インクジェット印刷装置のインク濃度変更方法およびインクジェット印刷装置
【課題】メインタンクとノズルとの間に貯留部を備える構成であっても、インクの濃度変更を速やかに行うことができるインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法を提供する。
【解決手段】インクジェット印刷装置のインク濃度変更方法は、貯留部(13、15)に対して一次側配管(21、31)を通じて別種のインクを流入させることによって、一次側配管(21、31)内のインクを置換する工程と、貯留部(13、15)からその二次側にインクを流出させて貯留部(13、15)のインク量を減少させ、その後に貯留部(13、15)に別種のインクを流入させて貯留部(13、15)のインク量を増加させることによって、貯留部(13、15)内のインクを別種のインクに置換する工程と、を備えている。
【解決手段】インクジェット印刷装置のインク濃度変更方法は、貯留部(13、15)に対して一次側配管(21、31)を通じて別種のインクを流入させることによって、一次側配管(21、31)内のインクを置換する工程と、貯留部(13、15)からその二次側にインクを流出させて貯留部(13、15)のインク量を減少させ、その後に貯留部(13、15)に別種のインクを流入させて貯留部(13、15)のインク量を増加させることによって、貯留部(13、15)内のインクを別種のインクに置換する工程と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェット印刷装置のインク濃度変更方法およびインクジェット印刷装置に係り、特に、インクを同じ色で異なる濃度の別種のインクに置換することによってインク濃度を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置は、インクを貯留するメインタンクと、インクを吐出するノズルと、これらメインタンクおよびノズルを連通接続する配管を備えている。このようなインクジェット印刷装置においてインクの種類を変更するときは、まず、配管に洗浄用流体等を流して残留インクを除去し、その後に異なる種類のインクを配管に供給する手法が知られている(例えば、特許文献、特開2003−191485号公報を参照)。また、変更前のインクが残っている配管に対して異なる種類のインクを流すことによって、変更前のインクを異なる種類のインクに置換する手法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−191485号公報
【特許文献2】特開2006−240140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、洗浄用流体を使用する手法では、洗浄用流体によって残留インクを除去する工程を別途に要するので、インクの種類を速やかに変更することができないという不都合がある。
【0005】
また、この手法は、単に洗浄用流体を配管に流すだけである。したがって、配管の途中にインクを貯留する貯留部が設けられている場合、貯留部内の残留インクを効果的に除去できない。この結果、洗浄用流体を多量に消費してしまうとともに、インクの種類の変更に一層時間がかかってしまうという不都合がある。
【0006】
また、変更前のインクが残る配管に異なる種類のインクを流す手法は、単に異なる種類のインクを配管に流すだけであり、あくまで配管(特許文献2では「供給チューブ」と記載される)のみで供給系が構成されていることを前提とした手法である。したがって、この手法を、配管の途中に貯留部が設けられている供給系に適用しても、貯留部内のインクの置換を効果的に進めることができない。この結果、置換するために消費するインク量が増大してしまうという不都合がある。また、速やかにインクの種類を変更することができないという不都合がある。
【0007】
なお、上述の従来例の手法とは別に、変更前のインクを全てノズルから吐出させて配管内を一旦空にし、その後に種類の異なるインクを配管内に供給するという手法も考えられるかも知れない。しかしながら、エア(空気)が入ってしまった配管内に種類の異なるインクを供給すると、このインク中に気泡が混在してしまい、吐出不良を招くという不都合が生じる。
【0008】
また、従来例では、メインタンクから洗浄用流体や種類の異なるインクを配管に供給する際に、ノズルからインクを排出させる。よって、洗浄用流体や種類の異なるインクを供給する流量は、ノズルの排出量以下に制限されてしまう。このため、インクの濃度変更を速やかに行えないという不都合もある。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、メインタンクとノズルとの間に貯留部を備える構成であっても、インクの濃度変更を速やかに行うことができるインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法を提供することを第1の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、ノズルから吐出されるインクを同じ色で濃度の異なる別種のインクに置換することによりインクの濃度を変更するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、インクを貯留するメインタンクと前記ノズルとの間に設けられる貯留部に対して、前記貯留部の一次側に接続されている一次側配管を通じて、前記別種のインクを流入させることによって、前記一次側配管内のインクを置換する工程と、前記貯留部からその二次側にインクを流出させて前記貯留部のインク量を減少させ、その後に前記貯留部に前記別種のインクを流入させて前記貯留部のインク量を増加させることによって、前記貯留部内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、を備え、前記一次側配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法である。
【0011】
[作用・効果]貯留部はインクを貯留可能である。制御部は、このような貯留部内のインクを別種のインクに置換させる前に、貯留部の一次側配管内のインクの置換を開始させる。これにより、貯留部内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを貯留部に流入させることができる。よって、貯留部内のインクを置換する工程を速やかに進めることができる。
【0012】
また、制御部は、貯留部のインクの置換においては、貯留部内のインク量を一旦減少させた後に、貯留部に別種のインクを供給して貯留部内のインク量を増加させる。これにより、貯留部内のインクは、効果的に別種のインクに置換される。したがって、単に貯留部に別種のインクを流し続ける場合に比べて、速やかに貯留部内のインクを置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0013】
また、上述した発明において、一次側配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。これによれば、貯留部内のインクを置換する工程を開始した当初から、別種のインクを貯留部に流入させることができる。よって、貯留部内のインクを一層速やかに置換することができる。また、一次側配管内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから貯留部内のインクの置換を進めることによって、貯留部内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、貯留部内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0014】
また、上述した発明において、前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記貯留部のインク量を減少させるときは前記貯留部にインクを流入させず、かつ、前記貯留部のインク量を増加させるときは前記貯留部からインクを流出させないことが好ましい。これによれば、貯留部内のインク量の減少および増加を速やかに行うことができる。よって、貯留部内のインクの置換を一層効率良く行うことができる。
【0015】
また、上述した発明において、前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記貯留部のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返すことが好ましい。これによれば、貯留部内のインクを十分に置換することができる。
【0016】
また、上述した発明において、前記貯留部は複数であり、前記一次側配管は前記貯留部ごとに設けられており、前記メインタンクに近い前記一次側配管および前記貯留部から順番に、対応する前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程を行うことが好ましい。すなわち、メインタンクと共通配管との間に設けられる一次側配管および貯留部のそれぞれについて、一次側から順番にインクの置換を行う。このため、一次側配管および貯留部のそれぞれに対してインクの置換を始めた当初から、当該一次側配管または貯留部に別種のインクを流入させることができる。
【0017】
また、上述した発明において、前記貯留部は、大気に開放可能なエアトラップタンクを含み、前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクを大気に開放した状態で前記エアトラップタンクのインク量を減少させることが好ましい。これによれば、エアトラップタンクのインク量を好適に減少させることができる。
【0018】
また、上述した発明において、前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクに接続された真空ポンプを駆動させて前記エアトラップタンク内の気体を排出させることによって、前記エアトラップタンクのインク量を増加させることが好ましい。これによれば、エアトラップタンクのインク量を好適に増加させることができる。
【0019】
また、上述した発明において、前記ノズルを有する複数のインクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の分岐管に対してインクを供給可能な共通配管に前記別種のインクを流すとともに、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管と接続されるバイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、をさらに備え、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。共通配管内のインクを置換する工程ではバイパス配管を通じて共通配管内のインクを排出させるので、この工程を効率よく行うことができる。また、この共通配管内のインクを置換する工程を先に開始させ、その後に分岐管内のインクを置換する工程を開始する。このため、分岐管内のインクを置換する工程を開始した当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを置換する工程についても速やかに進めることができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0020】
また、上述した発明において、前記共通配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。これによれば、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、別種のインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを一層速やかに置換することができる。また、共通配管内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから分岐管内のインクの置換を進めることによって、共通配管内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、共通配管内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0021】
また、上述した発明において、前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程が終了した後に、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。一次側配管および貯留部は共通配管の一次側に設けられている。このため、共通配管内のインクの置換を開始した当初から、別種のインクを共通配管に流入させることができる。また、一次側配管内および貯留部内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから共通配管内のインクの置換を進めることによって、共通配管内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、共通配管内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0022】
また、上述した発明において、前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記バイパス配管を通じてインクを排出させることが好ましい。これによれば、一次側配管内のインクを置換する工程および貯留部内のインクを置換する工程を一層効率良く行うことができる。
【0023】
また、上述した発明において、前記工程のそれぞれにおいて前記別種のインクの使用量を計測することが好ましい。各工程における別種のインクの使用量を好適に管理または監視することができる。
【0024】
また、上述した発明において、前記使用量に基づいて前記工程の少なくともいずれかを終了させることが好ましい。各工程を適切なタイミングで終了させることができる。
【0025】
また、本発明のインクジェット印刷装置は、インクを吐出可能なノズルを有する複数のインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにそれぞれ連通接続される複数の分岐管と、前記複数の分岐管が並列的に接続され、前記分岐管のそれぞれにインクを供給する共通配管と、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管に接続されているバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられるバイパス開閉弁と、前記ノズルから吐出されるインクの濃度を変更する際には、前記共通配管に同じ色で濃度の異なる別種のインクを流すとともに、前記バイパス開閉弁を開放して前記バイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換させ、かつ、この共通配管内のインクの置換を開始した後に前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換させる制御部と、を備えるインクジェット印刷装置である。
【0026】
[作用・効果]本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、バイパス配管を備えているので、このバイパス配管を通じて共通配管からインクを効率よく排出させることができる。よって、共通配管内のインクを別種のインクに速やかに置換することができる。また、制御部は、共通配管内のインクの置換を先に開始させ、その後に分岐管内のインクの置換を開始させる。このため、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクについても速やかに置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0027】
また、上述した発明において、前記制御部は、前記バイパス開閉弁を閉止して前記共通配管内のインクの置換を終了させた後に、前記分岐管内のインクの置換を開始させることが好ましい。これによれば、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、別種のインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを一層速やかに置換することができる。また、共通配管内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから分岐管内のインクの置換を進めることによって、共通配管内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、共通配管内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0028】
なお、本明細書は、次のような液体供給装置に係る発明も開示している。
【0029】
(1)ノズルから吐出されるインクを同じ色で濃度の異なる別種のインクに置換することによりインクの濃度を変更するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、前記ノズルを有する複数のインクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の分岐管に対してインクを供給可能な共通配管に前記別種のインクを流すとともに、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管と接続されるバイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始した後に前記ノズルからインクを吐出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、を備えるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【0030】
前記(1)に記載の発明によれば、バイパス配管を通じて共通配管内のインクを排出させるので、共通配管内のインクを置換する工程を効率よく行うことができる。また、この共通配管内のインクの置換する工程を先に開始させ、その後に分岐管内のインクを置換する工程を開始させる。このため、分岐管内のインクを置換する工程を開始した当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを置換する工程についても速やかに進めることができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0031】
(2)上述したインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、各工程を終了する際には前記メインタンクから別種のインクが流出することを停止させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【0032】
前記(2)に記載の発明によれば、各工程における別種のインクの使用量を適切に計測することができる。
【0033】
(3)上述したインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、前記一次側配管内のインクを置換する工程を終了する際には、前記メインタンクから別種のインクが流出することを停止させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【0034】
前記(3)に記載の発明によれば、一次側配管内および貯留部内のインクを置換する各工程で消費された別種のインクの使用量を適切に計測することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法によれば、制御部は、貯留部内のインクを別種のインクに置換させる前に、貯留部の一次側配管内のインクの置換を開始させる。これにより、貯留部内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを貯留部に流入させることができる。よって、貯留部内のインクを置換する工程を速やかに進めることができる。
【0036】
また、制御部は、貯留部のインクの置換においては、貯留部内のインク量を一旦減少させた後に、貯留部に別種のインクを供給して貯留部内のインク量を増加させる。これにより、貯留部内のインクは、効果的に別種のインクに置換される。したがって、単に貯留部に別種のインクを流し続ける場合に比べて、速やかに貯留部内のインクを置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0037】
また、本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、バイパス配管を備えているので、このバイパス配管を通じて共通配管からインクを効率よく排出させることができる。よって、共通配管内のインクを別種のインクに速やかに置換することができる。また、制御部は、共通配管内のインクの置換を先に開始させ、その後に分岐管内のインクの置換を開始させる。このため、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクについても速やかに置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【図2】サブタンクの外観斜視図である。
【図3】サブタンクの側面図である。
【図4】インクの濃度変更の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図6】エアトラップタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図7】エアトラップタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図8】第2配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図9】サブタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図10】サブタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図11】共通配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図12】分岐管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.全体構成
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1は、実施例1に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【0040】
インクジェット印刷装置1は、複数のインクジェットヘッド3を備える。各インクジェットヘッド3は、その底面にインク滴を吐出可能な複数のノズル5を有する。これらのノズル5が不図示の印刷用紙に対してインク滴を吐出することによって、印刷が行われる。
【0041】
各インクジェットヘッド3には、供給系7からインクがそれぞれ供給される。また、インクジェット印刷装置1は、吸引によりノズル5からインクを排出させる吸引系9を備えている。また、供給系7および吸引系9を制御する制御部10を備えている。以下では、これらの供給系7、吸引系9、及び制御部10に分けて説明する。
【0042】
2.供給系7の構成
供給系7は、インクを貯留するメインタンク11と、メインタンク11とインクジェットヘッド3との間に設けられ、インクを貯留するエアトラップタンク13およびサブタンク15と、これらを連通接続する複数の配管に大別される。メインタンク11は、インクの供給源である。メインタンク11の内部は、大気に開放されている。なお、本明細書では、メインタンク11から供給されるインクの流れの上流側および下流側を、それぞれ適宜に「一次側」および「二次側」と呼ぶこととする。
【0043】
メインタンク11とエアトラップタンク13との間は、第1配管21によって連通接続されている。この第1配管21には、インクの流れを遮断可能な開閉弁23が設けられている。
【0044】
エアトラップタンク13は、インクからエア(溶存気体)を脱気または脱泡するための容器である。エアトラップタンク13はハードケースで構成されており、その外形状は内部に貯留するインク量に応じて膨張/収縮しない。なお、本実施例では、メインタンク11内のインクは脱気処理されていない。
【0045】
エアトラップタンク13には、その内部を大気に開放するための開閉弁25が設けられている。また、エアトラップタンク13には、その内部の気体を排出するための真空ポンプ26が接続されている。これらエアトラップタンク13と真空ポンプ26との間には、開閉弁27が設けられている。
【0046】
また、エアトラップタンク13には、その内部に貯留されるインク量を検出する液面レベルセンサ28H、28Lが設けられている。具体的には、液面レベルセンサ28Hは、エアトラップタンク13内のインクの液位が第1の高さ位置(以下、「高液位」という)に達しているか否かを検出する。液面レベルセンサ28Lは、エアトラップタンク13内のインクの液位が高液位より低い第2の高さ位置(以下、「低液位」という)に達しているか否かを検出する。
【0047】
ここで、高液位は高いほど好ましく、高液位と低液位の高低差は大きいほど好ましい。また、低液位は、エアトラップタンク13の二次側にエア(空気)が流入しない範囲内で、かつ、その範囲の下限値近傍であることが好ましい。具体的には、低液位は、エアトラップタンク13内のインクが二次側に流出する流出口13aより僅かに高い位置であることが好ましい。なお、流出口13aはエアトラップタンク13と後述する第2配管31との接合部に相当する。
【0048】
エアトラップタンク13は、この発明における貯留部に相当する。また、第1配管21はエアトラップタンク13の一次側に接続されているので、この発明における一次側配管(エアトラップタンク13に対応した一次側配管)に相当する。
【0049】
エアトラップタンク13とサブタンク15との間には、第2配管31が設けられている。第2配管31は、エアトラップタンク13の底面に接続されている。この場合、低液位は、エアトラップタンク13の底面より僅かに高い位置に設定されていることが好ましい。第2配管31には、インクを二次側に送るためのポンプ33と、インクの流れを遮断可能な開閉弁35とが設けられている。
【0050】
図2は、サブタンクの外観斜視図であり、図3はサブタンクの側面図である。本実施例のサブタンク15は、内部に貯留するインク量に応じて膨張/収縮変形する。図3では、収縮した状態のサブタンク15を実線で示し、膨張した状態のサブタンク15を点線で示す。図示するように、サブタンク15の膨張/収縮によって、サブタンク15の上下方向の寸法(以下、「高さ寸法」と適宜に呼ぶ)Dが変動する。
【0051】
サブタンク15の表面15fの中央には、上方に突出するように突片37が設けられている。この突片37は、サブタンク15の高さ寸法Dの変動に応じて上下方向に昇降する。この突片37の周囲には、突片37の高さ位置を検出するための寸法センサ39L、39Hが設けられている。
【0052】
寸法センサ39Lは、突片41を挟んで互いに対向するように配置される光発光部39Laと光受光部39Lbとを有する。寸法センサ39Hは、同様に配置される光発光部39Haと光受光部39Hbとを有する。
【0053】
寸法センサ39Lは、高さ寸法Dが第1所定値L以上であるときに突片37を検出可能な位置に配置されている。また、寸法センサ39Hは、高さ寸法Dが第1所定値Lより大きな第2所定値H以上であるときに突片37を検出可能な位置に配置されている。これにより、寸法センサ39Lは、高さ寸法Dが第1所定値Lに達しているか否かを検出する。また、寸法センサ39Hは、高さ寸法Dが第2所定値Hに達して居いるか否かを検出する。第1所定値L及び第2所定値Hはそれぞれ、ノズル5のメニスカス圧が適正な範囲内に収まるように設定されることが好ましい。
【0054】
サブタンク15は、この発明における貯留部に相当する。また、第2配管31はサブタンク15の一次側に接続されているので、この発明における一次側配管(サブタンク15に対応した一次側配管)に相当する。
【0055】
図1を参照する。サブタンク15とインクジェットヘッド3との間には、共通配管41と複数の分岐管43が設けられている。共通配管41の一次側は、サブタンク15に連通接続されている。この共通配管41に、複数の分岐管43が並列的に接続されている。図1では、共通配管41と複数の分岐管43との各接合部をそれぞれ符号「c」を付して明示する。各分岐配管43の他端は、それぞれ上述したインクジェットヘッド3に連通接続されている。
【0056】
共通配管41には、さらに、バイパス配管45が連通接続されている。バイパス配管45は、各接合部cのいずれよりも二次側の位置で共通配管41と接続している。図1では、共通配管41とバイパス配管45との接合部を符号「d」を付して明示する。
【0057】
バイパス配管45の他端は、廃液タンク51に接続されている。バイパス配管45には、インクの流れを遮断可能な開閉弁47と、インクを廃液タンク51に送るためのポンプ49とが設けられている。開閉弁47は、この発明におけるバイパス開閉弁に相当する。
【0058】
3.吸引系9の構成
吸引系9は、インクジェットヘッド3ごとに設けられる複数のキャップ53を備えている。キャップ53は、ノズル5から溶媒が蒸発することを防止したり、ノズルに異物が付着することを防止する。各キャップ53は、各インクジェットヘッド3の底面を覆うキャッピング位置と、印刷用紙(不図示)に対して印刷を行う印刷動作を妨げない(印刷動作時に他の部材と干渉しない)退避位置との間で移動可能に構成されている。なお、図1では、キャッピング位置にあるキャップ53を図示している。
【0059】
各キャップ53には、それぞれ吸引用分岐管55が連通接続されている。各吸引用分岐管55の他端は、吸引用配管57に並列的に接続され、吸引用配管57に集合されている。吸引用配管57の他端は、上述した廃液タンク51に接続されている。吸引用配管57には開閉弁58と吸引用ポンプ59が設けられている。吸引用ポンプ59は、キャップ53とインクジェットヘッド3との間の空間を負圧にして、ノズル5からインク滴を吸引排出させるとともに、ノズル5から排出されたインクを廃液タンク51へ送る。
【0060】
4.制御部10の構成
制御部10には、上述した液面レベルセンサ28H、28Lおよび寸法センサ39H、39Lの各検出結果が入力される。また、制御部10は、上述した供給系7の開閉弁23、25、27、35、47と、ポンプ26、33、49を制御する。また、制御部10は、吸引系9の開閉弁58及びポンプ59を制御する。さらに、制御部10は、ノズル5の吐出を制御する。なお、真空ポンプや吸引用ポンプについても、適宜に「ポンプ」と呼ぶ。
【0061】
制御部10は、各種処理、操作を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0062】
5.動作
次に、実施例1に係るインクジェット印刷装置1において、インクの濃度変更を行うときの動作について説明する。図4は、インクの濃度変更の動作を示すフローチャートである。
【0063】
図4に示すように、ステップS1においてメインタンク11を交換した後は、ステップS2−S7に示すように、メインタンク11に近い配管および貯留部の順番に個別に置換していく。以下、各ステップについて説明する。
【0064】
<ステップS1> メインタンク11を交換
制御部10は、全ての開閉弁23、25、27、35、47、58が閉止し、全てのポンプ26、33、49、59が停止した状態にする。また、制御部10は、ノズル5が液滴を吐出しないように制御する。そして、メインタンク11を、同じ色で異なる濃度のインクを貯留する他のメインタンク11a(図5参照)に交換する。以下では、変更前のインクと同じ色で濃度が異なるインクを適宜に「別種のインク」と呼ぶ。なお、インクの成分が異なればインクの濃度も異なってくるので、「別種のインク」は、変更前のインクと同じ色で成分が異なるインクを含む意味である。また、メインタンク11とメインタンク11aとを特に区別しない場合は、単に「メインタンク11」と記載する。
【0065】
<ステップS2> 第1配管21を置換〜第1配管内のインクを置換する工程
図5を参照してステップS2の処理を説明する。図5は、第1配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。なお、図5では、エアトラップタンク13およびサブタンク15と、メインタンク11aの濃淡を変えて図示し、これによりインクの濃度が異なっていることを模式的に示している。但し、これはあくまでも説明の便宜上であり、濃淡によってインクの濃度を厳密に示すものではない。この点は、その他の図6乃至図12においても同様である。
【0066】
まず、図5(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。図5では、置換する対象(ステップS2では第1配管)の符号にアンダーラインに付けて明示する。また、開放している開閉弁および駆動しているポンプの符号を三角形で囲んで明示する(図6乃至図12においても同様である)。
【0067】
ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41に流出し、共通配管41からバイパス配管45を通じて廃液タンク51に送られる。このとき、ノズル5は液滴を吐出しないように制御されているので、分岐管43にはインクが流入しない。また、サブタンク15の一次側の開閉弁35が閉止されているので、サブタンク15にはインクが流入しない。したがって、サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15の外形状が収縮変形する。
【0068】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づき、サブタンク15の高さ寸法Dを監視する。高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、制御部10は開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図5(b)の状態に移行する。
【0069】
図5(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、エアトラップタンク13内のインクは、第2配管31を通じてサブタンク15に流入する。また、メインタンク11aから第2配管を通じてエアトラップタンク13にインクが流入する。これにより、エアトラップタンク13の液位は略同じに保たれる。サブタンク15が貯留するインク量は増加し、サブタンク15の外形状が膨張変形する。
【0070】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dを監視する。高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、制御部10はポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図5(a)の状態に再び移行する。
【0071】
このように、図5(a)に示す状態と図5(b)に示す状態を所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、メインタンク11から第1配管21に流入するインク量が、第1配管21の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、第1配管21内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0072】
なお、図5(a)、(b)に示す2つの状態の間で相互に切り替わるきっかけは、上述のとおり、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったこと、および、同寸法Dが第2所定値Hに達したことである。このようなシーケンスとすることで、第1サブタンク15の貯留能力が許す限り、第1配管21に早期により多くの別種のインクを流すことができる。なお、このシーケンスであっても、実際には寸法センサ37Hのヒステリシスやポンプによるオーバーシュートがあるため、切り替わる頻度は緩和される。
【0073】
所定時間が経過すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図5(c)の状態に移行する。図示するように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS2を終了する。これにより、第1配管21内のインクが別種のインクに置換される。
【0074】
なお、本ステップS2の処理を行っている際、制御部10は、別種のインクの使用量を監視している。使用量とは、メインタンク11から流出したインク量である。別種のインクの使用量については、例えば、ポンプ33の駆動によってメインタンク11とエアトラップタンク13との間を流れるインクの流量と、ポンプ33の駆動時間に基づいて計測してもよい。また、ポンプ33を1回駆動したとき(すなわち、ポンプ33を1回ON−OFFしたとき)のインクの使用量が略一定の場合は、1回当たりのインクの使用量と、ポンプ33を駆動した回数とに基づいて別種のインクの使用量を計測してもよい。また、ポンプ49の駆動時間とインクの流量に基づいてインクの使用量を計測してもよいし、ポンプ49の駆動1回当たりのインクの使用量とポンプ49の駆動回数とに基づいてインクの使用量を計測してもよい。あるいは、寸法センサ37H、37Lの検出結果からサブタンク15に流入したインク量を取得できるので、寸法センサ37H、37Lの検出結果に基づいて計測することも可能である。
【0075】
<ステップS3> エアトラップタンク13を置換〜エアトラップタンク内のインクを置換する工程
図6、図7を参照してステップS3の処理を説明する。図6、7は、エアトラップタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0076】
まず、図6(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15は収縮変形する。
【0077】
制御部10は、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁25、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図6(b)の状態に移行する。
【0078】
図6(b)を参照する。開閉弁25の開放により、エアトラップタンク13の内部は大気に開放された状態となる。ポンプ33の駆動により、エアトラップタンク13から第2配管31を通じてサブタンク15にインクが流れる。エアトラップタンク13のインク量は、サブタンク15へ流出した分だけ減少する(エアトラップタンク13の液位が低下する)。
【0079】
制御部10は、液面レベルセンサ28Lの検出結果に基づき、エアトラップタンク13内のインクの液位を監視する。そして、液位が低液位未満になったと判断すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図6(c)の状態に移行する。
【0080】
図6(c)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。エアトラップタンク13の内部は再び密閉された状態になる。図6(c)では、エアトラップタンク13の液位が低液位未満であることを模式的に示している。
【0081】
続いて、制御部10は、開閉弁23、27を開放させ、真空ポンプ26を駆動させる。これにより、図7(a)の状態に移行する。
【0082】
図7(a)を参照する。真空ポンプ26の駆動により、エアトラップタンク13内の気体が排出される。これにより、メインタンク11a内のインクが第1配管23を通じてエアトラップタンク13に流入する。エアトラップタンク13のインク量は増加する(エアトラップタンク13の液位が上昇する)。
【0083】
このとき、第1配管23内のインクは既に別種のインクに置換されているので、エアトラップタンク13に流入するインクは、別種のインクである。
【0084】
制御部10は、図7(a)の状態に移行した後、液面レベルセンサ28Hの検出結果に基づき、エアトラップタンク13内のインクの液位を監視する。液位が高液位に達したと判断すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図7(b)の状態に移行する。
【0085】
図7(b)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。
【0086】
その後、制御部10は、図6(a)の状態に戻る。そして、上述した図6(a)乃至(c)及び図7(a)、(b)の一連の処理を再び行う。この一連の処理を所定回数にわたって繰り返すと、ステップS3を終了する。所定回数は、濃度計算や実験等に基づいて予め設定されている(後述)。これにより、エアトラップタンク13内のインクが別種のインクに置換される。なお、図7(b)では、エアトラップタンク13内のインクが別種のインクに置換されたことを模式的に示している。
【0087】
ここで、上述した所定回数の設定例について具体的に説明する。以下では、図6(b)を示して説明した「エアトラップタンク13のインク量を減少させること」を、適宜に「排出」または「n回目の排出」という。また、図7(a)を示して説明した「エアトラップタンク13のインク量は増加させること」を適宜に「補充」または「n回目の補充」という。なお、「n回目の」とは、「n回目の一連の処理における」という意味である。
【0088】
例えば、以下のような場合を考える。すなわち、変更前のインクの濃度(値)は1.00であり、別種のインクの濃度(値)は1.50である。また、高液位のときのエアトラップタンク13内のインク量は200[ml]であり、低液位のときのエアトラップタンク13のインク量は40[ml]である。
【0089】
ここで、インクの濃度を1.45以上に置換することを目標とする。なお、この場合、濃度変更の許容値は0.05(=|1.50−1.45|)である。
【0090】
1回目の一連の処理を開始するとき、すなわち、ステップS3を開始するとき、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積200[ml]であるとする。1回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積40[ml]となる。さらに、1回目の補充の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.40、容積200[ml]となる。このように、一連の処理を1回行うだけではインクの濃度は目標(1.45以上)に達しない。なお、1回目の補充後の濃度1.40は、下記式により求められる。
1.40=((200−40)×1.5+40×1.0)/200
【0091】
続いて一連の処理を繰り返す。2回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.40、容積40[ml]となる。さらに、2回目の補充の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.48、容積200[ml]となる。このように、一連の処理を2回行うことによって、インクの濃度は1.48となり、目標(1.45以上)に達する。
【0092】
したがって、上述の場合では、予め設定される所定回数は2回となる。また、本ステップS2の工程におけるインクの使用量は、320[ml]となる。
【0093】
なお、本ステップS3を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。別種のインクの使用量については、上述したように、種々の手法で計測することができる。この他に、ステップS3における別種のインクの使用量については、液面レベルセンサ28L、28Hの検出結果に基づいて計測することも可能である。
【0094】
<ステップS4> 第2配管31を置換〜第2配管内のインクを置換する工程
図8を参照してステップS4の処理を説明する。図8は、第2配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0095】
まず、図8(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15は収縮変形する。
【0096】
制御部10は、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図8(b)の状態に移行する。
【0097】
図8(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、メインタンク11a内の別種のインクは、第1配管21を通じてエアトラップタンク13に流入する。エアトラップタンク13内のインクは、第2配管31を通じてサブタンク15に流入する。これにより、サブタンク15は膨張変形する。
【0098】
このとき、エアトラップタンク13内のインクは既に別種のインクに置換されているので、エアトラップタンク13から第2配管31に流入するインクは、別種のインクである。
【0099】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づいて高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、ポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図8(a)の状態に再び移行する。
【0100】
このように、図8(a)に示す状態と図8(b)に示す状態を所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、エアトラップタンク13から第2配管31に流入するインク量が、第2配管31の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、第2配管31内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0101】
所定時間が経過すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図8(c)の状態に移行する。
【0102】
図8(c)に示すように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS4を終了する。これにより、第2配管31内のインクが別種のインクに置換される。なお、本ステップS4を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。
【0103】
<ステップS5> サブタンク15を置換〜サブタンク内のインクを置換する工程
図9、図10を参照してステップS5の処理を説明する。図9、図10は、サブタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0104】
まず、図9(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15は収縮変形する。
【0105】
制御部10は、寸法センサ37Lの検出結果に基づいて高さ寸法Dが第1所定値L未満となったと判断すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図9(b)の状態に移行する。
【0106】
図9(b)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。図9(b)では、サブタンク15が収縮変形した様子を模式的に示している。
【0107】
続いて、制御部10は、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図9(c)の状態に移行する。
【0108】
図9(c)に示すように、ポンプ33の駆動により、エアトラップタンク13から第2配管31を通じてサブタンク15にインクが流れる。これにより、サブタンク15は膨張変形する。エアトラップタンク13には、メインタンク11aから別種のインクが流入する。
【0109】
このとき、第2配管31内のインクは既に別種のインクに置換されているので、サブタンク15に流入するインクは、別種のインクである。
【0110】
制御部10は、寸法センサ37Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図10(a)の状態に移行する。
【0111】
図10(a)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。図10(a)では、サブタンク15が図9(c)の状態に比べて膨張変形した様子を模式的に示している。
【0112】
その後、制御部10は、図9(a)の状態に戻る。そして、上述した図9(a)乃至(c)及び図10(a)の一連の処理を再び行う。この一連の処理を所定回数にわたって繰り返すと、ステップS5を終了する。所定回数は、濃度計算や実験等に基づいて予め設定されている。これにより、サブタンク15内のインクが別種のインクに置換される。なお、図10(a)では、サブタンク15内のインクが別種のインクに置換されたことも模式的に示している。また、本ステップS5を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。
【0113】
<ステップS6> 共通配管41を置換〜共通配管内のインクを置換する工程
図11を参照してステップS6の処理を説明する。図11は、共通配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0114】
まず、図11(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15は収縮変形する。
【0115】
制御部10は、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図11(b)の状態に移行する。
【0116】
図11(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、メインタンク11aからエアトラップタンク13にインクが流入する。また、エアトラップタンク13からサブタンク15にインクが流入する。サブタンク15は膨張変形する。
【0117】
このとき、サブタンク15内のインクは既に別種のインクに置換されているので、サブタンク15から共通配管41に流入するインクは、別種のインクである。
【0118】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、ポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図11(a)の状態に再び移行する。
【0119】
このように、図11(a)に示す状態と図11(b)に示す状態を、所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、サブタンク15から共通配管41に流入するインク量が、共通配管41の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、共通配管41内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0120】
所定時間が経過すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図11(c)の状態に移行する。
【0121】
図11(c)に示すように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS6を終了する。これにより、共通配管41内のインクが別種のインクに置換される。なお、本ステップS6を行っている際も、制御部10は別種のインクの使用量を監視する。
【0122】
<ステップS7> 分岐管43を置換〜分岐管内のインクを置換する工程
図12を参照してステップS7の処理を説明する。図12は、分岐管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0123】
まず、図12(a)に示すように、制御部10は、開閉弁58を開放させ、ポンプ59を駆動させる。
【0124】
ポンプ59の駆動により、キャップ53とインクジェットヘッド3との間の各空間は負圧となり、吸引されたインクがノズル5から排出する。すなわち、吸引によるパージが行われる。なお、この際、制御部10が液滴を吐出させるようにノズル5(図1参照)を制御してもよい。この場合、ノズル5にフラッシング動作を行わせながら、吸引によるパージが行われる。
【0125】
各インクジェットヘッド3から排出されたインクは、対応するキャップ53および吸引用分岐管55を通じて吸引用配管57で集合されて、廃液タンク51に送られる。他方、パージに伴ってサブタンク15内のインクが吸引され、サブタンク15から共通配管41および分岐管43を通じてインクジェットヘッド3(ノズル5)にインクが流入する。
【0126】
このとき、共通配管41内のインクは既に別種のインクに置換されているので、分岐管55およびインクジェットヘッド3(ノズル5)に流入するインクは、別種のインクである。
【0127】
制御部10は、寸法センサ37Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図12(b)の状態に移行する。
【0128】
図12(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、メインタンク11aからエアトラップタンク13にインクが流入する。また、エアトラップタンク13からサブタンク15にインクが流入する。サブタンク15は膨張変形する。
【0129】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づいて高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、ポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図12(a)の状態に再び移行する。
【0130】
このように、図12(a)に示す状態と図12(b)に示す状態を、所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、共通配管41から各分岐管43に流入するインク量が、各分岐管43の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。あるいは、共通配管41から各分岐管43に流入するインク量が、各分岐管の管内(空間)の体積と各インクジェットヘッド3内の流路(空間)の体積との和の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、分岐管43およびインクジェットヘッド3内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0131】
所定時間が経過すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図12(c)の状態に移行する。
【0132】
図12(c)に示すように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS7を終了する。これにより、分岐管43内のインクが別種のインクに置換される。なお、本ステップS7を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。
【0133】
以上に説明したステップS1乃至S7の処理を行うことにより、変更前のインクは、別種のインクに置換される。この結果、ノズル5は、濃度の異なるインク滴を好適に吐出可能となる。
【0134】
このように、実施例1に係るインクジェット印刷装置1およびインク濃度変更方法によれば、第1配管21内のインクを置換する工程(ステップS2)を終了した後に、エアトラップタンク13内のインクを置換する工程(ステップS3)を開始する。このため、エアトラップタンク13内を置換する工程を開始した当初から、別種のインクをエアトラップタンク13に流入させることができる。よって、エアトラップタンク13内の置換を速やかに進めることができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。また、別種のインクの使用量を抑えることができる。
【0135】
また、第1配管21内のインクの濃度変更を完了してからトラップタンク13内のインクの置換を進めるので、トラップタンク13内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、トラップタンク13内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0136】
同様に、第2配管31内のインクを置換する工程(ステップS4)を行った後に、サブタンク15内のインクを置換する工程(ステップS5)を行う。このため、サブタンク15内を置換する工程を開始した当初から、別種のインクをサブタンク15に流入させることができる。よって、サブタンク15内の置換を速やかに進めることができる。また、サブタンク15内のインクの置換を確実に行うことができる(サブタンク15内のインクの濃度を適切に変更することができる)。
【0137】
また、メインタンク11に近い方から順番に、すなわち、第1配管21、エアトラップタンク13、第2配管31、サブタンク15、共通配管41、分岐管55(インクジェットヘッド3)の順番で置換を個別に行う。このため、全ての配管および貯留部を置換する工程において、開始した当初から当該配管または当該貯留部に別種のインクを流入させることができる。このため、各配管および各貯留部を、一次側から順番に確実に置換することができ、各配管内および各貯留部内のインクの濃度を適切に変更させることができる。
【0138】
また、エアトラップタンク13内のインクを置換する工程(ステップS3)では、開閉弁25を開放させてエアトラップタンク13を大気に開放した状態でエアトラップタンク13のインク量を減少させる(図6(b))。このため、エアトラップタンク13のインク量を好適に減少させることができる。さらに、この際、エアトラップタンク13にインクを流入させない。このため、エアトラップタンク13内のインク量を速やかに減少させることができる。
【0139】
また、エアトラップタンク13内のインクを置換する工程(ステップS3)では、真空ポンプ26を駆動させてエアトラップタンク13内の気体を排出させることによって、エアトラップタンク13のインク量を増加させる(図7(a))。このため、エアトラップタンク13のインク量を好適に増加させることができる。さらにこの際、エアトラップタンク13からインクを流出させない。このため、エアトラップタンク13内のインク量を速やかに増加させることができる。
【0140】
また、低液位は、エアトラップタンク13の二次側にエア(空気)が流入しない範囲の下限値近傍に設定されているので、高液位と低液位の高低差を大きくすることができる。このため、エアトラップタンク13内のインクを増加させたときに、エアトラップタンク13内のインクに含まれる別種のインクの混合割合を高くすることができる。このため、エアトラップタンク13内のインクを別種のインクに効果的に置換することができる。
【0141】
また、サブタンク15内のインクを置換する工程(ステップS5)において、サブタンク15のインク量を減少させる際(図9(a)参照)、サブタンク15にインクを流入させない。このため、サブタンク15内のインク量を速やかに減少させることができる。また、サブタンク15のインク量を増加させる際(図9(c))、サブタンク15からインクを流出させない。このため、サブタンク15内のインク量を速やかに増加させることができる。
【0142】
また、サブタンク15内のインクを置換する工程(ステップS5)では、高さ寸法Dが比較的低い第1所定値未満となるまでサブタンク15内のインク量を減少させる。このように、許容される限りサブタンク15内のインク量を減少させてから、サブタンク15内に別種のインクを流入させるので、サブタンク15内のインクの置換を効果的に行うことができる。
【0143】
また、貯留部(13、15)内のインクを置換する工程(ステップS3、S5)では、貯留部(13、15)のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返す。このため、貯留部(13、15)内の置換を十分に行うことができる。
【0144】
また、第1配管21内、エアトラップタンク13内、第2配管31内、および、サブタンク15内のインクを置換する各工程(ステップS2乃至5)では、バイパス配管45を通じてインクを排出させる。このため、これらの工程を一層効率良く行うことができる。
【0145】
また、共通配管41内のインクを置換する工程(ステップS6)では、バイパス配管45を通じて共通配管41内のインクを排出させる。よって、共通配管41内のインクを効率良く置換することができる。これにより、分岐管43内のインクを置換する工程(ステップS7)を開始した当初から、別種のインクを全ての分岐管43に流入させることができる。よって、分岐管43内のインクを一層速やかに置換することができる。また、別種のインクの使用量を抑えることができる。
【0146】
また、ステップS2乃至S7の各工程では、制御部10は別種のインクの使用量を計測する。このため、各工程における別種のインクの使用量を好適に管理または監視することができる。
【0147】
また、ステップS2乃至S7の各工程を終了する際には、開放状態にある開閉弁を閉止させ、駆動状態にあるポンプを停止させて、メインタンク11から別種のインクが流出することを停止させる。このため、ステップS2乃至S7の各工程における別種のインクの使用量を適切に計測することができる。
【0148】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0149】
(1)上述した実施例では、ステップS2乃至S7の各工程を順次個別に行い、一の工程が完了した後に次の工程を開始したが、これに限られない。たとえば、一の工程を開始した後、その工程が終了する前に、次の工程を開始するように変更してもよい。具体的には、第1配管21内を置換する工程を開始した後であって終了する前に、エアトラップタンク13内のインク量を減少させるなど、エアトラップタンク13内を置換する工程を開始した後であって終了する前に、ノズル5からインクを排出させるなど、分岐管43内を置換する工程を開始してもよい。このような変形例であっても、次の工程の置換対象である配管または貯留部に対して、少なくとも別種のインクを含んだインクを流入させることができる。よって、次の工程を速やかに進めることができる。
【0150】
(2)上述した実施例では、貯留部としてエアトラップタンク13およびサブタンク15を例示したが、これに限られない。貯留部は、供給系の構成に応じて適宜に選択変更することができる。
【0151】
(3)上述した実施例では、分岐管43内のインクを置換する工程(ステップS7)において、吸引によりノズル5からインクを排出させたが、これに限られない。たとえば、加圧によりノズル5からインクを排出させるように変更してもよい。
【0152】
(4)上述した実施例では、ステップS3、S5の各工程において、貯留部(13、15)内のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返したが、これに限られない。すなわち、貯留部(13、15)のインク量の減少および増加を1回のみ行うように変更してもよい。
【0153】
(5)上述した実施例では、ステップS3の工程において、液位が高液位に達するまでエアトラップタンク13内のインク量を増加させたが(図7(a)参照)、これに限られない。例えば、1回目の一連の処理では、高液位より低く、低液位より高い中間液位に達するまでエアトラップタンク13内のインク量を増加させるように変更してもよい。換言すれば、1回目の補充では、エアトラップタンク13内のインクの増加量を比較的に少なくするように変更してもよい。この変形例については、一連の処理を実行する回数に応じて、開閉弁23、27を開放させる時間、および、真空ポンプ26を駆動させる時間を制御する制御部によって実現することができる。あるいは、中間液位を検出可能な液面レベルセンサと、液面レベルセンサ28H、28Lおよび中間液位用の液面レベルセンサの各検出結果に基づいて制御する制御部とを備えることによっても実現することができる。
【0154】
この変形例において、所定回数の設定例についてさらに例示する。例えば、実施例と同様な場合を考える。すなわち、変更前のインクの濃度(値)は1.00であり、別種のインクの濃度(値)は1.50である。また、高液位のときのエアトラップタンク13内のインク量は200[ml]であり、低液位のときのエアトラップタンク13のインク量は40[ml]である。さらに、中間液位のときのエアトラップタンク13のインク量は80[ml]である。
【0155】
ここで、インクの濃度を1.45以上に置換することを目標とする。すなわち、濃度変更の許容値を0.05(=|1.50−1.45|)以下とする。
【0156】
1回目の一連の処理を行うとき、すなわち、ステップS3を開始するとき、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積200[ml]であるとする。1回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積40[ml]となる。1回目の補充では、エアトラップタンク13のインク量を80[ml]まで増加させる。この結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.25、容積80[ml]となる。このように、一連の処理を1回行うだけではインクの濃度は目標(1.45以上)に達しない。なお、1回目の補充後の濃度1.25は、下記式により求められる。
1.25=((80−40)×1.5+40×1.0)/80
【0157】
続いて一連の処理を繰り返す。2回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.25、容積40[ml]となる。2回目の補充では、エアトラップタンク13のインク量を200[ml]まで増加させる。この結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.45、容積200[ml]となる。このように、一連の処理を2回行うことによって、インクの濃度は1.45となり、目標(1.45以上)に達する。
【0158】
したがって、上述の場合では、予め設定される所定回数は2回となる。また、本変形例では、本ステップS3の工程におけるインクの使用量が200[ml]で済む。このように、本変形例によれば、実施例に比べてインクの使用量を一層抑制することができる。
【0159】
なお、上述した変形例では、1回目の補充におけるエアトラップタンク13内のインクの増加量を変更する場合を例示したが、1回目に限られない。すなわち、複数回にわたって補充を行う場合は、一部の補充においてエアトラップタンク13内のインク量を増加させる量を変更してもよい。また、上述した変形例は、ステップS3の工程における変形例であったが、これに限られない。すなわち、ステップS5(サブタンク15内の置換)の工程について同様に変更してもよい。
【0160】
(6)上述した実施例では、ステップS3、S5の各工程を終了するタイミングは、貯留部(13、15)のインク量の減少および増加を繰り返した回数で規定していたが、これに限られない。また、ステップS2、S4、S6、S7の各工程を終了するタイミングは、所定時間の経過によって規定していたが、これに限られない。例えば、少なくともいずれかの工程について、終了するタイミングを別種のインクの使用量で規定するように変更してもよい。この変形例によっても、適切なタイミングで工程を終了させることができる。
【0161】
(7)上述した実施例では、ステップS2乃至S7の各工程を終了する際には、メインタンク11から別種のインクが流出することを停止させていたが、これに限られない。すなわち、メインタンク11から別種のインクを流出させつつ(すなわち、別種のインクを消費している状態で)、任意の工程を終了し、次の工程を開始するように変更してもよい。また、少なくともいずれかの開閉弁を開放させた状態、あるいは、少なくともいずれかのポンプを駆動させた状態で、各工程間を移行させるように変更してもよい。
【0162】
(8)上述した実施例では、ステップS3、S5の各工程において、貯留部(13、15)内のインク量を減少させる際は、貯留部(13、15)にインクを流入させないが、これに限られない。たとえば、貯留部(13、15)内のインク量を減少させている期間の初期などにおいて、貯留部(13、15)にインクを流入させるように変更してもよい。また、また、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際は、貯留部(13、15)からインクを流出させないが、これに限られない。例えば、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際、貯留部(13、15)から比較的に小さい流量でインクを流出させるように変更してもよい。
【0163】
(9)上述した実施例では、別種のインクは、変更前のインクと同じ色で濃度が異なるインクであったが、この別種のインクは、を適宜に「別種のインク」としたが、これにと呼ぶインクステップS3、S5の各工程において、貯留部(13、15)内のインク量を減少させる際は、貯留部(13、15)にインクを流入させないが、これに限られない。たとえば、貯留部(13、15)内のインク量を減少させている期間の初期などにおいて、貯留部(13、15)にインクを流入させるように変更してもよい。
また、また、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際は、貯留部(13、15)からインクを流出させないが、これに限られない。例えば、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際、貯留部(13、15)から比較的に小さい流量でインクを流出させるように変更してもよい。
【0164】
(10)上述した実施例では、別種のインクが変更前のインクに比べて濃度が濃い場合を具体的に例示したが、これに限られない。すなわち、別種のインクは、変更前のインクに比べて濃度の薄いインクであってもよい。また、上述した実施例では、ステップS2乃至ステップS7の各工程にわたるインク濃度変更方法によって濃度の低いインクを濃度の高いインクに置換し、インクの濃度を高めたが、これに限られない。すなわち、同方法によって濃度の濃いインクを濃度の薄いインクに置換し、インクの濃度を薄めることもできる。例えば、変更前のインクの濃度が1.50であり、別種のインクの濃度が1.00である場合において許容値を0.05としたとき、本実施例で説明したインク濃度変更方法によれば、インクの濃度を1.05以下に変更することができる。
【0165】
(11)上述した実施例および上記(1)から(10)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0166】
1 … インクジェット印刷装置
3 … インクジェットヘッド
5 … ノズル
7 … 供給系
9 … 吸引系
10 … 制御部
11 … メインタンク
13 … エアトラップタンク(貯留部)
15 … サブタンク(貯留部)
21 … 第1配管(一次側配管)
23、25、27、35、58 … 開閉弁
26 … 真空ポンプ
33、49 … ポンプ
59 … 吸引用ポンプ
31 … 第2配管(一次側配管)
41 … 共通配管
43 … 分岐管
45 … バイパス配管
47 … 開閉弁(バイパス開閉弁)
53 … キャップ
c … 共通配管と分岐管の接合部
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェット印刷装置のインク濃度変更方法およびインクジェット印刷装置に係り、特に、インクを同じ色で異なる濃度の別種のインクに置換することによってインク濃度を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置は、インクを貯留するメインタンクと、インクを吐出するノズルと、これらメインタンクおよびノズルを連通接続する配管を備えている。このようなインクジェット印刷装置においてインクの種類を変更するときは、まず、配管に洗浄用流体等を流して残留インクを除去し、その後に異なる種類のインクを配管に供給する手法が知られている(例えば、特許文献、特開2003−191485号公報を参照)。また、変更前のインクが残っている配管に対して異なる種類のインクを流すことによって、変更前のインクを異なる種類のインクに置換する手法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−191485号公報
【特許文献2】特開2006−240140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、洗浄用流体を使用する手法では、洗浄用流体によって残留インクを除去する工程を別途に要するので、インクの種類を速やかに変更することができないという不都合がある。
【0005】
また、この手法は、単に洗浄用流体を配管に流すだけである。したがって、配管の途中にインクを貯留する貯留部が設けられている場合、貯留部内の残留インクを効果的に除去できない。この結果、洗浄用流体を多量に消費してしまうとともに、インクの種類の変更に一層時間がかかってしまうという不都合がある。
【0006】
また、変更前のインクが残る配管に異なる種類のインクを流す手法は、単に異なる種類のインクを配管に流すだけであり、あくまで配管(特許文献2では「供給チューブ」と記載される)のみで供給系が構成されていることを前提とした手法である。したがって、この手法を、配管の途中に貯留部が設けられている供給系に適用しても、貯留部内のインクの置換を効果的に進めることができない。この結果、置換するために消費するインク量が増大してしまうという不都合がある。また、速やかにインクの種類を変更することができないという不都合がある。
【0007】
なお、上述の従来例の手法とは別に、変更前のインクを全てノズルから吐出させて配管内を一旦空にし、その後に種類の異なるインクを配管内に供給するという手法も考えられるかも知れない。しかしながら、エア(空気)が入ってしまった配管内に種類の異なるインクを供給すると、このインク中に気泡が混在してしまい、吐出不良を招くという不都合が生じる。
【0008】
また、従来例では、メインタンクから洗浄用流体や種類の異なるインクを配管に供給する際に、ノズルからインクを排出させる。よって、洗浄用流体や種類の異なるインクを供給する流量は、ノズルの排出量以下に制限されてしまう。このため、インクの濃度変更を速やかに行えないという不都合もある。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、メインタンクとノズルとの間に貯留部を備える構成であっても、インクの濃度変更を速やかに行うことができるインクジェット印刷装置およびインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法を提供することを第1の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、ノズルから吐出されるインクを同じ色で濃度の異なる別種のインクに置換することによりインクの濃度を変更するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、インクを貯留するメインタンクと前記ノズルとの間に設けられる貯留部に対して、前記貯留部の一次側に接続されている一次側配管を通じて、前記別種のインクを流入させることによって、前記一次側配管内のインクを置換する工程と、前記貯留部からその二次側にインクを流出させて前記貯留部のインク量を減少させ、その後に前記貯留部に前記別種のインクを流入させて前記貯留部のインク量を増加させることによって、前記貯留部内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、を備え、前記一次側配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法である。
【0011】
[作用・効果]貯留部はインクを貯留可能である。制御部は、このような貯留部内のインクを別種のインクに置換させる前に、貯留部の一次側配管内のインクの置換を開始させる。これにより、貯留部内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを貯留部に流入させることができる。よって、貯留部内のインクを置換する工程を速やかに進めることができる。
【0012】
また、制御部は、貯留部のインクの置換においては、貯留部内のインク量を一旦減少させた後に、貯留部に別種のインクを供給して貯留部内のインク量を増加させる。これにより、貯留部内のインクは、効果的に別種のインクに置換される。したがって、単に貯留部に別種のインクを流し続ける場合に比べて、速やかに貯留部内のインクを置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0013】
また、上述した発明において、一次側配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。これによれば、貯留部内のインクを置換する工程を開始した当初から、別種のインクを貯留部に流入させることができる。よって、貯留部内のインクを一層速やかに置換することができる。また、一次側配管内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから貯留部内のインクの置換を進めることによって、貯留部内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、貯留部内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0014】
また、上述した発明において、前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記貯留部のインク量を減少させるときは前記貯留部にインクを流入させず、かつ、前記貯留部のインク量を増加させるときは前記貯留部からインクを流出させないことが好ましい。これによれば、貯留部内のインク量の減少および増加を速やかに行うことができる。よって、貯留部内のインクの置換を一層効率良く行うことができる。
【0015】
また、上述した発明において、前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記貯留部のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返すことが好ましい。これによれば、貯留部内のインクを十分に置換することができる。
【0016】
また、上述した発明において、前記貯留部は複数であり、前記一次側配管は前記貯留部ごとに設けられており、前記メインタンクに近い前記一次側配管および前記貯留部から順番に、対応する前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程を行うことが好ましい。すなわち、メインタンクと共通配管との間に設けられる一次側配管および貯留部のそれぞれについて、一次側から順番にインクの置換を行う。このため、一次側配管および貯留部のそれぞれに対してインクの置換を始めた当初から、当該一次側配管または貯留部に別種のインクを流入させることができる。
【0017】
また、上述した発明において、前記貯留部は、大気に開放可能なエアトラップタンクを含み、前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクを大気に開放した状態で前記エアトラップタンクのインク量を減少させることが好ましい。これによれば、エアトラップタンクのインク量を好適に減少させることができる。
【0018】
また、上述した発明において、前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクに接続された真空ポンプを駆動させて前記エアトラップタンク内の気体を排出させることによって、前記エアトラップタンクのインク量を増加させることが好ましい。これによれば、エアトラップタンクのインク量を好適に増加させることができる。
【0019】
また、上述した発明において、前記ノズルを有する複数のインクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の分岐管に対してインクを供給可能な共通配管に前記別種のインクを流すとともに、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管と接続されるバイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、をさらに備え、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。共通配管内のインクを置換する工程ではバイパス配管を通じて共通配管内のインクを排出させるので、この工程を効率よく行うことができる。また、この共通配管内のインクを置換する工程を先に開始させ、その後に分岐管内のインクを置換する工程を開始する。このため、分岐管内のインクを置換する工程を開始した当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを置換する工程についても速やかに進めることができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0020】
また、上述した発明において、前記共通配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。これによれば、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、別種のインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを一層速やかに置換することができる。また、共通配管内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから分岐管内のインクの置換を進めることによって、共通配管内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、共通配管内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0021】
また、上述した発明において、前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程が終了した後に、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始することが好ましい。一次側配管および貯留部は共通配管の一次側に設けられている。このため、共通配管内のインクの置換を開始した当初から、別種のインクを共通配管に流入させることができる。また、一次側配管内および貯留部内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから共通配管内のインクの置換を進めることによって、共通配管内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、共通配管内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0022】
また、上述した発明において、前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記バイパス配管を通じてインクを排出させることが好ましい。これによれば、一次側配管内のインクを置換する工程および貯留部内のインクを置換する工程を一層効率良く行うことができる。
【0023】
また、上述した発明において、前記工程のそれぞれにおいて前記別種のインクの使用量を計測することが好ましい。各工程における別種のインクの使用量を好適に管理または監視することができる。
【0024】
また、上述した発明において、前記使用量に基づいて前記工程の少なくともいずれかを終了させることが好ましい。各工程を適切なタイミングで終了させることができる。
【0025】
また、本発明のインクジェット印刷装置は、インクを吐出可能なノズルを有する複数のインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにそれぞれ連通接続される複数の分岐管と、前記複数の分岐管が並列的に接続され、前記分岐管のそれぞれにインクを供給する共通配管と、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管に接続されているバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられるバイパス開閉弁と、前記ノズルから吐出されるインクの濃度を変更する際には、前記共通配管に同じ色で濃度の異なる別種のインクを流すとともに、前記バイパス開閉弁を開放して前記バイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換させ、かつ、この共通配管内のインクの置換を開始した後に前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換させる制御部と、を備えるインクジェット印刷装置である。
【0026】
[作用・効果]本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、バイパス配管を備えているので、このバイパス配管を通じて共通配管からインクを効率よく排出させることができる。よって、共通配管内のインクを別種のインクに速やかに置換することができる。また、制御部は、共通配管内のインクの置換を先に開始させ、その後に分岐管内のインクの置換を開始させる。このため、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクについても速やかに置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0027】
また、上述した発明において、前記制御部は、前記バイパス開閉弁を閉止して前記共通配管内のインクの置換を終了させた後に、前記分岐管内のインクの置換を開始させることが好ましい。これによれば、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、別種のインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを一層速やかに置換することができる。また、共通配管内のインクの置換(インクの濃度変更)を終了してから分岐管内のインクの置換を進めることによって、共通配管内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、共通配管内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0028】
なお、本明細書は、次のような液体供給装置に係る発明も開示している。
【0029】
(1)ノズルから吐出されるインクを同じ色で濃度の異なる別種のインクに置換することによりインクの濃度を変更するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、前記ノズルを有する複数のインクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の分岐管に対してインクを供給可能な共通配管に前記別種のインクを流すとともに、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管と接続されるバイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始した後に前記ノズルからインクを吐出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、を備えるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【0030】
前記(1)に記載の発明によれば、バイパス配管を通じて共通配管内のインクを排出させるので、共通配管内のインクを置換する工程を効率よく行うことができる。また、この共通配管内のインクの置換する工程を先に開始させ、その後に分岐管内のインクを置換する工程を開始させる。このため、分岐管内のインクを置換する工程を開始した当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクを置換する工程についても速やかに進めることができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0031】
(2)上述したインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、各工程を終了する際には前記メインタンクから別種のインクが流出することを停止させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【0032】
前記(2)に記載の発明によれば、各工程における別種のインクの使用量を適切に計測することができる。
【0033】
(3)上述したインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、前記一次側配管内のインクを置換する工程を終了する際には、前記メインタンクから別種のインクが流出することを停止させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【0034】
前記(3)に記載の発明によれば、一次側配管内および貯留部内のインクを置換する各工程で消費された別種のインクの使用量を適切に計測することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法によれば、制御部は、貯留部内のインクを別種のインクに置換させる前に、貯留部の一次側配管内のインクの置換を開始させる。これにより、貯留部内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを貯留部に流入させることができる。よって、貯留部内のインクを置換する工程を速やかに進めることができる。
【0036】
また、制御部は、貯留部のインクの置換においては、貯留部内のインク量を一旦減少させた後に、貯留部に別種のインクを供給して貯留部内のインク量を増加させる。これにより、貯留部内のインクは、効果的に別種のインクに置換される。したがって、単に貯留部に別種のインクを流し続ける場合に比べて、速やかに貯留部内のインクを置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【0037】
また、本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、バイパス配管を備えているので、このバイパス配管を通じて共通配管からインクを効率よく排出させることができる。よって、共通配管内のインクを別種のインクに速やかに置換することができる。また、制御部は、共通配管内のインクの置換を先に開始させ、その後に分岐管内のインクの置換を開始させる。このため、分岐管内のインクの置換を始めた当初から、少なくとも別種のインクを含んだインクを分岐管に流入させることができる。よって、分岐管内のインクについても速やかに置換することができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【図2】サブタンクの外観斜視図である。
【図3】サブタンクの側面図である。
【図4】インクの濃度変更の動作を示すフローチャートである。
【図5】第1配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図6】エアトラップタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図7】エアトラップタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図8】第2配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図9】サブタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図10】サブタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図11】共通配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【図12】分岐管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.全体構成
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1は、実施例1に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
【0040】
インクジェット印刷装置1は、複数のインクジェットヘッド3を備える。各インクジェットヘッド3は、その底面にインク滴を吐出可能な複数のノズル5を有する。これらのノズル5が不図示の印刷用紙に対してインク滴を吐出することによって、印刷が行われる。
【0041】
各インクジェットヘッド3には、供給系7からインクがそれぞれ供給される。また、インクジェット印刷装置1は、吸引によりノズル5からインクを排出させる吸引系9を備えている。また、供給系7および吸引系9を制御する制御部10を備えている。以下では、これらの供給系7、吸引系9、及び制御部10に分けて説明する。
【0042】
2.供給系7の構成
供給系7は、インクを貯留するメインタンク11と、メインタンク11とインクジェットヘッド3との間に設けられ、インクを貯留するエアトラップタンク13およびサブタンク15と、これらを連通接続する複数の配管に大別される。メインタンク11は、インクの供給源である。メインタンク11の内部は、大気に開放されている。なお、本明細書では、メインタンク11から供給されるインクの流れの上流側および下流側を、それぞれ適宜に「一次側」および「二次側」と呼ぶこととする。
【0043】
メインタンク11とエアトラップタンク13との間は、第1配管21によって連通接続されている。この第1配管21には、インクの流れを遮断可能な開閉弁23が設けられている。
【0044】
エアトラップタンク13は、インクからエア(溶存気体)を脱気または脱泡するための容器である。エアトラップタンク13はハードケースで構成されており、その外形状は内部に貯留するインク量に応じて膨張/収縮しない。なお、本実施例では、メインタンク11内のインクは脱気処理されていない。
【0045】
エアトラップタンク13には、その内部を大気に開放するための開閉弁25が設けられている。また、エアトラップタンク13には、その内部の気体を排出するための真空ポンプ26が接続されている。これらエアトラップタンク13と真空ポンプ26との間には、開閉弁27が設けられている。
【0046】
また、エアトラップタンク13には、その内部に貯留されるインク量を検出する液面レベルセンサ28H、28Lが設けられている。具体的には、液面レベルセンサ28Hは、エアトラップタンク13内のインクの液位が第1の高さ位置(以下、「高液位」という)に達しているか否かを検出する。液面レベルセンサ28Lは、エアトラップタンク13内のインクの液位が高液位より低い第2の高さ位置(以下、「低液位」という)に達しているか否かを検出する。
【0047】
ここで、高液位は高いほど好ましく、高液位と低液位の高低差は大きいほど好ましい。また、低液位は、エアトラップタンク13の二次側にエア(空気)が流入しない範囲内で、かつ、その範囲の下限値近傍であることが好ましい。具体的には、低液位は、エアトラップタンク13内のインクが二次側に流出する流出口13aより僅かに高い位置であることが好ましい。なお、流出口13aはエアトラップタンク13と後述する第2配管31との接合部に相当する。
【0048】
エアトラップタンク13は、この発明における貯留部に相当する。また、第1配管21はエアトラップタンク13の一次側に接続されているので、この発明における一次側配管(エアトラップタンク13に対応した一次側配管)に相当する。
【0049】
エアトラップタンク13とサブタンク15との間には、第2配管31が設けられている。第2配管31は、エアトラップタンク13の底面に接続されている。この場合、低液位は、エアトラップタンク13の底面より僅かに高い位置に設定されていることが好ましい。第2配管31には、インクを二次側に送るためのポンプ33と、インクの流れを遮断可能な開閉弁35とが設けられている。
【0050】
図2は、サブタンクの外観斜視図であり、図3はサブタンクの側面図である。本実施例のサブタンク15は、内部に貯留するインク量に応じて膨張/収縮変形する。図3では、収縮した状態のサブタンク15を実線で示し、膨張した状態のサブタンク15を点線で示す。図示するように、サブタンク15の膨張/収縮によって、サブタンク15の上下方向の寸法(以下、「高さ寸法」と適宜に呼ぶ)Dが変動する。
【0051】
サブタンク15の表面15fの中央には、上方に突出するように突片37が設けられている。この突片37は、サブタンク15の高さ寸法Dの変動に応じて上下方向に昇降する。この突片37の周囲には、突片37の高さ位置を検出するための寸法センサ39L、39Hが設けられている。
【0052】
寸法センサ39Lは、突片41を挟んで互いに対向するように配置される光発光部39Laと光受光部39Lbとを有する。寸法センサ39Hは、同様に配置される光発光部39Haと光受光部39Hbとを有する。
【0053】
寸法センサ39Lは、高さ寸法Dが第1所定値L以上であるときに突片37を検出可能な位置に配置されている。また、寸法センサ39Hは、高さ寸法Dが第1所定値Lより大きな第2所定値H以上であるときに突片37を検出可能な位置に配置されている。これにより、寸法センサ39Lは、高さ寸法Dが第1所定値Lに達しているか否かを検出する。また、寸法センサ39Hは、高さ寸法Dが第2所定値Hに達して居いるか否かを検出する。第1所定値L及び第2所定値Hはそれぞれ、ノズル5のメニスカス圧が適正な範囲内に収まるように設定されることが好ましい。
【0054】
サブタンク15は、この発明における貯留部に相当する。また、第2配管31はサブタンク15の一次側に接続されているので、この発明における一次側配管(サブタンク15に対応した一次側配管)に相当する。
【0055】
図1を参照する。サブタンク15とインクジェットヘッド3との間には、共通配管41と複数の分岐管43が設けられている。共通配管41の一次側は、サブタンク15に連通接続されている。この共通配管41に、複数の分岐管43が並列的に接続されている。図1では、共通配管41と複数の分岐管43との各接合部をそれぞれ符号「c」を付して明示する。各分岐配管43の他端は、それぞれ上述したインクジェットヘッド3に連通接続されている。
【0056】
共通配管41には、さらに、バイパス配管45が連通接続されている。バイパス配管45は、各接合部cのいずれよりも二次側の位置で共通配管41と接続している。図1では、共通配管41とバイパス配管45との接合部を符号「d」を付して明示する。
【0057】
バイパス配管45の他端は、廃液タンク51に接続されている。バイパス配管45には、インクの流れを遮断可能な開閉弁47と、インクを廃液タンク51に送るためのポンプ49とが設けられている。開閉弁47は、この発明におけるバイパス開閉弁に相当する。
【0058】
3.吸引系9の構成
吸引系9は、インクジェットヘッド3ごとに設けられる複数のキャップ53を備えている。キャップ53は、ノズル5から溶媒が蒸発することを防止したり、ノズルに異物が付着することを防止する。各キャップ53は、各インクジェットヘッド3の底面を覆うキャッピング位置と、印刷用紙(不図示)に対して印刷を行う印刷動作を妨げない(印刷動作時に他の部材と干渉しない)退避位置との間で移動可能に構成されている。なお、図1では、キャッピング位置にあるキャップ53を図示している。
【0059】
各キャップ53には、それぞれ吸引用分岐管55が連通接続されている。各吸引用分岐管55の他端は、吸引用配管57に並列的に接続され、吸引用配管57に集合されている。吸引用配管57の他端は、上述した廃液タンク51に接続されている。吸引用配管57には開閉弁58と吸引用ポンプ59が設けられている。吸引用ポンプ59は、キャップ53とインクジェットヘッド3との間の空間を負圧にして、ノズル5からインク滴を吸引排出させるとともに、ノズル5から排出されたインクを廃液タンク51へ送る。
【0060】
4.制御部10の構成
制御部10には、上述した液面レベルセンサ28H、28Lおよび寸法センサ39H、39Lの各検出結果が入力される。また、制御部10は、上述した供給系7の開閉弁23、25、27、35、47と、ポンプ26、33、49を制御する。また、制御部10は、吸引系9の開閉弁58及びポンプ59を制御する。さらに、制御部10は、ノズル5の吐出を制御する。なお、真空ポンプや吸引用ポンプについても、適宜に「ポンプ」と呼ぶ。
【0061】
制御部10は、各種処理、操作を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0062】
5.動作
次に、実施例1に係るインクジェット印刷装置1において、インクの濃度変更を行うときの動作について説明する。図4は、インクの濃度変更の動作を示すフローチャートである。
【0063】
図4に示すように、ステップS1においてメインタンク11を交換した後は、ステップS2−S7に示すように、メインタンク11に近い配管および貯留部の順番に個別に置換していく。以下、各ステップについて説明する。
【0064】
<ステップS1> メインタンク11を交換
制御部10は、全ての開閉弁23、25、27、35、47、58が閉止し、全てのポンプ26、33、49、59が停止した状態にする。また、制御部10は、ノズル5が液滴を吐出しないように制御する。そして、メインタンク11を、同じ色で異なる濃度のインクを貯留する他のメインタンク11a(図5参照)に交換する。以下では、変更前のインクと同じ色で濃度が異なるインクを適宜に「別種のインク」と呼ぶ。なお、インクの成分が異なればインクの濃度も異なってくるので、「別種のインク」は、変更前のインクと同じ色で成分が異なるインクを含む意味である。また、メインタンク11とメインタンク11aとを特に区別しない場合は、単に「メインタンク11」と記載する。
【0065】
<ステップS2> 第1配管21を置換〜第1配管内のインクを置換する工程
図5を参照してステップS2の処理を説明する。図5は、第1配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。なお、図5では、エアトラップタンク13およびサブタンク15と、メインタンク11aの濃淡を変えて図示し、これによりインクの濃度が異なっていることを模式的に示している。但し、これはあくまでも説明の便宜上であり、濃淡によってインクの濃度を厳密に示すものではない。この点は、その他の図6乃至図12においても同様である。
【0066】
まず、図5(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。図5では、置換する対象(ステップS2では第1配管)の符号にアンダーラインに付けて明示する。また、開放している開閉弁および駆動しているポンプの符号を三角形で囲んで明示する(図6乃至図12においても同様である)。
【0067】
ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41に流出し、共通配管41からバイパス配管45を通じて廃液タンク51に送られる。このとき、ノズル5は液滴を吐出しないように制御されているので、分岐管43にはインクが流入しない。また、サブタンク15の一次側の開閉弁35が閉止されているので、サブタンク15にはインクが流入しない。したがって、サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15の外形状が収縮変形する。
【0068】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づき、サブタンク15の高さ寸法Dを監視する。高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、制御部10は開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図5(b)の状態に移行する。
【0069】
図5(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、エアトラップタンク13内のインクは、第2配管31を通じてサブタンク15に流入する。また、メインタンク11aから第2配管を通じてエアトラップタンク13にインクが流入する。これにより、エアトラップタンク13の液位は略同じに保たれる。サブタンク15が貯留するインク量は増加し、サブタンク15の外形状が膨張変形する。
【0070】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dを監視する。高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、制御部10はポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図5(a)の状態に再び移行する。
【0071】
このように、図5(a)に示す状態と図5(b)に示す状態を所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、メインタンク11から第1配管21に流入するインク量が、第1配管21の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、第1配管21内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0072】
なお、図5(a)、(b)に示す2つの状態の間で相互に切り替わるきっかけは、上述のとおり、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったこと、および、同寸法Dが第2所定値Hに達したことである。このようなシーケンスとすることで、第1サブタンク15の貯留能力が許す限り、第1配管21に早期により多くの別種のインクを流すことができる。なお、このシーケンスであっても、実際には寸法センサ37Hのヒステリシスやポンプによるオーバーシュートがあるため、切り替わる頻度は緩和される。
【0073】
所定時間が経過すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図5(c)の状態に移行する。図示するように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS2を終了する。これにより、第1配管21内のインクが別種のインクに置換される。
【0074】
なお、本ステップS2の処理を行っている際、制御部10は、別種のインクの使用量を監視している。使用量とは、メインタンク11から流出したインク量である。別種のインクの使用量については、例えば、ポンプ33の駆動によってメインタンク11とエアトラップタンク13との間を流れるインクの流量と、ポンプ33の駆動時間に基づいて計測してもよい。また、ポンプ33を1回駆動したとき(すなわち、ポンプ33を1回ON−OFFしたとき)のインクの使用量が略一定の場合は、1回当たりのインクの使用量と、ポンプ33を駆動した回数とに基づいて別種のインクの使用量を計測してもよい。また、ポンプ49の駆動時間とインクの流量に基づいてインクの使用量を計測してもよいし、ポンプ49の駆動1回当たりのインクの使用量とポンプ49の駆動回数とに基づいてインクの使用量を計測してもよい。あるいは、寸法センサ37H、37Lの検出結果からサブタンク15に流入したインク量を取得できるので、寸法センサ37H、37Lの検出結果に基づいて計測することも可能である。
【0075】
<ステップS3> エアトラップタンク13を置換〜エアトラップタンク内のインクを置換する工程
図6、図7を参照してステップS3の処理を説明する。図6、7は、エアトラップタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0076】
まず、図6(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15は収縮変形する。
【0077】
制御部10は、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁25、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図6(b)の状態に移行する。
【0078】
図6(b)を参照する。開閉弁25の開放により、エアトラップタンク13の内部は大気に開放された状態となる。ポンプ33の駆動により、エアトラップタンク13から第2配管31を通じてサブタンク15にインクが流れる。エアトラップタンク13のインク量は、サブタンク15へ流出した分だけ減少する(エアトラップタンク13の液位が低下する)。
【0079】
制御部10は、液面レベルセンサ28Lの検出結果に基づき、エアトラップタンク13内のインクの液位を監視する。そして、液位が低液位未満になったと判断すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図6(c)の状態に移行する。
【0080】
図6(c)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。エアトラップタンク13の内部は再び密閉された状態になる。図6(c)では、エアトラップタンク13の液位が低液位未満であることを模式的に示している。
【0081】
続いて、制御部10は、開閉弁23、27を開放させ、真空ポンプ26を駆動させる。これにより、図7(a)の状態に移行する。
【0082】
図7(a)を参照する。真空ポンプ26の駆動により、エアトラップタンク13内の気体が排出される。これにより、メインタンク11a内のインクが第1配管23を通じてエアトラップタンク13に流入する。エアトラップタンク13のインク量は増加する(エアトラップタンク13の液位が上昇する)。
【0083】
このとき、第1配管23内のインクは既に別種のインクに置換されているので、エアトラップタンク13に流入するインクは、別種のインクである。
【0084】
制御部10は、図7(a)の状態に移行した後、液面レベルセンサ28Hの検出結果に基づき、エアトラップタンク13内のインクの液位を監視する。液位が高液位に達したと判断すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図7(b)の状態に移行する。
【0085】
図7(b)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。
【0086】
その後、制御部10は、図6(a)の状態に戻る。そして、上述した図6(a)乃至(c)及び図7(a)、(b)の一連の処理を再び行う。この一連の処理を所定回数にわたって繰り返すと、ステップS3を終了する。所定回数は、濃度計算や実験等に基づいて予め設定されている(後述)。これにより、エアトラップタンク13内のインクが別種のインクに置換される。なお、図7(b)では、エアトラップタンク13内のインクが別種のインクに置換されたことを模式的に示している。
【0087】
ここで、上述した所定回数の設定例について具体的に説明する。以下では、図6(b)を示して説明した「エアトラップタンク13のインク量を減少させること」を、適宜に「排出」または「n回目の排出」という。また、図7(a)を示して説明した「エアトラップタンク13のインク量は増加させること」を適宜に「補充」または「n回目の補充」という。なお、「n回目の」とは、「n回目の一連の処理における」という意味である。
【0088】
例えば、以下のような場合を考える。すなわち、変更前のインクの濃度(値)は1.00であり、別種のインクの濃度(値)は1.50である。また、高液位のときのエアトラップタンク13内のインク量は200[ml]であり、低液位のときのエアトラップタンク13のインク量は40[ml]である。
【0089】
ここで、インクの濃度を1.45以上に置換することを目標とする。なお、この場合、濃度変更の許容値は0.05(=|1.50−1.45|)である。
【0090】
1回目の一連の処理を開始するとき、すなわち、ステップS3を開始するとき、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積200[ml]であるとする。1回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積40[ml]となる。さらに、1回目の補充の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.40、容積200[ml]となる。このように、一連の処理を1回行うだけではインクの濃度は目標(1.45以上)に達しない。なお、1回目の補充後の濃度1.40は、下記式により求められる。
1.40=((200−40)×1.5+40×1.0)/200
【0091】
続いて一連の処理を繰り返す。2回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.40、容積40[ml]となる。さらに、2回目の補充の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.48、容積200[ml]となる。このように、一連の処理を2回行うことによって、インクの濃度は1.48となり、目標(1.45以上)に達する。
【0092】
したがって、上述の場合では、予め設定される所定回数は2回となる。また、本ステップS2の工程におけるインクの使用量は、320[ml]となる。
【0093】
なお、本ステップS3を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。別種のインクの使用量については、上述したように、種々の手法で計測することができる。この他に、ステップS3における別種のインクの使用量については、液面レベルセンサ28L、28Hの検出結果に基づいて計測することも可能である。
【0094】
<ステップS4> 第2配管31を置換〜第2配管内のインクを置換する工程
図8を参照してステップS4の処理を説明する。図8は、第2配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0095】
まず、図8(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15は収縮変形する。
【0096】
制御部10は、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図8(b)の状態に移行する。
【0097】
図8(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、メインタンク11a内の別種のインクは、第1配管21を通じてエアトラップタンク13に流入する。エアトラップタンク13内のインクは、第2配管31を通じてサブタンク15に流入する。これにより、サブタンク15は膨張変形する。
【0098】
このとき、エアトラップタンク13内のインクは既に別種のインクに置換されているので、エアトラップタンク13から第2配管31に流入するインクは、別種のインクである。
【0099】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づいて高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、ポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図8(a)の状態に再び移行する。
【0100】
このように、図8(a)に示す状態と図8(b)に示す状態を所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、エアトラップタンク13から第2配管31に流入するインク量が、第2配管31の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、第2配管31内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0101】
所定時間が経過すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図8(c)の状態に移行する。
【0102】
図8(c)に示すように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS4を終了する。これにより、第2配管31内のインクが別種のインクに置換される。なお、本ステップS4を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。
【0103】
<ステップS5> サブタンク15を置換〜サブタンク内のインクを置換する工程
図9、図10を参照してステップS5の処理を説明する。図9、図10は、サブタンク内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0104】
まず、図9(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15が貯留するインク量は減少し、サブタンク15は収縮変形する。
【0105】
制御部10は、寸法センサ37Lの検出結果に基づいて高さ寸法Dが第1所定値L未満となったと判断すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図9(b)の状態に移行する。
【0106】
図9(b)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。図9(b)では、サブタンク15が収縮変形した様子を模式的に示している。
【0107】
続いて、制御部10は、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図9(c)の状態に移行する。
【0108】
図9(c)に示すように、ポンプ33の駆動により、エアトラップタンク13から第2配管31を通じてサブタンク15にインクが流れる。これにより、サブタンク15は膨張変形する。エアトラップタンク13には、メインタンク11aから別種のインクが流入する。
【0109】
このとき、第2配管31内のインクは既に別種のインクに置換されているので、サブタンク15に流入するインクは、別種のインクである。
【0110】
制御部10は、寸法センサ37Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図10(a)の状態に移行する。
【0111】
図10(a)に示すように、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。図10(a)では、サブタンク15が図9(c)の状態に比べて膨張変形した様子を模式的に示している。
【0112】
その後、制御部10は、図9(a)の状態に戻る。そして、上述した図9(a)乃至(c)及び図10(a)の一連の処理を再び行う。この一連の処理を所定回数にわたって繰り返すと、ステップS5を終了する。所定回数は、濃度計算や実験等に基づいて予め設定されている。これにより、サブタンク15内のインクが別種のインクに置換される。なお、図10(a)では、サブタンク15内のインクが別種のインクに置換されたことも模式的に示している。また、本ステップS5を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。
【0113】
<ステップS6> 共通配管41を置換〜共通配管内のインクを置換する工程
図11を参照してステップS6の処理を説明する。図11は、共通配管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0114】
まず、図11(a)に示すように、制御部10は、開閉弁47を開放させ、ポンプ49を駆動させる。ポンプ49の駆動により、サブタンク15内のインクは、共通配管41およびバイパス配管45を通じて廃液タンク51に排出される。サブタンク15は収縮変形する。
【0115】
制御部10は、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図11(b)の状態に移行する。
【0116】
図11(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、メインタンク11aからエアトラップタンク13にインクが流入する。また、エアトラップタンク13からサブタンク15にインクが流入する。サブタンク15は膨張変形する。
【0117】
このとき、サブタンク15内のインクは既に別種のインクに置換されているので、サブタンク15から共通配管41に流入するインクは、別種のインクである。
【0118】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、ポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図11(a)の状態に再び移行する。
【0119】
このように、図11(a)に示す状態と図11(b)に示す状態を、所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、サブタンク15から共通配管41に流入するインク量が、共通配管41の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、共通配管41内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0120】
所定時間が経過すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図11(c)の状態に移行する。
【0121】
図11(c)に示すように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS6を終了する。これにより、共通配管41内のインクが別種のインクに置換される。なお、本ステップS6を行っている際も、制御部10は別種のインクの使用量を監視する。
【0122】
<ステップS7> 分岐管43を置換〜分岐管内のインクを置換する工程
図12を参照してステップS7の処理を説明する。図12は、分岐管内のインクを置換するときのインクの流れを模式的に示した動作説明図である。
【0123】
まず、図12(a)に示すように、制御部10は、開閉弁58を開放させ、ポンプ59を駆動させる。
【0124】
ポンプ59の駆動により、キャップ53とインクジェットヘッド3との間の各空間は負圧となり、吸引されたインクがノズル5から排出する。すなわち、吸引によるパージが行われる。なお、この際、制御部10が液滴を吐出させるようにノズル5(図1参照)を制御してもよい。この場合、ノズル5にフラッシング動作を行わせながら、吸引によるパージが行われる。
【0125】
各インクジェットヘッド3から排出されたインクは、対応するキャップ53および吸引用分岐管55を通じて吸引用配管57で集合されて、廃液タンク51に送られる。他方、パージに伴ってサブタンク15内のインクが吸引され、サブタンク15から共通配管41および分岐管43を通じてインクジェットヘッド3(ノズル5)にインクが流入する。
【0126】
このとき、共通配管41内のインクは既に別種のインクに置換されているので、分岐管55およびインクジェットヘッド3(ノズル5)に流入するインクは、別種のインクである。
【0127】
制御部10は、寸法センサ37Hの検出結果に基づき、高さ寸法Dが第2所定値H未満となったと判断すると、開閉弁23、35を開放させ、ポンプ33を駆動させる。これにより、図12(b)の状態に移行する。
【0128】
図12(b)に示すように、ポンプ33の駆動により、メインタンク11aからエアトラップタンク13にインクが流入する。また、エアトラップタンク13からサブタンク15にインクが流入する。サブタンク15は膨張変形する。
【0129】
制御部10は、寸法センサ39Hの検出結果に基づいて高さ寸法Dが第2所定値Hに達したと判断すると、ポンプ33を停止させ、開閉弁23、35を閉止させる。これにより、図12(a)の状態に再び移行する。
【0130】
このように、図12(a)に示す状態と図12(b)に示す状態を、所定時間が経過するまで繰り返す。所定時間としては、例えば、共通配管41から各分岐管43に流入するインク量が、各分岐管43の管内(空間)の体積の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。あるいは、共通配管41から各分岐管43に流入するインク量が、各分岐管の管内(空間)の体積と各インクジェットヘッド3内の流路(空間)の体積との和の約2倍程度となるように設定されることが好ましい。これによれば、分岐管43およびインクジェットヘッド3内のインクを別種のインクに適切に置換することができる。
【0131】
所定時間が経過すると、制御部10は、開放させている開閉弁を全て閉止させるとともに、駆動させているポンプを全て停止させる。これにより、図12(c)の状態に移行する。
【0132】
図12(c)に示すように、インクの流れが止まり、供給系7および吸引系9の全てにおいてインクが流れていない状態となる。以上で、ステップS7を終了する。これにより、分岐管43内のインクが別種のインクに置換される。なお、本ステップS7を行っている際も、制御部10は、別種のインクの使用量を監視する。
【0133】
以上に説明したステップS1乃至S7の処理を行うことにより、変更前のインクは、別種のインクに置換される。この結果、ノズル5は、濃度の異なるインク滴を好適に吐出可能となる。
【0134】
このように、実施例1に係るインクジェット印刷装置1およびインク濃度変更方法によれば、第1配管21内のインクを置換する工程(ステップS2)を終了した後に、エアトラップタンク13内のインクを置換する工程(ステップS3)を開始する。このため、エアトラップタンク13内を置換する工程を開始した当初から、別種のインクをエアトラップタンク13に流入させることができる。よって、エアトラップタンク13内の置換を速やかに進めることができる。したがって、インクの濃度変更を速やかに行うことができる。また、別種のインクの使用量を抑えることができる。
【0135】
また、第1配管21内のインクの濃度変更を完了してからトラップタンク13内のインクの置換を進めるので、トラップタンク13内のインクの置換を確実に行うことができる。すなわち、トラップタンク13内のインクの濃度を適切に変更することができる。
【0136】
同様に、第2配管31内のインクを置換する工程(ステップS4)を行った後に、サブタンク15内のインクを置換する工程(ステップS5)を行う。このため、サブタンク15内を置換する工程を開始した当初から、別種のインクをサブタンク15に流入させることができる。よって、サブタンク15内の置換を速やかに進めることができる。また、サブタンク15内のインクの置換を確実に行うことができる(サブタンク15内のインクの濃度を適切に変更することができる)。
【0137】
また、メインタンク11に近い方から順番に、すなわち、第1配管21、エアトラップタンク13、第2配管31、サブタンク15、共通配管41、分岐管55(インクジェットヘッド3)の順番で置換を個別に行う。このため、全ての配管および貯留部を置換する工程において、開始した当初から当該配管または当該貯留部に別種のインクを流入させることができる。このため、各配管および各貯留部を、一次側から順番に確実に置換することができ、各配管内および各貯留部内のインクの濃度を適切に変更させることができる。
【0138】
また、エアトラップタンク13内のインクを置換する工程(ステップS3)では、開閉弁25を開放させてエアトラップタンク13を大気に開放した状態でエアトラップタンク13のインク量を減少させる(図6(b))。このため、エアトラップタンク13のインク量を好適に減少させることができる。さらに、この際、エアトラップタンク13にインクを流入させない。このため、エアトラップタンク13内のインク量を速やかに減少させることができる。
【0139】
また、エアトラップタンク13内のインクを置換する工程(ステップS3)では、真空ポンプ26を駆動させてエアトラップタンク13内の気体を排出させることによって、エアトラップタンク13のインク量を増加させる(図7(a))。このため、エアトラップタンク13のインク量を好適に増加させることができる。さらにこの際、エアトラップタンク13からインクを流出させない。このため、エアトラップタンク13内のインク量を速やかに増加させることができる。
【0140】
また、低液位は、エアトラップタンク13の二次側にエア(空気)が流入しない範囲の下限値近傍に設定されているので、高液位と低液位の高低差を大きくすることができる。このため、エアトラップタンク13内のインクを増加させたときに、エアトラップタンク13内のインクに含まれる別種のインクの混合割合を高くすることができる。このため、エアトラップタンク13内のインクを別種のインクに効果的に置換することができる。
【0141】
また、サブタンク15内のインクを置換する工程(ステップS5)において、サブタンク15のインク量を減少させる際(図9(a)参照)、サブタンク15にインクを流入させない。このため、サブタンク15内のインク量を速やかに減少させることができる。また、サブタンク15のインク量を増加させる際(図9(c))、サブタンク15からインクを流出させない。このため、サブタンク15内のインク量を速やかに増加させることができる。
【0142】
また、サブタンク15内のインクを置換する工程(ステップS5)では、高さ寸法Dが比較的低い第1所定値未満となるまでサブタンク15内のインク量を減少させる。このように、許容される限りサブタンク15内のインク量を減少させてから、サブタンク15内に別種のインクを流入させるので、サブタンク15内のインクの置換を効果的に行うことができる。
【0143】
また、貯留部(13、15)内のインクを置換する工程(ステップS3、S5)では、貯留部(13、15)のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返す。このため、貯留部(13、15)内の置換を十分に行うことができる。
【0144】
また、第1配管21内、エアトラップタンク13内、第2配管31内、および、サブタンク15内のインクを置換する各工程(ステップS2乃至5)では、バイパス配管45を通じてインクを排出させる。このため、これらの工程を一層効率良く行うことができる。
【0145】
また、共通配管41内のインクを置換する工程(ステップS6)では、バイパス配管45を通じて共通配管41内のインクを排出させる。よって、共通配管41内のインクを効率良く置換することができる。これにより、分岐管43内のインクを置換する工程(ステップS7)を開始した当初から、別種のインクを全ての分岐管43に流入させることができる。よって、分岐管43内のインクを一層速やかに置換することができる。また、別種のインクの使用量を抑えることができる。
【0146】
また、ステップS2乃至S7の各工程では、制御部10は別種のインクの使用量を計測する。このため、各工程における別種のインクの使用量を好適に管理または監視することができる。
【0147】
また、ステップS2乃至S7の各工程を終了する際には、開放状態にある開閉弁を閉止させ、駆動状態にあるポンプを停止させて、メインタンク11から別種のインクが流出することを停止させる。このため、ステップS2乃至S7の各工程における別種のインクの使用量を適切に計測することができる。
【0148】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0149】
(1)上述した実施例では、ステップS2乃至S7の各工程を順次個別に行い、一の工程が完了した後に次の工程を開始したが、これに限られない。たとえば、一の工程を開始した後、その工程が終了する前に、次の工程を開始するように変更してもよい。具体的には、第1配管21内を置換する工程を開始した後であって終了する前に、エアトラップタンク13内のインク量を減少させるなど、エアトラップタンク13内を置換する工程を開始した後であって終了する前に、ノズル5からインクを排出させるなど、分岐管43内を置換する工程を開始してもよい。このような変形例であっても、次の工程の置換対象である配管または貯留部に対して、少なくとも別種のインクを含んだインクを流入させることができる。よって、次の工程を速やかに進めることができる。
【0150】
(2)上述した実施例では、貯留部としてエアトラップタンク13およびサブタンク15を例示したが、これに限られない。貯留部は、供給系の構成に応じて適宜に選択変更することができる。
【0151】
(3)上述した実施例では、分岐管43内のインクを置換する工程(ステップS7)において、吸引によりノズル5からインクを排出させたが、これに限られない。たとえば、加圧によりノズル5からインクを排出させるように変更してもよい。
【0152】
(4)上述した実施例では、ステップS3、S5の各工程において、貯留部(13、15)内のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返したが、これに限られない。すなわち、貯留部(13、15)のインク量の減少および増加を1回のみ行うように変更してもよい。
【0153】
(5)上述した実施例では、ステップS3の工程において、液位が高液位に達するまでエアトラップタンク13内のインク量を増加させたが(図7(a)参照)、これに限られない。例えば、1回目の一連の処理では、高液位より低く、低液位より高い中間液位に達するまでエアトラップタンク13内のインク量を増加させるように変更してもよい。換言すれば、1回目の補充では、エアトラップタンク13内のインクの増加量を比較的に少なくするように変更してもよい。この変形例については、一連の処理を実行する回数に応じて、開閉弁23、27を開放させる時間、および、真空ポンプ26を駆動させる時間を制御する制御部によって実現することができる。あるいは、中間液位を検出可能な液面レベルセンサと、液面レベルセンサ28H、28Lおよび中間液位用の液面レベルセンサの各検出結果に基づいて制御する制御部とを備えることによっても実現することができる。
【0154】
この変形例において、所定回数の設定例についてさらに例示する。例えば、実施例と同様な場合を考える。すなわち、変更前のインクの濃度(値)は1.00であり、別種のインクの濃度(値)は1.50である。また、高液位のときのエアトラップタンク13内のインク量は200[ml]であり、低液位のときのエアトラップタンク13のインク量は40[ml]である。さらに、中間液位のときのエアトラップタンク13のインク量は80[ml]である。
【0155】
ここで、インクの濃度を1.45以上に置換することを目標とする。すなわち、濃度変更の許容値を0.05(=|1.50−1.45|)以下とする。
【0156】
1回目の一連の処理を行うとき、すなわち、ステップS3を開始するとき、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積200[ml]であるとする。1回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.00、容積40[ml]となる。1回目の補充では、エアトラップタンク13のインク量を80[ml]まで増加させる。この結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.25、容積80[ml]となる。このように、一連の処理を1回行うだけではインクの濃度は目標(1.45以上)に達しない。なお、1回目の補充後の濃度1.25は、下記式により求められる。
1.25=((80−40)×1.5+40×1.0)/80
【0157】
続いて一連の処理を繰り返す。2回目の排出の結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.25、容積40[ml]となる。2回目の補充では、エアトラップタンク13のインク量を200[ml]まで増加させる。この結果、エアトラップタンク13内のインクは、濃度1.45、容積200[ml]となる。このように、一連の処理を2回行うことによって、インクの濃度は1.45となり、目標(1.45以上)に達する。
【0158】
したがって、上述の場合では、予め設定される所定回数は2回となる。また、本変形例では、本ステップS3の工程におけるインクの使用量が200[ml]で済む。このように、本変形例によれば、実施例に比べてインクの使用量を一層抑制することができる。
【0159】
なお、上述した変形例では、1回目の補充におけるエアトラップタンク13内のインクの増加量を変更する場合を例示したが、1回目に限られない。すなわち、複数回にわたって補充を行う場合は、一部の補充においてエアトラップタンク13内のインク量を増加させる量を変更してもよい。また、上述した変形例は、ステップS3の工程における変形例であったが、これに限られない。すなわち、ステップS5(サブタンク15内の置換)の工程について同様に変更してもよい。
【0160】
(6)上述した実施例では、ステップS3、S5の各工程を終了するタイミングは、貯留部(13、15)のインク量の減少および増加を繰り返した回数で規定していたが、これに限られない。また、ステップS2、S4、S6、S7の各工程を終了するタイミングは、所定時間の経過によって規定していたが、これに限られない。例えば、少なくともいずれかの工程について、終了するタイミングを別種のインクの使用量で規定するように変更してもよい。この変形例によっても、適切なタイミングで工程を終了させることができる。
【0161】
(7)上述した実施例では、ステップS2乃至S7の各工程を終了する際には、メインタンク11から別種のインクが流出することを停止させていたが、これに限られない。すなわち、メインタンク11から別種のインクを流出させつつ(すなわち、別種のインクを消費している状態で)、任意の工程を終了し、次の工程を開始するように変更してもよい。また、少なくともいずれかの開閉弁を開放させた状態、あるいは、少なくともいずれかのポンプを駆動させた状態で、各工程間を移行させるように変更してもよい。
【0162】
(8)上述した実施例では、ステップS3、S5の各工程において、貯留部(13、15)内のインク量を減少させる際は、貯留部(13、15)にインクを流入させないが、これに限られない。たとえば、貯留部(13、15)内のインク量を減少させている期間の初期などにおいて、貯留部(13、15)にインクを流入させるように変更してもよい。また、また、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際は、貯留部(13、15)からインクを流出させないが、これに限られない。例えば、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際、貯留部(13、15)から比較的に小さい流量でインクを流出させるように変更してもよい。
【0163】
(9)上述した実施例では、別種のインクは、変更前のインクと同じ色で濃度が異なるインクであったが、この別種のインクは、を適宜に「別種のインク」としたが、これにと呼ぶインクステップS3、S5の各工程において、貯留部(13、15)内のインク量を減少させる際は、貯留部(13、15)にインクを流入させないが、これに限られない。たとえば、貯留部(13、15)内のインク量を減少させている期間の初期などにおいて、貯留部(13、15)にインクを流入させるように変更してもよい。
また、また、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際は、貯留部(13、15)からインクを流出させないが、これに限られない。例えば、貯留部(13、15)のインク量を増加させる際、貯留部(13、15)から比較的に小さい流量でインクを流出させるように変更してもよい。
【0164】
(10)上述した実施例では、別種のインクが変更前のインクに比べて濃度が濃い場合を具体的に例示したが、これに限られない。すなわち、別種のインクは、変更前のインクに比べて濃度の薄いインクであってもよい。また、上述した実施例では、ステップS2乃至ステップS7の各工程にわたるインク濃度変更方法によって濃度の低いインクを濃度の高いインクに置換し、インクの濃度を高めたが、これに限られない。すなわち、同方法によって濃度の濃いインクを濃度の薄いインクに置換し、インクの濃度を薄めることもできる。例えば、変更前のインクの濃度が1.50であり、別種のインクの濃度が1.00である場合において許容値を0.05としたとき、本実施例で説明したインク濃度変更方法によれば、インクの濃度を1.05以下に変更することができる。
【0165】
(11)上述した実施例および上記(1)から(10)で説明した各変形実施例については、さらに各構成を他の変形実施例の構成に置換または組み合わせるなどして適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0166】
1 … インクジェット印刷装置
3 … インクジェットヘッド
5 … ノズル
7 … 供給系
9 … 吸引系
10 … 制御部
11 … メインタンク
13 … エアトラップタンク(貯留部)
15 … サブタンク(貯留部)
21 … 第1配管(一次側配管)
23、25、27、35、58 … 開閉弁
26 … 真空ポンプ
33、49 … ポンプ
59 … 吸引用ポンプ
31 … 第2配管(一次側配管)
41 … 共通配管
43 … 分岐管
45 … バイパス配管
47 … 開閉弁(バイパス開閉弁)
53 … キャップ
c … 共通配管と分岐管の接合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吐出されるインクを同じ色で濃度の異なる別種のインクに置換することによりインクの濃度を変更するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
インクを貯留するメインタンクと前記ノズルとの間に設けられる貯留部に対して、前記貯留部の一次側に接続されている一次側配管を通じて、前記別種のインクを流入させることによって、前記一次側配管内のインクを置換する工程と、
前記貯留部からその二次側にインクを流出させて前記貯留部のインク量を減少させ、その後に前記貯留部に前記別種のインクを流入させて前記貯留部のインク量を増加させることによって、前記貯留部内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、
を備え、
前記一次側配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記一次側配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部内のインクを置換する工程では、
前記貯留部のインク量を減少させるときは前記貯留部にインクを流入させず、かつ、前記貯留部のインク量を増加させるときは前記貯留部からインクを流出させないインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記貯留部のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返すインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部は複数であり、
前記一次側配管は前記貯留部ごとに設けられており、
前記メインタンクに近い前記一次側配管および前記貯留部から順番に、対応する前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程を行うインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部は、大気に開放可能なエアトラップタンクを含み、
前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクを大気に開放した状態で前記エアトラップタンクのインク量を減少させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクに接続された真空ポンプを駆動させて前記エアトラップタンク内の気体を排出させることによって、前記エアトラップタンクのインク量を増加させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記ノズルを有する複数のインクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の分岐管に対してインクを供給可能な共通配管に前記別種のインクを流すとともに、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管と接続されるバイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、
前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、
をさらに備え、
前記共通配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記共通配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程が終了した後に、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記バイパス配管を通じてインクを排出させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記工程のそれぞれにおいて前記別種のインクの使用量を計測するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項13】
請求項12に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記使用量に基づいて前記工程の少なくともいずれかを終了させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項14】
インクジェット印刷装置において、
インクを吐出可能なノズルを有する複数のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにそれぞれ連通接続される複数の分岐管と、
前記複数の分岐管が並列的に接続され、前記分岐管のそれぞれにインクを供給する共通配管と、
前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管に接続されているバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられるバイパス開閉弁と、
前記ノズルから吐出されるインクの濃度を変更する際には、前記共通配管に同じ色で濃度の異なる別種のインクを流すとともに、前記バイパス開閉弁を開放して前記バイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換させ、かつ、この共通配管内のインクの置換を開始した後に前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換させる制御部と、
を備えるインクジェット印刷装置。
【請求項15】
請求項14に記載のインクジェット印刷装置において、
前記制御部は、前記バイパス開閉弁を閉止して前記共通配管内のインクの置換を終了させた後に、前記分岐管内のインクの置換を開始させるインクジェット印刷装置。
【請求項1】
ノズルから吐出されるインクを同じ色で濃度の異なる別種のインクに置換することによりインクの濃度を変更するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
インクを貯留するメインタンクと前記ノズルとの間に設けられる貯留部に対して、前記貯留部の一次側に接続されている一次側配管を通じて、前記別種のインクを流入させることによって、前記一次側配管内のインクを置換する工程と、
前記貯留部からその二次側にインクを流出させて前記貯留部のインク量を減少させ、その後に前記貯留部に前記別種のインクを流入させて前記貯留部のインク量を増加させることによって、前記貯留部内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、
を備え、
前記一次側配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記一次側配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記貯留部内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部内のインクを置換する工程では、
前記貯留部のインク量を減少させるときは前記貯留部にインクを流入させず、かつ、前記貯留部のインク量を増加させるときは前記貯留部からインクを流出させないインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記貯留部のインク量の減少および増加を複数回にわたって繰り返すインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部は複数であり、
前記一次側配管は前記貯留部ごとに設けられており、
前記メインタンクに近い前記一次側配管および前記貯留部から順番に、対応する前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程を行うインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記貯留部は、大気に開放可能なエアトラップタンクを含み、
前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクを大気に開放した状態で前記エアトラップタンクのインク量を減少させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記エアトラップタンク内のインクを置換する工程では、前記エアトラップタンクに接続された真空ポンプを駆動させて前記エアトラップタンク内の気体を排出させることによって、前記エアトラップタンクのインク量を増加させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記ノズルを有する複数のインクジェットヘッドにそれぞれ接続される複数の分岐管に対してインクを供給可能な共通配管に前記別種のインクを流すとともに、前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管と接続されるバイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、
前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換する工程と、
をさらに備え、
前記共通配管内のインクを置換する工程を開始した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記共通配管内のインクを置換する工程が終了した後に、前記分岐管内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程が終了した後に、前記共通配管内のインクを置換する工程を開始するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記一次側配管内のインクを置換する工程および前記貯留部内のインクを置換する工程では、前記バイパス配管を通じてインクを排出させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記工程のそれぞれにおいて前記別種のインクの使用量を計測するインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項13】
請求項12に記載のインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法において、
前記使用量に基づいて前記工程の少なくともいずれかを終了させるインクジェット印刷装置のインク濃度変更方法。
【請求項14】
インクジェット印刷装置において、
インクを吐出可能なノズルを有する複数のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにそれぞれ連通接続される複数の分岐管と、
前記複数の分岐管が並列的に接続され、前記分岐管のそれぞれにインクを供給する共通配管と、
前記共通配管と前記分岐管との接合部よりも二次側の位置で前記共通配管に接続されているバイパス配管と、
前記バイパス配管に設けられるバイパス開閉弁と、
前記ノズルから吐出されるインクの濃度を変更する際には、前記共通配管に同じ色で濃度の異なる別種のインクを流すとともに、前記バイパス開閉弁を開放して前記バイパス配管を通じて前記共通配管内のインクを排出させることにより、前記共通配管内のインクを前記別種のインクに置換させ、かつ、この共通配管内のインクの置換を開始した後に前記ノズルからインクを排出させることにより、前記分岐管内のインクを前記別種のインクに置換させる制御部と、
を備えるインクジェット印刷装置。
【請求項15】
請求項14に記載のインクジェット印刷装置において、
前記制御部は、前記バイパス開閉弁を閉止して前記共通配管内のインクの置換を終了させた後に、前記分岐管内のインクの置換を開始させるインクジェット印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−206456(P2012−206456A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75295(P2011−75295)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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