説明

インクジェットインキ受容層形成用コート剤、それを用いた記録媒体及び印刷物

【課題】本発明は、耐水性に優れるとともに、画像の白抜け・白スジが抑制され、高い表面光沢性を有し、優れた画像形成性を有するインクジェットインキ受容層形成用コート剤、及びそれを用いてなる画像形成用記録媒体、さらには前記媒体上にインクジェット印刷されてなる印刷物を提供することを課題とする。
【解決手段】既架橋エマルジョン(A)とアニオン性水溶性樹脂(B)とを含むことを特徴とする、インクジェットインキ受容層形成用コート剤によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインキを使用して画像形成するためのインキ受容層形成用コート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は騒音の発生が少なく、高速印字、多色印刷が可能であり、近年、急速に普及している。インクジェットインキを受容する記録媒体としては、従来、紙やプラスチックフィルムなどの基材表面にインキ受容層を設けたもの等が使用されている。
【0003】
インキ受容層には、インキの吸収性が速やかであるだけでなく、インキの定着性、発色性、鮮明性、画像階調性が優れていることが要求される。更に、記録媒体にインクジェット印刷を行った印刷物に対しては、画像の耐久性、特に耐水性に優れることが要求される。
【0004】
又、インクジェット印刷方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を吐出し、記録媒体上にインキのドットを付着させて文字や画像を得る記録方式であるが、インキ液滴の不吐出、インキドットの位置及び体積のずれ等により、記録媒体上にドット抜け(インキのドットが存在すべき箇所に、インキのドットが存在しない状態)が発生する場合がある。
ドット抜けは、印刷領域をドットで埋め尽くすベタ印刷において特に問題となり、印刷画像に白抜け・白スジを生じさせ、高精細な画像を得ることができない。
【0005】
上記白抜け・白スジの防止手段としては、単位面積当たりのドット数を増加させる方法がある。しかし、この方法は、記録媒体に過剰な量のインキを付与することになるため、インキの乾燥性や画質の悪化を招くおそれがあり、又、ランニングコストの点でも好ましくない。
【0006】
少ないインキ量で、白抜け・白スジの少ない印刷画像を提供し得る印刷技術は未だ提供されていない。
【0007】
画像の耐水性に優れ、かつ、できるだけ少ないインキ量で、白抜け・白スジが少ない印刷画像を提供するには、基材表面に、インキドットが、他色のインキドットと接して滲まない程度に、適度に拡がり、定着したインキドットが、水によって剥がれることがないようなインキ受容層を形成しなければならない。
【0008】
即ち、インキのヌレが良く、適度に広がる親水部と、過度にインキが広がらず、乾燥後に耐水性を発現する疎水部とが、バランス良く、均一に配置された受容層を、基材表面に形成することが必要である。親水性成分と疎水性成分とを単に混合するだけでは、多色のインキドットにより形成される高精彩な画像が得られるインキ受容層を提供することはできない。
【0009】
又、インクジェットインキは、印刷物としての耐久性が要求される場合は、着色剤として顔料を配合したものが使用される。顔料インキは、顔料が溶媒に不溶であるため、インキ中での顔料分散を保つために顔料分散樹脂を用いて溶媒中での分散安定化を図っている。
【0010】
顔料分散樹脂は、一般に、アニオン性のものが多く使用されているが、例えば、このようなアニオン性の顔料分散樹脂を含むインクジェットインキを使用して、カチオン性の化合物からなる受容層に画像を形成した場合、受容層表面で顔料が凝集し、インキのドットが十分に拡がらず、白抜け・白スジが少ない印刷画像を提供することが困難である。
【0011】
一方、特許文献1〜3では、製紙の工程の中で、紙の表面サイジングを行う場合があり、この表面サイジング剤として、スチレン―マレイン酸共重合物、カルボキシル基含有アクリル樹脂等のアニオン性化合物が提案されている。これらはインキのヌレ性に優位に働くカルボキシル基を有しているため、インキのドットを拡げる効果がある。しかし、これらは耐水性に劣るという欠点があった。
【0012】
また、多くのインキ受容層形成材料は、インキを吸収し定着させるインキ受容部分が細孔空隙構造や多孔質構造となっており、記録画像表面に光沢が得られないので、記録画像表面に光沢が必要である場合には向かない。
一方、インキ受容部分が細孔空隙構造や多孔質構造をとらない場合、光沢や透光性を得ることは容易であるが、一般的にインク吸収性が劣るため、インク乾燥定着時間が長く、ニジミやビーディングによる画像不良を引き起こす。さらに、乾燥が遅いため、記録画像に接触すると接触したものがインクにより汚濁したり、記録画像が損なわれたりするという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−227093号公報
【特許文献2】特開2003−227098号公報
【特許文献3】特開2001−232932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、耐水性に優れるとともに、画像の白抜け・白スジが抑制され、高い表面光沢性を有し、優れた画像形成性を有するインクジェットインキ受容層形成用コート剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示すインクジェットインキ受容層形成用コート剤により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、第1の発明は、既架橋エマルジョン(A)とアニオン性水溶性樹脂(B)とを含むことを特徴とする、インクジェットインキ受容層形成用コート剤に関する。
【0017】
また、第2の発明は、既架橋エマルジョン(A)の固形分100重量部に対して、アニオン性水溶性樹脂(B)を0.1〜50重量部含むことを特徴とする第1の発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤に関する。
【0018】
また、第3の発明は、 既架橋エマルジョン(A)が、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(a)、カルボキシル基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(b)および炭素数1〜12の非極性基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(c)を含むエチレン性不飽和単量体を乳化重合してなることを特徴とする第1または第2の発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤に関する。
【0019】
また、第4の発明は、アニオン性水溶性樹脂(B)の重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする第1〜第3いずれかの発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤に関する。
【0020】
また、第5の発明は、アニオン性水溶性樹脂(B)の酸価が、100〜1,000mgKOH/gであることを特徴とする第1〜第4いずれかの発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤に関する。
【0021】
さらに、第6の発明は、基材の少なくとも一方の面に、第1〜第5いずれかの発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤から形成されるインクジェットインキ受容層が設けられてなる画像形成用記録媒体に関する。
【0022】
さらにまた、第7の発明は、第6の発明の画像形成用記録媒体上に、インクジェットインキによって印刷されてなる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を基材に塗布することにより、耐水性に優れるとともに、画像の白抜け・白スジが抑制され、高い表面光沢性を有し、優れた画像形成性を有する印刷記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤の主成分である既架橋エマルジョン(A)について説明する。
【0025】
なお、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、それぞれ、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタアクリロイルオキシ」を示すものとする。
【0026】
本発明における「既架橋エマルジョン」とは、エマルジョン粒子の内部が架橋された状態にあるエマルジョンのことをいい、より具体的には、その原料として、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体を用いることにより得られるものである。
【0027】
本発明における既架橋エマルジョン(A)は、好ましくは、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(a)、カルボキシル基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(b)および炭素数1〜12の非極性基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(c)を含むエチレン性不飽和単量体を乳化重合してなる。
【0028】
本発明で使用される、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(a)は、乳化重合法により得られる、アクリルエマルジョン粒子内部に架橋構造を導入するものであり、例えば、
エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、若しくはエチレンオキサイド変性リン酸トリ(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド変性リン酸ポリ(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、若しくは2−エチル,2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等などの(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、若しくはグリセロールトリ(メタ)アクリレートなどのトリオールのポリ(メタ)アクリレート類;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリオールポリ(メタ)アクリレート、若しくはポリカーボネートポリオールポリ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート類;
ジ(メタ)アクリル酸亜鉛などのポリ(メタ)アクリル酸金属塩類;
ブタジエン、イソプレン、若しくはクロロプレンなどのジエン類;
ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;
ジアリルフタレートなどのジアリル化合物、または、
アリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルなどの二つの異なる種類のエチレン性不飽和基を有する単量体などが挙げられ、耐水性とエマルジョン粒子の安定性の観点から、ジビニルベンゼン、またはジアリルフタレートが好ましい。これらの単量体は1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0029】
本発明において、単量体(a)の含有量は、耐水性およびエマルジョン粒子の安定性の観点から、乳化重合に供する単量体の合計100重量%中、0.1〜5重量%が好ましく、0.1〜4重量%がより好ましい。
【0030】
本発明で使用される、カルボキシル基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(b)は、受容層とインキとのヌレ性を増大させる目的で共重合される。
単量体(b)の具体例としては、例えば、
アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、若しくはω−カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸類、又はその塩類が挙げられ、共重合性の観点からアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、若しくはマレイン酸が好ましい。これらの単量体は1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0031】
本発明において、単量体(b)の含有量は、受容層上のインキドットの広がりおよび耐水性の観点から、乳化重合に供する単量体の合計100重量%中、20〜80重量%が好ましく、25〜80重量%がより好ましい。20重量%より少ないと、インキのヌレ性が不足し、インキのドットが受容層上で十分に広がらず、白ぬけ、白スジが発生して問題となる場合がある。また、80重量%を超えると、耐水性が不足して問題となる場合がある。
【0032】
本発明で使用される、炭素数1〜12の非極性基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(c)は、受容層の耐水性、及びインキの滲み防止性を向上する目的で共重合される。
ここに、本発明においては、1つのエチレン性不飽和基とカルボキシル基と炭素数1〜12の非極性基とを有する単量体は、単量体(b)として取扱うものとする。
なお、ここでいう非極性基とは、極性が低く、水となじみにくい炭素数1〜12の炭化水素基を指す。
単量体(c)の具体例としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、若しくはラウリル(メタ)アクリレート等の鎖状アルキル(メタ)アクリレート、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、若しくはジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、等の環状アルキル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する(メタ)アクリレート、
又は、
スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、若しくは1−ブチルスチレン、等のスチレン系単量体が挙げられる。
これらの単量体は1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0033】
炭素数が12より多い非極性基を有するエチレン性不飽和単量体を使用すると、疎水性が高すぎて、インキ受容層上におけるインキのヌレ性が悪くなる。
【0034】
本発明においては、共重合性、他の成分との相溶性、造膜性、塗膜物性を調節するために、単量体(a)〜(c)以外に、公知の単量体を共重合することができる。
例えば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)フタレート、
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート類、
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、若しくはN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、若しくはポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等のエーテル構造を有する(メタ)アクリレート類、
グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,2−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、若しくは4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート類、
ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、若しくはビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、若しくはγ−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロキシシラン類、
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、若しくはテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、
(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類、又は、
アクリロニトリル等が挙げられるが、
これらの単量体に限定されず、又、これらの単量体は1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0035】
本発明の既架橋エマルジョン(A)は、従来既知の乳化重合法により合成される。乳化重合法では、ポリマーの重合反応が水中、又は親水性の有機溶剤を含む水中で進行するため、疎水性のモノマーと親水性のモノマーを共重合する場合には、エマルジョン粒子の中心部は疎水性が高く、粒子の表面部は親水性が高い構造になる。
【0036】
即ち、エマルジョン粒子の中心部は耐水性が高く、さらに、1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(a)を共重合することにより架橋構造が導入され、より耐水性を高めることができる。
【0037】
本発明の既架橋エマルジョン(A)は、エマルジョン粒子内部に架橋構造が導入された疎水部を有し、エマルジョン粒子表面部に親水基であるカルボキシル基を有していることから、塗膜になった時に、均一且つバランス良く、インキのヌレ性に優位に働くアニオン性の親水部と、疎水部とを配置することができる。これにより、インキのドットを適度に広げ、高精彩な画像を提供できる。
【0038】
又、土台となるエマルジョン粒子内部の耐水性が優れていることから、親水基を有していても、画像の耐水性を損なうことがない。
【0039】
本発明において乳化重合の際に用いられる界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を有する反応性界面活性剤やエチレン性不飽和基を有しない非反応性界面活性剤等、従来公知のものを任意に使用することができる。
【0040】
エチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性界面活性剤としては、例えば、
アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104等);
スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2等);
アルキルフェニルエーテル系若しくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、等);
(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30等);又は、
リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP−70等)が挙げられる。
【0041】
本発明で用いることのできるノニオン系反応性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);
アルキルフェニルエーテル系若しくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);
(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
【0042】
非反応性ノニオン系界面活性剤としては、例えば、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、若しくはポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、若しくはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、若しくはソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;
ポリオキシエチレンモノラウレート若しくは、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;
オレイン酸モノグリセライド、若しくはステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;又は、
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、若しくはポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等が挙げられる。
【0043】
又、非反応性アニオン系界面活性剤としては、例えば、
オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;
ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;
モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、若しくはポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類;又は、
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類等が挙げられる。
【0044】
これらの界面活性剤は、1種又は2種以上を併用して使用することができる。
【0045】
本発明において用いられる界面活性剤の使用量は、必ずしも限定されるものではなく、既架橋エマルジョン(A)が最終的にインキ受容層形成用組成物として使用される際に求められる物性に従って適宜選択できる。例えば、エチレン性不飽和単量体の合計100重量部に対して、界面活性剤は通常0.1〜30重量部であることが好ましく、0.3〜20重量部であることがより好ましく、0.5〜10重量部の範囲内であることが更に好ましい。
【0046】
本発明の既架橋エマルジョン(A)を得るための乳化重合に際しては、水溶性保護コロイドを併用することもできる。水溶性保護コロイドとしては、例えば、
部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、若しくは変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、若しくはカルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;又は、
グアガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらは、単独でも複数種併用の態様でも利用できる。水溶性保護コロイドの使用量としては、エチレン性不飽和単量体の合計100重量部当り0.1〜5重量部であり、更に好ましくは0.5〜2重量部である。
【0047】
本発明の既架橋エマルジョン(A)を得るに際して用いられる重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、
ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、若しくはジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;又は、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、若しくは1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル等のアゾビス化合物を挙げることができる。
これらは1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.1〜10.0重量部の量を用いるのが好ましい。
【0048】
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、
過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、若しくは2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等、従来既知のものを好適に使用することができる。
又、乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、
アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、若しくはホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物、
チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、若しくはメタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物、
塩化第一鉄、ロンガリット、又は、二酸化チオ尿素等を例示できる。
【0049】
これら還元剤は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.05〜5.0重量部の量を用いるのが好ましい。なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
【0050】
本発明において、乳化重合の際に使用される水性媒体としては、水が挙げられ、親水性の有機溶媒も本発明の目的を損なわない範囲で使用できる。
【0051】
更に必要に応じて、緩衝剤として、
酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、若しくは重炭酸ナトリウム等が、
又、連鎖移動剤として、
オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、若しくはt−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類が適量使用できる。
【0052】
本発明においては、カルボキシル基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(b)の酸性官能基の全部又は一部を、重合前や重合後に塩基性化合物で中和することができる。
中和する際、アンモニア; トリメチルアミン、トリエチルアミン、若しくはブチルアミン等のアルキルアミン類; 2−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、若しくはアミノメチルプロパノール等のアルコールアミン類;又は、モルホリン等の塩基で中和することができる。
【0053】
本発明の既架橋エマルジョン(A)の平均粒子径は、粒子の安定性の点から、10〜500nmであることが好ましく、30〜250nmであることがより好ましい。又、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると粒子の安定性が損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5重量%以下であることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。
【0054】
動的光散乱法による平均粒子径の測定は、以下のようにして行うことができる。既架橋エマルジョンの分散液は固形分に応じて200〜1000倍に水希釈しておく。該希釈液約5mlを測定装置[(株)日機装製 マイクロトラック]のセルに注入し、サンプルに応じた溶剤(本発明では水)及び樹脂の屈折率条件を入力後、測定を行う。この時得られた体積粒子径分布データ(ヒストグラム)のピークを本発明の平均粒子径とする。
【0055】
本発明におけるインクジェットインキ受容層形成用コート剤は、前述の既架橋エマルジョン(A)の1種から構成されても良いが、2種以上を併用して使用することが好ましい。例えば、芳香族系の単量体(c)を共重合したものと、芳香族以外の単量体(c)を共重合したものとを、併用して使用することが好ましい。
【0056】
本発明におけるアニオン性水溶性樹脂(B)は、カルボキシル基、スルフォン酸基、スルフィン酸基、ホスフォン酸基、ホスフィン酸基等の酸性基を有する樹脂であることが好ましく、既架橋エマルジョン(A)との相溶性の観点から、カルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。また、本発明におけるアニオン性水溶性樹脂(B)は、カルボキシル基を1個に限らず、2個以上有している単量体を含む単量体組成物を重合してなる樹脂であることが好ましい。カルボキシル基を有する単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等があげられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
本発明におけるアニオン性水溶性樹脂(B)は、カルボキシル基等の酸性基を有する単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。カルボキシル基等の酸性基を有する単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリルアミド等が挙げられ、耐水性の観点から、スチレンが好ましい。
【0058】
本発明のアニオン性水溶性樹脂(B)として、インキ受容層とインキとのヌレ性の観点から、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・マレイン酸共重合体、アクリル酸・ビニルスルホン酸共重合体等が好ましく、さらに、既架橋エマルジョン(A)との相溶性の観点から、ポリアクリル酸、アクリル酸・マレイン酸共重合体がより好ましい。また、本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤の特性を損なわない範囲であれば、他の重合体を配合してもよい。他の重合体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、スチレン等のエチレン性不飽和単量体から選ばれる単量体を重合してなる樹脂が挙げられる。
【0059】
本発明のアニオン性水溶性樹脂(B)の重量平均分子量は、既架橋エマルジョン(A)との相溶性の観点から、1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、さらに、インキ受容層形成用コート剤の塗膜のレベリング性の観点から、1,500〜50,000の範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明のアニオン性水溶性樹脂(B)の酸価は、インキ受容層とインキとのヌレ性の観点から、100〜1,000の範囲であることが好ましく、さらに、耐水性、耐ブロッキング性の観点から、100〜400の範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明のアニオン性水溶性樹脂(B)は、酸性基の全部又は一部を、重合前や重合後に塩基性化合物で中和することができる。好ましい塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩類、もしくは、アンモニア、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等のアミン類が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明のアニオン性水溶性樹脂(B)は、水溶性溶剤中で、通常の溶液重合法により合成することができる。また、非水溶性溶剤中で、通常の溶液重合法により非水溶性樹脂を合成した後に、塩基性化合物で酸性基の全部または一部を中和して、水溶性溶剤中へ転相して得ることもできる。
【0063】
本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤は、既架橋エマルジョン(A)の固形分100重量部に対して、アニオン性水溶性樹脂(B)を0.1〜50重量部含む。0.1重量部未満であると十分な光沢性を得ることができず、50重量部を超えると受容層の空隙率が減少して、十分な吸水性を得ることができず、にじみやビーディングなどの画像不良を起こす。
【0064】
本発明におけるインクジェットインキ受容層形成用コート剤は、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、又は粘性調整剤等を必要に応じて配合できる。これらの添加剤については従来公知の化合物から目的に応じて任意に選択することができる。
【0065】
成膜助剤は、塗膜の形成を助け、塗膜が形成された後においては比較的速やかに蒸発揮散して塗膜の強度を向上させる一時的な可塑化機能を担うものであり、沸点が110〜200℃の有機溶剤が好適に用いられる。
具体的には、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール、ジブチルカルビトール、又は、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びプロピレングリコールモノブチルエーテルは少量で高い成膜助剤効果を有するため特に好ましい。これら成膜助剤は、インクジェットインキ受容層形成用コート剤中に0.5〜15重量%含まれることが好ましい。
【0066】
粘性調整剤は、既架橋エマルジョン100重量部に対して1〜100重量部用いてもよい。粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、又はカゼイン等が挙げられる。
【0067】
さらに、それ以外の材料として、例えば、
ポリビニルアルコール、カゼイン、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロース、若しくはアクリルアミド系ポリマー等の樹脂、又は、
コロイダルシリカ、若しくはシリカ等の無機フィラーと併用してもよい。
【0068】
コロイダルシリカは、既架橋エマルジョン(A)を合成した後に配合してもよく、既架橋エマルジョン(A)の合成時に、水性媒体中にコロイダルシリカの水分散体を配合しておいてもよい。
【0069】
本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤は、更に、架橋剤を含んでいてもよく、例えば、メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ヒドロキシプロピレン尿素、多官能イソシアネート化合物、又は、多官能エポキシ化合物等が挙げられる。
【0070】
本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を塗工する基材としては、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、光沢紙、新聞用紙、各種情報用紙、各種特殊紙、若しくは板紙等の紙、又は、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテート、トリアセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、若しくはポリプロピレン等のプラスチックからなるフィルム等を使用することができる。
前記基材の表面が滑らかな表面であっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。
又、これらの基材の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘着層等を設けても良く、又印字後、印字面に粘着層等を設けても良い。剥離粘着層とは、剥離シートと粘着層が重ねられた層である。
【0071】
本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤は、前記基材に公知の方法で塗工することができ、例えば、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スプレーコート法、又はグラビアコーター法、カーテンコーター法等が挙げられる。
【0072】
上記塗工により、基材上にインクジェットインキ受容層が形成され、画像形成用記録媒体を得ることができる。当該記録媒体上に、インクジェットインキによる印刷を施すことにより、画像が形成された印刷物を好ましく得ることができる。
【0073】
なお、インクジェットインキ受容層は、基材の一方の面のみに設けられていてもよく、両方の面に設けられていてもよい。
【0074】
更に、必要に応じて、インキ受容層の平滑化、光沢向上あるいは表面強度向上のためにスーパーカレンダー処理やキャスト処理等を施すこともできる。
【0075】
又、本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を、インクジェットプリンターのインクカートリッジに充填し、他の色のインクと同時に、又は先んじて、インクジェット方式で印刷することもできる。
【0076】
本発明のインクジェットインキ受容層の塗工量としては総量として0.2〜50g/m2 、より好ましくは1〜30g/m2 の範囲である。塗工量が0. 2g/m2 に満たない場合には、インキ受容層を設けなかった場合に比べてインキの発色性の点で効果が十分ではなく、一方、50g/m2 を越えて設けた場合には、カールの発生が著しくなる。塗工量を厚さで表した場合の塗工量は0.5〜100μmの厚みになる範囲が好適である。
なお、上記塗工量は、固形分換算における値である。
【0077】
以上説明した本発明の画像形成用記録媒体にインクジェット記録を行う場合のインキそれ自体は、公知のものが使用可能である。例えば、
水系インキ、溶剤系インキ、無溶剤系インキ、水系顔料インキ、溶剤系顔料インキ、無溶剤系顔料インキ、
又は、UV硬化性インキ、EB硬化性インキ等のラジエーション硬化性インキが挙げられ、環境、及び印刷物の耐久性の観点から、水性顔料インキを使用することが好ましい。
【0078】
水性顔料インキとしては、顔料、顔料分散樹脂、水、水性溶媒を含み、必要に応じて、水性のエマルジョン等のバインダー樹脂、水分散性ワックス等の滑剤、界面活性剤、pH調整剤、緩衝剤、防黴剤、消泡剤、キレート剤、浸透剤、尿素、ジメチル尿素等の従来既知の添加剤を含んでもよい。
【0079】
水性顔料インキに含まれる顔料としては、従来既知のものが使用できる。
【0080】
水性顔料インキに含まれる黒色の顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2乃至10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、
No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(以上、キャボット製)、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
【0081】
水性顔料インキに含まれるイエローの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、13、16、74、83、109、128、155等が挙げられる。
【0082】
水性顔料インキに含まれるマゼンタの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Red 5、7、12、31、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122;キナクリドン固溶体、147、150、269、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
【0083】
水性顔料インキに含まれるシアンの顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。
【0084】
水性顔料インキに含まれる顔料としては、上記以外の色の顔料、及び自己分散型顔料等も使用することができる。これらの顔料は、各色インキにおいて、1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0085】
水性顔料インキに含まれる顔料の含有量としては、インキ中に、重量比で、1〜20重量%、より好ましくは2〜12重量%の範囲である。
【0086】
水性顔料インキに含まれる顔料分散樹脂としては、従来既知のものが使用できるが、一般に、(メタ)アクリル酸共重合物が使用される。これは、顔料表面に吸着した(メタ)アクリル酸共重合物がイオン化した際の電荷反発により、水性溶媒中で、顔料どうしの電荷反発が起こり、安定した顔料分散状態を保つことができるためと考えられる。
【0087】
水性顔料インキに含まれる水溶性有機溶剤としては、従来既知のものが使用できるが、溶媒の吸収性の低い基材の場合には、浸透性の観点から、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルもしくはトリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルが挙げられる。
より好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
特に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルは、紙への浸透が極めて速いが、一方、顔料の分散性を低下させる傾向も強い。そこで、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどと比率を調整して併用するのが良いと考えられる。
【0088】
水性顔料インキに含まれる水溶性有機溶剤の含有量は、一般的には、インキの全重量の3〜60重量%の範囲であり、より好ましくは3〜50重量%の範囲である。
又、水の含有量としては、インキの全重量の10〜90重量%、更に好ましくは、30〜80重量%の範囲である。
【0089】
水性顔料インキは水性のエマルジョンを含有することもできる。
水性のエマルジョンを含有することで、インキ粘度をあまり上昇させずに、印字した塗膜の耐性を向上させることができる。これにより、耐水性、耐溶剤性、耐擦過性などが向上する。水溶性の樹脂を添加しても、ある程度耐性の向上は期待できるが、粘度が上昇してしまう傾向にある。インクジェットインキの場合、ノズルからインキを吐出できる粘度には好適な範囲があり、あまり粘度が高いとインキを吐出することができなくなることがあるため、粘度の上昇を抑えることは重要である。
【0090】
上記したような水性のエマルジョンのインキ中における含有量は、エマルジョンの固形分で、インキの全重量の2〜30重量%の範囲が好ましく、3〜20重量%の範囲がより好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中、「部」は、「重量部」を、「%」は、「重量%」を、それぞれ表す。
【0092】
<ビニル系エマルジョンの合成>
合成例1
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水136.2部、界面活性剤としてRA−9607(日本乳化剤(株)製)の24%水溶液1.6部、及び緩衝剤として重曹0.13部を仕込み、別途、ジアリルフタレート0.5部、メタクリル酸35部、アクリル酸5部、エチルアクリレート30部、ブチルアクリレート29.5部、イオン交換水80部、及び界面活性剤として前述のRA−9607の24%水溶液6.4部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの5%を更に加えた。内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液6部の10%を添加し重合を開始した。
反応系内を75℃で5分間保持した後、内温を75〜80℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液の残りを2時間かけて滴下し、更に2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%を超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。イオン交換水で固形分を30%に調整してビニル系エマルジョンを得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
【0093】
表1に示す単量体組成で、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜6のビニル系エマルジョンを得た。
【0094】
<アニオン性水溶性樹脂の合成>
合成例7
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール 150部を仕込み83℃に昇温,アクリル酸40部、スチレン10部、エチルアクリレート50部、及びアゾビスイソブチロニトリル 3部を2時間で滴下した後,83℃で4時間反応させた。次に,イソプロピルアルコールの全量を減圧留去させ,反応生成物中のカルボキシル基と当量のアンモニアを含有するアンモニア水300部を添加し,樹脂水溶液(固形分25%)を得た。
【0095】
合成例8、9、10
表2に示す単量体組成で、合成例7と同様の方法で合成し、合成例8〜10の樹脂水溶液を得た。
【0096】
なお、重量平均分子量(Mw)は、GPC測定で求めたSHODEX P−82(プルラン:多糖類高分子化合物)換算の重量平均分子量であり、GPC測定条件は以下のとおりである。
装置:Shodex GPC System−GPC-101〔昭和電工(株)製〕
カラム:Shodex OHPAK-SB806M−HQを3本、Shodex OHPAK-SB802.5−HQを1本〔昭和電工(株)製〕の合計4本を連結して使用。
溶媒:リン酸緩衝水溶液
流速:1ml/min
温度:40℃
試料濃度:0.1wt%
試料注入量:100μl
合成例21〜23の重量平均分子量は表2に示すとおりである。
【0097】
<インクジェットインキ受容層形成用コート剤の調製例>
実施例1
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製「アクアリックYS100」、重量平均分子量5000、中和前理論酸価779、固形分45%)100部に、精製水350部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが25重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0098】
実施例2
実施例1の、合成例1を合成例2に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0099】
実施例3
実施例1の、合成例1を合成例3に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0100】
実施例4
実施例1の、合成例1を合成例4に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0101】
実施例5
実施例1の、合成例1を合成例5に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0102】
実施例6
実施例1の、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製「アクアリックYS100」)をポリアクリル酸(日本触媒社製「アクアリックHL415」、重量平均分子量10000、酸価779、固形分45%)に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0103】
実施例7
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。ポリイタコン酸ナトリウム(東亜合成社製「ジュリマーAC70N」、重量平均分子量17000、中和前理論酸価863、固形分39.7%)100部に、精製水297部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが25重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0104】
実施例8
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。合成例7で得られた水溶性樹脂の水溶液100部に、精製水150部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが10重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0105】
実施例9
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。合成例8で得られた水溶性樹脂の水溶液100部に、精製水150部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが45重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0106】
実施例10
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。合成例9で得られた水溶性樹脂の水溶液100部に、精製水150部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが5重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0107】
実施例11
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。合成例10で得られた水溶性樹脂の水溶液100部に、精製水150部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが25重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0108】
実施例12
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製「アクアリックYS100」、重量平均分子量5000、中和前理論酸価779、固形分45%)100部に、精製水350部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが60重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0109】
比較例1
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0110】
比較例2
比較例1の、合成例1を合成例3に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0111】
比較例3
実施例1の、合成例1を合成例6に変えた他は同様にして、インクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
【0112】
比較例4
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。ポリエチレングリコール(三洋化成社製「PEG-2000」、重量平均分子量2000、固形分100%)10部に、精製水90部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが25重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
なお、上記「PEG-2000」は、ノニオン性水溶性樹脂である。
【0113】
比較例5
合成例1で得られたビニル系エマルジョン100部に、精製水200部を配合し、固形分10%のビニル系エマルジョン液(X)を調製した。ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(日東紡社製「PAS−H−1L」、重量平均分子量8500、固形分28%)100部に、精製水180部を配合し、固形分10%の水溶液(Y)を調製した。X100重量部に対して、Yが25重量部になるように混合した固形分10%のインクジェットインキ受容層形成用コート剤を調製した。
なお、上記「PAS−H−1L」は、カチオン性水溶性樹脂である。
【0114】
<水性顔料インキ>
顔料分散体、及びインキの作製
シアン顔料(東洋インキ製造社製「リオノールブルー7351」)15部、アクリル樹脂系顔料分散剤(ジョンソンポリマー社製「PDX−6101」)1.5部、グリセリン5.0部、精製水78.5部をサンドミルにて2時間分散し、顔料の水性分散体を得た。得られた顔料分散体を含む下記の成分をディスパーで撹拌、混合した後、孔径0.45μmのニトロセルロース製メンブランフィルターで濾過し、シアン記録液を得た。
顔料分散体 20部
グリセリン 10部
1,3−プロパンジオール 5部
アクリル樹脂エマルジョン 2.3部
(日本ポリマー社製「F−157」、固形分40%)
水 62.7部
【0115】
<記録媒体、及びそれを用いた印刷物の作製例>
実施例1〜7と比較例1〜5の各インクジェットインキ受容層形成用コート剤を、コート紙[王子製紙(株)製、OKトップコートプラス]に、ワイヤーバーNo.2によって塗工し、60℃の熱風オーブンで2分間乾燥して、インクジェットインキ受容層を積層した記録媒体を作製した。次に、上記水性顔料インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに充填して、パターン印字を行い、評価用印刷物を作製した。
【0116】
表3に、白抜け・白スジ、耐水性、及び光沢の評価結果を示す。以下に具体的な評価方法を説明する。
【0117】
<白抜け・白スジ>
印字率100%のベタ印刷部において、目視で、明らかに白抜け・白スジが発生しているものを×、若干白抜け・白スジが発生しているが使用可のものを△、白抜け・白スジがないものを○とした。特に、白抜け・白スジがない上に、濃度ムラがなく均一なベタ印刷部が得られているものを◎とした。
【0118】
<耐水性>
印字率100%のベタ印刷部に、水をスポイトで一滴垂らし、1分後に水をティッシュペーパーでふき取った後、目視で、インキがとれてなくなっているものを×、インキがわずかにとれているが使用可のものを△、変化がないものを○とした。特に、目視での変化がなかったものの中で、さらに、水で濡らした綿棒で5回こすっても、目視での変化がないものを◎とした。
【0119】
<光沢性>
インクジェットインキ受容層の60°光沢をBYK-Gardner社製 micro−TRI−glossμにて測定し、65以上を〇、50〜64を△、49以下を×とした。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
表3の結果より、比較例1および2は水溶性樹脂を有さないため高い光沢性をえることができなかった。また、比較例3では、エマルジョンが架橋を有さないため耐水性が得られないことが分かる。また、比較例4は、水溶性樹脂がノニオン性樹脂であり、耐水性が得られないことが分かる。さらに、比較例5は、水溶性樹脂がカチオン性樹脂であるためアニオン性である既架橋エマルジョンと反応して白濁することから、光沢性を得られないことが分かった。
これに対して、本発明のインクジェットインキ受容層形成用コート剤は、白スジ白抜け、耐水性、及び光沢性が実用可能領域であり、中でも実施例1−9は各性能において、優れていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既架橋エマルジョン(A)とアニオン性水溶性樹脂(B)とを含むことを特徴とする、インクジェットインキ受容層形成用コート剤。
【請求項2】
既架橋エマルジョン(A)の固形分100重量部に対して、アニオン性水溶性樹脂(B)を0.1〜50重量部含むことを特徴とする、請求項1記載のインクジェットインキ受容層形成用コート剤。
【請求項3】
既架橋エマルジョン(A)が、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(a)、カルボキシル基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(b)および炭素数1〜12の非極性基と1つのエチレン性不飽和基とを有する単量体(c)を含むエチレン性不飽和単量体を乳化重合してなることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェットインキ受容層形成用コート剤。
【請求項4】
アニオン性水溶性樹脂(B)の重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載のインクジェットインキ受容層形成用コート剤。
【請求項5】
アニオン性水溶性樹脂(B)の酸価が、100〜1,000mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載のインクジェットインキ受容層形成用コート剤。
【請求項6】
基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜5いずれか記載のインクジェットインキ受容層形成用コート剤から形成されるインクジェットインキ受容層が設けられてなる画像形成用記録媒体。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成用記録媒体上に、インクジェットインキによって印刷されてなる印刷物。

【公開番号】特開2012−45738(P2012−45738A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187734(P2010−187734)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】