インクジェットヘッド洗浄装置及びインクジェットプリンタ
【課題】洗浄ムラを抑制して洗浄力を向上させる。
【解決手段】インクジェットヘッド洗浄装置100は、インクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄室Sを形成する洗浄容器101と、洗浄液を貯留する洗浄液ボトル102と、洗浄室S内において回転可能に支持されて洗浄液を噴射する噴射孔が形成された親ノズル翼121と、親ノズル翼121に回転可能に支持されて洗浄液を噴射する噴射孔が形成された子ノズル翼131と、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に洗浄液を供給する圧送ポンプ105と、が設けられている。これにより、子ノズル翼131は、インクジェットヘッド40のノズル面42に対して様々な方向に不定に動くことができるため、インクジェットヘッド40のノズル面42に洗浄液をムラなく万遍に浴びせることができ、ノズル面42の洗浄力を向上させることができる。
【解決手段】インクジェットヘッド洗浄装置100は、インクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄室Sを形成する洗浄容器101と、洗浄液を貯留する洗浄液ボトル102と、洗浄室S内において回転可能に支持されて洗浄液を噴射する噴射孔が形成された親ノズル翼121と、親ノズル翼121に回転可能に支持されて洗浄液を噴射する噴射孔が形成された子ノズル翼131と、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に洗浄液を供給する圧送ポンプ105と、が設けられている。これにより、子ノズル翼131は、インクジェットヘッド40のノズル面42に対して様々な方向に不定に動くことができるため、インクジェットヘッド40のノズル面42に洗浄液をムラなく万遍に浴びせることができ、ノズル面42の洗浄力を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル面を洗浄するインクジェットヘッド洗浄装置及びこのインクジェットヘッド洗浄装置が搭載されたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタでは、インクによるインクジェットヘッドのノズル詰まりや、ノズル周辺に付着したインクの凝集物により、吐出不良が生じる。特に、ラージフォーマットのインクジェットプリンタでは、このような吐出不良が顕著に発生する。そこで、従来は、定期的に、インクジェットヘッドのノズル面をゴムやフェルトで擦ってクリーニングするワイピングを行っていた。
【0003】
しかしながら、ワイピングでは、ノズル面に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物を完全に除去するのは困難である。しかも、ワイピングはヘッド面を直接擦るため、ヘッド面を傷つける可能性や、ノズル孔に凝集物やその他のゴミなどを押し込む可能性がある。この場合、吐出不良が回復しないばかりか、インクジェットヘッドの交換を余儀なくされるため、インクジェットヘッドの交換に伴う保守コストが高くなるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、インクジェットヘッドのノズル面に向けて洗浄液を噴射することで、ノズル孔に詰まったインクの凝集物やノズル面に付着したインクの凝集物を溶解除去することが考えられている。特許文献1に記載されたクリーニング装置は、洗浄室にインクジェットヘッドのノズル孔の配列に並列に噴射孔を有する筒状の洗浄室噴射ノズルを配置し、この洗浄室噴射ノズルを軸方向に回転させながら、洗浄液ボトルに貯留された洗浄液を洗浄室噴射ノズルから噴射させており、落下してきた洗浄液を廃液タンクに排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−201021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリーニング装置は、ノズル孔の配列に並列に配置された筒状の洗浄室噴射ノズルを自転させるものであり、洗浄室噴射ノズルの配置は不変であるため、洗浄室噴射ノズルまでの離間距離がノズル面の位置によって不均一となる。また、洗浄室噴射ノズルの噴射孔から噴射された洗浄液は、常に同じ噴射軌跡を描きながらノズル面に当てられるため、洗浄液が直接当たる位置と直接当たらない位置との間で、洗浄ムラが生じる。しかも、洗浄室噴射ノズルを回転させるための動力が必要になるとともに、ノズル面を洗浄するためには大量の洗浄液を噴射しなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、洗浄ムラを抑制して洗浄力を向上させることができるインクジェットヘッド洗浄装置及びインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットヘッド洗浄装置は、インクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄室を形成する洗浄容器と、洗浄室内において回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第1ノズル部と、洗浄室内において第1ノズル部に回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第2ノズル部と、第1ノズル部及び第2ノズル部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
このインクジェットヘッド洗浄装置では、第2ノズル部が第1ノズル部に回転可能に支持されているため、第2ノズル部は、第1ノズル部が回転することにより、第1ノズル部の回転軸を中心とした円上を移動し、更に、第1ノズル部及び第2ノズル部が回転することにより、第2ノズル部は、この円上を移動しながら回転する。これにより、第2ノズル部は、インクジェットヘッドのノズル面に対して様々な方向に不定に動くことができるため、インクジェットヘッドのノズル面に洗浄液をムラなく万遍に浴びせることができ、ノズル面の洗浄力を向上させることができる。
【0010】
この場合、第1ノズル部及び第2ノズル部は、ノズル面に対して垂直な軸に回転可能に支持されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、第1ノズル部及び第2ノズル部は、ノズル面に対して平行な面に沿って回転するため、第1ノズル部及び第2ノズル部の回転位置によらず、第1ノズル部及び第2ノズル部とノズル面との離間距離を一定にすることができる。これにより、ノズル面の任意の位置に対する洗浄力を均一化させることができるため、ノズル面の洗浄ムラを更に抑制することができる。
【0011】
また、第1ノズル部及び第2ノズル部には、洗浄液が噴射される噴射孔が形成されており、噴射孔は、第1ノズル部及び第2ノズル部の回転軸に対して傾斜する方向に向けられていることが好ましい。このような構成を採用した場合、第1ノズル部及び第2ノズル部に設けられた噴射孔から洗浄液が噴射されると、第1ノズル部及び第2ノズル部には洗浄液の噴射に対する反力が生じるが、この反力の方向は、第1ノズル部及び第2ノズル部の軸方向に対してずれているため、第1ノズル部及び第2ノズル部に回転力が作用する。このため、洗浄液を噴射させることで、第1ノズル部及び第2ノズル部を回転させる動力を別途設けなくても、第1ノズル部及び第2ノズル部を回転させることができるため、部品点数を削減できるとともに、コストを削減することができる。
【0012】
そして、洗浄容器には、洗浄室内に超音波を発生する超音波発生装置を更に有することが好ましい。このような構成を採用した場合、洗浄室内に洗浄液を充填してノズル面を洗浄液に浸けた状態で超音波発生装置から超音波を発生させることで、ノズル面に超音波振動を与えながら洗浄液でノズル面を洗浄することができるため、ノズル面に付着した凝集物を効果的に除去することができる。
【0013】
本発明に係るインクジェットプリンタは、上記した何れかのインクジェットヘッド洗浄装置と、ノズル面をワイピングするワイピング方式のメンテナンス装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、上述したインクジェットヘッド洗浄装置の作用効果に加え、ノズル面に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置で除去しきれなかった残留物を拭き取ることができるため、インクジェットヘッドを効果的に洗浄することができる。これにより、インク液滴の吐出不良を効果的に抑制することができ、インクジェットヘッドの交換に伴う保守コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、洗浄ムラを抑制して洗浄力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を搭載したインクジェットプリンタの概略正面図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタの概略正面図である。
【図3】第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。
【図4】親ノズル翼及び子ノズル翼の正面図である。
【図5】親ノズル翼及び子ノズル翼の平面図である。
【図6】親ノズル翼及び子ノズル翼の回転領域を示した図である。
【図7】図5に示したVII−VII線断面図である。
【図8】図5に示したVIII−VIII線断面図である。
【図9】第2の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。
【図10】洗浄室に洗浄液が充填された状態を示す図である。
【図11】子ノズル翼の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェットヘッド洗浄装置及びインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。実施形態では、本発明に係るインクジェットヘッド洗浄装置を、UV(Ultra Violet:紫外線)の照射によって硬化するUVインクを用いてメディアMに画像等を印刷するインクジェットプリンタに搭載するものとして説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
[第1実施形態]
【0018】
図1は、実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を搭載したインクジェットプリンタの概略上面図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタの概略正面図である。図1及び図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、メディアMが搭載されるプラテン10の上方において、メディアMの搬送方向であるX方向と直交するY方向にスライダー軸20が掛け渡されており、このスライダー軸20に、スライダー台30が移動可能に保持されている。このため、スライダー台30は、スライダー軸20に案内されてY方向に移動可能となっている。なお、スライダー台30は、ワイヤーやボールなどを用いた牽引機構に連結されており、モータなどの駆動源を駆動制御することで、Y方向に移動することが可能となっている。
【0019】
このスライダー台30には、インク液滴を吐出するインクジェットヘッド40が搭載されたヘッドユニット50が固定されている。
【0020】
インクジェットヘッド40には、インク液滴を吐出する複数のノズル孔が形成されたノズルプレート41が設けられている。そして、このノズルプレート41のプラテン10及びメディアM側の面に、インク液滴が吐出されるノズル面42が形成されている。
【0021】
また、ヘッドユニット50には、X方向において両側に、UVを照射するUVLED照射器60が固定されている。このため、スライダー台30をY方向に移動させることで、ヘッドユニット50とUVLED照射器60とを同時にY方向に移動させることが可能となっている。そして、スライダー台30をY方向に移動させる際に、ヘッドユニット50からインク液滴を吐出するとともに、UVLED照射器60からUVを照射することで、1スキャンで、インク液滴の吐出と、メディアMに着弾したインク液滴の硬化とを行うことができる。
【0022】
ヘッドユニット50を一方側(図1では左側)端部に移動させたときのインクジェットヘッド40の下方には、ゴムやフェルトなどを用いてインクジェットヘッド40のノズル面42をワイピングするメンテナンス装置70が設けられている。そして、ヘッドユニット50を他方側(図1では右側)端部に移動させたときのインクジェットヘッド40の下方には、洗浄液を噴射してインクジェットヘッド40のノズル面42を洗浄するインクジェットヘッド洗浄装置100が設けられている。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。図3に示すように、インクジェットヘッド洗浄装置100は、洗浄液が噴射される洗浄容器101と、洗浄液を貯留する洗浄液ボトル102と、を主構成要素としており、洗浄容器101を上昇させて洗浄容器101をインクジェットヘッド40に密着させて、洗浄液を噴射することによりインクジェットヘッド40のノズル面42を洗浄するものである。なお、洗浄液は、インクの凝集物を溶解することが可能な洗浄液であって、インクを構成する溶剤を主成分とした洗浄液が用いられる。以下、インクジェットヘッド洗浄装置100の構成について詳しく説明する。
【0024】
洗浄容器101は、上下動可能に設けられている。この洗浄容器101は、上面が開放された箱型に形成されており、その内部に、洗浄液が噴射される洗浄室Sが形成されている。洗浄室Sの上部には、インクジェットヘッド40が係止される係止部111が、洗浄室Sを覆うように取り付けられている。係止部111の中央部には、ノズルプレート41が洗浄室Sに挿入される開口112が形成されている。このため、開口112は、ノズルプレート41の外形よりも大きく、かつ、インクジェットヘッド40の外形よりも小さく形成されている。そして、係止部111は、インクジェットヘッド40が係止されたときに、ノズル面42が鉛直方向において下方に向いた水平面状となるように、その上面が鉛直方向と垂直な水平面状に形成されている。
【0025】
また、係止部111の上面には、弾性を有するゴムキャップ113が貼り付けられている。なお、ゴムキャップ113はゴムに限らず、弾性を有する如何なる素材で構成してもよい。このゴムキャップ113は、係止部111と略同形に形成されている。このため、洗浄容器101を上昇させると、ノズルプレート41が開口112から洗浄室Sに挿入された状態でインクジェットヘッド40が係止部111に係止され、インクジェットヘッド40がゴムキャップ113に密着して洗浄室Sが密閉される。このように、洗浄室Sを密閉することで、洗浄室Sから洗浄液が漏れ出すのを防止している。
【0026】
洗浄容器101の下部には、洗浄液ボトル102に貯留された洗浄液を供給するための供給管103が取り付けられている。供給管103は、洗浄液ボトル102と洗浄室Sとを連通する管である。供給管103は、洗浄室Sの底面中央から上方に突出するように配置されている。また、供給管103には、洗浄液ボトル102に貯留されている洗浄液を洗浄室Sに圧送する圧送ポンプ105が取り付けられている。そして、圧送ポンプ105の駆動により洗浄液が圧送されることで、洗浄液ボトル102に貯留された洗浄液が、供給管103を通って洗浄室S内に供給される。
【0027】
また、洗浄容器101の下部には、洗浄室Sで噴射された洗浄液を排出する排出管104が取り付けられている。排出管104は、洗浄液ボトル102と洗浄室Sとを連通する管である。排出管104には、排出管104の開閉を行うバルブ106が取り付けられている。また、排出管104には、洗浄室Sとの連結部に、洗浄によりノズル面42から除去された凝集物などを除去するフィルタ107が取り付けられている。
【0028】
フィルタ107は、金属フィルタやエッチングフィルタなどが用いられる。フィルタ107の網目は、洗浄液の通過抵抗を極端に大きくすることなく、洗浄液に含まれる凝集物などを適切に除去できる大きさが好ましい。例えば、2〜15μm程度の網目のフィルタ107が採用される。このように、排出管104にフィルタ107を取り付けることで、ノズル面を洗浄した洗浄液が濾過されて洗浄液ボトル102に排出されるため、洗浄液の品質劣化を抑制することができる。これにより、洗浄液を1回の洗浄で廃棄することなく、洗浄液ボトル102に排出された洗浄液で再度ノズル面を洗浄することができるため、洗浄液の再利用を図ることができる。
【0029】
そして、洗浄室S内には、洗浄容器101に回転可能に支持されて洗浄液を噴射する親ノズル翼121と、親ノズル翼121に回転可能に支持されて洗浄液を噴射する子ノズル翼131とが配置されている。
【0030】
図4は、親ノズル翼及び子ノズル翼の正面図である。図5は、親ノズル翼及び子ノズル翼の平面図である。図6は、親ノズル翼及び子ノズル翼の回転領域を示した図である。図7は、図5に示したVII−VII線断面図である。図8は、図5に示したVIII−VIII線断面図である。
【0031】
図3〜図7に示すように、親ノズル翼121は、細長く一方向に延びる板状であって、上方に膨らんだ山状断面に形成されている。そして、親ノズル翼121は、洗浄室Sの中央部に配置された回転機構122に回転可能に支持されている。回転機構122は、鉛直方向の軸線が回転軸Aとなるように、洗浄容器101に固定されている。このため、親ノズル翼121は、ノズル面42に対して平行な面に沿って回転することが可能となっている。また、回転機構122は、洗浄室Sの底部から突出された供給管103と連通されている。このため、親ノズル翼121は、洗浄室Sの中央部において、回転機構122により鉛直方向の軸線を回転軸Aとして回転可能に支持されるととともに、回転機構122を介して供給管103から供給された洗浄液が供給される。
【0032】
この親ノズル翼121の内部には、回転機構122から供給された洗浄液が流れる流路125が形成されている。そして、回転機構122を基部として一方側に延在する親ノズル翼121の一方翼部123には、流路125を流れる洗浄液が噴射される複数の噴射孔126が形成されている。これらの噴射孔126は、洗浄液を勢いよく噴射させるために、その径d1は、噴射力や圧力損失などの影響を考慮して、適宜最適値が設定される。
【0033】
図5及び図7に示すように、全ての噴射孔126は、回転機構122及び親ノズル翼121の回転軸Aに対して所定角度θ1だけ傾斜する方向に向けられている。図7では、噴射孔126が、回転軸Aに対して左側に角度θ1だけ傾斜する方向に向けられている。このように、噴射孔126が回転軸Aに対して傾斜する方向に向けられているため、噴射孔126から洗浄液が噴射されると、この噴射力に対する反力が親ノズル翼121の他方翼部124に作用するため、親ノズル翼121がこの反力により自己回転する。
【0034】
なお、噴射孔126の傾斜角度θ1を大きくすると、親ノズル翼121の回転速度が向上させることができ、噴射孔126の傾斜角度θ1を小さくすると、ノズル面42に対する洗浄液の噴射力を向上させることができる。そこで、各噴射孔126の傾斜角度θ1は、ノズル面42に洗浄液を噴射させる噴射力や、親ノズル翼121の回転速度などの要因によって、適宜設定する。
【0035】
一方、回転機構122を基部として他方側に延在する親ノズル翼121の他方翼部124には、回転機構132を介して子ノズル翼131が取り付けられている。
【0036】
図3〜図6及び図8に示すように、子ノズル翼131は、細長く一方向に延びる板状であって、上方に膨らんだ山状断面に形成されている。そして、子ノズル翼131は、親ノズル翼121の他方翼部124に取り付けられた回転機構132に回転可能に支持されている。回転機構132は、鉛直方向に軸線が回転軸Bとなるように、親ノズル翼121の他方翼部124に固定されている。このため、子ノズル翼131は、ノズル面42に対して平行な面に沿って回転することが可能となっており、図6に示すように、子ノズル翼131は、親ノズル翼121の回転に伴い、移動しながら回転することが可能となっている。また、回転機構132は、親ノズル翼121に形成された流路125と連通されている。このため、子ノズル翼131は、回転機構132により鉛直方向の軸線を回転軸Bとして回転可能に支持されるとともに、回転機構132を介して親ノズル翼121の流路から供給された洗浄液が供給される。
【0037】
この子ノズル翼131の内部には、回転機構132から供給された洗浄液が流れる流路135が形成されている。
【0038】
そして、回転機構132を基部として両側に延在する一方翼部133及び他方翼部134には、流路135に供給された洗浄液が噴射される複数の噴射孔136及び複数の噴射孔137が形成されている。これらの噴射孔136及び噴射孔137は、洗浄液を勢いよく噴射させるために、その径d2は、噴射力や圧力損失などの影響を考慮して、適宜最適値が設定される。
【0039】
図8に示すように、一方翼部133に形成された全ての噴射孔136及び他方翼部134に形成された全ての噴射孔137は、回転機構132及び子ノズル翼131の回転軸Bに対して所定角度θ2だけ傾斜する方向に向けられている。そして、噴射孔136の傾斜方向と噴射孔137の傾斜方向とは、回転軸Bに対して点対称になっている。このため、上方から見ると、噴射孔136の傾斜方向と噴射孔137の傾斜方向とが逆向きとなるが、回転軸Bから見ると、噴射孔136の傾斜方向と噴射孔137の傾斜方向とが同じ向きとなる。図8では、子ノズル翼131を上方から見た図であるため、噴射孔136が、回転軸Bに対して左側に角度θ2だけ傾斜する方向に形成されており、噴射孔137が、回転軸Bに対して右側に角度θ2だけ傾斜する方向に形成されている。このように、噴射孔136及び噴射孔137が回転軸Bに対して傾斜する方向に向けられているため、噴射孔136及び噴射孔137から洗浄液が噴射されると、噴射孔136における噴射力に対する反力が一方翼部133に作用し、噴射孔137における噴射力に対する反力が他方翼部134に作用する。そして、一方翼部133に作用する反力の方向と他方翼部134に作用する反力の方向とが回転軸Bからみて同方向となるため、子ノズル翼131がこれらの反力により自己回転する。
【0040】
なお、噴射孔136及び噴射孔137の傾斜角度θ2を大きくすると、子ノズル翼131の回転速度を向上させることができ、噴射孔136及び噴射孔137の傾斜角度θ2を小さくすると、ノズル面42に対する洗浄液の噴射力を向上させることができる。そこで、各噴射孔136及び各噴射孔137の傾斜角度θ2は、ノズル面42に洗浄液を噴射させる噴射力や、子ノズル翼131の回転速度などの要因によって、適宜設定する。
【0041】
そして、子ノズル翼131は、図6に示すように、回転軸Aを中心として回転軸Aから回転軸Bまでの長さを半径とする円に沿って移動しながら自己回転する。そこで、図4に示すように、子ノズル翼131の一方翼部133及び他方翼部134の長さL1は、親ノズル翼121の回転軸Aから子ノズル翼131の回転軸Bまでの長さL2よりも長くする。これにより、子ノズル翼131が移動しながら自己回転することで、ノズル面42の全面にムラなく洗浄液を浴びせることができる。
【0042】
次に、インクジェットヘッド洗浄装置100の動作について説明する。
【0043】
まず、インクジェットヘッド40のノズル面42を洗浄するために、インクジェットヘッド40を移動させて、インクジェットヘッド洗浄装置100の洗浄容器101の上方にインクジェットヘッド40を配置させる。
【0044】
次に、洗浄容器101を上昇させて、インクジェットヘッド40をゴムキャップ113に密着させるとともに、ノズルプレート41を係止部111の開口112に挿入させる。これにより、洗浄室Sが密閉されるとともに、インクジェットヘッド40のノズル面42が洗浄室Sに挿入される。
【0045】
次に、排出管104のバルブ106を開けるとともに、圧送ポンプ105を駆動して、洗浄液ボトル102に貯留されている洗浄液を親ノズル翼121及び子ノズル翼131に圧送する。すると、洗浄室Sにおいて、親ノズル翼121の噴射孔126からノズル面42に向けて洗浄液が噴射されるとともに、子ノズル翼131の噴射孔136及び噴射孔137からノズル面42に向けて洗浄液が噴射される。このとき、噴射孔126は、親ノズル翼121の回転軸Aに対して所定角度θ1だけ傾斜する方向に向けられているため、洗浄液の噴射力に対する反力が親ノズル翼121に作用して、親ノズル翼121が自己回転する。また、噴射孔136及び噴射孔137は、子ノズル翼131の回転軸Bに対して所定角度θ2だけ傾斜する方向に向けられているため、洗浄液の噴射力に対する反力が子ノズル翼131に作用する。このため、子ノズル翼131は、親ノズル翼121の自己回転に伴い、移動しながら自己回転する。
【0046】
そして、噴射孔126、噴射孔136及び噴射孔137から噴射された洗浄液は、ノズル面42に浴びせられる。これにより、ノズル面42に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物は、洗浄液によって溶解される。なお、これらの凝集物を好適に溶解するために、5〜30分ほどノズル面42に洗浄液を浴びせるとよい。
【0047】
一方、ノズル面42に浴びせられた洗浄液は、自重により洗浄室Sの底部に落下する。このとき、親ノズル翼121及び子ノズル翼131の断面が山状に形成されているため、洗浄液は、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に滞留することなく、洗浄室Sの底部まで落下する。そして、洗浄室Sの底部に溜まった洗浄液は、フィルタ107で濾過されて、排出管104を通って洗浄液ボトル102に排出される。洗浄液ボトル102に回収された洗浄液は、再度、圧送ポンプ105により親ノズル翼121及び子ノズル翼131に圧送されることにより、洗浄液ボトル102、供給管103、洗浄容器101及び排出管104で循環される。
【0048】
そして、インクジェットヘッド洗浄装置100によるノズル面42の洗浄が終了すると、洗浄容器101を下降させた後、インクジェットヘッド40を移動させて、メンテナンス装置70の上方にインクジェットヘッド40を配置させる。そして、メンテナンス装置70により、インクジェットヘッド40のノズル面42をワイピングすることにより、ノズル面42に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置100で除去しきれなかった残留物を拭き取り、インクジェットヘッド40の洗浄を終了する。
[第2実施形態]
【0049】
次に、第2の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置について説明する。図9は、第2の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。図10は、洗浄室に洗浄液が充填された状態を示す図である。
【0050】
図9及び図10に示すように、インクジェットヘッド洗浄装置200は、超音波を発生する超音波発生装置210が設けられている以外は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置100と同じである。このため、以下では、第1の実施形態と異なる事項のみを説明する。
【0051】
インクジェットヘッド洗浄装置200には、洗浄室Sの底部に、超音波発生装置210が設けられている。超音波発生装置210は、超音波を発生する超音波発生素子を搭載しており、洗浄室Sの上方に向けて超音波を発生することが可能となっている。
【0052】
次に、インクジェットヘッド洗浄装置200の動作について説明する。
【0053】
まず、第1の実施形態と同様に、洗浄容器101の上方にインクジェットヘッド40を配置させると、洗浄容器101を上昇させて、インクジェットヘッド40をゴムキャップ113に密着させるとともに、ノズルプレート41を係止部111の開口112に挿入させる。
【0054】
ここで、第2の実施形態では、排出管104のバルブ106を閉じておく。
【0055】
次に、図9に示すように、圧送ポンプ105を駆動して、洗浄液ボトル102に貯留されている洗浄液を親ノズル翼121及び子ノズル翼131に圧送する。すると、第1の実施形態と同様に、洗浄室Sにおいて、親ノズル翼121が自己回転しながら噴射孔126から洗浄液がノズル面42に向けて噴射される。また、子ノズル翼131が親ノズル翼121の自己回転に伴い移動しながら自己回転して、噴射孔136及び噴射孔137から洗浄液がノズル面42に向けて噴射される。これにより、ノズル面42に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物が、洗浄液によって溶解される。
【0056】
このとき、排出管104のバルブ106は閉じられているため、ノズル面42を洗浄して洗浄室Sの底部に落下した洗浄液は、排出管104から排出されることなく、洗浄室Sに滞留される。
【0057】
そこで、洗浄室Sが洗浄液で充填されるまで、親ノズル翼121及び子ノズル翼131からの洗浄液の噴射を継続する。そして、図10に示すように、洗浄室Sが洗浄液で充填されてノズル面42が洗浄液に浸かると、圧送ポンプ105による洗浄液の圧送を停止して、超音波発生装置210から超音波を発生させる。すると、超音波発生装置210から発生された超音波が洗浄液に印加されてノズル面42まで伝達されて、ノズル面42が超音波の印加された洗浄液に浸される。これにより、ノズル面42や凝集物などに超音波が印加されながら洗浄液により凝集物の溶解が行われるため、ノズル面42に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物の溶解が飛躍的に促進される。
【0058】
その後、所定時間経過すると、超音波発生装置210による超音波の発生を停止して、排出管104のバルブ106を開ける。すると、洗浄室Sに充填された洗浄液は、フィルタ107で濾過された後、排出管104を通って洗浄液ボトル102に排出される。
【0059】
そして、インクジェットヘッド洗浄装置100によるノズル面42の洗浄が終了すると、第1実施形態と同様に、メンテナンス装置70により、インクジェットヘッド40のノズル面42をワイピングすることにより、ノズル面42に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置100で除去しきれなかった残留物を拭き取り、インクジェットヘッド40の洗浄を終了する。
【0060】
このように、第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置100では、子ノズル翼131が親ノズル翼121に回転可能に支持されているため、子ノズル翼131は、親ノズル翼121が回転することにより、親ノズル翼121の回転軸Aを中心とした円上を移動し、更に、親ノズル翼121及び子ノズル翼131が回転することにより、子ノズル翼131は、この円上を移動しながら回転する。これにより、子ノズル翼131は、インクジェットヘッド40のノズル面42に対して様々な方向に不定に動くことができるため、インクジェットヘッド40のノズル面42に洗浄液をムラなく万遍に浴びせることができ、ノズル面42の洗浄力を向上させることができる。
【0061】
また、親ノズル翼121及び子ノズル翼131は、ノズル面42に対して平行な面に沿って回転するため、親ノズル翼121及び子ノズル翼131の回転位置によらず、親ノズル翼121及び子ノズル翼131とノズル面42との離間距離を一定にすることができる。これにより、ノズル面42の任意の位置に対する洗浄力を均一化させることができるため、ノズル面42の洗浄ムラを更に抑制することができる。
【0062】
また、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に設けられた噴射孔126、噴射孔136及び噴射孔137から洗浄液が噴射されると、親ノズル翼121及び子ノズル翼131には洗浄液の噴射に対する反力が生じるが、この反力の方向は、親ノズル翼121の回転軸A及び子ノズル翼131の回転軸Bの軸方向に対してずれているため、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に回転力が作用する。このため、洗浄液を噴射させることで、親ノズル翼121及び子ノズル翼131を回転させる動力を別途設けなくても、親ノズル翼121及び子ノズル翼131を回転させることができるため、部品点数を削減できるとともに、コストを削減することができる。
【0063】
更に、第2の実施形態にかかるインクジェットヘッド洗浄装置200によれば、洗浄室Sに洗浄液を充填してノズル面42を洗浄液に浸けた状態で超音波発生装置210から超音波を発生させることで、ノズル面42に超音波振動を与えながら洗浄液でノズル面42を洗浄することができるため、ノズル面42に付着した凝集物を効果的に溶解することができる。
【0064】
そして、インクジェットプリンタ1に、インクジェットヘッド洗浄装置100,200と、ノズル面42をワイピングするワイピング方式のメンテナンス装置70とを設けることで、上述したインクジェットヘッド洗浄装置100,200の作用効果に加え、ノズル面42に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置100,200で除去しきれなかった残留物を拭き取ることができるため、インクジェットヘッド40を効果的に洗浄することができる。これにより、インク液滴の吐出不良を効果的に抑制することができ、インクジェットヘッド40の交換に伴う保守コストを低減することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、親ノズル翼121に形成された噴射孔126や子ノズル翼131に形成された噴射孔136及び噴射孔137は、全て回転軸A及び回転軸Bに対して傾斜する方向に向けられているが、図11に示す子ノズル翼のように、一部の噴射孔のみを回転軸A及び回転軸Bに対して傾斜する方向に向けて、その他の噴射孔を回転軸A及び回転軸Bと同方向の上方に向けるようにしてもよい。図11は、子ノズル翼の他の例を示す図である。図11(a)は、子ノズル翼の上面図であり、図11(b)は、図11(a)のb−b線断面図である。図11に示すように、子ノズル翼151は、回転機構122に回転可能に支持されており、その内部に、洗浄液が流れる流路153が形成されている。そして、子ノズル翼151には、鉛直方向上向きに向けられた噴射孔154が両翼に複数個ずつ形成されるとともに、子ノズル翼151の回転軸から傾斜した方向(図11では90°)に向けられた噴射孔155が、両翼に1個ずつ形成されている。このように構成することで、ノズル面42に対する洗浄液の噴射力を高く維持しながら、親ノズル翼121及び子ノズル翼131の自己回転を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…インクジェットプリンタ、10…プラテン、20…スライダー軸、30…スライダー台、40…インクジェットヘッド、41…ノズルプレート、42…ノズル面、50…ヘッドユニット、60…照射器、70…メンテナンス装置、100…インクジェットヘッド洗浄装置、101…洗浄容器、102…洗浄液ボトル、103…供給管、104…排出管、105…圧送ポンプ、106…バルブ、107…フィルタ、111…係止部、112…開口、113…ゴムキャップ、121…親ノズル翼、122…回転機構、123…一方翼部、124…他方翼部、125…流路、126…噴射孔、131…子ノズル翼、132…回転機構、133…一方翼部、134…他方翼部、135…流路、136…噴射孔、137…噴射孔、151…子ノズル翼、153…流路、154…噴射孔、155…噴射孔、200…インクジェットヘッド洗浄装置、210…超音波発生装置、A…回転軸、B…回転軸、M…メディア、S…洗浄室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル面を洗浄するインクジェットヘッド洗浄装置及びこのインクジェットヘッド洗浄装置が搭載されたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタでは、インクによるインクジェットヘッドのノズル詰まりや、ノズル周辺に付着したインクの凝集物により、吐出不良が生じる。特に、ラージフォーマットのインクジェットプリンタでは、このような吐出不良が顕著に発生する。そこで、従来は、定期的に、インクジェットヘッドのノズル面をゴムやフェルトで擦ってクリーニングするワイピングを行っていた。
【0003】
しかしながら、ワイピングでは、ノズル面に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物を完全に除去するのは困難である。しかも、ワイピングはヘッド面を直接擦るため、ヘッド面を傷つける可能性や、ノズル孔に凝集物やその他のゴミなどを押し込む可能性がある。この場合、吐出不良が回復しないばかりか、インクジェットヘッドの交換を余儀なくされるため、インクジェットヘッドの交換に伴う保守コストが高くなるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、インクジェットヘッドのノズル面に向けて洗浄液を噴射することで、ノズル孔に詰まったインクの凝集物やノズル面に付着したインクの凝集物を溶解除去することが考えられている。特許文献1に記載されたクリーニング装置は、洗浄室にインクジェットヘッドのノズル孔の配列に並列に噴射孔を有する筒状の洗浄室噴射ノズルを配置し、この洗浄室噴射ノズルを軸方向に回転させながら、洗浄液ボトルに貯留された洗浄液を洗浄室噴射ノズルから噴射させており、落下してきた洗浄液を廃液タンクに排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−201021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリーニング装置は、ノズル孔の配列に並列に配置された筒状の洗浄室噴射ノズルを自転させるものであり、洗浄室噴射ノズルの配置は不変であるため、洗浄室噴射ノズルまでの離間距離がノズル面の位置によって不均一となる。また、洗浄室噴射ノズルの噴射孔から噴射された洗浄液は、常に同じ噴射軌跡を描きながらノズル面に当てられるため、洗浄液が直接当たる位置と直接当たらない位置との間で、洗浄ムラが生じる。しかも、洗浄室噴射ノズルを回転させるための動力が必要になるとともに、ノズル面を洗浄するためには大量の洗浄液を噴射しなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、洗浄ムラを抑制して洗浄力を向上させることができるインクジェットヘッド洗浄装置及びインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットヘッド洗浄装置は、インクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄室を形成する洗浄容器と、洗浄室内において回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第1ノズル部と、洗浄室内において第1ノズル部に回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第2ノズル部と、第1ノズル部及び第2ノズル部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
このインクジェットヘッド洗浄装置では、第2ノズル部が第1ノズル部に回転可能に支持されているため、第2ノズル部は、第1ノズル部が回転することにより、第1ノズル部の回転軸を中心とした円上を移動し、更に、第1ノズル部及び第2ノズル部が回転することにより、第2ノズル部は、この円上を移動しながら回転する。これにより、第2ノズル部は、インクジェットヘッドのノズル面に対して様々な方向に不定に動くことができるため、インクジェットヘッドのノズル面に洗浄液をムラなく万遍に浴びせることができ、ノズル面の洗浄力を向上させることができる。
【0010】
この場合、第1ノズル部及び第2ノズル部は、ノズル面に対して垂直な軸に回転可能に支持されていることが好ましい。このような構成を採用した場合、第1ノズル部及び第2ノズル部は、ノズル面に対して平行な面に沿って回転するため、第1ノズル部及び第2ノズル部の回転位置によらず、第1ノズル部及び第2ノズル部とノズル面との離間距離を一定にすることができる。これにより、ノズル面の任意の位置に対する洗浄力を均一化させることができるため、ノズル面の洗浄ムラを更に抑制することができる。
【0011】
また、第1ノズル部及び第2ノズル部には、洗浄液が噴射される噴射孔が形成されており、噴射孔は、第1ノズル部及び第2ノズル部の回転軸に対して傾斜する方向に向けられていることが好ましい。このような構成を採用した場合、第1ノズル部及び第2ノズル部に設けられた噴射孔から洗浄液が噴射されると、第1ノズル部及び第2ノズル部には洗浄液の噴射に対する反力が生じるが、この反力の方向は、第1ノズル部及び第2ノズル部の軸方向に対してずれているため、第1ノズル部及び第2ノズル部に回転力が作用する。このため、洗浄液を噴射させることで、第1ノズル部及び第2ノズル部を回転させる動力を別途設けなくても、第1ノズル部及び第2ノズル部を回転させることができるため、部品点数を削減できるとともに、コストを削減することができる。
【0012】
そして、洗浄容器には、洗浄室内に超音波を発生する超音波発生装置を更に有することが好ましい。このような構成を採用した場合、洗浄室内に洗浄液を充填してノズル面を洗浄液に浸けた状態で超音波発生装置から超音波を発生させることで、ノズル面に超音波振動を与えながら洗浄液でノズル面を洗浄することができるため、ノズル面に付着した凝集物を効果的に除去することができる。
【0013】
本発明に係るインクジェットプリンタは、上記した何れかのインクジェットヘッド洗浄装置と、ノズル面をワイピングするワイピング方式のメンテナンス装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、上述したインクジェットヘッド洗浄装置の作用効果に加え、ノズル面に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置で除去しきれなかった残留物を拭き取ることができるため、インクジェットヘッドを効果的に洗浄することができる。これにより、インク液滴の吐出不良を効果的に抑制することができ、インクジェットヘッドの交換に伴う保守コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、洗浄ムラを抑制して洗浄力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を搭載したインクジェットプリンタの概略正面図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタの概略正面図である。
【図3】第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。
【図4】親ノズル翼及び子ノズル翼の正面図である。
【図5】親ノズル翼及び子ノズル翼の平面図である。
【図6】親ノズル翼及び子ノズル翼の回転領域を示した図である。
【図7】図5に示したVII−VII線断面図である。
【図8】図5に示したVIII−VIII線断面図である。
【図9】第2の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。
【図10】洗浄室に洗浄液が充填された状態を示す図である。
【図11】子ノズル翼の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェットヘッド洗浄装置及びインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。実施形態では、本発明に係るインクジェットヘッド洗浄装置を、UV(Ultra Violet:紫外線)の照射によって硬化するUVインクを用いてメディアMに画像等を印刷するインクジェットプリンタに搭載するものとして説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
[第1実施形態]
【0018】
図1は、実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を搭載したインクジェットプリンタの概略上面図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタの概略正面図である。図1及び図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、メディアMが搭載されるプラテン10の上方において、メディアMの搬送方向であるX方向と直交するY方向にスライダー軸20が掛け渡されており、このスライダー軸20に、スライダー台30が移動可能に保持されている。このため、スライダー台30は、スライダー軸20に案内されてY方向に移動可能となっている。なお、スライダー台30は、ワイヤーやボールなどを用いた牽引機構に連結されており、モータなどの駆動源を駆動制御することで、Y方向に移動することが可能となっている。
【0019】
このスライダー台30には、インク液滴を吐出するインクジェットヘッド40が搭載されたヘッドユニット50が固定されている。
【0020】
インクジェットヘッド40には、インク液滴を吐出する複数のノズル孔が形成されたノズルプレート41が設けられている。そして、このノズルプレート41のプラテン10及びメディアM側の面に、インク液滴が吐出されるノズル面42が形成されている。
【0021】
また、ヘッドユニット50には、X方向において両側に、UVを照射するUVLED照射器60が固定されている。このため、スライダー台30をY方向に移動させることで、ヘッドユニット50とUVLED照射器60とを同時にY方向に移動させることが可能となっている。そして、スライダー台30をY方向に移動させる際に、ヘッドユニット50からインク液滴を吐出するとともに、UVLED照射器60からUVを照射することで、1スキャンで、インク液滴の吐出と、メディアMに着弾したインク液滴の硬化とを行うことができる。
【0022】
ヘッドユニット50を一方側(図1では左側)端部に移動させたときのインクジェットヘッド40の下方には、ゴムやフェルトなどを用いてインクジェットヘッド40のノズル面42をワイピングするメンテナンス装置70が設けられている。そして、ヘッドユニット50を他方側(図1では右側)端部に移動させたときのインクジェットヘッド40の下方には、洗浄液を噴射してインクジェットヘッド40のノズル面42を洗浄するインクジェットヘッド洗浄装置100が設けられている。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。図3に示すように、インクジェットヘッド洗浄装置100は、洗浄液が噴射される洗浄容器101と、洗浄液を貯留する洗浄液ボトル102と、を主構成要素としており、洗浄容器101を上昇させて洗浄容器101をインクジェットヘッド40に密着させて、洗浄液を噴射することによりインクジェットヘッド40のノズル面42を洗浄するものである。なお、洗浄液は、インクの凝集物を溶解することが可能な洗浄液であって、インクを構成する溶剤を主成分とした洗浄液が用いられる。以下、インクジェットヘッド洗浄装置100の構成について詳しく説明する。
【0024】
洗浄容器101は、上下動可能に設けられている。この洗浄容器101は、上面が開放された箱型に形成されており、その内部に、洗浄液が噴射される洗浄室Sが形成されている。洗浄室Sの上部には、インクジェットヘッド40が係止される係止部111が、洗浄室Sを覆うように取り付けられている。係止部111の中央部には、ノズルプレート41が洗浄室Sに挿入される開口112が形成されている。このため、開口112は、ノズルプレート41の外形よりも大きく、かつ、インクジェットヘッド40の外形よりも小さく形成されている。そして、係止部111は、インクジェットヘッド40が係止されたときに、ノズル面42が鉛直方向において下方に向いた水平面状となるように、その上面が鉛直方向と垂直な水平面状に形成されている。
【0025】
また、係止部111の上面には、弾性を有するゴムキャップ113が貼り付けられている。なお、ゴムキャップ113はゴムに限らず、弾性を有する如何なる素材で構成してもよい。このゴムキャップ113は、係止部111と略同形に形成されている。このため、洗浄容器101を上昇させると、ノズルプレート41が開口112から洗浄室Sに挿入された状態でインクジェットヘッド40が係止部111に係止され、インクジェットヘッド40がゴムキャップ113に密着して洗浄室Sが密閉される。このように、洗浄室Sを密閉することで、洗浄室Sから洗浄液が漏れ出すのを防止している。
【0026】
洗浄容器101の下部には、洗浄液ボトル102に貯留された洗浄液を供給するための供給管103が取り付けられている。供給管103は、洗浄液ボトル102と洗浄室Sとを連通する管である。供給管103は、洗浄室Sの底面中央から上方に突出するように配置されている。また、供給管103には、洗浄液ボトル102に貯留されている洗浄液を洗浄室Sに圧送する圧送ポンプ105が取り付けられている。そして、圧送ポンプ105の駆動により洗浄液が圧送されることで、洗浄液ボトル102に貯留された洗浄液が、供給管103を通って洗浄室S内に供給される。
【0027】
また、洗浄容器101の下部には、洗浄室Sで噴射された洗浄液を排出する排出管104が取り付けられている。排出管104は、洗浄液ボトル102と洗浄室Sとを連通する管である。排出管104には、排出管104の開閉を行うバルブ106が取り付けられている。また、排出管104には、洗浄室Sとの連結部に、洗浄によりノズル面42から除去された凝集物などを除去するフィルタ107が取り付けられている。
【0028】
フィルタ107は、金属フィルタやエッチングフィルタなどが用いられる。フィルタ107の網目は、洗浄液の通過抵抗を極端に大きくすることなく、洗浄液に含まれる凝集物などを適切に除去できる大きさが好ましい。例えば、2〜15μm程度の網目のフィルタ107が採用される。このように、排出管104にフィルタ107を取り付けることで、ノズル面を洗浄した洗浄液が濾過されて洗浄液ボトル102に排出されるため、洗浄液の品質劣化を抑制することができる。これにより、洗浄液を1回の洗浄で廃棄することなく、洗浄液ボトル102に排出された洗浄液で再度ノズル面を洗浄することができるため、洗浄液の再利用を図ることができる。
【0029】
そして、洗浄室S内には、洗浄容器101に回転可能に支持されて洗浄液を噴射する親ノズル翼121と、親ノズル翼121に回転可能に支持されて洗浄液を噴射する子ノズル翼131とが配置されている。
【0030】
図4は、親ノズル翼及び子ノズル翼の正面図である。図5は、親ノズル翼及び子ノズル翼の平面図である。図6は、親ノズル翼及び子ノズル翼の回転領域を示した図である。図7は、図5に示したVII−VII線断面図である。図8は、図5に示したVIII−VIII線断面図である。
【0031】
図3〜図7に示すように、親ノズル翼121は、細長く一方向に延びる板状であって、上方に膨らんだ山状断面に形成されている。そして、親ノズル翼121は、洗浄室Sの中央部に配置された回転機構122に回転可能に支持されている。回転機構122は、鉛直方向の軸線が回転軸Aとなるように、洗浄容器101に固定されている。このため、親ノズル翼121は、ノズル面42に対して平行な面に沿って回転することが可能となっている。また、回転機構122は、洗浄室Sの底部から突出された供給管103と連通されている。このため、親ノズル翼121は、洗浄室Sの中央部において、回転機構122により鉛直方向の軸線を回転軸Aとして回転可能に支持されるととともに、回転機構122を介して供給管103から供給された洗浄液が供給される。
【0032】
この親ノズル翼121の内部には、回転機構122から供給された洗浄液が流れる流路125が形成されている。そして、回転機構122を基部として一方側に延在する親ノズル翼121の一方翼部123には、流路125を流れる洗浄液が噴射される複数の噴射孔126が形成されている。これらの噴射孔126は、洗浄液を勢いよく噴射させるために、その径d1は、噴射力や圧力損失などの影響を考慮して、適宜最適値が設定される。
【0033】
図5及び図7に示すように、全ての噴射孔126は、回転機構122及び親ノズル翼121の回転軸Aに対して所定角度θ1だけ傾斜する方向に向けられている。図7では、噴射孔126が、回転軸Aに対して左側に角度θ1だけ傾斜する方向に向けられている。このように、噴射孔126が回転軸Aに対して傾斜する方向に向けられているため、噴射孔126から洗浄液が噴射されると、この噴射力に対する反力が親ノズル翼121の他方翼部124に作用するため、親ノズル翼121がこの反力により自己回転する。
【0034】
なお、噴射孔126の傾斜角度θ1を大きくすると、親ノズル翼121の回転速度が向上させることができ、噴射孔126の傾斜角度θ1を小さくすると、ノズル面42に対する洗浄液の噴射力を向上させることができる。そこで、各噴射孔126の傾斜角度θ1は、ノズル面42に洗浄液を噴射させる噴射力や、親ノズル翼121の回転速度などの要因によって、適宜設定する。
【0035】
一方、回転機構122を基部として他方側に延在する親ノズル翼121の他方翼部124には、回転機構132を介して子ノズル翼131が取り付けられている。
【0036】
図3〜図6及び図8に示すように、子ノズル翼131は、細長く一方向に延びる板状であって、上方に膨らんだ山状断面に形成されている。そして、子ノズル翼131は、親ノズル翼121の他方翼部124に取り付けられた回転機構132に回転可能に支持されている。回転機構132は、鉛直方向に軸線が回転軸Bとなるように、親ノズル翼121の他方翼部124に固定されている。このため、子ノズル翼131は、ノズル面42に対して平行な面に沿って回転することが可能となっており、図6に示すように、子ノズル翼131は、親ノズル翼121の回転に伴い、移動しながら回転することが可能となっている。また、回転機構132は、親ノズル翼121に形成された流路125と連通されている。このため、子ノズル翼131は、回転機構132により鉛直方向の軸線を回転軸Bとして回転可能に支持されるとともに、回転機構132を介して親ノズル翼121の流路から供給された洗浄液が供給される。
【0037】
この子ノズル翼131の内部には、回転機構132から供給された洗浄液が流れる流路135が形成されている。
【0038】
そして、回転機構132を基部として両側に延在する一方翼部133及び他方翼部134には、流路135に供給された洗浄液が噴射される複数の噴射孔136及び複数の噴射孔137が形成されている。これらの噴射孔136及び噴射孔137は、洗浄液を勢いよく噴射させるために、その径d2は、噴射力や圧力損失などの影響を考慮して、適宜最適値が設定される。
【0039】
図8に示すように、一方翼部133に形成された全ての噴射孔136及び他方翼部134に形成された全ての噴射孔137は、回転機構132及び子ノズル翼131の回転軸Bに対して所定角度θ2だけ傾斜する方向に向けられている。そして、噴射孔136の傾斜方向と噴射孔137の傾斜方向とは、回転軸Bに対して点対称になっている。このため、上方から見ると、噴射孔136の傾斜方向と噴射孔137の傾斜方向とが逆向きとなるが、回転軸Bから見ると、噴射孔136の傾斜方向と噴射孔137の傾斜方向とが同じ向きとなる。図8では、子ノズル翼131を上方から見た図であるため、噴射孔136が、回転軸Bに対して左側に角度θ2だけ傾斜する方向に形成されており、噴射孔137が、回転軸Bに対して右側に角度θ2だけ傾斜する方向に形成されている。このように、噴射孔136及び噴射孔137が回転軸Bに対して傾斜する方向に向けられているため、噴射孔136及び噴射孔137から洗浄液が噴射されると、噴射孔136における噴射力に対する反力が一方翼部133に作用し、噴射孔137における噴射力に対する反力が他方翼部134に作用する。そして、一方翼部133に作用する反力の方向と他方翼部134に作用する反力の方向とが回転軸Bからみて同方向となるため、子ノズル翼131がこれらの反力により自己回転する。
【0040】
なお、噴射孔136及び噴射孔137の傾斜角度θ2を大きくすると、子ノズル翼131の回転速度を向上させることができ、噴射孔136及び噴射孔137の傾斜角度θ2を小さくすると、ノズル面42に対する洗浄液の噴射力を向上させることができる。そこで、各噴射孔136及び各噴射孔137の傾斜角度θ2は、ノズル面42に洗浄液を噴射させる噴射力や、子ノズル翼131の回転速度などの要因によって、適宜設定する。
【0041】
そして、子ノズル翼131は、図6に示すように、回転軸Aを中心として回転軸Aから回転軸Bまでの長さを半径とする円に沿って移動しながら自己回転する。そこで、図4に示すように、子ノズル翼131の一方翼部133及び他方翼部134の長さL1は、親ノズル翼121の回転軸Aから子ノズル翼131の回転軸Bまでの長さL2よりも長くする。これにより、子ノズル翼131が移動しながら自己回転することで、ノズル面42の全面にムラなく洗浄液を浴びせることができる。
【0042】
次に、インクジェットヘッド洗浄装置100の動作について説明する。
【0043】
まず、インクジェットヘッド40のノズル面42を洗浄するために、インクジェットヘッド40を移動させて、インクジェットヘッド洗浄装置100の洗浄容器101の上方にインクジェットヘッド40を配置させる。
【0044】
次に、洗浄容器101を上昇させて、インクジェットヘッド40をゴムキャップ113に密着させるとともに、ノズルプレート41を係止部111の開口112に挿入させる。これにより、洗浄室Sが密閉されるとともに、インクジェットヘッド40のノズル面42が洗浄室Sに挿入される。
【0045】
次に、排出管104のバルブ106を開けるとともに、圧送ポンプ105を駆動して、洗浄液ボトル102に貯留されている洗浄液を親ノズル翼121及び子ノズル翼131に圧送する。すると、洗浄室Sにおいて、親ノズル翼121の噴射孔126からノズル面42に向けて洗浄液が噴射されるとともに、子ノズル翼131の噴射孔136及び噴射孔137からノズル面42に向けて洗浄液が噴射される。このとき、噴射孔126は、親ノズル翼121の回転軸Aに対して所定角度θ1だけ傾斜する方向に向けられているため、洗浄液の噴射力に対する反力が親ノズル翼121に作用して、親ノズル翼121が自己回転する。また、噴射孔136及び噴射孔137は、子ノズル翼131の回転軸Bに対して所定角度θ2だけ傾斜する方向に向けられているため、洗浄液の噴射力に対する反力が子ノズル翼131に作用する。このため、子ノズル翼131は、親ノズル翼121の自己回転に伴い、移動しながら自己回転する。
【0046】
そして、噴射孔126、噴射孔136及び噴射孔137から噴射された洗浄液は、ノズル面42に浴びせられる。これにより、ノズル面42に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物は、洗浄液によって溶解される。なお、これらの凝集物を好適に溶解するために、5〜30分ほどノズル面42に洗浄液を浴びせるとよい。
【0047】
一方、ノズル面42に浴びせられた洗浄液は、自重により洗浄室Sの底部に落下する。このとき、親ノズル翼121及び子ノズル翼131の断面が山状に形成されているため、洗浄液は、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に滞留することなく、洗浄室Sの底部まで落下する。そして、洗浄室Sの底部に溜まった洗浄液は、フィルタ107で濾過されて、排出管104を通って洗浄液ボトル102に排出される。洗浄液ボトル102に回収された洗浄液は、再度、圧送ポンプ105により親ノズル翼121及び子ノズル翼131に圧送されることにより、洗浄液ボトル102、供給管103、洗浄容器101及び排出管104で循環される。
【0048】
そして、インクジェットヘッド洗浄装置100によるノズル面42の洗浄が終了すると、洗浄容器101を下降させた後、インクジェットヘッド40を移動させて、メンテナンス装置70の上方にインクジェットヘッド40を配置させる。そして、メンテナンス装置70により、インクジェットヘッド40のノズル面42をワイピングすることにより、ノズル面42に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置100で除去しきれなかった残留物を拭き取り、インクジェットヘッド40の洗浄を終了する。
[第2実施形態]
【0049】
次に、第2の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置について説明する。図9は、第2の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置を示す概略断面図である。図10は、洗浄室に洗浄液が充填された状態を示す図である。
【0050】
図9及び図10に示すように、インクジェットヘッド洗浄装置200は、超音波を発生する超音波発生装置210が設けられている以外は、第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置100と同じである。このため、以下では、第1の実施形態と異なる事項のみを説明する。
【0051】
インクジェットヘッド洗浄装置200には、洗浄室Sの底部に、超音波発生装置210が設けられている。超音波発生装置210は、超音波を発生する超音波発生素子を搭載しており、洗浄室Sの上方に向けて超音波を発生することが可能となっている。
【0052】
次に、インクジェットヘッド洗浄装置200の動作について説明する。
【0053】
まず、第1の実施形態と同様に、洗浄容器101の上方にインクジェットヘッド40を配置させると、洗浄容器101を上昇させて、インクジェットヘッド40をゴムキャップ113に密着させるとともに、ノズルプレート41を係止部111の開口112に挿入させる。
【0054】
ここで、第2の実施形態では、排出管104のバルブ106を閉じておく。
【0055】
次に、図9に示すように、圧送ポンプ105を駆動して、洗浄液ボトル102に貯留されている洗浄液を親ノズル翼121及び子ノズル翼131に圧送する。すると、第1の実施形態と同様に、洗浄室Sにおいて、親ノズル翼121が自己回転しながら噴射孔126から洗浄液がノズル面42に向けて噴射される。また、子ノズル翼131が親ノズル翼121の自己回転に伴い移動しながら自己回転して、噴射孔136及び噴射孔137から洗浄液がノズル面42に向けて噴射される。これにより、ノズル面42に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物が、洗浄液によって溶解される。
【0056】
このとき、排出管104のバルブ106は閉じられているため、ノズル面42を洗浄して洗浄室Sの底部に落下した洗浄液は、排出管104から排出されることなく、洗浄室Sに滞留される。
【0057】
そこで、洗浄室Sが洗浄液で充填されるまで、親ノズル翼121及び子ノズル翼131からの洗浄液の噴射を継続する。そして、図10に示すように、洗浄室Sが洗浄液で充填されてノズル面42が洗浄液に浸かると、圧送ポンプ105による洗浄液の圧送を停止して、超音波発生装置210から超音波を発生させる。すると、超音波発生装置210から発生された超音波が洗浄液に印加されてノズル面42まで伝達されて、ノズル面42が超音波の印加された洗浄液に浸される。これにより、ノズル面42や凝集物などに超音波が印加されながら洗浄液により凝集物の溶解が行われるため、ノズル面42に付着したインクの凝集物やノズル孔に詰まったインクの凝集物の溶解が飛躍的に促進される。
【0058】
その後、所定時間経過すると、超音波発生装置210による超音波の発生を停止して、排出管104のバルブ106を開ける。すると、洗浄室Sに充填された洗浄液は、フィルタ107で濾過された後、排出管104を通って洗浄液ボトル102に排出される。
【0059】
そして、インクジェットヘッド洗浄装置100によるノズル面42の洗浄が終了すると、第1実施形態と同様に、メンテナンス装置70により、インクジェットヘッド40のノズル面42をワイピングすることにより、ノズル面42に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置100で除去しきれなかった残留物を拭き取り、インクジェットヘッド40の洗浄を終了する。
【0060】
このように、第1の実施形態に係るインクジェットヘッド洗浄装置100では、子ノズル翼131が親ノズル翼121に回転可能に支持されているため、子ノズル翼131は、親ノズル翼121が回転することにより、親ノズル翼121の回転軸Aを中心とした円上を移動し、更に、親ノズル翼121及び子ノズル翼131が回転することにより、子ノズル翼131は、この円上を移動しながら回転する。これにより、子ノズル翼131は、インクジェットヘッド40のノズル面42に対して様々な方向に不定に動くことができるため、インクジェットヘッド40のノズル面42に洗浄液をムラなく万遍に浴びせることができ、ノズル面42の洗浄力を向上させることができる。
【0061】
また、親ノズル翼121及び子ノズル翼131は、ノズル面42に対して平行な面に沿って回転するため、親ノズル翼121及び子ノズル翼131の回転位置によらず、親ノズル翼121及び子ノズル翼131とノズル面42との離間距離を一定にすることができる。これにより、ノズル面42の任意の位置に対する洗浄力を均一化させることができるため、ノズル面42の洗浄ムラを更に抑制することができる。
【0062】
また、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に設けられた噴射孔126、噴射孔136及び噴射孔137から洗浄液が噴射されると、親ノズル翼121及び子ノズル翼131には洗浄液の噴射に対する反力が生じるが、この反力の方向は、親ノズル翼121の回転軸A及び子ノズル翼131の回転軸Bの軸方向に対してずれているため、親ノズル翼121及び子ノズル翼131に回転力が作用する。このため、洗浄液を噴射させることで、親ノズル翼121及び子ノズル翼131を回転させる動力を別途設けなくても、親ノズル翼121及び子ノズル翼131を回転させることができるため、部品点数を削減できるとともに、コストを削減することができる。
【0063】
更に、第2の実施形態にかかるインクジェットヘッド洗浄装置200によれば、洗浄室Sに洗浄液を充填してノズル面42を洗浄液に浸けた状態で超音波発生装置210から超音波を発生させることで、ノズル面42に超音波振動を与えながら洗浄液でノズル面42を洗浄することができるため、ノズル面42に付着した凝集物を効果的に溶解することができる。
【0064】
そして、インクジェットプリンタ1に、インクジェットヘッド洗浄装置100,200と、ノズル面42をワイピングするワイピング方式のメンテナンス装置70とを設けることで、上述したインクジェットヘッド洗浄装置100,200の作用効果に加え、ノズル面42に付着した洗浄液と、インクジェットヘッド洗浄装置100,200で除去しきれなかった残留物を拭き取ることができるため、インクジェットヘッド40を効果的に洗浄することができる。これにより、インク液滴の吐出不良を効果的に抑制することができ、インクジェットヘッド40の交換に伴う保守コストを低減することができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、親ノズル翼121に形成された噴射孔126や子ノズル翼131に形成された噴射孔136及び噴射孔137は、全て回転軸A及び回転軸Bに対して傾斜する方向に向けられているが、図11に示す子ノズル翼のように、一部の噴射孔のみを回転軸A及び回転軸Bに対して傾斜する方向に向けて、その他の噴射孔を回転軸A及び回転軸Bと同方向の上方に向けるようにしてもよい。図11は、子ノズル翼の他の例を示す図である。図11(a)は、子ノズル翼の上面図であり、図11(b)は、図11(a)のb−b線断面図である。図11に示すように、子ノズル翼151は、回転機構122に回転可能に支持されており、その内部に、洗浄液が流れる流路153が形成されている。そして、子ノズル翼151には、鉛直方向上向きに向けられた噴射孔154が両翼に複数個ずつ形成されるとともに、子ノズル翼151の回転軸から傾斜した方向(図11では90°)に向けられた噴射孔155が、両翼に1個ずつ形成されている。このように構成することで、ノズル面42に対する洗浄液の噴射力を高く維持しながら、親ノズル翼121及び子ノズル翼131の自己回転を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…インクジェットプリンタ、10…プラテン、20…スライダー軸、30…スライダー台、40…インクジェットヘッド、41…ノズルプレート、42…ノズル面、50…ヘッドユニット、60…照射器、70…メンテナンス装置、100…インクジェットヘッド洗浄装置、101…洗浄容器、102…洗浄液ボトル、103…供給管、104…排出管、105…圧送ポンプ、106…バルブ、107…フィルタ、111…係止部、112…開口、113…ゴムキャップ、121…親ノズル翼、122…回転機構、123…一方翼部、124…他方翼部、125…流路、126…噴射孔、131…子ノズル翼、132…回転機構、133…一方翼部、134…他方翼部、135…流路、136…噴射孔、137…噴射孔、151…子ノズル翼、153…流路、154…噴射孔、155…噴射孔、200…インクジェットヘッド洗浄装置、210…超音波発生装置、A…回転軸、B…回転軸、M…メディア、S…洗浄室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄室を形成する洗浄容器と、
前記洗浄室内において回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第1ノズル部と、
前記洗浄室内において前記第1ノズル部に回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第2ノズル部と、
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項2】
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部は、前記ノズル面に対して垂直な軸に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項3】
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部には、洗浄液が噴射される噴射孔が形成されており、
前記噴射孔は、前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部の回転軸に対して傾斜する方向に向けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄容器には、
前記洗浄室内に超音波を発生する超音波発生装置を更に有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェットヘッド洗浄装置と、
前記ノズル面をワイピングするワイピング方式のメンテナンス装置と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面を洗浄する洗浄室を形成する洗浄容器と、
前記洗浄室内において回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第1ノズル部と、
前記洗浄室内において前記第1ノズル部に回転可能に支持されて、洗浄液を噴射する噴射孔が形成された第2ノズル部と、
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項2】
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部は、前記ノズル面に対して垂直な軸に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項3】
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部には、洗浄液が噴射される噴射孔が形成されており、
前記噴射孔は、前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部の回転軸に対して傾斜する方向に向けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄容器には、
前記洗浄室内に超音波を発生する超音波発生装置を更に有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェットヘッド洗浄装置と、
前記ノズル面をワイピングするワイピング方式のメンテナンス装置と、
を備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−51281(P2011−51281A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203738(P2009−203738)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】
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