説明

インクジェットプリンタ

【課題】人手によるピエゾ膜の厚さ毎の分類作業を不要とすることができるインクジェットプリンタの提供。
【解決手段】各々がピエゾ膜を有する複数のピエゾ素子PZ1〜PZ5を備えるプリンタヘッドHと、ピエゾ膜の厚さとピエゾ膜に印加すべき印加電圧V1〜V10の大きさとの対応関係を記憶する不揮発性メモリと、複数のピエゾ膜の厚さに基づき、不揮発性メモリに記憶された対応関係を参照することにより、複数のピエゾ素子に印加すべき印加電圧を決定する決定部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドを有する
インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に記載されたような「圧電素子(ピエゾ素子)を有するインクジェッ
トプリンタ」を製造する工程では、まず、図5に示されるように、互いに膜厚が等しくあ
るべき複数のピエゾ膜PZ1、PZ2、....を製造する。次に、図6(A)〜(C)
に示されるように、ピエゾ膜PZ1、PZ2、...を膜厚毎に分類する。当該分類は、
換言すれば、前記複数のピエゾ膜PZ1、PZ2、...の中から、図6(A)に示され
るように、印加電圧V1で所定のインク吐出動作を行う(即ち、一定の大きさの液滴を吐
出する)、膜厚が薄い(例えば膜厚T1)ピエゾ膜PZ1、PZ5、...を集め、同様
にして、図6(B)に示されるように、印加電圧V2で所定のインク吐出動作を行う、膜
厚が標準的である(例えば膜厚T2)ピエゾ膜を集め、更に同様にして、図6(C)に示
されるように、印加電圧V3で所定のインク吐出動作を行う、膜厚が厚い(例えば膜厚T
3)ピエゾ膜を集めることである。
【0003】
【特許文献1】特開平5−338163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のインクジェットプリンタの製造方法では、前記ピエゾ膜
PZ1、PZ2、...の分類を行わなければならず、しかも、当該分類を人手により行
わなければならないことから、多大な工数を要するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記した課題を解決すべく、以下の適用例により実現される。
【0006】
[適用例1]
適用例1のインクジェットプリンタは、
各々がピエゾ膜を有する複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドと、
ピエゾ膜の厚さと当該ピエゾ膜に印加すべき印加電圧の大きさとの対応関係を記憶する
不揮発性メモリと、
前記複数のピエゾ膜の厚さに基づき、前記不揮発性メモリに記憶された対応関係を参照
することにより、前記複数のピエゾ素子に印加すべき印加電圧を決定する決定部と、を含
む。
【0007】
適用例1のインクジェットプリンタによれば、前記決定部が、前記プリンタヘッドを構
成する前記複数のピエゾ素子を構成する前記複数のピエゾ膜の厚さに基づき、前記不揮発
性メモリに記憶されている前記対応関係を参照することにより、前記複数のピエゾ膜に印
加すべき印加電圧を決定することから、従来のような、ピエゾ膜の分類を行うことを回避
することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例2のインクジェットプリンタは、適用例1のインクジェットプリンタであって、
前記不揮発性メモリは、FeRAMである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施例のインクジェットプリンタについて図面を参照して説明する。
【0010】
〈構成〉
図1は、実施例のインクジェットプリンタの構成を示す。実施例のインクジェットプリ
ンタIJPは、図1に示されるように、印刷ヘッドHと、制御部Cと、不揮発性メモリF
と、を含む。
【0011】
図2は、実施例の印刷ヘッドの構成を示す。印刷ヘッドHは、図2に示されるように、
印刷ヘッド本体Bと、当該印刷ヘッド本体Bに設けられた、複数(例えば、5個)のピエ
ゾ素子P1〜P5と、キャビティCV1〜CV5と、ノズルNZ1〜NZ5と、を有する

【0012】
ピエゾ素子P1は、図2に示されるように、ピエゾ膜PZ1(膜厚がT4)と、キャビ
ティ(インク室)CV1とを備え、ピエゾ膜PZ1に印加される印加電圧に応答してピエ
ゾ膜PZ1が変形することにより、キャビティCV1内のインクをノズルNZ1から吐出
する。
【0013】
他のピエゾ素子P2〜P5も同様な構成を有する。但し、ピエゾ膜PZ1〜PZ5の膜
厚は、互いに異なり、詳しくは、図2に示されるように、ピエゾ膜PZ1の膜厚が「T4
」であるのに対し、ピエゾ膜PZ2の膜厚は「T6」であり、ピエゾ膜PZ3の膜厚は「
T3」であり、ピエゾ膜PZ4の膜厚は「T10」であり、ピエゾ膜PZ5の膜厚は「T
1」である。
【0014】
図1に戻り、不揮発性メモリFは、例えば、EEROM、FeRAMであり、印加電圧
データDを記憶している。図3は、実施例の印加電圧データの内容を示す。印加電圧デー
タDは、図3に示されるように、ピエゾ膜PZの厚さと、当該ピエゾ膜に印加すべき印加
電圧の大きさとの対応関係を規定する。印加電圧データDは、例えば、ピエゾ膜PZの膜
厚が「T1」であるとき、当該ピエゾ膜に印加電圧「V1」を印加すべきであり、また、
ピエゾ膜PZの膜厚が「T2」であるとき、当該ピエゾ膜に印加電圧「V2」を印加すべ
きである旨を規定する。
【0015】
〈動作〉
実施例のインクジェットプリンタの製造及び動作について説明する。インクジェットプ
リンタIJPの製造について、まず、図5に図示の従来と同様に、複数のピエゾ膜PZ1
、PZ2、...を製造する。次に、従来と異なり、図6(A)〜(C)に図示された、
ピエゾ膜PZ1、PZ2、...の人手による分類を行うことなく、複数のピエゾ膜PZ
1、PZ2、...から無作為に5個のピエゾ膜、例えば、ピエゾ膜PZ1〜PZ5を抽
出する。更に、当該抽出されたピエゾ膜PZ1〜PZ5の膜厚を計測し、例えば、図2に
示されるように、ピエゾ膜PZ1の膜厚が「T4」であることを計測し、当該計測の結果
として、ピエゾ膜PZ1〜PZ5の各々の膜厚「T4」、「T6」、「T3」、「T10
」、「T1」を、不揮発性メモリFに一時的に記憶しておく。当該計測の後、当該ピエゾ
膜PZ1〜PZ5を用いて印刷ヘッドHを組み立て、更に、当該印刷ヘッドHを用いてイ
ンクジェットプリンタIJPを組み立てる。
【0016】
インクジェットプリンタIJPの動作(使用)については、当該インクジェットプリン
タIJPのユーザが当該インクジェットプリンタIJPを用いて印刷をしようとするとき
、当該インクジェットプリンタIJPでは、制御部Cが、前記不揮発性メモリFに記憶さ
れている、ピエゾ膜PZ1〜PZ5の厚さ「T4」、「T6」、「T3」、「T10」、
「T1」に基づき、不揮発性メモリFに記憶されている印加電圧データDを参照すること
により、ピエゾ膜PZ1〜PZ5に印加すべき印加電圧を決定する。
【0017】
図4は、実施例の制御部によるピエゾ膜への印加電圧の印加を示す。制御部Cは、例え
ば、ピエゾ膜PZ1の膜厚が「T4」であることから、当該ピエゾ膜PZ1に印加すべき
印加電圧を「V4」に決定し、また、ピエゾ膜PZ5の膜厚が「T1」であることから、
当該ピエゾ膜PZ5に印加すべき印加電圧を「V1」に決定する。当該決定の結果、制御
部Cは、ピエゾ膜PZ1〜PZ5の各々に、印加電圧「V4」、「V6」、「V3」、「
V10」、「V1」を印加する。これにより、図4に示されるように、ピエゾ素子P1〜
P5は、所定の大きさ、即ち、同じ大きさの液滴E1〜E5を吐出する。
【0018】
〈効果〉
上述したように、実施例のインクジェットプリンタIJPでは、制御部Cが、印刷ヘッ
ドHを構成するピエゾ膜PZ1〜PZ5の厚さに基づき、不揮発性メモリFに記憶されて
いる印加電圧データDを参照することにより、ピエゾ膜PZ1〜PZ5に印加する印加電
圧の大きさを決定することから、従来の製造工程における、人手によるピエゾ膜PZ1、
PZ2、...の厚さ毎の分類作業を不要とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例のインクジェットプリンタの構成を示す。
【図2】実施例の印刷ヘッドの構成を示す図。
【図3】実施例の印加電圧データの内容を示す図。
【図4】実施例の制御部によるピエゾ膜への印加電圧の印加を示す図。
【図5】従来のピエゾ膜の製造を示す図。
【図6】従来のピエゾ膜の分類を示す図。
【符号の説明】
【0020】
IJP…インクジェットプリンタ、H…印刷ヘッド、B…印刷ヘッド本体、P1〜P5
…ピエゾ素子、PZ1〜PZ5…ピエゾ膜、CV1〜CV5…キャビティ、NZ1〜NZ
5…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がピエゾ膜を有する複数のピエゾ素子を備えるプリンタヘッドと、
ピエゾ膜の厚さと当該ピエゾ膜に印加すべき印加電圧の大きさとの対応関係を記憶する
不揮発性メモリと、
前記複数のピエゾ膜の厚さに基づき、前記不揮発性メモリに記憶された対応関係を参照
することにより、前記複数のピエゾ素子に印加すべき印加電圧を決定する決定部と、を含
むことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記不揮発性メモリは、FeRAMであることを特徴とする請求項1記載のインクジェ
ットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−248310(P2009−248310A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94731(P2008−94731)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】