インキの吐出方法
【課題】容器内に残留するインキの量を減らし、インキを効率良く吐出できるようにする。
【解決手段】押体2を容器10の底面10cに向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し押体2から離間する昇降自在な昇降部材51とを備え、押体2は、押体2の外周部の全体に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しながら容器10の底面10cに向かって移動し、排出孔10aからインキIを排出するインキの吐出方法とする。
【解決手段】押体2を容器10の底面10cに向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し押体2から離間する昇降自在な昇降部材51とを備え、押体2は、押体2の外周部の全体に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しながら容器10の底面10cに向かって移動し、排出孔10aからインキIを排出するインキの吐出方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収納されたインキを排出するインキの吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インキが収納された容器からインキを排出する方法として、容器内部のインキの上面に当接したシール部材上に弾性部材を載置し、容器の開口部を蓋で閉め、この蓋の上部に加圧部材を当接させて容器を下方に加圧することにより容器を圧潰させ、容器の底面に設けられた排出孔からインキの吐出を行っていた(特許文献1の図3参照。)。
【特許文献1】特許第3497160号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この方法は容器を圧潰させてインキを排出させるため、圧潰により変形した容器の内壁面と弾性部材との間に隙間が生じ、この隙間に排出されないインキ(利用できないインキ)が多く残留してしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は、上述の問題を解決するようにしたインキの吐出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1は、内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、この第1のシート部材に当接する押体と、この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出するインキの吐出方法である。
【0006】
請求項2は、内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、この第1のシート部材に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材と、この第2のシート部材に当接する押体と、この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材と前記第2のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出するインキの吐出方法である。
【0007】
請求項3は、請求項1または請求項2に記載のインキの吐出方法であって、第1のシート部材は、袋状であるインキの吐出方法である。
【0008】
請求項4は、請求項1乃至請求項3に記載のインキの吐出方法であって、押体は、弾性部材であるインキの吐出方法である。
【0009】
請求項5は、請求項4に記載のインキの吐出方法であって、容器の内径は前記容器の底面側に向かって漸次縮径され、前記容器の上端部の内径をD1とし、前記容器の底面の内径をD2とし、前記押体の上面の外径をd1とし、前記押体の下面の外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすインキの吐出方法である。
【0010】
請求項6は、請求項1乃至請求項5に記載のインキの吐出方法であって、昇降部材の移動を停止すると共に、前記昇降部材を押体から離間し、バルブを閉として容器を保管する保管工程を含むインキの吐出方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、押体は、この押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材を介して容器の内壁面に密着しながら容器の底面に向かって移動するため、内壁面に付着するインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができ、しかも、押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材を介して容器の内壁面に密着しているため、インキは外気から遮断され、インキの酸化を防ぎ、更に、インキの吐出終了後、第1のシート部材を引き上げることで押体を容器から容易に取出すことができると共に、第1のシート部材と押体とを分離でき、しかも、押体にはインキが付着していないため、押体の再利用を容易に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、押体は、この押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に密着しながら容器の底面に向かって移動するため、内壁面に付着するインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができ、しかも、押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に密着しているため、インキは外気から遮断され、インキの酸化を防ぎ、更に、インキの吐出終了後、第2のシート部材を引き上げることで押体を容器から容易に取出すことができると共に、第2のシート部材と押体とを分離でき、しかも、押体にはインキが付着していないため、押体の再利用を容易に行うことができる。また更に、インキの吐出時には第2のシート部材は第1のシート部材を挟んでインキと反対側に位置している、つまり、第2のシート部材はインキに接触しないため、第1のシート部材と第2のシート部材との間にはインキが進入することはなく、第2のシート部材を第1のシート部材から容易に引き離すことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2の効果に加え、第1のシート部材は、袋状であるため、第1のシート部材を容器の内壁面の内形に沿わせ易くなり、第1のシート部材または第1のシート部材と第2のシート部材を介して押体を容器の内壁面に、より一層密着させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3の効果に加え、押体は、弾性部材であるため、容器の内壁面の形状に合わせて変形をし、第1のシート部材または第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に、より一層密着させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、容器の上端部の内径をD1とし、容器の底面の内径をD2とし、押体の上面の外径をd1とし、押体の下面の外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすようにしたため、内径が底面側に向かって漸次縮径する容器にあっては、昇降部材により押体が容器の底面に向かって移動するにつれて押体の中央部が上に凸状に反り、押体の下面の外周縁が底面に達した後は昇降部材により押体の中央部が下降するにつれてインキが容器の中央部に向かって移動して排出口から排出され、容器の底面に残るインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5の効果に加え、昇降部材の移動を停止すると共に、この昇降部材を押体から離間し、バルブを閉として容器を保管する保管工程を含むことにより、インキの吐出を途中で止める場合であっても、押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材または第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に密着しているため、インキは外気から遮断され、インキの酸化を防止することができ、保管後、引き続きインキを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を以下に示す。
【実施例1】
【0018】
本発明のインキの吐出方法の実施例1について、図1〜図8に基づき説明する。図1においてAはインキ吐出装置であり、本発明に係るインキの吐出方法を実施するための装置である。このインキ吐出装置Aは、インキの容器aを載置する容器支持台60と、押体2を移動するための昇降部材51およびこの昇降部材51を昇降させる昇降手段Bを備えている。
【0019】
インキの容器aは、図2に示すように容器10と、容器10の内部に収納されたインキIと、インキIの上面に設けられインキIの使用前にインキIと外気との接触を遮断するシール部材12(通称「パーチ」)と、容器10の上部を覆う蓋11とを備えている。
【0020】
次に、インキの容器aからのインキIの吐出方法について説明する。図3に示したようにインキの容器aの蓋11を取り除き、容器10の底面10cに図示していない工具によりインキIを排出するための排出孔10aを設け、容器10の内壁面10b全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材31をシール部材12と容器10の内壁面10bに当接させ、更に、押体2を第1のシート部材31に当接させる。なお、第1のシート部材31はポリエチレン等の材料が用いられる。
【0021】
そして、図4,図5に示したように、容器10の底部外表面10dに底部取付部材4を例えば図示していない両面テープにより接着して取り付ける。この底部取付部材4は容器10の底部外表面10dに当接してインキの容器aを支承すると共に、インキIの吐出を行うものであり、容器10の排出孔10aに連通する容器側開口部40aを有する容器支持部材40と、この容器支持部材40の容器側開口部40aに連通しインキIの流通を開閉するバルブ42を備えている。
【0022】
次に、底部取付部材4が取り付けられたインキの容器aを、図5に示したようにインキ吐出装置Aの容器支持台60上に載置し、昇降手段Bを作動させて昇降部材51の下面を容器10の開口端部に当接しないで押体2の上面に当接させる。そしてバルブ42を開にし昇降手段Bを作動させて昇降部材51を下降させることにより押体2を容器10の底面10c側に移動させてインキIを押圧し、押体2を、押体2の外周部の全体(押体2の外周部の周縁部の全体)に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しながら容器10の底面10cに向かって移動し、排出孔10aからインキIを排出し、底部取付部材4の容器側開口部40aを介して流路41を通過させ、外側開口部41aからインキIを吐出させる。なお、図1に示したようにインキIの吐出の際に外側開口部41aの直下に容器Cを配置させておけば吐出したインキIはこの容器Cの中に貯留される。
【0023】
そして、図6に示したように押体2が容器10の底面10cに達するとインキIの吐出が終了し、昇降部材51を昇降手段Bの作動により上昇させて容器10の外部に退出させる(図7参照)。このとき押体2、第1のシート部材31およびシール部材12は容器10の内部に残留するが、図8に示したように第1のシート部材31を容器10の内部から引き上げてシート部材31の内方に位置する押体2と共に容器10から取り出した後、第1のシート部材31と押体2とを分離する。そして、シール部材12を分別して廃棄するため容器10内から取り出し、容器10の底部外表面10dに取り付けられている底部取付部材4を容器10から取り外して一連のインキの吐出の工程が終了する。
【0024】
なお、インキの容器a内のインキIを全部吐出せずに必要量のみ吐出させる場合にあっては、図1に示したように容器Cを質量計T上に載置し、この質量計Tと、図示していない制御手段と、昇降手段Bと、バルブ開閉手段Kとを電気的に接続し、質量計Tから送出される質量に関する信号を制御手段に送り、所望の質量のインキIが容器Cに吐出された時に制御手段から昇降手段Bに信号を送出して昇降部材51の下降を停止させると共に、制御手段からバルブ開閉手段Kに信号を送出してバルブ42を閉にしてインキIの吐出を停止するようにしてもよい。また、バルブ42の開閉動作は手動により行ってもよい。
【0025】
ところで、上述の実施例1のインキの吐出方法において、押体2を、押体2の外周部の全体に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しながら底面10cに向かって移動させたのは、容器10の内壁面10bに付着するインキIの量を少なくしてインキIを効率良く吐出させるためである。更に、押体2は、押体2の外周部の全体に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しているため、インキIは外気から遮断され、インキIの酸化を防ぐことができる。
【0026】
また、押体2を第1のシート部材31を介してシール部材12と容器10の内壁面10bに当接させたのは、インキIの吐出終了後、第1のシート部材31を引き上げることで押体2を容器から容易に取り出すことができると共に、第1のシート部材31と押体2とを分離でき、しかも、押体2にはインキIが付着していないため、洗浄をしてインキIを除去する必要はなく押体2の再利用を容易に行うことができるためである。なお、シール部材12はインキIの吐出時に押体2により容器10の底面10c付近まで押し込まれてしまうため、第1のシート部材31を使用しない場合には押体2が容器10の内壁面10bに直接接触してインキIが押体2に付着する不具合を生ずる。
【0027】
また、本発明は、上述の従来技術のように容器を圧潰しないため、昇降手段Bにかかる負荷を軽減させることができると共にインキ吐出装置Aに構造上の高い剛性を持たせる必要はなくインキ吐出装置Aの簡素化が図れ、更に、容器の圧潰によるシール部材12の容器内壁面へのかみ込みも生じないため、容易にシール部材12と容器10とを分離でき、分別して廃棄をすることができる。
なお、昇降手段Bは、モータによる回転運動を垂直方向の昇降運動に変換させるものであり、具体的には、例えば、図1に示したように駆動用のモータ52を設け、このモータ52の回転を、ギヤ54、55を介してモータ支持部材53に回転自在に支持された雌螺子56に伝達し、雌螺子56に螺合する雄螺子(昇降螺子)57を昇降させ、この雄螺子(昇降螺子)57の下部に接続した昇降部材51を昇降させる構成としてもよい。ここで、58は昇降部材51の切り欠き51aに係止する回り止め部材であり(図1および図4参照)、この回り止め部材58により昇降部材51が回転しないようにして昇降するようにしてある。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明のインキの吐出方法の実施例2について、図9〜図11に基づき説明する。なお、実施例1と同一部分には同一の符号を付している。
【0029】
本実施例ではインキの容器aは、図9に示したように、実施例1(図3参照)で示した第1のシート部材31と押体2との間に、容器10の内壁面10b全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材32を設けるものである。
【0030】
したがって、第1のシート部材31をシール部材12と容器10の内壁面10bに当接させ、更に、第2のシート部材32を第1のシート部材31に当接させ、そして、押体2を第2のシート部材32に当接させるものである。前述の第2のシート部材32は第1のシート部材31との摩擦力が小さい材料が好適に用いられ、第1のシート部材31と同種の材料であってもよく、或いは異種の材料としてもよい。
【0031】
なお、その他の構成及びインキIの吐出については実施例1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、インキIの吐出が終了し、昇降部材51を昇降手段Bの作動により上昇させて容器10の外部に退出させた後の工程について説明する。
【0033】
昇降部材51の退出後は図10に示したように容器10の内部にシール部材12、第1のシート部材31、第2のシート部材32および押体2が残留し、押体2は容器10の底面10c付近まで押し込まれているが、図11に示したように第2のシート部材32を容器10の内部から引き上げてシート部材32の内方に位置する押体2と共に容器10から取り出した後、第2のシート部材32と押体2とを分離する。そして、第1のシート部材31およびシール部材12を容器10内から取り出し、容器10の底部外側面10dに取り付けられている底部取付部材4を容器10から取り外して一連のインキの吐出の工程が終了する。
【0034】
ところで、上述の実施例2のインキの吐出方法において、第1のシート部材31と押体2の間に、容器10の内壁面10b全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材32を設けたのは、第2のシート部材32は第1のシート部材31を挟んでインキIと反対側に位置し、第1のシート部材31と第2のシート部材32との間にはインキIが進入することはないため、第1のシート部材31と第2のシート部材32とがインキにより貼り付くことはなく、第2のシート部材32を第1のシート部材31から容易に引き離すことができるためである。
【0035】
以上、実施例1および実施例2について述べたが、更に以下に示す実施の形態としてもよい。即ち、第1のシート部材31(または第2のシート部材32)はフィルム状の部材でもよいが、加工を施して袋状としたり、市販の袋をそのまま利用したりしてもよい。袋状とすることにより容器10の内壁面10bの内形に沿わせ易くなり、第1のシート部材31(または第1のシート部材31と第2のシート部材32)を介して押体2を容器10の内壁面10bに、より一層密着させることができるためである。
【0036】
また、押体2は、剛体でもよいが、望ましくは弾性部材がよい。弾性部材を押体2に用いることにより、第1のシート部材31(または第1のシート部材31と第2のシート部材32)を介して押体2を容器10の内壁面10bに、より一層密着させることができるためである。なお、弾性部材を用いる場合には内壁面10bへの第1のシート部材31の密着性を考慮し、硬度をショアA規格の値で30〜95の範囲(例えばウレタンなど)とするのが好ましい。
【0037】
更に、図12に示したように、容器10の内径が容器10の底面10c側に向かって漸次縮径されている場合には、容器10の上端部10eの内径をD1とし、容器10の底面10cの内径をD2とし、押体2の上面2bの外径をd1とし、押体2の下面2aの外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすようにD1、D2、d1、d2の寸法を設定すれば、D1>d2>d1とすることで押体2を容器10の上端部10eから挿入でき、更に、押体2を弾性部材かつd2>d1>D2とすることで、図13(a)〜(d)に示したように、昇降部材51により押体2が容器10の底面10cに向かって移動するにつれて押体2の中央部が上に凸状に反り(図13(b)参照)、押体2の下面2aの外周縁が底面10cに達した後は昇降部材51により押体2の中央部が下降するにつれてインキIが容器10の中央部に向かって移動して排出口10aから排出され(図13(c)参照)、押体2の中央部が底面10cに達してインキIの吐出が終了する(図13(d)参照)。従って、容器10の底面10cに残るインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができる。
【0038】
ところで、図13に示したように押体2が底面10cに向かって移動するにつれて中央部が上に凸状に反るのは、容器10の内径が容器10の底面10c側に向かって漸次縮径しているため、押体2が底面10cに向かって移動するにつれて変形量が大きくなり、押体2の外周面全体が容器10の内壁面10bに第1のシート部材31(または第1のシート部材31と第2のシート部材32)を介して密着するにつれて、押体2の下面2aよりも外径が小さい上面2b方向に押体2が湾曲(押体2の中央部が上に凸状に湾曲)するためである。
【0039】
また更に、容器10中のインキIの吐出を途中で止める場合にあっては、昇降部材51の移動を停止すると共に、昇降部材51を押体2から離間し、バルブ42を閉としてインキの容器aを保管する保管工程を設けてもよい。第1のシート部材31がシール部材12の上面および容器10の内壁面10bを覆っているため、インキIは外気から遮断され、インキIの酸化を防止することができ、保管後、引き続きインキIを使用することができるためである。
【0040】
なお、上述した容器10はテーパー状の容器を例として説明したが、本発明に係る容器はテーパー状の容器に限定されるものではなく、例えば上端と下端の径が同じ円筒状の容器としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を実施するためのインキ吐出装置Aを示す図である。
【図2】図1に使用されるインキの容器aの縦断面図である。
【図3】図2のインキの容器aに第1のシート部材と押体を取り付ける状態を示す縦断面図である。
【図4】図3のインキの容器aと押体、底部取付部材、昇降部材の関係を示す斜視図である。
【図5】図3のインキの容器aをインキ吐出装置Aに取り付けたときの一部拡大断面図である。
【図6】図3のインキの容器aのインキ吐出終了後の縦断面図である。
【図7】図3のインキの容器aのインキ吐出終了後の昇降部材の退出時の縦断面図である。
【図8】図3のインキの容器aのインキ吐出終了後の押体を取り外す状態を示す縦断面図である。
【図9】図2のインキの容器aに第1のシート部材、第2のシート部材および押体を取り付ける状態を示す縦断面図である。
【図10】図9のインキの容器aのインキ吐出終了後の昇降部材の退出時の縦断面図である。
【図11】図9のインキの容器aのインキ吐出終了後の押体を取り外す状態を示す縦断面図である。
【図12】図9の押体と容器の寸法関係を説明するための縦断面図である。
【図13】図12の容器と押体を使用したインキの吐出過程を説明するための縦断面略図であり、(a)は吐出開始時、(b)および(c)は吐出途中、(d)は吐出終了時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
a インキの容器
A インキ吐出装置
I インキ
2 押体
4 底部取付部材
10 容器
12 シール部材
31 第1のシート部材
32 第2のシート部材
51 昇降部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収納されたインキを排出するインキの吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インキが収納された容器からインキを排出する方法として、容器内部のインキの上面に当接したシール部材上に弾性部材を載置し、容器の開口部を蓋で閉め、この蓋の上部に加圧部材を当接させて容器を下方に加圧することにより容器を圧潰させ、容器の底面に設けられた排出孔からインキの吐出を行っていた(特許文献1の図3参照。)。
【特許文献1】特許第3497160号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この方法は容器を圧潰させてインキを排出させるため、圧潰により変形した容器の内壁面と弾性部材との間に隙間が生じ、この隙間に排出されないインキ(利用できないインキ)が多く残留してしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は、上述の問題を解決するようにしたインキの吐出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1は、内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、この第1のシート部材に当接する押体と、この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出するインキの吐出方法である。
【0006】
請求項2は、内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、この第1のシート部材に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材と、この第2のシート部材に当接する押体と、この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材と前記第2のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出するインキの吐出方法である。
【0007】
請求項3は、請求項1または請求項2に記載のインキの吐出方法であって、第1のシート部材は、袋状であるインキの吐出方法である。
【0008】
請求項4は、請求項1乃至請求項3に記載のインキの吐出方法であって、押体は、弾性部材であるインキの吐出方法である。
【0009】
請求項5は、請求項4に記載のインキの吐出方法であって、容器の内径は前記容器の底面側に向かって漸次縮径され、前記容器の上端部の内径をD1とし、前記容器の底面の内径をD2とし、前記押体の上面の外径をd1とし、前記押体の下面の外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすインキの吐出方法である。
【0010】
請求項6は、請求項1乃至請求項5に記載のインキの吐出方法であって、昇降部材の移動を停止すると共に、前記昇降部材を押体から離間し、バルブを閉として容器を保管する保管工程を含むインキの吐出方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、押体は、この押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材を介して容器の内壁面に密着しながら容器の底面に向かって移動するため、内壁面に付着するインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができ、しかも、押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材を介して容器の内壁面に密着しているため、インキは外気から遮断され、インキの酸化を防ぎ、更に、インキの吐出終了後、第1のシート部材を引き上げることで押体を容器から容易に取出すことができると共に、第1のシート部材と押体とを分離でき、しかも、押体にはインキが付着していないため、押体の再利用を容易に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、押体は、この押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に密着しながら容器の底面に向かって移動するため、内壁面に付着するインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができ、しかも、押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に密着しているため、インキは外気から遮断され、インキの酸化を防ぎ、更に、インキの吐出終了後、第2のシート部材を引き上げることで押体を容器から容易に取出すことができると共に、第2のシート部材と押体とを分離でき、しかも、押体にはインキが付着していないため、押体の再利用を容易に行うことができる。また更に、インキの吐出時には第2のシート部材は第1のシート部材を挟んでインキと反対側に位置している、つまり、第2のシート部材はインキに接触しないため、第1のシート部材と第2のシート部材との間にはインキが進入することはなく、第2のシート部材を第1のシート部材から容易に引き離すことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2の効果に加え、第1のシート部材は、袋状であるため、第1のシート部材を容器の内壁面の内形に沿わせ易くなり、第1のシート部材または第1のシート部材と第2のシート部材を介して押体を容器の内壁面に、より一層密着させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3の効果に加え、押体は、弾性部材であるため、容器の内壁面の形状に合わせて変形をし、第1のシート部材または第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に、より一層密着させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、容器の上端部の内径をD1とし、容器の底面の内径をD2とし、押体の上面の外径をd1とし、押体の下面の外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすようにしたため、内径が底面側に向かって漸次縮径する容器にあっては、昇降部材により押体が容器の底面に向かって移動するにつれて押体の中央部が上に凸状に反り、押体の下面の外周縁が底面に達した後は昇降部材により押体の中央部が下降するにつれてインキが容器の中央部に向かって移動して排出口から排出され、容器の底面に残るインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5の効果に加え、昇降部材の移動を停止すると共に、この昇降部材を押体から離間し、バルブを閉として容器を保管する保管工程を含むことにより、インキの吐出を途中で止める場合であっても、押体の外周部の全体に渡って第1のシート部材または第1のシート部材と第2のシート部材を介して容器の内壁面に密着しているため、インキは外気から遮断され、インキの酸化を防止することができ、保管後、引き続きインキを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を以下に示す。
【実施例1】
【0018】
本発明のインキの吐出方法の実施例1について、図1〜図8に基づき説明する。図1においてAはインキ吐出装置であり、本発明に係るインキの吐出方法を実施するための装置である。このインキ吐出装置Aは、インキの容器aを載置する容器支持台60と、押体2を移動するための昇降部材51およびこの昇降部材51を昇降させる昇降手段Bを備えている。
【0019】
インキの容器aは、図2に示すように容器10と、容器10の内部に収納されたインキIと、インキIの上面に設けられインキIの使用前にインキIと外気との接触を遮断するシール部材12(通称「パーチ」)と、容器10の上部を覆う蓋11とを備えている。
【0020】
次に、インキの容器aからのインキIの吐出方法について説明する。図3に示したようにインキの容器aの蓋11を取り除き、容器10の底面10cに図示していない工具によりインキIを排出するための排出孔10aを設け、容器10の内壁面10b全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材31をシール部材12と容器10の内壁面10bに当接させ、更に、押体2を第1のシート部材31に当接させる。なお、第1のシート部材31はポリエチレン等の材料が用いられる。
【0021】
そして、図4,図5に示したように、容器10の底部外表面10dに底部取付部材4を例えば図示していない両面テープにより接着して取り付ける。この底部取付部材4は容器10の底部外表面10dに当接してインキの容器aを支承すると共に、インキIの吐出を行うものであり、容器10の排出孔10aに連通する容器側開口部40aを有する容器支持部材40と、この容器支持部材40の容器側開口部40aに連通しインキIの流通を開閉するバルブ42を備えている。
【0022】
次に、底部取付部材4が取り付けられたインキの容器aを、図5に示したようにインキ吐出装置Aの容器支持台60上に載置し、昇降手段Bを作動させて昇降部材51の下面を容器10の開口端部に当接しないで押体2の上面に当接させる。そしてバルブ42を開にし昇降手段Bを作動させて昇降部材51を下降させることにより押体2を容器10の底面10c側に移動させてインキIを押圧し、押体2を、押体2の外周部の全体(押体2の外周部の周縁部の全体)に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しながら容器10の底面10cに向かって移動し、排出孔10aからインキIを排出し、底部取付部材4の容器側開口部40aを介して流路41を通過させ、外側開口部41aからインキIを吐出させる。なお、図1に示したようにインキIの吐出の際に外側開口部41aの直下に容器Cを配置させておけば吐出したインキIはこの容器Cの中に貯留される。
【0023】
そして、図6に示したように押体2が容器10の底面10cに達するとインキIの吐出が終了し、昇降部材51を昇降手段Bの作動により上昇させて容器10の外部に退出させる(図7参照)。このとき押体2、第1のシート部材31およびシール部材12は容器10の内部に残留するが、図8に示したように第1のシート部材31を容器10の内部から引き上げてシート部材31の内方に位置する押体2と共に容器10から取り出した後、第1のシート部材31と押体2とを分離する。そして、シール部材12を分別して廃棄するため容器10内から取り出し、容器10の底部外表面10dに取り付けられている底部取付部材4を容器10から取り外して一連のインキの吐出の工程が終了する。
【0024】
なお、インキの容器a内のインキIを全部吐出せずに必要量のみ吐出させる場合にあっては、図1に示したように容器Cを質量計T上に載置し、この質量計Tと、図示していない制御手段と、昇降手段Bと、バルブ開閉手段Kとを電気的に接続し、質量計Tから送出される質量に関する信号を制御手段に送り、所望の質量のインキIが容器Cに吐出された時に制御手段から昇降手段Bに信号を送出して昇降部材51の下降を停止させると共に、制御手段からバルブ開閉手段Kに信号を送出してバルブ42を閉にしてインキIの吐出を停止するようにしてもよい。また、バルブ42の開閉動作は手動により行ってもよい。
【0025】
ところで、上述の実施例1のインキの吐出方法において、押体2を、押体2の外周部の全体に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しながら底面10cに向かって移動させたのは、容器10の内壁面10bに付着するインキIの量を少なくしてインキIを効率良く吐出させるためである。更に、押体2は、押体2の外周部の全体に渡って第1のシート部材31を介して容器10の内壁面10bに密着しているため、インキIは外気から遮断され、インキIの酸化を防ぐことができる。
【0026】
また、押体2を第1のシート部材31を介してシール部材12と容器10の内壁面10bに当接させたのは、インキIの吐出終了後、第1のシート部材31を引き上げることで押体2を容器から容易に取り出すことができると共に、第1のシート部材31と押体2とを分離でき、しかも、押体2にはインキIが付着していないため、洗浄をしてインキIを除去する必要はなく押体2の再利用を容易に行うことができるためである。なお、シール部材12はインキIの吐出時に押体2により容器10の底面10c付近まで押し込まれてしまうため、第1のシート部材31を使用しない場合には押体2が容器10の内壁面10bに直接接触してインキIが押体2に付着する不具合を生ずる。
【0027】
また、本発明は、上述の従来技術のように容器を圧潰しないため、昇降手段Bにかかる負荷を軽減させることができると共にインキ吐出装置Aに構造上の高い剛性を持たせる必要はなくインキ吐出装置Aの簡素化が図れ、更に、容器の圧潰によるシール部材12の容器内壁面へのかみ込みも生じないため、容易にシール部材12と容器10とを分離でき、分別して廃棄をすることができる。
なお、昇降手段Bは、モータによる回転運動を垂直方向の昇降運動に変換させるものであり、具体的には、例えば、図1に示したように駆動用のモータ52を設け、このモータ52の回転を、ギヤ54、55を介してモータ支持部材53に回転自在に支持された雌螺子56に伝達し、雌螺子56に螺合する雄螺子(昇降螺子)57を昇降させ、この雄螺子(昇降螺子)57の下部に接続した昇降部材51を昇降させる構成としてもよい。ここで、58は昇降部材51の切り欠き51aに係止する回り止め部材であり(図1および図4参照)、この回り止め部材58により昇降部材51が回転しないようにして昇降するようにしてある。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明のインキの吐出方法の実施例2について、図9〜図11に基づき説明する。なお、実施例1と同一部分には同一の符号を付している。
【0029】
本実施例ではインキの容器aは、図9に示したように、実施例1(図3参照)で示した第1のシート部材31と押体2との間に、容器10の内壁面10b全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材32を設けるものである。
【0030】
したがって、第1のシート部材31をシール部材12と容器10の内壁面10bに当接させ、更に、第2のシート部材32を第1のシート部材31に当接させ、そして、押体2を第2のシート部材32に当接させるものである。前述の第2のシート部材32は第1のシート部材31との摩擦力が小さい材料が好適に用いられ、第1のシート部材31と同種の材料であってもよく、或いは異種の材料としてもよい。
【0031】
なお、その他の構成及びインキIの吐出については実施例1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、インキIの吐出が終了し、昇降部材51を昇降手段Bの作動により上昇させて容器10の外部に退出させた後の工程について説明する。
【0033】
昇降部材51の退出後は図10に示したように容器10の内部にシール部材12、第1のシート部材31、第2のシート部材32および押体2が残留し、押体2は容器10の底面10c付近まで押し込まれているが、図11に示したように第2のシート部材32を容器10の内部から引き上げてシート部材32の内方に位置する押体2と共に容器10から取り出した後、第2のシート部材32と押体2とを分離する。そして、第1のシート部材31およびシール部材12を容器10内から取り出し、容器10の底部外側面10dに取り付けられている底部取付部材4を容器10から取り外して一連のインキの吐出の工程が終了する。
【0034】
ところで、上述の実施例2のインキの吐出方法において、第1のシート部材31と押体2の間に、容器10の内壁面10b全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材32を設けたのは、第2のシート部材32は第1のシート部材31を挟んでインキIと反対側に位置し、第1のシート部材31と第2のシート部材32との間にはインキIが進入することはないため、第1のシート部材31と第2のシート部材32とがインキにより貼り付くことはなく、第2のシート部材32を第1のシート部材31から容易に引き離すことができるためである。
【0035】
以上、実施例1および実施例2について述べたが、更に以下に示す実施の形態としてもよい。即ち、第1のシート部材31(または第2のシート部材32)はフィルム状の部材でもよいが、加工を施して袋状としたり、市販の袋をそのまま利用したりしてもよい。袋状とすることにより容器10の内壁面10bの内形に沿わせ易くなり、第1のシート部材31(または第1のシート部材31と第2のシート部材32)を介して押体2を容器10の内壁面10bに、より一層密着させることができるためである。
【0036】
また、押体2は、剛体でもよいが、望ましくは弾性部材がよい。弾性部材を押体2に用いることにより、第1のシート部材31(または第1のシート部材31と第2のシート部材32)を介して押体2を容器10の内壁面10bに、より一層密着させることができるためである。なお、弾性部材を用いる場合には内壁面10bへの第1のシート部材31の密着性を考慮し、硬度をショアA規格の値で30〜95の範囲(例えばウレタンなど)とするのが好ましい。
【0037】
更に、図12に示したように、容器10の内径が容器10の底面10c側に向かって漸次縮径されている場合には、容器10の上端部10eの内径をD1とし、容器10の底面10cの内径をD2とし、押体2の上面2bの外径をd1とし、押体2の下面2aの外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすことが好ましい。この関係を満たすようにD1、D2、d1、d2の寸法を設定すれば、D1>d2>d1とすることで押体2を容器10の上端部10eから挿入でき、更に、押体2を弾性部材かつd2>d1>D2とすることで、図13(a)〜(d)に示したように、昇降部材51により押体2が容器10の底面10cに向かって移動するにつれて押体2の中央部が上に凸状に反り(図13(b)参照)、押体2の下面2aの外周縁が底面10cに達した後は昇降部材51により押体2の中央部が下降するにつれてインキIが容器10の中央部に向かって移動して排出口10aから排出され(図13(c)参照)、押体2の中央部が底面10cに達してインキIの吐出が終了する(図13(d)参照)。従って、容器10の底面10cに残るインキの量を少なくしてインキを効率良く吐出することができる。
【0038】
ところで、図13に示したように押体2が底面10cに向かって移動するにつれて中央部が上に凸状に反るのは、容器10の内径が容器10の底面10c側に向かって漸次縮径しているため、押体2が底面10cに向かって移動するにつれて変形量が大きくなり、押体2の外周面全体が容器10の内壁面10bに第1のシート部材31(または第1のシート部材31と第2のシート部材32)を介して密着するにつれて、押体2の下面2aよりも外径が小さい上面2b方向に押体2が湾曲(押体2の中央部が上に凸状に湾曲)するためである。
【0039】
また更に、容器10中のインキIの吐出を途中で止める場合にあっては、昇降部材51の移動を停止すると共に、昇降部材51を押体2から離間し、バルブ42を閉としてインキの容器aを保管する保管工程を設けてもよい。第1のシート部材31がシール部材12の上面および容器10の内壁面10bを覆っているため、インキIは外気から遮断され、インキIの酸化を防止することができ、保管後、引き続きインキIを使用することができるためである。
【0040】
なお、上述した容器10はテーパー状の容器を例として説明したが、本発明に係る容器はテーパー状の容器に限定されるものではなく、例えば上端と下端の径が同じ円筒状の容器としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を実施するためのインキ吐出装置Aを示す図である。
【図2】図1に使用されるインキの容器aの縦断面図である。
【図3】図2のインキの容器aに第1のシート部材と押体を取り付ける状態を示す縦断面図である。
【図4】図3のインキの容器aと押体、底部取付部材、昇降部材の関係を示す斜視図である。
【図5】図3のインキの容器aをインキ吐出装置Aに取り付けたときの一部拡大断面図である。
【図6】図3のインキの容器aのインキ吐出終了後の縦断面図である。
【図7】図3のインキの容器aのインキ吐出終了後の昇降部材の退出時の縦断面図である。
【図8】図3のインキの容器aのインキ吐出終了後の押体を取り外す状態を示す縦断面図である。
【図9】図2のインキの容器aに第1のシート部材、第2のシート部材および押体を取り付ける状態を示す縦断面図である。
【図10】図9のインキの容器aのインキ吐出終了後の昇降部材の退出時の縦断面図である。
【図11】図9のインキの容器aのインキ吐出終了後の押体を取り外す状態を示す縦断面図である。
【図12】図9の押体と容器の寸法関係を説明するための縦断面図である。
【図13】図12の容器と押体を使用したインキの吐出過程を説明するための縦断面略図であり、(a)は吐出開始時、(b)および(c)は吐出途中、(d)は吐出終了時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
a インキの容器
A インキ吐出装置
I インキ
2 押体
4 底部取付部材
10 容器
12 シール部材
31 第1のシート部材
32 第2のシート部材
51 昇降部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、
この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、
前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、
この第1のシート部材に当接する押体と、
この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、
前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出することを特徴とするインキの吐出方法。
【請求項2】
内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、
この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、
前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、
この第1のシート部材に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材と、
この第2のシート部材に当接する押体と、
この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、
前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材と前記第2のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出することを特徴とするインキの吐出方法。
【請求項3】
第1のシート部材は、袋状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインキの吐出方法。
【請求項4】
押体は、弾性部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のインキの吐出方法。
【請求項5】
容器の内径は前記容器の底面側に向かって漸次縮径され、
前記容器の上端部の内径をD1とし、前記容器の底面の内径をD2とし、前記押体の上面の外径をd1とし、前記押体の下面の外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすことを特徴とする請求項4に記載のインキの吐出方法。
【請求項6】
昇降部材の移動を停止すると共に、前記昇降部材を押体から離間し、バルブを閉として容器を保管する保管工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のインキの吐出方法。
【請求項1】
内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、
この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、
前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、
この第1のシート部材に当接する押体と、
この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、
前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出することを特徴とするインキの吐出方法。
【請求項2】
内部にインキを収納し、前記インキの上面にシール部材を設け、底面に前記インキを排出する排出孔を有する容器と、
この容器の前記排出孔に連通し前記インキの流通を開閉するバルブと、
前記シール部材と前記容器の内壁面に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第1のシート部材と、
この第1のシート部材に当接し、前記容器の内壁面全体を覆う大きさよりも大きい第2のシート部材と、
この第2のシート部材に当接する押体と、
この押体を前記容器の前記底面に向かって移動すると共に前記移動の方向とは逆方向に移動し前記押体から離間する昇降自在な昇降部材とを備え、
前記押体は前記押体の外周部の全体に渡って前記第1のシート部材と前記第2のシート部材を介して前記容器の内壁面に密着しながら前記容器の前記底面に向かって移動し、前記排出孔から前記インキを排出することを特徴とするインキの吐出方法。
【請求項3】
第1のシート部材は、袋状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインキの吐出方法。
【請求項4】
押体は、弾性部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のインキの吐出方法。
【請求項5】
容器の内径は前記容器の底面側に向かって漸次縮径され、
前記容器の上端部の内径をD1とし、前記容器の底面の内径をD2とし、前記押体の上面の外径をd1とし、前記押体の下面の外径をd2としたとき、D1>d2>d1>D2の関係を満たすことを特徴とする請求項4に記載のインキの吐出方法。
【請求項6】
昇降部材の移動を停止すると共に、前記昇降部材を押体から離間し、バルブを閉として容器を保管する保管工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のインキの吐出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−238109(P2007−238109A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59610(P2006−59610)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(592133519)株式会社アルファー技研 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(592133519)株式会社アルファー技研 (4)
【Fターム(参考)】
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