説明

インクジェット式記録ヘッド

【課題】 ワイパーブレードに大きな押圧力を必要とすることなく、ノズルプレートの表面に残ったインクを確実に払拭できるインクジェット式記録ヘッドを提供する。
【解決手段】 ケース32と、このケースの表面部分に取り付けられ、複数のノズル孔43を備えノズルプレート41と、ケースの側面からノズルプレートの表面の側縁部を覆うヘッドカバー35とを備えたインクジェット式記録ヘッド31において、ヘッドカバーは、ノズルプレートの表面を払拭するワイパーの相対的ワイピング方向に沿って延在する辺に、切欠部53を形成することによりノズルプレートの表面よりも後退したワイピング空間を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノズル孔からインク滴を吐出させて画像や文字を記録紙に記録するインクジェット式記録ヘッドに関し、特に記録ヘッドを保護するヘッドカバーの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット式記録装置1は、図14に示すように、ガイド部材2にキャリッジ3を移動自在に取り付け、このキャリッジ3を駆動プーリー4と遊転プーリー5とに掛け渡したタイミングベルト6に接続し、パルスモーター7によりキャリッジ3を記録紙8の幅方向に往復移動(主走査)させるように構成されている。
【0003】キャリッジ3には記録紙8に対応する面、この例では、下面に記録ヘッド9が設けられていて、主走査しながらインクカートリッジ10から供給されたインクを記録ヘッド9のノズル孔11からインク滴として吐出して記録紙8上に文字や図形等を記録する。
【0004】記録ヘッド9は、図15に示すように、複数のノズル孔11を複数列開設したノズルプレート13と、ノズル孔11に対応した複数の圧力室やインク供給室等を形成した流路形成板14と、圧電振動子12の振動を伝えて圧力室の容積を変化させる弾性シート15とを積層して流路ユニット16を構成し、この流路ユニット16をケース17の表面に接着剤等により接合する一方、先端を弾性シート15に当接させてケース17内に圧電振動子12が固定、収容されている。
【0005】そして流路ユニット16は、ノズル孔11を露出させる窓が設けられた導電性のヘッドカバー19によりケース17に固定されていて、紙つまり等によるノズルプレート13の損傷の防止と帯電の防止が図られている。ところで、ノズル孔11から吐出されたインク滴を構成する一部のインクが、ノズルプレートの表面に残留して、他のノズル孔列のインクと混色を起こしたり、インク滴の飛翔方向を変化させて印刷品質を低下させる。このようにノズルプレートに残留するインクを払拭するため、図14に示すように記録範囲から外れた位置にノズル面に昇降可能なワイパーブレード20が設けれいる。これにより、必要時にワイパーブレード20を上昇させてノズルプレートに当接させ、この状態でキャリッジ3を往復移動させると、ノズルプレート13に残留しているインクがワイパーブレード20に拭き取られて印字品質が回復する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、記録ヘッドの表面全周が、ヘッドカバーにより被われているため、ワイパーブレードのの長さが、記録ヘッドの幅よりも大きい場合には、ヘッドカバーに当接して浮くため、ある程度の弾圧力で弾性変形させてノズルプレートに接触させられている。このため、ヘッドカバーに近い領域の残留インクを充分に払拭することができないという問題がある。本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ノズル孔が形成されている領域の残留インクを確実に除去することができるインクジェット式記録ヘッドを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消するため、本発明のインクジェット式記録ヘッドは、ノズルプレートの複数のノズル孔から圧力発生手段により加圧されたインクを吐出する流路ユニットと、前記ノズル孔を露出させる窓を備えたヘッドカバーとをヘッドケースに固定したインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記ヘッドカバーの、前記ノズルプレートの残留インクを払拭するワイパーブレードの長手方向側の辺の、前記ノズル孔が形成された領域が、前記ノズルプレートよりも前記ヘッドケース側に位置してワイピング空間が確保されている。
【0008】
【作用】少なくともノズル孔形成領域では、ワイパーブレードの当接面が、ヘッドカバーに邪魔されることなくノズルプレートに均一に当接し、均一な圧力で残留インクを掻取る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。図1、図2、図3は、圧力発生手段として圧電振動子30を用いたインクジェット式記録ヘッド31の第1実施例を示すものであって、図1は、分解斜視図、図2は全体構造を示す斜視図、及び図3R>3は圧力室近傍の拡大断面図である。記録ヘッド31は、例えばプラスチックからなる箱体状のヘッドケース32の収納室33内に圧電振動子30を一方の開口から挿入して櫛歯状先端30aを他方の開口に臨ませ、この開口側のケース32の表面(下面)に流路ユニット34を接合するとともに、圧電振動子30の櫛歯状先端30aをそれぞれ流路ユニット34の所定部位に当接固定し、流路ユニット34の表面側からヘッドカバー35を固定して構成されている。なお、図中、符号36はフレキシブルケーブル、37は固定基板を示す。
【0010】流路ユニット34は、流路形成板40を間に挟んでノズルプレート41と弾性シート42を両側に積層して構成されている。ノズルプレート41は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル孔43を列状に開設するとともに、ノズル孔43が並んだノズル孔列が複数列形成されている。流路形成板40は、隔壁部によって区画することにより細長い共通インク室44と、上記ノズル孔43とそれぞれ連通する複数の圧力室45と、共通インク室44と各圧力室45とをそれぞれ連通するインク供給部46とを形成した板材である。
【0011】なお、圧力室45の一端にインク供給部46が接続し、このインク供給部46とは反対側の端部近傍に位置するようにノズルプレート41のノズル孔43が穿設されている。また、共通インク室44の端部には、インクカートリッジに貯留されたインクを共通インク室44に供給するための流路となるインク供給管が形成されている。
【0012】弾性シート42は、この実施例においては、ノズルプレート41とは反対側になる流路形成板40の他方の面に積層されていて、少なくとも上記圧力室45の一方の開口面を封止する封止板と、同じく流路形成板40の他方の面に積層され、少なくとも共通インク室44の一方の開口面を封止する弾性体膜とを兼ねており、ステンレス板と弾性体膜となるPPS等の高分子膜とをラミネートした二重構造である。そして、同一材により封止板と弾性体膜とを構成するので、封止板として機能する部分、すなわち圧力室45に対応した部分のステンレス板をエッチング加工して圧電振動子30を当接固定するための厚肉部(アイランド部)47を形成し、また、弾性体膜として機能する部分、すなわち共通インク室44に対応する部分のステンレス板を上述のエッチング加工で除去して弾性体膜48が露出されている。
【0013】これら、ノズルプレート41、流路形成板40、および弾性シート42を積層して流路ユニット34を構成するには、流路形成板40を間に挟んで、ノズル孔43の小径側が外側となるようにノズルプレート41を流路形成板40の一方の面に接着し、またステンレス板が外側に位置する状態で弾性シート42を流路形成板40の他方の面に接着する。
【0014】これにより、流路形成板40の各圧力室45および共通インク室44の一方の開口面がそれぞれ弾性体膜により封止されるとともに、溝状インク供給部46の上面開口が弾性体膜で覆われ、また、各圧力室45および共通インク室44の他方の開口面がノズルプレート41により閉塞される。
【0015】この流路ユニット34を保護するヘッドカバー35は、装着時にノズルプレート41のすべてのノズル孔43を露出させる窓49を備えたフレーム状の部材となるように、導電性を有する金属板をプレス成形して構成されている。そしてケース32の側面にそれぞれ当接する4つの側面部50を有し、これら側面部50の内、ケース32に装着した状態におけるノズルプレート41のノズル孔列に沿った方向、すなわちワイパーブレード20による相対的なワイピング方向(払拭方向)Aに直交する方向Bに延在する短辺には側面部50の先端縁からノズルプレート41の表面側に約90度屈曲したオーバーラップ部51が設けられている。
【0016】そしてワイピング方向Aに沿って延在する長辺には、装着状態でノズルプレート41の表面よりもヘッドホルダ側に位置するワイピング空間52(図4)を確保する切欠部53を設けて両端部分を残しオーバーラップ部51が形成されている。そして切欠部53側から側面部50側に装着片54が、またオーバーラップ部51側から側面部50に接地用導通片55が延長されて形成されている。
【0017】なお、4つの側面部50により囲まれる四角形の内周面の大きさは、ヘッドケース32のサイズに対応した寸法に設定して装着時にがたつかないようにサイズが調整されている。
【0018】上記ヘッドカバー35をケース32に装着するには、図2に示すように、装着片54がケース32の長辺側側面に当接するとともに接地用導通片55が短辺側側面に当接するよう嵌着し、接地用導通片55を介してケース32内のグランドラインに導通する。なお、ヘッドカバー35とケース32との固定は、ネジ止め、接着、カシメなどが用いられる。
【0019】ヘッドカバー35をヘッドケース32に固定すると、オーバーラップ部51が流路ユニット34の四隅を包み込み、かつノズルプレート41のノズル孔列に平行に位置する両側縁部に重なって被覆する一方、ノズル孔列の並び方向、つまりワイピング方向Aに直交する方向に位置するノズルプレート41の両側縁部には切欠部53が位置していて、ノズルプレート41がそのまま露出している。
【0020】したがって、キャリッジ3の移動によりワイパーブレード56により記録ヘッド31の表面に残留したインクを払拭する場合に、図4に示すように、ノズルプレート41の幅よりも長尺なワイパーブレード56であっても、ノズル孔43が位置する領域は、ワイパーブレード56がノズルプレート41の全幅に亘って当接することになり、ワイパーブレード56が浮き上がることなく、ノズル孔43の近傍のインクを確実に払拭する。
【0021】なお、図5に示すように、ノズルプレート41の表面側縁部分を覆っているヘッドカバー35の側端縁、すなわちオーバーラップ部51の先端縁には面取りをして斜面部51aが形成されているので、ワイパーブレード56に付着したインクKは、オーバーラップ部51で掻取られること無く、しかもワイパーブレード56の跳ねを招くこと無くオーバーラップ部51を乗り越え、ヘッドカバー35の外に排除され、また乗り越え時におけるインクの飛散を防止できる。
【0022】一方、記録中に記録領域に紙詰まりが生じた場合には、ヘッドカバー35のオーバーラップ部51により記録用紙との間に間隙を確保でき、これにより記録ヘッドの走査に伴う記録用紙からの流路ユニット34への外力の作用を阻止することができる。
【0023】なお、この実施例においては、記録ヘッド31をワイパーブレード20に対して移動させてクリーニングを実行させているが、ワイパーブレード20を移動させるようにしても同様の作用を奏することは明らかである。
【0024】ところで、ノズル開口を高密度に配列したインクジェット記録ヘッドにあっては、流路形成板40には流路形成用の凹部や貫通孔を精密に加工するとともに、剛性を確保することが必要となる。このため、図6に示したように大判の単結晶シリコン基板58を用い、複数の流路形成板59を異方性エッチングして製造することが行われる。そしてエッチング作業時のハンドリングを簡素化するために、各流路形成板を相互に小片部60で連結した状態でエッチングを終了し、最後に小片部で切断して個々に切分けることが行われる。
【0025】一方、周知のように異方性エッチングは、そのエッチング方向が結晶面に対して一定の方向に限定されるため、圧力室列の並び方向の面には、図7に示したよう鋸歯状の小さな凹凸61、61、61、‥‥が残存する。この流路形成板59を記録ヘッドに組み上げると、図8(イ)に示したようにワイパーブレード56の移動方向(A)に直角な方向(B)に沿って凹凸が存在することになるが、ヘッドカバー35のオーバラップ部により被われているため、ワイパーブレード56を傷つけることがなく、クリーニングには支障を来さない。一方、ワイパーブレード56の移動方向(A)に沿った面には前述の小片60による凹凸が露出し、記録ヘッドの端部領域に接するワイパーブレード56の領域が早期に摩耗してしまうという不都合がある。
【0026】したがって、シリコン単結晶基板の異方性エッチングにより構成された流路基板59を使用した記録ヘッドにあっては、図8(ロ)に示したようにヘッドカバー35の切欠部53は、流路形成板59の側面を覆い、かつノズルプレート41よりもヘッドホルダ32側に後退した位置に形成するのが望ましい。
【0027】この構成によれば、ワイパーブレード56は、記録ヘッドの境界領域でヘッドカバー35の切欠部53の端面の滑らかな面に接触するから、摩耗が可及的に防止される。
【0028】図9は、本発明の他の実施例を示すものであって、ノズルプレート41には、ノズル孔43を複数本の直線上に配置したノズル孔列を形成し、これらノズル孔列の延長線上に、前述の切欠部53よりも短尺な切欠部53′を形成して幅狭なワイピング空間52を形成する一方、ノズル孔列の延長線から外れた位置に幅狭なオーバーラップ部51′を形成してもよい。
【0029】この実施例によれば、ノズルプレート41の表面のノズル孔列上においてはワイパーブレード56が浮き上がることなく当接させることができ、しかもオーバーラップ部51′でノズルプレート41のインク吐出に関りの無い領域を被覆して保護することができる。したがって、紙ジャム等によって折れ曲がった記録紙8の一部がワイピング空間52′に入って流路ユニット34の端縁に当たっても、オーバーラップ部51′によりノズルプレート41の剥離等を防止でき、保護機能を高めることができる。
【0030】また、図10に示すように、ワイピング方向Aに沿って延在する方向に位置する辺に、ノズルプレート41の板端面部分を覆って保護する端面保護部62をヘッドカバー35と一体に設けるとともに、端面保護部62の先端縁をノズルプレート41の表面以下として、端面保護部62の先端縁よりも先方をワイピング空間52としてもよい。
【0031】この実施例によれば、ワイピング空間52を形成した側に位置する流路ユニット34の板端面部分を端面保護部62によって保護することができるので、紙ジャム等に基因する流路ユニット34の損傷を防止することができる。そして図10に示すように、端面保護部62の先端縁は、ケース32の側面に沿った面をノズルプレート41側に屈曲して屈曲部63を成形すると、この屈曲部63によりヘッドカバー35の強度を高めることができる。
【0032】なお、上述の実施例においてはオーバーラップ部51により流路ユニット34の四隅を包むようにヘッドカバー35が構成されているが、図11に示したように、相対的ワイピング方向Aに直交する方向Bに沿って延在する辺に、ケース32の側面に沿った側面部50から屈曲してノズルプレート41の表面側縁部を覆うオーバーラップ部51を形成し、ワイピング方向Aに沿って延在する辺の全長に亘ってワイピング空間52を形成してもよい。
【0033】この実施例によれば、移動の際に先頭となる側面にだけオーバーラップ部51が形成されていて、他の側面にワイピング空間52により開放されるので、ノズル孔列を払拭する時にはワイパーブレード56が浮き上がることなく確実に払拭する機能を残しつつ、オーバーラップ部51の構造の簡素化を図ることができ、例えば流路ユニット34の四隅を包み込む部分を絞り加工が不要となり、打ち抜き加工と、曲げ加工という簡単な工程で製造することができる。
【0034】また、前記各実施形態ではヘッドカバー35を単一の部材として構成しているが、図12に示したように分割して構成することもできる。すなわち、ノズルプレート41の表面を覆うオーバーラップ部51と、このオーバーラップ部51の外側縁からケース32側にほぼ90°屈曲した取付側面部64とからなる断面L字状の屈曲部材を、ワイピング方向Aに直交する方向Bに位置するケース32の側面に固定し、すなわちノズル孔列に沿った方向に向けて固定し、これによりノズルプレート41の両側縁をオーバーラップ部51で被覆し、ワイピング方向Aに沿った辺(ノズル孔列に直交する方向Bに位置する部分)をワイピング空間52として開放してもよい。
【0035】この実施例によれば、断面L字状の屈曲部材を固定するだけで済むから、製造工程と組立て工程とを一層簡素化することができる。
【0036】図13は本発明の他の実施例を示すものであって、記録ヘッド31の移動方向Cに沿った辺にオーバーラップ部51を形成し、記録ヘッド31の移動方向Cに対して直交する方向に延在する辺にワイピング空間52を形成し、ノズルプレート41の表面に、ノズル孔列を含んでノズルプレート41の表面よりも低い底面を有する段差溝65を形成したものである。
【0037】そして、この実施例においてはワイパー20をノズル孔列の方向Dに沿って移動される。すなわち、記録ヘッド31の移動方向Cとワイピング方向Dとは異なるものであり、ワイピング方向Dに沿ってノズル孔列が形成されている。なお、段差溝65はクレーターメッキ等により形成することができ、その深さは数μ程度でよい。
【0038】この実施例によれば、ワイパーブレード56をノズル孔列の方向Dに移動することによりノズルプレート41の表面を払拭することになり、或1本のノズル孔列については各ノズル孔43のインクはすべて同じ色彩であって、ノズル孔列ごとにインクの色彩を異ならせてあるので、ワイピングによる混色を有効に防止することができ、また、段差溝65によりノズル孔43の開口位置がワイパーブレード56の先端通過位置から一段下がっているので、ワイパーブレード56が払拭した余剰インクがノズル孔43内に強制的に押し込まれて詰まるトラブルも解消することができる。勿論、ワイパーブレード56がノズル孔43を横切って通過する時には、ワイピング空間52が確保されているので、ワイパーブレード56の浮き上がりは生じない。
【0039】なお、図1乃至図12に示した実施例においても、ノズルプレート41に段差溝65と同様に段差凹部を形成し、この段差凹部の底部にノズル孔43を形成することができ、紙ジャム等によるノズル孔43近傍の表面処理層の損傷を確実に防止でき、かつノズル孔43の詰まりも防止できる。
【0040】また、オーバーラップ部51の先端縁を面取して斜面部51aを形成することにより、ワイパーブレード56に付着したインクがオーバーラップ部51の先端に残ることを低減させるとともにワイパーブレード56の摩耗を低減させ、さらにはワイパーブレード56の跳ねを可及的に抑えてインクの飛散をも防止できる。なお、上述の実施例においては圧力発生手段として圧電振動子30を用いているが、圧力発生手段はこれに限定されるものではなく、例えば発熱素子を圧力室45に設けてもよい。
【0041】
【発明の効果】以上、説明したように本発明においては、ヘッドカバーの、ノズルプレートの残留インクを払拭するワイパーブレードの長手方向側の辺の、ノズル孔が形成された領域が、ノズルプレートよりもヘッドケース側に位置してワイピング空間が確保されているので、ノズル孔形成領域では、ワイパーブレードの当接面が、ヘッドカバーに邪魔されることなくノズルプレートに均一に当接させることができ、圧接力を可及的に小さくしてノズル形成面の残留インクを確実に掻取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録ヘッドの一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の記録ヘッドの一実施例を示す斜視図である
【図3】同上記録ヘッドにおける圧力室近傍での断面図である。
【図4】ワイパーブレードの正面から見たヘッドカバーの断面図である。
【図5】ワイパーブレードの側面から見たヘッドカバーの断面図である。
【図6】複数の流路形成板を形成した単結晶シリコンウエハの一実施例を示す図である。
【図7】単結晶シリコンウエハにより形成された流路形成板の一実施例を示す図である。
【図8】図(イ)、(ロ)は、ぞれぞれ同上流路形成板を用いて構成された記録ヘッドの一実施例を示す図である。
【図9】記録ヘッドの他の実施例を示す斜視図である。
【図10】記録ヘッドの他の実施例を示す斜視図である。
【図11】記録ヘッドの他の実施例を示す斜視図である。
【図12】記録ヘッドの他の実施例を示す斜視図である。
【図13】記録ヘッドの他の実施例を示す斜視図である。
【図14】インクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図15】従来の記録ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
30 圧電振動子
31 記録ヘッド
32 ケース
34 流路ユニット
35 ヘッドカバー
40 流路形成板
41 ノズルプレート
43 ノズル孔
49 開口部
50 側面部
51 オーバーラップ部
52 ワイピング空間
53 切欠部
56 ワイパーブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ノズルプレートの複数のノズル孔から圧力発生手段により加圧されたインクを吐出する流路ユニットと、前記ノズル孔を露出させる窓を備えたヘッドカバーとをヘッドケースに固定したインクジェット式記録ヘッドにおいて、前記ヘッドカバーの、前記ノズルプレートの残留インクを払拭するワイパーブレードの長手方向側の辺の、前記ノズル孔が形成された領域が、前記ノズルプレートよりも前記ヘッドケース側に位置してワイピング空間が確保されているインクジェット式記録ヘッド。
【請求項2】 前記ノズルプレートは、ノズル孔を複数直線上に配置したノズル孔列が形成されており、前記ワイピング空間は、ノズル孔列の延長線上に形成されている請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項3】 前記ヘッドカバーは、ワイピング方向に直交する方向に沿って延在する辺に、ヘッドケースの側面に沿った側面部から屈曲して前記ノズルプレートの表面の側縁部を覆うオーバーラップ部を形成し、ワイピング方向に沿って延在する辺の全長に亘ってワイピング空間を形成した請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項4】 ワイピング方向に沿って延在する方向に位置する辺に、前記ノズルプレートの板端面部分を覆って保護する端面保護部を前記ヘッドカバーと一体に設けるとともに、端面保護部の先端を前記ノズルプレートの表面以下として、端面保護部の先端よりも先方をワイピング空間とした請求項1記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項5】 端面保護部の先端縁は、前記ヘッドケースの側面に沿った面を前記ノズルプレート側に屈曲して成形された請求項4に記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項6】 前記ヘッドカバーは、ワイピング方向に直交する方向に位置する辺において前記ヘッドケースの側面に沿った側面部と、この側面部から屈曲して前記ノズルプレートの側縁部を覆うオーバーラップ部とからなる断面略L字状の屈曲部材により分離した状態で構成されている請求項1記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項7】 前記ノズルプレートの表面に段差凹部を形成し、この段差凹部の底部に前記ノズル孔が穿設されている請求項1乃至6の1項のいずれかに記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項8】 ワイピング方向に沿ってノズル孔列を形成し、前記ノズルプレートの表面に、前記ノズル孔列を含んで、前記ノズルプレートの表面よりも低い底面を有する段差溝を形成した請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項9】 前記ヘッドカバーが導電性を有する請求項1乃至8項のいずれかに記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項10】 前記ヘッドカバーを介して前記ノズルプレートが接地されている請求項9に記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項11】 前記ノズルプレートの表面側縁部分を覆っているオーバーラップ部の先端縁に斜面部が形成されている請求項1乃至10項のいずれかに記載のインクジェット式記録ヘッド。
【請求項12】 前記流路ユニットを構成する流路形成板がシリコン単結晶基板の異方性エッチングにより構成され、前記前記ヘッドカバーの、前記ノズルプレートの残留インクを払拭するワイパーブレードの長手方向側の辺が、前記流路形成板の側面を覆い、かつ前記ノズルプレートよりも前記ヘッドケース側に位置してワイピング空間が確保されている請求項1に記載のインクジェット式記録ヘッド。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2000−190513(P2000−190513A)
【公開日】平成12年7月11日(2000.7.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−22500
【出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】