説明

インクジェット印刷用の転写紙の製造

本発明は、転写紙を製造するための方法、該方法によって製造された転写紙及び転写印刷法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、転写紙を製造するための方法、該方法によって製造された転写紙及び転写印刷法に関する。
【0002】
転写印刷とは、例えばテキスタイルといった種々の材料を、転写紙を用いて印刷することを意味する。転写紙に顔料がコーティングされ、次いでこれが印刷可能な材料に熱転写プレス機で昇華によって転写される。
【0003】
WO00/06392は、殊にインクジェット印刷用の転写紙を開示しており、これは少なくとも、印刷されるべき面にリリース層又はバリヤー層が設けられており、ここで、該層は、せいぜい100ml/minの多孔度を有している。
【0004】
公知の転写紙においてしばしば生じる欠点は、例えばインクジェット印刷によって塗布された顔料が塗りだまりを形成する(verschmieren)ことである。この問題は、顔料層の塗布前に、例えばカルボキシメチルセルロースといった親水性ポリマーでコーティングされている転写紙を使用した場合ですら生じる。
【0005】
意想外にも、ポリアクリル酸アンモニウムを含有する水性液体で転写紙をコーティングした場合に、上述の欠点を少なくとも十分に回避できることが確認された。
【0006】
したがって、本発明の第1の観点は、次の工程:
(a)第1の水性液体を、印刷されるべき紙の表側の面に塗布し、ここで、第1の水性液体はポリアクリル酸アンモニウムを含有する、かつ続けて乾燥させる工程及び
(b)場合により、第2の水性液体を、紙の裏側の面に塗布し、かつ続けて乾燥させる工程、ここで、第2の水性液体は、場合によりポリアクリル酸アンモニウムを含有する、
を包含する、殊にインクジェット印刷用の転写紙を製造するための方法に関する。
【0007】
転写紙の製造のために使用される出発材料は、一般に使われている紙、例えば白色又は未漂白の紙であり、紙1m2につき、通常は60〜140g、殊に80〜120gの質量を有する。
【0008】
本発明による方法の工程(a)によれば、印刷されるべき表側の面、すなわち、その後に顔料がコーティングされる面が、ポリアクリル酸アンモニウムを含有する第1の水性液体と接触される。コーティングのために使用されるポリアクリル酸アンモニウムは、通常は、500ダルトン又はそれを上回る値、例えば1000〜5000ダルトン及び殊に1000〜2000ダルトンの質量平均分子量を有する。好ましくは、第1の水性液体は、ポリアクリル酸アンモニウムを、該液体の全質量に対して10〜50質量%の割合で、殊に20〜40質量%の割合で含有する。例えば、第1の水性液体は、通常の方法によって、例えばドクターブレード又はロールドクターといったドクターを用いて、又は噴霧によって塗布することができる。塗布した後に、紙は、通常は、高められた温度で、例えば40〜80℃で乾燥される。
【0009】
工程(b)は、好ましくは、紙の裏側の面に第2の水性液体を塗布し、かつ引き続き乾燥させることを包含する。好ましくは、第2の水性液体は、親水性有機ポリマー、殊にポリアクリル酸アンモニウムを含有する。第2の水性液体は、ポリアクリル酸アンモニウム又はその他の有機ポリマーを、該液体の全質量に対して5〜30質量%の割合で、殊に10〜20質量%の割合で含有する。第2の液体の塗布及び引き続く乾燥は、第1の液体の場合のように、公知の方法に従って行ってよい。
【0010】
第1の水性液体及び場合により第2の水性液体は、通常は、1m2につき10〜40g、殊に15〜25gの量で紙に塗布され、ここで、少なからぬ実施形態においては、より多くの量又はより少ない量も塗布されうる。さらに有利なのは、ポリアクリル酸アンモニウムが、乾燥質量1〜25g、殊に2〜20gの量で、紙の表側の面に塗布されることである。裏側の面には、ポリアクリル酸アンモニウム(又はその他の親水性ポリマー)が、好ましくは、乾燥質量0.5〜15g、殊に1〜10gの量で塗布される。
【0011】
第1の水性液体及び場合により第2の水性液体も、中性〜アルカリ性のpH値、例えばpH値≧7、例を挙げれば≧9を有してよい。
【0012】
第1の水性液体は、ポリアクリル酸アンモニウム以外に、場合により、なおさらなる添加物質、例えば、SiO2又はケイ酸塩のような無機添加剤、有機添加剤、殊に、例えばセルロース誘導体といった有機ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、及び/又は揮発性でない低分子量有機物質、殊に、例えばグリセリンといった多価アルコールを含有してよい。特に有利な実施形態において、添加剤は:
(i)例えば10〜50質量%、殊に10〜30質量%の割合の、SiO2又はケイ酸塩
(ii)例えば5〜25質量%、殊に5〜15質量%の割合の、例えばカルボキシメチルセルロースといったセルロース誘導体、及び/又は
(iii)例えば5〜25質量%、殊に10〜20質量%の割合の、例えばグリセリンといった多価アルコール、ここで、これらの質量割合は、そのつど第1の液体の全質量に対する、
から選択される。
【0013】
上記の添加剤以外に、好ましくは水からの液体の残分が存在する。第1の液体中の水の割合は、好ましくは≧50質量%、殊に≧70質量%である。有機揮発性溶剤は、好ましくは存在していない。
【0014】
以下では、紙の表側の面をコーティングするための本発明による水性液体に関する有利な特定の実施例が、下記のように示されている:
コーティング液体1
コロイド状SiO2 10〜30質量%
NaOH 0.1〜0.5質量%
ポリアクリル酸アンモニウム 20〜40質量%
残分 H2
コーティング液体2
カルボキシメチルセルロース 5〜15質量%
グリセリン 10〜20質量%
ポリアクリル酸アンモニウム 20〜40質量%
残分 H2
【0015】
紙の裏側の面をコーティングするための水性液体に関する有利な実施例は、下記の通りである:
ポリアクリル酸アンモニウム 10〜20質量%
残分 H2
【0016】
本発明のさらなる観点は、殊にインクジェット印刷用の転写紙を製造するための、ポリアクリル酸アンモニウムを含有する水性液体の使用である。
【0017】
水性液体は、転写紙の表側の面及び/又は裏側の面をコーティングするために、前で記載されたように使用することができる。
【0018】
本発明のさらにもう一つの観点は、印刷されるべき表側の面及び場合により裏側の面が、ポリアクリル酸アンモニウムにより、殊に前で記載された量で、例えば紙1m2につき1〜25gの量で表側の面が、かつ例えば紙1m2につき0.5〜15gの量で裏側の面がコーティングされている、インクジェット印刷用の転写紙である。
【0019】
コーティング、殊に表側の面のコーティングは、そのうえなお添加剤を、前で記載されたように含有していてよい。
【0020】
本発明のさらにもう一つの観点は、転写紙の印刷法であり、ここで、昇華性顔料の層を、例えばインクジェット印刷によって、転写紙の表側の面に上記したように塗布する。顔料は、通常の印刷インク中で、一般に使われている装置、例えばインクジェット印刷機を用いて、公知の方法に従って塗布することができる。塗布した後に、印刷された転写紙は、室温又は80℃までの高められた温度で乾燥される。意想外にも、塗布及び乾燥に際して、顔料が塗りだまりを形成する傾向を示さないことが確認された。
【0021】
印刷された転写紙は、公知のように、物品、殊にテキスタイルを印刷するために使用することができる。
【0022】
したがって、本発明のさらにもう一つの観点は、表側の面が昇華性顔料及びポリアクリル酸アンモニウムによりコーティングされている、物品、殊にテキスタイルを印刷するための印刷された転写紙である。
【0023】
印刷されるべきテキスタイルは、通常は、無着色もしくは白色である。しかしながら、場合により、予め着色されたテキスタイルも使用することができる。通常それは、ポリエステル繊維及び/又はポリアミド繊維少なくとも50〜60質量%を含有するか、又はポリエステル及び/又はポリアミドでコーティングされているテキスタイルである。
【0024】
意想外にも、本発明による転写紙により、伸縮性のあるテキスタイルも塗りだまりなしにコーティングすることができる。このために適切には、ポリアクリル酸アンモニウム以外に、例えばグリセリンといった多価アルコール、及び/又は、例えばカルボキシメチルセルロースといったセルロース誘導体を含有する第1のコーティング液体が使用される。かかる液体でコーティングされた紙は、加熱すると印刷されるべき材料に接着し、その結果、印刷されるべき材料への紙の着色転写を慣例のローラー捺染法によって顔料の塗りだまりなしに行うことが可能となる。
【0025】
したがって、本発明のさらにもう一つの対象は、印刷されるべき物品を、印刷された転写紙と、上記したように、高められた温度で、例えば160〜240℃で接触させ、そうして昇華性顔料を転写紙から印刷されるべき物品に転写することを特徴とする、物品、殊にテキスタイルを印刷するための方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殊にインクジェット印刷用の転写紙の製造法であって、以下の工程:
(a)第1の水性液体を、印刷されるべき紙の表側の面に塗布し、ここで、第1の水性液体はポリアクリル酸アンモニウムを含有する、かつ続けて乾燥させる工程及び
(b)場合により、第2の水性液体を、紙の裏側の面に塗布し、かつ続けて乾燥させる工程、ここで、第2の水性液体は、場合によりポリアクリル酸アンモニウムを含有する、
を包含する、殊にインクジェット印刷用の転写紙の製造法。
【請求項2】
第1の水性液体が、ポリアクリル酸アンモニウムを、該液体の全質量に対して10〜50質量%の割合で、殊に20〜40質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の水性液体及び場合により第2の水性液体を、1m2につき10〜40g、殊に15〜25gの量で紙に塗布することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ポリアクリル酸アンモニウムを、乾燥質量1〜25g、殊に2〜20gの量で紙の表側の面に塗布することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第1の水性液体及び場合により第2の水性液体が、pH値≧7、殊に≧9を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第1の液体が、さらなる添加剤を含有し、殊に該添加剤は:
(i)例えば10〜50質量%、殊に10〜30質量%の割合の、SiO2又はケイ酸塩
(ii)例えば5〜25質量%、殊に5〜15質量%の割合の、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、及び/又は
(iii)例えば5〜25質量%、殊に10〜20質量%の割合の、多価アルコール、例えばグリセリン、ここで、これらの質量割合は、そのつど第1の液体の全質量に対する、
から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
殊にインクジェット印刷用の転写紙を製造するための、ポリアクリル酸アンモニウムを含有する水性液体の使用。
【請求項8】
殊にインクジェット印刷用の転写紙において、印刷されるべき表側の面及び場合により裏側の面が、ポリアクリル酸アンモニウムによりコーティングされており、殊に、紙1m2につき1〜25gの量で表側の面が、かつ場合により紙1m2につき0.5〜15gの量で裏側の面がコーティングされていることを特徴とする、殊にインクジェット印刷用の転写紙。
【請求項9】
昇華性顔料の層を、請求項8記載の転写紙の表側の面に、例えばインクジェット印刷によって塗布することを特徴とする、転写紙の印刷法。
【請求項10】
物品、殊にテキスタイルを印刷するための印刷された転写紙において、表側の面がポリアクリル酸アンモニウム及び昇華性顔料によりコーティングされていることを特徴とする、物品、殊にテキスタイルを印刷するための印刷された転写紙。
【請求項11】
物品、殊にテキスタイルの印刷法において、印刷されるべき物品を、請求項10に記載の印刷された転写紙と、高められた温度で接触させ、そうして昇華性顔料を転写紙から印刷されるべき物品に転写することを特徴とする、物品、殊にテキスタイルの印刷法。
【請求項12】
顔料を紙から印刷されるべき物品へローラー捺染によって転写することを特徴とする、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2012−521909(P2012−521909A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502638(P2012−502638)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054204
【国際公開番号】WO2010/112507
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511237601)アザウライト ベンチャーズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AZOURITE VENTURES LTD.
【住所又は居所原語表記】20 Solonos Street, P.O. Box 53669, Limassol 3317, Cyprus
【Fターム(参考)】