺伝子型とは無関係である。UGT1A1 5'フランキング領域の-3156位のインデルに関連するこれらの方法は、同じ患者のUGT1A1 5'フランキング領域の1種または複数の他の多型の決定に関連している方法により実行することができることが企図されている。
【0022】
結果的に、本明細書に説明されたいずれかの態様を基にヒトがイリノテカン毒性のリスクがあると確定された場合、療法の別の経路または通常投与されるものよりもより少ないイリノテカン投与量を検討することができる。加えてこの方法は、-3156変異を伴う連鎖不平衡(LD)における他の多型の配列またはインデル(挿入/欠失)を決定することも含む。従って本発明の一部の態様において、反復配列の数を決定するために、TAインデルが評価される。同じくUGT1A1の他の変異または他の遺伝子(用語「遺伝子」は、コードされたポリペプチドの発現または活性レベルに影響する非-コード領域を含む。)は、-3156変異を伴うLDの変異について評価することができる。
【0023】
様々な態様は、患者におけるイリノテカン毒性のリスクを評価するキットを含み得る。このキットは、様々な容器、試薬などを含むことができる。ある態様において、キットは、1個または複数のUGT1A1遺伝子のプロモーター領域を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマー、UGT1A1遺伝子のハプロタイプタグSNPもしくは対立遺伝子に特異的な増幅プライマー、またはUGT1遺伝子座内のいずれか他のプライマーを含むことができる。ハプロタイプタグSNPまたは対立遺伝子に特異的なプライマーを使用し、UGT1A1遺伝子または他のUGT1遺伝子座の1個または複数のヌクレオチド位置の多型を増幅することができる。特定の態様において、ヌクレオチド位置は、UGT1A1遺伝子転写開始点から、-3440、-3401、-3279、-3177、-3175、もしくは-3156、またはそれらの組合せであることができる。キットは、マルチウェルアッセイプレート内のハプロタイプタグSNPまたは対立遺伝子に特異的な増幅プライマーを含んでもよい。同じくキットは、様々なプロモーター多型のためのハプロタイプタグSNPまたは対立遺伝子に特異的なハイブリダイゼーションプローブを含んでもよい。ハプロタイプタグSNPまたは対立遺伝子に特異的なハイブリダイゼーションプローブは、UGT1A1遺伝子の転写開始点からのヌクレオチド位置-3440、-3401、-3279、-3177、-3175、または-3156での多型を検出することができる。キットは、オリゴヌクレオチドアレイまたはマイクロアレイ中に含まれたハプロタイプタグSNPまたは対立遺伝子に特異的なハイブリダイゼーションプローブを含むことができる。
【0024】
本発明の組成物は、UGT1Aの-3156位の配列を決定するために使用することができる核酸またはそれに関した他の試薬を含む。複数の試料のスクリーニングのためのアレイおよび他のアッセイは、本発明の一部として含まれる。このような組成物は、本明細書において考察された他の組成物と共に、キットにまたはキットの一部として組込むことができる。
【0025】
本発明のいずれかの方法または装置のいずれかの態様を、本発明のいずれか他の方法または装置に関して使用することもできることが特に企図されている。
【0026】
「または」は、単なる代替物および「および/または」を意味する定義を支持するものであるが、特許請求の範囲において使用される用語「または」は、明白に代替のみを意味することまたは代替物を相互に排除することが示されない限りは、「および/または」を意味するように使用される。
【0027】
本出願を通じ、用語「約」は、値が、その値を決定するために使用される装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを示すように使用される。
【0028】
用語「ある(a, an)」は、特許請求の範囲および/または本明細書において用語「含む」と共に使用される場合、「ひとつの」を意味することがあるが、「1または複数の」、「少なくともひとつの」および「1または1よりも多い」の意味とも一致する。
【0029】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修飾はこの詳細な説明から当業者には明らかになるので、この詳細な説明および具体例は、本発明の特定の態様を示しているが、単なる例示として記されていることは理解されなければならない。
【0030】
例証的態様の説明
下記特許出願および特許は、それらの全体が本明細書に参照として組入れられている:米国特許第6,395,481号、第6,472,157号、特許出願第10/277,160号、および第10/057,834号。
【0031】
本発明は、個人または患者におけるイリノテカン毒性の可能性またはリスクの評価に関する、UGT1A1の発現またはUGT1A1のグルクロン酸抱合率に対する、様々な多型、プロモーター多型、またはそれらの組合せの作用を確定するための、改善された方法および組成物を提供する。これらの改善された方法および組成物の開発は、そのような評価を用い、患者の治療を最適化し、かつ毒性のリスクを低減することを可能にする。本発明のある局面において、プロモーター多型の様々な組合せをこの評価において使用することができ、特に、PBREM領域の多型およびTA反復配列の多型を使用することができる。
【0032】
UGT1A1発現における遺伝的変異は、いくつかの重要な臨床的意義を有する。UGT1A1基本転写は、多型性の(TA)反復配列により影響を受ける。別の重要な調節エレメントは、誘導性遺伝子発現に影響を及ぼす変異を含むことがあるフェノバルビタール-反応性エンハンサーモジュール(PBREM)である。本明細書において提供されたこれらの例は、(TA)多型とPBREMおよびUGT1A1プロモーターにおける変異間の連鎖不平衡の程度を研究する。PBREM-(TA)nハプロタイプとUGT1A1基質SN-38のグルクロン酸抱合率の間の関係も、本明細書において説明されている。本実施例において説明された試験は、SN-38G形成率は、(TA)遺伝子型およびプロモーター変異と相関していることを例証している。様々な局面において、特定の(TA)変異は、様々な他の多型と連鎖不平衡である。
【0033】
本発明のある局面は、UGT1A1遺伝子のPBREM領域内の新規多型の知見および特徴決定を基にしているが、これらに限定されるものではない。UGT1A1活性の遺伝的に修飾された調節の臨床的意義のために、下記実施例の項で説明されるように、PBREM領域は配列決定され、かつUGT1A1プロモーターのTATAボックス内の多型は、遺伝子タイピングされる。
【0034】
I. UGT酵素による肝臓グルクロン酸抱合
肝臓グルクロン酸抱合は、その一員が様々な内在性基質および生体異物に対し特異性を示すUGT酵素の多遺伝子ファミリーの活性から生じる。UGT酵素は、ふたつの個別の遺伝子ファミリーにおおまかに分類される。UGT1遺伝子座は、UGTの複数のアイソフォームをコードしており、その全ては、エキソン2-5の独自のセットによりコードされたC-末端は共有しているが、これは異なる第一のエキソンによりコードされた変動するN-末端を有し、各々それ独自の独立したプロモーターを伴う(Bosma et al., 1992;Ritter et al., 1992)。変動する第一のエキソンは、この酵素の基質特異性をもたらす。UGT2ファミリーのアイソフォームは、少なくとも8種のアイソザイムが同定されている独自の遺伝子産物である(Clarke et al.、Handbook of Experimental Pharmacology、1994)。UGT1A1アイソフォームは、主要なビリルビングルクロン酸抱合酵素である。UGT1A1遺伝子における遺伝子欠損は、低下したグルクロン酸抱合活性を生じることができ、これは異常に高レベルの非抱合型血清ビリルビンにつながり、このビリルビンは脳に侵入しかつ脳症および核黄疸を引き起こすことがある(Owens & Ritter, 1995)。この状態は、通常ジルベール症候群として知られる。ジルベール症候群における分子欠損は、UGT1A1プロモーター内のTATAボックスの変化である(Bosma et al., 1995、およびMonaghan et al., 1996)。このプロモーターは通常、(TA)6TAAエレメントを含むが、UGT1A1*28または対立遺伝子7と称される別の対立遺伝子も、ヒト集団において高頻度で存在し、これは配列(TA)7TAAを含む。UGT1A1遺伝子のプロモーター内のこの多型は、この遺伝子の発現を低下し、かつジルベール症候群のほとんどの症例を説明する(Bosma et al., 1995)。全体として、UGT1A1プロモーター対立遺伝子の遺伝子発現レベルは、TATAボックス内のTA反復配列の長さに反比例している。
【0035】
このプロモーター内に認められた変動は、薬物代謝および生体異物曝露に対する反応の個人間および人種間の変動も説明することができる。UGTは、外来性および内在性の両化合物の解毒および排泄に貢献することが示されている。例えばUGT1A1アイソフォームのひとつの典型的役割は、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)の対応するグルクロニド(10-O-グルクロニル-SN-38、SN-38G)へのグルクロン酸抱合に加え、TAS-103(6-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]-3-ヒドロキシ-7H-インデノ[2,1-c]キノリン-7-オン二塩酸塩)のその対応するグルクロニド(TAS-103G)へのグルクロン酸抱合である。SN-38は、転移性結腸直腸癌および他の悪性疾患の治療において使用されるカンプトテシン誘導体であるイリノテカン(CPT-11、7-エチル-10-[4-(1-ピペリジノ)-1-ピペリジノ]カルボニルオキシカンプトテシン)の活性型である。SN-38およびTAS-103(フラボピリドールとしても公知)の代謝は、本発明の単なる例である。エストラジオール、ビリルビン、単純なフェノール、フラボン、C18ステロイド、複合フェノールおよびクマリンなどの、他のUGT1A1基質の代謝も、企図されている。
【0036】
イリノテカンは、組織および血清カルボキシルエステラーゼにより、イリノテカンよりも100〜1,000-倍高い抗腫瘍活性を有する活性型代謝産物であるSN-38へ生体内変換される。SN-38は、肝臓ウリジンジ二リン酸グルクロニル転移酵素(UGT)によりグルクロン酸抱合され、不活性型でありかつ胆汁および尿中に排泄されるSN-38グルクロニド(10-O-グルクロニル-SN-38、SN-38G)を形成するが、SN-38Gは小腸βグルクロニダーゼ酵素により脱抱合され、SN-38を形成する(Kaneda et al., 1990)。
【0037】
イリノテカンの主な投与量-制限する毒性は、下痢、および程度は少ないが骨髄抑制である。イリノテカンが誘導した下痢は、重篤であることがあり、一般的止瀉剤に適切に反応しないことが多い(Takasuna et al., 1995)。この下痢は、無胸腺マウスにおいてイリノテカンの腹腔内投与後に小腸内に蓄積されることが示されている活性型代謝産物SN-38により引き起こされた腸損傷に直接起因し得る(Araki et al., 1993)。最近実施された臨床試験第I相の結果は、SN-38のグルクロン酸抱合率と、漸増量のイリノテカンにより治療された患者の下痢罹患の重症度の間には反比例の関係があることを明らかにした(Gupta et al., 1994)。これらの知見は、SN-38のグルクロン酸抱合は、イリノテカンが誘導した胃腸毒性に対し保護することを示している。下痢とSN-38グルクロン酸抱合の間の相関関係の完全な考察に加え、グルクロン酸抱合レベルを決定するための生化学的方法の説明は、米国特許第5,786,344号および国際公開公報第96/01127号に認めることができ、これらは両方ともそれらの全体が本明細書に参照として組入れられている。同様に、TAS-103を使用する試験の結果は、TAS-103のグルクロン酸抱合は、TAS-103が誘導した毒性に対して保護することを明らかにしている。従ってこれらふたつの毒性化合物の肝臓UGTによる転換は、UGTにより代謝された化合物への曝露により引き起こされる毒性に対する感受性の指標としての、グルクロン酸抱合活性のモニタリングの重要性を明らかにしている。更に対象間で異なるSN-38グルクロン酸抱合率は、薬物動態パラメータの推定値のかなりの個人間変動ならびに抗癌剤による治療後または生体異物への曝露後に観察された毒性を説明することができる(Gupta et al., 1994;Gupta et al., 1997)。
【0038】
UGT1Aアイソフォームを欠損しているふたつの種Gunnラット(Gunn, 1938)およびCN-1患者が、TAS-103およびSN-38のグルクロン酸抱合活性についてスクリーニングされた場合には、健常肝臓ドナーと比べ、インビトロにおけるTAS-103のおよそ80%低いグルクロン酸抱合率が存在し、かつインビトロにおいてSN-38のグルクロン酸抱合が存在しなかった。これらの結果は、SN-38およびTAS-103抱合を触媒するUGT1ファミリーの役割を明らかにしている。更にこれらの結果は、UGT2ファミリーは、SN-38のグルクロン酸抱合において役割を果たさないことも明らかにしている。他方でUGT1ファミリーのアイソフォームは、TAS-103グルクロン酸抱合に関連した支配的なアイソフォームであるが、UGT2ファミリーのアイソフォームも、TAS-103グルクロン酸抱合に参加し得る。これらの例におけるSN-38およびTAS-103のグルクロン酸抱合の失敗は、特にUGT1遺伝子ファミリーの遺伝子欠損から生じる。
【0039】
別の実験は、UGT1A1アイソフォームとSN-38およびTAS-103グルクロン酸抱合の間の関係を確認している。これらの試験は、UGT1A1アイソフォームファミリーにおいて、特にUGT1A1プロモーターにおいて、実質的遺伝子変動が存在することを示している。この遺伝子変動は、遺伝子発現と相関することが示されている。例えば、UGT1A1プロモーター内の5対立遺伝子の存在は増加した遺伝子発現につながるが、8対立遺伝子の存在は低下した遺伝子発現につながる。遺伝子発現レベルの差異は、UGTにより代謝された化合物のグルクロン酸抱合能が変動する個人に生じることがある。この予測は、UGT1A1プロモーター遺伝子型と、インビトロにおけるSN-38およびTAS-103のグルクロン酸抱合率の相関関係分析により確認された。
【0040】
従って8対立遺伝子を伴う個人は、それらの化合物がUGT1A1により代謝された場合、他の遺伝子型と比較し、生体異物に対する異なる感受性も有し得ることとなる。他方で、増大した遺伝子発現およびより高いグルクロン酸抱合活性と相関している5対立遺伝子の存在は、薬物の適量未満の投与を生じることがある。例えば、UGT1A1により代謝された薬物がこの多型の個人に投与される場合、増加したグルクロン酸抱合活性は、より短い期間に、より多くの薬物の不活性型代謝産物への転換を引き起こすことができ、これによりこの薬物の有効性が低下する。逆に、活性化にグルクロン酸抱合が必要である薬物および生体異物の稀な場合においては、減少したグルクロン酸抱合活性は、より少ない利用可能である薬物または生体異物の活性型を生じ得る。
【0041】
反復された配列は、本質的に不安定でありかつ減数分裂時の不均等な交差の結果として長くおよび短くなる傾向があるという事実は、その集団における(TA)6および(TA)7に加え、他の対立遺伝子の存在を説明し得る。下記のふたつの追加の対立遺伝子がヒト集団において確定されている:配列(TA)5 TAAを含む対立遺伝子5および配列(TA)8 TAAを含む対立遺伝子8。その全体が本明細書に参照として組入れられている、米国特許第6,395,481号を参照のこと。興味深いことに、対立遺伝子5および8は、サハラ以南のアフリカ系の集団試料中に優勢的に認められ、そこではこれらは、一般的な対立遺伝子6および7よりもより低い頻度で生じるが、これらふたつの対立遺伝子は様々な人種群にわたり存在する事が可能である。対立遺伝子6および7の頻度も、人種群にわたり有意に異なることが明らかであり、アジア系およびアメリカインディアン系の集団は、対立遺伝子6の最高頻度を示している。対照的に、コーカサス人およびサハラ以南のアフリカ系においては、対立遺伝子6および7は、中間かつ同様の頻度で生じる。
【0042】
UGT1A1プロモーターの観察された集団間変動のパターンの原因となる選択的圧力に関するいくつかの仮説が提唱されている。これまでに、中間レベルのビリルビンの維持は、適応性があること(Beutler et al., 1998)、およびこのプロモーターの対立遺伝子は、選択のバランスをとることによりその集団において維持されることが提唱されている。この仮説は、ビリルビンは、おそらく生理的意義を持つ強力な抗酸化物質であるという知見を基にしている(Stocker et al., 1987)。しかしグルクロン酸抱合は、多くの外来性化合物に加え内在性化合物の重要な解毒工程であることも知られている(Clarke & Burchell, 1994)。UGT1A1は、TAS-103およびSN-38に加え、環境中に存在する他の基質、例えば解毒を必要とする食事成分、環境汚染物質および発癌性物質などにも作用し、解毒に加えビリルビンおよび他の内在性化合物の代謝において役割を果たす。この枠組み内において、高レベルのUGT1A1遺伝子発現の維持は、毒性化合物または内在性化合物の迅速な排泄を確実としかつ利点となるであろう。
【0043】
本明細書に説明されたように、対立遺伝子6および7について認められるインビトログルクロン酸抱合率とUGT1A1プロモーター多型の間の相関関係は、対立遺伝子5および8に拡大することが示されている。これらの対立遺伝子は、ヒト集団のサブセットにおいて(例えば、アフリカ系を起源とするもの)より頻度が高いように見えるので、SN-38およびTAS-103代謝のさらにより高い個人間変動が、これらの集団内において予想される。TA反復配列のサイズとSN-38グルクロン酸抱合率の間の反比例の関係は対立遺伝子5および8に拡大するので、これらの対立遺伝子を同定するスクリーニングアッセイは、薬物療法の個人化を促進し、生体異物曝露に感受性のある個人を確定し、かつ薬用量計算を改善するために使用することができる。
【0044】
A. UGT1A1に関連する先行する実験
UGT1A1に関連する実験は、2004年1月5日に出願された米国特許出願第10/751,606号に開示されており、これは本明細書に参照として組入れられている。これらの実験を以下に説明する。
【0045】
1. (TA)N多型の遺伝子タイピング
(TA)6対立遺伝子は、頻度0.58の最も一般的な対立遺伝子であるが、(TA)7対立遺伝子は、頻度0.36である(下記表)。(TA)5および(TA)8対立遺伝子も認められたが、より低い頻度であった(各々、0.02および0.05)。集団試料(n=107)において、最も一般的な遺伝子型は6/7であり(0.41)、次に6/6遺伝子型(0.34)であった。稀な遺伝子型(<0.02)は、5/6、5/7および5/8遺伝子型であった。(TA)6および(TA)7対立遺伝子頻度は、コーカサス人とアフリカ系アメリカ人の間で有意差はなかった(χ-二乗検定、P=0.7)。同様に、6/6、6/7、および7/7遺伝子型頻度は、これらふたつの人種群間で差がなかった(χ-二乗検定、P=0.8)。ひとりのアジア人が6/6遺伝子型を有し、他の人種のふたりが6/7および7/7遺伝子型を有した。
【0046】
(TA)n多型:遺伝子型頻度

【0047】
2. PBREMのシークエンシング
103の試料において、6種の多型が認められ、その中のふたつ(-3279G>Tおよび-3156G>A)が一般的であり、頻度は各々0.39および0.30であった(図4、下記表)。6種の多型は全て、ハーディ-ワインベルグ平衡である(P>0.5)。ヒヒ配列(アクセッション番号AC091778、これは本明細書に参照として組入れられている)との比較を基に、おそらく-3279Gおよび-3156Gは祖先の状態であろう。最も一般的な-3279G>T多型は、PBREMのNR3ドメインのスペーサー配列内に位置する(図4)。変異は、構成性活性型受容体(CAR)の結合部位であるgtNR1ドメイン内には認められない。-3279Gは、コーカサス人と比べアフリカ-アメリカ人において有意により一般的である(χ二乗=13.82、P=0.001)が、-3156Aの頻度は、これらふたつの人種群間で有意差がなかった(χ-二乗検定、P=0.9)。
【0048】
PBREMのシークエンシング:遺伝子型頻度

【0049】
3. UGT1A1プロモーターの連鎖不平衡およびハプロタイプ構造
尤度比検定は、本発明者らの集団試料における位置-3279、-3156および(TA)n多型間の有意な対のある(pairwise)連鎖不平衡を検出した(n=103、P<0.0001)。連鎖不平衡分析に一般的(TA)6および(TA)7対立遺伝子のみを使用した場合、同じ結果が得られた(P<0.0001)。対のある連鎖不平衡をコーカサス人およびアフリカ系-アメリカ人において個別に評価した場合、コーカサス人において高度に有意な連鎖不平衡が同様に検出された(P<0.0001)。アフリカ系-アメリカ人において、同じく対のある連鎖不平衡は全ての位置間で検出されたが、有意性のレベルはこれらの対のある比較間で大きく変動した。(TA)nと-3156間の連鎖不平衡のみが、コーカサス人について認められるものと同様の有意なレベルを有し(P<0.0005)、他方連鎖不平衡は、(TA)nと-3279間(P=0.02)および-3279と-3156の間(P=0.04)でわずかに低レベルの有意性を有した。
【0050】
マルチサイトハプロタイプ推論は、PBREM変異および(TA)n多型にわたる10種のハプロタイプを生じた(下記表)。ハプロタイプI-Vは、(TA)6対立遺伝子を含み、およびハプロタイプIは、ハプロタイプIIとはPBREMのNR3ドメインの位置-3279で異なる。ハプロタイプVI、VIIおよびVIIIは、(TA)7反復配列を含み、ハプロタイプVIおよびVIIは、互いに-3156位が異なる。ここで、(TA)6対立遺伝子のハプロタイプ構造は、アフリカ系-アメリカ人部分試料において異なるという示唆が存在する。ハプロタイプIは、コーカサス人と比べ、アフリカ系-アメリカ人において余り一般的ではない(χ二乗=27.06、P<0.0001)が、ハプロタイプIIは、より一般的である(χ二乗=14.84、P=0.0001)。ハプロタイプVIおよびVIIの頻度の差異は、これら2群間で統計学的に有意ではかなった(χ-二乗検定、各々、P=0.44および0.48)。
【0051】
これらの試験した試料間で、これらのハプロタイプの21種の異なる組合せが認められた。コーカサス人において、最も頻度の高いハプロタイプ対は、I/VI(0.35)、I/I(0.24)およびI/II(0.11)であるのに対し、アフリカ系-アメリカ人においてI/II(0.11)、II/VI(0.11)、II/VIII(0.08)、I/VI(0.08)、II/VII(0.08)およびVI/VI(0.08)であった。いかに多くの相対的に高頻度のハプロタイプが認められるかを反映している、ハプロタイプ有効数は、アフリカ系-アメリカ人およびコーカサス人において、各々、5.2および2.6であった(下記表)。最後に、(TA)6ハプロタイプの多様性(±SD)は、アフリカ系-アメリカ人およびコーカサス人において、各々、0.555±0.070および0.262±0.065であった(P<0.05)。
【0052】
プロモーター突然変異のハプロタイプ構造およびハプロタイプ頻度
ハプロタイプの有効数も報告している。

【0053】
4. UGT1A1表現型決定ならびに(TA)n多型およびハプロタイプとの関連
UGT1A1活性は、83種のヒト肝臓ミクロソームにおけるSN-38グルクロン酸抱合率として測定した。変動係数46%(1.90 f 0.87 SN-38G/IS、平均f SD)および10-倍の範囲のSN-38グルクロン酸抱合が認められた。
【0054】
5/7、5/6、6/8および7/8遺伝子型の対象は少数であるために、6/6、6/7および7/7のみをANOVA解析に使用した。表現型は、これらの3種の遺伝子型にわたり有意に異なった(P=0.008)(図5A)。これらの遺伝子型にわたるSN-38グルクロン酸抱合率の変動度は、異なる人種群において同様であった(P>0.1)。有意に減少する傾向は、コーカサス人においては6/6、6/7および7/7遺伝子型にわたり(P<0.001、JT検定、図5B)、ならびにアフリカ系-アメリカ人においては6/6、6/7、6/8および7/7遺伝子型にわたり(P=0.033、JT検定)、認められた(図5C)。アジア人(n=1)、その他の(n=2)および不明の(n=10)人種的背景を持つ試料が一緒にプールされた場合には、(TA)n遺伝子型にわたり有意な傾向は認められなかった(P>0.1、JT検定)(図5D)。コーカサス人試料において、ふたつの遺伝子型群間の表現型の対のある比較は、6/7と7/7群の間(P=0.007、片側正確確率ウイルコクソン検定)および6/6と7/7群の間(P=0.0002)で、有意差を示した。対のある比較は、アフリカ系-アメリカ人内では有意性がなく、これはおそらく各遺伝子型の試料数が少ないためであろう。
【0055】
(TA)n遺伝子型が、両染色体のTA反復配列数の合計とみなされる場合(すなわち、≦12(5/6、6/6、5/7)、13(6/7)および≧14(7/7、6/8、7/8)遺伝子型)、全試料集団、コーカサス人、アフリカ系-アメリカ人における、低下したUGT1A1活性の有意な傾向(P<0.01)が、これら3群にわたり測定された(最低は、≧14遺伝子型群である)が、アジア/その他/不明の人種の試料においては認められなかった(P=0.66)。対のある比較(片側正確確率ウイルコクソン検定)は、全試料集団およびコーカサス人において、13および≦12遺伝子型と比べ≧14において、ならびに≦12遺伝子型と比較した13において、有意に低下したUGT1A1活性を示した(P<0.01)。アフリカ系-アメリカ人において、≦12遺伝子型は、13または≧14遺伝子型のいずれかと比較して、有意に高いUGT1A1活性を有した(各々、P=0.028および0.016)が、UGT1A1活性は、13および≧14遺伝子型の間で有意差はなかった(P=0.11)。
【0056】
コーカサス人およびアフリカ人起源の試料において、SN-38グルクロン酸抱合率は、減少する傾向でこれらのハプロタイプにわたり有意に変動する(P<0.0001、JT検定)(図6)。しかしこの見かけのハプロタイプ-表現型相関関係は、おそらくPBREM変異との連鎖不平衡である(TA)n多型の作用に起因するであろう。従って一般的-3279G>Tおよび-3156G>A変異の可能性のある機能的作用は、試験した変異によってのみ異なる遺伝子型にわたりSN-38グルクロン酸抱合率を比較することにより調べられた。-3279G>T変異に関して、SN-38グルクロン酸抱合は、コーカサス人の間でI/I対と比較してI/II対において低下したが、統計学的有意性には到達しなかった(各々、2.06±0.74、対、2.53±0.82 SN-38G/IS)(ウィルコクソン順位和検定、P=0.18)。-3156G>A変異に関して、SN-38グルクロン酸抱合は、I/VI対と比較しI/VII対においてわずかに低下したが、この差異は統計学的有意性はなかった(ウィルコクソン順位和検定、P=0.64)。
【0057】
5. 前記実験のための材料および方法
a. 化学物質および試薬
エキソヌクレアーゼIおよびエビアルカリホスファターゼ(exo/SAP)は、USB(クリーブランド, オハイオ州, USA)から購入した。ABI Big Dyeターミネーターサイクル-シークエンシングキットは、Applied Biosystems(フォスターシティ, カリフォルニア州, USA)から購入した。PBREMの増幅、シークエンシング、および(TA)n多型の増幅のためのプライマーは、GibcoBRL(Invitrogen Co., カールスバッド, カリフォルニア州, USA)から入手した。SN-38は、Dr. Kiyoshi Terada(Yakult Honsha Co., Ltd, 日本)のご厚意により入手した。カンプトテシン、UDPGA、塩化マグネシウム、トリズマ塩基、リン酸一水素カリウムおよび1-ヘプタンスルホン酸は、Sigma-Aldrich(セントルイス, ミズーリ州, USA)から購入した。アセトニトリル、テトラヒドロフランおよび塩酸は、Fisher Scientific(ハーノーバー, イリノイ州, USA)から購入した。
【0058】
b. ヒト肝臓
正常なヒト肝臓(n=83)は、主にLiver Tissue Procurement and Distribution System(National Institutes of Diabetes and Digestive and Kidney Disease, ミネアポリス, ミネソタ州)から入手した。DNAを、Qiagen RNA/DNA Maxi Kit(Qiagen Inc., バレンシア, カリフォルニア州, USA)を用いて単離し、ミクロソームを、分画遠心分離法(Purba et al., 1987)により単離した。DNAおよびミクロソームは、Pharmacogenetics of Anticancer Agents Research (PAAR) GroupのLiver Core Bank Facility(St. Jude Children's Research Hospital)により提供された。酵素分解が発生した肝臓を同定するために、UGT1A1、UGTlA9およびUGT2B7活性の10パーセンタイルに一貫して含まれた肝臓試料を探した。UGT1A9およびUGT2B7活性は、特異的プローブを用いて測定した(データは示さず)(Ramirez et al., 2002およびInnocenti, et al., 2001)。UGT1A1の10パーセンタイルの活性内の8種の試料のうち、ただひとつの試料が、残りの2種の酵素活性の10パーセンタイル内に含まれた。異なる肝臓の取扱い/貯蔵またはミクロソームのタンパク質分解の分解がその試料において生じる場合は、これは表現型/遺伝子型相関関係の程度に影響されるはずがなく、その理由は、その個人は7/7遺伝子型を有し、かつ7/7遺伝子型試料(n=11)間ではこれは4番目に低い値を有するからである。更に、UGT1A1とUGT2B7活性の間の相関関係の欠如(n=83、r=0.07、P=0.5)は、組織完全性およびミクロソーム安定性における差異は、おそらくUGT表現型への軽度の影響(あるとしたら)を有するということを示している。
【0059】
83名の肝臓ドナーの人種的組成は以下で構成された:コーカサス人68%、アフリカ系-アメリカ人18%、アジア人1%、その他の人種2%。不明の人種起源の試料の割合は、12%であった。
【0060】
c. (TA)n多型の遺伝子タイピング
(TA)n多型の遺伝子タイピングのために、およそ40ngのDNAに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅を施した。使用した増幅プライマーは、先に説明されており(Monaghan et al., 1996)、ここでフォワードプライマーの配列は

であり、およびリバースプライマーの配列は、

であった。これらのプライマーは、UGT1A1遺伝子のプロモーター領域内の多型性のTA遺伝子座の側方に位置し、かつ(TA)6対立遺伝子が存在する場合は98bp断片を増幅し、および(TA)7対立遺伝子が存在する場合は100bp断片を増幅する。(TA)5および(TA)8対立遺伝子が存在する場合は、96bpおよび102bpの対立遺伝子が増幅された。増幅産物を可視化するために、リバースプライマーは、その5'-末端を蛍光色素で標識した。増幅反応は、1.5mmol MgCl2、250mmol dNTPs、0.8mmolの各プライマーおよび0.5U Taqポリメラーゼ(Amplitaq Gold Applied Biosystems)を含有する、10μl容積で行った。このポリメラーゼは、95℃で10分間活性化し、およびDNAは、95℃で30秒、55℃で30秒および72℃で30秒で35サイクル増幅し、次に最後の伸長を72℃で10分間行った。このPCR分析には、6/6、6/7および7/7遺伝子型を有することがわかっている個人に由来した対照DNAを含んだ。ABI 377 DNAアナライザー(Applied Biosystems)上で、PCR断片にゲル電気泳動を施した。増幅産物は、ホルムアミドおよびデキストランブルー装荷緩衝液で希釈し、1μlを1μlのサイズ標準(GS-350、Applied Biosystems)と混合し、95℃で変性し、かつ6%変性ポリアクリルアミドゲル上に装荷した。電気泳動は、製造業者の推奨に従い3.5時間行った。Genescan and Genotyperソフトウェア(ver.3.7、Applied Biosystems)を使用し、断片を分析しサイズを決定した。
【0061】
d. PBREMのシークエンシング
NIGMS HGCR Human VariationPanel(Coriell Institute for Medical Research, Camden, ニュージャージー州, USA)に含まれたアフリカ系-アメリカ人(アフリカ家系のアメリカ人、米国において誕生)から得た、83種のヒト肝臓DNA中81種および24種のDNA試料中22種について、PBREMを含む606bp領域(-3641から-3036)が、うまくPCR-増幅され、配列決定された。図4に示した参照配列は、GenBankデーターベースに寄託されたものである(アクセッション番号AF313454)。PCR産物の増幅は、10または25-pl反応容積において、下記プライマーを用い行った:

。これらのプライマーは、Primer3ソフトウェア(Rozen et al., 1998)を用いてデザインした。PCR条件は、94℃で2分間、3-工程サイクリングプログラム(94℃で30秒、66.8℃で30秒および72℃で1分)を32または33サイクル、ならびに72℃で3分間であった。PCR産物のexo/SAPクリーナップ後、その後このアンプリコンを、これらの増幅プライマー、Big Dyeターミネーター化学を用い、フォワードおよびリバース方向に配列決定し、ABI 3700(Applied Biosystems)上で製造業者のプロトコールに従い試行した。配列は分析し、Poly-Phredソフトウェア(Nickerson et al., 1997)を用い、個別に遺伝子タイピングした。ヒトにおいて認められた多型の祖先の状態を決定するために、この配列を、ヒヒの配列(アクセッション番号AC091778)と比較した。
【0062】
e. ヒト肝臓ミクロソームにおけるSN-38グルクロン酸抱合アッセイ
UGT1A1の基質としてSN-38を用い、試料を表現型決定した。インキュベーション混合物は、5μmol SN-38、10mmol MgCl2、1mg/mlミクロソーム、0.025molトリス-HCl(pH7.4)および5mmol UDP-GAで構成された。試料は、37℃で30分間インキュベーションした。メタノールを添加し、反応を停止した。これらの条件は、先の酵素反応の最適化(Iyer et al., 1998)後に、選択した。カンプトテシン(75ng)を、内部標準として使用した。SN-38グルクロン酸抱合を、蛍光検出(λ励起波長=355nm、λ放出波長=515nm)を備えるHPLC(Hitachi Instruments Inc., サンノゼ, カリフォルニア州, USA)により測定した。μBondapak(商標)C18カラム(3.9X300mm、10μm;Waters Corp., ミルフォード, マサチューセッツ州, USA)およびμBondapak(商標)C18ガードパック(Waters Corp.)を使用した。試行の最初の7分間の移動相は、50mmolリン酸二水素カリウム(pH4)中の8/4/88のアセトニトリル/テトラヒドロフラン/0.9mmolヘプタンスルホン酸(heptanedfonic acid)ナトリウムを使用した。7.1〜25分間は、溶離液は、50mmolリン酸二水素カリウム(pH4)中の30/70アセトニトリル/5mmolヘプタンスルホン酸ナトリウムで構成された。流量は、0.9ml/分であった。SN-38G、SN-38およびカンプトテシンの保持時間は、各々、13.3、18.4および19.3分であった。SN-38グルクロン酸抱合率は、SN-38グルクロニド(SN-38G)と内部標準(IS)のピーク高さの比として示した。アッセイ内変動は、ヒト肝臓ミクロソームのプールを用い、同日に10回のインキュベーションを行い決定した。アッセイ間変動は、異なる3日に、3つ組で、ヒト肝臓ミクロソームのプールをインキュベーションすることにより評価した。アッセイ内およびアッセイ間変動は7%以内であった。
【0063】
f. 統計解析
多型部位の対の間の連鎖不平衡の有意性は、ARLEQUIN、ver.2(Schneider et al., 2000)に提供された遺伝子型データおよび尤度比検定を用いて評価した。同じくARLEQUINを用い、改変Markov-鎖ランダムウォークアルゴリズムも行い、ハーディ-ワインベルグ平衡について検定した。次にプログラムPHASE(Stephens et al., 2001)を用い、マルチサイトハプロタイプを推定した。このプログラムは二-対立遺伝子および多-対立遺伝子の多型部位の両方を許容しないので、ハプロタイプは、(TA)6または(TA)7対立遺伝子のいずれかを伴う個人についてのみ推定した。
【0064】
13名の個人は、(TA)5または(TA)8反復配列についてヘテロ接合性であり、その中の3名は、TA反復配列のみヘテロ接合性であり、従って他の部位については明白であった。残りの10名の個人について、ハプロタイプは、(TA)6または(TA)7対立遺伝子を伴う染色体は、PHASE分析により先に同定されたハプロタイプを含むと想定することにより、手作業により決定した。ひとつの場合において、この方法は新たな(TA)8ハプロタイプを生じるであろう。しかし、おそらくこの個人は代わりに新規(TA)6ハプロタイプ(V)を有し、これは、(TA)6対立遺伝子は、他の稀なものを含む、複数のハプロタイプについて認められるという知見と一致する。新規ハプロタイプは、103名の個人中1名で生じるのみであり、表現型との相関関係の試験において使用した試料中では生じないので、不正確な割当ては、その後の分析にほとんどまたは全く影響を及ぼさないであろう。
【0065】
ハプロタイプの有効数は、二乗した頻度の和の逆数として計算した。ハプロタイプの数および頻度を基にしならびに試料サイズにより調整した、コーカサス人およびアフリカ系-アメリカ人の(TA)6ハプロタイプの多様性は、DnaSP ver.3.53(Rozas et al.)に加えそれらのSDにより推定した。統計学的有意性は、先に説明されたt-検定(Nei, 1987)を用い評価した。χ-二乗検定を用い、コーカサス人とアフリカ系-アメリカ人の間の遺伝子型/ハプロタイプ頻度の差異を解析した。
【0066】
UGT1A1活性は、各肝臓のSN-38グルクロン酸抱合率を、3つ組で行った1回の実験の平均±SDとして測定することにより、表現型決定した。(TA)n多型と表現型の間の関係の統計解析は、分散分析(ANOVA)を用い、集団試料(n=83)における表現型に対する遺伝子型作用を最初に評価するために計画した。遺伝子型の作用が統計学的に有意である場合、その結果、各人種群内で、正確確率ヨンキー-テルプストラ(Jonkheerer-Terpstra)(JT)検定を用い、遺伝子型にわたるトレンドの検定を行った(Gibbons et al., 1992)。ふたつの遺伝子型の間の対のある比較は、片側正確確率ウィルコクソン検定を用いて行った。更にトレンド解析および対のある比較を、両染色体のTA反復配列の和として表された遺伝子型において行った(すなわち、≦12(5/6、6/6、5/7)、13(6/7)および≦14(7/7、6/8、7/8)TA反復配列遺伝子型を持つ試料において)。ハプロタイプ-表現型の関係に関して、両側正確確率ウィルコクソン検定を用い、ふたつのハプロタイプ間のSN-38グルクロン酸抱合率を比較した。SASシステム(SAS Institute, Inc., Cary, ノースカロライナ州)およびStatXact-5(CYTEL Software Corporation, ケンブリッジ, MA, USA)を用い、統計解析した。GraphPadソフトウェアver.3.02(GraphPad Software Inc., サンディエゴ, カリフォルニア州, USA)を用い、図表解析した。
【0067】
II. 核酸
本発明のある態様は、ゲノムDNAの分析に関係したプロモーター、増幅プライマー、オリゴヌクレオチドプローブおよび他の核酸エレメントを含む、様々な核酸に関連している。ある局面において、核酸は、野生型、突然変異体、または多型性の核酸を含む。
【0068】
用語「核酸」は、当該技術分野において周知である。本明細書において使用される「核酸」は、一般に核酸塩基を含むDNA、RNAの分子(すなわち鎖)またはそれらの誘導体もしくはアナログを意味するであろう。核酸塩基は、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」またはシトシン「C」)またはRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」またはC)において認められる天然のプリンまたはピリミジン塩基を含む。用語「核酸」は、用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」を含み、これらは各々用語「核酸」の亜属である。用語「オリゴヌクレオチド」は、長さが約3から約100個の核酸塩基の分子を意味する。用語「ポリヌクレオチド」は、長さが約100個よりも多い核酸塩基の少なくともひとつの分子を意味する。「遺伝子」は、遺伝子産物のコード配列に加え遺伝子産物のイントロンおよびプロモーターを意味する。UGT1A1遺伝子に加え、UGT1A1のエンハンサーのような他の調節領域が、請求された本発明の組成物および方法で使用するための核酸として企図されている。
【0069】
これらの定義は一般に、一本鎖分子を意味するが、特定の態様においては、この一本鎖分子に対し、部分的、実質的または完全に相補的である追加の鎖も包含するであろう。従って核酸は、1本または複数の相補鎖または分子を含む特定の配列の「相補物」を含む、二本鎖分子または三本鎖分子を包含することができる。本明細書において使用される一本鎖核酸は、接頭辞「ss」で、二本鎖核酸は接頭辞「ds」で、および三本鎖核酸は接頭辞「ts」で示すことができる。
【0070】
特定の局面において、核酸は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードしている。ある態様において、本発明は、少なくとも1種のタンパク質性分子を含む新規組成物に関する。本明細書において使用される「タンパク質性分子」、「タンパク質性組成物」、「タンパク質性化合物」、「タンパク質性鎖」または「タンパク質性物質」は、一般に、約200個よりも多いアミノ酸のまたは遺伝子から翻訳された完全長内在配列のタンパク質;約100個よりも多いアミノ酸のポリペプチド;および/または、約3〜約100個のアミノ酸のペプチドを意味するが、これらに限定されるものではない。先に説明された「タンパク質性」という用語は全て、本明細書において互換的に使用される。
【0071】
1. 核酸の調製
核酸は、化学合成、酵素産生または生物学的産生などの、当業者に公知の技術のいずれかにより作製することができる。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の限定的でない例は、ホスホトリエステル、ホスファイトまたはホスホロアミダイト化学を使用するインビトロ化学合成、ならびに本明細書に参照として組入れられている欧州特許第266,032号に開示された固相法、または本明細書に参照として組入れられているFroehlerらの論文(1986)および米国特許第5,705,629号により説明されたデオキシヌクレオシドH-ホスホネート中間体経由により作製された核酸を含む。本発明の方法において、1種または複数のオリゴヌクレオチドを使用することができる。オリゴヌクレオチド合成の多種多様な機構は、例えば、米国特許第4,659,774号、第4,816,571号、第5,141,813号、第5,264,566号、第4,959,463号、第5,428,148号、第5,554,744号、第5,574,146号、第5,602,244号に開示されており、その各々は本明細書に参照として組入れられている。
【0072】
酵素により産生された核酸の限定的でない例は、PCR(商標)のような増幅反応において酵素により産生されたもの(例えば、米国特許第4,683,202号および第4,682,195号参照、両方とも本明細書に参照として組入れられている)、または本明細書に参照として組入れられている米国特許第5,645,897号に開示されたようなオリゴヌクレオチドの合成を含む。生物学的に産生された核酸の限定的でない例は、生存細胞において作製された(すなわち複製された)組換え核酸、例えば細菌において複製された組換えDNAベクターを含む(例えば、Sambrook et al. 2001参照、これは本明細書に参照として組入れられている)。
【0073】
2. 核酸の精製
核酸は、ポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム遠心勾配、クロマトグラフィーカラムまたは他の当業者に公知の手段により精製することができる(例えば、Sambrook et al. 2001参照、これは本明細書に参照として組入れられている)。一部の局面において、核酸は、薬学的に許容できる核酸である。薬学的に許容できる組成物は、当業者に公知であり、かつ本明細書に記されている。
【0074】
ある局面において、本発明は、単離された核酸である核酸に関する。本明細書において使用される用語「単離された核酸」は、1個または複数の細胞の全ゲノム核酸および転写された核酸のバルクを含まないように単離されたか、さもなければこれを含まない核酸分子(例えば、RNAまたはDNA分子)を意味する。ある態様において、「単離された核酸」は、細胞成分、または例えば脂質もしくはタンパク質のような巨大分子、小型生体分子などのインビトロ反応成分のバルクを含まないように単離されたか、さもなければこれを含まない核酸を意味する。
【0075】
3. 核酸セグメント
ある態様において、核酸は、核酸セグメントである。本明細書において使用される用語「核酸セグメント」は、限定しない例として、UGT1遺伝子座またはUGT1A1遺伝子配列の一部のみをコードしているもののような、核酸の断片である。従って「核酸セグメント」は、約2ヌクレオチドから、プロモーター領域からポリアデニン化シグナルを含む、完全長遺伝子および全てのコード領域を含むいずれかの長さまでを含む、遺伝子配列のいずれかの部分を含むことができる。
【0076】
様々な核酸セグメントは、特定の核酸配列を基にデザインすることができ、かつあらゆる長さであることができる。例えば最初の残基を1に、第二の残基を2など、配列に数値を割当てることにより、全ての核酸セグメントを定義するアルゴリズムを作成することができる:
nからn+y
ここでnは1からその配列の最後の数までの整数であり、ならびにyは、核酸セグメント−1の長さであり、ここでn+yは、その配列の最後の数を超えない。従って10-merについて、核酸セグメントは、塩基1から10、2から11、3から12・・・などに相当する。15-merについて、核酸セグメントは、塩基1から15、2から16、3から17・・・・などに相当する。20-merについて、核酸セグメントは、塩基1から20、2から21、3から22・・・などに相当する。ある態様において、核酸セグメントは、プローブまたはプライマーであることができる。本明細書において使用される「プローブ」は、一般に検出の方法または組成物において使用される核酸を意味する。本明細書において使用される「プライマー」は、一般に伸長または増幅の方法または組成物において使用される核酸を意味する。
【0077】
4. 核酸相補体
本発明は、核酸に相補的である核酸も包含している。核酸は、標準のワトソン-クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン結合相補則に従い別の核酸と塩基対形成することが可能である場合、別の核酸に対し「相補体」または「相補性」である。本明細書において使用される「別の核酸」は、別の分子または同じ分子の空間的に分離された配列を意味する。好ましい態様において、相補体は、核酸多型の検出のための、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーである。
【0078】
本明細書において使用される用語「相補体」または「相補性」は、例え全てよりも少ない核酸塩基が対応する核酸塩基と塩基対形成しないとしても、別の核酸鎖または二重鎖にハイブリダイズすることが可能である連続した核酸塩基または半連続した核酸塩基(例えば、1種または複数の核酸塩基部分はその分子内に存在しない)の配列を含む核酸も意味する。しかし一部の診断または検出の態様においては、完全に相補的な核酸が好ましい。
【0079】
III. 核酸検出
本発明の一部の態様は、UGT1A1の多型、相関する遺伝子型または表現型に対するハプロタイプを同定する事に関し、ここで表現型はより低いまたは変更されたUGT1A1活性または発現であり、次にイリノテカンまたは関連する薬物もしくは化合物が投与されたまたは投与されるであろう患者におけるこのような多型を同定する。従って本発明は、多型を同定するアッセイおよび他の核酸検出法に関する。その結果核酸は、核酸ハイブリダイゼーションに関連した態様に関してプローブまたはプライマーとしての利用性を有する。これらは、本発明の診断またはスクリーニング法において使用されてもよい。UGT1A1をコードしている核酸に加え、UGT1A1ポリペプチドまたは転写産物の発現または安定性に関連した核酸の検出は、本発明に包含されている。核酸検出法の一般的方法が以下に示されており、その後一塩基多型(SNP)を含む多型の同定に利用された具体的実施例が示されている。
【0080】
A. ハイブリダイゼーション
長さが3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15および50、60、70、80、90、もしくは100個のヌクレオチド、好ましくは17〜100個のヌクレオチド長、または本発明の一部の局面においては長さが最大1〜2キロベースもしくはそれ以上の、プローブまたはプライマーの使用は、安定しかつ選択的である二重鎖分子の形成を可能にする。得られたハイブリッド分子の安定性および/または選択性を増大するためには、長さが20塩基よりも大きい連続するひと配列(stretch)にまたがる相補的配列を有する分子が、一般に好ましい。20〜30ヌクレオチド、または望ましいならばより長い1種もしくは複数の相補的配列を有するハイブリダイゼーションのための核酸分子をデザインすることが一般には好ましいであろう。このような断片は、例えば化学的手段に断片の直接合成によるか、または組換え産生のための選択された配列の組換えベクターへの導入により、容易に調製することができる。
【0081】
従って本発明のヌクレオチド配列は、DNAおよび/またはRNAの相補的ひと配列を伴う二重鎖分子を選択的に形成するか、または試料からDNAまたはRNAを増幅するためのプライマーを提供するそれらの能力のために使用することができる。想定された用途に応じて、標的配列のプローブまたはプライマーの選択性の程度を変動することを実行するために、変動するハイブリダイゼーション条件を使用することが望ましいであろう。
【0082】
高い選択性が必要な用途については、典型的には比較的高ストリンジェンシー条件を使用し、ハイブリッドを形成することが望ましいであろう。例えば、約0.02M〜約0.10M NaCl、温度約50℃〜約70℃で提供されるような、比較的低い塩および/または高い温度条件である。このような高ストリンジェンシー条件は、もしあったとしても、プローブまたはプライマーと鋳型または標的鎖の間のミスマッチの忍容性が低く、および特に特定の遺伝子の単離または特定の多型の検出に適しているであろう。条件は漸増量のホルムアミドの添加により、よりストリンジェントとなることが一般に理解されている。例えば、高ストリンジェント条件下で、フィルターに結合したDNAへの、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でのハイブリダイゼーション、その後の0.1xSSC/0.1%SDS中で68℃での洗浄を行うことができる(Ausubel et al., 1989)。
【0083】
条件は、塩濃度を増加および/または温度を低下することにより、より低いストリンジェントとすることができる。例えば、中等度のストリンジェンシー条件は、約0.1〜0.25M NaCl、温度約37℃〜約55℃でもたらすことができるが、低ストリンジェンシー条件は、約0.15M〜約0.9M塩、温度範囲約20℃〜約55℃でもたらされる。穏やかなストリンジェント条件などの、低ストリンジェント条件下で、洗浄は、例えば、0.2xSSC/0.1%SDS中で、42℃で行うことができる(Ausubel et al., 1989)。ハイブリダイゼーション条件は、望ましい結果に応じて容易に操作することができる。
【0084】
別の態様において、ハイブリダイゼーションは、例えば、50mMトリス-HCl(pH8.3)、75mM KCl、3mM MgCl2、1.0mMジチオスレイトール、温度約20℃〜約37℃の条件下で実現することができる。他のハイブリダイゼーション条件は、約10mMトリス-HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2、温度範囲約40℃〜約72℃を含む。
【0085】
ある態様において、ハイブリダイゼーションを検出するために、標識のような適当な手段と組合せて、本発明の規定された配列の核酸を利用することは有利であろう。多種多様な適当なインジケーター手段が、当該技術分野において公知であり、これは検出することが可能である蛍光、放射性、酵素または他のリガンド、例えばアビジン/ビオチンを含む。好ましい態様において、放射性もしくはその他の環境に望ましくない試薬の代わりに、蛍光標識、またはウレアーゼ、アルカリホスファターゼもしくはペルオキシダーゼなど酵素タグを使用することが望ましい。酵素タグの場合、相補的核酸を含有する試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するために、呈色インジケーター基質を、肉眼または分光光度計により検出可能である検出手段を提供するために使用することができることがわかっている。別の局面において、特定のヌクレアーゼ切断部位が存在し、特定のヌクレオチド配列の検出は、核酸切断の存在または非存在により決定することができる。
【0086】
概して、本明細書に説明されたプローブまたはプライマーは、対応する遺伝子の発現または遺伝子型を検出するための、PCRのような液相ハイブリダイゼーションに加え、固相を使用する態様における試薬として有用であることが想起されている。固相に関係する態様において、被験DNA(またはRNA)は、選択されたマトリックスまたは表面に吸着、そうでなければ付着される。この固定された一本鎖核酸には、次に選択されたプローブとの望ましい条件下でのハイブリダイゼーションが施される。選択された条件は、具体的状況に応じて決まる(例えば、G+C含量、標的核酸の種類、核酸の給源、ハイブリダイゼーションプローブのサイズなどに応じて)。関心のある特定の用途のためにハイブリダイゼーション条件を最適化することは、当業者に周知である。ハイブリダイズされた分子の洗浄後、非特異的に結合したプローブ分子を除去するために、結合した標識の量を測定することにより、ハイブリダイゼーションが検出され、および/または定量される。代表的固相ハイブリダイゼーション法は、米国特許第5,843,663号、第5,900,481号および第5,919,626号に開示されている。本発明の実践において使用することができる他のハイブリダイゼーション法は、米国特許第5,849,481号、第5,849,486号および第5,851,772号に開示されている。本明細書のこの項目で確定されたこれらおよび他の参考文献の関連部分は本明細書に参照として組入れられている。
【0087】
B. 核酸の増幅
増幅の鋳型として使用した核酸は、常法に従い細胞、組織または他の試料から単離してもよい(Sambrook et al., 2001)。ある態様において、分析は、鋳型核酸の実質的精製を伴うかまたは伴わずに、全細胞もしくは組織のホモジネートまたは生物学的液体試料について行われる。この核酸は、ゲノムDNAまたは分画されたもしくは全体の細胞RNAであってよい。RNAが使用される場合、これは最初にRNAを相補的DNAに転換することが望ましい。
【0088】
本明細書において使用される用語「プライマー」は、鋳型-依存型のプロセスにおいて新生核酸合成の引き金を引くことが可能であるいずれかの核酸を包含することを意味する。典型的には、プライマーは、長さが10〜20および/または30個の塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列を利用することができる。プライマーは、二本鎖および/または一本鎖型で提供することができる、一本鎖型が好ましい。
【0089】
UGT1遺伝子座(Genbankアクセッション番号AF279093)、UGT1A1遺伝子および/または配列番号:1またはそれらの変異に相当する核酸ならびにそれらの断片に選択的にハイブリダイズするようにデザインされたプライマー対は、選択的ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で鋳型核酸と接触される。配列番号:1は、UGT1A1遺伝子の大半を含むヌクレオチド配列を意味する。配列番号:1は、UGT1遺伝子座のヌクレオチド169,831から187,313を含み配列番号:1のヌクレオチド1645は、UGT1A1遺伝子の転写開始点からのヌクレオチド-3565に相当しており、従って転写開始点は、配列番号:1のヌクレオチド5212に位置する。望ましい用途に応じて、これらのプライマーと完全に相補性である配列にのみハイブリダイゼーションすることができるような高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件が選択され得る。別の態様において、ハイブリダイゼーションは、プライマー配列との1個または複数のミスマッチを含む核酸の増幅を可能にするように、低下したストリンジェンシー下で生じることがある。一旦ハイブリダイズされると、鋳型-プライマー複合体は、鋳型-依存型の核酸合成を促進する1種または複数の酵素と接触される。「サイクル」とも称される複数回の増幅を、十分量の増幅産物が生成されるまで継続する。
【0090】
増幅産物は、検出、分析または定量することができる。ある用途において、検出は目視手段により行ってよい。ある用途において、検出は、生成物の、組込まれた放射性もしくは蛍光標識の化学発光、ラジオシンチグラフィーによる間接的同定、または更には電気および/もしくは温度インパルスシグナルを用いるシステムが関与してもよい(Affymax technology; Bellus, 1994)。
【0091】
所定の鋳型試料中に存在するオリゴヌクレオチド配列を増幅するために、多くの鋳型依存型のプロセスを利用することができる。最も知られた増幅法のひとつは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標)と称される)であり、これは米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,800,159号ならびにInnisらの論文(1988)に開示されており、これらは全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0092】
別の増幅法は、欧州特許出願第320308号に開示されたリガーゼ連鎖反応(「LCR」)であり、これも本明細書に参照として組入れられている。米国特許第4,883,750号は、プローブ対を標的配列に結合するためのLCRに類似した方法を開示している。米国特許第5,912,148号に開示された、PCR(商標)およびオリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ(OLA)(以下により詳細に説明する)を基にした方法も使用することができる。
【0093】
本発明の実践において使用することができる標的核酸配列の増幅の別法は、米国特許第5,843,650号、第5,846,709号、第5,846,783号、第5,849,546号、第5,849,497号、第5,849,547号、第5,858,652号、第5,866,366号、第5,916,776号、第5,922,574号、第5,928,905号、第5,928,906号、第5,932,451号、第5,935,825号、第5,939,291号および第5,942,391号、英国特許出願第2 202 328号、およびPCT出願PCT/US89/01025に開示されており、これらは各々全体が本明細書に参照として組入れられている。PCT出願PCT/US87/00880に開示されたQbeta Replicaseも、本発明における増幅法として使用することができる。
【0094】
制限部位の片方の鎖にヌクレオチド5'-[α-チオ]-三リン酸を含む標的分子の増幅を実現するために、制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼを使用する等温増幅法も、本発明の核酸の増幅に有用である(Walker et al., 1992)。米国特許第5,916,779号に開示された鎖置換増幅(SDA)は、複数回の鎖置換および合成、すなわちニックトランスレーションが関連している核酸の等温増幅を実行する別法である。
【0095】
別の核酸増幅手法は、核酸配列ベースの増幅(NASBA)および3SRを含む転写-ベースの増幅システム(TAS)を含む(Kwoh et al., 1989;PCT出願WO88/10315、これらは全体が本明細書に参照として組入れられている)。欧州特許出願第329822号は、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA、および二本鎖DNA(dsDNA)を循環的合成する核酸増幅プロセスを開示しており、これも本発明に従い使用することができる。
【0096】
PCT出願WO89/06700(その全体が本明細書に参照として組入れられている)は、プロモーター領域/プライマー配列の標的一本鎖DNA(「ssDNA」)に対するハイブリダイゼーション、それに続くその配列の多くのRNAコピーの転写を基にした核酸配列増幅スキームを開示している。このスキームは、循環式ではなく、すなわち得られたRNA転写産物から新規鋳型は作成されない。他の増幅法は、「RACE」および「片側PCR」を含む(Frohman, 1990;Ohara et al., 1989)。
【0097】
C. 核酸の検出
増幅後、鋳型および/または過剰なプライマーから増幅産物を分離することが望ましい。ひとつの態様において、増幅産物は、常法(Sambrook et al., 2001)を用い、アガロース、アガロース-アクリルアミドまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離される。分離された増幅産物は、更なる操作のためにゲルから切出しかつ溶出することができる。融点が低いアガロースゲルを用い、分離されたバンドは、ゲルの加熱、それに続く核酸の抽出により取り出すことができる。
【0098】
核酸の分離は、当該技術分野において公知のスピンカラムおよび/またはクロマトグラフィー技術により実行することもできる。本発明の実践において使用することができる多くの種類のクロマトグラフィーが存在し、これは吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、およびガスクロマトグラフィーに加えHPLCを含む。
【0099】
ある態様において、増幅産物は、分離した後または分離せずに可視化される。典型的可視化法は、臭化エチジウムによるゲルの染色、およびUV光下でのバンドの可視化に関与する。あるいは増幅産物が、放射性-または蛍光分光的に-標識されたヌクレオチドにより一体化して標識されている場合、分離された増幅産物は、x-線フィルムに曝すか、または適当な励起スペクトル下で可視化される。
【0100】
ひとつの態様において、増幅産物の分離後、標識された核酸プローブは、増幅されたマーカー配列と接触される。このプローブは好ましくは、発色団に複合されるが、放射標識されてもよい。別の態様において、プローブは、抗体またはビオチンのような結合パートナー、または検出可能な部分を保持する別の結合パートナーと複合される。
【0101】
特定の態様において、検出は、サザンブロットおよび標識されたプローブとのハイブリダイゼーションによる。サザンブロットに関連した技術は、当業者に周知である(Sambrook et al., 2001参照)。前述の一例は、本明細書に参照として組入れられている米国特許第5,279,721号に開示されており、これは自動化された核酸の電気泳動および転写のための装置および方法を開示している。この装置は、ゲルを外部で操作せずに電気泳動およびブロッティングを可能にし、本発明の方法の実行に理想的に適している。
【0102】
本発明の実践において使用することができる核酸検出の他の方法は、米国特許第5,840,873号、第5,843,640号、第5,843,651号、第5,846,708号、第5,846,717号、第5,846,726号、第5,846,729号、第5,849,487号、第5,853,990号、第5,853,992号、第5,853,993号、第5,856,092号、第5,861,244号、第5,863,732号、第5,863,753号、第5,866,331号、第5,905,024号、第5,910,407号、第5,912,124号、第5,912,145号、第5,919,630号、第5,925,517号、第5,928,862号、第5,928,869号、第5,929,227号、第5,932,413号および第5,935,791号に開示されており、これらは各々本明細書に参照として組入れられている。
【0103】
D. 他のアッセイ
他の遺伝的スクリーニングの方法を、例えばゲノムDNA、cDNAおよび/またはRNA試料中の突然変異を検出するために、本発明の範囲において使用することができる。点突然変異を検出するために使用される方法は、変性勾配ゲル電気泳動(「DGGE」)、制限断片長多型分析(「RFLP」)、化学的または酵素的切断法、PCR(商標)により増幅された標的領域の直接シークエンシング(前記参照)、一本鎖コンホメーション多型分析(「SSCP」)および当該技術分野において周知の他の方法を含む。
【0104】
点突然変異のスクリーニングのひとつの方法は、RNA/DNAまたはRNA/RNAのヘテロ二重鎖における塩基対ミスマッチのRNase切断を基にしている。本明細書において使用される用語「ミスマッチ」は、二本鎖RNA/RNA、RNA/DNAまたはDNA/DNA分子において1個または複数の対のないまたは誤対形成のヌクレオチドの領域として定義される。従ってこの定義は、単独または複数の塩基の点突然変異に加え、挿入/欠失突然変異によるミスマッチを含む。
【0105】
米国特許第4,946,773号は、一本鎖DNAまたはRNAの被験試料のRNAプローブへのアニーリング、それに続くRNase Aによる核酸二重鎖の処理に関与している、RNase Aミスマッチ切断アッセイを開示している。ミスマッチの検出のために、RNase A処理の一本鎖生成物は、サイズに従い電気泳動により分離し、同様に処理された対照二重鎖と比較される。対照二重鎖においては認められない比較的小さい断片(切断生成物)を含有する試料は、正(positive)とスコア化した。
【0106】
他の研究者らは、ミスマッチアッセイにおけるRNase Iの使用を説明している。ミスマッチ検出のためのRNase Iの使用は、Promega Biotechの文献に説明されている。Promegaは、4種の公知のミスマッチの中の3種を切断することが報告されているRNase Iを含むキットを販売している。他のものは、単-塩基のミスマッチの検出をMutSタンパク質または他のDNA-修復酵素を用いて説明している。
【0107】
本発明の実践において使用することができる欠失、挿入または置換突然変異を検出する別法は、米国特許第5,849,483号、第5,851,770号、第5,866,337号、第5,925,525号および第5,928,870号に開示されており、これらは各々全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0108】
E. SNPスクリーニング法の具体例
生物のゲノムの進化の過程において生じる自然突然変異は、その種のメンバー全てに直ちに伝播されることは稀であり、従ってその種の集団内に同時に存在する多型性の対立遺伝子を生じる。多型は、遺伝的疾患の原因であることが多い。多型のいくつかのクラスが同定されている。例えば、可変性ヌクレオチド型多型(VNTR)は、ヌクレオチドのジ-またはトリヌクレオチド反復モチーフの自然タンデム重複から生じる。このような変動が、制限エンドヌクレアーゼ切断により作成されたDNA断片の長さを変更する場合は、これらの変動は、制限断片長多型(RFLP)と称される。RFLPは、ヒトおよび動物の遺伝的分析において広範に使用されている。
【0109】
多型の別のクラスは、単独のヌクレオチドの置換により作成される。このような一塩基多型(SNP)は稀に、制限エンドヌクレアーゼ部位の変化を生じる。従ってSNPは、制限断片長分析において稀に検出可能である。SNPは、最も一般的な遺伝的変異であり、かつ100〜300塩基毎に1回生じ、かついくつかのSNP突然変異は、実際に遺伝疾患を引き起こすのに十分な様式で、タンパク質-コードしている遺伝子の単独のヌクレオチドに影響を及ぼすことが分かっている。SNP疾患は、血友病、鎌状赤血球貧血、遺伝性血色素症、後発性アルツハイマー病などにより例証される。
【0110】
本発明の状況において、イリノテカンならびに他の化学療法剤および生体異物のグルクロン酸抱合が原因である、UGT1A1遺伝子産物の活性および/またはレベルに影響を及ぼす多型性の突然変異は、一連のスクリーニング法により決定されるであろう。スクリーニング法のひとつのセットは、インビトロまたはインビボアッセイにおいてUGT1A1遺伝子産物の誘導性、活性および/またはレベルに影響を及ぼすSNPの同定を目的としている。次にスクリーニング法の別のセットは、先に同定されたSNPの発生について個人をスクリーニングするために実行されるであろう。これを行うために、試料(血液または他の体液または組織試料など)が、遺伝子型分析のために患者から採取される。SNPの存在または非存在は、スクリーニングされた個人の、UGT1A1遺伝子産物により代謝されるイリノテカンおよび他の化学療法剤を代謝する能力を決定するであろう。本発明により提供された方法に従い、これらの結果を用い、薬物の副作用を軽減するために、個人に投与されるイリノテカンまたは他の物質の投与量を調節および/または変更するであろう。
【0111】
SNPは、欠失、点突然変異および挿入の結果であることができ、ならびにいかなる場合であっても、一般には単塩基の変更がSNPを生じる。より大きい頻度のSNPは、これらが他の多型のクラスよりも、より容易に同定されることを意味する。それらの分布のより大きい均一性は、SNPの同定を、特に関心のある形質に「より近い」ものとする。これらふたつの属性を組合せた作用は、SNPを極めて変動性とする。例えば、特定の形質(例えば、イリノテカンを効率的に代謝することの不能)は、特定の遺伝子座での突然変異を反映しており、従って特定の遺伝子座に連結されたいずれかの多型を用い、個人がその形質を発揮する確率を予測することができる。
【0112】
多型をスクリーニングするためにいくつかの方法が開発されており、かついくつかの例を以下に列記する。KwokおよびChen(2003)ならびにKwok(2001)の参考文献は、これらの方法の一部の概説を提供している;これらの参考文献は両方とも本明細書に参照として組入れられている。
【0113】
化学療法剤のグルクロン酸抱合に関係しているSNPは、これらの方法のいずれかまたはそれらの適当は変法の使用により特徴付けることができる。このような方法は、部位の直接または間接シークエンシング、その部位の各対立遺伝子が制限部位を作成または破壊するような制限酵素の使用、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションプローブの使用、多型の異なる対立遺伝子によりコードされたタンパク質に特異的である抗体の使用、またはいずれか他の生化学的解釈を含む。
【0114】
i) DNAシークエンシング
多型の特徴決定において使用される最も一般的な方法は、多型の側方に位置しかつこれを含む遺伝子座の直接的DNAシークエンシングである。このような分析は、「サンガー法」としても知られている「ジデオキシ-媒介型連鎖終結法」(Sanger, F., et al., 1975)または「マクサム-ギルバート法」としても知られている「化学分解法」(Maxam, A. M., et al., 1977)のいずれかを用い、実現することができる。ポリメラーゼ連鎖反応などのゲノム配列特異的増幅技術と組合せたシークエンシングを利用し、望ましい遺伝子の回収を促進することができ(Mullis, K. et al., 1986;欧州特許出願第50,424号;欧州特許出願第84,796号、欧州特許出願第258,017号、欧州特許出願第237,362号;欧州特許出願第201,184号;米国特許第4,683,202号;第4,582,788号;および、第4,683,194号)、これらは全て本明細書に参照として組入れられている。
【0115】
ii) エキソヌクレアーゼ抵抗性
多型部位に存在するヌクレオチドの同一性を決定するために使用することができる他の方法は、特定されたエキソヌクレアーゼ-抵抗性のヌクレオチド誘導体を利用する(米国特許第4,656,127号)。多型部位のすぐ3'-側の対立遺伝子配列に相補的であるプライマーが、研究対象のDNAにハイブリダイズされる。DNA上の多型部位が存在する特定のエキソヌクレオチド-抵抗性のヌクレオチド誘導体に相補的であるヌクレオチドを含む場合、結果的にその誘導体は、ハイブリダイズされたプライマーの末端にポリメラーゼにより組込まれるであろう。このような組込みは、エキソヌクレアーゼ切断に抵抗性のプライマーを作成し、これによりその検出を可能にする。エキソヌクレオチド-抵抗性の誘導体の独自性はわかっているので、そのDNAの多型部位に存在する特異的ヌクレオチドを決定することができる。
【0116】
iii) マイクロシークエンシング法
DNA内の多型部位をアッセイするためのいくつかの他のプライマー-指示したヌクレオチド組込み法が説明されている(Komher, J. S. et al., 1989;Sokolov, B. P., 1990;Syvanen 1990;Kuppuswamy et al., 1991;Prezant et al., 1992;Ugozzoll, L. et al., 1992;Nyren et al., 1993)。これらの方法は、多型部位で塩基間を識別するための、標識されたデオキシヌクレオチドの組込みに頼っている。シグナルは組込まれたデオキシヌクレオチド数に比例するので、同じヌクレオチドの試行時に生じる多型は、試行の長さに比例したシグナルを生じる(Syvanen et al, 1990)。
【0117】
iv) 溶液中の伸長
仏国特許第2,650,840号およびPCT出願W091/02087は、多型部位のヌクレオチドの同一性を決定するための溶液-ベースの方法について考察している。これらの方法に従い、多型部位のすぐ3'側の対立遺伝子配列に相補的であるプライマーが使用される。その部位のヌクレオチドの同一性は、多型部位のヌクレオチドに相補的である場合に、プライマーの末端に組込まれている標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を用い決定される。
【0118】
v) 遺伝的ビット(Genetic Bit)分析または固相伸長
PCT出願W092/15712は、標識されたターミネーターおよび多型部位の3'側の配列に相補的であるプライマーの混合物を使用する方法を開示している。組込まれる標識されたターミネーターは、評価される標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドに相補的であり、その結果同定される。ここでプライマーまたは標的分子は、固相に固定されている。
【0119】
vi) オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)
これは、異なる方法論を使用する別の固相法である(Landegren et al., 1988)。標的DNAの一本鎖の隣接配列にハイブリダイズすることが可能であるふたつのオリゴヌクレオチドが使用される。これらのオリゴヌクレオチドの一方はビオチン化されるが、他方は検出できるように標識される。標的分子中に正確に相補的な配列が認められる場合は、このオリゴヌクレオチドは、それらの末端が、ライゲーション基質に隣接しかつこれを作成するようにハイブリダイズするであろう。ライゲーションは、アビジンを使用することによる標識されたオリゴヌクレオチドの回収を可能にする。PCRと組合せた、この方法を基にした他の核酸検出アッセイも説明されている(Nickerson et al., 1990)。ここでPCRを使用し、標的DNAの指数関数的増幅を実行することができ、これは次にOLAを用い検出される。
【0120】
vii) リガーゼ/ポリメラーゼ-媒介型遺伝的ビット分析
米国特許第5,952,174号は、標的分子に隣接する配列にハイブリダイズすることが可能であるふたつのプライマーが同じく関与する方法を開示している。ハイブリダイズされた生成物は、その上に標的が固定された固形支持体上に形成される。ここでハイブリダイゼーションは、プライマーが単独のヌクレオチドのスペースにより互いに分離されるように生じる。ポリメラーゼ、リガーゼ、および少なくとも1種のデオキシヌクレオシド三リン酸を含有するヌクレオシド三リン酸混合物の存在下で、このハイブリダイズされた生成物をインキュベーションすることは、隣接するハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドの対のライゲーションを可能にする。リガーゼの添加は、シグナル生成、伸長およびライゲーションに必要なふたつの事象を生じる。これは、伸長またはライゲーションのいずれかを単独で使用する方法よりもより高い特異性およびより低い「ノイズ」を提供し、かつポリメラーゼ-ベースのアッセイとは異なり、この方法は、固相に結合されるべきシグナルのためにこれを第二のハイブリダイゼーションおよびライゲーション工程と組合せることにより、ポリメラーゼ工程の特異性を増強する。
【0121】
viii) SNPを検出する他の方法
SNP検出および同定のいくつかの他の具体的方法が、以下に示されており、かつこれらはそのようなものとしてまたは適当に変更して、本発明のUGT1A1遺伝子の多型を同定することと組合せて、使用することができる。いくつかの他の方法は、ワールドワイドウェブ上のncbi.nlm.nih.gov/SNPのウェブサイトで、NCBIのSNPウェブサイトにおいても示されており、これも本明細書に参照として組入れられている。
【0122】
特定の態様において、伸長されたハプロタイプは、集団においていずれか所定の遺伝子座において決定することができ、このことは正確にどのSNPが縮重しているかおよびどれが相関試験において必須であるかを同定することを可能にする。後者は、「ハプロタイプタグSNP(htSNP)」と称される、遺伝子のハプロタイプまたは連鎖不平衡の領域を捕えるマーカーである。Johnson et al.(2001)およびKe and Cardon(2003)の文献を参照し、これらは各々方法を例証するために、本明細書に参照として組入れられている。
【0123】
VDA-アッセイは、TaKaRa LA Taq試薬および他の標準の反応条件を使用する、ロングPCR方法による、ゲノムセグメントのPCR増幅を利用する。ロング増幅は、サイズが約2,000〜12,000bpのDNAを増幅することができる。生成物の変異検出アレイ(VDA)へのハイブリダイゼーションは、Affymetrix High Throughput Screening Centerで実施し、かつコンピュータソフトウェアにより解析することができる。
【0124】
チップアッセイと称される方法は、標準またはロングPCRプロトコールによる、ゲノムセグメントのPCR増幅を使用する。ハイブリダイゼーション産物は、本明細書に参照として組入れられているHalushkaらの論文(1999)のVDAにより分析される。SNPは一般に、ハイブリダイゼーションパターンのコンピュータ解析をベースに「確実な」または「可能性のある」として分析される。ヌクレオチドシークエンシングのような代替検出法と比較することにより、「ある種の」SNPは、その時点で100%確認され;および「可能性のある」SNPは、この方法によりその時点で73%確認される。
【0125】
他の方法は、単純に関連する制限酵素による消化後のPCR増幅に関連している。更に他のものは、公知のゲノム領域からの精製されたPCR産物のシークエンシングに関連している。
【0126】
更に別の方法において、個々のエキソンまたは巨大なエキソンの重複する断片は、PCR-増幅される。プライマーは、公表された配列またはデータベースの配列からデザインされ、かつゲノムDNAのPCR-増幅は、下記の条件を用いて行われる:200ng DNA鋳型、0.5μM各プライマー、各80μMのdCTP、dATP、dTTPおよびdGTP、5%ホルムアミド、1.5mM MgCl2、0.5UのTaqポリメラーゼおよび0.1容量のTaq緩衝液。サーマルサイクリングを行い、得られたPCR-産物を、例えば5%グリセロールを伴うまたは伴わない、15%尿素を含む5または10%ポリアクリルアミドゲルのような、様々な条件下で、PCR-一本鎖コンホメーション多型(PCR-SSCP)解析により解析する電気遊動は一晩行う。移動度シフトを示すPCR-産物は、ヌクレオチド変動を同定するために再増幅され、配列決定される。
【0127】
CGAP-GAI(DEMIGLACE)と称される方法において、配列およびアラインメントデータ(PHRAP.aceファイルより)、配列塩基(callの品質スコア(PHRED 品質ファイルより)、距離情報(PHYLIP dnadistおよびneighbourプログラムより)および塩基-callingデータ(PHRED'-d'スイッチより)が、メモリーに取り込まれる。配列は、並置され、不一致について得られるアッセンブリの各垂直チャンク('スライス')について検証される。このようなスライスはいずれも、候補SNP(DEMIGLACE)と考えられる。DEMIGLACEにより多くのフィルターを用い、おそらく真の多型を表していないスライスを排除する。これらは、下記のフィルターを含む:(i)近接する配列の品質スコアが40%またはそれ以上低下するようなSNP考察から所定のスライス中の配列を排除する;(ii)ピーク振幅が、そのヌクレオチド型に関する全ての塩基callの15パーセンタイルを下回るようなcallを排除する;(iii)SNP計算への参加からのコンセンサスとの大きい数の不一致を有する配列の領域を不適格と見なす;(iv)ピークが、callされたピークの面積の25%またはそれ以上であるような代替callを伴ういずれかの塩基callが考察から外される;(v)ただひとつの読み方向に生じる変動を排除する。PHRED品質スコアは、そのスライス内の各ヌクレオチドについてのエラー確率値に変換された。標準のBaysian法を用い、所定の位置でのヌクレオチドの異種性の証拠である事後確率を計算する。
【0128】
CU-RDF(RESEQ)と称される方法において、PCR増幅は、各SNPについて特異的プライマーを使用し、血液から単離されたDNAから行い、かつ未使用のプライマーおよび遊離のヌクレオチドを除去する典型的クリーンナッププロトコールの後、同じプライマーまたは入れ子式プライマーを使用する直接シークエンシングが行われる。
【0129】
DEBNICK(METHOD-B)と称される方法において、クラスター化されたEST配列の比較分析が行われ、蛍光-ベースのDNAシークエンシングにより確認された。関連した方法において、DEBNICK(METHOD-C)と称される、クラスター化されたEST配列のミスマッチ部位でのphred 品質>20、5'-FLANKおよびSNPの3'側の5塩基にわたり平均phred 品質>=20との比較分析は、SNPの5'および3'側の5塩基にミスマッチがなく、各対立遺伝子の少なくとも2の発生が行われおよびトレースを試験することにより確認した。
【0130】
ERO(RESEQ)により確定された方法において、コンピュータ上に発表されたSTSsについて新規プライマーセットをデザインし、かつ10種の異なるマウス系統のDNAを増幅するために使用する。次に各系統からの増幅産物を、ゲル精製し、33P-標識されたターミネーターによる標準のジデオキシサイクルシークエンシング技術を用い配列決定する。次に全てのddATPで終結した反応物を、シークエンシングゲルの隣接レーンに装荷し、引き続き全てのddGTP反応物などを装荷した。SNPは、ラジオグラフの視覚的走査により同定される。
【0131】
ERO(RESEQ-HT)として確定される別法において、新規プライマーセットを、コンピュータ上に発表されたマウスDNA配列についてデザインし、かつ10種の異なるマウス系統のDNAを増幅するために使用する。次に各系統からの増幅産物を、シークエンシングのためにエキソヌクレアーゼIおよびエビアルカリホスファターゼにより処理することにより調製する。シークエンシングをABI Prism Big Dye Terminator Ready反応キット(Perkin-Elmer)を用いて行い、配列試料を、3700 DNAアナライザー(96 Capillary Sequencer)上に流す。
【0132】
FGU-CBT(SCA2-SNP)は、SNPを含む領域が、プライマーSCA2-FP3およびSCA2-RP3を用い、PCR増幅される方法を確定する。ゲノムDNA約100ngを、最終濃度5mMトリス、25mM KCl、0.75mM MgCl2、0.05%ゼラチン、各20pmolのプライマーおよび0.5UのTaq DNAポリメラーゼを含有する反応容量50ml中で増幅する。試料は、変性、アニーリングおよび伸長し、ならびにPCR産物を、例えば、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いアガロースゲルから切出したバンドから精製し、PCRプライマーと共にABI Prism 377自動化されたDNAシークエンサー上で色素ターミネーター化学を用い配列決定する。
【0133】
JBLACK(SEQ/RESTRICT)として確定された方法において、ふたつの独立したPCR反応を、ゲノムDNAで行う。第一の反応の生成物を、シークエンシングにより分析し、これは独自のFspI制限部位を示している。突然変異は、FspIで消化することにより第二のPCR反応生成物において確認される。
【0134】
KWOK(1)と記される方法において、4名の無作為に選択された個人からの高品質のゲノム配列データを、色素-ターミネーター化学によるPCR産物の直接DNAシークエンシングにより比較することにより、SNPが同定される(Kwok et al., 1996参照)。KWOK(2)として確定される関連した方法において、細菌の人工染色体(BACs)またはP1-ベースの人工染色体(PACs)などの重複する巨大-挿入断片クローンからの高品質のゲノム配列データを比較することにより、SNPが同定される。次にこのSNPを含むSTSを開発し、かつ様々な集団内のSNPの存在を、プールしたDNAシークエンシングにより確認する(Taillon-Miller et al., 1998参照)。KWOK(3)と称される別の類似した方法において、重複する巨大-挿入断片クローンBACsまたはPACsからの高品質のゲノム配列データを比較することにより、SNPが同定される。この方法により認められたSNPは、ふたつのドナー染色体間のDNA配列変動を表しているが、一般的集団における対立遺伝子頻度は依然決定されない。方法KWOK(5)において、PCR産物の色素-ターミネーター化学による直接DNAシークエンシングにより、ホモ接合のDNA試料および1種または複数のプールしたDNA試料からの高品質のゲノム配列データを比較することにより、SNPが同定される。使用されるSTSsは、公に利用可能なデータベースにおいて認められた配列データから開発される。具体的にはこれらのSTSsは、全ての遺伝子座および80CEPH親からのDNA試料プールにおいてホモ接合であることが示されているcomplete hydatidiform mole(CHM)に対するPCRにより増幅される(Kwok et al., 1994参照)。
【0135】
別のこのような方法KWOK(OverlapSnpDetectionWithPolyBayes)において、SNPは、巨大な-挿入断片ヒトゲノムクローン配列の重複領域の自動化されたコンピュータ分析により発見された。データ捕集のために、大規模シークエンシングセンターから直接クローン配列を得る。塩基の品質配列はGenBankには存在せず/入手できないので、これは必要である。クローン配列およびコンシステンシーに関する付随する塩基品質情報が分析された生データの処理が関連している。関連した塩基品質配列を伴わない仕上げられた(「塩基完全性」、誤差率は10,000bpにおいて1未満)配列には、均一な塩基品質値40(10,000bpに1の誤差率)が与えられる。塩基品質値を伴わないドラフト配列は拒絶される。処理された配列は、ローカルデータベースに入力される。マスクされた公知のヒト反復配列を伴う各配列のバージョンも保存される。反復配列のマスクは、プログラム「MASKERAID」により実行される。重複検出:推定重複は、プログラム「WUBLAST」により検出される。偽重複検出結果、すなわち真の重複とは対照的に配列複製のために生じるクローン配列対の間の類似性を排除するために、いくつかのフィルタリング工程が続く。重複の総長、全体の類似性割合、配列数は、高塩基品質値「高-品質ミスマッチ」を伴うヌクレオチド間で異なる。この結果は更に、Washington University Genome Sequencing Centerでのゲノムクローンの制限断片マッピングの結果、重複に関する完成した報告書、およびNCBIでの配列コンティグ構築努力の結果と比較される。SNP検出:POLYBAYES'SNP検出ソフトウェアにより、クローン配列の重複対は、候補SNP部位について分析される。配列対の間の配列差異は、シークエンシング誤差とは対照的に真の配列変動を表す確率についてスコア化される。このプロセスは、両配列に関する塩基品質値の存在が必要である。高スコアの候補が抽出される。検索は、置換-型一塩基対変動に限定される。候補SNPの信頼スコアは、POLYBAYESソフトウェアによりコンピュータで算出される。
【0136】
KWOK(TaqManアッセイ)により確定された方法において、90名のランダムな個人の遺伝子型を決定するために、TaqManアッセイが使用される。KYUGEN(Q1)により確定された方法において、指示された集団のDNA試料がプールされ、PLACE-SSCPにより分析される。プールされた分析における各対立遺伝子のピーク高さは、ヘテロ接合性のものにより補正され、引き続き対立遺伝子頻度の計算に使用される。10%よりも高い対立遺伝子頻度は、この方法で信頼できるように定量される。対立遺伝子頻度=0(ゼロ)は、その対立遺伝子は個人間で認められたが、プールの試験においては対応するピークは認められなかったことを意味する。対立遺伝子頻度=0〜0.1は、少数の対立遺伝子がプールにおいて検出されるが、そのピークは信頼できるように定量するには余りにも小さいことを示している。
【0137】
更にKYUGEN(方法1)として確定された別法において、PCR産物は、蛍光色素により後-標識され、SSCP条件下での自動化されたキャピラリー電気泳動システム(PLACE-SSCP)により分析される。4名またはそれよりも多い個人のDNAが、一連の実験において、二つのプールされたDNA(日本人プールおよびCEPH親プール)と共にまたはこれを伴わずに分析される。対立遺伝子は、目視検査により同定される。異なる遺伝子型を伴う個人のDNAは、配列決定され、SNPが同定される。対立遺伝子頻度は、ヘテロ接合体のピーク高さを用いるシグナルバイアスの補正後に、プールされた試料においてピーク高さから概算される。PCRのために、プライマーが、両鎖の後-標識のためにそれらの末端に5'-ATTまたは5'-GTTを有するようにタグ付けされる。DNA試料(10ng/ul)が、緩衝液(10mMトリス-HCl、pH8.3または9.3、50mM KCl、2.0mM MgCl2)、各0.25μMのプライマー、各200μMのdNTP、および0.025ユニット/μlの抗-Taq抗体と予備混合したTaq DNAポリメラーゼを含有する反応混合液中で増幅される。PCR産物のふたつの鎖は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片の交換反応により、R110およびR6Gで修飾されたヌクレオチドで、示差的に標識される。この反応は、EDTAの添加により停止され、組込まれていないヌクレオチドは、ウシ腸アルカリホスファターゼの添加により脱リン酸化される。SSCPについて、蛍光標識されたPCR産物のアリコートおよびTAMRA-標識された内部マーカーが、脱イオン化されたホルムアミドに添加され、変性される。電気泳動を、キャピラリー内で、ABI Prism 310 Genetic Analyzerを用い実施する。Genescanソフトウェア(P-E Biosystems)を用い、データを収集し、かつデータ処理する。SSCPに関して異なる遺伝子型を示した個人を含む個人(2〜11名)のDNAは、ABI Prism 310シークエンサー上でビッグ-色素ターミネーター化学を用い、直接シークエンシングが施される。ABI Prism 310から得られた複数の配列追跡ファイルは処理され、Phred/Phrapによりアラインメントされ、かつConsed viewerを用い目視される。SNPは、PolyPhredソフトウェアおよび目視検査により同定される。
【0138】
更にKYUGEN(方法2)として確定される別法において、異なる遺伝子型を有する個人が、変性HPLC(DHPLC)またはPLACE-SSCPにより検索され(Inazuka et al., 1997)、それらの配列が決定され、SNPが同定される。両鎖の後-標識のためにその両端に5'-ATTまたは5'-GTTでタグを付けたプライマーによりPCRが行われる。DHPLC分析は、WAVE DNA断片分析システム(Transgenomic)を用いて行われる。PCR産物は、DNASepカラムに注入され、WAVEMakerプログラム(Transgenomic)を用いて決定された条件下で分離される。PCR産物の二本鎖は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片の交換反応により、R110およびR6Gで修飾されたヌクレオチドで、示差的に標識される。この反応は、EDTAの添加により停止され、組込まれていないヌクレオチドは、ウシ腸アルカリホスファターゼの添加により脱リン酸化される。電気泳動後のSSCPは、ABI Prism 310 Genetic Analyzer、Genescanソフトウェア(P-E Biosystems)を用い、キャピラリーで実施される。DHPLCまたはSSCPに関して異なる遺伝子型を示した個人を含む個人のDNAは、ABI Prism 310シークエンサー上でビッグ-色素ターミネーター化学を用い、直接シークエンシングが施される。ABI Prism 310から得られた複数の配列追跡ファイルは処理され、Phred/Phrapによりアラインメントされ、かつConsed viewerを用い目視される。SNPは、PolyPhredソフトウェアおよび目視検査により同定される。UnigeneのEST配列の追跡クロマトグラムデータは、PHREDにより処理される。可能性のあるSNPを同定するために、各UnigeneクラスターについてプログラムPHRAP、BROおよびPOAによりもたらされた複数の配列アラインメントから一塩基ミスマッチが報告される。BROは、可能性のある誤報告されたEST配向を補正する一方、POAは、偽SNPを生じ得る遺伝子混合/キメラの非-線形アラインメント構造指標を確定しかつ分析した。Bayesian確定を用い、シークエンシングエラー、ミスアラインメントまたは曖昧さ、ミスクラスター化またはキメラEST配列、生クロマトグラムの高さ、鋭敏さ、重複およびスペーシングなどのデータの評価;シークエンシング誤差率;状況(context)-感度;cDNAライブラリー起源などに対し、真の多型である証拠に重みをつける。
【0139】
MARSHFIELD(方法-B)として確定された方法において、推定される挿入/欠失多型を含んだ重複するヒトDNA配列は、公開されたデータベースの検索により同定される。各多型部位の側方に位置するPCRプライマーが、コンセンサス配列から選択される。プライマーを使用し、個人またはプールされたヒトゲノムのDNAが増幅される。得られるPCR産物は、変性ポリアクリルアミドゲル上で分解され、PhosphorImagerを用い、DNAプールから対立遺伝子頻度を概算する。
【0140】
IV. 薬学的組成物
水性組成物は、イリノテカンの有効量、ならびに/またはII相の抱合酵素グルクロニル転移酵素の活性を増加する化合物または胆汁輸送を減少する化合物により代表されるような、抱合酵素活性を増大する化合物(第二の物質)の有効量を含むことができる。このような組成物は一般に、薬学的に許容できる担体または水性媒体中に溶解または分散されるであろう。
【0141】
語句「薬学的にまたは薬理学的に許容できる」とは、動物、またはヒトへ適宜投与される場合に、有害反応、アレルギー反応または他の不利な反応を生じない分子全体または組成物を意味する。本明細書において使用される「薬学的に許容できる担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などのいずれかおよび全てを含む。薬学的活性物質のためにこのような媒体および物質の使用は、当該技術分野において周知である。通常の媒体または物質のいずれかが活性物質と適合性がない場合を除き、治療的組成物におけるその使用が企図されている。他の抗-癌剤のような補助的活性成分も、この組成物へ混入することができる。
【0142】
静脈内または筋肉内注射のような非経口投与のために製剤された化合物に加え、その他の薬学的に許容できる形状は、例えば経口投与用の錠剤または他の固形物;徐放性(time release)カプセル剤;ならびに、クリーム剤、ローション剤、含嗽剤、吸入剤などの現在使用されるいずれか他の剤形を含む。
【0143】
A. 非経口投与
この活性化合物は、非経口投与のために製剤されることが多く、例えば静脈内、筋肉内、皮下、更には腹腔内経路による注射のために製剤される。活性成分としてイリノテカンおよび第二の物質を含有する水性組成物の調製は、本発明の開示を考慮し、当業者には公知であろう。典型的にはこのような組成物は、液体または懸濁液のいずれかとして、注射可能であるように調製することができ;更に注射前に液体の添加時に溶液または懸濁液を調製するために使用する固形物としても調製することができ;ならびに、これらの調製物は乳化することもできる。
【0144】
遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤が適当に混合された水中で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中においても、分散剤を調製することができる。貯蔵および使用に関する通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存剤を含む。
【0145】
注射による使用に適した薬学的形状は、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性ポリエチレングリコールを含む製剤;ならびに、滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌散剤を含む。全ての場合において、この形は、滅菌されなければならず、かつ容易に注射器内に存在する程度に液体でなければならない。これは、製造および貯蔵の条件下で安定していなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の混入作用に対し保存されなければならない。
【0146】
これらの活性化合物は、天然の形または塩の形で、組成物へ製剤されてもよい。薬学的に許容できる塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により形成される)、および例えば塩酸もしくはホスホン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸により形成されるものを含む。遊離のカルボキシル基により形成された塩も、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来することができる。
【0147】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適当な混合物、ならびに植物油を含む、溶媒または分散媒であることもできる。適当な流動性が、例えばレシチンのようなコーティングを使用することにより、分散剤の場合に必要な粒径を維持することにより、および界面活性剤を使用することにより維持され得る。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサルなどの、様々な抗細菌剤および抗真菌剤によりもたらされる。多くの場合に、例えば糖または塩化ナトリウムなどの等張剤を含有することは好ましいであろう。注射可能な組成物の延長された吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延剤の組成物中の使用によりもたらすことができる。
【0148】
無菌注射液は、活性化合物の必要量を適当な溶媒中へ、必要ならば、先に列記された様々な他の成分と共に混入し、引き続き濾過滅菌することにより調製される。一般に分散剤は、様々な滅菌した活性成分を、基本的分散媒および先に列記されたものからの必要な他の成分を含有する無菌のビヒクルに混入することにより調製される。無菌注射液の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製法は、それらの先に濾過滅菌された溶液から、活性成分に加え追加の望ましい成分の散剤を生じる、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0149】
製剤時に、溶液は、その剤形に適合した方式でかつ治療的に有効である量で投与される。これらの製剤は、先に説明された注射液剤の型、薬物放出カプセルと共に、および利用可能である同様のものなどの、様々な剤形において、容易に投与することができる。
【0150】
水溶液中の非経口投与に関して、例えばこの溶液は、必要ならば適宜緩衝され、および液体希釈剤は十分な生理食塩水またはグルコースにより最初に等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる無菌水性媒体は、本発明の開示を考慮し当業者に公知であろう。例えば1回量を、等張NaCl溶液1mLに溶解し、かつ皮下注射用液体1000mLに添加されるかまたは注入により提唱された位置に注射されるであろう(例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」、15版、1035-1038ページおよび1570-1580ページ参照)。若干の用量変動は、治療される対象の状態に応じて必ず行われるであろう。投与責任者は、いずれにしても個人対象についての適量の決定するであろう。
【0151】
B. 経口投与
ある態様において、活性化合物は、経口的に投与することができる。これは、消化酵素によるタンパク質分解に一般に抵抗性がある、または抵抗性になる物質について企図されている。このような化合物は、製造業者からの錠剤の形で利用可能である、そのような化合物、または薬物、ならびにそれらの誘導体およびアナログを全て含むことが企図されている。
【0152】
経口投与に関して、この活性化合物は、例えば不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に、投与することができるか、またはこれらは硬シェルもしくは軟シェルのゼラチンカプセル中に被包するか、もしくは錠剤に圧縮するか、または食事用食品に直接混入することができる。経口の治療用投与について、この活性化合物は、賦形剤と共に混入することができ、かつ経口摂取可能の錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形で使用することができる。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有しなければならない。この組成物および調製物の割合は、当然変動することができ、通常その単位質量の約2〜約60%の間であることができる。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適量が得られるようなものである。
【0153】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、以下も含有することができる:結合剤、例えばトラガカントガム、アカシアゴム、コーンスターチ、またはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;および、甘味剤、例えばショ糖、乳糖またはサッカリンを添加することができ;または、矯味矯臭剤、例えばペパーミント、ウインターグリーン油、またはチェリー香料。単位剤形がカプセル剤である場合、これは、前述の種類の物質に加え、液体担体を含んでも良い。コーティングとして、、もしくは単位剤形の物理的形状を修飾するために、様々な他の物質が存在してもよい。例えば錠剤、丸剤またはカプセル剤は、シェラック、糖または両方によりコートされてよい。エリキシルのシロップ剤は、活性化合物、甘味剤としてショ糖、保存剤としてメチルまたはプロピルパラベン、チェリーもしくはオレンジ香料などの色素および矯味矯臭剤を含んでよい。当然、単位剤形を調製するために使用される物質は、薬学的に純粋であり、かつ使用される量で実質的に無毒でなければならない。加えて活性化合物は、持続放出される調製物および製剤中に混入されてもよい。
【0154】
製剤時に、これらの化合物は、用量製剤に適した様式でかつ治療的に有効であるような量で投与されるであろう。これらの製剤は、具体例において以下に説明されるような、様々な剤形で容易に投与される。
【0155】
C. リポソーム
特定の態様において、リポソーム製剤も企図されている。薬学的物質のリポソーム封入は、通常の薬物送達システムと比較して、それらの半減期を延長する。かなり多量が保護的に被包されるので、これは、細胞に送達される物質の用量-強度の機会をもたらす。このことは、このような細胞へのこのようなリポソームの細胞標的化を特異的に増強する機構が存在するならば、子宮頚癌の化学療法において特に魅力的である。
【0156】
「リポソーム」は、取り囲まれた脂質二重層の作成により形成される、様々な一重膜および多重膜脂質ビヒクルを包含する一般的用語である。本発明のリポソームの調製にはリン脂質が使用され、かつ正味の正電荷、または正味の負電荷を保持するか、中性であることができる。リン酸ジセチルを使用し、リポソームに負電荷を付与することができ、かつステアリルアミンを使用し、リポソームに正電荷を付与することができる。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒体により特徴決定される。多重膜リポソームは、水性媒体により分離された複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰な水溶液中に懸濁された場合に、自然発生的に形成する。この脂質成分は、閉鎖構造の形成前に自己-再構成を受け、脂質二重層の間に水および溶解された溶質を捕獲する(Ghosh and Bachhawat, 1991)。リポフェクタミン-核酸複合体のような、カチオン性脂質-核酸複合体も企図されている。
【0157】
V. キット
本明細書に説明されたあらゆる組成物は、キットを構成してもよい。限定的でない例において、一方または両方のUGT1A1遺伝子の遺伝子型を決定する試薬がキットに含まれている。このキットは更に、UGT1A1遺伝子の特定の核酸配列を増幅および/または検出することができる個別の核酸を含んでもよい。これは、1種または複数の緩衝液、例えばDNA単離用緩衝液、増幅用緩衝液またはハイブリダイゼーション用緩衝液なども含んでよい。このキットは、DNA鋳型を調製しおよび試料からDNAを単離するための化合物および試薬も含んでよい。このキットは、様々な標識用の試薬および化合物も含むことができる。
【0158】
このキットの成分は、水性媒体中または凍結乾燥された形のいずれかで包装されてよい。キットの容器手段は、一般にその中に成分が配置され、および好ましくは適宜アリコート化された、少なくとも1個のバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含むであろう。1種よりも多い成分がキットに存在する場合(標識試薬および標識物は一緒に包装されてよい)、このキットは、一般に追加の成分が個別に配置されているような第二、第三または他の追加の容器も含むであろう。しかし成分の様々な組合せを、ひとつのバイアル内に含んでもよい。本発明のキットは、典型的には市販のために密封された、核酸を含有する手段、およびいずれかの他の試薬の容器も含むであろう。このような容器は、望ましいバイアルが保持されるように注型成形またはブロー成形されたプラスチック容器を含んでもよい。
【0159】
キットの成分が1種および/またはより多くの液体中に提供される場合、この液体は水溶液であり、無菌水溶液が特に好ましい。しかしキット成分は、乾燥散剤として提供することができる。試薬および/または成分が乾燥散剤として提供される場合、散剤は、適当な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒は、別の容器手段中に提供されることも想起されている。
【0160】
キットは、キットの成分の使用に加え、キットに含まれない他の試薬の使用の説明書も含むであろう。説明書は、実行することができる変更も含んでよい。
【0161】
このような試薬は、本発明のキットの態様であることも企図されている。しかしこのようなキットは、先に同定された特定の商品に限定されず、UGT1A1遺伝子の多型またはUGT1A1ポリペプチドの活性レベルの検出において直接または間接に使用される試薬を含むことができる。
【0162】
実施例
下記実施例は、本発明の好ましい態様を明らかにするために含まれる。当業者により、代表的技術に従う実施例において明らかにされた技術は、本発明の実践においてよく機能するように本発明者らにより発見され、従ってその実践のための好ましい様式を構成すると考えられることは理解されなければならない。しかし当業者は、本発明の開示を考慮し、開示された具体的態様において多くの変更を行うことができ、かつ本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果を依然得ることができることを理解しなければならない。
【0163】
実施例1:材料および方法
患者の選択
イリノテカンに反応することが分かっている固形腫瘍もしくはリンパ腫の既応が確認された患者または恩恵が証明された療法が存在しない患者が、本試験の参加に適合であった。他の適合性の判断基準は、放射線造影または身体試験により測定可能な疾患;年齢が少なくとも18歳;カルノフスキー行動状態で少なくとも70%(歩行およびセルフケア能);および、絶対好中球数(ANC)≧1500μl-1、血小板数≧100,000μl-1、血清クレアチニンレベル≦1.5mg/dlまたはクレアチニンクリアランス≧60ml/分、ASTおよびALTレベル<正常上限の5倍、ならびに正常限界内の抱合ビリルビンとして定義される、適当な臓器機能を含んだ。患者は、放射線療法を含む、先行する抗癌療法から、少なくとも4週間(先の治療がニトロソ尿素またはマイトマイシンCを含む場合は、6週間)は離脱し、かつコロニー刺激因子から少なくとも2週間離脱しなければならない。治療が必要な炎症性腸疾患、慢性下痢症候群、麻痺性イレウス、または臓器もしくは幹細胞移植の既応のある患者は、本試験から除外した。UGT1A1酵素の基質であるまたはUGT1A1活性のインデューサーもしくはインヒビターであるような医薬品の同時使用は、許可しなかった。妊娠中および授乳中の女性も参加から除外し、妊娠の可能性のある女性には、性交時には有効な避妊法を用いることを求めた。
【0164】
治療プロトコール
イリノテカンは、National Cancer Institute(NCI)から静脈内投与液剤として、2mlまたは5mlバイアルのいずれか中に濃度20mg/mlで供給された。投与されるイリノテカンの量は、バイアルから無菌操作により取り出され、500mlの0.9%生理食塩水または5%デキストロース注射液(USP)に添加した。静脈内オンダンセトロン20mgによる前処置の30分後、イリノテカン350mg/m2を、3週間に1回の90分間かけた静脈内注入により投与した-標準の投与量およびスケジュール。病歴、身体的試験、示差的全血球算定(CBC)、血清化学プロファイル(電解質、血中尿素窒素、クレアチニン、ブトウ糖、アルブミン、アルカリホスファターゼ、GGTP、AST、ALT、総および抱合ビリルビン、尿酸、および乳酸デヒドロゲナーゼ)、ならびに凝集プロファイル(プロトロンビン時間および部分トロンボプラスチン時間)を、初回治療前に行った。その後、病歴、身体試験、および毒性評価を、治療に関連した毒性がより頻繁な経過観察を必要としない限りは、各サイクルの1日目に行った。CBCおよび血清化学プロファイルは、治療を通じ毎週得たが、CBCは、3または4度の好中球減少症または血小板減少症の出現時には、1週間に3回得た。毒性評価は、NCI一般毒性基準、ver.2.0(ウェブサイト:ctep.cancer.gov)に従い行った。適当な放射線像による客観的腫瘍評価は、治療開始前および各2サイクル後に行った。
【0165】
毒性管理および投与量変更
イリノテカン投与の24時間以内に下痢、腹痛、または発汗を経験した患者については、静脈内アトロピン0.25mg〜1mgを考えた。イリノテカン投与後24時間よりも後に生じた下痢として定義される遅発型下痢は、発症時にロペラミド4mgで直ちに治療し、その後少なくとも12時間患者の下痢が止まるまで2時間毎に2mgで治療した。ロペラミド治療に失敗した患者については、ジフェノキシレート、オクレオチドおよびオピウムチンキ剤を、必要に応じ逐次添加した。患者は、積極的に経口で水分を摂るように指示され、必要ならば静脈内電解質および液体交換のために入院した。新規の治療コースは、ANCが少なくとも1500μl-1を回復するまで、血小板数が少なくとも100,000μl-1を回復するまで、ならびに治療に関連した下痢が完全に寛解するまでは開始しなかった。3度または4度のある種の毒性を示した患者は、引き続きのサイクルについて50mg/m2まで用量減量した。
【0166】
試料採取
最初のイリノテカン注入前に、遺伝子タイピング用の静脈血(4.5ml)を、EDTAを含有する紫色の蓋のVacutainer(登録商標)チューブ(Becton, Dickinson, and Company, フランクリンレイク, NJ)に採取し、-80℃で5日間を超えずに貯蔵し、その後分析した。薬物動態分析用の静脈血は、サイクル1の1日目に薬物動態分析のために採取した。試料7mlを、緑色の蓋のヘパリンナトリウムを含むVacutainer(登録商標)チューブへ、注入前;注入時30、60、および90分;ならびに、注入後10、20、30、45および60分、および1.5、2、4、6、12、および24時間に採取した。試料を遠心し(2500rpm、20分、4℃)、血漿を直ぐに分離し、二つのアリコートとして貯蔵用チューブに移し、分析まで-80℃で貯蔵した。
【0167】
UGT1A1遺伝子タイピングアッセイ
本試験においてタイピングした変異は、表1に列記している。UGT1A1(TA)nTAA多型は、PCRにより遺伝子タイピングし、先に説明したように生成物をサイズ決定した(Te et al., 2000)。6個のTA反復配列を伴う対立遺伝子は98bp断片を生じる一方で、7個のTA反復配列を伴う対立遺伝子は100bp断片を生じた。5個のTAおよび8個のTA反復配列を伴う対立遺伝子は、各々、96bpおよび102bp断片を生じた。5、6、7および8個のTA反復配列を伴う対立遺伝子は(TA)nとして報告され、および遺伝子型は、各対立遺伝子中のTA反復配列の数を基に割当てられ、すなわち6/6、6/7、7/7、6/8などである。
【0168】
5'上流領域(-3279G>Tおよび-3156G>A)およびエキソン1[211G>A(G71R)および686C>A(P229Q)]の変異は、一塩基伸長(SBE)により遺伝子タイピングし、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)システムにおいて分離した(Devaney et al., 2001)。-3279G>Tおよび-3156G>A変異の遺伝子タイピングは、両方の変異を含むUGT1A1 5'上流領域の333bp断片のPCR増幅により行った。使用したPCRプライマーは以下である:

。PCRは、製造業者により提供された緩衝液中に各125nMのプライマー、2.5mM MgCl2、各50μMのdNTPおよび0.375UのAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含有する容量15μlで行った。PCRサイクリング条件は、9600サーマルサイクラー(Applied Biosystems)において、95℃で15秒、58℃で15秒および72℃で30秒を40サイクルであった。PCR増幅産物は、SBE反応前に、エビアルカリホスファターゼおよびエキソヌクレアーゼIを用い、37℃で45分間インキュベーションすることにより、精製した。SBE反応は、両変異の遺伝子タイピングのために、1μM伸長プライマー

、各250μMのddNTPおよび1.25Uのthermosequenase(Amersham Pharmacia Biotech)を含有する容量10μl中において、二つ組で行った。反応は、96℃で30秒、55℃で30秒および60℃で30秒を60サイクル、サイクリングした。SBE生成物の分離は、試料の変性後、WAVE 3500HT DHPLCシステム(Transgenomic Inc)において70℃で行った。使用した流量は1.5ml/分であり、各試料の試行時間は2.5分であった。SBE生成物の溶離に使用した勾配は、伸長された生成物の長さを基にソフトウェアにより作成し、2分間にわたり24%から34%までの緩衝液Bであるように調節した(緩衝液Bは25%アセトニトリルを含有する)。伸長された生成物は、4種の塩基の疎水性の差異に応じ、C<G<T<Aの順番で溶離した。
【0169】
211G>Aおよび686C>Aエキソン1変異の遺伝子タイピングは、両変異を含む774bp断片のPCR増幅により行った。使用したPCRプライマーは以下である:

。PCRは、製造業者により提供された緩衝液中に各125nMのプライマー、2.5mM MgCl2、各100μMのdNTPおよび0.375UのAmpliTaq Goldポリメラーゼ(Applied Biosystems)を含有する容量15μlにおいて行った。PCRサイクリング条件は、9600サーマルサイクラー(Applied Biosystems)において、95℃で15秒、58℃で15秒および72℃で45秒を40サイクルであった。PCR精製を、先に説明したように行い、SBE反応は、先に説明した条件を用い、各伸長プライマー

1μMを含有する容量10μlにおいて行った。各試料のDHPLCシステムでの分離に関して、流量は1.5ml/分および試行時間は3分を使用した。SBE生成物の溶離に使用した勾配は、伸長された生成物の長さを基にソフトウェアにより作成し、2.5分間にわたり25.6%から38.1%までの緩衝液Bであるように調節した。
【0170】
薬物動態分析
イリノテカンおよびその代謝産物の血漿濃度を、先に発表されたように決定した(Iyer et al., 2001)。イリノテカン、SN-38、およびSN-38Gの薬物動態パラメータは、WinNonlin 2.0(Pharsight Corporation, マウンテンビュー, CA)による標準ノンコンパートメント法を用いて計算した。時間ゼロからイリノテカンおよび代謝産物の最後の測定濃度までの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)を、線形台形法により決定した。グルクロン酸抱合率は、SN-38G AUCのSN-38 AUCに対する割合として表した。
【0171】
統計解析
本試験は当初、UGT1A1プロモーターにおける遺伝的変異と3〜4度の下痢の間の関係をプロスペクティブに調べるためにデザインされた。3週間毎350mg/m2のスケジュールを使用する臨床試験の結果は、下痢の頻度が20〜35%であることを示唆した(参考文献)。先に発表されたデータを基に、単-遺伝子メンデルモデルは、患者の16%は7/7遺伝子型を有し、48%は6/7遺伝子型を有し、および36%は6/6遺伝子型を有することを暗示している。試料サイズ60は、7/7患者60%、6/7患者30%、および6/6患者10%により定義された3〜4度の下痢を経験する各遺伝子型における患者の割合の線形トレンドを検出するのに、α=0.05で検定力0.8を有した。
【0172】
しかし、3〜4度の下痢が予想頻度よりも低いために(下記参照)、解析者は、代わりに4度の好中球減少症(ANC<500μl-1)の頻度に焦点を当てた。ノンパラメトリックなトレンド検定を用い、いかに遺伝子型が、薬物動態パラメータ、治療前ビリルビンレベルおよびANC ナディアに関係しているかを調べた。遺伝子型と4度の好中球減少症の間の関係は、フィッシャーの正確検定および相対リスクの計算により評価した。単変量回帰解析を行い、ANCナディアの可能性のある予測値を確定した。これらは、残差の歪度を低下するために、ANCについて対数スケールで行った。ln(ANCナディア)を予測することができる治療前測定値を確定するために、治療前変量も共分散分析(ANCOVA)モデルにより共に考慮した。治療前-および治療後変数を同時に考慮する異なるANCOVAモデルを用い、UGT1A1状態の変動がANCナディアに影響を及ぼしうる機構を調べた。
【0173】
実施例2:イリノテカン毒性におけるUGT1A1の-3156G>Aの役割
患者の特徴
患者66名が本試験に登録した(表2)。患者1名については、DNA抽出用の血液を誤って採取せず、遺伝子型情報は65名の患者について入手した。3名の患者(1名6/6、1名6/7、1名7/8)は、予定された血液試験および/または医師の予約を誤ったので、63名の患者を毒性について評価した。6名は腫瘍反応の放射線評価前に、本試験から離脱したので、60名の患者が腫瘍反応について評価可能であった。患者は全員、先行する化学療法投薬様式を受けていた。35名の患者は、加えて放射線療法を以前に受けていた。
【0174】
対立遺伝子および遺伝子型頻度
TAインデル対立遺伝子頻度は以下であった:TA6=0.68、TA7=0.29、TA8=0.02、TA5=0.01。TA5およびTA8対立遺伝子は、専ら黒人患者において生じた(1名5/6、2名の患者6/8、および1名の患者7/8遺伝子型)。-3279Tおよび-3156A対立遺伝子は、各々、頻度0.55および0.26であった。
【0175】
表3は、それらの連鎖不平衡に関する本発明者らの先の発表を基に(Innocenti et al., 2002)、-3279、-3156、およびTAインデルを含むプロモーターハプロタイプの頻度を示している。ハプロタイプ対の頻度は、表4に示した。エキソン1変異(211G>Aおよび686C>A)は、この患者集団においては検出されなかった。
【0176】
毒性有病率、相対リスク、遺伝的試験
下痢および好中球減少症の毒性は、治療のサイクル1において認められた事象である。4度の好中球減少症の頻度は9.5%であった。4度の好中球減少症は、6/7遺伝子型(3/24、12. 5%)および6/6遺伝子型(0/30、0%)の患者と比べ、遺伝子型7/7(3/6、50%)の患者においてはるかにより一般的であった(p=0.001、フィッシャーの正確検定)。ノンパラメトリックなトレンド解析は、TAインデル多型はln(ANCナディア)に有意に相関していることを明らかにした(7/7<6/7<6/6、z=-2.35、p=0.02)(図1)。
【0177】
-3156G>A変異は、TA7個人のふたつの異なるハプロタイプ間で異なるので、4度の好中球減少症の相対リスクは、-3156 AA遺伝子型(AGおよびGGを一緒にしたものに対して)および7/7遺伝子型(5/6、6/6、6/7および6/8を一緒にしたものに対して)解析した。7/7遺伝子型の患者(9.3、95%CI 1.7-40.7、n=63)と比べ、より高い相対リスクが、-3156 AA 遺伝子型の患者(14.0、95%CI 2.1-36.7)において認められた。更にイリノテカンを受け取った患者における遺伝的試験の予測力を、TAインデルおよび-3156変異の両方について評価した(表5)。4度の好中球減少症に関する7/7または- 3156 AA遺伝子型のいずれかの予測力を評価した。加えて6/6または-3156 GG遺伝子型のいずれかの予測力を、4度の好中球減少症の非存在(すなわち、0-3度)との関係において評価した。TA8対立遺伝子を有する患者は遺伝的試験の結果について交絡因子であるかどうかを評価するために、この比較において、2名の6/8患者が、6/6または6/7遺伝子型のいずれかとみなされた。
【0178】
本試験は当初UGT1A1遺伝子型と下痢の重症度の関係を試験するために着想されたが、本発明者らの患者で3度の下痢の頻度はわずかに5%(n=3)であり、4度下痢の症例はなかった。3度の下痢の患者3名は、6/6ではなかった(2名は6/7および1名は7/7遺伝子型)。TA8対立遺伝子の患者(2名は6/8および1名は7/8)における下痢事象を考慮し、1名の6/8患者において、1事象のみが報告された。重度の下痢は低頻度であるので、正式な統計解析は不可能であった。
【0179】
総ビリルビン:TAインデル遺伝子型および毒性との相関関係
治療前総ビリルビンレベルは、全ての患者から得た(0.5±0.22mg/dl、平均±SD、n=66)。図5に示したように、総ビリルビンレベルは、TAインデル多型と有意に相関していた(ノンパラメトリックなトレンド解析、7/7>6/7>6/6、z=2.88、p<0.01)。総ビリルビンレベルは、7/7患者において、6/6および6/7患者を一緒にしたものと比べ有意に高かった(各々、0.80±0.29および0.48±0.19mg/dl、p=0.0003)。6/7遺伝子型群における、各TAインデル遺伝子型群の-3156遺伝子型の分布を考慮し、GG遺伝子型の患者3名は、低いビリルビンレベル0.3〜0.4mg/dlを有した。同様に6/8およびGG遺伝子型の患者2名は、低レベルのビリルビン0.2〜0.3mg/dlを有した。7/7群のGA遺伝子型の患者1名は、ビリルビンレベル0.6mg/dlを有し、これはこの遺伝子型群では低い範囲であった。TA8対立遺伝子はグルクロン酸抱合の低下を生じると予測されるので、7/8患者は著しく上昇したレベルのビリルビンを有さなかった。
【0180】
加えて-3156およびTAインデル変異は、重回帰分析により総ビリルビンと相関していた。TA8対立遺伝子がTA6(r2=0.23、p=0.002)またはTA7(r2=0.20、p=0.0009)のいずれかと見なされる場合に、AA遺伝子型は、7/7遺伝子型と比べわずかに良い相関関係を示した(r2=0.28、p<0.0001)。他の一般的変異-3279G>Tは、総ビリルビンと有意な関係を有さなかった(データは示さず)。
【0181】
治療前ビリルビンは好中球減少症と相関するかどうかも分析した。有意に高いビリルビンレベルが、4度の好中球減少症の患者において(0.83±0.21mg/dl)、4度の好中球減少症を伴わない患者(0.47±0.20mg/dl)と比べ認められた(p=0.0001)(図3)。4度の好中球減少症の症例は、ビリルビンレベルが0.6mg/dl未満の患者においては報告されなかった。7名の患者の中の1名の総ビリルビンが0.7mg/dlよりも高く、そのうち4名が4度の好中球減少症を有した。
【0182】
TAインデル遺伝子型とPKパラメータ間の相関関係
表6は、6/6、6/7、および7/7遺伝子型により階層化されたイリノテカンおよびその代謝産物の薬物動態パラメータを示している。TA7対立遺伝子数が増加する間、SN-38 AUCは増加した(ノンパラメトリックなトレンド解析、7/7>6/7>6/6、z=2.13、p=0.03)。対照的に、グルクロン酸抱合率(SN-38G/SN-38 AUC比)は、TA7対立遺伝子数が増加する間、減少した(ノンパラメトリックなトレンド解析、6/6>6/7>7/7、z=-2.16、p=0.03)。イリノテカンおよびSN-38GのAUCについて、有意なトレンドは認められなかった(p>0.05)。
【0183】
回帰分析
本発明者らは、好中球減少症の変動性に関する、薬物動態の変動性と治療前(遺伝子型を含む)変量の両方の影響を理解しようとした。TAインデル遺伝子型の代わりに、-3156変異を使用したが、その理由は、総ビリルビンとの相関関係に関するデータを基に、1)-3156遺伝子型は、4度の好中球減少症のリスクとより良く相関し、ならびに2)-3156は、患者のUGT1A1状態をより良く反映したからである。ANCナディアの単変量回帰分析は、3種の最良の独立変数として、SN-38 AUC、総ビリルビンおよび-3156遺伝子型を選択した(表7)。性別は、ANC ナディアとの相関関係に有意性を示さなかったが、グルクロン酸抱合には性差の可能性があるので、これは更にモデリングに含んだ。他の変数は相関関係を示さなかった。
【0184】
多変量解析
Ln(ANCナディア)を予測する治療前測定値を確定するために、いくつかの多変量予測的ANCOVAモデルを考慮した。最終モデル(r2=0.41)は、表7の変数減少法により選択し、表8に示した。治療前ビリルビンレベルは、ln(ANCナディア)非常に有意でありかつと負の相関することがわかった。性別および-3156遺伝子型は、総ビリルビンレベルの調節後、わずかに有意であることがわかった。Ln(ANCナディア)は、女性においてより低い値であることがわかっており、これは(TA)7対立遺伝子数の増加につれ減少する(6/6>6/7>7/7)。人種、以前の投薬様式の数、行動状態、およびln(治療前ANC)などの他の因子は、-3156遺伝子型、性別および総ビリルビンの調節後に、ln(ANCナディア)の有意な予測因子であるようには見えなかった。
【0185】
治療前変数を使用し、予測モデルの決定後、イリノテカンAUC、SN-38 AUC、SN-38G AUCおよびグルクロン酸抱合率の治療後測定値を、いかにしてUGT1A1状態の変動性がln(ANCナディア)に影響を及ぼすかどうか可能性のある機構を決定することを意図し、独立変量として、このモデルに追加した。最良にln(ANCナディア)を予測する変数減少法(r2=0.5141)により選択された最終モデルは、遺伝子型およびSN-38 AUCを含んだ(p<0.001)(表9)。
【0186】
毒性による死亡および反応
毒性による死亡例が1例報告され、この患者は、好中球減少症に関連した敗血症により死亡した。この患者には、発熱によりサイクル1の7日目に病院に入院し、好中球は検出されなかった(白血球数100μl-1)。患者は、感染源は依然確定されなかったが、経験的にセフタザジム、トブラマイシン、およびフルコナゾールにより治療が施された。顆粒球コロニー刺激因子による支援にもかかわらず、この患者は好中球減少症であり続け、敗血症となり、11日目に死亡した。この患者は7/7遺伝子型であり、これらの患者内で、治療前総ビリルビンレベルの最高値が認められた(1.2mg/dl)。
【0187】
本試験の反応率を考慮し、3名の他覚的反応を観察した。2名の患者(1名は結腸直腸癌、ならびに他の1名は頭部および頸部の癌)は、部分的反応を示し、6/7遺伝子型を有した。1名の結腸直腸癌患者は、完全な反応を示し、6/6遺伝子型を有した。
【0188】

(表1)本試験においてタイピングされたUGT1A1変異
示された位置は、UGT1Aクラスター参照配列(AF297093)におけるUGT1A1開始部位の最初の塩基からである。

【0189】
(表2)患者の特徴

【0190】
(表3)UGT1A1プロモーターハプロタイプ頻度

【0191】
(表4)ハプロタイプ対の頻度
ハプロタイプは、-3279、-3156、およびTAインデル変異の変化を反映し、第一塩基を-3279変異、第二を-3156変異と称し、および数値はTA反復配列の数を意味する。

【0192】
(表5)TAインデルおよび-3156遺伝子型に関する遺伝的試験
データは、()内の95%CIと共に表した。5/6遺伝子型の患者は、6/6遺伝子型を有するとみなされた。

PPV:正の予測値
NPV:負の予測値
【0193】
(表6)薬物動態パラメータ、ならびに6/6、6/7および7/7 TAインデル遺伝子型
データは平均(標準偏差)として示す。

a6/6<6/7<7/7, z=2.13, p=0.03, ノンパラメトリックなトレンド分析
b6/6>6/7>7/7, z=2.16, p=0.03, ノンパラメトリックなトレンド分析
【0194】
(表7)ln(ANCナディア)の単変量解析

【0195】
(表8)治療前変数を使用するln(ANCナディア)の最終予測モデルのANCOVA
全体のモデルはr2値0.4048を示す(p<0.0001)。

SE, 標準誤差
【0196】
(表9)治療前および治療後変数を使用するln(ANCナディア)の最終予測モデルのANCOVA
全体のモデルはr2値0.5128を示す(p<0.0001)。

SE, 標準誤差
【0197】
本明細書において開示されおよび請求された全ての組成物および方法は、本説明を考慮し必要以上の実験を伴わずに行いかつ実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様について説明されているが、当業者には、組成物および方法に、ならびに本明細書において説明された方法の工程もしくは工程の順番に、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく変更を適用することができることは明らかであろう。より詳細に述べると、化学的および物理的の両方で関連した試薬は、本明細書に説明された試薬と交換し、同じまたは同様の結果が実現されることは明らかであろう。当業者には明らかであるこのような類似の置換および修飾は全て、添付された「特許請求の範囲」に定義された本発明の精神、範囲および概念内であるとみなされる。
【0198】
参考文献
下記参考文献は具体的に本明細書に参照として組入れられている。

【図面の簡単な説明】
【0199】
下記図面は、本明細書の一部を形成し、かつ本発明のある局面を更に明示するために含まれる。本発明は、本明細書に示された具体的態様の詳細な説明と組合せ、1個または複数のこれらの図面を参照し、より良く理解されるであろう。
【図1】図1は、ANCとTAインデル遺伝子型の間の相関関係である。バーは、平均を表す。ノンパラメトリックなトレンド分析(7/7<6/7<6/6、z=-2.72、p=0.01)。
【図2】図2は、治療前総ビリルビンレベルおよび各TAインデル遺伝子型内の-3156遺伝子型の分布である。-3156 AA遺伝子型は■で、GA遺伝子型は●で、およびGG遺伝子型は▲で示される。バーは、平均を表す。有意なトレンドが報告された(7/7>6/7>6/6、z=2.88、p<0.01、ノンパラメトリックなトレンド分析)。
【図3】図3は、ln(ANC ナディア)と治療前総ビリルビンレベルの間の相関関係である。ビリルビンレベルが0.6mg/dl未満の患者は、■で表した。ビリルビンレベルが0.7mg/dlよりも高い患者は、●で表した。
【図4】GenBankデーターベースに寄託された参照配列を示す。
【図5】各ハプロタイプ対のSN-38グルクロン酸抱合率を示す。
【図6】各(TA)n遺伝子型のSN-38グルクロン酸抱合率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、患者におけるイリノテカン毒性のリスクを評価する方法:
患者の、一方または両方のUGT1A1遺伝子の-3156位のヌクレオチド配列を決定する工程。
【請求項2】
患者におけるUGT1A1活性レベルを分類する工程を更に含み、これによりグアニン残基の同定が、その患者は低レベルの活性を有さないことを示している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
-3156位のヌクレオチド配列が、一方のUGT1A1遺伝子について決定される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
-3156位のヌクレオチド配列が、患者の、両方のUGT1A1遺伝子について決定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
一方または両方のUGT1A1遺伝子中の-3156位の配列に関連したグルクロン酸抱合率を分析する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者に投与するためのイリノテカンの投与量を最適化する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
一方または両方のUGT1A1遺伝子の-3156位の配列の決定が、ハイブリダイゼーションアッセイにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
UGT1A1遺伝子の-3156位のヌクレオチド配列の決定が、シークエンシングまたはマイクロシークエンシングアッセイにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
UGT1A1遺伝子の-3156位のヌクレオチド配列を決定する工程が、対立遺伝子特異的増幅アッセイにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
患者へイリノテカンを投与する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
胆汁を介した活性イリノテカン種の排出を低下するために、患者へ第二の物質を投与することを更に含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
以下を含む、患者におけるイリノテカン毒性のリスクを評価する方法:
患者の、一方のUGT1A1の-3156位のヌクレオチド配列を決定する工程。
【請求項13】
患者のUGT1A1活性レベルを分類する工程を更に含み、これによりグアニン残基の同定が、その患者は低レベルの活性を有さないことを示している、請求項12記載の方法。
【請求項14】
患者における第二のUGT1A1遺伝子の-3156位のヌクレオチド配列を決定する工程を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
グアニンヌクレオチドが-3156位に認められる場合に、患者にイリノテカンを投与することを更に含む、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−526412(P2006−526412A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515008(P2006−515008)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/016920
【国際公開番号】WO2004/108954
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(504284711)ユニバーシティ オブ シカゴ (3)
【Fターム(参考)】