説明

インクジェット印刷紙のリサイクル方法

【課題】高い印字濃度のインクジェット印刷紙を原料とし、白色度の高い再生紙を提供し得るインクジェット印刷紙のリサイクル方法、及び該リサイクル方法を用いて製造された再生紙を提供すること。
【解決手段】下記の工程(1)〜(3)を有するインクジェット印刷紙のリサイクル方法、及び該リサイクル方法を用いて製造された再生紙。
工程(1):ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)を紙の表面に付与して表面処理紙を得る工程
工程(2):アニオン性顔料粒子を含有するインク(B)をインクジェット記録方式で前記表面処理紙に付与してインクジェット印刷紙を得る工程
工程(3):前記インクジェット印刷紙からインクを剥離する剥離工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷紙のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しく、特に環境による劣化に耐え、長期保存に適する、顔料インクによる印刷が他の印刷方式に置き換えられ、用いられるようになってきている。
【0003】
顔料を用いたインクジェット記録方式の例として、例えば、特許文献1には、普通紙に対する画像濃度、ブリーディング、色再現性等の改善を目的として、シリコーン化合物とカチオン性化合物を含む無色の液体組成物を記録媒体に塗布した後、アニオン性基を含む染料等を含有するインクをインクジェット方式により付着させるカラー画像形成方法が開示されている。
また、特許文献2には、はじきと密着性の改善を目的として、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン、着色剤、及び溶剤を含有するスタンプ台用油性インキが開示されている。
【0004】
一方、環境意識の高まりから、古紙の利用の重要性は高まっており、あらゆる印刷物からインクを除去して再生紙を得る、紙のリサイクル方法が検討されている。
紙のリサイクル方法の例として、例えば、特許文献3には、既存の紙のリサイクルシステムの設備を利用して、画像を形成した紙を効率よくリサイクルすることを目的として、特定の化合物を含有する消去可能な画像形成材料を用いて画像を形成した紙に対して、加圧下で熱水によりパルピングを行うと同時に画像形成材料の消色を行い作製されたパルプと、通常の画像形成材料を用いて画像を形成した紙より作製されたパルプとを混合し、再生紙を製造する紙のリサイクル方法が開示されている。
また、特許文献4には、サイズ効果を付与すると共に、印刷適性を大幅に改善し、しかも紙の離解性にも優れた、リサイクルに好適な紙を提供することを目的として、グラフト澱粉重合体と疎水性基含有アニオン性重合体から構成されるポリイオンコンプレックス体を紙の表面に塗工する紙の表面処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−142500号公報
【特許文献2】特開2004−83693号公報
【特許文献3】特開2000−96472号公報
【特許文献4】特開平10−266095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、再生紙を得るための原料古紙としては、新聞やチラシ等が中心であったが、近年、インクジェット方式で印刷された印刷物の利用が増加しており、原料古紙としてもインクジェット方式で印刷された印刷物が増加している。
しかしながら、とりわけ、顔料インクで印刷されたインクジェット印刷物を原料古紙とした場合に、十分な白色度を示すパルプ及び再生紙が得られる方法は見出されていない。
本発明は、高い印字濃度のインクジェット印刷紙を原料とし、白色度の高い再生紙を提供し得るインクジェット印刷紙のリサイクル方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、顔料インクで印刷されたインクジェット印刷物を原料として用いた再生紙が十分な白色度を得られない原因は、顔料粒子が紙繊維に浸透するためと考えて検討を行った。その結果、特定の変性シリコーンを含有する表面処理剤で処理した紙に、顔料を含有するインクを用いてインクジェット印刷紙を得て、インクを剥離する剥離工程を行うことで、高い印字濃度のインクジェット印刷紙を原料とし、白色度の高い再生紙が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の工程(1)〜(3)を有するインクジェット印刷紙のリサイクル方法、及び該リサイクル方法を用いて製造された再生紙を提供する。
工程(1):ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)を紙の表面に付与して表面処理紙を得る工程
工程(2):アニオン性顔料粒子を含有するインク(B)をインクジェット記録方式で前記表面処理紙に付与してインクジェット印刷紙を得る工程
工程(3):前記インクジェット印刷紙からインクを剥離する剥離工程
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い印字濃度のインクジェット印刷紙を原料とし、白色度の高い再生紙を提供し得るインクジェット印刷紙のリサイクル方法、及び該リサイクル方法を用いて製造された再生紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のインクジェット印刷紙のリサイクル方法は、下記の工程(1)〜(3)を有する。
工程(1):ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)を紙の表面に付与して表面処理紙を得る工程
工程(2):顔料を含有するアニオン性インク(B)をインクジェット記録方式で前記表面処理紙に付与してインクジェット印刷紙を得る工程
工程(3):前記インクジェット印刷紙からインクを剥離する剥離工程
また、本発明のインクジェット印刷紙のリサイクル方法において、必要に応じて、更に下記の工程(4)及び(5)を有してもよい。
工程(4):工程(3)の後に、剥離したインクをフローテーション法により除去し、脱墨パルプを得る工程
工程(5):工程(3)においてインクジェット印刷紙からインクを剥離して得られたパルプを含有するパルプ、又は(4)で得られた脱墨パルプを含有するパルプを用いて再生紙を製造する工程
【0011】
本発明のインクジェット印刷紙のリサイクル方法によれば、高い印字濃度のインクジェット印刷紙を原料とし、白色度の高い再生紙を提供し得る。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
通常、インクジェット印刷を行うと、普通紙等の紙表面に着液したインクは、紙面上を繊維方向に沿って広がり、インク中の顔料粒子と共に紙内部にも浸透する。当該現象は、蒸発しにくい水系インクを用いた場合に、発生し易い。
本発明においては、複数の親水性のアミド結合を有し、適度な撥インク性を有するポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)を紙の表面上に付与した後、アニオン性顔料粒子を含有するインク(B)を付与する。ヘッドノズルから吐出されたインク滴は、紙表面上の変性シリコーンの層に着液するが、該変性シリコーン層の撥インク性と、特にインクがアニオン性であるため、変性シリコーン層の複数のアミド結合の弱塩基性のために、インク滴の繊維方向への広がりが抑えられ、紙内部への浸透が抑制される。紙表面近傍に残ったインクは、親水性のアミド結合を介して、水系媒体成分のみが徐々に紙内部へ浸透するか、又は蒸発する。その結果、得られた印刷物は高い印字濃度を示し、更に顔料は表面近傍に残存することとなるものと考えられる。
紙表面近傍に残ったインクがアニオン性であるため、変性シリコーン層のアミド結合と静電的に相互作用して凝集体を形成するため、高い印字濃度の印刷紙が得られるものと考えられる。
また、本発明においては、剥離工程により、このようにして得られたインクジェット印刷紙からインクを剥離させる。通常の使用では十分な耐久性を備えるインクジェット印刷紙でも、剥離工程を行うことで、変性シリコーン層の親水性のアミド結合が水分を吸収して容易に紙面上から剥離し、その際、紙表面近傍に残った顔料も同時に除去される。そのため、顔料の残留が少なく、このリサイクル方法で得られた再生紙は白色度が高くなるものと考えられる。
以下、本発明で用いられる、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)(以下、「表面処理剤(A)」ともいう)、及びアニオン性顔料粒子を含有するインク(B)(以下、「インク(B)」ともいう)について説明する。
【0012】
<表面処理剤(A)>
本発明に用いられる表面処理剤(A)は、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する。表面処理剤(A)における、変性シリコーンの含有量は、紙へ浸透性と表面残留性をバランスを取り、インクの剥離性を向上させる観点から、好ましくは0.5〜10.0重量%、より好ましくは1.0〜7.0重量%、更に好ましくは2.0〜5.0重量%である。
また、このポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを溶解する溶媒としては、水が好ましい。表面処理剤(A)における水の含有量は、好ましくは20〜99重量%、より好ましくは50〜97重量%、更に好ましくは70〜94重量%である。
【0013】
[ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン]
ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンは、特に制限されないが、オルガノポリシロキサンセグメント(x)(以下、単に「セグメント(x)」ともいう)のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(y)(以下、単に「セグメント(y)」ともいう)が結合したオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基、又は炭素数7〜22のアリールアルキル基若しくはアルキルアリール基を示し、nは2又は3である。
ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンとしては、特にセグメント(x)の末端又は側鎖のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、セグメント(y)が結合したオルガノポリシロキサンが好ましい。
ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンにおいて、セグメント(y)に対するセグメント(x)の重量比〔(x)/(y)〕は、好ましくは5/95〜99/1、より好ましくは20/80〜96/4、更に好ましくは30/70〜90/10であり、再生紙の白色度を向上させる観点から、更に好ましくは80/20〜90/10であり、印字濃度が高い印刷紙を得る観点から、更に好ましくは30/70〜80/20である。
また、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンの重量平均分子量は、再生紙の白色度を向上させる観点から、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは30,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000、更に好ましくは100,000〜200,000である。なお、重量平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0016】
セグメント(x)を形成するオルガノポリシロキサンとしては、例えば一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
式(2)中、Rは炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基、又はヘテロ原子を含むアルキル基を示し、複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも1個はヘテロ原子を含むアルキル基である。mは100〜5000である。
式(2)において、Rで示される炭素数1〜22のアルキル基の中では、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
また、Rで示されるヘテロ原子を含むアルキル基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1種以上を、好ましくは1〜3個含む炭素数2〜20のアルキル基が挙げられる。ヘテロ原子を含むアルキル基は、オルガノポリシロキサンの末端又は側鎖のケイ素原子の少なくとも1個にあればよく、オルガノポリシロキサン中のヘテロ原子を含むアルキル基の数は1〜300が好ましく、1〜100がより好ましい。
ヘテロ原子を含むアルキル基の好適例としては、以下に示す基が挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(2)において、mは、好ましくは100〜2000、より好ましくは350〜1500である。
セグメント(x)を形成するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100万、より好ましくは1万〜50万、更に好ましくは2万〜20万である。重量平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
【0021】
セグメント(y)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメントである。
【0022】
【化4】

【0023】
式(1)中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基、又は炭素数7〜22のアリールアルキル基若しくはアルキルアリール基を示し、nは2又は3である。
1がアルキル基の場合、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。また、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アリールアルキル基としては、アルキル基の炭素数が1〜20のフェニルアルキル基、ナフチルアルキル基等が挙げられ、アルキルアリール基としては、アルキル基の炭素数が1〜20のアルキルフェニル基、アルキルナフチル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される繰り返し単位の重合度は特に制限はないが、好ましくは1〜500、より好ましくは6〜100である。
【0024】
セグメント(x)とセグメント(y)との結合において、介在するヘテロ原子を含むアルキレン基として、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1種以上を、好ましくは1〜3個含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。具体的には、アルキレン鎖の炭素−炭素間及び/又は末端に、(i)第2級アミン又は第3級アミン、(ii)第2級アミン又は第3級アミンにH+が付加して得られるアンモニウム塩、(iii)第4級アンモニウム塩、(iv)酸素原子、及び(v)硫黄原子から選ばれる1種以上を含む炭素数2〜20のアルキレン基が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキレン基の好適例としては、下記の構造式で表されるものが挙げられる。
【0025】
【化5】

【0026】
上記式において、X-は、アンモニウム塩の対イオンである有機アニオンを示す。X-の具体例としては、塩素、ヨウ素、臭素等のハロゲンイオン、メトサルフェート、エトサルフェート、メトフォスフェート、エトフォスフェート、アルキルカルボキシレート等の有機アニオンが挙げられる。
【0027】
本発明に用いられるポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンは、例えば、環状イミノエーテルの開環重合物であるポリ(N−アシルアルキレンイミン)とセグメント(x)を形成するオルガノポリシロキサンとを反応させる方法により得ることができる。より具体的には、特開平7−133352号公報の段落〔0034〕〜〔0042〕に記載の方法により得ることができる。
ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンは、単一化合物であっても、混合物であってもよい。
【0028】
[その他の成分]
また、表面処理剤(A)は、更に有機溶媒、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を含有することができる。
有機溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。
【0029】
本発明の表面処理剤(A)は、実質的に着色剤を含まないものであることが好ましい。具体的な着色剤の含有量としては、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.01重量%以下、全く含まないものであることが更に好ましい。表面処理剤(A)が実質的に着色剤を含まないことで、インク(B)と重ねて印刷した際に、インク(B)の色相に影響を抑えることができる。
【0030】
[表面処理剤(A)の物性]
本発明の表面処理剤(A)の好ましい静的表面張力(20℃)は、印字鮮明性、印字濃度、真円性を向上させ、裏抜けを抑制する観点から、好ましくは18〜70mN/m、より好ましくは23〜70mN/m、より好ましくは30〜70mN/m、更に好ましくは40〜70mN/mである。なお、静的表面張力は、実施例に記載の方法により求めることができる。
表面処理剤(A)の粘度(20℃)は、好ましくは2〜20mPa・sであり、より好ましくは2.5〜16mPa・s、更に好ましくは2.5〜12mPa・sである。なお、上記の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:RE80L)を用いて20℃で測定した値である。
【0031】
<インク(B)>
本発明に用いられるインク(B)は、アニオン性顔料粒子を含有する。
[アニオン性顔料粒子]
ここで、「アニオン性」とは、純水に対して1重量%の未中和の物質を、純水に分散又は溶解させた場合、その分散液の上澄み液又は溶液の20℃でのpHが7未満となること、又は物質が純水に不溶で、pHが明確に測定できない場合には、純水に分散させた分散体のゼータ電位が負となることをいう。
【0032】
アニオン性顔料粒子としては、特に制限はないが、顔料をアニオン性界面活性剤やアニオン性ポリマーを用いてインク中に分散させたもの、アニオン性自己分散型顔料等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性自己分散型顔料及び顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子が好ましく、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子がより好ましい。
なお、本明細書において、単に顔料という場合には、アニオン性自己分散型顔料等も含まれる。
アニオン性顔料粒子の平均粒径は、印字濃度の観点から、好ましくは40〜200nm、より好ましくは50〜150nm、更に好ましくは60〜100nmである。
アニオン性顔料粒子の平均粒径は、動的光散乱法で測定されるものであり、具体的には実施例の方法によって測定される。
【0033】
アニオン性顔料粒子に含有される顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0034】
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。色相は特に限定されず、赤色、黄色、青色、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、C.I.ピグメント・オレンジ、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
これらの中でも、発色性の観点から、キナクリドン系顔料が好ましい。
また、キナクリドン固溶体顔料等の固溶体顔料も好適に用いることができる。キナクリドン固溶体顔料は、β型、γ型等の無置換キナクリドンと、2,9−ジメチルキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド122)、又はβ型、γ型等の無置換キナクリドンと2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン等のジクロロキナクリドンからなる。キナクリドン固溶体顔料としては、無置換キナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19)と2,9−ジクロロキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド202)との組み合わせからなる固溶体顔料が好ましい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
【0035】
[アニオン性自己分散型顔料]
アニオン性顔料粒子としては、アニオン性自己分散型顔料を用いてもよい。自己分散型顔料とは、親水性官能基(カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基、又は第4級アンモニウム基等のカチオン性親水基)の1種以上を直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である顔料を意味する。ここで、「他の原子団」としては、炭素数1〜12のアルカンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。
アニオン性自己分散型顔料を用いる場合、親水性官能基がカルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基であることが好ましい。顔料を自己分散型顔料とするには、例えば、親水性官能基の必要量を常法により顔料表面に化学結合させればよい。
【0036】
[顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子]
アニオン性顔料粒子としては、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を好ましく用いることができる。
このアニオン性ポリマー粒子に用いられるアニオン性ポリマーは、水分散体及びインクの印字濃度向上の観点から、水不溶性ポリマーであることが好ましい。ここで、「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、インクの保存安定性の観点から、ビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
【0037】
アニオン性ビニル系ポリマーとしては、(a)アニオン性モノマー(以下、「(a)成分」ともいう)と、(b)疎水性モノマー(以下、「(b)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位と(b)成分由来の構成単位を有し、更に(c)マクロマー(以下「(c)成分」ともいう)由来の構成単位を含有するものがより好ましい。
【0038】
((a)アニオン性モノマー)
(a)アニオン性モノマーは、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子をインク中で安定に分散させる観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、アニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
【0039】
((b)疎水性モノマー)
(b)疎水性モノマーは、水分散体及びインクの印字濃度の向上の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられ、芳香族基含有モノマーが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
【0040】
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましく、これらを併用することも好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0041】
((c)マクロマー)
(c)マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、アニオン性ポリマー粒子のインク中での保存安定性の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(c)マクロマーの数平均分子量は、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜10,000である。なお、この数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(c)マクロマーとしては、アニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0042】
ビニル系ポリマー製造時における、上記(a)〜(c)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量、以下同じ)又はビニル系ポリマー中における(a)〜(c)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子をインク中で安定に分
散させる観点から、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは4〜30重量%、更に好ましくは5〜25重量%である。
(b)成分の含有量は、インクの印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは15〜65重量%である。
(c)成分の含有量は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性及びインクの印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
【0043】
((d)ノニオン性モノマー)
モノマー混合物には、更に、(d)ノニオン性モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていてもよい。(d)成分の含有量は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜35重量%である。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでもポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、これらを併用することがより好ましい。
【0044】
商業的に入手しうる(d)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
以上の(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
(アニオン性ポリマーの製造)
アニオン性ポリマーは、モノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が好ましく、重合連鎖移動剤としては、2−メルカプトエタノールが好ましい。
【0046】
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は50〜80℃が好ましく、重合時間は1〜20時間であることが好ましい。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
【0047】
本発明で用いられるアニオン性ポリマーの重量平均分子量は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子のインク中での分散安定性と、インクの印字濃度の観点から、好ましくは5,000〜50万、より好ましくは1万〜40万、更に好ましくは2万〜20万である。なお、重量平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0048】
(顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の製造)
顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子は、水分散体として下記の工程(I)及び(II
)を有する方法により、効率的に製造することができる。
工程(I):アニオン性ポリマー、有機溶媒、顔料、及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程(II):工程(I)で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体を得る工程
【0049】
〔工程(I)〕
工程(I)では、まず、アニオン性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、有機溶媒溶液を得た後、顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、当該有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。アニオン性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、中和剤、水、顔料の順に加えることが好ましい。
アニオン性ポリマーを溶解させる有機溶媒としては、特に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。なお、アニオン性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
中和剤を用いる場合、pHが7〜11であるように中和することが好ましい。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、各種アミン等の塩基が挙げられる。また、アニオン性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
アニオン性ポリマーのアニオン性基の中和度は、分散安定性の観点から、好ましくは10〜300%、より好ましくは20〜200%、更に好ましくは30〜150%である。なお、ここで中和度とは、中和剤のモル当量をアニオン性ポリマーのアニオン性基のモル量で除したものである。
【0050】
アニオン性ポリマーの含有量は、顔料粒子の分散安定性を向上させる観点から、水分散体中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜20重量%である。
有機溶媒の含有量は、顔料表面を湿潤させる観点から、水分散体中、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
顔料の含有量は、微粒化させる観点から、水分散体中、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜40重量%である。
水の含有量は、顔料粒子の分散安定性を向上させる観点から、水分散体中、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜75重量%である。
また、アニオン性ポリマーに対する顔料の重量比〔顔料/アニオン性ポリマー〕は、分散安定性の観点から、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは70/30〜85/15である。
【0051】
工程(I)における混合物の分散方法には、特に制限はない。本分散だけで顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程(I)の分散における温度は、好ましくは0〜40℃、より好ましくは5〜30℃であり、分散時間は、好ましくは0.5〜30時間、より好ましくは1〜25時間がより好ましい。
【0052】
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、なかでも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を小粒子径化する観点から、メディア式分散機と高圧ホモジナイザーを併用することが好ましい。
【0053】
〔工程(II)〕
工程(II)では、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去することで、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体を得ることができる。得られた顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよく、架橋工程を後に行う場合は、必要により架橋後に再除去すればよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下である。
また、必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体は、顔料を含有する該ポリマーの固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料とアニオン性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、該ポリマーに顔料が内包された粒子形態、該ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、該ポリマー粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
【0054】
[アニオン性顔料粒子を含有するインク(B)]
本発明に用いられるインク(B)は、上記のアニオン性顔料粒子以外に、インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加することができる。
【0055】
アニオン性顔料粒子の含有量は、インクの印字濃度を高める観点から、インク(B)中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、より好ましくは4〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量である。
アニオン性顔料粒子に含まれる顔料の含有量は、水系インクの印字濃度を高める観点から、インク(B)中で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%、更に好ましくは5〜12重量である。
水の含有量は、インクの印字濃度を高め、良好な吐出信頼性を維持する観点から、インク(B)中で、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
【0056】
[インク(B)の物性]
インク(B)の表面張力(20℃)は、好ましくは23〜50mN/m、より好ましくは23〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mである。
インク(B)の粘度(20℃)は、良好な吐出信頼性を維持する観点から、好ましくは2〜20mPa・s、より好ましくは2.5〜16mPa・s、更に好ましくは2.5〜12mPa・sである。なお、上記の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、商品名:RE80L)を用いて20℃で測定した値である。
本発明のインク(B)を適用するインクジェットの方式は、制限されないが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターに好適である。
【0057】
<インクジェット印刷紙のリサイクル方法>
本発明のインクジェット印刷紙のリサイクル方法は、上述の表面処理剤(A)及びインク(B)を用いた、上記の工程(1)〜(3)を有する。また、必要に応じて、更に工程(4)及び(5)を有してもよい。以下、各工程について説明する。
【0058】
〔工程(1)〕
工程(1)は、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)を紙の表面に付与して表面処理紙を得る工程である。
用いる紙としては、特に限定されず、一般的に市販されている普通紙等が挙げられる。
工程(1)において、表面処理剤(A)を紙の表面に付与する方法は、特に限定されず、例えば、スプレー、刷毛塗り、ローラー塗布、インクジェット方式等の方法が挙げられる。インクジェット方式を適用する場合は、ピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いることが好ましい。これらの中でも、ローラー塗布又はインクジェット方式が好ましく、ローラー塗布がより好ましい。
表面処理剤(A)の紙の表面への付着量(塗布量)は、特に限定されないが、好ましくは5〜50g/m2、より好ましくは10〜40g/m2、更に好ましくは20〜30g/m2である。
また、表面処理剤(A)を紙の表面に付与後、一定時間放置し乾燥させることが好ましい。例えば、室温の環境下での乾燥時間としては、好ましくは1〜10時間である。
【0059】
〔工程(2)〕
工程(2)は、アニオン性顔料粒子を含有するインク(B)をインクジェット記録方式で前記表面処理紙に付与してインクジェット印刷紙を得る工程である。
本工程において、表面処理剤(A)を付与してからインク(B)を付与するまでの時間は特に制限されない。
また、工程(2)において、インク(B)を適用するインクジェット記録方式は制限されないが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いることが好ましい。
【0060】
〔工程(3)〕
工程(3)は、前記インクジェット印刷紙からインクを剥離する剥離工程である。本工程によって、インクが剥離されたパルプが得られる。
本剥離工程は、パルパー工程によって、顔料インクで印刷したインクジェット印刷紙を原料とするパルプスラリーを調製しながらインクの剥離を行うことが好ましく、必要に応じてニーディング工程を行い、パルプスラリーを混練することがより好ましい。
パルパー工程での剪断力は、インクジェット印刷紙を繊維状に解きほぐす必要最低限の剪断力は必要であるが、インクを除去効率の観点から、なるべく低剪断力で処理することが好ましい。
パルパー工程で用いる装置としては、例えば、高濃度パルパー(相川鉄工株式会社製)、デルタパルパー(低中濃度パルパー)(相川鉄工株式会社製)、ファイバーフロー(アンドリッツ株式会社製)が挙げられる。これらの装置は、列記した順に剪断力が低くなると推定される。また、それぞれの装置でパルプ濃度を下げる、攪拌速度下げる、等により低剪断力で処理することができる。
パルパー工程の際に、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、珪酸ナトリウム等のアルカリを加えるが、当該アルカリの配合量としては、原料のインクジェット印刷紙100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.7重量部である。
【0061】
また、ニーディング工程を行う場合も、パルパー工程と同様に低剪断力で処理することが好ましい。
ニーディング工程で用いる装置としては、例えば、ニーダー(株式会社山本百馬製作所製)、マイカプロセッサー(株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー製)、ディスパーザー(相川鉄工株式会社製)、ホットディスパーザー(ファイバーテック株式会社製)、コニディスク(相川鉄工株式会社製)等が挙げられる。これら装置は、パルパー工程で用いられる装置に比べ剪断力が強いため、ニーディング工程を行わずに、任意工程である工程(4)を行う、ニーディング工程でパルプスラリー濃度を下げる、攪拌回数を減らす、クリアランス等を調整し負荷動力を下げる、等により低剪断力で処理することが好ましい。
【0062】
原料のインクジェット印刷紙からインクを剥離する剥離工程において、脱インク剤の存在下でインクを剥離することが好ましい。脱インク剤の配合量は、原料のインクジェット印刷紙100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.7重量部である。
脱インク剤としては、(A1)高級アルコール系脱インク剤、(A2)脂肪酸系脱インク剤、(A3)油脂/多価アルコール系脱インク剤、及び(A4)アミン系脱インク剤から選ばれる少なくとも1種以上が好ましい。これらのうち、(A1)〜(A3)の脱インク剤については、曇点が20〜90℃であり、活性水素を有する化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られ、オキシアルキレン基を除く活性水素1個当たりの平均炭素数が15超〜24であるものが好ましい。
これらの中でも、(A1)高級アルコール系脱インク剤が好ましい。
【0063】
(A1)高級アルコール系脱インク剤
高級アルコール系脱インク剤としては、平均炭素数が15超〜24である高級アルコール系脱インク剤が好ましい。
具体的には、平均炭素数15超〜24の飽和もしくは不飽和の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有する第1級アルコールのアルキレンオキサイド(以下、AOと表記する)付加物が好ましく、構成アルコールとしては、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。
また、アルコールに付加するAOとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと表記する)、プロピレンオキサイド(以下、POと表記する)、ブチレンオキサイド(以下、BOと表記する)が好ましく、EO及びPOがより好ましい。
AOの平均付加モル数は、インク剥離性及び液状化が容易性の観点から、アルコール1モルに対し、好ましくは10〜200モル、より好ましくは20〜100モル、更に好ましくは40〜80モルである。
AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加のどちらでもよい。具体的な付加形態としては、PO付加、EO付加、(EO/POランダム付加)の何れか2つを段階的に付加した2段付加、何れか3つを段階的に付加した3段付加、何れか4つを段階的に付加した4段付加形態が挙げられる。
【0064】
(A2)脂肪酸系脱インク剤
脂肪酸系脱インク剤としては、平均炭素数15超〜24の飽和もしくは不飽和の高級脂肪酸のAO付加物及び多価カルボン酸もしくは無水物のAO付加物、さらにこれらのエステル化合物が挙げられる。
高級脂肪酸としては、飽和脂肪酸はパルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸ではパルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノール酸等が挙げられる。
多価カルボン酸又はその酸無水物には、炭素数20〜40の高級脂肪酸のダイマー酸及び/又はポリマー酸、更にはそれらのエステル化物も含まれる。ここでいうダイマー酸及び/又はポリマー酸は、モノエン酸又はジエン酸、具体的にはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸モノマーをディールス・アルダー反応のような熱重合により反応させる方法又はその他の反応方法によって合成できる。また、ダイマー酸、ポリマー酸等の多価カルボン酸はアルコールとの混合物を用いることができる。
また、高級脂肪酸又は多価カルボン酸もしくはその無水物に付加するAOとしては、EO、PO、BOが好ましく、EO及びPOがより好ましい。
AOの平均付加モル数は、インク剥離性及び液状化が容易性の観点から、高級脂肪酸又は多価カルボン酸又はその無水物1モルに対し、好ましくは50〜450モル、より好ましくは100〜400モルである。AOの付加形態は、ランダム付加又はブロック付加どちらでもよい。また、多価カルボン酸は、アルコール共存下でAOを付加して、部分的にエステル化した化合物を含むことができ、その場合、平均炭素数にはエステル結合したアルコールの炭素数も含まれる。
【0065】
(A3)油脂/多価アルコール系脱インク剤
油脂/多価アルコール系脱インク剤としては、平均炭素数15超〜24の飽和又は不飽和の脂肪酸とグリセリンとのエステルからなる油脂と2〜10価の多価アルコールとの混合物のAO付加物が好ましい。
飽和又は不飽和の脂肪酸としては、上記(A2)で例示したものが挙げられる。
2〜10価の多価アルコールとしては、油脂にAOを付加する際に反応効率を上げるのに有効であり、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖等が挙げられる。該混合物において、油脂と多価アルコールとのモル比(油脂/多価アルコール)としては、好ましくは10/1〜1/1である。
また、該混合物に付加するAOとしては、EO、PO、BOが好ましく、EO及びPOがより好ましい。
AOの平均付加モル数は、インク剥離性及び液状化が容易性の観点から、油脂及び多価アルコールの合計1モルに対し、好ましくは10〜200モル、より好ましくは20〜80モルである。AOの付加形態は、ランダム付加又はブロック付加どちらでもよい。
【0066】
(A4)アミン系脱インク剤
アミン系脱インク剤としては、アミン又はアミン塩からなるものが好ましく、具体的には下記一般式(A4−1)〜(A4−8)で表されるものがより好ましく、中でも、一般式(A4−2)で表されるものが更に好ましい。
【0067】
【化6】

【0068】
式中、R1は、炭素数8〜36のアルキル基、アルケニル基又はβ−ヒドロキシアルキル基を示し、R2、R3は、それぞれ炭素数1〜24のアルキル基又は水素原子を示し、同一でも異なっていてもよい。また、HAは、無機酸又は有機酸を示し、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。更に、W1〜W4は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜24のアルキル基を示し同一でも異なっていてもよい。l、mは、0<l+m≦300を満たす整数である。
【0069】
上記各式において、R2、R3としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル、ミルシチル、パルミトイル、ステアリル、ベヘニル、オレイル、リノレイル、イソプロピル、イソブチル基等が挙げられ、R2、R3は同一でも異なっていてもよい。
HAについて、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等が挙げられ、有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸等の1価又は多価の有機酸が挙げられる。
【0070】
また、本工程の剥離工程において、インク凝集剤の存在下でインクを剥離することが好ましい。インク凝集剤の配合量としては、インクジェット印刷紙100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.7重量部である。なお、インク凝集剤は、予め脱インク剤に配合して用いることもできる。
インク凝集剤としては、炭素数14〜24の高級脂肪酸又はその塩、多価カルボン酸又はその塩もしくはその酸無水物、及び炭素数14〜24の高級脂肪酸に由来するダイマー酸もしくはポリマー酸から選ばれる1種以上が好ましく、炭素数14〜24の高級脂肪酸又はその塩がより好ましい。
【0071】
炭素数14〜24の高級脂肪酸としては、具体的には、モノカルボン酸としては、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレイン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ロジン酸、牛脂脂肪酸、トール油脂肪酸、なたね油脂肪酸、魚油脂肪酸、或いはこれらの半硬化乃至硬化された脂肪酸、及びこれら全ての脂肪酸の塩を挙げる事ができる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等を挙げる事ができる。
【0072】
また、多価カルボン酸又はその塩もしくはその酸無水物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン化オレイン酸、クエン酸、過クエン酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、テトラデカンヘキサカルボン酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ステアリルコハク酸等が挙げられる。
【0073】
また、炭素数14〜24の高級脂肪酸に由来するダイマー酸もしくはポリマー酸は、モノエン酸又はジエン酸、具体的にはオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸モノマーをディールス・アルダー反応のような熱重合により反応させる方法又はその他の反応方法によって合成できる。また、ここでいうポリマー酸とは、1分子内にカルボキシル基を3個又はそれ以上有するポリカルボン酸であり、ダイマー酸を含まない。生成したダイマー酸及び/又はポリマー酸中に本発明の効果を損なわない範囲であれば未反応のモノマー酸が残っていても構わない。
【0074】
インク凝集剤は、剥離工程中であればいずれの時期に添加してもよいが、ニーディング工程で添加することが好ましい。
【0075】
〔工程(4)〕
工程(4)は、工程(3)の後に、剥離したインクをフローテーション法により除去し、脱墨パルプを得る工程である。本工程は、任意の工程であるが、得られる再生紙の白色度を向上させる観点から、行うことが好ましい。なお、本工程において、更に上述の脱インク剤やインク凝集剤を添加してもよい。
フローテーション工程を経たパルプスラリーは、濃縮、洗浄等を経て脱墨パルプとなり、抄紙工程に供される。
【0076】
フローテーション工程で用いる装置としては、一般的に用いられている装置が使用できるが、例えば、OKフローテーター(王子エンジニアリング株式会社製)、MTフローテータ、EcoCellフローテーター(何れも、株式会社IHIフォイトペーパーテクノロジー製)、MAC CELLフローテーター(相川鉄工株式会社製)、バーチカルフローテーター(アゼッタ社製)等が挙げられる。
これらの装置を用いて、インク、灰分、ピッチ等の異物を浮上分離して、系外にフロスとして排出する。その後、パルプスラリーは、エキストラクタ等で水を除去し、更にパルプを水に再懸濁した後、フィルターでパルプを洗浄して脱墨パルプを得ることができる。
【0077】
また、本工程において、パルプスラリーに気泡を吹き込むことが好ましい。パルプスラリーに気泡を吹き込むことで、泡にインク等の異物を付着させて浮上させ、パルプと分離する。この場合、上述の脱インク剤やインク凝集剤を添加してもよい。
【0078】
〔工程(5)〕
工程(5)は、工程(3)においてインクジェット印刷紙からインクを剥離して得られたパルプを含有するパルプ、又は工程(4)で得られた脱墨パルプを含有するパルプを用いて再生紙を製造する工程である。
白色度の高い再生紙を得る観点から、工程(4)で得られた脱墨パルプを含有するパルプを用いて再生紙を製造することが好ましい。
脱墨パルプを、長網抄紙機や丸網抄紙機等を用いて、公知の方法により、抄(紙)造した後、乾燥され再生紙が製造される。再生紙を製造する公知の方法としては、特に限定されず、例えば、JIS P8209−1994で規定の方法等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量(Mw)、表面処理剤(A)の静的表面張力の測定は、以下の方法により行った。また、インクジェット印刷紙の印字濃度の評価、及び、リサイクル後の再生紙の白色度の評価は、下記の方法で行った。
【0080】
(1)重量平均分子量(Mw)の測定
(1−1)アニオン性ポリマーの分子量
ジメチルスルホキシドの60mmol/L H3PO4, 50mmol/L LiBr溶液を展開溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(1−2)カチオン性ポリマーの分子量
0.15mol/L Na2SO4の酢酸1%水溶液を展開溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリエチレングリコールを用いて測定した。
(1−3)ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンの分子量
クロロホルムの1mmol/L ファーミンDM20(花王株式会社製)溶液を展開溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、K−804L×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
【0081】
(2)静的表面張力の測定
表面張力計(協和界面科学株式会社製、商品名:CBVP−Z)を用いて、白金プレートを5gのインクの入った円柱ポリエチレン製容器(直径3.6cm×深さ1.2cm)に浸漬させ、表面処理剤の静的表面張力を測定(20℃)した。
【0082】
(3)アニオン性顔料粒子の平均粒径の測定
大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システム「ELS−8000」(キュムラント解析)を用いて測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度は、通常5×10-3重量%程度で行った。
【0083】
(4)印字濃度の測定
実施例及び比較例のインクジェット印刷工程(工程(2))で得られた印字物を25℃湿度50%で24時間放置後、印字面の印字濃度を測定した。印字濃度の測定にはマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:RD914)を用い、Duty100%で印字したマゼンタの色濃度成分の数値を読み取った(測定条件:観測光源D65、観測視野2度、濃度基準DIN16536)。測定回数は、測定する場所を変え、双方向印字の往路において印字された部分から5点、復路において印字された部分から5点をランダムに選び、合計10点の平均値を求めた。測定値が大きいほど印刷濃度が高い。
【0084】
(5)白色度の測定
フローテーション後のパルプスラリーを抄紙した再生紙を用い、分光光度計型測色計(Technidyne社製、商品名:Color Touch PC)を用い、ISO白色度を測定した。同じ評価条件での相対比較で白色度が1%違うと大きく差が認められる。測定値が高いほど白色度が高く、良好である。
【0085】
製造例1(ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)の合成)
硫酸ジエチル10.95部と、2−エチル−2−オキサゾリン289.05部を酢酸エチル578.1部に溶解した溶液を、窒素雰囲気下、4時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を得た。次に、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量3万;アミン当量2000g/mol)200部を酢酸エチル400部に溶解した溶液を一括して加え、8時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ジメチルシロキサン共重合体(以下、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)ともいう)(セグメント(x)/セグメント(y)の重量比=40/60)を淡黄色ゴム状固体として得た。その重量平均分子量は8万であった。
得られた淡黄色ゴム状固体10gをエタノール100gに溶解し、さらにイオン交換水50gを加え、ロータリーエバポレーターによりエタノール全量と水の一部を留去し、イオン交換水に置換した。イオン交換水で濃度を調整し、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)の水分散液50g(有効分20%)を得た。
【0086】
製造例2(ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(2)の合成)
硫酸ジエチル1.54部と、2−エチル−2−オキサゾリン25.73部を酢酸エチル51.46部に溶解した溶液を、窒素雰囲気下、4時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を得た。次に、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量10万;アミン当量20000g/mol)200部を酢酸エチル400部に溶解した溶液を一括して加え、8時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ジメチルシロキサン共重合体(以下、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(2)ともいう)(セグメント(x)/セグメント(y)の重量比=88/12)を淡黄色ゴム状固体として得た。その重量平均分子量は11万であった。
得られた淡黄色ゴム状固体10gを用いて、以後、製造例1と同様の操作を行い、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(2)の水分散液50g(有効分20%)を得た。
【0087】
製造例3(ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(3)の合成)
硫酸ジエチル12.85部と、2−エチル−2−オキサゾリン54.89部を酢酸エチル137.53部に溶解した溶液を、窒素雰囲気下、4時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を得た。次に、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量3万;アミン当量2000g/mol)200部を酢酸エチル400部に溶解した溶液を一括して加え、8時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)ジメチルシロキサン共重合体(以下、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(3)ともいう)(セグメント(x)/セグメント(y)の重量比=75/25)を淡黄色ゴム状固体として得た。その重量平均分子量は4万であった。
得られた淡黄色ゴム状固体10gを用いて、以後、製造例1と同様の操作を行い、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(3)の水分散液50g(有効分20%)を得た。
【0088】
調製例1(表面処理剤(A−1)の調製)
製造例1で合成したポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)の水分散液15部(変性シリコーン有効分で3部)、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、平均分子量600)5部、及び全体で100部となるようイオン交換水を加え、マグネチックスターラーで撹拌し、1.2μmのフィルター(酢酸セルロース膜、ザルトリウス社製)で濾過して表面処理剤(A−1)を得た。得られた表面処理剤(A−1)の静的表面張力は、45mN/mであった。
【0089】
調製例2(表面処理剤(A−2)の調製)
調製例1において、「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)」に替えて、製造例2で得られた「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(2)」を用いた以外は、調製例1と同様にして、表面処理剤(A−2)を得た。得られた表面処理剤(A−2)の静的表面張力は、45mN/mであった。
【0090】
調製例3(表面処理剤(A−3)の調製)
調製例1において、「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)」に替えて、製造例3で得られた「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(3)」を用いた以外は、調製例1と同様にして、表面処理剤(A−3)を得た。得られた表面処理剤(A−3)の静的表面張力は、19mN/mであった。
【0091】
調製例4(表面処理剤(a−1)の調製)
調製例1において、「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)」に替えて、「ポリエチレングリコール変性シリコーン(信越シリコーン株式会社製、商品名KF353、HLB10)」を用いた以外は、調製例1と同様にして、表面処理剤(a−1)を得た。なお、「ポリエチレングリコール変性シリコーン」は有効分として、「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン」と同量(3部)となるように加えた。得られた表面処理剤(a−1)の静的表面張力は、25mN/mであった。
【0092】
調製例5(表面処理剤(a−2)の調製)
調製例1において、「ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(1)」に替えて、「イオン交換水」を加えた以外は、調製例1と同様にして、表面処理剤(a−2)を得た。得られた表面処理剤(a−2)の静的表面張力は、45mN/mであった。
【0093】
製造例4(アニオン性顔料粒子の水分散体の調製)
(1)アニオン性ポリマーの合成
メタクリル酸42部、ベンジルメタクリレート58部、スチレン20部、スチレンマクロマーのトルエン溶液(東亞合成株式会社製、商品名:AS−6(S))(固形分50%)40部、ポリプロピレングリコールメタクリレート(日油株式会社、商品名:ブレンマーPP−800)
30部、フェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)メタクリレート(日油株式会社、商品名:ブレンマー43PAPE−600B)30部を混合し、モノマー混合液を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン18部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%と前記連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン42部、及び重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.2部を入れて混合した混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、アニオン性ポリマー溶液(重量平均分子量10万)を得た。
(2)アニオン性顔料粒子の水分散体(1)の調製
上記(1)で得られたアニオン性ポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー45部をメチルエチルケトン300部に溶かし、その中に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液10.2部と25%アンモニア水12.2部、及びイオン交換水1150部を加え、更にマゼンタ顔料(大日精化工業株式会社製、商品名:クロモファインレッド、キナクリドン顔料)135部を加え、ディスパー翼を用いて7000rpm、20℃の条件下で1時間混合した後、ビーズミル型分散機(寿工業株式会社製、ウルトラ・アペックス・ミル、型式UAM−05、メディア粒子:ジルコニアビーズ、粒径:0.05mm)を用いて20℃で40分間混合分散した。得られた分散液をマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、高圧ホモジナイザー、商品名、型式M−140K)を用いて、180MPaの圧力でさらに5パス分散処理した。
得られた分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、フィルター(ザルトリウス社製、ミニザルトシリンジフィルター、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を含む、アニオン性顔料粒子の水分散体(1)〔固形分濃度:30.0%、平均粒径75nm〕を得た。
【0094】
調製例4(インク(B)の調製)
製造例4で得られたアニオン性顔料粒子の水分散体(1)を固形分換算で13.3部、顔料分換算で10.0部となるようにして用意した。
1,2−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)2.0部、2−ピロリドン(和光純薬株式会社製)2.0部、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製)0.5部、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)0.5部、グリセリン(花王株式会社製)2.0部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ブチルトリグリコール、日本乳化剤株式会社製)10.0部、プロキセルXL2(アビシア株式会社製)0.3部、及びイオン交換水をマグネチックスターラーで撹拌しながら、混合し、更に室温で15分間攪拌して、混合溶液を得た。ここでイオン交換水の配合量は、混合溶液と前記水分散体(1)を加えた全量が100部となるように調整した量である。
次に、上記のアニオン性顔料粒子の水分散体(1)をマグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液を添加し、1.2μmのフィルター(酢酸セルロース膜、ザルトリウス社製)で濾過してインク(B)を得た。
【0095】
実施例1
(1)表面処理工程(工程(1))
調製例1で得られた表面処理剤(A−1)をスポンジ素材のハンドローラー(素材ポリウレタン、幅15cm、直径5cm)に浸透させ、普通紙(日本製紙株式会社製、品番Nip55)のA4相当片面に25g/m2となるように塗布し、気温20℃、相対湿度35%の環境下で6時間放置した。
【0096】
(2)インクジェット印刷工程(工程(2))
次に、調製例2で得られたインク(B)を、シリコンチューブを介して、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM−930C、ピエゾ方式)のブラックヘッド上部のインク注入口に充填した。次いで、フォトショップ(アドビ社製、商品名)によりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作成し、ベタのDuty100%と10%、また、文字「轟」(フォント:MS明朝、文字サイズ:12)を、表面処理剤(A−1)を塗布した普通紙に印字した。〔印字条件=用紙種類:フォト用紙、モード設定:ブラック、フォト、双方向〕。得られた印字物を気温20℃、相対湿度35%の環境下で24時間放置し、インクジェット印刷紙を得た。
【0097】
(3)剥離工程(工程(3))
パルパー工程:5cm角に裁断した前記インクジェット印刷紙100部(絶乾重量)に対し、苛性ソーダ0.3部、脱インク剤(ステアリルアルコールのEO20モルPO10モルランダム付加物)0.2部を卓上離解機(直径150mmの3Lの円筒状ステンレス製容器)に入れ、45℃の水で合計2500部にし(パルプ濃度4.0%)、攪拌羽根で10分間剥離した。パルプ濃度が28%になるまで80メッシュステンレスワイヤーにて濃縮し、スラリー(パルプ濃度28%)を得た。
ニーディング工程:上記パルパー工程により得たスラリー(パルプ濃度28%)100部(絶乾重量)に対し、苛性ソーダ0.5部、3号珪酸ソーダ1.0部、過酸化水素0.5部、脱インク剤(ステアリルアルコールのEO20モルPO10モルランダム付加物)0.1部、インク凝集剤(ステアリン酸)0.1部を添加し、さらにパルプ濃度が25%になるまで水を添加した。その後、PFIミル(熊谷理機工業株式会社製)を用い攪拌を300回行った。パルプスラリーを60℃の条件下で180分間熟成した。パルプ濃度が1重量%となるよう水を加え、攪拌羽根でパルプが十分ほぐれるようによく攪拌し、スラリー(パルプ濃度1%)を得た。
【0098】
(4)フローテーション工程(工程(4))
スラリー(パルプ濃度1重量%)1リットル当たり2.5リットル毎分の送気量で空気を吹き込み、デンバー型フローテーター(極東振興株式会社製)を用い、5分間フローテーションを行った。その間、1分間毎にフローテーションセル上に蓄積したインクを含んだ泡沫を除去する操作を行った。フローテーション後のパルプスラリーを、パルプ濃度が10%なるまで80メッシュステンレスワイヤーにて濃縮した後、水で1重量%に希釈し脱インクパルプスラリーを得た。
【0099】
(5)再生紙の製造(抄紙方法)(工程(5))
工程(4)で得られた脱インクパルプスラリーを用いて、150メッシュワイヤーで坪量100g/m2となるようにJIS P8209−1994に従い手すきシートを作製し、再生紙を得た。
【0100】
実施例2
実施例1において、表面処理剤(A−1)に替えて、表面処理剤(A−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷紙及び再生紙を得た。
【0101】
実施例3
実施例1において、表面処理剤(A−1)に替えて、表面処理剤(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷紙及び再生紙を得た。
【0102】
比較例1
実施例1において、表面処理剤(A−1)に替えて、表面処理剤(a−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷紙及び再生紙を得た。
【0103】
比較例2
実施例1において、表面処理剤(A−1)に替えて、表面処理剤(a−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、インクジェット印刷及び再生紙の製造を行った。
【0104】
実施例1〜3及び比較例1、2で得られたインクジェット印刷紙の印字濃度及び再生紙の白色度の測定結果を表1に示す。表1から、実施例1〜3の再生紙の白色度は、比較例1、2に比べて高いことがわかる。したがって、実施例のリサイクル方法を用いれば、高い印字濃度のインクジェット印刷紙を原料とし、白色度の高い再生紙を得ることができる。
【0105】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(3)を有するインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
工程(1):ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンを含有する表面処理剤(A)を紙の表面に付与して表面処理紙を得る工程
工程(2):アニオン性顔料粒子を含有するインク(B)をインクジェット記録方式で前記表面処理紙に付与してインクジェット印刷紙を得る工程
工程(3):前記インクジェット印刷紙からインクを剥離する剥離工程
【請求項2】
前記ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンが、オルガノポリシロキサンセグメント(x)のケイ素原子の少なくとも1個に、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)セグメント(y)が結合したオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基、又は炭素数7〜22のアリールアルキル基若しくはアルキルアリール基を示し、nは2又は3である。)
【請求項3】
前記アニオン性顔料粒子が、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
【請求項4】
工程(3)の剥離工程において、高級アルコール系脱インク剤、脂肪酸系脱インク剤、油脂/多価アルコール系脱インク剤、及びアミン系脱インク剤から選ばれる1種以上の脱インク剤を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
【請求項5】
工程(3)の剥離工程において、炭素数14〜24の高級脂肪酸又はその塩からなるインク凝集剤を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
【請求項6】
下記の工程(4)を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
工程(4):工程(3)の後に、剥離したインクをフローテーション法により除去し、脱墨パルプを得る工程
【請求項7】
下記の工程(5)を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法。
工程(5):工程(3)においてインクジェット印刷紙からインクを剥離して得られたパルプを含有するパルプ、又は工程(4)で得られた脱墨パルプを含有するパルプを用いて再生紙を製造する工程
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット印刷紙のリサイクル方法を用いて製造された再生紙。

【公開番号】特開2012−136807(P2012−136807A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290318(P2010−290318)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】