インクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法
【課題】画像の濃度ムラを目立たなくすることができるインクジェットヘッドの駆動装置を提供する。
【解決手段】 電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動装置であって、前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成する信号生成部と、乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する設定部と、を有する。
【解決手段】 電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動装置であって、前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成する信号生成部と、乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する設定部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を形成させるためのインクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インクが充填される複数のインク室と、各インク室に形成される複数のノズルと、各インク室に設けられ、各ノズルからインクを吐出させる複数の駆動素子とを有する。駆動素子としては、インク室の容積を変化させてインクを吐出させる圧電素子が用いられたり、インク室内に気泡を発生させてインクを吐出させる発熱素子が用いられたりする。
【0003】
このような構成のインクジェットヘッドでは、駆動素子に駆動パルス信号が印加されると、駆動素子が動作して、この駆動素子に対応したノズルからインク滴が吐出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1つのインクジェットヘッドを構成する複数のインク室やノズル径の寸法は、必ずしも均一ではない。また、各発熱素子の性能にもばらつきがある。このため、同一電圧の駆動パルス信号を複数の駆動素子に印加しても、ノズルから吐出されるインクの体積は必ずしも一定にはならない。これにより、インクの吐出によって形成された画像には、濃度ムラが発生してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動装置であって、前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成する信号生成部と、乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する設定部と、を有する。
【0006】
また、本発明の一態様は、電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動方法であって、前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成し、乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【図2】インクジェットヘッドの要部構成を示す断面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】圧電部材に印加される駆動波形を示す図である。
【図5】起点Aの遅延時間およびインクの吐出体積の関係を示す図である。
【図6】起点Bの遅延時間およびインクの吐出体積の関係を示す図である。
【図7】起点Aの遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す図である。
【図8】起点Bの遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す図である。
【図9】インクの吐出体積および吐出速度の関係を示す図である。
【図10】圧電部材の駆動波形を生成する回路を示す図である。
【図11】圧電部材の駆動波形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1はインクジェットプリンタ1の概略構成を示すブロック図である。インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド11と、インクジェットヘッド11を駆動する駆動装置12と、駆動装置12を含むインクジェットプリンタ1の各部を制御するプリンタコントローラ13とを有する。プリンタコントローラ13には、印字データを出力するホストコンピュータ2が接続されている。プリンタコントローラ13は、ホストコンピュータ2から印字データを受信すると、インクジェットプリンタ1の各部(インクジェットヘッド11や駆動装置12を含む)の動作を制御し、用紙の印字を行う。
【0009】
次に、インクジェットヘッド11の要部構成を、図2及び図3を用いて説明する。ここで、図3は図2のA−A断面図である。
【0010】
インクジェットヘッド11は、インクを貯留するための複数のインク室31を有しており、各インク室31は、隔壁32によって仕切られている。各インク室31には、インクを吐出するためのノズル33が設けられている。複数のノズル33は、一方向に並んで配置されている。インクジェットプリンタ1では、複数のノズル33の配列方向に対して直交する方向において、用紙およびインクジェットヘッド11を相対的に移動させている。
【0011】
各インク室31の底面は、振動板34によって形成されている。振動板34のうち、インク室31を形成する面とは反対側の面には、各インク室31に対応した圧電部材35が固定されている。振動板34および圧電部材35は、駆動素子としてのアクチュエータACTを構成し、圧電部材35は駆動装置12の出力端子3に電気的に接続されている。
【0012】
インクジェットヘッド11は、インク室31と連通している共通インク室36を有する。共通インク室36には、インク供給口37を経由してインク供給部(図示せず)からインクが注入される。これにより、共通インク室36、各インク室31およびノズル33には、インクが満たされる。
【0013】
なお、インクを吐出させる構造は、本実施形態で説明した構造に限るものではない。すなわち、圧電部材を用いてインクを吐出させる構造であればよい。具体的には、インク室31を仕切る隔壁を圧電部材で構成し、圧電部材を変形させてインク室の容積を変化させることにより、インクを吐出させることができる。
【0014】
次に、圧電部材32を駆動するときの駆動波形について、図4を用いて説明する。図4に示す駆動波形は、駆動装置12によって生成され、インクジェットヘッド11に入力される。
【0015】
図4において、駆動波形CH1は、基準の駆動波形を示す。駆動波形CH1の起点Aでは、出力電圧が0[V]から−V[V]に変化しており、インク室31の内圧を減少させている。これにより、共通インク室36からインク室31にインクが流れ、インク室31がインクで満たされる。起点Aから所定時間が経過した起点Bでは、出力電圧が−V[V]から0[V]に変化しており、インク室31の内圧を上昇させている。これにより、インク室31に満たされたインクが、ノズル33から吐出する。
【0016】
起点Bから所定時間が経過すると、出力電圧は、0[V]から+V[V]に変化する。図4に示す駆動波形CH1を圧電部材32に印加することにより、インクジェットヘッド11のノズル33からインクを断続的に吐出させることができる。
【0017】
駆動波形CH、CH3は、駆動波形CH1に対して、起点A,Bを遅延させた波形であり、駆動波形CH3における遅延時間は、駆動波形CH2における遅延時間よりも長い。
【0018】
基準の駆動波形CH1に対して、起点Aだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出体積の関係を図5に示す。図5に示すように、起点Aの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出体積が低下している。上述したように、起点Aから起点Bの間は、インク室31にインクを取り込むための期間となるため、起点Aが遅くなるほど、インク室31にインクが取り込まれにくくなる。このため、起点Aの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出体積が低下してしまう。
【0019】
基準の駆動波形CH1に対して、起点Bだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出体積の関係を図6に示す。図6に示すように、起点Bの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出体積が増加している。上述したように、起点Bが遅くなるほど、インク室31にインクが取り込まれる時間が長くなり、より多くのインクがインク室31に取り込まれることになる。この状態で、インクを吐出させれば、インクの吐出体積を増加させることができる。
【0020】
一方、図7には、基準の駆動波形CH1に対して起点Aだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す。図7に示すように、起点Aの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出速度が低下している。図8には、基準の駆動波形CH1に対して起点Bだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す。図8に示すように、起点Bの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出速度が低下している。
【0021】
図9には、インクの吐出速度と、インクの吐出体積との関係を示す図である。図5から図8で説明したように、起点Aでは、遅延時間が長くなるほど、吐出体積が減少するとともに、吐出速度が減少する。また、起点Bでは、遅延時間が長くなるほど、吐出体積が増加するとともに、吐出速度が減少する。起点Aおよび起点Bは、このような関係を有しているため、吐出速度を一定にしながら、吐出体積を変化させることができる。また、吐出体積を一定にしながら、吐出速度を変化させることができる。
【0022】
ここで、用紙に形成された画像の濃度ムラの主な原因がインクの吐出方向によるものであれば、インクの吐出体積を一定にしながら、インクの吐出速度にバラツキを持たせることができる。ここで、インクの吐出速度が変わると、インクが用紙に到達する位置が変化する。そこで、インクの吐出速度にバラツキを持たせて、用紙にインクが到達する位置にバラツキを持たせることにより、濃度ムラを目立たなくすることができる。
【0023】
また、用紙に形成された画像の濃度ムラの主な原因がインクの吐出方向によるものでなければ、インクの吐出速度を一定にしながら、インクの吐出体積にバラツキを持たせることができる。これにより、用紙にインクが到達する位置を保持しつつ、インクの量にバラツキを持たせることにより、濃度ムラを目立たなくすることができる。
【0024】
ここで、インクの吐出体積および吐出速度のうち、いずれを優先させるかを選択できるようにすることができる。すなわち、吐出体積を優先させるモードと、吐出速度を優先させるモードとを用意しておき、2つのモードをユーザに選択させることができる。
【0025】
次に、圧電部材32に印加する駆動波形を生成するための回路構成について、図10を用いて説明する。図10に示す回路は、駆動装置12に含まれる。
【0026】
第1タイミング決定部41は、図11に示すタイミングP0を決定する。第1タイミング決定部41は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT0の端子には、乱数発生器42で発生した乱数が入力される。第2タイミング決定部43は、図11に示すタイミングP1を決定する。第2タイミング決定部43は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT1の端子には、固定値としての時間T1が入力される。
【0027】
第3タイミング決定部44は、図11に示すタイミングP2を決定する。第3タイミング決定部44は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT2の端子には、固定値としての時間T2が入力される。第4タイミング決定部45は、図11に示すタイミングP3を決定する。第4タイミング決定部45は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT3の端子には、固定値としての時間T3が入力される。
【0028】
波形生成器46は、第1〜第4のタイミング決定部41,43,44,45で決定されたタイミングP0〜P3に基づいて、インクジェットヘッド11に印加する駆動波形を生成する。
【0029】
本実施形態では、各ノズル33からランダムにインクを吐出させることにより、用紙に形成された画像の濃度ムラを目立たなくすることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、ノズル33毎に駆動波形をランダムに生成しているが、これに限るものではない。具体的には、1つのノズル33において、1つの画像を形成する度に、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせることができる。また、複数のインク滴によって、1つの画素を形成するときには、複数のインク滴を吐出する間に、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせることができる。このバラツキを持たせるための駆動波形は、図11で説明した場合と同様である。
【0031】
ここで、複数のノズル33において、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせるモードと、1つの画素を形成するときに、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせるモードと、複数のインク滴によって1つの画素を形成するときに、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせるモードとを用意することができる。そして、3つのモードをユーザが適宜選択することができる。
【0032】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0033】
1:インクジェットプリンタ、11:インクジェットヘッド、12:駆動装置、
31:インク室、33:ノズル、ACT:アクチュエータ、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開平03―221459号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を形成させるためのインクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インクが充填される複数のインク室と、各インク室に形成される複数のノズルと、各インク室に設けられ、各ノズルからインクを吐出させる複数の駆動素子とを有する。駆動素子としては、インク室の容積を変化させてインクを吐出させる圧電素子が用いられたり、インク室内に気泡を発生させてインクを吐出させる発熱素子が用いられたりする。
【0003】
このような構成のインクジェットヘッドでは、駆動素子に駆動パルス信号が印加されると、駆動素子が動作して、この駆動素子に対応したノズルからインク滴が吐出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1つのインクジェットヘッドを構成する複数のインク室やノズル径の寸法は、必ずしも均一ではない。また、各発熱素子の性能にもばらつきがある。このため、同一電圧の駆動パルス信号を複数の駆動素子に印加しても、ノズルから吐出されるインクの体積は必ずしも一定にはならない。これにより、インクの吐出によって形成された画像には、濃度ムラが発生してしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動装置であって、前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成する信号生成部と、乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する設定部と、を有する。
【0006】
また、本発明の一態様は、電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動方法であって、前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成し、乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】インクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【図2】インクジェットヘッドの要部構成を示す断面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】圧電部材に印加される駆動波形を示す図である。
【図5】起点Aの遅延時間およびインクの吐出体積の関係を示す図である。
【図6】起点Bの遅延時間およびインクの吐出体積の関係を示す図である。
【図7】起点Aの遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す図である。
【図8】起点Bの遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す図である。
【図9】インクの吐出体積および吐出速度の関係を示す図である。
【図10】圧電部材の駆動波形を生成する回路を示す図である。
【図11】圧電部材の駆動波形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1はインクジェットプリンタ1の概略構成を示すブロック図である。インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド11と、インクジェットヘッド11を駆動する駆動装置12と、駆動装置12を含むインクジェットプリンタ1の各部を制御するプリンタコントローラ13とを有する。プリンタコントローラ13には、印字データを出力するホストコンピュータ2が接続されている。プリンタコントローラ13は、ホストコンピュータ2から印字データを受信すると、インクジェットプリンタ1の各部(インクジェットヘッド11や駆動装置12を含む)の動作を制御し、用紙の印字を行う。
【0009】
次に、インクジェットヘッド11の要部構成を、図2及び図3を用いて説明する。ここで、図3は図2のA−A断面図である。
【0010】
インクジェットヘッド11は、インクを貯留するための複数のインク室31を有しており、各インク室31は、隔壁32によって仕切られている。各インク室31には、インクを吐出するためのノズル33が設けられている。複数のノズル33は、一方向に並んで配置されている。インクジェットプリンタ1では、複数のノズル33の配列方向に対して直交する方向において、用紙およびインクジェットヘッド11を相対的に移動させている。
【0011】
各インク室31の底面は、振動板34によって形成されている。振動板34のうち、インク室31を形成する面とは反対側の面には、各インク室31に対応した圧電部材35が固定されている。振動板34および圧電部材35は、駆動素子としてのアクチュエータACTを構成し、圧電部材35は駆動装置12の出力端子3に電気的に接続されている。
【0012】
インクジェットヘッド11は、インク室31と連通している共通インク室36を有する。共通インク室36には、インク供給口37を経由してインク供給部(図示せず)からインクが注入される。これにより、共通インク室36、各インク室31およびノズル33には、インクが満たされる。
【0013】
なお、インクを吐出させる構造は、本実施形態で説明した構造に限るものではない。すなわち、圧電部材を用いてインクを吐出させる構造であればよい。具体的には、インク室31を仕切る隔壁を圧電部材で構成し、圧電部材を変形させてインク室の容積を変化させることにより、インクを吐出させることができる。
【0014】
次に、圧電部材32を駆動するときの駆動波形について、図4を用いて説明する。図4に示す駆動波形は、駆動装置12によって生成され、インクジェットヘッド11に入力される。
【0015】
図4において、駆動波形CH1は、基準の駆動波形を示す。駆動波形CH1の起点Aでは、出力電圧が0[V]から−V[V]に変化しており、インク室31の内圧を減少させている。これにより、共通インク室36からインク室31にインクが流れ、インク室31がインクで満たされる。起点Aから所定時間が経過した起点Bでは、出力電圧が−V[V]から0[V]に変化しており、インク室31の内圧を上昇させている。これにより、インク室31に満たされたインクが、ノズル33から吐出する。
【0016】
起点Bから所定時間が経過すると、出力電圧は、0[V]から+V[V]に変化する。図4に示す駆動波形CH1を圧電部材32に印加することにより、インクジェットヘッド11のノズル33からインクを断続的に吐出させることができる。
【0017】
駆動波形CH、CH3は、駆動波形CH1に対して、起点A,Bを遅延させた波形であり、駆動波形CH3における遅延時間は、駆動波形CH2における遅延時間よりも長い。
【0018】
基準の駆動波形CH1に対して、起点Aだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出体積の関係を図5に示す。図5に示すように、起点Aの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出体積が低下している。上述したように、起点Aから起点Bの間は、インク室31にインクを取り込むための期間となるため、起点Aが遅くなるほど、インク室31にインクが取り込まれにくくなる。このため、起点Aの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出体積が低下してしまう。
【0019】
基準の駆動波形CH1に対して、起点Bだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出体積の関係を図6に示す。図6に示すように、起点Bの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出体積が増加している。上述したように、起点Bが遅くなるほど、インク室31にインクが取り込まれる時間が長くなり、より多くのインクがインク室31に取り込まれることになる。この状態で、インクを吐出させれば、インクの吐出体積を増加させることができる。
【0020】
一方、図7には、基準の駆動波形CH1に対して起点Aだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す。図7に示すように、起点Aの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出速度が低下している。図8には、基準の駆動波形CH1に対して起点Bだけを遅延させた場合において、遅延時間およびインクの吐出速度の関係を示す。図8に示すように、起点Bの遅延時間が長くなるほど、インクの吐出速度が低下している。
【0021】
図9には、インクの吐出速度と、インクの吐出体積との関係を示す図である。図5から図8で説明したように、起点Aでは、遅延時間が長くなるほど、吐出体積が減少するとともに、吐出速度が減少する。また、起点Bでは、遅延時間が長くなるほど、吐出体積が増加するとともに、吐出速度が減少する。起点Aおよび起点Bは、このような関係を有しているため、吐出速度を一定にしながら、吐出体積を変化させることができる。また、吐出体積を一定にしながら、吐出速度を変化させることができる。
【0022】
ここで、用紙に形成された画像の濃度ムラの主な原因がインクの吐出方向によるものであれば、インクの吐出体積を一定にしながら、インクの吐出速度にバラツキを持たせることができる。ここで、インクの吐出速度が変わると、インクが用紙に到達する位置が変化する。そこで、インクの吐出速度にバラツキを持たせて、用紙にインクが到達する位置にバラツキを持たせることにより、濃度ムラを目立たなくすることができる。
【0023】
また、用紙に形成された画像の濃度ムラの主な原因がインクの吐出方向によるものでなければ、インクの吐出速度を一定にしながら、インクの吐出体積にバラツキを持たせることができる。これにより、用紙にインクが到達する位置を保持しつつ、インクの量にバラツキを持たせることにより、濃度ムラを目立たなくすることができる。
【0024】
ここで、インクの吐出体積および吐出速度のうち、いずれを優先させるかを選択できるようにすることができる。すなわち、吐出体積を優先させるモードと、吐出速度を優先させるモードとを用意しておき、2つのモードをユーザに選択させることができる。
【0025】
次に、圧電部材32に印加する駆動波形を生成するための回路構成について、図10を用いて説明する。図10に示す回路は、駆動装置12に含まれる。
【0026】
第1タイミング決定部41は、図11に示すタイミングP0を決定する。第1タイミング決定部41は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT0の端子には、乱数発生器42で発生した乱数が入力される。第2タイミング決定部43は、図11に示すタイミングP1を決定する。第2タイミング決定部43は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT1の端子には、固定値としての時間T1が入力される。
【0027】
第3タイミング決定部44は、図11に示すタイミングP2を決定する。第3タイミング決定部44は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT2の端子には、固定値としての時間T2が入力される。第4タイミング決定部45は、図11に示すタイミングP3を決定する。第4タイミング決定部45は、タイミングTpのトリガが入力され、タイマーT3の端子には、固定値としての時間T3が入力される。
【0028】
波形生成器46は、第1〜第4のタイミング決定部41,43,44,45で決定されたタイミングP0〜P3に基づいて、インクジェットヘッド11に印加する駆動波形を生成する。
【0029】
本実施形態では、各ノズル33からランダムにインクを吐出させることにより、用紙に形成された画像の濃度ムラを目立たなくすることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、ノズル33毎に駆動波形をランダムに生成しているが、これに限るものではない。具体的には、1つのノズル33において、1つの画像を形成する度に、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせることができる。また、複数のインク滴によって、1つの画素を形成するときには、複数のインク滴を吐出する間に、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせることができる。このバラツキを持たせるための駆動波形は、図11で説明した場合と同様である。
【0031】
ここで、複数のノズル33において、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせるモードと、1つの画素を形成するときに、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせるモードと、複数のインク滴によって1つの画素を形成するときに、インクの吐出体積や吐出速度にバラツキを持たせるモードとを用意することができる。そして、3つのモードをユーザが適宜選択することができる。
【0032】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0033】
1:インクジェットプリンタ、11:インクジェットヘッド、12:駆動装置、
31:インク室、33:ノズル、ACT:アクチュエータ、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開平03―221459号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動装置であって、
前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成する信号生成部と、
乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する設定部と、
を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記設定部は、各ノズルにおいて、ドット毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記各ノズルは、複数のインク滴を吐出して、1つの画素を形成しており、
前記設定部は、1つの画素毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、圧電素子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の駆動装置。
【請求項5】
電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動方法であって、
前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成し、
乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する、
ことを特徴とする駆動方法。
【請求項6】
各ノズルにおいて、ドット毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項5に記載の駆動方法。
【請求項7】
前記各ノズルは、複数のインク滴を吐出して、1つの画素を形成しており、
1つの画素毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項5に記載の駆動方法。
【請求項8】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、圧電素子であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1つに記載の駆動方法。
【請求項1】
電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動装置であって、
前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成する信号生成部と、
乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する設定部と、
を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記設定部は、各ノズルにおいて、ドット毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記各ノズルは、複数のインク滴を吐出して、1つの画素を形成しており、
前記設定部は、1つの画素毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、圧電素子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の駆動装置。
【請求項5】
電気−機械エネルギ変換素子の変形によって、複数のノズルからインクを吐出させるインクジェットヘッドを駆動する駆動方法であって、
前記電気−機械エネルギ変換素子に印加する駆動信号を生成し、
乱数発生器で発生した乱数を用いることにより、基準波形に対して、前記各ノズルにおける前記駆動信号の波形の遅延時間を設定する、
ことを特徴とする駆動方法。
【請求項6】
各ノズルにおいて、ドット毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項5に記載の駆動方法。
【請求項7】
前記各ノズルは、複数のインク滴を吐出して、1つの画素を形成しており、
1つの画素毎に前記遅延時間を設定することを特徴とする請求項5に記載の駆動方法。
【請求項8】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、圧電素子であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1つに記載の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−66414(P2012−66414A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211292(P2010−211292)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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