説明

インクジェット捺染装置

【課題】布地が支持部に載置された際の前記支持部に対する布地の位置および傾きに加えて布地の表面の状態を考慮したインクジェット捺染装置を提供すること。
【解決手段】インクジェット捺染装置1は、布地(C)を支持する支持部11と、該支持部11に支持された布地(C)に対してインクを吐出する吐出部2と、を備え、前記支持部11は、該支持部11に対する布地(C)の位置合わせのために、少なくとも一部が前記支持された布地(C)の外形線(C6)より外側にはみ出た位置合わせ用基準部12を有する構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地を支持する支持部と、該支持部に支持された布地に対してインクを吐出する吐出部と、を備えたインクジェット捺染装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、被服印刷装置は、プラテンと、インクジェットヘッドとを備えていた。前記プラテンは、被服(Tシャツ)をセットすることができた。また、前記インクジェットヘッドは、前記プラテンにセットされた被服(Tシャツ)に対してインクを吐出することができた。
【0003】
また、特許文献2に示す如く、Tシャツ印刷システムは、Tシャツ伸長具と、インクジェットプリンターとを有していた。前記Tシャツ伸長具は、Tシャツの中に差し込み、Tシャツの胴部を左右に押し広げることができた。そして、前記インクジェットプリンターが押し広げられたTシャツの胴部に対して印刷する構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276319号公報
【特許文献2】特開2007−31888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、被服(Tシャツ)を前記プラテンにセットする際、前記プラテンの一端側が被服(Tシャツ)からはみ出るようにセットし、前記プラテンの他端側は被服(Tシャツ)からはみ出ないようにセットする構成であった。言い換えると、前記プラテンの一端側でのみ位置合わせをし、他端側では位置合わせをしない構成であった。そのため、被服(Tシャツ)が前記プラテンに対して傾く虞がある。
【0006】
また、特許文献2では、Tシャツの中に前記Tシャツ伸長具を差し込む構成であったため、Tシャツの中心とTシャツ伸長具の中心とを合わせることが困難であった。また、前記差し込んでから左右に押し広げた状態ではTシャツ伸長具に凹凸ができ、Tシャツの表面に凹凸が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、布地が支持部に載置された際の前記支持部に対する布地の位置および傾きに加えて布地の表面の状態を考慮したインクジェット捺染装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様のインクジェット捺染装置は、布地を支持する支持部と、該支持部に支持された布地に対してインクを吐出する吐出部と、を備え、前記支持部は、該支持部に対する布地の位置合わせのために、少なくとも一部が前記支持された布地の外形線より外側にはみ出た位置合わせ用基準部を有する構成であることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、布地を前記支持部にセットする際、前記位置合わせ用基準部によって、前記支持部と布地との相対的な位置関係を決めることができる。つまり、前記支持部に前記位置合わせ基準部が設けられていない場合と比較して、前記支持部の中心に布地の位置を容易に合わせることができる。また、前記支持部に対して布地が傾く虞を低減することができる。その結果、布地における所望の位置および向きに捺染プリントを実行することができる。ここで、「捺染プリント」とは、インクで布地に文様を印刷し染色することをいう。
例えば、布地の中心に対して捺染プリントを実行することができる。
尚、前記位置合わせ用基準部には目印が付されている構成でもよい。
また、前記位置合わせ用基準部を設けるだけでよいので、前記支持部を平滑に設けることができ、布地の表面の状態を平らにすることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記位置合わせ用基準部は、少なくとも一の方向において布地の両側から外側へはみ出る構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、ユーザーは、布地の両側からはみ出た前記位置合わせ用基準部のはみ出る量を調整し、略同じにすることができる。これにより、前記一の方向における中心に布地の位置を容易に合わせることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記支持部の縁の形状は、半分以上の範囲において、布地の外形線と平行な縁を有する形状であることを特徴とする。
本態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、ユーザーは、平行な箇所における布地からはみ出した前記位置合わせ用基準部のはみ出し量を調整し、略均等にすることができる。これにより、平行な縁を有さない構成である場合と比較して、より一層容易に前記支持部の中心の位置に布地をセットすることができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記支持部は、布地の外形線より内側の中央部分を支持する基準部分と、該基準部分より外側であり、布地の外形線より内側において布地を支持する箇所から前記支持部の端部までの部分である可動部分と、を有しており、該可動部分は、前記基準部分と同一面で布地を支持する位置から前記基準部分に対して、前記基準部分側を中心として該可動部分を基準とした布地側と反対側へ揺動可能な構成であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記可動部分上の折り目や厚みがある部分による布地の段差を前記吐出部の吐出ヘッドから遠ざけることができる。その結果、布地と前記吐出ヘッドとが擦れる所謂、ヘッド擦れを防止することができる。
また、前記基準部分で支持されている布地の皺や折り目を伸ばすことが可能である。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記支持部は、布地の外形線より内側の中央部分を支持する基準部分と、該基準部分より外側であり、布地の外形線より内側において布地を支持する箇所から前記支持部の端部までの部分である可動部分と、を有しており、該可動部分は、前記基準部分と同一面で布地を支持する位置から該可動部分を基準とした布地側と反対側へ曲がることが可能な構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、上記第4の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
本発明の第6の態様は、第4または第5の態様において、前記可動部分における布地と接触する箇所の動摩擦係数は、前記基準部分における布地と接触する箇所の静止摩擦係数より高い構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第4または第5の態様と同様の作用効果に加え、前記可動部分を曲げた際、前記基準部分で支持されている布地そのものが完全に伸びない程度の適度な張力で、前記基準部分で支持されている布地の皺や折り目を確実に伸ばすことができる。これにより、捺染プリントされた布地を前記支持部から別の場所に移動して、布地に引っ張る力が作用していない状態にしたときに、布地に捺染プリントされた文字や図柄等が歪んでいるという不具合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例のインクジェット捺染装置の概略を示す側面図。
【図2】(A)(B)は本実施例の支持部を示す斜視図
【図3】(A)(B)は本実施例の支持部にTシャツを載置した状態を示す斜視図。
【図4】(A)(B)は本実施例の支持部にTシャツを載置した状態を示す平面図。
【図5】(A)〜(C)は適度にTシャツの皺が伸ばされる様子を示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例のインクジェット捺染装置1の概略を示す側面図である。
図1に示す如く、本実施例のインクジェット捺染装置1は、吐出部2と、支持部11と、送り手段6とを備えている。このうち、吐出部2は、キャリッジ3と、吐出ヘッド4と、ノズル5とを有している。キャリッジ3は、一例として支持部11の送り方向Yに対する幅方向Xへ、図示しない公知の移動手段によって移動可能に構成されている。例えば、図示しない制御部に制御されたモーターの動力を受けてガイド軸に案内されながら移動することができる。また、吐出ヘッド4は、キャリッジ3に設けられている。また、吐出ヘッド4における支持部11側の面にはインクを吐出するノズル5が形成されている。インクの吐出は制御部によって制御されているのは言うまでもない。
【0018】
また、支持部11は、吐出部2と対向可能な位置に設けられており、布地の一例であるTシャツCを支持することができる。
またさらに、送り手段6は、支持部11を送り方向Yへ移動させることができるように構成されている。送り手段6は、一例として、支持台10と、ガイド部9と、プーリー7と、ベルト8とを有している。
【0019】
このうち、支持台10は、支持部11が取り付けられるように構成されている。また、ガイド部9は、支持台10を送り方向Yへ案内することができる。またさらに、プーリー7には、ベルト8が巻回されている。そして、複数のプーリー7のいずれかは図示しないモーターの動力によって駆動するように構成されている。また、ベルト8の一部は、支持台10の一部に係止されている。
【0020】
従って、モーターの動力が支持台10まで伝達され、支持部11が送り方向Yへ移動する。
そして、支持部11を送り方向Yへ間欠移動させながら、インクを吐出させながらキャリッジ3を幅方向Xへ移動させることにより、TシャツCに対して捺染プリントすることができる。ここで、「捺染プリント」とは、インクで布地に文様を印刷し染色することをいう。
尚、Z軸方向は、鉛直方向である。
【0021】
続いて、本実施例の支持部11について詳しく説明する。
図2(A)(B)に示すのは、本実施例の支持部11を示す斜視図である。このうち、図2(A)は可動部分14が基準部分13に対して折り曲げられていない状態である。一方、図2(B)は可動部分14が基準部分13に対して鉛直方向下方へ折り曲げられた状態である。
【0022】
また、図3(A)(B)に示すのは、本実施例の支持部11にTシャツCを載置した状態を示す斜視図である。このうち、図3(A)は可動部分14が基準部分13に対して折り曲げられていない状態である。一方、図3(B)は可動部分14が基準部分13に対して鉛直方向下方へ折り曲げられた状態である。
またさらに、図4(A)(B)に示すのは、本実施例の支持部11にTシャツCを載置した状態を示す平面図である。このうち、図4(A)は可動部分14が基準部分13に対して折り曲げられていない状態である。一方、図4(B)は可動部分14が基準部分13に対して鉛直方向下方へ折り曲げられた状態である。
【0023】
図2〜図4に示す如く、本実施例の支持部11は、前述したように、布地の一例であるTシャツCを支持することができる。具体的に、支持部11は、基準部分13と、可動部分14とを有している。このうち、基準部分13は、前述した支持台10に対して固定される部分である。一方、可動部分14は、基準部分13の外側に設けられ、基準部分13との接続箇所を中心に、基準部分13に対して吐出ヘッド4から離れる方向(鉛直方向下方)へ揺動可能に設けられている。
尚、揺動する機構は、基準部分13との接続箇所にヒンジ部15(図5(A)〜(C)参照)を設けて可動部分14が揺動するように構成してもよい。また、基準部分13との接続箇所の厚みを薄くして接続箇所において折れ曲がることにより可動部分14が揺動するように構成してもよい。
【0024】
また、支持部11は、支持する布地の一例であるTシャツCの形状と類似した形状を有している。
ここで、「類似した形状」とは、半分以上の範囲において、布地(TシャツC)の外形線と平行な縁を有する形状をいう。
またさらに、支持部11は、支持部11の少なくとも一部が布地の一例であるTシャツCの外形線C6より外側にはみ出た位置合わせ用基準部12を有している(図3(A)および図4(A)参照)。
【0025】
位置合わせ用基準部12は、少なくとも一の方向において、布地の一例であるTシャツCの両側からはみ出ることができるように構成されている。つまり、支持部11の位置合わせ用基準部12は、捺染対象であるTシャツCの形状および大きさに応じて設けられている。
そして、ユーザーは、TシャツCを支持部11にセットする際、一の方向におけるTシャツCの両側からはみ出る位置合わせ用基準部12のはみ出る量を調整し、略同じにする。
【0026】
これにより、一の方向において、TシャツCの位置を支持部11の中心に容易に合わせることができる。
尚、はみ出る量は、2〜4cm程度が望ましい。はみ出る量が大きすぎると、両側ではみ出る量を略同じにすることが困難であり、前記中心に合わせにくいからである。同様に、はみ出る量が小さすぎると、両側ではみ出ているのか否かの判断が困難であり、前記中心に合わせにくいからである。
【0027】
本実施例では、TシャツCの送り方向Yおよび幅方向Xのそれぞれにおいて、TシャツCの両側からはみ出ることができるように位置合わせ用基準部12が設けられている。これにより、TシャツCの送り方向Yおよび幅方向Xのそれぞれにおいて、TシャツCの位置を支持部11の中心に容易に合わせることができる。
尚、本実施例では、位置合わせ用基準部12が単にTシャツCの両側から外側にはみ出る構成としたが、これに限らない。一の方向において、両側のうちの一方から外側にはみ出る構成でもよい。技術的思想としては、位置合わせ用基準部12がはみ出るようにTシャツCをセットして支持部11に対するTシャツCの位置を合わせることができればよいからである。例えば、位置合わせ用基準部12の色を、他の部分と見分けやすいように他の部分の色と異なるように構成してもよい。また、位置合わせ用基準部12に目印を付してもよい。またさらに、位置合わせ用基準部12と他の部分との境界に線等の目印を付してもよい。これにより、TシャツCの位置を支持部11の中心により容易に合わせることができるからである。
【0028】
また、可動部分14は、基準部分13より外側であり、TシャツCの外形線C6より内側においてTシャツC5(C)を支持するように設けられている。つまり、可動部分14は、位置合わせ用基準部12を有している。
またさらに、可動部分14には、詳しくは後述するように摩擦部材の一例である布テープ16が貼られている。これにより、TシャツCを支持している可動部分14を図3(A)および図4(A)の状態から図3(B)および図4(B)に示す如く鉛直方向下方へ折り曲げた際、基準部分13によって支持されているTシャツC4の箇所の皺W(図5(A)参照)を伸ばすことができる。
【0029】
そして、ユーザーは、TシャツCを支持部11に対して位置を合わせた後、TシャツCを支持している可動部分14を図3(A)および図4(A)の状態から図3(B)および図4(B)に示す如く鉛直方向下方へ折り曲げる。これにより、基準部分13に支持されている箇所の生地の厚みより、襟部分C3、袖の生地の折り返し部分C1、裾の生地の折り返し部分C2等の生地の厚みが厚い部分を、鉛直方向下方へ移動させることができる。
【0030】
その結果、吐出部2によって捺染プリントを実行する際、吐出ヘッド4が襟部分C3、袖の生地の折り返し部分C1、裾の生地の折り返し部分C2等の生地が厚い箇所と接触する所謂、ヘッド擦れが生じることを抑制することができる。
吐出部2による捺染プリントが終了した後については、可動部分14を図3(B)および図4(B)の状態から図3(A)および図4(A)に示す状態に戻す。そして、TシャツCを支持部11から下ろして、次のTシャツCをセットする。
【0031】
続いて、摩擦部材の一例である布テープ16の作用効果について説明する。
図5(A)〜(C)に示すのは、適度にTシャツCの皺Wが伸ばされる様子を示す正面断面図である。
図5(A)に示す如く、基準部分13で支持されている箇所のTシャツCに皺Wがある場合がある。この理由は、ユーザーが支持部11にTシャツCを載置して中心を合わせる際、手で皺を伸ばすが、十分に伸ばすことができない虞があるからである。また、小さい皺Wに気が付かない虞があるからである。
【0032】
そして、図5(B)に示す如く、図5(A)の状態から徐々に可動部分14を鉛直方向下方へ折り曲げていく。ここで、TシャツCと布テープ16との動摩擦係数は、基準部分13におけるTシャツCと接触する箇所の静止摩擦係数より高くなるように構成されている。さらに、TシャツC5(C)と布テープ16との間の動摩擦係数は、可動部分14の移動により基準部分13上のTシャツC4の皺Wを伸ばすことができ、かつ、基準部分13上のTシャツC4を引き伸ばさない程度に「適度」な大きさに設けられている。TシャツC5(C)と布テープ16との動摩擦係数だけでなく、TシャツC5(C)と布テープ16との静止摩擦係数も同様である。
【0033】
尚、技術的思想としては、可動部分14におけるTシャツC5(C)と接触する箇所の動摩擦係数が、基準部分13におけるTシャツC4(C)と接触する箇所の静止摩擦係数より高い構成であり、かつ、前記「適度」な大きさであればよい。従って、可動部分14に布テープ16を貼らなくても、相対的に、可動部分14におけるTシャツC5(C)と接触する箇所の表面に前記動摩擦係数が高くなるような加工を施してもよい。また、相対的に、基準部分13におけるTシャツC4(C)と接触する箇所の表面に前記静止摩擦係数が低くなるような加工を施してもよい。
【0034】
従って、徐々に可動部分14を鉛直方向下方へ折り曲げていくことにより、TシャツCにおける可動部分14に支持されている箇所C5は、可動部分14と共に移動しようとする。この際、可動部分14は、布テープ16を介してTシャツCにおける可動部分14に支持されている箇所C5を外側へ「適度に」引っ張るように作用する。その結果、TシャツCにおける基準部分13に支持されている箇所C4が、可動部分14側である外側へ「適度に」引っ張られ、TシャツCにおける基準部分13に支持されている箇所C4の皺Wが伸ばされる。
【0035】
図5(C)に示す如く、図5(B)の状態からさらに可動部分14を鉛直方向下方へ折り曲げていく。この際、TシャツCにおける基準部分13に支持されている箇所C4は、既に皺Wが伸ばされる程度に「適度に」張られている。そして、TシャツC5(C)と布テープ16との間の静止摩擦係数および動摩擦係数は、前述したように「適度な」大きさに設けられている。従って、TシャツCにおける可動部分14に支持されている箇所C5が、可動部分14に対して滑るように移動する。
【0036】
この際、基準部分13上のTシャツC4を引き伸ばす虞はない。その結果、吐出部2による捺染プリントを実行する際、適度に張られたTシャツCにおける基準部分13に支持されている箇所C4に対してインクを吐出して捺染プリントを実行することができる。つまり、吐出後においてTシャツCを支持部11から下ろしたとき、TシャツCが縮んで捺染プリントした文字や図柄等が歪んでいるという虞がない。
【0037】
尚、可動部分14の折り曲げは、両側を同じタイミングで折り曲げることが望ましい。片側ずつ折り曲げると支持部11に対するTシャツCの位置がずれる虞があるからである。
また、可動部分14上のTシャツC5を可動部分14において軽く挟む構造として可動部分14を下方へ揺動させた際に前述したような「適度に」引っ張るように作用するように構成してもよい。上記実施例と同様に、TシャツCにおける基準部分13に支持されている箇所C4の皺Wを伸ばすことができるからである。
【0038】
また、図2(A)、図3(A)、図4(A)および図5(A)の状態では、一例として可動部分14が基準部分13と同一面となるように構成したが、必ずしも同一面でなくてもよい。技術的思想としては、可動部分14が鉛直方向下方へ移動する(曲がる)ことにより、前述したように外側へ「適度に」引っ張るように作用すればよい。従って、図2(A)、図3(A)、図4(A)および図5(A)の状態では、可動部分14が基準部分13に対して少し傾いていてもよい。
【0039】
本実施例のインクジェット捺染装置1は、布地の一例であるTシャツCを支持する支持部11と、支持部11に支持されたTシャツCに対してインクを吐出する吐出部2と、を備え、支持部11は、支持部11に対するTシャツCの位置合わせのために、少なくとも一部が前記支持されたTシャツCの外形線C6より外側にはみ出た位置合わせ用基準部12を有する構成であることを特徴とする。
【0040】
また、本実施例において、位置合わせ用基準部12は、少なくとも一の方向においてTシャツCの両側から外側へはみ出る構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、支持部11の縁の形状は、半分以上の範囲において、TシャツCの外形線C6と平行な縁を有する形状であることを特徴とする。
【0041】
また、本実施例において、支持部11は、TシャツCの外形線C6より内側の中央部分C4を支持する基準部分13と、基準部分13より外側であり、TシャツCの外形線C6より内側においてTシャツC5(C)を支持する箇所から支持部11の端部までの部分である可動部分14と、を有しており、可動部分14は、基準部分13と同一面でTシャツCを支持する位置から基準部分13に対して、基準部分13側を中心として可動部分14を基準としたTシャツC側と反対側へ揺動可能な構成であることを特徴とする。
【0042】
またさらに、本実施例において、可動部分14におけるTシャツC5(C)と接触する箇所の動摩擦係数は、基準部分13におけるTシャツC4(C)と接触する箇所の静止摩擦係数より高い構成であることを特徴とする。
【0043】
[他の実施例]
上記実施例では、基準部分13と可動部分14との接続箇所を中心に鉛直方向下方へ、可動部分14を基準部分13に対して折り曲げて、揺動させていたが、これに限らない。
技術的思想としては、可動部分(14)の一部が鉛直方向下方へ移動することにより、「適度」な力で基準部分13上のTシャツC4を外側へ張ることができればよい。また、襟部分C3、袖の生地の折り返し部分C1、裾の生地の折り返し部分C2等の生地が厚い箇所を吐出ヘッド4と接触しない位置へ移動させることができればよい。
【0044】
従って、基準部分13と可動部分(14)との接続箇所またはその近傍において、可動部分(14)を基準部分13に対して鉛直方向下方へ曲げる構成でもよい。また、可動部分(14)を鉛直方向下方へ曲げる前の状態では、前述したように、基準部分13と可動部分(14)とが同一面でなくてもよい。
尚、前述した実施例と同様の部材については同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0045】
他の実施例において、支持部11は、TシャツCの外形線C6より内側の中央部分C4を支持する基準部分13と、基準部分13より外側であり、TシャツCの外形線C6より内側においてTシャツC5(C)を支持する箇所から支持部11の端部までの部分である可動部分(14)と、を有しており、可動部分(14)は、基準部分13と同一面でTシャツCを支持する位置から可動部分(14)を基準としたTシャツC側と反対側へ曲がることが可能な構成であることを特徴とする。
【0046】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0047】
以上説明した実施形態では、支持部11と吐出ヘッド4との相対的な移動は、支持部11の移動によって実現されるが、支持部11が固定され吐出ヘッド4が移動する構成であっても良いし、或いは支持部11及び吐出ヘッド4の双方が移動する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェット捺染装置、2 吐出部、3 キャリッジ、4 吐出ヘッド、
5 ノズル、6 送り手段、7 プーリー、8 ベルト、9 ガイド部、10 支持台、
11 支持部、12 位置合わせ用基準部、13 基準部分、14 可動部分、
15 ヒンジ部、16 布テープ、C Tシャツ、C1 袖の折り返し部分、
C2 裾の折り返し部分、C3 襟部分、C4 基準部分上のTシャツ、
C5 可動部分上のTシャツ、C6 Tシャツの外形線、W 皺、X 幅方向、
Y 送り方向、Z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地を支持する支持部と、
該支持部に支持された布地に対してインクを吐出する吐出部と、を備え、
前記支持部は、該支持部に対する布地の位置合わせのために、少なくとも一部が前記支持された布地の外形線より外側にはみ出た位置合わせ用基準部を有するインクジェット捺染装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット捺染装置において、前記位置合わせ用基準部は、少なくとも一の方向において布地の両側から外側へはみ出るインクジェット捺染装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット捺染装置において、前記支持部の縁の形状は、半分以上の範囲において、布地の外形線と平行な縁を有する形状であることを特徴とするインクジェット捺染装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染装置において、前記支持部は、
布地の外形線より内側の中央部分を支持する基準部分と、
該基準部分より外側であり、布地の外形線より内側において布地を支持する箇所から前記支持部の端部までの部分である可動部分と、を有しており、
該可動部分は、前記基準部分と同一面で布地を支持する位置から前記基準部分に対して、前記基準部分側を中心として該可動部分を基準とした布地側と反対側へ移動可能であるインクジェット捺染装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット捺染装置において、前記支持部は、
布地の外形線より内側の中央部分を支持する基準部分と、
該基準部分より外側であり、布地の外形線より内側において布地を支持する箇所から前記支持部の端部までの部分である可動部分と、を有しており、
該可動部分は、前記基準部分と同一面で布地を支持する位置から該可動部分を基準とした布地側と反対側へ曲がるインクジェット捺染装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のインクジェット捺染装置において、前記可動部分における布地と接触する箇所の動摩擦係数は、前記基準部分における布地と接触する箇所の静止摩擦係数より高い構成であるインクジェット捺染装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−22858(P2013−22858A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160612(P2011−160612)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】